遺言で寄付する方法|NPO・公益法人へ財産を残す事例と流れを解説

「自分の財産を、将来の子どもたちのために役立てたい」
「お世話になった医療機関や福祉団体へ、感謝の気持ちを残したい」
「関心のある社会課題に取り組むNPOへ、遺言で寄付したい」

このように、自分が亡くなったあとに財産を社会のために使ってほしいと考える方は少なくありません。

遺言を作成すれば、NPO法人、公益法人、医療・福祉団体などへ財産を寄付することができます。法律上は「遺贈」という方法にあたり、相続人以外の団体へ財産を残す手段として活用されています。

ただし、遺言で寄付をする場合は、単に「寄付したい」と書くだけでは十分ではありません。
寄付先の正式名称、寄付する財産の内容、受け入れ可否、遺言執行者の指定などをきちんと整理しておかないと、せっかくの想いが希望どおりに実現できない可能性があります。

また、NPO法人や公益法人といっても、活動内容や受け入れ体制は団体によって異なります。寄付先を選ぶ際には、自分の想いに合った活動をしているか、継続的な活動実績があるか、寄付をどのように活用しているかを確認しておくことも大切です。

この記事では、遺言で寄付する方法について、IT行政書士事務所での相談事例をもとに、NPO法人・公益法人などへ財産を残すケース、手続きの流れ、遺言書に書く際のポイント、注意点をわかりやすく解説します。

「財産を誰に残すか」だけでなく、「自分の財産をどのような未来につなげたいか」を考えるきっかけとして、ぜひ参考にしてください。

遺言書を作成する高齢者と、教育支援・医療福祉・NPO活動への寄付による社会貢献を表現したイラスト
遺言による寄付(遺贈寄付)は、自分の想いを未来へつなぎ、教育・医療・福祉・NPO活動などの社会貢献につなげる方法の一つです。

目次

①遺言で寄付はできる?まず結論から解説

結論からいうと、遺言によってNPO法人や公益法人、医療・福祉団体などへ財産を寄付することは可能です。

通常、人が亡くなったときの財産は、配偶者や子どもなどの法定相続人に引き継がれます。
しかし、遺言書を作成しておけば、相続人以外の団体に対しても、自分の財産を残す意思を示すことができます。

このように、遺言によって特定の人や団体へ財産を渡す方法を、法律上は「遺贈」といいます。
遺言による寄付は、この遺贈の仕組みを使って行うものです。

たとえば、次のような寄付先が考えられます。

・NPO法人
・公益社団法人・公益財団法人
・学校法人
・医療法人
・社会福祉法人
・日本赤十字社のような医療・災害救護に関わる団体
・国や地方公共団体

遺言で寄付をする場合、重要なのは「どこに寄付したいか」だけではありません。
実際には、誰に、どの財産を、どのような形で残すのかを、遺言書の中で明確にしておく必要があります。

たとえば、「福祉に役立ててほしい」「子どものために使ってほしい」といった想いだけでは、具体的にどの団体へ財産を渡すのかが分かりません。
そのため、遺言書では、寄付先となる団体名や寄付する財産の内容を、できるだけ特定できるように記載することが大切です。

また、寄付先によっては、現金であれば受け入れられる一方で、不動産や株式などは受け入れが難しい場合もあります。
そのため、遺言書を作成する前に、寄付先の活動内容や受け入れ体制を確認しておくと安心です。

遺言による寄付は、自分の財産を社会に役立てるための有効な方法です。
ただし、希望どおりに実現するには、寄付先の選び方、財産の指定方法、遺言書の作成方法まで含めて、慎重に準備する必要があります。

遺言によって相続人以外の人や団体へ財産を残す方法は、法律上「遺贈」と呼ばれます。遺贈の基本や、包括遺贈・特定遺贈の違いについては、遺贈の基本や包括遺贈・特定遺贈の違いはこちらで詳しく解説しています。

