口頭での遺言は有効?法的効力や遺言を正しく残すための方法を徹底解説

遺言は、財産や意思を残すための重要な手段です。しかし、「口頭で遺言を残したい」「文章にする時間がない」、また、身体的な問題で「記述ができない」という方も少なくありません。そこで今回は、口頭での遺言が法的に認められるかどうか、また正しい遺言の方法について詳しく解説します。

口頭の遺言は法的に有効?

口頭での遺言は、原則として法的効力がありません。口頭での遺言が無効とされる主な理由は、遺言の内容が明確に記録されていないため、遺言者の真意を証明することが困難だからです。口約束や口頭での約束は、法的には「単なる口約束」と見なされ、遺言としての効力を持たないとされています。

日本の法律では、遺言は「要式行為」として定められており、所定の形式に従わなければ無効とされます。口頭での遺言はこれらの要件を満たさないため、法的効力を持ちません。

遺言の形式は以下の3つが認められています。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

これらの形式に従わない口頭での遺言は、通常法的には認められません。

例外的に認められる「特別方式の遺言」

ただし、例外として口頭での遺言が認められる場合があります。それが「特別方式の遺言」です。この形式は、以下のような緊急性の高い状況下で適用されます。

死亡危急時遺言

遺言者が死亡の危機に瀕している場合、立会人3名以上の前で、口頭で遺言を行い、後に家庭裁判所で確認されることで効力が発生します。

疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。
2 口がきけない者が前項の規定により遺言をする場合には、遺言者は、証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して、同項の口授に代えなければならない。
3 第一項後段の遺言者又は他の証人が耳が聞こえない者である場合には、遺言の趣旨の口授又は申述を受けた者は、同項後段に規定する筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者又は他の証人に伝えて、同項後段の読み聞かせに代えることができる。
4 前三項の規定によりした遺言は、遺言の日から二十日以内に、証人の一人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない。
5 家庭裁判所は、前項の遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを確認することができない。

(死亡の危急に迫った者の遺言)民法第九百七十六条

隔絶地遺言

災害や事故などにより法的手続きが取れない場合、証人2名以上の前で遺言をすることで効力が認められる場合があります。

伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所に在る者は、警察官一人及び証人一人以上の立会いをもって遺言書を作ることができる。

伝染病隔離者の遺言)第九百七十七条

これらは非常に限定的なケースであり、通常の状況では適用されません。

遺言を正しく残すための方法

1. 自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者が遺言内容を全文自筆で記載する形式です。ポイントは次のとおりです。

  • 日付と署名、押印が必要
  • 財産目録のみ、パソコンでの作成が認められる(2019年の民法改正以降)
  • 家庭裁判所での検認が必要

自筆証書遺言は簡便ですが、紛失や改ざんのリスクがあり、形式不備で無効になる可能性もあります。

2. 公正証書遺言

公正証書遺言は、公証人が作成する公文書形式の遺言です。以下が特徴です。

  • 公証役場で作成
  • 証人2名以上の立会いが必要
  • 家庭裁判所での検認が不要

公証人の関与により信頼性が高く、トラブルを避けたい方におすすめの方式です。

3. 秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言内容を秘密にしたい場合に適した方式です。

  • 遺言者が遺言書を作成し、公証人の立会いで封印
  • 内容は秘密に保たれる
  • 家庭裁判所での検認が必要

紛失のリスクがあるため注意が必要です。

口頭での遺言を、法的に正しくする方法

公証人、承認が病院等に出張、口述した内容を公証人が公正証書遺言として作成、証人が確認することにより、法的拘束力のある遺言書を作成することができます。

口頭で伝えた遺言内容を実現させる方法

1. 遺産分割協議

仮に口頭で遺言を伝えた場合、その内容を相続人全員が承認すれば、遺産分割協議として実現可能です。ただし、全員の合意が必須であり、意見の不一致があると問題が生じます。

2. メモや音声記録を活用

口頭での遺言を補完するために、簡単なメモや録音を残しておく方法があります。ただし、これらは法的効力を持たないため、証拠として扱われる可能性がある程度です。正式な遺言書を補完する形で利用すると良いでしょう。

遺言に関するよくある質問

Q1. 口頭で遺言を伝えるのは危険ですか?

口頭の遺言は、法的に無効になる可能性が高いため、推奨されません。緊急時以外は、正式な形式で遺言書を作成してください。

Q2. 特別方式の遺言はすぐに効力を発揮しますか?

特別方式の遺言も家庭裁判所の確認が必要であり、すぐに効力が発揮されるわけではありません。緊急時以外は通常の方式を利用しましょう。

Q3. 遺言書を作成する際の注意点は?

遺言内容が明確であること、法的要件を満たしていること、遺言者の意思が反映されていることが重要です。公正証書遺言の利用が安全です。

まとめ:口頭遺言に頼らず、正しい遺言を準備しよう

口頭での遺言は、トラブルの元になる可能性があります。確実に遺言内容を実現するためには、自筆証書遺言や公正証書遺言など、法的に認められた方式を利用することが大切です。 遺言書の作成に不安がある場合は、専門家に相談して手続きを進めることをおすすめします。