遺言書に不動産を書くときは、単に「○○市の自宅」などと書くだけでは不十分です。
不動産は、預貯金のように口座番号で特定できるものと違い、地番(土地ごとに付けられた番号)や家屋番号(建物ごとに付けられた番号)など、登記情報をもとに正確に記載する必要があります。
特に、
- 土地の「地番」と「住所」の違いがわからない
- マンションはどこまで書けばいい?
- 登記事項証明書(不動産の権利関係などを証明する書類)のどこを見ればいい?
- 共有名義や未登記建物(登記されていない建物)はどう書く?
と悩む方は少なくありません。
また、不動産の記載が曖昧だと、相続時に「どの不動産を指しているのか」が問題になり、相続登記や遺産分割でトラブルにつながることもあります。
そこで本記事では、遺言書に不動産を書く際の基本ルールを、登記事項証明書の見方や実際の記載例を交えながら、行政書士がわかりやすく解説します。
一戸建て・マンション・収益物件・共有名義・未登記建物など、ケース別の注意点も紹介するので、これから遺言書を作成する方はぜひ参考にしてください。

目次
1. 遺言書で不動産を書くときの基本ルール

1-1. 土地を書くときに必要な情報
遺言書に土地を記載するときは、登記事項証明書(不動産の権利関係などを証明する書類)に記載されている内容をもとに、正確に転記することが重要です。
一般的には、次の項目を記載します。
- 所在
- 地番(土地ごとに付けられた番号)
- 地目(土地の用途区分)
- 地積(土地の面積)
たとえば、土地の登記事項証明書に次のように記載されている場合は、
- 所在:東京都特別区南都町一丁目
- 地番:101番
- 地目:宅地
- 地積:300.00㎡
遺言書には、登記事項証明書の内容を正確に転記します。
土地の記載例
所在 東京都特別区南都町一丁目
地番 101番
地目 宅地
地積 300.00平方メートル
なお、普段使用している「住所」と、登記上の「地番」は異なる場合があります。
たとえば、
- 住所:○○区○○町1-2-3
- 地番:○○区○○町123番4
のように表示が異なるケースも少なくありません。

登記事項証明書の確認ポイント
土地の登記事項証明書では、主に「①所在」「②地番」「③地目」「④地積」を確認します。
遺言書には、登記事項証明書の内容をもとに正確に記載します。

特に注意したいのが「地番」です。
普段使用している住所とは異なる場合があるため、必ず登記事項証明書を確認して記載しましょう。
なお、遺言の基本的な種類や法的効力、自筆証書遺言との違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
遺言とは?種類・効力・書き方・無効になるケースまで徹底解説
1-2. 建物を書くときに必要な情報
遺言書に建物を記載する場合も、登記事項証明書(不動産の権利関係などを証明する書類)を確認しながら、登記どおりに記載することが基本です。
建物の場合は、主に次の項目を確認します。
- 所在
- 家屋番号(建物ごとに付けられた番号)
- 種類(居宅・店舗・共同住宅など)
- 構造
- 床面積
たとえば、建物の登記事項証明書に次のように記載されている場合は、
- 所在 :東京都特別区南都町一丁目 101番地
- 家屋番号:101番
- 種類 :居宅
- 構造 :木造かわらぶき2階建
- 床面積 :1階 80.00平方メートル
2階 70.00平方メートル
記載内容は、登記事項証明書と一致させることが重要です。
建物の記載例
所在 東京都特別区南都町一丁目 101番地
家屋番号 101番
種類 居宅
構造 木造かわらぶき2階建
床面積 1階 50.00平方メートル
2階 45.00平方メートル
登記事項証明書の確認ポイント
建物の登記事項証明書では、主に「①所在」「②家屋番号」「③種類」「④構造」「⑤床面積」を確認します。
遺言書には、これらの情報を登記どおりに記載するのが基本です。

建物では、「家屋番号」の確認が重要です。
家屋番号は、普段使用している住所や部屋番号とは異なる場合があります。
そのため、建物を記載するときは、住所だけではなく、登記事項証明書を確認して正確に記載することが大切です。
自筆証書遺言の基本ルールや、無効になりやすいケースについては、以下の記事で詳しく解説しています。
自筆証書遺言とは?書き方・無効になるケース・検認までわかりやすく解説
1-3. マンションを書くときの注意点