②遺言で寄付する主な事例|当事務所での相談をもとに紹介

遺言書による寄付で教育支援、NPO活動、医療・福祉支援につながる3つの活用例を表したイラスト
遺言による寄付は、教育支援やNPO活動、医療・福祉など、自分が応援したい分野へ想いを未来につなぐ方法の一つです。

当事務所では、遺言によって公益法人やNPO法人などへ寄付したいというご相談を受けることがあります。

以下では、当事務所で受けた相談をもとに、遺言で寄付を検討される主なケースを紹介します。

なお、依頼者様の個人情報を守るため、具体的な人物像や財産内容、相談の経緯などは一部変更・抽象化しています。あくまで、遺言による寄付を検討する際の参考事例としてご覧ください。

事例1:教育支援・奨学金支援に財産を役立てたい

子どもがいない方の中には、自分の財産を家族に残すだけでなく、将来を担う子どもたちや学生のために役立てたいと考える方もいます。

たとえば、経済的な理由で進学をあきらめざるを得ない子どもや、親を亡くした子ども、家庭環境により十分な教育機会を得にくい若者を支援したいという思いから、遺言による寄付を検討するケースです。

寄付先の候補としては、親を亡くした子どもたちを支援するあしなが育英会や、奨学金事業などを通じて学生の学びを支える独立行政法人日本学生支援機構などが考えられます。

特に、日本学生支援機構の前身である日本育英会は、長年にわたり奨学金制度を通じて多くの学生の進学を支えてきました。ご自身や身近な方が奨学金に支えられた経験から、「次は自分の財産を、学びたい若者のために役立てたい」と考える方もいるでしょう。

教育支援や奨学金支援を目的とした遺言による寄付は、「財産を誰に残すか」だけでなく、「自分の財産をどのような未来につなげたいか」を選ぶ方法でもあります。

子どもがいない方にとっても、財産を次世代の学びや挑戦に役立てることで、自分の想いを社会に残すことができます。

事例2:関心のある社会課題に取り組むNPOへ寄付したい

当事務所でも、財産の一部をNPO法人へ寄付したいという趣旨のご相談を受けることがあります。

たとえば、子ども食堂、動物保護、災害支援、生活困窮者支援など、生前から関心を持っていた社会課題に取り組む団体へ、遺言によって財産を託したいというケースです。

このような寄付は、家族や親族への財産承継とは別に、自分が大切にしてきた価値観や社会への思いを形にする方法でもあります。

「地域で孤立している子どもたちを支えたい」
「保護犬や保護猫の活動を応援したい」
「災害時に困っている人の支援に使ってほしい」
「生活に困っている人の再出発を支える活動に役立てたい」

このように、遺言による寄付は、生前に関心を持っていた社会課題に対して、亡くなったあとも関わり続ける一つの方法といえます。

一方で、NPO法人は団体ごとに活動内容や運営体制が異なります。寄付先を選ぶ際は、ホームページの活動報告、事業報告書、会計情報、寄付金の使途、継続的な活動実績などを確認しておくと安心です。

せっかくの寄付を有効に活用してもらうためにも、「活動に共感できるか」だけでなく、「継続的に活動しているか」「寄付を受け入れる体制があるか」まで確認しておくことが大切です。

事例3:お世話になった医療・福祉活動へ寄付したい

入院や治療、介護、地域の福祉活動などをきっかけに、お世話になった医療機関や福祉団体へ感謝の気持ちとして寄付したいと考える方もいます。

たとえば、病気やけがで入院した経験がある方、家族の介護を通じて福祉サービスに支えられた方、災害時の医療・救護活動に助けられた方などが、医療や福祉に関わる団体への寄付を検討するケースです。

