親が生活保護を受けていたら相続はどうなる?知らないと損する制度と対処法を徹底解説

目次

はじめに

「親が生活保護を受けているけど、もし亡くなったら自分に相続ってあるの?」
「生活保護を受けながら相続することってできるの?」

こうした不安や疑問を抱える方が、いま急増しています。

かつては「生活保護と相続は無関係」と思われがちでしたが、実際には相続が発生することで生活保護の継続や制度上の義務に大きく影響することもあります。

それにも関わらず、こうした情報は断片的で、制度の専門用語も多く、一般の方が正しく理解するのは難しいのが現実です。

この記事では、以下のような状況にある方に向けて、できるだけわかりやすく、そして制度的にも正確な情報を網羅的にお届けします。

本記事が対象としている方

  • 親や家族が生活保護を受けていて、将来的に自分が相続人になる可能性がある方
  • すでに親が亡くなり、生活保護受給者だったことを知り、対応に困っている方
  • 自分自身が生活保護を受けており、相続財産が発生した/発生する予定がある方
  • 生活保護と相続の関係について、正しい理解をしたい士業や相談対応者の方

この記事でわかること

  • 生活保護と相続の基本的な関係性(扶養義務・求償・相続の影響など)
  • 親が生活保護を受けていた場合に、相続人としてどう対応すべきか
  • 自分が生活保護を受けている場合、相続によってどう生活が変わるのか
  • 相続放棄や限定承認などの具体的な手続きと注意点
  • どんなときに専門家に相談すべきか、どんな専門家が適切か

本記事は、法的な観点と、実務的な視点の両方を大切にしながら構成しています。

感情的にも複雑なテーマである「生活保護と相続」ですが、正しい知識があれば不安を減らし、適切な判断ができるようになります。

次章から、まずは「生活保護と相続の基本関係」について解説していきます。

生活保護と相続の基本知識

生活保護とは?

生活保護は、病気・失業・高齢などによって十分な生活ができない人に対して、国が最低限度の生活を保障する制度です。

厚生労働省が定める「生活保護法」に基づいて運用され、収入や資産、扶養義務者(家族など)の支援状況を審査したうえで、必要な支給が行われます。

生活保護の支給対象者は、原則として自らの収入・資産で生活できない人です。持ち家や預金、不動産などがある場合、それを「先に処分して生活費にあてる」ことが求められるのが基本です。

相続とは?

相続とは、人が亡くなった際に、その人の財産や借金などを法定相続人が引き継ぐことです。

相続の対象になるものは、プラスの財産(預金・不動産など)とマイナスの財産(借金・ローンなど)の両方です。引き継ぐか放棄するかは、相続人が判断できます。

相続には以下の3つの選択肢があります。

  1. 単純承認:すべての財産(プラスもマイナスも)をそのまま相続する
  2. 相続放棄:最初から相続しないことにする(最初から相続人ではなかった扱いになる)
  3. 限定承認:相続するけれど、負債がプラスの財産を超えたら、その範囲までしか責任を負わない

生活保護と相続が交わるとき、何が起きるのか?