分譲マンション(区分所有建物)を遺言書に記載する場合は、一戸建てとは異なり、「専有部分(部屋部分)」だけでなく、「敷地権(土地を利用する権利)」についても確認する必要があります。
そのため、マンションでは、主に次の項目を確認します。
専有部分(部屋)の情報
- 家屋番号
- 種類
- 構造
- 床面積
敷地権(土地利用権)の情報
- 敷地権の種類
- 敷地権の割合
マンションの場合、「○○マンション101号室」のような部屋番号だけでは、不動産を正確に特定できないことがあります。
そのため、登記事項証明書を確認しながら、専有部分と敷地権の内容を正確に記載することが重要です。
専有部分の建物の表示
- 家屋番号 特別区南町一丁目3番1の101
- 種類 居宅
- 構造 鉄筋コンクリート造1階建
- 床面積 150.42平方メートル
敷地権の表示
- 敷地権の種類 所有権
- 敷地権の割合 4分の1
遺言書にも、登記事項証明書の内容をもとに記載します。
記載例
マンションの記載例
家屋番号 特別区南町一丁目3番1の101
種類 居宅
構造 鉄筋コンクリート造1階建
床面積 150.42平方メートル
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 4分の1
マンションの登記事項証明書では、「専有部分」と「敷地権」の両方を確認します。
※必要に応じて、「所在」や「建物の名称」も登記事項証明書に沿って記載します。
特に「敷地権」は、マンションの部屋と一体となっている土地利用権のため、記載漏れがないよう注意しましょう。
登記事項証明書の確認ポイント
マンションの登記事項証明書では、
(一棟の建物の表示)「①所在」「②建物の名称」
(専有部分の建物の表示)「③家屋番号」「④種類」「⑤建物の名称」「⑥構造」「⑦床面積」
(敷地権の目的たる土地の表示)「⑧土地の符号」「⑨所在及び地番」「⑩地目」「⑪地積」
(敷地権の表示)「⑫敷地権の種類」「⑬敷地権の割合」
を確認します。
※マンションの登記事項証明書には、「専有部分(部屋)」だけでなく、「一棟の建物全体」の情報も記載されています。

マンションは部屋番号だけではなく、敷地権も含めて確認することが大切です。
不動産以外の財産(預貯金・株式など)の書き方や、遺言書全体の作成手順については、以下の記事で詳しく解説しています。
自筆証書遺言の書き方|自分で作成する方法・例文・無効になるケースを解説
2. 登記事項証明書を見ながら実際に転記する方法
遺言書に不動産を記載するときは、登記事項証明書(不動産の権利関係などを証明する書類)を見ながら、必要な情報をそのまま転記していくのが基本です。
ただし、登記事項証明書には多くの情報が記載されているため、
- どこを見ればいい?
- どこまで書けばいい?
- 全部を書き写す必要がある?
と迷う方も少なくありません。
ここでは、土地・建物・マンションそれぞれについて、遺言書に転記する際のポイントを解説します。
2-1. 土地の登記事項証明書の見方
土地の登記事項証明書では、主に次の項目を確認します。
- 所在
- 地番
- 地目
- 地積
遺言書には、これらの情報を登記事項証明書の記載どおりに転記します。
特に注意したいのが「地番」です。
普段使用している住所とは異なる場合があるため、住所ではなく、登記事項証明書に記載された地番を確認して記載しましょう。
土地の転記例
登記事項証明書
- 所在:東京都特別区南都町一丁目
- 地番:101番
- 地目:宅地
- 地積:300.00㎡
↓
遺言書への記載例
所在 東京都特別区南都町一丁目
地番 101番
地目 宅地
地積 300.00平方メートル
図解ポイント

土地を遺言書に記載する際は、「地番」を正確に確認することが重要です。
住所と地番は異なる場合があるため、必ず登記事項証明書を見ながら記載しましょう。
2-2. 建物の登記事項証明書の見方
建物の場合は、次の項目を確認します。
- 所在
- 家屋番号
- 種類
- 構造
- 床面積
建物では、「家屋番号」の確認が重要です。
家屋番号は住所とは異なる場合があり、同じ敷地内に複数の建物があるケースでは、住所だけでは建物を特定できないことがあります。
そのため、登記事項証明書を確認しながら正確に記載しましょう。
建物の転記例
登記事項証明書
- 所在:東京都特別区南都町一丁目101番地
- 家屋番号:101番
- 種類:居宅
- 構造:木造かわらぶき2階建
- 床面積:1階 80.00㎡/2階 70.00㎡
↓
遺言書への記載例
所在 東京都特別区南都町一丁目101番地
家屋番号 101番
種類 居宅
構造 木造かわらぶき2階建
床面積 1階 80.00平方メートル
2階 70.00平方メートル
図解ポイント

