人生の最期を迎える前に、自身の財産をどのように分配するかを明確にしておくことは、残された家族のためにも重要です。その手段の一つとして「遺言信託」があります。本記事では、遺言信託の基本的な仕組みやメリット・デメリット、手続きの流れ、そして利用時の注意点について詳しく解説します。
目次
1. はじめに|なぜ今、遺言信託が注目されているのか?
「相続」の問題は、誰にとっても避けて通れない人生のテーマです。特に近年では、高齢化社会の進展により、「遺産をどのように残すか」「家族にどんな形で財産を託すか」がより一層重要視されるようになってきました。
そんな中で、今注目されているのが「遺言信託」という仕組みです。
遺言信託とは、信託銀行などの専門機関に依頼して、自分の死後に遺産を適切に管理・分配してもらう制度。あらかじめ遺言内容を専門家と一緒に整理し、死後にその内容が確実に実行されるように準備できる点が大きな特長です。
これまで「遺言」といえば、自筆で書いたり、公正証書で残したりするのが一般的でしたが、近年では「より安心・確実に遺志を残したい」「家族間のトラブルを防ぎたい」というニーズが高まる中、信託銀行による遺言信託が選ばれるケースが増えています。
特に、ある程度の資産を保有している方にとっては、相続税の対策や遺産分割のトラブル防止という意味でも非常に有効な選択肢となります。
本記事では、そんな「遺言信託」について、
- 基本的な仕組み
- メリット・デメリット
- 他の相続手段との違い
- 実際のトラブル事例や活用のポイント
などを、できる限りわかりやすく、丁寧に解説していきます。
「遺言信託って聞いたことあるけど、よくわからない」
「うちもそろそろ考えた方がいいのかな?」
そんな疑問や不安をお持ちの方に向けて、この記事が正しい判断の一助になれば幸いです。
「遺言信託」とは信託銀行等が提供しているサービスのカテゴリ名です。法的に「遺言信託」という言葉は存在しません。
2. 遺言信託とは?仕組みと役割をわかりやすく解説
◾️ 遺言信託とは?
「遺言信託」とは、本人が生前に信託銀行などの金融機関と契約を結び、自分の死後に遺産の分配や手続きなどを確実に実行してもらう制度です。
この仕組みのポイントは、ただ「遺言を書く」だけではなく、その内容を実際に実行してもらえる体制まで整えておけるという点にあります。
基本の登場人物:信託の三者関係
遺言信託では、次の3者が登場します。
役割 | 説明 |
---|---|
委託者 | 信託契約を結ぶ人(=財産を持っている本人) |
受託者 | 信託の実行を担う人(=通常は信託銀行など) |
受益者 | 財産を受け取る人(=相続人や特定の第三者など) |
このように、「信託」という契約を通じて、財産の受け渡しや管理がスムーズに行えるようになります。
遺言と遺言信託の違いは?
項目 | 遺言書(自筆・公正証書) | 遺言信託 |
---|---|---|
実行者の有無 | 自力で執行人を選定する必要がある | 信託銀行が執行まで行う |
手続きの煩雑さ | 相続人や執行人が手続きを行う | 専門機関が代行する |
トラブル防止効果 | 内容によって差が大きい | 専門的な管理でトラブルを抑制可能 |
主な利用対象者 | すべての相続対象者 | 一定以上の資産がある人が多い |
遺言書だけでは、実際に相続を執行する段階で手間やトラブルが生じるケースも少なくありません。一方、遺言信託は遺言内容の作成から執行まで一貫してサポートしてくれるのが特徴です。
「信託銀行が行う遺言信託」と「民事信託(家族信託)」の違い
種類 | 主な実施者 | 目的 | 対象 |
---|---|---|---|
遺言信託 | 信託銀行 | 死後の財産分配・執行 | 死後限定 |
民事信託(家族信託) | 家族や親族 | 生前からの財産管理・活用 | 生前〜死後 |
遺言信託=死後に備える制度であるのに対し、民事信託(家族信託)は生前から管理する制度です。両者の違いを正しく理解した上で、自分に合った方法を選ぶことが大切です。
ポイントまとめ
- 遺言信託は、「遺言を残す」+「それを確実に実行してもらう」ための制度
- 信託銀行が執行までサポートするため、専門知識がなくても安心して利用できる
