遺言書を書き始めると、「財産を誰にどのように残すか」は決められても、「なぜその分け方にしたのか」「家族にどんな思いを伝えたいのか」を言葉にするところで、手が止まることがあります。
特に、相続分に差をつける場合や、相続人以外の人へ財産を遺したい場合は、遺言の内容を見た家族がどう受け止めるか、不安になる方も多いでしょう。
付言事項は、遺言の内容を補いながら、財産の分け方を決めた理由や、家族への感謝、これからへの願いを伝えるための文章です。法的な効力はありませんが、遺言者の気持ちや背景を知ることで、家族が内容を受け止めやすくなることがあります。
この記事では、付言事項の意味や基本的な書き方、ケースごとの文例、書くときに気をつけたい点を、やさしく整理して紹介します。

目次
①付言事項とは
付言(ふげん)とは、遺言書に添える、法的効力を持たないメッセージのことです。財産の分け方を決めた理由や、家族への感謝、これからへの願いなどを自由に書くことができます。
一方、付言事項とは、その付言を遺言書の一つの項目として記載した部分を指します。実質的には同じ意味で使われますが、この記事では、思いやメッセージそのものを「付言」、遺言書に記載する項目を「付言事項」として使い分けます。
なお、「付言事項」は法律で明確に定義された正式名称というより、遺言書の作成実務で広く使われている呼び方です。
付言と付言事項の意味
付言には、遺言本文だけでは伝えにくい事情や気持ちを記載します。
たとえば、介護をしてくれた子に多く財産を残す場合には、その子への感謝や、相続分に差をつけた理由を付言として伝えることができます。また、相続人ではない友人や内縁の配偶者へ財産を遺贈する場合には、その人へ財産を残そうと考えた背景を書くこともできます。
付言事項は、遺言書に必ず設けなければならない項目ではありません。しかし、財産の分け方だけでは伝わりにくい思いを残したいときに役立ちます。
遺言本文との違い
遺言本文には、「どの財産を誰に相続させるか」「誰に財産を遺贈するか」といった、財産の承継に関する内容を記載します。
一方、付言事項には、その遺言内容を決めた理由や、家族への思いを記載します。
たとえば、「長女に自宅を相続させる」という指定は遺言本文に書きます。そして、「長年同居し、生活を支えてくれたことへの感謝から、自宅を託すことにしました」というメッセージは、付言事項に記載します。
誰に何を残すかという重要な指定を、付言事項だけに書くのは適切ではありません。財産の承継に関する内容は遺言本文に明確に記載し、付言事項はその背景や思いを補うために使います。
付言事項は、遺言本文の代わりにはなりません。遺言で法的に指定できる内容や、遺言書の種類、作成時の基本ルールについては、遺言とは?種類・効力・書き方をわかりやすく解説で詳しく紹介しています。

付言事項に法的効力はあるのか
付言事項に記載したメッセージには、原則として法的な拘束力はありません。
そのため、「兄弟で仲良くしてほしい」「この分け方を理解してほしい」と書いても、相続人にその内容を強制することはできません。また、付言を書けば相続トラブルを必ず防げるわけでもありません。
ただし、法的効力がないからといって、付言に意味がないわけではありません。
財産の分け方だけが示されていると、相続人が「なぜ自分の取り分が少ないのか」「なぜ家族以外の人に財産を遺すのか」と疑問を抱くことがあります。付言によってその理由や背景が伝われば、遺言者の考えを理解する手がかりになります。
付言事項を書く目的
付言事項を書く主な目的は、遺言本文だけでは伝えにくい事情や思いを、家族や関係者に残すことです。
財産の分け方に差をつけた理由だけでなく、これまで支えてくれたことへの感謝や、家族に穏やかに暮らしてほしいという願いも伝えられます。
大切なのは、付言によって家族に遺言内容を押しつけることではありません。どのような事情を考え、どのような思いで遺言内容を決めたのかを、穏やかな言葉で伝えることです。
付言事項は、遺言書に温かさを添えるとともに、家族が遺言者の考えを受け止めるための手がかりになります。
②付言事項はどのような場合に書くとよい?