建物を遺言書に記載する際は、「家屋番号」を確認することが重要です。
家屋番号は、普段使用している住所や部屋番号とは異なる場合があるため、登記事項証明書を見ながら正確に記載しましょう。
2-3. マンションの登記事項証明書の見方
マンション(区分所有建物)の場合は、専有部分(部屋)だけでなく、敷地権(土地利用権)についても確認する必要があります。
主に確認する項目は次のとおりです。
専有部分(部屋)の情報
- 家屋番号
- 種類
- 構造
- 床面積
敷地権の情報
- 敷地権の種類
- 敷地権の割合
マンションは、「○○マンション101号室」のような部屋番号だけでは不動産を正確に特定できない場合があります。
そのため、専有部分と敷地権の両方を確認して記載することが重要です。
マンションの転記例
登記事項証明書
- 家屋番号:特別区南町一丁目3番1の101
- 種類:居宅
- 構造:鉄筋コンクリート造1階建
- 床面積:150.42㎡
- 敷地権の種類:所有権
- 敷地権の割合:4分の1
↓
遺言書への記載例
家屋番号 特別区南町一丁目3番1の101
種類 居宅
構造 鉄筋コンクリート造1階建
床面積 150.42平方メートル
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 4分の1
図解ポイント

特に確認したいのが、「敷地権の種類」と「敷地権の割合」です。
マンションは建物部分だけではなく、土地利用権も一体となっているため、敷地権の記載漏れに注意しましょう。
2-4. 全部を書き写す必要はある?
登記事項証明書には、権利関係や受付年月日など、多くの情報が記載されています。
しかし、遺言書では、すべてを転記する必要はありません。
基本的には、不動産を特定できる情報や、どの不動産を相続対象としているのかが分かる情報を中心に記載します。
一方で、受付年月日や登記原因など、相続する不動産の特定に直接関係しない情報まで、すべてを書き写す必要はありません。
一方で、
- 地番
- 家屋番号
- 敷地権の割合
などを省略すると、不動産を正確に特定できない可能性があります。
そのため、迷った場合は、登記事項証明書の内容に沿って記載することをおすすめします。
3.【ケース別】不動産の書き方と注意点
不動産は種類や権利関係によって、遺言書で確認すべきポイントが異なります。
たとえば、
では、相続時に問題になりやすい点も変わります。
このセクションは長いため、確認されたい項目に直接飛べるようリンクを張っております。
ここでは、不動産の種類ごとに、遺言書へ記載する際の注意点を解説します。
3-1. 自宅不動産を書く場合
現在住んでいる自宅を遺言書に記載する場合は、土地と建物を分けて確認することが重要です。
一戸建ての場合、土地と建物は別々に登記されていることが多く、土地だけ・建物だけを記載すると、相続対象が不明確になる可能性があります。
そのため、登記事項証明書を確認しながら、土地と建物の両方を記載しましょう。
一戸建ての記載例
土地
所在 東京都特別区南都町一丁目
地番 101番
地目 宅地
地積 300.00平方メートル
建物
所在 東京都特別区南都町一丁目101番地
家屋番号 101番
種類 居宅
構造 木造かわらぶき2階建
床面積 1階 80.00平方メートル
2階 70.00平方メートル
自宅がマンションの場合は、「専有部分」だけでなく、「敷地権」の内容も確認して記載します。
マンションでは、部屋番号だけでは不動産を正確に特定できない場合があるため、登記事項証明書を確認しながら記載することが大切です。
区分マンションの記載例
家屋番号 特別区南町一丁目3番1の101
種類 居宅
構造 鉄筋コンクリート造1階建
床面積 150.42平方メートル
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 4分の1
注意ポイント
一戸建ては「土地」と「建物」を分けて確認する
一戸建ては、土地と建物が別々に登記されていることが一般的です。
そのため、建物だけ・土地だけを記載すると、相続対象が不明確になる可能性があります。登記事項証明書を確認しながら、土地と建物の両方を記載しましょう。
マンションは「敷地権」の記載漏れに注意する
マンションは、専有部分(部屋)だけでなく、敷地権(土地利用権)も一体となっています。
部屋番号だけではなく、「敷地権の種類」や「敷地権の割合」も確認して記載することが大切です。
住所ではなく登記情報をもとに記載する
普段使用している住所と、登記上の「地番」や「家屋番号」は異なる場合があります。
