遺言と遺書の違いとは?「いごん・ゆいごん」の読み方や法的効力を解説

「遺言(いごん/ゆいごん)」と「遺書(いしょ)」は、同じ意味だと思われがちです。
また、「いごん」「ゆいごん」という読み方の違いに迷ったことがある方も多いのではないでしょうか。

実際、ドラマやニュース、日常会話では「遺書」という言葉が使われることも多く、「遺言」「遺言書(いごんしょ)」「遺言状(いごんじょう)」の違いが曖昧なまま使われているケースは少なくありません。

しかし、法律の世界では、それぞれの言葉には明確な違いがあります。

特に「遺言」は、単なるメッセージではなく、相続や財産分与に法的効力を持たせるための“法律上の意思表示”です。
一方で、「遺書」は気持ちや想いを伝える手紙として扱われることが多く、必ずしも法的効力が認められるわけではありません。

この記事では、

  • 「遺言」と「遺書」の違い
  • 「いごん」「ゆいごん」どちらが正しいのか
  • 遺書にも法的効力はあるのか
  • 遺言書・遺言状との違い

などを、初心者の方にもわかりやすく解説します。

「遺書」と「遺言」の違いを比較した図解イラスト。左側は家族への手紙や感謝の気持ちを表すハートと家族のイラスト、右側は法的効力を持つ遺言書・印鑑・家・天秤を配置し、感情的なメッセージと法的文書の違いを表現している。
「遺書」は想いを伝えるもの、「遺言」は法的効力を持つ文書。似ているようで異なる2つの違いを図解で整理。

目次

①遺言と遺書の違いとは?

遺言とは?法律上の意味

「遺言」は、亡くなった後に効力を持つ“法律上の意思表示”のことです。

財産を誰に相続させるか、特定の人に財産を渡したいかなどを正式に示すために使われます。

法律上の遺言には一定のルールがあり、方式を守って作成することで法的効力が認められます。

たとえば、遺言では次のような内容を指定できます。

  • 誰にどの財産を相続させるか
  • 相続割合をどうするか
  • 相続人以外に財産を渡すか
  • 遺言執行者を誰にするか

このように、遺言は単なるメッセージではなく、相続や財産承継に影響を与える正式な法律行為です。

遺書とは?気持ちや想いを残すもの

一方、「遺書」は法律用語ではありません。

亡くなる前に、家族や大切な人へ向けて残す手紙やメッセージを指す言葉として使われています。家族への感謝や謝罪、最後に伝えたい想いなどを書くことが多く、法律上の手続きというよりも、気持ちを伝える意味合いが強い言葉です。

そのため、遺書そのものに法的効力はありません。

ただし、内容や書き方が法律上の要件を満たしている場合は、「遺言」として有効になるケースもあります。詳しくは後ほど解説します。

遺言と遺書の違いを比較表で整理

「遺言」と「遺書」は似た言葉ですが、法律上の意味や役割は大きく異なります。

家族を想いながら手紙を書く高齢者と、公証人の前で遺言書を作成する高齢者を対比したイラスト。左側は感謝や想いを伝える温かい雰囲気、右側は法的手続きを表す落ち着いた雰囲気で、「感情を伝えること」と「法的効力を持たせること」の違いを表現している。
家族への想いを伝える「遺書」と、法的効力を持つ「遺言」。似ているようで異なる役割をイラストでわかりやすく整理。
項目遺言遺書
法的効力ある原則ない
主な目的財産や相続の指定気持ちを伝える
法律上の扱い民法上の制度法律用語ではない
内容相続・遺贈など感謝・謝罪・想い
必要要件厳格に決まっている特にない

特に重要なのは、「想いを書いた」だけでは法的効力が認められない場合があるという点です。

たとえば、「長男に家を譲りたい」と遺書に書いていても、法律上の要件を満たしていなければ、相続手続きでは使えない可能性があります。

そのため、

  • 気持ちを伝えたい    → 遺書
  • 法的に効力を持たせたい → 遺言

という違いを理解しておくことが大切です。

②「いごん」と「ゆいごん」はどちらが正しい?