付言事項は、遺言本文だけでは、財産の分け方を決めた理由や遺言者の思いが伝わりにくい場合に役立ちます。
特に、相続人ごとの取得分に差がある場合や、相続人以外の人へ財産を遺贈する場合は、理由がわからないままだと、家族が不公平感や戸惑いを抱くことがあります。付言によって背景や感謝の気持ちを伝えることで、遺言内容を理解してもらうための手がかりになります。
| ケース | 付言で伝えるとよい内容 | 文例で扱う内容 |
|---|---|---|
| 法定相続分と異なる割合で相続させる | なぜその割合にしたのか、他の相続人にもどのような思いを持っているのか | 法定相続分と異なる割合で相続させる場合 |
| 介護してくれた子に多く残す | 介護への感謝、多く残すことにした理由 | 介護してくれた子に多く残す場合 |
| 相続人以外へ遺贈する | その人との関係、財産を遺すことにした背景 | 相続人以外へ遺贈する場合 |
| 内縁の配偶者や友人へ遺贈する | 長年支えてくれたことへの感謝、遺贈の理由 | 内縁の配偶者や友人へ遺贈する場合 |
| 孫へ遺贈する | 孫へ財産を遺したい理由、子世代への配慮 | 孫へ遺贈する場合 |
| 事業や不動産を特定の人に承継させる | その人に託す理由、他の相続人への配慮 | 事業や不動産を特定の人に承継させる場合 |
| 再婚相手と前婚の子がいる | それぞれへの思い、財産配分を決めた背景 | 再婚相手と前婚の子がいる場合 |
| 家族全員へ感謝を伝えたい | これまでの感謝、今後の家族への願い | 家族全員へ感謝を伝える場合 |
付言事項は、遺言内容に差がある場合だけに必要なものではありません。財産の分け方が公平であっても、家族への感謝や、これからも支え合ってほしいという願いを伝えるために書くことができます。
一方で、付言事項は、財産の承継方法を指定するためのものではありません。「誰に、どの財産を、どのように承継させるか」は遺言本文に記載し、付言事項では、その理由や思いを補うという使い分けが大切です。
③付言事項の基本的な書き方
付言事項には、決まった書式や文字数のルールはありません。ただし、思いつくままに書くよりも、順序を意識した方が、家族に気持ちが伝わりやすくなります。
基本は、次の流れでまとめると自然です。
感謝 → 財産の分け方を決めた理由 → 他の相続人への配慮 → 家族への願い
すべてを必ず入れる必要はありません。自分の事情に合わせて、必要な内容だけを選びましょう。

まず感謝の気持ちを伝える
付言の冒頭では、これまで支えてくれたことへの感謝を伝えると、文章全体がやわらかくなります。
たとえば、「長年にわたり支えてくれてありがとう」「家族に恵まれ、幸せな人生でした」といった言葉です。
いきなり財産の分け方の説明から始めると、事務的で冷たい印象になることがあります。最初に感謝を添えることで、その後の説明も受け止めてもらいやすくなります。
財産の分け方を決めた理由を書く
相続分に差をつける場合や、特定の人に財産を多く残す場合は、その理由をできるだけ具体的に書きます。
たとえば、介護への感謝、事業を引き継ぐ責任、長年の同居や生活の支えなどです。
理由を書くときは、誰かを評価したり責めたりするのではなく、「なぜこのような分け方にしたのか」を、自分の判断として説明することが大切です。
他の相続人への配慮を添える
一部の相続人に多く財産を残す場合は、他の家族への気持ちも添えるとよいでしょう。
「ほかの子どもたちを大切に思う気持ちに変わりはありません」「それぞれに感謝しています」といった言葉が考えられます。
ただし、「必ず納得してほしい」「争わないでほしい」と強く求めすぎると、かえって負担に感じられることがあります。お願いというよりも、気持ちを伝える程度にとどめるのが自然です。
家族への願いを簡潔に伝える
最後に、家族への願いを短く添えると、付言全体がまとまりやすくなります。
たとえば、「これからも互いに支え合って暮らしてください」「皆の幸せを願っています」といった表現です。
長い説教や細かな指示にするよりも、自分らしい言葉で簡潔に書く方が、気持ちは伝わりやすくなります。
遺言本文と矛盾しない内容にする