代表的な支援分野の例としては、日本赤十字社のように、医療事業や災害救護、血液事業、社会福祉活動などに取り組む団体が挙げられます。

このような寄付は、「お世話になったから感謝を形にしたい」という思いだけでなく、「同じように困っている人を支える活動に役立ててほしい」という願いにもつながります。

医療や福祉への寄付は、これまで受けた支援への感謝を、次に支援を必要とする人へつなぐ方法ともいえるでしょう。

③遺言で寄付する流れ

遺言で寄付をする場合は、いきなり遺言書を書き始めるのではなく、寄付の目的や寄付先、財産の内容を整理したうえで進めることが大切です。

「どこかに寄付したい」という気持ちがあっても、寄付先が具体的に決まっていなかったり、寄付したい財産を団体側が受け入れられなかったりすると、希望どおりに実現できない可能性があります。

遺言による寄付について、寄付先の検討から受け入れ確認、財産整理、遺言書作成、遺言執行者の指定、公正証書遺言の作成までの流れを表したイラスト
遺言による寄付は、寄付先の選定や受け入れ確認、財産の整理、遺言書の作成、遺言執行者の指定など、事前の準備を順番に進めることが大切です。

遺言による寄付は、一般的には次のような流れで検討します。

寄付したい分野や方針を決める

教育支援、医療・福祉、災害支援など、まずは財産をどのような目的に役立てたいかを整理します。

具体的な寄付先を調べる

自分の想いに合うNPO法人、公益法人、医療・福祉団体などを候補として確認します。

寄付先の活動実態や受け入れ体制を確認する

活動報告や会計情報、寄付金の使途、遺言による寄付の受け入れ可否を確認します。

寄付する財産を決める

現金、預貯金、不動産、株式など、どの財産を寄付にあてるのかを整理します。

遺言書に寄付内容を明確に記載する

寄付先の正式名称や寄付する財産を特定し、「遺贈する」と明確に記載します。

遺言執行者を指定する

相続発生後に寄付の手続きを進める人を、遺言書の中で指定しておきます。

公正証書遺言の作成を検討する

寄付を確実に実現したい場合は、形式不備や紛失リスクを抑えられる公正証書遺言を検討します。

それぞれのステップについて、順番に確認していきましょう。

1. 寄付したい分野や方針を決める

まずは、どのような分野に財産を役立てたいのかを整理します。

たとえば、教育支援、奨学金支援、医療・福祉、災害支援、動物保護、子ども食堂、生活困窮者支援など、寄付したい分野は人によってさまざまです。

この段階では、具体的な団体名まで決まっていなくても問題ありません。

「子どもの進学を支えたい」
「医療や福祉に役立ててほしい」
「災害時に困っている人の支援に使ってほしい」
「地域で活動している団体を応援したい」

このように、まずは自分の財産をどのような目的に使ってほしいのかを言葉にしていきます。

寄付先を先に決めるよりも、自分の想いに合う分野を整理してから団体を探す方が、納得しやすい寄付につながります。

2. 具体的な寄付先を調べる

寄付したい分野が見えてきたら、次に具体的な寄付先を調べます。

NPO法人、公益法人、学校法人、医療・福祉団体、独立行政法人、国・地方公共団体など、遺言による寄付先の候補は複数あります。

同じ「教育支援」でも、奨学金支援を中心に行う団体もあれば、親を亡くした子どもを支援する団体、地域の学習支援に取り組む団体もあります。
また、同じ「医療・福祉」でも、医療活動、災害救護、介護支援、障がい者支援など、活動内容は団体によって異なります。

そのため、団体名の知名度だけで決めるのではなく、自分が支援したい内容と団体の活動内容が合っているかを確認することが大切です。

3. 寄付先の活動実態や受け入れ体制を確認する

寄付先の候補が見つかったら、その団体がどのような活動をしているのか、継続的に事業を行っているのかを確認します。

特にNPO法人へ寄付する場合は、団体ごとに活動内容や運営体制が異なります。ホームページの活動報告、事業報告書、会計情報、寄付金の使途、継続的な活動実績などを確認しておくと安心です。

