遺言に執行者がいないと相続は止まる|遺言執行者の選任申立と手続き完全ガイド

目次

相続手続きが止まった…!?──遺言執行者がいなかったA家の混乱

「えっ、遺言があっても名義変更できないんですか?」

相続の手続きを進めようとしたとき、金融機関から返ってきたのは意外な返答だった。

Aさんの父が亡くなったのは、ある年の冬のことです。

遺された家族には、公正証書ではないものの、自筆でしっかり書かれた遺言書があった。「長男に自宅を相続させる」と明記されており、兄弟間でも特に異論はありませんでした。

にもかかわらず、手続きが一向に進まない。銀行口座の名義変更も、不動産の登記も、保険金の請求さえも実施できなかった。

理由はただひとつ、遺言執行者が指定されていなかったからだった。

遺言があっても、執行者がいなければ実行できない!?

民法では、特定の遺産分割の指示や、相続人以外への遺贈がある場合などには、その内容を実現するために「遺言執行者」という存在が必要とされています(民法第1006条)。

遺言執行者がいなければ、相続人全員が同意したうえで手続きを進めなければならず、一人でも反対したり協力しない相続人がいれば、すべてがストップしてしまうのです。

Aさんのケースでも、遺言の内容に大きな異論はなかったものの、ある兄弟が「念のため弁護士に確認してから」と主張し、話はストップしてしまします。

名義変更が遅れ、相続税の申告期限も迫り、家族は大きなプレッシャーにさらされました。

「遺言執行者」が最初から指定されていれば防げた事態

じつは、もしこの遺言書の中に「遺言執行者として〇〇を指定する」という一文があれば、こうした混乱は起きていなかったのです。

遺言執行者がいる場合、その人が単独で必要な相続手続きを実行できるため、

  • 不動産の名義変更
  • 預金の解約・分配
  • 株式や保険金の名義変更

などがスムーズに行えるようになります。

遺言に遺言執行者が書かれていなかったら?

その場合でも、解決策はあります。

それが、家庭裁判所に「遺言執行者選任の申立」を行うことです。

この申立を通じて、裁判所が適切な人物(相続人・親族・専門家など)を執行者として任命してくれます。
ただし、申立には一定の手続きと時間が必要であり、書類も多岐にわたるため、準備をしっかり整える必要があります。

この記事では

このあと、以下のような流れで解説していきます。

  • 「遺言執行者って何をする人?」という基本から
  • 「執行者がいない場合の申立方法」
  • 「行政書士・弁護士・司法書士の違いと依頼の目安」
  • 「遺言に執行者を最初から指定することの重要性」

まで、実務と感情の両面から深掘りしていきます。

あなたが今、
「相続の手続きが思うように進まない」
「遺言はあるけど、これで本当に大丈夫?」
と感じているなら、
この記事が確実な一歩を踏み出すための地図になれば幸いです。

遺言執行者とは?なぜ重要なのか?

「遺言があれば、あとはそれに従って進めればいい」

そう思っていた。でも、実行する人がいないと、何も進まない。

遺言執行者(いごんしっこうしゃ)とは、故人(被相続人)の遺言内容を具体的に実現する人のことです。

たとえば遺言に「長男に自宅を相続させる」と書かれていた場合、実際に不動産の名義変更を行う、銀行口座を解約して分配する。こうした実務の手足として動くのが、遺言執行者です。

法的な定義(民法第1006条)

「遺言執行者は、遺言の執行に関し、管理その他の必要な行為をする権利義務を有する」

民法第1006条第1項

つまり、遺言執行者に選ばれた人には、法的に「相続財産に関する実務を行う権限」が与えられるということです。

遺言執行者がいない場合、相続人全員の合意が必要に…

遺言に執行者が指定されていないと、どうなるか?

基本的には、相続人全員が手続きを行うか、全員が誰か1人に委任する必要があります。

しかし相続人が多い、遠方に住んでいる、疎遠になっている。というようなケースでは、話し合い自体が進まない or 合意が取れないことも少なくありません。

そうなると、たとえ遺言があっても、不動産の名義変更や預貯金の解約ができず、手続きが宙に浮いた状態に。

遺言執行者がいないことによる具体的なリスク

リスク内容
名義変更ができない登記簿や銀行では「執行者の権限」を求められる
相続人間で争いが起きやすい誰がどう動くか不明確で、疑念や不信感が生まれる
相続税の申告に遅れる可能性相続が進まない=財産評価や申告手続きが遅延する
不動産や株式の売却ができない法定代理人が不在となり、換金できないことも

指定されていれば、遺言執行者の単独で手続きできる!

