遺言で他人に財産を残す方法|相続人がいる場合の書き方と注意点

「相続人ではないけれど、生前お世話になった人へ財産を残したい」

友人や知人、内縁の配偶者、介護や身の回りの世話をしてくれた人、近所で支えてくれた人などへ、感謝の気持ちとして財産を残したいと考える方は少なくありません。

相続人がいる場合でも、遺言書を作成すれば、相続人以外の人へ財産を残すことは可能です。

一方で、遺言書の内容が曖昧だと、せっかく残した意思が希望どおりに実現されないおそれがあります。特に、誰に何を残すのかが明確でない場合は、相続手続きの中で判断に迷いが生じることもあります。

この記事では、相続人がいる方が、友人・知人や内縁の配偶者などの相続人以外の人へ財産を残す方法を解説します。遺言書を書くときの基本的な考え方や注意点、預貯金や不動産など財産ごとの書き方まで、わかりやすく整理します。

家族や友人、介護してくれた人へ感謝を込めて財産を残すため、遺言書を作成する高齢者のイラスト
遺言書を作成すれば、法定相続人だけでなく、生前にお世話になった友人や介護してくれた人などへ財産を残すこともできます。

目次

①相続人がいても、他人に財産を残すことはできる

相続人がいる場合でも、遺言書を作成すれば、友人や知人、内縁の配偶者、介護してくれた人など、相続人ではない人へ財産を残すことができます。

相続人ではない人は、どれほど親しい関係にあっても、原則として法律上の相続権を持ちません。そのため、何も準備をしないまま亡くなると、財産は配偶者や子どもなどの法定相続人に引き継がれます。

相続人以外の人へ財産を残したい場合は、遺言書の中で、その意思を明確に示しておく必要があります。

一般には「他人に相続させる」と表現されることがありますが、法律上、相続人ではない人へ遺言で財産を残すことを「遺贈」といいます。財産を受け取る人は「受遺者」と呼ばれます。

たとえば、長年生活を支えてくれた内縁の配偶者や、日常的に身の回りの世話をしてくれた友人に財産を残したい場合でも、遺言書がなければ、その意思が自動的に反映されるわけではありません。

誰に、どの財産を残したいのかを遺言書に記載しておくことで、自分の意思を相続手続きに反映できます。

遺贈できる相手や遺贈の種類については、遺贈の基本と包括遺贈・特定遺贈の違いをご覧ください。

②遺言で財産を残せる「他人」とは

遺言書を持つ高齢女性と、友人や内縁の配偶者、介護者、近所の人、甥や姪をイメージした人々
遺言書を作成すれば、相続人だけでなく、友人や内縁の配偶者など、お世話になった人へ財産を残すこともできます。

遺言による遺贈では、相続人ではない個人にも財産を残すことができます。

たとえば、次のような相手が考えられます。

財産を残したい相手主な注意点
友人・知人親しい関係であっても、原則として相続権はありません。氏名や住所、生年月日などで本人を特定できるようにします。
内縁の配偶者・事実婚のパートナー長年一緒に暮らしていても、法律上の配偶者でなければ原則として法定相続人にはなりません。
介護や身の回りの世話をしてくれた人介護や生活支援をしていた事実だけで、当然に相続権が生じるわけではありません。
近所で生活を支えてくれた人日常的に助けてもらっていたとしても、遺言がなければ財産を受け取ることはできません。
相続人ではない甥・姪や遠い親族甥や姪は家族関係によって相続人になる場合もあるため、現在の相続関係を確認する必要があります。

このように、遺言で財産を残せる相手は、親族に限られません。生前にお世話になった人や、生活を支えてくれた人にも財産を残せます。

孫へ財産を残したい場合は、孫が相続人になるケースもあるため、遺言で孫に財産を残す方法で詳しく整理しています。

個人ではなく団体へ財産を残したい場合は、遺言でNPOや公益法人へ寄付する方法をご覧ください。団体への遺贈にかかる税金については、遺言による寄付と相続税の関係で解説しています。

③他人に財産を残す遺言書の書き方と注意点

相続人以外の人へ財産を残す場合は、誰に、どの財産を遺贈するのかが明確に分かるように記載することが重要です。

まずは、不動産と預貯金を友人へ遺贈する場合の記載例を確認しましょう。

以下は一般的な記載例です。実際の遺言書は、財産内容や家族関係に応じて調整する必要があります。

遺言書の周囲に受遺者、不動産、預貯金、遺言執行者を配置した遺贈内容の整理イラスト
遺言書では、誰にどの財産を遺贈するのかを具体的に記載し、必要に応じて遺言執行者も指定します。

まずは遺言書の完成例を確認する

遺言書

第1条
遺言者は、次の不動産を、友人である〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生、住所:東京都〇〇区〇〇一丁目〇番〇号)に遺贈する。

1 土地
所在 東京都〇〇区〇〇町一丁目
地番 〇番〇
地目 宅地
地積 〇〇・〇〇平方メートル

2 建物
所在 東京都〇〇区〇〇町一丁目〇番地〇
家屋番号 〇番〇
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階〇〇・〇〇平方メートル
    2階〇〇・〇〇平方メートル