また、遺言による寄付を受け入れているかどうかも重要です。

現金や預貯金であれば受け入れやすい場合でも、不動産、株式、動産などは、管理や売却の負担が生じるため、団体によっては受け入れが難しいことがあります。

「寄付したい団体がある」ことと、「その団体が希望する財産を受け入れられる」ことは別の問題です。
遺言書を作成する前に、受け入れ可否や手続きの流れを確認しておきましょう。

4. 寄付する財産を決める

次に、どの財産を寄付するのかを決めます。

遺言による寄付の対象になる財産としては、現金、預貯金、不動産、株式、投資信託などが考えられます。

ただし、寄付する財産は、できるだけ分かりやすく特定できる形にしておくことが大切です。

たとえば、「預貯金の一部を寄付する」とだけ書くと、どの口座からいくら寄付するのかが分かりにくくなることがあります。
また、不動産を寄付する場合は、所在地や地番などによって対象財産を特定する必要があります。

寄付する財産を決める際は、自分の財産全体を整理し、どの財産を寄付にあてるのかを明確にしておきましょう。

5. 遺言書に寄付内容を明確に記載する

寄付先と寄付する財産が決まったら、その内容を遺言書に記載します。

遺言で寄付をする場合は、寄付先となる団体名、寄付する財産、遺言者の意思が明確に分かるように書くことが重要です。

たとえば、団体名は略称ではなく正式名称で記載します。所在地や法人番号など、団体を特定できる情報も確認しておくと安心です。

また、遺言書では「寄付する」という表現だけでなく、「遺贈する」と明確に記載することが一般的です。

遺言書の書き方があいまいだと、相続発生後に手続きが進みにくくなることがあります。
記載例や具体的な注意点については、次の章で詳しく解説します。

6. 遺言執行者を指定する

遺言による寄付を確実に実現するためには、遺言執行者を指定しておくことも重要です。

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人のことです。
寄付先への連絡、財産の引き渡し、名義変更、金融機関での手続きなどを進める役割を担います。

遺言執行者がいない場合、相続発生後の手続きがスムーズに進まないことがあります。
特に、NPO法人や公益法人などの団体へ寄付する場合は、誰が寄付の手続きを進めるのかを明確にしておくことが大切です。

家族に任せる方法もありますが、内容によっては専門家を遺言執行者として指定することも検討されます。

7. 公正証書遺言の作成を検討する

最後に、遺言書の形式を検討します。

自筆証書遺言でも、遺言による寄付は可能です。
ただし、自筆証書遺言は、形式不備、内容のあいまいさ、紛失、発見されないリスクなどに注意が必要です。

寄付先や財産内容を明確にし、相続発生後に遺言の内容を実現しやすくするためには、公正証書遺言の作成を検討すると安心です。

公正証書遺言は、公証人が関与して作成する遺言です。原本が公証役場に保管されるため、紛失のリスクを抑えられます。
また、寄付先、財産内容、遺言執行者の指定まで含めて整理しやすい点もメリットです。

遺言による寄付は、「寄付したい」という気持ちだけでなく、寄付先、財産、遺言書、遺言執行者をセットで考えることが大切です。
事前に流れを整理しておくことで、自分の想いをより確実に社会へつなげることができます。

④遺言書にはどう書く?寄付する場合の記載ポイント

遺言で寄付をする場合は、寄付先や財産の内容が明確に分かるように書くことが大切です。

「子ども支援に使ってほしい」「福祉に役立ててほしい」といった想いを書くこと自体は大切ですが、それだけでは、どの団体にどの財産を渡すのかが分かりません。

遺言書の記載があいまいだと、相続発生後に手続きが進みにくくなったり、寄付先へ財産を渡せなかったりする可能性があります。

ここでは、遺言書に寄付内容を書くときの基本的なポイントを整理します。

団体名は正式名称で記載する

寄付先を書くときは、略称ではなく正式名称で記載します。

たとえば、普段は略称や通称で呼ばれている団体でも、遺言書では法人登記上の名称や正式な団体名を確認して書くことが大切です。

団体名があいまいだと、相続発生後に「どの団体を指しているのか」が分からなくなるおそれがあります。似た名称の団体がある場合や、地域ごとに関連団体がある場合には、特に注意が必要です。