執行者がきちんと遺言で指定されていれば、その人が単独で金融機関や登記所とやりとりできるようになります。

これにより、相続人同士の協議を待たずに、迅速に遺言を実現することが可能です。

たとえば

  • 不動産登記簿の名義変更(法務局)
  • 銀行口座の解約と払い戻し
  • 株式の名義変更や保険金の受取

すべて執行者が「自分の名前」で対応できます。

相続内容によっては、指定が義務になる場合も

遺言の内容が以下に該当する場合、執行者の指定が法的に必須です。

  • 認知に関する遺言(例:「○○を私の子として認知する」)
  • 相続人の廃除・取消に関する内容
  • 遺贈(法定相続人以外に財産を譲る)
  • 子の代襲相続など複雑な家系構造がある場合

こうしたケースでは、遺言執行者を指定していないと、そもそもその遺言が「執行できない」可能性もあります。

まとめ

  • 遺言執行者は、遺言を実現するための責任者
  • 指定がなければ、相続人全員での協議が必要
    → トラブル・停滞の原因に
  • 特定の内容では、法的に執行者が必須
  • あらかじめ遺言で指定されていれば、家庭裁判所への申立は不要!
    → この点は次の章で詳しく解説します。

なぜ遺言に執行者がいないと困るのか?

「遺言があるんだから、あとはそれ通りにやるだけでしょ?」

そう思っていた。けれど、誰がやるかが決まっていなければ、何一つ動かなかった。

遺言は、被相続人(亡くなった方)の「最終意思」を伝えるとても大切な文書です。
しかし、それを実際に実行する人がいなければ、ただの紙切れになってしまう可能性すらあるのです。

遺言執行者が指定されていないことで起こる典型的なトラブル

ケース①:不動産の名義変更ができない

「長男に自宅を相続させる」と遺言に明記されていたのに、法務局から「他の相続人全員の同意書が必要」と言われてしまった。

他の相続人が非協力的で手続きが進まない。

ケース②:銀行口座の解約に相続人全員の署名が必要

一人が海外在住、連絡がつかない。相続税の支払い期限に間に合わずペナルティ発生。

ケース③:遺言の内容に不満を持つ相続人が「自分は納得していない」と主張

実行役がいないため、誰も進行できず膠着状態に。

なぜ、こうしたことが起こるのか?

それは、相続手続きの現場では「誰が動くのか」が非常に重要だからです。

銀行・不動産・保険・株式などの各種手続きでは、「正当な手続きを踏んだ人」でなければ、受付や名義変更ができません。

遺言執行者がいれば、それらの手続きを1人で進められます。

いなければ、相続人全員の署名・実印・印鑑証明が必要です。この差は、現場で手続きをする人にとって想像以上に大きなハードルです。

家庭裁判所への「遺言執行者選任申立」が必要になる

遺言に執行者の指定がなければ、代わりに家庭裁判所へ申立をして、執行者を選任してもらう必要があります。

これにより、選任された人物が正式に執行権限を持つことになりますが、

  • 申立には時間がかかる(通常1〜2ヶ月)
  • 書類が多く、やや複雑
  • 相続人の間で意見が割れると、申立が却下されることもある

などのデメリットがあります。

判例にも見られる執行者不在のリスク

東京地裁平成25年判決(概要)
遺言に従い不動産を単独で相続しようとしたが、執行者が指定されておらず、他の相続人が反対。裁判所は「法的に執行者の指定がない以上、相続人全員の合意が必要」として、名義変更を却下。

このように、執行者の指定がないだけで、遺言通りに手続きができなくなる例が実際に存在します。

結論:遺言執行者は「絶対に必要」と言える存在

状況遺言執行者がいない場合遺言執行者がいる場合
手続きの流れ相続人全員の合意・実印が必要執行者1人で実行可能
トラブルのリスク高い(対立・遅延)低い(中立的に進行)
スピード感遅い(申立や協議が必要)早い(すぐ着手できる)