固定資産税納税通知書や郵便住所だけで判断せず、必ず登記事項証明書を確認しながら記載しましょう。
3-2. 収益不動産を書く場合
賃貸用の戸建てやアパート、投資用マンションなどの収益不動産も、基本的な記載方法は一般の不動産と同じです。
ただし、収益不動産の場合は、
- 同じ所有者名義の物件が複数ある
- 一棟物件と区分マンションが混在している
- 賃貸中で実際に使用していない
といったケースも多く、どの不動産を相続対象にするのかを、より明確に記載することが重要になります。
そのため、登記事項証明書を確認しながら、物件ごとに正確に記載しましょう。
戸建賃貸を書く場合
戸建賃貸の場合も、自宅の一戸建てと同様に、「土地」と「建物」を分けて確認します。
賃貸中であっても、遺言書に記載する内容自体は変わりません。
記載例
土地
所在 東京都特別区南都町二丁目
地番 205番
地目 宅地
地積 180.00平方メートル
建物
所在 東京都特別区南都町二丁目205番地
家屋番号 205番
種類 居宅
構造 木造スレートぶき2階建
床面積 1階 60.00平方メートル
2階 55.00平方メートル
区分マンション投資を書く場合
投資用の区分マンションも、一般的な分譲マンションと同様に、「専有部分」と「敷地権」を確認します。
複数戸を所有している場合は、部屋番号だけで管理しているケースもありますが、遺言書では登記情報をもとに正確に記載することが重要です。
記載例
家屋番号 特別区南町一丁目3番1の305
種類 居宅
構造 鉄筋コンクリート造3階建
床面積 25.40平方メートル
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 1000分の15
一棟アパート・一棟マンションを書く場合
一棟アパートや一棟マンションの場合は、建物全体について登記されています。
そのため、各部屋ごとに記載するのではなく、建物全体の登記情報を確認して記載します。
また、敷地となっている土地についても、あわせて確認することが重要です。
記載例
土地
所在 東京都特別区南都町三丁目
地番 310番
地目 宅地
地積 500.00平方メートル
建物
所在 東京都特別区南都町三丁目310番地
家屋番号 310番
種類 共同住宅
構造 鉄筋コンクリート造4階建
床面積 1階 180.00平方メートル
2階 180.00平方メートル
3階 180.00平方メートル
4階 180.00平方メートル
記載時の注意点
賃貸中でも記載方法は変わらない
現在入居者がいる不動産でも、遺言書には登記事項証明書の内容をもとに記載します。
賃貸借契約の内容や家賃情報まで、通常は記載する必要はありません。
複数物件を所有している場合は特に注意する
収益不動産を複数所有している場合は、「どの物件を誰に相続させるのか」が曖昧にならないよう注意が必要です。
物件ごとに登記事項証明書を確認しながら整理して記載しましょう。
一棟物件は土地と建物の両方を確認する
一棟アパートや一棟マンションでは、建物だけではなく、敷地となる土地も重要な相続対象です。
建物だけを記載して、土地の記載が漏れないよう注意しましょう。
3-3. 権利関係が複雑な不動産を書く場合
不動産の中には、通常の所有権不動産とは異なり、権利関係が複雑になっているものがあります。
たとえば、
- 借地権付き建物
- 抵当権が設定されている不動産
- 共有名義の不動産
- 未登記建物
などです。
このような不動産も遺言書に記載することは可能ですが、通常の不動産以上に、登記事項証明書や権利関係を確認しながら慎重に記載する必要があります。
借地権付き建物を書く場合
借地権(他人の土地を借りて利用する権利)が設定されている建物では、「建物」と「土地の利用権」が別になっています。
そのため、建物だけではなく、借地権の内容についても確認が必要です。
借地契約書や登記事項証明書を確認しながら、どの不動産を対象にしているのかが分かるよう記載しましょう。
記載時のポイント
- 建物だけでなく借地権の有無も確認する
- 借地契約書がある場合は内容も確認する
- 権利関係が複雑な場合は専門家へ相談する
抵当権付き不動産を書く場合
住宅ローンや事業用融資が残っている不動産には、抵当権(ローン返済ができない場合に備えて設定される担保権)が設定されていることがあります。
ただし、抵当権が設定されていても、不動産を遺言書に記載すること自体は可能です。
遺言書では、通常どおり登記事項証明書の内容をもとに不動産を記載します。
記載時のポイント
- ローンが残っていても遺言書への記載は可能
- 抵当権の有無は登記事項証明書で確認できる
- 相続後の返済負担も考慮して承継先を検討する