親や家族が生活保護を受けていた場合でも、相続は法律上、当然に発生します。

つまり、「生活保護を受けていた=相続が発生しない」ということはなく、あくまで一般的な相続ルールが適用されます。

このとき、次のような点が問題になることがあります。

1. 生活保護の返還(求償)問題

亡くなった親が生活保護を受給していた場合、遺産があると、自治体(福祉事務所)が相続財産から生活保護費を「返してほしい」と求めることがあります。

これを「求償」といい、法律的には正当な請求とされています。

ただし、求償には条件があり、必ず返還しなければいけないわけではありません。

例えば、

  • 親の遺産がまったくない場合
  • 相続放棄をした場合

などは、基本的に返還義務は生じません。

2. 扶養義務者への圧力

生活保護制度には「扶養義務者の調査」があります。

つまり、親が生活保護を受けている場合、子どもが働いていれば、「援助できませんか?」と役所から連絡がくることがあります。

ただし、これはあくまで任意の協力依頼であり、法的な強制力はありません。

この「扶養調査」と「相続」とは制度的に別ですが、相続発生時には両者が同時に意識されることもあります。

3. 自分が生活保護を受けている場合の相続の影響

反対に、読者自身が生活保護を受けている立場で相続が発生する場合、受け取った遺産が「収入」として扱われるため、保護の打ち切りや一時停止につながることもあります。

この場合、「一時的に自立できるなら保護終了」となることもありますが、それを理由に相続を故意に放棄すると「不正受給」とみなされる可能性もあります。

相続と生活保護は、それぞれが独立した制度ですが、重なった瞬間に「判断を誤ると大きなトラブルになる」というのが最大のポイントです。

次章からは、より具体的に「ケース別のシナリオ(親が受給者・自分が受給者)」に分けて解説していきます。

ケーススタディ① 親が生活保護を受けていて、自分が相続する立場

親が生活保護を受けていた場合、自分に相続は発生する?

答えは 「はい。発生します」。

生活保護を受けていたかどうかにかかわらず、親が亡くなれば法定相続人(通常は子ども)には相続の権利と義務が発生します。

「生活保護を受けていたから相続できない」と思っている人は多いですが、それは誤解です。

ただし、相続するかどうかを選択する自由はあります。相続は「自動的に受け取るもの」ではなく、選択と手続きが必要な行為です。

相続放棄すべき?選択肢を整理しよう

相続には3つの選択肢があります(再掲)。

  1. 単純承認
     → 財産も負債もすべて引き継ぐ
  2. 相続放棄
     → 最初から相続人でなかったとみなされる
  3. 限定承認
     → 相続財産の範囲内で負債を引き継ぐ

相続放棄が有効なケース

  • 親に借金や負債が多い場合
  • 残された遺産が家や土地だけで売却・管理が難しい場合
  • 自治体から求償請求(生活保護費の返還)が来ることが想定される場合

相続放棄をすれば、遺産を一切受け取らない代わりに、返還請求を受けることもなくなります。

ただし、「放棄した分が他の相続人に回る」ことになるため、兄弟姉妹がいる場合は事前の相談も大切です。

限定承認という選択肢も

あまり知られていませんが、「限定承認」は負債があるかどうか不明な場合に有効です。

たとえば…

  • 親に借金があるかよくわからない
  • 通帳や書類が出てきたが、詳細は不明
  • 不動産の価値があるが、売却できるか不透明

こうした場合は、相続財産の範囲でしか負債を引き継がない限定承認によってリスクを最小限に抑えられます。

ただし、他の相続人と全員で申請する必要があるなど、実務上やや難易度が高いため、専門家のサポートが推奨されます。

生活保護の「求償(返還)請求」はどうなる?

親が生活保護を受けていた場合、相続財産が残っていれば、自治体から「生活保護費の返還請求(求償)」が届くことがあります。

これは法的に認められた制度で、生活保護法第63条に基づいて行われるものです。

求償が発生する条件

  • 親の死亡時点で、相続財産が一定額以上ある
  • 特に現金・預貯金・不動産など換金可能な資産がある
  • 相続人が相続を選択(放棄していない)している場合

あくまで「残された財産の範囲内」での請求です。
相続人の個人口座や私有財産にまで踏み込むことはできません。

家や不動産がある場合の注意点

「財産は実家の家だけ」というケースも多くあります。

しかしこの場合、次の点に注意が必要です。

  • 家の評価額が高くても、売却できなければ資産価値ゼロと同じ
  • 固定資産税や維持費がかかる(相続すると自分が払う)
  • 家の名義変更や登記には時間も費用もかかる
  • 他の相続人との共有になると、処分が難しくなる

結果として、「もらったはいいが売れずに負債化した」というパターンも多く見られます。

不動産が遺産の中心である場合は、特に慎重な判断が求められます。

このようなケースでは、専門家に相談して、限定承認や相続放棄を含めた選択肢の検討が重要です。

次章では、立場が逆になったパターン、「自分自身が生活保護を受けていて、相続が発生した場合」について解説します。

ケーススタディ② 自分が生活保護を受けていて、相続が発生した場合

相続が発生したら、生活保護はどうなる?