付言事項は、遺言本文の内容を補うためのものです。そのため、本文と違うことを書かないように注意します。
たとえば、遺言本文では長男に自宅を相続させると指定しているのに、付言事項で「自宅は兄弟で公平に分けてほしい」と書くと、家族を混乱させてしまいます。
誰に何を残すかは遺言本文に明確に記載し、付言事項では、その理由や感謝の気持ちを伝えるようにしましょう。
付言事項は、きれいな文章を書くことよりも、自分の考えを穏やかに、わかりやすく伝えることが大切です。文例を参考にしながらも、そのまま写すのではなく、自分の事情や家族への思いに合わせて言葉を選びましょう。
④ケース別・遺言書の付言事項の文例

ここからは、よくある状況ごとに付言事項の文例を紹介します。
文例は、そのまま使うための完成文ではありません。家族関係や財産の内容、遺言を作る理由に合わせて、自分の言葉に書き換えることが大切です。
法定相続分と異なる割合で相続させる場合
法定相続分とは異なる割合で財産を分ける場合は、なぜそのような内容にしたのかを付言で説明すると、相続人が遺言者の考えを理解しやすくなります。
文例
私は、これまでの家族それぞれの生活状況や、私との関わりを考えたうえで、この遺言書に記載したとおりに財産を分けることにしました。
相続する財産の割合には違いがありますが、皆を大切に思う気持ちに違いはありません。私なりに考えて決めたことであることを、どうか理解してもらえればと思います。
この文例は、特定の相続人を責めずに、財産の割合に差をつけたことを伝えたい場合に向いています。
ただし、「生活状況を考えた」とだけ書くと、かえって理由がわかりにくいこともあります。差し支えない範囲で、介護、同居、事業の承継など、判断の背景を少し具体的にすると伝わりやすくなります。
介護してくれた子に多く残す場合
介護をしてくれた子に多く財産を残す場合は、その子への感謝と、多く残すことにした理由を付言に記載します。
文例
長女の〇〇には、長年にわたり私の生活や介護を支えてもらいました。心細いときにもそばにいてくれたことを、心から感謝しています。
その感謝の気持ちを込めて、遺言書に記載したとおり、〇〇に多く財産を残すことにしました。ほかの子どもたちへの愛情に違いはありません。私の気持ちを受け止めてもらえれば幸いです。
この文例では、介護への感謝を中心に書き、他の相続人を軽んじているわけではないことも伝えています。
「ほかの子は介護をしてくれなかった」など、他の家族を非難する書き方は避けましょう。誰かを責めるよりも、介護をしてくれた人への感謝を伝える方が、付言の趣旨に合います。
相続人以外へ遺贈する場合
相続人ではない人へ財産を遺贈する場合は、その人との関係や、遺贈を決めた理由を説明します。
文例
〇〇さんには、長い間、私の生活を支えてもらいました。困ったときにはいつも力になってくれ、私にとって大切な存在でした。
これまでの感謝の気持ちを形にしたいと考え、遺言書に記載した財産を〇〇さんに遺贈することにしました。家族の皆にも、私のこの思いを理解してもらえればと思います。
この文例は、親族以外の人へ財産を遺す理由を、家族へ穏やかに説明したい場合に使えます。
付言事項には理由を書きますが、誰にどの財産を遺贈するかという指定は、遺言本文に明確に記載する必要があります。
内縁の配偶者や友人へ遺贈する場合
内縁の配偶者や親しい友人へ遺贈する場合は、長年の支えや関係性を付言に残すとよいでしょう。
文例
〇〇さんは、長年にわたり私のそばにいて、日々の生活を支えてくれました。共に過ごした時間は、私にとってかけがえのないものです。
感謝の気持ちを込めて、遺言書に記載した財産を〇〇さんに遺贈します。家族の皆にも、私がこのように考えた理由を理解してもらえることを願っています。
関係性を説明する際は、必要以上に詳しく書くよりも、どのような支えを受けたのかを穏やかに伝える方が自然です。
孫へ遺贈する場合
孫へ財産を遺贈する場合は、孫に残したい理由と、子世代への気持ちを添えるとよいでしょう。
文例
孫の〇〇には、これからの学びや生活に役立ててほしいという思いから、遺言書に記載した財産を遺贈することにしました。
これは〇〇の将来を応援したいという私の願いによるものです。子どもたちやほかの孫たちを大切に思う気持ちに変わりはありません。
