遺言書による遺贈とは?基本知識から書き方、注意点まで徹底解説

遺言書による遺贈とは?基本知識を解説

遺贈(いぞう)とは、遺言書を通じて自分の財産を特定の個人や法人に譲ることを指します。遺言書は、亡くなった方(被相続人)の意思を法的に反映する重要な文書です。

遺贈の定義と遺言書との関係

遺贈は「相続」と混同されやすいですが、相続は法律で定められた法定相続人が対象であるのに対し、遺贈は遺言書に基づき、法定相続人以外にも財産を譲ることが可能です。

遺贈と相続の違い

項目遺贈相続
法的根拠遺言書民法(法定相続)
受取人の範囲誰でも指定可能法定相続人
税金相続税が課税相続税が課税

遺贈が行われるケースの具体例

  • 法定相続人以外の友人へ財産を残したい場合
  • お世話になった団体や慈善団体に寄付をしたい場合
  • 内縁のパートナーに財産を譲りたい場合

遺贈の種類と特徴

遺贈には主に「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類があります。それぞれ特徴を理解して適切な選択をしましょう。

包括遺贈と特定遺贈の違い

  • 包括遺贈: 財産の全部または一定割合をまとめて譲る形式。例:「全財産の3分の1をAさんに遺贈する」
  • 特定遺贈: 特定の財産を指定して譲る形式。例:「自宅の土地をBさんに遺贈する」

金銭・不動産など財産別の遺贈例

  • 不動産  : 自宅や別荘の土地・建物
  • 現金・預金: 銀行口座の預金
  • 株式   : 株券や証券口座の資産

遺贈と生命保険の関係性

生命保険は「受取人指定」ができるため、遺言書がなくても財産分配が可能ですが、遺贈として記載することで相続人以外にも確実に保険金を渡せます。

遺言書による遺贈の書き方とポイント

遺言書の作成は、自分の意思を確実に伝え、トラブルを避けるために非常に重要です。遺贈を実行するための遺言書には、主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があります。それぞれの作成方法と特徴を理解しましょう。

自筆証書遺言で遺贈を記載する方法

自筆証書遺言は、全文を自分の手で書く形式の遺言書です。2020年の法改正により、財産目録はパソコンで作成しても良いことになりましたが、本文は必ず手書きが必要です。また、日付・署名・押印がなければ無効になるため、注意が必要です。財産の特定も重要で、例えば「〇〇銀行〇〇支店の普通預金口座(口座番号123456)」など、具体的に記載する必要があります。

公正証書遺言で遺贈を行う手順

  • 公証役場で公証人の立ち会いのもと作成する
  • 証人2名の立会いが必要
  • 原本が公証役場に保管されるため紛失リスクがない

遺贈に必要な具体的な記載例

「私は、全財産のうち自宅(登記番号〇〇)を長男〇〇に、預金口座(〇〇銀行〇〇支店)を親友△△に遺贈する。」

このように、誰に何を遺贈するのかを明確に記載することが大切です。

遺贈における法的注意点とトラブル対策

遺贈には法律上の制約や注意点があります。事前に確認し、トラブルを未然に防ぎましょう。

遺留分侵害とその対策

遺留分とは、法定相続人に保証された最低限の取り分のことで、兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者、子、直系尊属)が請求できます。例えば、遺言書で「全財産を友人に遺贈する」と記載しても、法定相続人は遺留分侵害額請求をする権利があります。これを防ぐためには、遺言書の中で遺留分に配慮した分配を行うか、あらかじめ相続人と話し合っておくことが大切です。

受遺者が未成年・法人の場合の対応

受遺者が未成年の場合は、法定代理人を通して遺贈を受け取る必要があります。法人を受遺者に指定する場合は、その法人に法的人格があることを確認しましょう。

無効になる遺言書の例と注意点

遺言書が無効になるケースにも注意が必要です。たとえば、自筆証書遺言で日付や署名が欠けている場合、公正証書遺言で証人に相続人が含まれている場合は無効となります。複数の遺言書が発見された場合は、日付が新しいものが優先されますが、内容が矛盾しないよう定期的に遺言書を見直すことも重要です。

遺贈に関する税金や費用について知っておこう

遺贈に関する税金や費用について知っておこう

遺贈にかかる相続税の基本ルール

遺贈には相続税がかかるため、税務面の知識も重要です。遺贈は相続と同様に相続税の課税対象となり、相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)が適用されます。ただし、法定相続人以外に遺贈した場合は、相続税の2割加算が適用されます。例えば、友人や内縁のパートナーへの遺贈は、相続税が割高になります。

特例や控除制度について解説

配偶者が遺贈を受けた場合は「配偶者の税額軽減」により、1億6,000万円または法定相続分までの財産については相続税が免除されます。さらに、公益法人などへの遺贈は非課税となるため、社会貢献目的での遺贈は節税効果も期待できます。

登録免許税や不動産取得税などの諸費用

不動産を遺贈する場合は、相続税のほかに登録免許税や不動産取得税などの費用が発生します。登録免許税は不動産の固定資産評価額の0.4%、不動産取得税は原則として評価額の3%ですが、居住用住宅などの場合は軽減措置が受けられます。

遺言書による遺贈に関するよくある質問

Q1. 遺贈は相続放棄と関係がありますか?

遺贈は相続とは別の権利なので、相続放棄をしても遺贈は拒否しない限り有効です。ただし、受遺者が遺贈を受けたくない場合は、相続放棄とは異なり、遺贈放棄の意思を示すだけで放棄が可能です。

Q2. 受遺者が遺贈を拒否することはできますか?

受遺者は、遺贈を拒否する権利があります。その際、相続放棄のように家庭裁判所への申し立ては不要で、意思表示だけで遺贈の拒否が成立します。

Q3. 遺言書が複数ある場合はどうなりますか?

複数の遺言書が見つかった場合は、原則として「日付が新しい遺言書」が優先されます。ただし、後の遺言書が前の遺言書のすべてを取り消していない場合は、両方の遺言書の有効な部分が併用されることもあります。そのため、古い遺言書はきちんと破棄するか、新しい遺言書に「以前の遺言をすべて無効とする」と記載しておくことが重要です。

まとめ|遺言書を活用して円滑な遺贈を実現しよう

遺贈はトラブルの原因にもなりやすいため、遺留分や税務などの法的知識をしっかりと理解することが重要です。特に、公正証書遺言を利用することで、遺贈の意思を確実に実現できるでしょう。

また、遺贈にかかる税金や諸費用を事前に把握し、相続人や受遺者の負担を考慮することも大切です。さらに、遺言書は定期的に見直し、最新の意思を反映させることで不要なトラブルを防げます。

将来のトラブルを防ぎ、あなたの大切な想いを確実に残すために、ぜひ今から遺言書の準備を始めましょう。必要に応じて、専門家のサポートを受けることで、安心して遺言書を作成できます。