そして。。

遺言を作成する段階で、遺言執行者を指定しておけば、こうした事態は最初から回避できます。

次のセクションでは、実際に遺言執行者がいない場合に家庭裁判所へ申立する手続きの流れを、必要書類・注意点と共に詳しく解説します。

遺言執行者選任の申立手続き|やることリスト&必要書類

「遺言執行者を指定すれば良かったけど、もう亡くなってしまった…」

でも大丈夫。家庭裁判所への申立によって、遺言執行者を正式に選任する方法があります。

遺言に執行者が指定されていなかった場合でも、手遅れということはありません。

民法第1010条・1011条に基づき、相続人または利害関係人の申立によって、家庭裁判所が遺言執行者を選任することが可能です。

(遺言執行者の選任)
第1010条 遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。
(相続財産の目録の作成)
第1011条 遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。
2 遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立会いをもって相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを作成させなければならない。

民法

ここでは、その申立の具体的な流れ・必要書類・注意点を、わかりやすく整理していきます。

申立できるのは誰?

民法第1010条では、相続人または利害関係人が家庭裁判所に対して、遺言執行者の選任を求めることができるとされています。

  • 相続人:法定相続人(配偶者、子、親、兄弟姉妹など)
  • 利害関係人:遺贈を受けた人、認知されるべき子、債権者など

手続きの全体フロー(家庭裁判所)

家庭裁判所に申立書提出
裁判所から照会書が届く(確認事項)
必要があれば補足資料の提出
裁判所での審理(書面/口頭)
「遺言執行者選任審判書」が交付される
遺言執行者が選任され、法的権限を得る

通常、1〜2ヶ月で審判が出ることが多いですが、内容や混雑状況により前後します。

必要書類一覧(2025年現在の代表例)

書類名備考
遺言執行者選任申立書家庭裁判所所定の様式あり
遺言書の原本自筆または公正証書遺言の写しでも可
被相続人の戸籍(出生〜死亡)相続人確定のため必要(連続したもの)
相続人全員の戸籍謄本関係性確認用
申立人の住民票執行者候補者が申立人の場合は両方必要
財産目録簡易的で可、主な資産内容を記載
その他:印鑑、証明書など裁判所から指示される場合あり

※家庭裁判所によって微妙に異なることがあるため、事前確認を推奨します。

申立書の記載ポイント

  • 執行者として希望する人物がいる場合、その理由や関係性を書く
     → 第三者(行政書士、司法書士など)が執行人に就任可能
  • 相続人同士の関係や状況も簡潔に説明
     → 「意見が対立している」「高齢で対応が難しい相続人がいる」などの情報が参考にされます

よくある注意点・つまずきやすいポイント

注意点内容
相続人の範囲が不明確戸籍が抜けていると手続きが止まる
財産目録が不完全銀行・不動産・有価証券などを正確に記載
執行者候補が不適格利害関係が強すぎると却下されることも
相続人同士の意見が割れる裁判所が「選任不可」と判断する可能性もある

補足:遺言の検認が必要なケース

遺言が自筆証書遺言で未検認の場合、申立前に家庭裁判所で「遺言書の検認手続き」が必要です。(民法第1004条)

(遺言書の検認)
第千四条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

民法

Point:手続きをスムーズに進めるコツ

  • 専門家に書類の確認や取得代行を依頼する
  • 戸籍や財産目録は正確に、漏れなく揃える
  • 執行者候補が中立的な立場であることを示すと有利

ここまでのまとめ

  • 遺言執行者がいなければ、家庭裁判所に申立を行うことで「選任審判」を受けられる
  • 手続きには戸籍や遺言書、財産目録などが必要
  • 書類不備や相続人間の対立があると、選任が難航する可能性もある

行政書士・弁護士・司法書士の違いと選び方|遺言執行者選任・相続手続きにおける適切な相談先とは?