生活保護を受けている人に相続が発生した場合、原則として「相続によって得た財産」は“収入”とみなされます。

生活保護は「資産・収入が足りない人」に支給される制度のため、遺産を相続するとその時点で生活保護の打ち切りや一時停止の対象になる可能性があります。

生活保護と相続の基本的な考え方

生活保護制度の中では、次のようなルールがあります。

  • 相続で得た財産は「一時的収入」としてカウントされる
  • 相続額が生活費に充当できると判断されれば、保護停止または廃止
  • 相続によって一定期間、自立できる場合は一旦支給が止まるが、使い切れば再申請できる

ここで重要なのは、相続を受け取ること自体は違法ではないということです。

問題になるのは、「相続できるのにしなかった」「本来収入があるのに報告しなかった」といった申告義務違反や不正受給に該当する行為です。

相続を放棄すれば生活保護を継続できるのか?

ここでよくある誤解が「相続放棄をすれば生活保護が継続できる」というものです。

たしかに、相続放棄をすれば財産は手元に残らないため、形式的には「収入がなかった」ことになります。

しかし、以下のようなケースでは不正受給と見なされるリスクがあります。

不正受給と判断される可能性があるのは?

  • 相続することを知りながら、生活保護を維持するために意図的に相続放棄をした
  • 家族と結託して、自分が相続しないように操作した
  • 相続を放棄したことを役所に報告していない

厚生労働省の見解では、「生活保護の趣旨に反する不自然な相続放棄」は問題視されます。

したがって、相続を放棄する場合も、必ず福祉事務所に相談し、判断を仰ぐことが必要です。

相続財産の種類別:どう扱われる?

相続で得るものは現金だけとは限りません。

以下のような財産は、それぞれ異なる取り扱いになります。

現金・預貯金

  • そのまま収入として扱われ、生活保護は一時停止または廃止
  • 預金を生活費に充当後、再申請も可能(支給要件を満たせば)

不動産(家・土地)

  • 居住用かどうかで扱いが異なる
  • 空き家などは原則「売却して生活費にあててください」となる
  • 名義変更・維持費・固定資産税が発生するため、所有には注意が必要

借金・負債がある場合

  • 遺産がマイナス財産だった場合、相続放棄または限定承認を検討
  • これを放棄しても、生活保護に影響は原則なし(※不正の意図がなければ)

生活保護と相続の狭間で迷ったら

  • 相続があるときは必ず福祉事務所に相談
  • 相続放棄や限定承認は、専門家と相談のうえで慎重に判断
  • 生活保護の「収入認定」や「支給停止」はケースバイケース。自治体によって判断が異なる場合もあるため、迷ったら自己判断しないのが鉄則です

「相続=生活保護が終わる」という単純な構図ではありません。

正しく申告し、適切な方法を選択すれば、生活の安定を守ることも可能です。

次章では、こうした相続と生活保護に関する「よくある誤解や注意点」を整理していきます!