第2条
遺言者は、次の預貯金を、前条記載の〇〇〇〇に遺贈する。

〇〇銀行〇〇支店
普通預金
口座番号 〇〇〇〇〇〇〇

第3条
第1条および第2条の受遺者である〇〇〇〇が、遺言者の死亡以前に死亡した場合、または遺贈を放棄した場合は、同条記載の財産を、△△△△(昭和〇年〇月〇日生、住所:東京都〇〇区〇〇二丁目〇番〇号)に遺贈する。

第4条
遺言者は、本遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。

住所 東京都〇〇区〇〇三丁目〇番〇号
職業 行政書士
氏名 □□□□

付言事項
〇〇さんには、長年にわたり私の通院や日常生活を支えていただきました。その感謝の気持ちとして、上記の財産を遺贈します。相続人の皆さまには、私の意思を理解していただければ幸いです。

令和〇年〇月〇日

住所 東京都〇〇区〇〇四丁目〇番〇号
遺言者 〇〇〇〇 印

「相続させる」ではなく「遺贈する」と書く

相続人ではない人へ財産を残す場合は、「相続させる」ではなく「遺贈する」と記載します。

日常会話では「友人に相続させたい」と表現することがありますが、法律上、相続人以外の人へ遺言によって財産を渡すことは「遺贈」といいます。財産を受け取る人は「受遺者」と呼ばれます。

受遺者の氏名・住所・生年月日を書く

受遺者は、氏名だけでなく、住所や生年月日なども記載し、誰を指しているのか特定できるようにします。

友人や近所の人の場合、相続人がその人を知らないこともあります。同姓同名の人がいる可能性もあるため、受遺者を明確に特定できる情報を記載しておくことが大切です。

不動産は登記情報に沿って記載する

不動産を遺贈する場合は、「自宅」「東京都内の土地」といった表現ではなく、登記事項証明書の記載に沿って特定します。

土地であれば、所在、地番、地目、地積を記載します。建物であれば、所在、家屋番号、種類、構造、床面積などを記載します。

住所として普段使っている住居表示と、登記上の所在や地番は異なる場合があるため、登記事項証明書を確認して記載することが重要です。

預貯金は金融機関名・支店名・口座番号を書く

預貯金を遺贈する場合は、金融機関名、支店名、預金の種類、口座番号などを記載します。

単に「私の預金を遺贈する」と書くと、複数の口座がある場合に、どの預貯金を指しているのか分からなくなることがあります。

特定の口座を遺贈したい場合は、対象となる預貯金を具体的に特定しておきましょう。

付言事項で関係や遺贈の理由を伝える

友人や知人、介護してくれた人へ財産を残す場合、相続人がその関係や経緯を知らないことがあります。

そのような場合は、付言事項に、受遺者との関係、財産を残したい理由、感謝の気持ちなどを書いておく方法があります。

付言事項には、通常、財産を取得させる法的効力はありません。ただし、なぜその人に財産を残すのかを相続人へ伝え、遺言内容への理解を得るために役立つことがあります。

遺言書を読む家族が、高齢女性を支えた友人や介護者との交流を思い浮かべているイラスト
付言事項に生前の関係や感謝の気持ちを記しておくことで、財産を残した理由を相続人に伝えやすくなります。

受遺者が財産を受け取らない場合に備える

遺言書に遺贈すると書いても、受遺者が必ず財産を受け取るとは限りません。

特に不動産は、固定資産税や維持管理の負担が生じるため、受遺者が遺贈を放棄する可能性もあります。可能であれば、生前に受け取る意思があるか確認しておくと安心です。

また、受遺者が遺言者より先に亡くなる可能性もあります。その場合に誰へ財産を残すか、予備的な遺言を設けることも検討できます。

遺言執行者を指定する

遺言執行者とは、遺言書の内容に従って、財産の名義変更や引き渡しなどの手続きを行う人です。

相続人以外の人へ財産を遺贈する場合、相続人と受遺者との間で手続きが必要になることがあります。遺言執行者を指定しておけば、遺言の内容を実現するための手続きを進めやすくなります。

④希望どおりに財産を残すために専門家へ相談した方がよいケース

高齢女性が行政書士に、不動産や預貯金の資料を見せながら遺言書について相談しているイラスト
相続人以外の人へ財産を残す場合は、財産の内容や受遺者を整理しながら、専門家と遺言書の内容を確認すると安心です。

相続人以外の人へ財産を残す遺言書は、自分で作成することもできます。

ただし、受遺者や財産の特定が難しい場合や、不動産を含む場合、財産の大部分を相続人以外の人へ残したい場合は、遺言書の内容を専門家へ確認してもらうと安心です。

受遺者や財産を正確に特定できるか不安な場合

遺言書では、誰にどの財産を残すのかが明確であることが重要です。

受遺者の住所や生年月日が分からない場合や、不動産の登記情報、預貯金口座の内容を正確に記載できるか不安な場合は、専門家に確認してもらうことで、曖昧な記載を避けやすくなります。