- 他の方法(自筆・公正証書)より手間が少なく、トラブルも起こりにくい
3. 遺言信託のメリット・デメリット
「遺言信託って便利そうだけど、本当に必要?」「他の方法とどう違うの?」と迷う方は少なくありません。
ここでは、遺言信託を導入する前に必ず知っておくべきメリットとデメリットを、わかりやすく整理します。
遺言信託のメリット
① 専門家による確実な執行で安心
信託銀行が遺言の内容を確実に実行してくれるため、「内容は作ったけど、相続人がうまく手続きできない。」という不安がありません。
煩雑な相続手続きや不動産の名義変更、税務対応までをプロが代行してくれるため、相続人の負担も大幅に軽減されます。
② トラブル防止につながる
遺言書だけだと、「兄弟間で解釈が違う」「書き方が曖昧で争いに発展」などのケースがあります。
遺言信託は、法的に有効な内容を専門家と一緒に作成し、確実に実行されるため、相続人同士のトラブルを未然に防ぐ効果が大きいです。
③ 遺産の分配だけでなく、納税資金・生活費の配慮も可能
信託契約の設計次第では、「相続税の納税資金を確保する」「配偶者の生活費を優先的に渡す」など、より柔軟な財産のコントロールができます。
これは、遺言信託ならではの大きな強みです。
④ 高齢になっても自分の意思を実現できる
遺言信託は、一度契約を結んでおけば、認知症や意思表示が困難になった後も、遺言の執行が担保されます。将来のリスクに備えたい方にとっては、安心できる制度です。
遺言信託のデメリット
① 費用がかかる(初期費用・管理料・執行報酬)
信託銀行によって異なりますが、契約時の初期費用(10〜30万円)+財産に応じた管理手数料・執行報酬がかかります。
シンプルな遺言書と比べると、コスト面ではやや負担が大きいのが現実です。
② 柔軟な変更がしにくい場合もある
一度契約した内容を変更したい場合、信託銀行の手続きが必要であったり、別途費用がかかる場合があります。
ライフステージの変化に応じて、見直しやすさを重視する人には不向きなケースもあります。
③ 銀行によってサービスの質や対応に差がある
一口に「信託銀行」と言っても、サービスの充実度や担当者の知識に差があるのが実情です。
「契約したはいいけど、思ったようなサポートが受けられなかった」というケースもあるため、銀行選びは慎重に行う必要があります。
メリット・デメリットを比較表でまとめ
項目 | メリット | デメリット |
---|---|---|
実行の確実性 | 専門家が責任を持って実行 | 柔軟な変更には制限があることも |
トラブル回避 | 法的に有効な内容を作成し、家族間の争いを予防 | 銀行によってサービスに差がある |
相続人の負担軽減 | 手続きを代行してもらえる | コストが高め(10万円以上の初期費用+報酬) |
柔軟性・自由度 | 財産の渡し方を細かく設計できる | 途中変更に手間がかかることがある |
将来への備え(認知症など) | 意思が伝えられなくなっても執行される | – |

判断のポイント
遺言信託は、「費用を払ってでも安心と確実性を得たい」と考える方には非常に有効な選択肢です。
一方で、シンプルな家族構成・相続内容であれば、自筆や公正証書遺言でも十分なケースもあります。
4. 他の相続対策と比較:遺言信託・自筆証書・公正証書・家族信託の違い
相続対策にはさまざまな方法がありますが、「結局、遺言信託って他の手段とどう違うの?」という疑問を持つ方は多いです。
このセクションでは、遺言信託/自筆証書遺言/公正証書遺言/家族信託の4つの主要な選択肢をわかりやすく比較し、それぞれのメリット・デメリット、向いている人を解説します。
各相続対策の特徴
手段 | 概要 | 向いている人 |
---|---|---|
自筆証書遺言 | 自分で全文を書いて作成する遺言。費用はかからないが、形式ミスに注意が必要。 | 手軽に始めたい/費用を抑えたい人 |
公正証書遺言 | 公証役場で公証人に作成してもらう遺言。法的に安全だが、公証人手数料が必要。 | 内容を確実に残したい人 |
遺言信託 | 信託銀行と契約し、遺言の作成〜執行までを一括でサポートしてもらう仕組み。 | 資産が多い/確実性を重視する人 |