孫だけを特別扱いしているように見えないよう、遺贈の目的を伝えることがポイントです。
ただし、付言事項に「進学費用に使うこと」などと書いても、必ずその使い方をさせられるとは限りません。用途を法的に指定したい場合は、付言だけで判断せず、遺言書全体の設計を確認する必要があります。
事業や不動産を特定の人に承継させる場合
事業や不動産は分けにくいため、特定の相続人にまとめて承継させることがあります。その場合は、なぜその人に託すのかを付言で説明すると、ほかの相続人にも考えが伝わりやすくなります。
事業を承継させる場合の文例
長男の〇〇には、これまで長く事業に携わり、今後も経営を続けてもらいたいと考えています。事業の継続と従業員の生活を守るため、会社に関する財産を〇〇に承継させることにしました。
ほかの家族への思いに違いはありません。私が事業の将来を考えて決めたことであることを、理解してもらえれば幸いです。
この文例は、後継者として事業を担ってきた相続人に、株式や事業用資産などをまとめて承継させる場合に向いています。
「長男だから」ではなく、これまでの関わりや今後の役割を具体的に書くと、理由が伝わりやすくなります。
不動産を承継させる場合の文例
長女の〇〇には、長年にわたり私と同居し、この家の管理や日々の生活を支えてもらいました。〇〇がこれからも安心して暮らせるよう、自宅の土地と建物を〇〇に相続させることにしました。
ほかの子どもたちを大切に思う気持ちに変わりはありません。この家を〇〇に託すことにした私の思いを、受け止めてもらえればと思います。
この文例は、自宅に同居している相続人や、長年その不動産を管理してきた相続人に承継させる場合に使いやすい内容です。
賃貸不動産や事業用不動産の場合は、「管理を続けてきた」「事業に欠かせない」など、その人に託す具体的な理由を入れるとよいでしょう。
なお、付言だけでは、事業用財産や不動産の承継内容は決まりません。誰にどの財産を承継させるかは、遺言本文に明確に記載する必要があります。で明確に指定します。
再婚相手と前婚の子がいる場合
再婚家庭では、それぞれの家族に対する思いと、財産の分け方を決めた背景を丁寧に伝えることが大切です。
文例
妻の〇〇には、長年にわたり生活を共にし、私を支えてもらいました。これからの生活を安心して送ってほしいと考え、遺言書に記載した財産を残すことにしました。
前の結婚で授かった子どもたちも、私にとって大切な家族です。財産の分け方には違いがありますが、皆を思う気持ちに変わりはありません。互いに私の思いを理解してもらえることを願っています。
再婚家庭では、付言だけでなく、遺言本文の内容を明確にしておくことが特に重要です。付言には、家族の一方だけを評価するのではなく、それぞれへの気持ちを記載するとよいでしょう。
家族全員へ感謝を伝える場合
財産の分け方に特別な事情がなくても、家族への感謝や願いを付言として残すことができます。
文例
これまで家族の皆に支えられ、幸せな人生を送ることができました。心から感謝しています。
私が亡くなった後も、それぞれが自分らしく、穏やかに暮らしてくれることを願っています。これからも互いを思いやり、大切に過ごしてください。
感謝を伝える付言は、長く書く必要はありません。かしこまった文章よりも、普段の自分らしい言葉の方が、家族の心に届きやすいことがあります。
⑤付言事項を書くときの注意点と悪い例

付言事項は自由に書けますが、書き方によっては、かえって家族に誤解や負担を与えることがあります。
大切なのは、自分の気持ちを率直に伝えながらも、誰かを責める文章にしないことです。また、財産の承継に関する重要な内容は、付言事項ではなく遺言本文に記載する必要があります。
代表的な注意点を、悪い例と書き換え方とともに見ていきましょう。
| 悪い例 | 問題点 | 書き換え例 |
|---|---|---|
| 長男は何もしてくれなかったので、財産を残しません。 | 相続人を非難する内容は、感情的な対立を強めるおそれがあります。 | これまでの家族それぞれの生活状況や私との関わりを考え、このような財産の分け方にしました。 |