相続人以外の人へ財産の大部分を残したい場合

友人や内縁の配偶者などへ、財産の大部分を残したいケースでは、相続人との関係や財産全体の配分も考える必要があります。

本人の意思を明確に残すことは大切ですが、遺言書の内容によっては、相続人との間で問題が生じる可能性もあります。財産の残し方や付言事項の内容まで含めて、事前に整理しておくことが重要です。

不動産を遺贈したい場合

不動産は、登記上の表示を正確に記載する必要があります。

また、共有持分がある場合や、土地と建物の名義が異なる場合、複数の不動産を所有している場合などは、どの不動産を遺贈するのか分かりにくくなることがあります。

不動産を含む遺言書は、作成前に登記情報を確認し、内容に漏れがないかチェックしてもらうと安心です。

遺言執行者の指定まで含めて相談したい場合

相続人以外の人へ財産を残す場合は、遺言書を作成するだけでなく、亡くなった後に誰が手続きを進めるかも重要です。

遺言執行者を指定しておけば、受遺者への財産の引き渡しや名義変更などを進めやすくなります。

誰を遺言執行者にするべきか分からない場合や、相続人と受遺者の間で手続きが円滑に進むか不安な場合は、遺言書の作成とあわせて相談しておくとよいでしょう。

自分の意思を遺言書に残しても、記載が曖昧であれば、希望どおりに実現できないことがあります。

当事務所では、財産や家族関係を整理したうえで、相続人以外の人へ財産を残すための遺言書作成をサポートしています。まずは、ご自身の希望を整理するところからご相談ください。

⑤よくある質問

Q:相続人がいても友人に財産を残せますか

はい。相続人がいる場合でも、遺言書で友人を受遺者として指定すれば、財産を残すことができます。

ただし、友人は原則として法定相続人ではないため、遺言書がなければ自動的に財産を取得することはできません。誰にどの財産を残すのかを明確に記載しておく必要があります。

Q:他人に全財産を残すことはできますか

遺言書で、相続人以外の人に全財産を遺贈する内容を定めることはできます。

ただし、相続人がいる場合は、家族関係や財産の内容によって問題が生じる可能性があります。全財産または財産の大部分を相続人以外の人へ残したい場合は、遺言書の文言だけでなく、財産配分や付言事項の内容も含めて専門家へ相談した方が安心です。

Q:内縁の配偶者は相続人になりますか

婚姻届を提出していない内縁の配偶者は、原則として法定相続人にはなりません。

長年一緒に生活していた場合でも、遺言書がなければ、内縁の配偶者が財産を取得できないことがあります。自宅や預貯金を残したい場合は、遺言書で具体的に遺贈する財産を指定しておくことが大切です。

Q:介護してくれた人には相続権がありますか

介護や身の回りの世話をしてくれた事実だけで、その人に当然に相続権が生じるわけではありません。

感謝の気持ちとして財産を残したい場合は、遺言書で受遺者と財産を明確に指定します。また、相続人が介護の経緯を知らない場合は、付言事項に関係性や遺贈する理由を書いておくことも考えられます。

Q:遺言書には住所や生年月日まで書く必要がありますか

住所や生年月日の記載が常に必須というわけではありませんが、受遺者を間違いなく特定するために記載しておくと安心です。

特に、友人や知人、近所の人など、相続人が面識を持っていない相手へ財産を残す場合は、氏名だけでなく、住所や生年月日も記載しておくと、同姓同名の人との混同を防ぎやすくなります。

Q:自筆証書遺言でも他人へ遺贈できますか

はい。自筆証書遺言でも、相続人以外の人へ財産を遺贈できます。

ただし、自筆証書遺言には、書き方の不備や財産の特定不足などに注意が必要です。遺言の方式や作成方法については、遺言全般を解説した記事で詳しく確認できます。

自筆証書遺言と公正証書遺言の違いなど、遺言の種類や基本的な効力については、こちらの記事で詳しく解説しています。

まとめ|相続人以外へ財産を残すなら遺言書で内容を明確にする

相続人がいる場合でも、友人や知人、内縁の配偶者、介護してくれた人、近所で支えてくれた人などへ、遺言書によって財産を残すことができます。

ただし、相続人以外の人へ財産を残す場合は、遺言書の中で「誰に」「どの財産を」残すのかを明確にすることが重要です。受遺者の氏名だけでなく、住所や生年月日なども記載し、不動産や預貯金についても特定できる情報を記載します。

また、相続人が受遺者との関係を知らない場合は、付言事項に、生前の関係や財産を残したい理由、感謝の気持ちを書いておく方法もあります。

遺言書は、書けば必ず希望どおりに実現できるとは限りません。財産の内容や家族関係によっては、予備的な指定や遺言執行者の選任まで含めて検討する必要があります。

相続人以外の人へ財産を残したいと考えている方は、まずは財産の内容と残したい相手を整理し、遺言書の作成方法を専門家へ相談してみてください。

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  • 国家資格:行政書士(登録番号:25080391)
  • 経歴:IT業界出身/相続・遺言分野を専門取り組み中
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