家族信託(民事信託) | 生前から財産管理を任せられる信託契約。高齢・認知症対策にも活用されている。 | 生前から管理を任せたい人 |
比較表:遺言信託と他の相続手段
項目/手段 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 遺言信託 | 家族信託(民事信託) |
---|---|---|---|---|
費用 | ほぼ無料 | 数万円 | 10〜30万円+管理費等 | 数万円〜(司法書士等の関与あり) |
法的有効性 | 形式不備のリスクあり | 公証人が確認し安心 | 信託銀行が関与し安心 | 契約書内容による |
実行の確実性 | 執行人が必要 | 執行しやすい | 信託銀行が確実に実行 | 契約者(家族)次第 |
柔軟性・自由度 | 高い | 高い | 契約後の変更に制約あり | 設計次第で高い |
生前の財産管理 | × | × | × | ○(認知症対策にも対応) |
トラブル防止効果 | △(記載次第) | ○ | ◎ | ○(契約内容により) |
それぞれの手段のポイント
🔹 自筆証書遺言
- メリット:手軽で費用がかからない
- デメリット:書き方を間違えると無効になる恐れあり
- 補足:2020年から法務局での保管制度がスタートし、少し安心感が増した
🔹 公正証書遺言
- メリット:公証人が作成するため形式的なミスが少ない
- デメリット:作成費用と手続きの手間がかかる
🔹 遺言信託
- メリット:死後の執行まで信託銀行に任せられる
- デメリット:費用が高く、内容変更には再契約が必要なことも
🔹 家族信託(民事信託)
- メリット:認知症や身体の衰えに備えて、生前から財産管理が可能
- デメリット:契約設計がやや複雑で、専門家のサポートが必要なケースが多い
どれを選べばいい?判断基準のヒント
- 財産が多い・相続で揉めそう → 遺言信託 or 公正証書遺言
- 子や配偶者に負担をかけたくない → 遺言信託
- 手軽に始めたい → 自筆証書遺言+法務局保管
- 認知症など将来の不安がある → 家族信託
それぞれの手段には適した状況があります。大切なのは、自分の財産状況・家族関係・将来の不安に合わせて選ぶことです。
5. 遺言信託はどんな人に向いている?
「遺言信託が便利そうなのはわかったけど、自分にも必要?」そう思われる方も多いはずです。
ここでは、実際に遺言信託を選ぶべきかどうかを判断するための具体的な条件やチェックポイントを整理しました。
向いているのはこんな人
一定以上の財産を保有している人(目安:3,000万円以上)
遺言信託は手数料が発生するため、財産の総額がある程度ある方に適しています。
たとえば、以下のような財産がある方は検討の価値があります。
- 複数の不動産
- 株式や投資信託などの有価証券
- 預貯金が数千万円以上
金額だけでなく、「財産の種類が多岐にわたる」「相続人が複数いる」という場合も、専門家の管理があることでトラブル防止につながります。
相続人同士のトラブルを避けたい人
「兄弟間の仲が良くない」「再婚で家族構成が複雑」など、感情的な対立が起きそうな家庭状況の方には、遺言信託が大きな安心材料になります。
- 第1子と後妻の間に不安がある
- 特定の相続人に多く遺したい事情がある
こういったケースでは、信託銀行を通じて中立的に遺言が実行されることが、何よりも重要になります。
相続手続きを家族に任せたくない人
死亡後の手続きは、想像以上に煩雑でストレスのかかる作業です。
遺言信託を使えば、信託銀行が煩雑な名義変更や相続税申告、資産分配まで一貫して対応してくれるため、家族の負担を大きく減らせます。
特に、
- 子どもが遠方に住んでいる
- 子どもに法律や税の知識がない
- 相続人が高齢で体力的に不安
…という場合には、信託銀行の専門的なサポートが心強い味方になります。
「最期まで自分の意志を反映させたい」と思っている人
「亡くなったあとも、自分の意思通りにお金が動くようにしたい」
このような考えを持つ方には、遺言信託が非常にフィットします。
- 孫の進学費用に充てたい
- 家族に特定の形で遺産を分けたい
- 自分の葬儀や法要の方法も指定したい
遺言信託では、これらの希望を実行力のある形で残せるのが大きな強みです。
こんな人は別の手段でもよいかも?