「専門家に頼みたいけど、誰に頼めばいいのかわからない…」

行政書士?弁護士?司法書士?違いがわからないまま、時間だけが過ぎていく。

遺言や相続の問題に直面したとき、多くの人が最初につまずくのが、「どの専門家に相談すればいいのか」という点です。

それぞれの士業には得意分野と法的な制限があり、間違った依頼先を選ぶと、対応してもらえない or 無駄な時間・費用がかかることもあります。

ここでは、行政書士・弁護士・司法書士の違いを、遺言執行者の選任・相続手続きの文脈で徹底比較していきます。

遺言・相続分野における3士業の役割比較表

項目行政書士弁護士司法書士
戸籍・財産目録の作成△(原則不可、作成した資料の使い道によっては対応可能)
遺言書(自筆/公正)の作成支援
遺言執行者の指定文案の作成△(原則可能、作成した資料の使い道によっては対応不可)△(原則不可、作成した資料の使い道によっては対応可能)
家庭裁判所への書類作成支援
家庭裁判所への代理申立❌(一部例外あり)
相続人間の代理交渉・紛争解決
遺言執行者として選任される◯(第三者として可)◎(代理人含む)◯(登記処理中心)
遺産分割協議書の作成
不動産の相続登記△(代理は不可)◎(司法書士の独占業務)

行政書士にできること

行政書士は、手続きのプロとして、遺言や相続に関する文書作成・資料取得のスペシャリストです。

特に、相続争いがないケースや、申立の書類を正確に整える必要がある場面では、大きな力を発揮します。

✅ 行政書士に依頼できる主な内容

  • 遺言書の原案作成(特に公正証書遺言)
  • 戸籍・住民票・固定資産評価証明書などの取得
  • 相続関係説明図や財産目録、遺産分割協議書の作成
  • 第三者として、執行者に指名されることも可能(※家庭裁判所の判断による)

注意:行政書士は、裁判所への代理申立や、相続人間の交渉、出廷代理は一切できません。
相続人間に対立がある場合や、代理人として法的手続きを任せたい場合は弁護士が必要です。

弁護士にできること

弁護士は、法的代理人として、交渉・調停・訴訟など争いを解決する専門家です。

相続人の間で争いが発生している、またはその可能性が高い場合は、必ず弁護士に相談すべきです。

✅ 弁護士が必要な場面

  • 相続人同士で争いが発生している
  • 一部の相続人が協力しない
  • 相手から内容証明が届いた/訴訟リスクがある
  • 遺産分割協議がまとまらない
  • 相続放棄や限定承認などを検討している

弁護士は、遺言執行者として選任された場合も、代理人として相続手続きを全面的に代行可能です。

司法書士にできること

司法書士は、登記の専門家です。相続登記や不動産名義変更の手続きにおいて、強みを発揮します。
また、家庭裁判所提出書類の作成も可能(ただし、代理提出は不可)。

✅ 司法書士の主な業務

  • 不動産の相続登記(法務局への申請)
  • 法定相続情報一覧図の作成(相続段階のみ、遺言作成時は不可)
  • 相続人の調査・戸籍収集(相続段階のみ、遺言作成時は不可)
  • 家庭裁判所向けの書類作成支援(例:相続放棄など)

争いのある相続や、裁判所への代理申立、交渉代理は不可。

相談先に迷ったら?|判断の目安

状況選ぶべき専門家
相続人同士が仲が良く、手続きを進めたい行政書士(遺産分割協議書作成) or 司法書士(相続登記)
不動産の登記がある行政書士(遺産分割協議書作成)→司法書士(相続登記、不動産名義変更)の連携がおすすめ
争いがある or 可能性がある弁護士に一択で相談
書類の準備が面倒・不安行政書士(手続き丸投げOK)
遺言をこれから作りたい行政書士(設計段階からサポート)

まとめ

  • 行政書士:争いがない前提で、書類や準備をまるっと頼める存在
  • 弁護士:法的争い・交渉が発生したときの唯一の代理人
  • 司法書士:相続登記のスペシャリスト

次のセクションでは、実際に家庭裁判所で執行者が選任され、相続がスムーズに動いた事例を紹介します。

実録エピソード|執行者を選任して相続が動いたA家の話

「こんなに揉めるなんて思ってなかった。遺言はちゃんとあったのに…」

Aさんの家族は、遺言執行者がいなかったことで、相続手続きが何ヶ月も止まってしまった。

Aさんは3人きょうだいの長男、数年前に父が亡くなり、遺言書も残されていました。そこには、「自宅は長男に相続させる」と明記されていましたが、遺言執行者の記載がなかったのです。