共有名義不動産を書く場合
不動産が夫婦や親族との共有名義になっている場合は、「自分の持分(所有割合)」を確認する必要があります。
共有不動産では、不動産全体ではなく、自分の持分のみが相続対象となります。
そのため、登記事項証明書で持分割合を確認しながら記載しましょう。
記載時のポイント
- 自分の持分割合を確認する
- 他の共有者の持分は相続対象にならない
- 持分割合の記載漏れに注意する
未登記建物を書く場合
建物の中には、登記されていない「未登記建物」が存在することがあります。
たとえば、
- 古い建物
- 増築部分
- 相続登記が長年行われていない建物
などです。
未登記建物も遺言の対象にすること自体は可能ですが、権利関係が不明確になりやすいため注意が必要です。
まずは、建物の登記状況を確認し、必要に応じて登記整理を検討しましょう。
記載時のポイント
- 登記事項証明書が取得できるか確認する
- 未登記の場合は固定資産税資料なども確認する
- 名義未整理の場合は早めに登記対応を検討する
権利関係が複雑な不動産は専門家確認がおすすめ
借地権・共有名義・未登記建物などは、一般的な不動産よりも権利関係が複雑です。
記載内容に不安がある場合は、遺言書を作成する前に、行政書士や司法書士などの専門家へ確認することをおすすめします。
3-4. 管理・処分に注意が必要な不動産

不動産の中には、相続後の管理や処分で問題になりやすいものがあります。
たとえば、
- 誰も住んでいない空き家
- 遠方にある土地
- 山林や原野
- 利用予定のない不動産
などです。
このような不動産は、「誰が相続するのか」が曖昧なままになると、相続後に管理負担や固定資産税の負担を巡ってトラブルになることがあります。
そのため、遺言書では、どの不動産を誰に承継させるのかを明確に記載しておくことが重要です。
空き家を書く場合
現在誰も住んでいない空き家でも、基本的な記載方法は通常の建物と変わりません。
土地と建物の登記事項証明書を確認しながら、それぞれ正確に記載します。
ただし、空き家は、管理費用や修繕費が継続的に発生するほか、老朽化によって建物の状態が悪化しやすく、立地によっては売却や活用が難しいケースも少なくありません。
そのため、「誰に相続させるのか」を特に慎重に検討することが大切です。
記載時のポイント
- 土地と建物を分けて確認する
- 長期間放置されていないか確認する
- 管理や処分を見据えて承継先を検討する
山林・原野・遠方不動産を書く場合
山林や原野、遠方にある土地などは、利用実態が分からなくなっているケースもあります。
たとえば、過去に相続したまま長年放置されており、自分が所有していることを十分に把握していなかったり、現地へ行ったことがなく利用状況が分からなかったり、境界や管理状況が不明になっていたりするケースも少なくありません。
まずは、登記事項証明書や固定資産税納税通知書などを確認し、どの不動産を所有しているのか整理することが重要です。
そのうえで、遺言書では対象不動産を明確に記載し、将来的な管理負担も考慮しながら承継先を検討しましょう。
記載時のポイント
- 登記事項証明書で所在地や地番を確認する
- 固定資産税資料もあわせて確認する
- 管理負担や利用予定も踏まえて承継先を検討する
利用予定のない不動産ほど承継先を明確にする
利用予定のない不動産は、「とりあえず共有にする」という形になりやすい一方で、将来的な管理負担や処分問題につながることがあります。
特に、
- 空き家
- 山林
- 遠方不動産
などは、相続後に放置されやすい不動産です。
そのため、遺言書では、「どの不動産を誰に承継させるのか」をできるだけ明確に記載しておくことが重要です。
4. 財産目録に不動産を記載する方法