逆に、以下のような方は、必ずしも遺言信託でなくても問題ない場合があります。
- 財産がシンプル(例:預金のみで総額1,000万円未満)
- 相続人が1人しかいない
- 家族関係が非常に良好で争いの可能性が低い
こうした場合は、公正証書遺言や自筆証書遺言でも十分対応可能です。
費用対効果を考えながら、必要な選択をすることが大切です。
自分に向いているかチェックリスト
以下に当てはまる項目が多い方は、遺言信託の検討をおすすめします。
- 財産総額が3,000万円以上ある
- 不動産や株式など、管理の難しい資産を保有している
- 相続人が複数いて、分け方に配慮が必要
- 家族関係に緊張感や不安要素がある
- 子どもに面倒な手続きをさせたくない
- 最後まで自分の意思をきちんと実現したい
6. 信託銀行を利用する流れと注意点
遺言信託を検討する際に、「実際にどうやって始めればいいの?」「信託銀行って何をしてくれるの?」という疑問を持つ方は多いです。
このセクションでは、信託銀行を利用する際の具体的な流れと注意すべきポイントをわかりやすく解説します。
遺言信託を利用する流れ(5ステップ)
まずは信託銀行の窓口に連絡し、遺言信託についての相談を予約します。
多くの信託銀行では初回相談は無料で、専門の相続アドバイザーや信託担当者が対応してくれます。
面談では、次のような情報をもとに遺言信託の設計方針が決まります:
- 財産の種類と金額(不動産、預金、証券など)
- 相続人の人数や関係性
- 特別に配慮したい希望(障がいのある子ども、離婚歴がある など)
この段階で、「そもそも遺言信託が適しているかどうか」も含めてアドバイスを受けられます。
遺言信託を利用する場合は、信託銀行と正式に契約を結びます。
内容の作成は、公正証書遺言として公証人の関与のもと行うのが一般的で、法的な有効性と安全性が高まります。
- 作成される書類には、以下のような内容が含まれます:
- 財産の配分
- 執行スケジュール
- 付言事項(メッセージなど)
完成した遺言書は、信託銀行で安全に保管されます(紙面とデータの両方で管理する銀行も)。
契約後に希望が変わった場合は、再契約や内容変更も可能ですが、追加の費用がかかることもあります。
契約者が亡くなった後、信託銀行が遺言書を開示し、内容に従って財産を分配します。
この際、必要に応じて以下の手続きも代行されます。
- 不動産の名義変更
- 預金の払い戻し・分配
- 相続税申告のサポート(※一部外部の税理士と連携)
信託銀行を選ぶときのチェックポイント
すべての信託銀行が同じサービス品質とは限りません。選ぶ際は以下の点を比較しましょう。
比較項目 | チェックポイント例 |
---|---|
費用体系 | 初期費用・管理料・執行報酬の内訳が明確か |
担当者の対応力 | 相続の知識が豊富か/説明が丁寧か/信頼できるか |
サービスの柔軟性 | 途中変更が可能か/契約後の対応に柔軟さがあるか |
他の専門家との連携体制 | 税理士・司法書士との連携がスムーズか/紹介制度があるか |
実績・口コミ | 実際の利用者の声や事例紹介が充実しているか |
複数の信託銀行を比較し、信頼できるパートナーとして選ぶことがとても大切です。
注意点まとめ
- 契約後の変更に制約がある場合がある:初期設計は慎重に!