「遺言」の読み方の違いを表現した図解イラスト。左側は法律や裁判所、行政書士、法律書類などを背景にした法的なイメージ、右側は家族団らんや日常会話の温かいイメージで、「いごん」と「ゆいごん」の使われ方の違いを表現している。
法律用語としては「いごん」、日常会話では「ゆいごん」と読まれることが多い「遺言」。場面による使い分けをイラストで整理。

法律では「いごん」と読むのが一般的

「遺言」は、一般的には「ゆいごん」と読まれることもありますが、法律上の読み方は「いごん」です。

民法や裁判所、法律実務の現場では、「いごん」という読み方が使われています。

たとえば、

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

なども、法律実務では「いごん」と読まれます。

そのため、行政書士や弁護士などの専門家へ相談する場面でも、「いごん」という読み方が用いられています。

一般には「ゆいごん」も広く使われている

一方で、日常会話では「ゆいごん」という読み方も広く使われています。

テレビやドラマ、小説などでは、「人生の最後に残すメッセージ」という意味合いで「ゆいごん」という表現が使われることも少なくありません。

そのため、「ゆいごん」と読んだからといって間違いというわけではありません。実際、辞書でも「いごん」「ゆいごん」の両方が掲載されており、現在ではどちらの読み方も一般的に浸透しています。

もっとも、漢字はいずれも同じ「遺言」であるため、日常会話でそこまで厳密に区別する必要はないでしょう。

ただし、法律上有効な遺言を残したい場合は、「いごん」という法律上の読み方を意識しておくことが大切です。専門家への相談や法律手続きの場面でも、「いごん」という読み方が用いられています。

「遺言状」と「遺言書」の違いは?

法律上、正式に使われる言葉は「遺言」です。

一方で、「遺言書」は、遺言の内容を書面にしたものを指す表現として、実務や一般社会で広く使われています。実際には紙や書面の形で残すケースが多いため、「遺言を書いたもの=遺言書」として自然に定着したと考えられます。

また、「遺言状」という表現も間違いではありませんが、現在ではやや古い言い回しとして使われることが多く、日常会話やドラマなどで耳にするケースが中心です。

なお、それぞれの読み方は次のとおりです。

  • 遺言状:いごんじょう
  • 遺言書:いごんしょ

一般的には「遺言書」という表現が広く使われていますが、法律実務では「遺言」という言葉が正式に用いられています。

③遺書でも法的効力はある?

有効な遺言と無効になりやすいケースを比較した図解イラスト。左側は日付・署名・印鑑がそろった正式な遺言書、右側はLINE画面や署名のないメモを配置し、遺言では形式が重要であることを表現している。
遺言は「気持ちを書けばよい」だけではありません。法律で定められた形式を満たすことが重要です。

条件を満たせば「遺書」が遺言として有効になることもある

「遺書」という名前で書かれていても、法律上の要件を満たしていれば、「遺言」として有効になる場合があります。

重要なのは“タイトル”ではなく、法律で定められた形式を満たしているかどうかです。

たとえば、長男に自宅を相続させたいという内容が書かれていても、法律上の要件を満たしていなければ、法的には無効と判断される可能性があります。

逆に、「遺書」と書かれていても、法律上の要件を満たしていれば、有効な遺言として扱われます。

そのため、「遺書だから無効」「遺言と書けば有効」というわけではありません。

有効になるための条件

自筆証書遺言の場合、法律上有効と認められるためには、主に次のような条件を満たす必要があります。

  • 本人が自筆で書いている
  • 作成日が明記されている
  • 氏名が書かれている
  • 押印がある
  • 内容が具体的で明確である

また、パソコンで本文を作成した場合などは、自筆証書遺言として無効になるケースもあります。

法的効力を持たせたい場合は、法律上のルールに沿って作成することが重要です。

無効になりやすいケース

遺言は、内容だけでなく「形式」が重視される法律文書です。

そのため、本人は遺言を書いたつもりでも、法律上の要件を満たしていなければ無効になります。

たとえば、次のようなケースでは無効になる可能性があります。

  • 日付が書かれていない
  • 署名や押印がない
  • 本人以外が代筆している
  • 法律で認められた方式に従っていない
  • 遺言能力がない状態で作成された

特に自筆証書遺言は、自分で手軽に作成できる一方で、形式不備によって無効になるケースも少なくありません。

そのため、「確実に法的効力を持たせたい」「相続トラブルを防ぎたい」という場合は、公正証書遺言を選択する人も多くいます。

④法的に有効な遺言の種類

「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類を比較した図解イラスト。左側は自宅で遺言を書く高齢者、中央は公証人と相談しながら遺言を作成する様子、右側は封筒に入った秘密証書遺言を描き、それぞれの特徴の違いを表現している。
遺言には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。それぞれ作成方法や特徴が異なります。