一見すんなりいくかと思われた相続。ところが、兄妹の間で意見が食い違い始めました。

話が進まない理由は、実行する人がいないから

不動産の名義変更をするには、

  • 登記申請書類
  • 他の相続人全員の同意書
  • 印鑑証明書

などが必要になります。

その手続きは本来、遺言執行者が単独でできるはずのものですが、A家には執行者がいなかったため、すべてを相続人全員でやらなければならない状況に陥りました。

妹が「私は父の介護をしたのに不公平」と主張し始め、弟は「もう面倒だ、弁護士に任せたい」と言い出す始末。結局、何も決まらないまま3ヶ月が経過してしまいました。

家庭裁判所への申立で道が開けた

「このままでは埒が明かない」と判断したAさんは、行政書士に相談しました。

書類の準備や相続関係説明図の作成を依頼し、行政書士の助言のもと、家庭裁判所に遺言執行者選任の申立を実行。

執行者には、相続人以外の第三者(行政書士が推薦した司法書士)が指定され、1ヶ月後、正式に家庭裁判所から「遺言執行者選任審判書」が交付されました。

遺言執行者が決まったあとの変化

  • 相続登記 → 執行者が単独で法務局に申請
  • 銀行口座 → 執行者が解約・分配を実行
  • 相続人間のやり取り → すべて執行者が中立に調整

妹も弟も、「もう任せよう」と自然に納得し、家族内のわだかまりも最小限で済みました。

💬Aさんのコメント

「もし遺言に執行者が書いてあったら、もっと早く終わってたと思う。
でも、行政書士に相談して申立したことで、遅れを最小限に抑えられた。本当に助かった。」

このエピソードから学べること

学び解説
遺言執行者がいないと、相続手続きが事実上ストップする登記・解約・分配、全てに支障が出る
相続人間の感情トラブルに発展しやすい「本当にこれでいいのか?」と疑心暗鬼に
家庭裁判所の申立でリカバリー可能書類・手順を押さえれば選任される
専門家(行政書士など)を間に入れるとスムーズ感情的な対立を回避しやすい

次のセクションでは、実際に多く寄せられる「遺言執行者選任」や「申立」に関する質問と不安をQ&A形式で整理します!

よくある質問と不安Q&A|遺言執行者の選任・申立に関する疑問を一挙解決

「手続きを進めたいけど、これって大丈夫?」

遺言執行者のこと、家庭裁判所への申立のこと、制度の説明だけではカバーしきれない素朴な疑問や不安がたくさんあります。

ここでは、実際に相談現場でよく聞かれる質問をQ&A形式でまとめました。

あなたと同じように悩んでいる人が、きっといるはずです。

Q1:遺言執行者は誰でもなれるの?

A:基本的には、相続人・親族・専門家(行政書士・弁護士・司法書士)など、誰でも可能です。

ただし、以下に該当する人はなれません(民法第1009条)。

  • 未成年者
  • 破産者(復権していない者)

また、相続人の中でも「他の相続人と強い対立関係にある人」が執行者に選ばれると、トラブルを悪化させる場合があります。

このようなケースでは、中立的な第三者の専門家を選任することが望ましいとされています。

Q2:遺言執行者は複数指定してもいい?

A:はい、複数人でもOKです(民法第1011条)。

ただし、共同で手続きを行う必要があるため、かえって複雑になる可能性もあります。

例えば、

  • 司法書士と相続人のダブル体制
  • 兄弟2人で執行者になる

といった例もありますが、単独指定の方が手続きはスムーズです。

Q3:選任申立は自分でできる?代理人が必要?

A:原則として、申立はご本人が行います。

ただし、書類作成や準備は行政書士などに依頼可能です。代理で申立や出廷ができるのは、弁護士だけです。

裁判所とのやり取り(照会書の返答など)も、基本的には申立人本人が対応しますが、書類の内容や準備については専門家のサポートを受けることで、大幅に負担を減らすことができます。

Q4:遺言執行者に報酬は支払う必要があるの?