- 費用体系は銀行によって大きく異なる:安さだけで選ばず、サービスの中身を見て判断
- 担当者との相性も重要:相続は「感情」の問題も多いため、信頼できる担当者選びが鍵
遺言信託と遺言の違い
項目 | 遺言信託 | 遺言 |
作成サポート | 信託銀行がサポート | 自分で作成または行政書士や弁護士に依頼 |
保管 | 信託銀行が保管 | 自宅保管、法務局、または公証役場 |
遺言執行者 | 信託銀行が執行者 | 自分で指定(家族・行政書士・弁護士など) |
費用 | 高め(数十万円~) | 自筆ならほぼ無料、公正証書で数万円~ |
トラブル防止 | テキスト第三者の介入で防止しやすい | 相続人に任される |

7. トラブル事例とその回避策
遺言信託は安心・確実な相続手段として人気ですが、使い方を間違えるとトラブルに発展することもあります。
ここでは、実際にあったトラブル事例を紹介しつつ、どうすればそれを防げるのか=回避策を具体的に解説します。
事例①:財産の分配に不満が出て揉めたケース
【状況】
ある高齢男性が、長男に多くの財産を残す遺言信託を契約。しかし、他の兄弟には相談していなかったため、死亡後に「なぜ自分たちはもらえないのか」と不満が噴出し、法的な争いに発展。
【問題点】
- 家族とのコミュニケーション不足
- 付言事項(気持ちや理由)を記載していなかった
【回避策】
- 遺言内容に関して、家族に事前に意図を説明しておく
- 「なぜこのように分けたのか」を付言事項に記載して、思いを伝える
事例②:信託銀行との契約内容を十分に理解していなかった
【状況】
ある利用者が遺言信託を契約したが、「途中で変更できる」と思っていた部分が契約上できず、不満が残った。最終的には別の信託銀行に再契約することに。
【問題点】
- 契約書の確認不足
- 担当者に任せきりで、詳細を理解していなかった
【回避策】
- 契約時には「変更可能な項目」と「変更不可な項目」を明確に確認
- 不明点は担当者に遠慮せず質問する姿勢を持つ
- 必要であれば第三者(弁護士・家族)に同席してもらう
事例③:信託銀行の対応に不満があった
【状況】
死亡後、遺族が信託銀行に連絡したところ、担当者の異動で対応がスムーズに進まず、「財産の分配に時間がかかって困った」との声が上がった。
【問題点】
- 担当者との情報共有体制が弱い
- 銀行側のサポート体制にばらつきがある
【回避策】
- 契約時に、「死後の連絡・実行体制がどうなっているか」を確認する
- 組織としてのサポート体制が明確な銀行を選ぶ(実績やレビューも参考に)
トラブルを避けるために今できる3つのこと
① 家族と事前にしっかり話し合う
「知らせない方がいいかも」と思っても、遺言の内容が家族に与える影響は大きいです。将来のトラブルを避けるには、事前の対話や説明が効果的です。
② 複数の信託銀行を比較検討する
銀行ごとにサービス・費用・対応力が違います。1社だけで即決せず、複数の候補から比較検討する姿勢が、満足度の高い契約につながります。
③ 契約内容を丁寧に確認する
特に「変更できる部分」「できない部分」「追加費用がかかるタイミング」などは、必ず明確に理解しておくべきポイントです。難しい場合は、専門家に相談を。
補足:相続は「制度の理解」以上に「人間関係の理解」が大切
遺言信託はあくまで「制度」です。しかし、それを使うのは感情のある家族です。
制度面だけでなく、人間関係への配慮や誠実な説明が、結果的に円満な相続への近道になります。
8. よくある質問(Q&A)
遺言信託を検討している方からよく寄せられる疑問や不安について、実際の相談現場でよくある質問をQ&A形式でわかりやすくまとめました。
不安や誤解を解消するためにも、ぜひ目を通してみてください。
Q1:遺言信託は途中で変更できますか?
はい、変更は可能ですが、制限があります。
契約内容や信託銀行のルールによって異なりますが、遺言の内容を変更したい場合は再契約が必要になることもあります。
費用がかかったり、一定の手続きを要するため、契約時に「変更が柔軟にできるか」はしっかり確認しておくと安心です。
Q2:相続人に黙って遺言信託を使っても大丈夫ですか?
法的には問題ありませんが、注意が必要です。
遺言信託は本人と信託銀行の契約なので、家族に事前通知する義務はありません。
ただし、内容によっては相続人が納得できずトラブルになる可能性もあります。「なぜこの内容なのか」を付言事項などで丁寧に残す工夫が大切です。
Q3:信託銀行が倒産したらどうなるの?
原則として、預けた財産は守られます。
信託銀行が倒産しても、信託された財産は「信託財産」として分別管理されているため、銀行の経営破綻とは別扱いになります。
ただし、手続きが遅れる可能性があるため、経営基盤の安定した信託銀行を選ぶことが重要です。
Q4:信託銀行と公証人、どちらが遺言を作成するの?