法律上、有効な遺言として認められるためには、民法で定められた方式に従って作成する必要があります。

代表的な遺言の種類は、次の3つです。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なるため、自分に合った方法を選ぶことが大切です。

自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の違いはこちら

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、本人が自分で作成する遺言です。

紙とペンがあれば作成できるため、費用を抑えやすく、手軽に始められる点がメリットです。

一方で、

  • 日付漏れ
  • 押印漏れ
  • 内容の不備

など、形式ミスによって無効になるケースも少なくありません。

また、亡くなった後に家族が遺言を発見できない、内容をめぐって争いになる、といったトラブルにつながることもあります。

そのため、自筆証書遺言を作成する場合は、法律上のルールを正しく理解したうえで作成することが重要です。

公正証書遺言

公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する遺言です。

本人が内容を伝え、それをもとに公証人が法律に沿った形で作成するため、形式不備によって無効になるリスクを大きく減らせます。

また、原本が公証役場に保管されるため、

  • 紛失
  • 改ざん
  • 発見されない

といったリスクも抑えやすい点が特徴です。

費用や証人が必要になるという負担はありますが、「確実に法的効力を持たせたい」という場合には、多く利用されている方法です。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしたまま、公証役場で存在だけを証明してもらう方式です。

内容を他人に見られずに作成できる一方で、現在は利用されるケースは多くありません。

また、公証人は内容の有効性までは確認しないため、形式不備や内容の問題によって無効になる可能性もあります。

そのため、実務上は、

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言

のどちらかを選択するケースが一般的です。

迷ったら公正証書遺言が安心

「法的に無効にならないか不安」「家族間のトラブルを防ぎたい」という場合は、公正証書遺言を検討する人も多くいます。

特に、

  • 財産が多い
  • 相続人同士の関係が複雑
  • 確実に意思を残したい

といったケースでは、公証人や専門家のサポートを受けながら作成することで、後々のトラブル予防につながります。

一方で、「まずは自分で準備したい」という場合には、自筆証書遺言から始める方法もあります。

大切なのは、「遺言を書くこと」だけでなく、法律上有効な形で残すことです。

遺言の種類を詳しく見る

⑤よくある誤解

エンディングノートやLINE、メモ書きだけで十分なのか悩む高齢者と、正式な遺言書を対比したイラスト。左側にはスマートフォンのLINE画面やエンディングノート、手書きメモがあり、右側には印鑑付きの正式な遺言書が配置され、「想いを残すこと」と「法的効力」の違いを表現している。
気持ちを書き残すだけでは、法的効力が認められない場合があります。正式な遺言書との違いをイラストで整理。

エンディングノートだけでは法的効力はない

エンディングノートは、自分の希望や想いを家族へ伝えるためのものです。

しかし、エンディングノート自体に法的効力はありません。

そのため、

  • 「誰に財産を相続させるか」
  • 「特定の人へ財産を渡したい」

といった内容を法的に有効に残したい場合は、法律上の方式を満たした遺言を作成する必要があります。

たとえば、

  • 葬儀の希望
  • 医療や介護の考え方
  • 家族へのメッセージ
  • 財産の整理

などを書き残せるため、終活の一環として利用する人も増えています。

エンディングノートは“気持ちを伝えるもの”、遺言は“法的な意思表示”という違いを理解しておくことが大切です。

メール・LINEだけでは原則無効

近年では、スマートフォンやパソコンで想いを残す人も増えています。

しかし、メールやLINEに財産の分け方を書いたとしても、それだけで法律上有効な遺言にはなりません。

遺言として法的効力を持たせるためには、民法で定められた方式を満たす必要があります。

そのため、

  • LINEで「長男に家を残したい」と送る
  • メールで財産分与を書き残す

といった方法だけでは、法的に有効な遺言とは認められません。

もっとも、こうしたメッセージが全く無意味というわけではありません。

被相続人(亡くなった方)の意思や想いを家族へ伝える資料として参考にされることはあり、実際の遺産分割協議(相続人同士で遺産の分け方を話し合う手続き)で、その内容に沿った分割が行われる可能性もあります。

ただし、あくまで相続人同士の話し合いによるものであり、法的に強制できるものではない点には注意が必要です。

「遺書があるから安心」とは限らない

法律上有効な遺言があったとしても、それだけで相続トラブルを完全に防げるとは限りません。

たとえば、

  • 内容が曖昧
  • 財産の情報が古い
  • 相続人の状況が変わっている
  • 現実的に分けにくい内容になっている

といった理由から、実際の相続手続きで問題になるケースもあります。

また、遺言の内容によっては、相続人同士で不公平感が生まれ、争いにつながる可能性もあります。
特に自筆証書遺言は、自分で手軽に作成できる一方で、形式不備によって無効になるケースもあるため注意が必要です。

そのため、「とりあえず書けば安心」ではなく、“法律上有効で、内容も整理された遺言”を残すことが重要です。

⑥よくある質問(FAQ)

Q:遺言は「いごん」と「ゆいごん」のどちらが正しいですか?