よくある誤解と注意点】

「生活保護だと相続できない」は誤解

もっとも多い誤解のひとつが、

「親が生活保護を受けていたら、自分に相続は発生しない」
というものです。

これは完全な誤解です。

生活保護の受給状況にかかわらず、亡くなった人に財産(プラスもマイナスも)があれば、相続権のある人には必ず相続が発生します。

そのうえで、相続する・しないを選ぶのが正しい流れです。

「相続放棄すれば安心」は要注意

たしかに、相続放棄をすれば財産も負債も受け継がないため、生活保護の返還請求(求償)や借金の負担を避ける手段として有効です。

しかし、以下のようなケースでは注意が必要です。

  • 他の相続人に自分の分の責任が回る
  • 遺産に不動産が含まれていると、放棄後の管理が面倒
  • 「相続放棄した=扶養もしない」と誤解される

また、生活保護を受けている立場で相続放棄をする場合、不自然な放棄と判断されると不正受給に問われる可能性もあるため、事前の福祉事務所への相談が必須です。

「扶養義務者は相続しなくても返還請求される」は半分正解

生活保護制度では、扶養義務者(親族)に対して、生活援助の可能性を調査する「扶養照会」が行われます。

これとは別に、親が生活保護を受けていた場合、相続人に対して「過去の支給分を返してほしい(求償)」と求めることがあります。

ここで混同されやすいのが、「相続していないのに請求されるのでは?」という不安です。

結論としては、

  • 相続放棄をしていれば、求償の対象にはなりません(財産の承継がないため)
  • ただし、生活保護費の不正取得や不適切な財産隠しがあった場合は別

つまり、「相続人として財産を得ていない」のであれば、原則として返還請求はされません。

「相続しないと怒られる?」→ そんなことはありません

「生活保護を受けていた親の相続を放棄すると、役所から責められるのでは…」と心配する声もありますが、制度上、相続放棄は完全に認められた手続きです。

何も違法ではありませんし、「放棄したから親不孝」といった感情論も法律とは無関係です。

ただし、重要なのは「手続きの正確さ」と「報告義務」です。

  • 相続放棄は家庭裁判所での正式な手続きが必要
  • 放棄をしたら速やかに福祉事務所へ報告する
  • 他の相続人とトラブルにならないよう、連絡を取る

こうした基本を守れば、相続放棄そのものはまったく問題ありません。

「自治体によって運用が違う」点にも要注意!

実は、生活保護の制度そのものは国が定めた法律ですが、現場での運用は各自治体の福祉事務所が担っています。

そのため、次のような違いが発生することがあります。

  • 求償請求を積極的に行う自治体/そうでない自治体
  • 相続放棄の報告を細かく求めるところ/そうでないところ
  • 扶養照会のタイミングや内容

つまり、ネットや知人の情報だけを信じず、必ず自分の自治体に確認することが大切です。

誤解やうわさに流されず、正しい知識をもつことが第一歩

「生活保護と相続」というテーマはデリケートで、身近な人にも相談しにくいことが多いですよね。

だからこそ、ネット上では誤解や極端な情報が目立ちます。

この記事では、制度の正確な理解をベースに、判断をサポートすることを大切にしています。

次章では、こうした背景をふまえて、「実際に何を、いつすればいいのか?」を時系列で整理していきます。

手続きとスケジュール〜何をいつすればいいのか〜

相続が発生したとき、特に親が生活保護を受けていたケースでは、「何を、いつまでに、どの順番でやればいいのか」を把握しておくことがとても重要です。

ここでは、トラブルを防ぎつつ、スムーズに相続と生活保護に関する対応ができるよう、時系列でやるべきことを整理しておきます。

ステップ①:死亡届の提出(死亡後7日以内)

親が亡くなった場合、まず必要なのは死亡届の提出です。

通常は病院や葬儀社で案内されることが多く、亡くなった日から7日以内に自治体へ提出する必要があります。

この時点ではまだ相続の具体的な話には入りませんが、死亡の事実を行政に正式に届け出ることで、各種の手続きが始まります。

ステップ②:遺産の調査(死亡後すぐ〜2週間)

次に必要なのが、遺産や財産の内容を把握することです。

相続の放棄・限定承認などを検討するには、どんな財産や負債があるのかを明確にする必要があります。

調査項目

  • 通帳・預金残高
  • 借金やローンの有無
  • 不動産(土地・建物)の有無と評価額
  • 株式・保険などの金融資産
  • 借用書や滞納通知など

ステップ③:相続放棄・限定承認の検討(死亡後3か月以内)

ここが非常に重要なポイントです。

相続を放棄したい場合、「相続開始(=死亡)を知った日から3か月以内」に家庭裁判所に申述する必要があります。

これを過ぎると、自動的に単純承認(すべて相続)とみなされるので注意が必要です。

相続放棄の流れ(簡略版)

  1. 家庭裁判所に「相続放棄の申述書」を提出
  2. 必要書類(戸籍、遺産目録など)を添付
  3. 裁判所の審査を経て、決定通知が届く
  4. 決定後、自治体や他の相続人にも通知するのが望ましい

限定承認も同様に3か月以内。複雑なので、専門家に相談を!