A:法的には「報酬を受け取ることができる」とされています(民法第1010条)。

遺言書に報酬額が記載されていれば、それが基準になりますが、記載がない場合は「相続財産の中から相当額を受け取ることができる」というのが原則です。

相場としては数万円〜20万円程度、専門職(弁護士・司法書士など)に依頼した場合は、数十万円規模の報酬契約になることもあります。

Q5:家庭裁判所に申し立てれば、必ず選任されるの?

A:いいえ、必ずではありません。

以下のようなケースでは、裁判所が選任を拒否することもあります。

  • 相続人同士の対立が激しく、調整が困難
  • 執行者候補に信頼性が欠ける
  • 財産や遺言の内容があいまい/不明確
  • 申立書の記載や添付書類に不備がある

こうした事態を防ぐためにも、申立書の文案は慎重に作成し、必要書類を完備することが非常に重要です。

Q6:すでに家庭裁判所で選任された執行者が辞任することはできる?

A:はい、可能です。

民法第1010条の規定により、遺言執行者は「正当な理由があるとき」に限って辞任できます。

辞任には、家庭裁判所の許可が必要です。また、辞任後には、新たな執行者の再選任申立が必要になることがあります。

Q7:そもそも、遺言に最初から執行者を指定しておけばよかったのでは?

A:そのとおりです!

実際、ここまで読まれて「最初から遺言に書いておけば良かった」と思われた方も多いはず。遺言を作成する段階で執行者を明記しておけば、申立手続きは不要になります。

しかも、行政書士などの専門家に依頼すれば、遺言書の中に法的に有効な形で「執行者の指定文言」を入れてもらうことができます。

困ったら、まずは専門家に相談を

  • 書類が多すぎて自信がない
  • 家族の関係が微妙で不安
  • 自分が執行者になるのが適切か迷っている

こうした悩みを一人で抱えず、行政書士・弁護士・司法書士のうち、状況に応じて最適な専門家に相談するのが正解です。

次のセクションでは、これまでのポイントを整理した総まとめと、「遺言執行者を今どう考えるべきか」についてお伝えします。

まとめ|遺言執行者を選任するという家族を守る行動

「遺言執行者がいなかったから、相続の手続きが止まった」

それは珍しい話ではありません。むしろ、とても多くの家庭が同じような問題に直面しています。

この記事を通して、あなたが知ったことは決して知識だけではありません。

それは、家族が将来困らないようにするために「今できる行動」があるということです。

改めて、この記事で伝えたかったポイントを整理します

遺言執行者とは?

  • 遺言内容を実現する実行責任者
  • 執行者がいれば、不動産・預貯金・株式などの名義変更を単独で進められる
  • 執行者がいないと、相続人全員の同意が必要=話が進まなくなることがある

執行者がいない場合はどうする?

  • 家庭裁判所に「遺言執行者選任の申立」を行えばOK
  • 必要書類を整えれば、誰でも申立可能(相続人 or 利害関係人)
  • 書類作成は行政書士などにサポートしてもらえる

行政書士・弁護士・司法書士、誰に頼るべき?

  • 行政書士:書類の整備・手続きの準備のプロ(争いがないケースに強い)
  • 弁護士:相続争い・調停・代理交渉など「争いがあるとき」に必須
  • 司法書士:相続登記・法務局手続きのプロフェッショナル

そして何より大事なこと

遺言を作るときに、最初から「遺言執行者」を指定しておけば、申立すら不要です。
これは、未来の相続手続きを驚くほどスムーズにする事前の備えです。

最後に:あなたが今、できること

「まだ親は元気だから」「うちは仲がいいから揉めない」

そう思っている方こそ、一歩先を考えてみてください。

  • 遺言を作るなら、執行者を明記する
  • 遺言があるけど執行者がいないなら、申立を検討する
  • 手続きが不安なら、専門家に相談する

こうした選択が、

  • 家族を争いから守る
  • 相続の混乱を未然に防ぐ
  • あなた自身の精神的な負担を軽くする

そんな「やさしい行動」につながります。

遺言執行者の指定や申立は、家族の未来を守るリスクマネジメントです。

この記事が、あなたとあなたの大切な人たちにとって、確かな一歩のきっかけとなりますように。