どちらも同じ「遺言」を指す言葉ですが、法律上の読み方は「いごん」です。

一方で、日常会話やテレビ・ドラマなどでは「ゆいごん」と読まれることも多く、一般的にも広く使われています。

法的に有効な遺言を作成したい場合や、専門家へ相談する場面では、「いごん」という読み方が使われています。

Q:遺言状の読み方は?

「遺言状」は、「いごんじょう」と読みます。

現在では「遺言書」という表現のほうが一般的ですが、ドラマや日常会話では「遺言状」という言い方が使われることもあります。

Q:遺言書の読み方は?

「遺言書」は、「いごんしょ」と読みます。

法律上の正式な名称は「遺言」ですが、一般には書面で残すことから「遺言書」という表現が広く使われています。

Q:「遺言」と「遺書」は同じ意味ですか?

似た言葉ですが、法律上の意味は異なります。

「遺言」は、財産の分け方などについて法的効力を持たせるための意思表示です。

一方、「遺書」は家族へのメッセージや想いを残す意味合いが強く、原則として法的効力はありません。

ただし、遺書であっても法律上の要件を満たしていれば、遺言として有効になる場合があります。

Q:遺書にも法的効力はありますか?

遺書という名前でも、法律上の要件を満たしていれば、遺言として法的効力が認められることがあります。

重要なのはタイトルではなく、

  • 自筆で作成されているか
  • 日付があるか
  • 署名・押印があるか

など、法律上の方式を満たしているかどうかです。

一方で、単なるメッセージや手紙として書かれた場合は、法的効力は認められません。

Q:遺言の類語にはどんな言葉がありますか?

遺言と似た意味で使われる言葉には、

  • 遺書
  • 遺言書
  • 遺言状
  • 遺志
  • エンディングノート

などがあります。

ただし、これらはすべて同じ意味ではありません。

特に、「遺言」は法律上の意思表示を指す言葉であり、エンディングノートや遺書とは法的効力に違いがあります。

⑦想いを残すなら「遺書」、権利を残すなら「遺言」

「遺書」と「遺言」は似た言葉ですが、役割は大きく異なります。

遺書は、家族への感謝や最後に伝えたい想いなど、“気持ち”を残すためのものです。

一方で、遺言は、

  • 誰に財産を相続させるか
  • どの財産を誰に渡すか

などを法的に有効な形で残すためのものです。

そのため、家族へ想いを伝えたいだけであれば遺書でも十分意味があります。

しかし、

  • 相続トラブルを防ぎたい
  • 自分の意思どおりに財産を承継したい
  • 特定の人へ財産を残したい

と考える場合は、法律上有効な遺言を作成することが重要です。

「自分にも遺言が必要なのか分からない」という方は、こちらの記事も参考にしてください。
遺言は必要?作るべき人・書かないリスクを解説

特に、気持ちだけを書いたつもりでも、内容や形式によっては家族の間で解釈が分かれ、トラブルにつながるケースもあります。

「想いを伝えること」と「法的効力を持たせること」は別であることを理解し、必要に応じて遺言を活用することが大切です。

まとめ

「遺言」と「遺書」は似た言葉ですが、法律上の意味や役割には大きな違いがあります。

  • 遺言:法的効力を持つ意思表示
  • 遺書:気持ちや想いを伝える手紙

という違いがあり、法的に有効な形で財産承継を行いたい場合は、法律上の方式を満たした遺言を作成する必要があります。

また、「いごん」「ゆいごん」はどちらも使われていますが、法律上の読み方は「いごん」です。

遺書やエンディングノート、メールなどは、家族へ想いを伝える意味はありますが、それだけで法的効力が認められるわけではありません。

大切なのは、「想いを残すこと」と「法的に有効な形で残すこと」の違いを理解したうえで、自分に合った方法を選ぶことです。

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