ステップ④:福祉事務所への報告・確認

親が生活保護を受けていた場合、遺産がある/相続放棄をする/相続するか迷っているなど、どの状況でも福祉事務所に相談・報告するのが基本です。

報告を怠ると、のちに「不正受給」と見なされる可能性もあるため注意しましょう。

報告すべきタイミング

  • 相続の手続きを始めたとき
  • 相続放棄・限定承認を決めたとき
  • 遺産の内容が確定したとき
  • 相続財産の受け取り(口座振込など)が発生したとき

ステップ⑤:遺産の分配と名義変更(4か月目以降)

相続を受けることを決めた場合、遺産の分配や名義変更を進めます。

主な作業内容

  • 預貯金の払い戻し
  • 不動産の相続登記(法務局)
  • 相続税の申告(※基礎控除額を超える場合)
  • 各相続人との話し合い・遺産分割協議書の作成

生活保護の求償請求が来た場合も、この段階で自治体との調整が必要になります。

ステップ⑥:相続後の生活設計と必要に応じた再申請

相続により生活保護が打ち切られた場合でも、遺産を生活費として使い切った後、生活が再び困窮すれば再申請が可能です。

再申請時のポイント

  • 相続財産の使用明細(家計簿など)を求められることがある
  • 預金残高や支出の内容を明確にしておく
  • 計画的な使用が大前提。浪費的な使い方は審査でマイナス要因になることも

チェックリスト:生活保護と相続が交差したときのやること

  • 死亡届の提出
  • 遺産・借金の調査
  • 相続放棄・限定承認の検討(3か月以内)
  • 福祉事務所への報告
  • 相続手続き(名義変更・分割協議など)
  • 必要に応じて再申請の準備

すべてを一人でやるのは難しいこともあります。

少しでも不安があれば、次章でご紹介するような専門家の力を借りるのがおすすめです。

専門家に相談すべきケースとは?