| 私の決めたことなのだから、全員必ず従ってください。 | 家族に強く同意を求めると、心理的な圧力として受け取られることがあります。 | 私なりに十分考えて決めたことであることを、理解してもらえれば幸いです。 |
| 財産は皆で公平に分けてください。 | 遺言本文で特定の財産の承継先を決めている場合、内容が矛盾し、家族を混乱させます。 | 財産の分け方は遺言本文に記載したとおりです。その理由を理解してもらえればと思います。 |
| 自宅は長女に譲ります。 | 誰に何を承継させるかという法的な指定を、付言事項だけに書くのは適切ではありません。 | 遺言本文で自宅を長女に相続させると指定したうえで、付言事項にはその理由や感謝を記載します。 |
| 皆が納得できるように、うまく分けてください。 | 内容が曖昧で、誰が何をすべきか分かりません。 | 財産の承継方法は遺言本文で明確にし、付言事項では分け方を決めた背景を説明します。 |
付言事項では、否定的な理由よりも、感謝や事情を中心に書く方が伝わりやすくなります。
たとえば、「次男は介護をしなかった」と書くよりも、「長女には長年介護を支えてもらったため、感謝を込めて多く財産を残すことにした」と書く方が、遺言者の意図が穏やかに伝わります。
また、長く書けば気持ちが伝わるとは限りません。説明を重ねすぎると、弁明や説教のように感じられることもあります。何に感謝しているのか、なぜその分け方にしたのか、家族にどう受け止めてほしいのかを、簡潔にまとめることが大切です。
文例はあくまで参考です。家族関係や財産の内容に合わせて、自分の言葉に書き換えましょう。
付言事項は、遺言本文の内容を補うためのものです。財産の承継先や割合など、法的な効果を持たせたい内容は遺言本文に明確に記載し、付言事項ではその背景や思いを伝えるようにしましょう。
⑥文例だけで判断せず、遺言書全体を確認した方がよいケース
付言事項は、財産の分け方を決めた理由や家族への思いを伝えるためのものです。
ただし、付言を丁寧に書いても、遺言本文の内容が不明確だったり、希望どおりの承継方法になっていなかったりすると、意図した結果にならないことがあります。
特に、次のような場合は、付言事項だけでなく、遺言書全体の内容を確認することが大切です。
財産の分け方に大きな差がある
相続人ごとの取得分に大きな差がある場合は、その理由を付言で説明することが役立ちます。
一方で、理由を書くだけでは、遺言本文の内容そのものが適切かどうかまでは確認できません。どの財産を誰に残すのか、割合や指定方法にわかりにくさがないかを見直す必要があります。
相続人以外へ財産を遺贈する
内縁の配偶者や友人、孫など、相続人ではない人へ財産を遺贈する場合は、家族が驚いたり、理由を疑問に感じたりすることがあります。
付言では、その人との関係や遺贈を決めた背景を伝えます。
ただし、誰に何を遺贈するのかという指定は、遺言本文に明確に記載しなければなりません。付言に理由を書くだけでは、遺贈の内容は決まりません。
不動産や事業用資産を特定の人に承継させる
不動産や事業用資産は、現金のように分けやすい財産ではありません。特定の相続人にまとめて承継させる場合は、その理由を付言で説明すると、ほかの家族にも考えが伝わりやすくなります。
一方で、対象となる不動産や事業用資産の記載が不明確だと、どの財産を指しているのか判断しにくくなることがあります。付言の文章だけでなく、遺言本文の財産の特定方法も確認する必要があります。
再婚家庭など家族関係が複雑である
再婚相手と前婚の子がいる場合など、家族関係が複雑なケースでは、財産の分け方だけでなく、遺言者の思いも伝わりにくくなりがちです。
付言には、それぞれの家族への感謝や、財産配分を決めた背景を記載します。
ただし、気持ちを丁寧に書いても、遺言本文の内容が曖昧であれば、かえって誤解を招くことがあります。家族関係と財産の内容をあわせて、遺言書全体を整理することが重要です。
付言事項と遺言本文が矛盾していないか不安がある
遺言本文では長男に自宅を相続させると書いているのに、付言事項では「兄弟で公平に分けてほしい」と記載するなど、内容が食い違うと、家族を混乱させます。
付言事項は、遺言本文を補うためのものです。誰に何を残すのかという指定と、その理由や思いが矛盾していないかを確認しましょう。