不動産が複数ある場合は、遺言書本文にすべてを書き込むのではなく、「財産目録(相続財産を一覧化した書類)」として別紙にまとめる方法もあります。
特に、
- 不動産の数が多い
- 収益物件を複数所有している
- 土地・建物・マンションが混在している
といった場合は、財産目録を活用した方が整理しやすくなります。
また、登記事項証明書の内容を見ながら一覧化できるため、記載漏れや誤記載の防止にもつながります。
4-1. 財産目録を別紙添付する方法
自筆証書遺言では、不動産の内容を財産目録として別紙にまとめて添付することが可能です。
たとえば、「別紙財産目録記載の不動産を長男○○に相続させる。」のように記載し、別紙で不動産一覧を整理する方法があります。
不動産が多い場合でも、遺言書本文を簡潔にまとめやすくなる点がメリットです。
財産目録の記載例
土地
| 所在 | 地番 | 地目 | 地積 |
|---|---|---|---|
| 東京都特別区南都町一丁目 | 101番 | 宅地 | 300.00㎡ |
建物
| 所在 | 家屋番号 | 種類 | 構造 | 床面積 |
|---|---|---|---|---|
| 東京都特別区南都町一丁目101番地 | 101番 | 居宅 | 木造かわらぶき2階建 | 1階80㎡・2階70㎡ |
財産目録を作成する場合も、登記事項証明書を確認しながら、登記情報をもとに記載することが重要です。
4-2. 登記事項証明書を添付する方法
不動産については、登記事項証明書のコピーを財産目録として添付する方法もあります。
登記事項証明書を活用することで、地番や家屋番号の記載ミスを減らしやすくなります。
特に、
- 不動産が多い場合
- マンションや共有名義がある場合
- 記載内容に不安がある場合
には、登記事項証明書を確認しながら整理する方法が有効です。
4-3. 財産目録はパソコンで作成できる?
財産目録は、手書きだけでなく、パソコンで作成することも可能です。
表形式で整理できるため、不動産が多い場合でも見やすくまとめやすくなります。
また、登記事項証明書の内容をそのまま入力できるため、転記ミスの防止にもつながります。
4-4. 財産目録に署名押印は必要?
自筆証書遺言では、財産目録をパソコンで作成することも可能ですが、各ページに署名押印が必要です。
また、登記事項証明書のコピーを添付する場合も、各ページへ署名押印を行います。
署名押印が漏れていると、方式不備として問題になる可能性もあるため注意しましょう。
財産目録を活用すると不動産整理がしやすい
不動産が複数ある場合は、遺言書本文へすべてを書き込むよりも、財産目録として整理した方が分かりやすいケースもあります。
特に、
- 収益不動産が多い
- 土地・建物が複数ある
- マンションや共有名義が混在している
といった場合は、財産目録を活用することで整理しやすくなります。
なお、財産目録の詳しい作成方法については、以下の記事で解説しています。
【記載例付き】遺言書の財産目録の書き方|不動産・預貯金・負債の記載例を解説
5. 遺言書で不動産を書くときの注意点
不動産は、預貯金のように口座番号で管理されている財産とは異なり、記載方法を誤ると「どの不動産を指しているのか」が分かりにくくなることがあります。
そのため、遺言書では、登記事項証明書を確認しながら正確に記載することが重要です。
特に、不動産を複数所有している場合や、マンション・共有名義・未登記建物などがある場合は注意が必要です。
5-1. 住所だけを書かない
不動産を記載する際に多いのが、「○○市○○町1-2-3」のように、普段使用している住所だけを書いてしまうケースです。
しかし、土地には「地番」、建物には「家屋番号」があり、住所とは異なる場合があります。
そのため、住所だけでは不動産を正確に特定できない可能性があります。
必ず、登記事項証明書を確認しながら、
- 土地 → 地番
- 建物 → 家屋番号
を含めて記載しましょう。
5-2. 固定資産税納税通知書だけで判断しない
固定資産税納税通知書には、不動産の所在地や課税情報が記載されています。
ただし、登記情報と表示が異なる場合もあるため、固定資産税納税通知書だけを見て記載するのは注意が必要です。
特に、
- 地番表記が省略されている
- 最新の登記内容と一致していない
- 共有持分が分かりにくい
といったケースもあります。
そのため、最終的には登記事項証明書を確認しながら記載することをおすすめします。
また、固定資産税納税通知書に記載されている所在地と、登記事項証明書の「地番」や「家屋番号」が異なる場合もあるため注意しましょう。
5-3. 共有持分を書き漏らさない
共有名義の不動産では、不動産全体ではなく、「自分の持分」のみが相続対象になります。