内容の作成は信託銀行の担当者、公証人はその内容を公正証書化する役割です。
実務上は、信託銀行の担当者と相談しながら遺言内容を決め、その後、公証人の立ち会いのもと「公正証書遺言」として正式に作成する形になります。
Q5:遺言信託は相続税の対策になりますか?
基本的には直接的な節税効果はありません。
遺言信託は、相続税の申告や納税をスムーズに行うサポートにはなりますが、節税そのものを目的とした仕組みではありません。
ただし、納税資金を確保したり、遺産分割を円滑にして二次相続対策に貢献することは可能です。
Q6:遺言信託と家族信託、両方使うのはアリ?
状況に応じて併用するケースもあります。
たとえば、生前の財産管理に家族信託、死後の分配に遺言信託というように、目的を分けて併用することは可能です。
ただし設計が複雑になるため、専門家(弁護士・司法書士・税理士など)に相談するのがベストです。
Q7:信託銀行はどこを選べばいいの?
実績・費用・担当者の対応を比較しましょう。
以下のようなポイントを軸に、複数社を比較するのがおすすめです。
- 遺言信託の取り扱い実績があるか
- 手数料が明確で納得できるか
- 担当者が信頼でき、丁寧に対応してくれるか
- 相続関連の専門家との連携が取れているか
Q8:相談だけでもできるの?
もちろん可能です。多くの信託銀行では無料相談を受け付けています。
「まず話を聞いてみたい」「自分に合っているか知りたい」という段階でも、気軽に相談に行くことをおすすめします。
契約を迫られることは通常ないため、比較検討の材料として複数の銀行に話を聞くのもOKです。
Q&Aのまとめ
遺言信託には、誤解されがちなポイントや、知らないと損をする制度上の特徴があります。
だからこそ、「ちょっと聞きたいこと」があったときは、早めにプロに相談することが一番のトラブル回避策です。
まとめ:遺言信託を正しく理解して、安心できる相続準備を
「相続」と聞くと、なんとなく「いつかの話」、「誰かの話」のように感じてしまいがちです。
しかし実際には、相続の準備は「元気なうちにこそ始めるべき」といわれています。その理由は、家族を守るため、そして自分の意思をきちんと未来に残すためです。
遺言信託の魅力は「安心」と「確実性」
遺言信託は、単なる遺言の延長ではありません。
- 財産の分配に関するトラブルの防止
- 相続手続きの家族の負担軽減
- 自分の「想い」を形式だけでなく実行力ある形で残せる
こうした点で、遺言信託は非常に有効な選択肢となります。
特に、財産が一定以上ある方や、家族構成が複雑な方にとっては、心強い制度と言えるでしょう。
専門家でなくても使いこなせる、今の時代の信託制度
「難しそう」「お金持ちだけの制度では?」と思われがちですが、近年では信託銀行側のサポート体制も充実し、専門家でなくても無理なく活用できるようになっています。
- 初回相談無料
- 丁寧なヒアリングと設計サポート
- 公証人との連携による安全な遺言作成
- 死後の実行まで一貫サポート
こうした体制が整っているからこそ、「信託」という言葉に臆することなく、誰でも気軽に検討できる時代になっています。
最初の一歩は「情報収集」と「無料相談」
この記事を通じて、遺言信託に対する不安や疑問が少しでもクリアになったなら、それが最初の一歩です。
次のステップとしては、ぜひ以下のアクションを検討してみてください。
- 信託銀行の無料相談を予約してみる
- 家族に「そろそろ相続のことも考えようか」と声をかけてみる
- 現在の財産状況を書き出してみる(一覧化)
相続対策は、「遺す人の優しさ」そのものです。
遺言信託という仕組みを通じて、大切な家族との未来を、穏やかで安心できるものにしていきましょう。
最後に:こんな方に、遺言信託はおすすめです
- 財産が一定以上ある方(3,000万円以上)
- 不動産や証券など複雑な資産をお持ちの方
- 相続人が複数いて、分配が難しいと感じている方
- 家族に迷惑をかけたくない方
- 「最後まで自分の意思をしっかり反映させたい」方
あなたの「想い」と「資産」を、最良の形で引き継ぐための選択肢として、遺言信託をぜひ前向きにご検討ください。