所在地や法人番号なども確認しておく

団体をより正確に特定するためには、正式名称だけでなく、所在地や法人番号なども確認しておくと安心です。

遺言書に必ず法人番号まで書かなければならないわけではありませんが、寄付先を特定する情報が多いほど、手続き上の誤解を防ぎやすくなります。

特に、NPO法人や公益法人、学校法人、医療法人などへ寄付する場合は、団体の公式情報を確認したうえで、正式名称・所在地・窓口などを整理しておきましょう。

寄付する財産をできるだけ具体的に書く

寄付先だけでなく、どの財産を寄付するのかも明確にする必要があります。

たとえば、現金を寄付するのか、預貯金の一部を寄付するのか、不動産を寄付するのかによって、遺言書の書き方や手続きは変わります。

預貯金を寄付する場合は、金融機関名、支店名、口座の種類などを整理しておくと、財産を特定しやすくなります。

不動産を寄付する場合は、住所だけでなく、登記事項証明書に記載されている所在・地番・家屋番号などを確認しておくことが重要です。

「財産の一部を寄付する」とだけ書くと、どの財産をどの程度寄付するのかが分かりにくくなることがあります。希望どおりに寄付を実現するためには、対象となる財産をできるだけ具体的に書くことが大切です。

「寄付する」ではなく「遺贈する」と明確に書く

遺言で団体へ財産を残す場合は、「寄付する」という表現だけでなく、「遺贈する」と明確に書くことが一般的です。

遺言による寄付は、法律上は遺贈の仕組みを使って行われます。
そのため、遺言書では、誰に、どの財産を、遺贈するのかが分かるように記載します。

たとえば、基本的な記載例としては、次のような形が考えられます。

遺言者は、公益財団法人〇〇に対し、現金〇〇万円を遺贈する。

遺言者は、特定非営利活動法人〇〇に対し、遺言者名義の〇〇銀行〇〇支店の普通預金のうち金〇〇万円を遺贈する。

実際の文言は、財産の内容や寄付先、遺言全体の設計によって変わります。
そのため、記載例をそのまま使うのではなく、自分の財産状況に合わせて作成することが大切です。

予備的な寄付先も検討する

遺言書を作成した時点では寄付先が存在していても、相続が発生するまでの間に、団体が解散したり、統合されたり、名称が変わったりする可能性があります。

また、寄付先が財産の受け入れを断ることも考えられます。

そのような場合に備えて、第一希望の寄付先が受け入れられないときは別の団体へ寄付する、という形で予備的な寄付先を検討しておくことがあります。

たとえば、次のような書き方が考えられます。

遺言者は、公益財団法人〇〇に対し、現金〇〇万円を遺贈する。
ただし、相続開始時に同法人が存在しない場合、または同法人が遺贈を受け入れない場合は、公益財団法人△△に対し、同金額を遺贈する。