たとえば、夫婦共有名義の不動産であれば、本人の持分割合だけが遺言の対象です。
そのため、共有不動産を記載する場合は、登記事項証明書で持分割合を確認しながら記載しましょう。
持分割合は、「2分の1」「4分の1」などの形で記載されていることが一般的です。
共有者全員の不動産を相続させられるわけではないため、自分の持分割合を確認しながら記載することが重要です。
5-4. 未登記・名義未整理の不動産は早めに確認する
古い建物や相続登記が長年行われていない不動産では、
- 未登記建物
- 先代名義のままの不動産
- 名義変更が未了の不動産
などが見つかることがあります。
このような不動産も遺言の対象にすること自体は可能ですが、権利関係が複雑になりやすいため注意が必要です。
まずは、登記状況を確認し、必要に応じて登記整理を検討しましょう。
5-5. 不安がある場合は専門家へ相談する
不動産は、種類や権利関係によって記載方法が異なります。
特に、
- マンションの敷地権
- 共有名義
- 借地権
- 未登記建物
- 相続未了不動産
などは、一般的な不動産よりも確認事項が多くなります。
登記事項証明書を見ても判断に迷う場合は、行政書士や司法書士などの専門家へ相談しながら作成することをおすすめします。
6. よくある質問(FAQ)
Q:登記事項証明書はどこで取得できますか?
登記事項証明書は、法務局の窓口やオンラインサービスで取得できます。
不動産の所在地が分かっていれば取得可能で、土地・建物・マンションそれぞれの登記内容を確認できます。
遺言書を作成する際は、最新の登記事項証明書を確認しながら記載することをおすすめします。
Q:固定資産税納税通知書だけで記載できますか?
固定資産税納税通知書だけでは、正確に記載できない場合があります。
特に、
- 地番が省略されている
- 登記内容と一致していない
- 共有持分が分かりにくい
といったケースもあるため、最終的には登記事項証明書を確認しながら記載するのが安全です。
Q:マンションは部屋番号だけを書けば大丈夫ですか?
マンションは、「○○マンション101号室」のような部屋番号だけでは、不動産を正確に特定できない場合があります。
そのため、
- 家屋番号
- 構造
- 床面積
- 敷地権の種類
- 敷地権の割合
なども確認しながら記載することが重要です。
Q:ローンが残っている不動産でも遺言できますか?
はい、住宅ローンなどが残っていて抵当権が設定されている不動産でも、遺言書に記載することは可能です。
ただし、相続後はローン返済や担保関係を引き継ぐ可能性があるため、承継先については慎重に検討することをおすすめします。
Q:未登記建物でも遺言できますか?
未登記建物も遺言の対象にすること自体は可能です。
ただし、権利関係が分かりにくくなりやすいため、まずは登記状況を確認し、必要に応じて登記整理を検討しましょう。
また、固定資産税資料や売買契約書など、建物を特定できる資料も確認しておくことが重要です。
Q:相続登記をしていない不動産はどうなりますか?
先代名義のままになっている不動産でも、遺言の対象に含めること自体は可能です。
ただし、相続関係や権利関係が複雑になっているケースもあるため、まずは登記状況を確認し、必要に応じて相続登記を検討しましょう。
権利関係の整理が必要な場合は、専門家へ相談することをおすすめします。
まとめ
遺言書に不動産を書く際は、住所ではなく、登記事項証明書に記載された情報をもとに正確に記載することが重要です。
特に、
- 土地の「地番」
- 建物の「家屋番号」
- マンションの「敷地権」
などは、普段使用している住所表示とは異なる場合があるため注意が必要です。
また、不動産の種類や権利関係によって、確認すべきポイントも異なります。
- 一戸建て
- マンション
- 収益物件
- 共有名義
- 借地権
- 未登記建物
などについては、登記事項証明書を確認しながら慎重に記載しましょう。
不動産が複数ある場合は、財産目録を活用して整理する方法も有効です。
記載内容に不安がある場合や、権利関係が複雑な不動産がある場合は、行政書士や司法書士などの専門家へ相談しながら進めることをおすすめします。
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✅ 行政書士プロフィール
特定行政書士 野中雅敏(IT行政書士事務所)
- 国家資格:行政書士(登録番号:25080391)
- 経歴:IT業界出身/相続・遺言分野を専門取り組み中
- 趣味:競泳
- メッセージ:
「遺言は“難しいこと”ではなく、“優しさのカタチ”です。
家族を守るために、ぜひ一緒に考えていきましょう。」
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