「生活保護 × 相続」の問題は、法律・制度・手続きが複雑に絡み合います。

特に、ケースによっては間違った判断や遅れた対応が大きなトラブルにつながることもあります。

この章では、「これはもう自分だけでは対応しきれない」というラインを明確化し、どんな専門家に、いつ、どのように相談すればいいのかを整理します。

専門家に相談すべき主なケース

ケース①:相続人が複数いて、意見が合わない

兄弟姉妹など他の相続人がいる場合、相続放棄や分配方法をめぐってトラブルになりやすいです。

  • 誰が放棄するか、しないか
  • 「実家は誰が相続するのか」
  • 話し合いが進まない・連絡が取れない

こうしたときは、遺産分割協議書の作成や仲裁ができる弁護士や司法書士の介入が有効です。

ケース②:遺産の中心が「不動産」の場合

家や土地しかない相続では、

  • 売却できるかどうか不明
  • 固定資産税や管理費をどうするか
  • 他の相続人と共有になると手続きが複雑

このようなときは、不動産の相続登記に詳しい司法書士や行政書士に相談すると安心です。

ケース③:借金やローンなど「負債」があるかもしれない

  • 借用書・督促状が見つかった
  • 残高がマイナスの通帳が出てきた
  • 親の借金状況が不透明で不安

この場合は、相続放棄や限定承認を視野に入れた法的判断が必要です。相続放棄の手続きに強い弁護士のサポートを受けましょう。

ケース④:生活保護と相続の両方に関わる判断をする必要がある

  • 生活保護を受けながら相続が発生した
  • 相続を放棄した場合、生活保護が継続できるか不安
  • 福祉事務所とのやりとりがうまくいかない

こうしたケースでは、生活保護制度にも精通している行政書士や弁護士が最適です。

対応を誤ると「不正受給」と判断されかねないため、早めの相談が大切です。

専門家の種類と役割の違い

専門家主な対応分野特徴
弁護士トラブル対応、遺産分割の調整、裁判手続き法的トラブル全般に強いが、費用は高め
司法書士相続登記、相続放棄、登記・手続きに強く、費用は中程度
行政書士相続に関する書類作成、生活保護との調整サポート書類作成と制度理解に強く、比較的費用が抑えられる

相談のタイミングは「迷ったらすぐ」が鉄則

相続の問題は、「知らなかった」「うっかりしていた」で済まされない期限付きの手続きが多くあります。

特に注意すべき期限

  • 相続放棄・限定承認:死亡から3か月以内
  • 相続税の申告:死亡から10か月以内
  • 不動産の名義変更:登記義務化(2024年から)

「こんなことで相談してもいいのかな?」と思うような小さな疑問でも、早めに専門家へ連絡することで、取り返しのつかない事態を防ぐことができます。

専門家に相談するときの準備リスト

相談をスムーズに進めるために、以下の情報をまとめておくと便利です。

  • 被相続人の死亡日・死亡診断書
  • 遺産のリスト(わかる範囲で)
  • 他の相続人の連絡先(あれば)
  • 生活保護受給の有無と自治体名
  • 相続について不安な点・知りたいことメモ

次章では、ここまでの情報を踏まえて、「よくある質問とその答え(Q&A)」形式で疑問点を解消していきます!

よくある質問Q&A(10選)】

生活保護と相続が絡む場面では、ネット検索や役所の窓口でも明確な答えが見つからず、不安や疑問が残ることがよくあります。

ここでは、実際に多くの人が感じている「これってどうなの?」という疑問に、Q&A形式でお答えしていきます。

Q1. 親が生活保護を受けていて亡くなった場合、相続って本当にあるの?

A:あります。

生活保護を受けていたかどうかに関係なく、亡くなった人に財産(プラスまたはマイナス)があれば、相続は発生します。

そのうえで、「相続するか」「放棄するか」を選択するのが基本です。

Q2. 相続放棄すれば、生活保護の返還請求(求償)も免れますか?

A:基本的には免れます。

相続放棄をした人は「相続人でなかったこと」になるため、原則として返還請求の対象外になります。

ただし、他の相続人に請求が行く場合があるので、家族間での話し合いや情報共有が重要です。

Q3. 自分が生活保護を受けていて相続が発生したら、受け取らないほうがいい?

A:原則は「正しく申告した上で受け取るべき」です。

生活保護の受給者であっても、相続が発生した場合には、「相続財産=収入」として扱われます。受け取ったうえで生活保護が一時停止または廃止されることがありますが、その後、再申請も可能です。

勝手に放棄すると「不正受給」と見なされるリスクがあります。

Q4. 相続放棄の期限はいつまで?

A:相続が発生したことを知った日から3か月以内です。

この「知った日」は、一般的には親の死亡日とされますが、状況によって前後するケースもあるため、なるべく早く家庭裁判所に相談するのが安全です。

Q5. 遺産が実家の家だけ。どうしたらいい?

A:処分可能かどうかを冷静に見極めましょう。

実家がある場合、その不動産の価値や処分のしやすさによって対応が変わります。

売却できない場合は維持費・税金が発生する負債になるリスクも。放棄や限定承認も含め、専門家と相談して判断するのが安心です。

Q6. 相続人が自分ひとりじゃないけど、自分だけ放棄できる?

A:できます。

相続放棄は個別の権利であり、他の相続人に関係なく行えます。
ただし、放棄した分の相続権は、次の順位の相続人に移るため、全体のバランスを考えることも大切です。

Q7. 扶養義務者には返還請求されるの?