また、教育支援を目的としている場合は、第一希望の団体が受け入れられないときに、同じく奨学金支援や子ども支援を行う別団体を予備的な寄付先にする方法もあります。

医療・福祉分野への寄付であれば、特定の医療機関が受け入れられない場合に備えて、医療支援や災害救護に取り組む別団体を予備的に指定することも考えられます。

予備的な寄付先を定めておくことで、寄付先に事情が生じた場合でも、自分の想いに近い形で財産を活用してもらいやすくなります。

遺言執行者を指定する

遺言による寄付では、遺言執行者の指定も重要です。

遺言執行者は、遺言の内容を実現するために手続きを行う人です。
寄付先への連絡、金融機関での手続き、不動産の名義変更、財産の引き渡しなどを進める役割を担います。

せっかく遺言書に寄付内容を書いても、実際に手続きを進める人が決まっていないと、相続発生後に手続きが滞る可能性があります。

特に、NPO法人や公益法人などの団体へ寄付する場合は、誰が寄付先とやり取りし、財産を引き渡すのかを明確にしておくことが大切です。

遺言書には、寄付内容だけでなく、遺言執行者の指定まで含めて記載しておくと、遺言による寄付を実現しやすくなります。

⑤遺言で寄付するときの注意点

寄付先の活動実態を確認する

NPO法人や公益法人などへ寄付する場合は、団体名や知名度だけで判断せず、実際の活動内容を確認しておくことが大切です。

同じ「子ども支援」「動物保護」「災害支援」といっても、支援対象や活動地域、寄付金の使い道は団体によって異なります。

寄付先を選ぶ際は、活動報告、事業報告書、会計情報、寄付金の使途、継続的な活動実績などを確認しておくと安心です。

せっかくの寄付を有効に活用してもらうためにも、「どのような活動に使われるのか」「自分の想いに合っているか」を確認しておきましょう。

寄付先が財産を受け入れられるとは限らない

遺言書に寄付先を書いても、その団体が必ず財産を受け入れられるとは限りません。

特に、不動産、株式、投資信託、動産などは注意が必要です。
不動産であれば、固定資産税、管理費、修繕費、売却手続きなどが発生します。株式や投資信託も、価格変動や換金手続きの問題があります。

そのため、現金や預貯金以外の財産を寄付したい場合は、遺言書を作成する前に、寄付先へ受け入れ可否を確認しておくことが大切です。

場合によっては、不動産や株式そのものを遺贈するのではなく、売却後の現金を寄付する設計を検討することもあります。

遺言書の記載があいまいだと実現しにくい

遺言による寄付では、想いだけでなく、実行できる書き方になっているかが重要です。

たとえば、

子ども支援団体に寄付する
福祉に役立てる
預金の一部を寄付する
お世話になった病院へ寄付する

といった書き方では、どの団体に、どの財産を、どの程度渡すのかが分からない場合があります。

寄付先の正式名称、所在地、寄付する財産、金額や割合などを明確にしておくことで、相続発生後の手続きを進めやすくなります。

寄付先が将来なくなる可能性に備える

遺言書を作成してから相続が発生するまでには、時間が空くことがあります。

その間に、寄付先の団体が解散したり、統合されたり、名称が変わったりする可能性もあります。
また、相続発生時に団体が存在していても、財産の内容によっては受け入れを断られることもあります。

このような場合に備えて、第一希望の寄付先が受け入れられないときのために、予備的な寄付先を指定しておく方法があります。

たとえば、教育支援を目的としている場合は、第一希望の団体が受け入れられないときに、同じく奨学金支援や子ども支援に取り組む別団体を指定する、といった形です。

税金の扱いは個別確認が必要

遺言による寄付では、寄付先や財産の内容によって税金の扱いが関係する場合があります。

国、地方公共団体、一定の公益法人などへの寄付では、相続税の非課税制度が関係することもあります。
ただし、要件や手続きは個別事情によって異なります。

遺言による寄付で相続税がかかるかどうかは、寄付先が法人格を持つかによっても扱いが異なります。詳しくは、遺言で寄付した場合の相続税で解説しています。

この記事では、税金や非課税制度の詳しい解説には踏み込みません。
実際に遺言で寄付を検討する場合は、必要に応じて税理士などの専門家にも確認しておくと安心です。

⑥遺言で寄付するなら公正証書遺言がおすすめ

公正証書遺言による寄付について、高齢者が専門家と遺言書の内容を確認しているイラスト
遺言による寄付を確実に実現するには、寄付先や財産の内容を整理し、専門家と確認しながら公正証書遺言を作成する方法が有効です。

遺言でNPO法人や公益法人などへ寄付したい場合は、公正証書遺言で作成することをおすすめします。

遺言による寄付は、遺言者が亡くなったあとに実行されます。
そのため、遺言書の内容があいまいだったり、形式に不備があったりすると、本人の想いどおりに寄付が実現できない可能性があります。