自分の希望が遺言本文に正しく反映されているかわからない
「自宅は同居している子に残したい」「事業は後継者に引き継いでほしい」といった希望があっても、その内容が遺言本文に正しく表れているとは限りません。
付言は、自分の考えを伝える助けになりますが、遺言本文の記載を補正するものではありません。
財産の分け方に差がある場合や、相続人以外へ遺贈する場合などは、付言事項だけを見るのではなく、遺言書全体の内容を確認した方が安心です。
当事務所では、付言事項の文章だけでなく、財産の内容や家族関係を踏まえて、遺言書全体の作成をサポートしています。自分の希望が正しく反映されているか不安な場合は、作成途中の段階でもご相談いただけます。
⑦付言事項に関するよくある質問
Q:付言事項は必ず書く必要がありますか
付言事項は、必ず書かなければならないものではありません。
遺言本文だけで財産の承継内容が明確であり、特に補足したい事情や家族へのメッセージがない場合は、付言事項を設けなくても問題ありません。
一方で、相続分に差がある場合や、相続人以外へ遺贈する場合など、遺言本文だけでは理由が伝わりにくいときは、付言を書いておくことに意味があります。
Q:付言事項だけで遺言は成立しますか
付言事項だけでは、遺言として財産の承継内容を決めることはできません。
付言事項は、あくまで遺言本文に添えるメッセージです。誰にどの財産を相続させるのか、誰に何を遺贈するのかといった内容は、遺言本文に明確に記載する必要があります。
Q:付言事項は何文字くらいが適切ですか
付言事項に決まった文字数はありません。
短い一文でも、遺言者の気持ちが伝われば十分です。反対に、長く書きすぎると、重要な点がわかりにくくなったり、弁明や説教のように受け取られたりすることがあります。
感謝、財産の分け方を決めた理由、家族への願いを簡潔にまとめると読みやすくなります。
Q:自筆証書遺言にも公正証書遺言にも書けますか
付言事項は、自筆証書遺言にも公正証書遺言にも記載できます。
自筆証書遺言では、遺言本文に続けて付言事項を書きます。公正証書遺言では、公証人に付言として残したい内容を伝え、遺言書に盛り込んでもらいます。
ただし、付言事項を含め、遺言書全体の内容に不明確な点がないようにすることが大切です。
Q:付言事項は後から変更できますか
付言事項を書き直すことはできます。
ただし、付言事項だけを別の紙に書き直すと、どの遺言書に対応するメッセージなのかがわかりにくくなることがあります。遺言本文との整合性を保つためにも、遺言書全体を見直したうえで変更する方が安心です。
公正証書遺言の場合は、変更したい内容を公証人や専門家に相談し、必要に応じて新たな遺言書を作成します。
Q:エンディングノートに書く場合との違いは何ですか
エンディングノートにも、家族への感謝や財産の分け方に関する希望を書くことはできます。
ただし、エンディングノートには、原則として遺言書のような法的効力はありません。家族への気持ちや希望を幅広く残すものとして使われます。
一方、付言事項は、遺言書の中で、遺言本文の内容を補うために記載するものです。
誰にどの財産を残すかは遺言本文に書き、その理由や家族への思いを付言事項で伝えるという使い分けになります。
まとめ
付言事項は、遺言書の中で、財産の分け方を決めた理由や家族への思いを伝えるためのものです。
特に、法定相続分とは異なる割合で相続させる場合や、相続人以外へ遺贈する場合、事業や不動産を特定の人に承継させる場合には、付言が遺言者の考えを伝える助けになります。
ただし、付言事項には法的な拘束力はありません。誰にどの財産を残すかという内容は遺言本文に明確に記載し、付言事項では、その背景や感謝の気持ちを補うことが大切です。
文例は参考になりますが、そのまま使うのではなく、家族関係や財産の内容に合わせて、自分の言葉に整えましょう。
また、財産の分け方に大きな差がある場合や、相続人以外へ遺贈する場合は、付言事項だけでなく、遺言書全体の内容を確認する必要があります。自分の希望が正しく反映されているか不安なときは、作成途中の段階で専門家に相談すると安心です。

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