A:扶養義務者だからといって自動的に返還請求されることはありません。

ただし、相続して財産を得た場合にその相続財産の範囲内で返還請求(求償)されることがあります。

「扶養義務=返還義務」ではないことを覚えておきましょう。

Q8. 生活保護を受けていた親の借金を知らずに相続してしまった…どうすれば?

A:すぐに専門家に相談を。

相続放棄の期限(3か月)を過ぎていたとしても、「相続財産や負債の存在を知らなかった」と証明できれば、申述が認められる可能性もあります。

諦めず、弁護士にすぐ相談しましょう。

Q9. 生活保護の自治体と相談がうまくいかない…どこに助けを求めれば?

A:行政書士や弁護士に相談を。

生活保護制度に精通した専門家であれば、自治体との調整や必要な書類の作成、やり取りの代行もしてくれます。

「ひとりでは無理」と思ったら、すぐ相談を!

Q10. 専門家に相談する費用って高いの?

A:内容によりますが、相談だけなら無料〜数千円でできる場合も。

行政書士や司法書士の中には、初回無料相談を実施しているところも多く、費用を明確に提示してくれるところもあります。

不安なまま放置するより、まずは気軽に問い合わせてみることをおすすめします。

よくある質問のまとめ

生活保護と相続が絡む場面では、「これって普通?」「これってダメ?」というグレーな疑問が本当に多いです。

そのときは、自分のケースに当てはまるかどうかを必ず自分の目と専門家の視点で確認することが大切です。

次章では、この記事のまとめと今後に向けたアドバイスをお届けします!

まとめ

「生活保護 × 相続」は、知っていれば防げるトラブルが多い

この記事では、「親が生活保護を受けていた」「自分が生活保護を受けている」など、生活保護制度と相続の関係においてよくある疑問や注意点を幅広く解説してきました。

このテーマは、法制度・社会保障・家族関係が複雑に絡み合うため、正確な知識がないまま進めてしまうと、思わぬリスクを抱えることになります。

この記事で伝えたかったこと(おさらい)

  • 親が生活保護を受けていても、相続は発生する
  • 相続するか、放棄するかは法的に「選べる」権利
  • 自分が生活保護を受けていても、相続は「収入」として扱われるため、正しく申告することが重要
  • 相続放棄や限定承認には、期限や手続きがある(原則3か月以内)
  • 生活保護の返還請求(求償)は「相続財産の範囲」で行われる
  • 少しでも不安がある場合は、行政書士・司法書士・弁護士などの専門家に相談することが安全な選択肢

今後に向けて意識したいポイント

1. 自分の立場を正しく把握する

自分が相続人なのか、扶養義務者なのか、生活保護の受給者なのかで、対応は大きく異なります。

まずは「自分の立ち位置」を正しく理解しましょう。

2. 情報に振り回されすぎない

ネット上には不正確な情報や、極端な意見が多く見られます。

自治体や法律の専門家が発信している一次情報に基づいて判断することが大切です。

3. 「早めの準備」がすべてを左右する

特に、相続放棄や限定承認は期限付きの手続きです。

「気づいたら期限切れで相続が確定していた…」ということのないよう、相続が発生したらすぐ動くことを心がけましょう。

4. 相談することは恥ずかしいことではない

「こんなこと、誰に聞けば…」「相続の話をするなんて不謹慎かも」と思ってしまいがちですが、あなたの生活を守るための正当な行動です。

トラブルが起きてからでは手遅れなこともあるので、不安を感じたらすぐ相談する勇気が大切です。

最後にひとこと

生活保護と相続の交差点には、不安と誤解がつきものです。

でも、正しい知識と少しの行動で、あなた自身やご家族の暮らしを守ることができます。

「知らなかった…」では済まされない制度の中だからこそ、今この瞬間に知っておくことが、あなたのこれからを大きく変える力になります。