特に、寄付先が団体である場合は、団体名や財産内容を正確に記載し、相続発生後に手続きが進められる形にしておくことが大切です。

自筆証書遺言でも寄付はできる

自筆証書遺言とは、遺言者が自分で作成する遺言書です。

自分で作成できるため、費用を抑えやすく、思い立ったときに書けるというメリットがあります。
遺言で寄付をする場合も、自筆証書遺言の形式を満たしていれば、NPO法人や公益法人などへ財産を遺贈することは可能です。

ただし、自筆証書遺言は、自分だけで作成できる反面、内容の正確性や保管方法に注意が必要です。

自筆証書遺言には形式不備や紛失のリスクがある

自筆証書遺言では、法律で定められた形式を守らなければ、遺言が無効になる可能性があります。

また、形式自体は有効でも、寄付先の団体名があいまいだったり、寄付する財産が特定できなかったりすると、相続発生後に手続きが進みにくくなることがあります。

さらに、自宅で保管している場合には、遺言書が見つからない、紛失する、破棄されるといったリスクもあります。

遺言による寄付は、遺言者が亡くなったあとに実行されます。
そのため、後から本人が説明したり、内容を補足したりすることはできません。

せっかく「財産を社会のために役立てたい」と考えて遺言書を作成しても、形式不備や記載のあいまいさによって実現できなければ、本人の想いが十分に反映されないことになります。

公正証書遺言は寄付を実現しやすい

公正証書遺言は、公証人が関与して作成する遺言書です。

遺言者が公証人に内容を伝え、公証人が法律上の形式に従って遺言書を作成します。
そのため、自筆証書遺言に比べて、形式不備によって無効になるリスクを抑えやすいのが特徴です。

また、公正証書遺言の原本は公証役場に保管されます。
遺言書を紛失したり、相続発生後に見つからなかったりするリスクを減らせる点も大きなメリットです。

遺言で寄付をする場合、公正証書遺言にしておくことで、寄付先、寄付する財産、遺言執行者の指定などを整理したうえで、相続発生後に実行しやすい形に整えることができます。

特に、公益法人やNPO法人などの団体へ寄付する場合は、団体名や財産内容を正確に記載する必要があります。
公正証書遺言を作成する過程で、これらの点を確認しながら進められるため、寄付を確実に実現したい方に向いています。

遺言執行者の指定まで含めて設計しやすい

遺言による寄付では、遺言執行者の指定も重要です。

遺言執行者は、遺言の内容を実現するために、寄付先への連絡、金融機関での手続き、不動産の名義変更、財産の引き渡しなどを行います。

公正証書遺言を作成する際に、遺言執行者まで指定しておけば、相続発生後に誰が寄付の手続きを進めるのかが明確になります。

特に、寄付先がNPO法人や公益法人などの団体である場合、相続人が寄付先との連絡や財産の引き渡しに慣れていないこともあります。
そのような場合でも、遺言執行者を指定しておくことで、遺言内容を実現しやすくなります。

公正証書遺言は、単に「遺言書を作る方法」の一つではありません。
遺言による寄付を実現するために、寄付先、財産、手続き、遺言執行者まで含めて設計しやすい方法です。

「自分の財産を確実に社会のために役立てたい」と考える場合は、公正証書遺言での作成を検討すると安心です。

遺言による寄付を行うには、まず有効な遺言書を作成する必要があります。遺言書の種類や基本的な効力については、遺言書の種類や基本的な効力についてはこちらで詳しく解説しています。

⑦専門家に相談した方がよいケース

遺言による寄付は、寄付先や財産の内容がはっきりしていれば、自分で準備できる部分もあります。

しかし、実際には「寄付したい気持ちはあるけれど、具体的な団体が決まっていない」「不動産や株式をどう扱えばよいか分からない」「遺言執行者を誰にするか迷っている」といったケースも少なくありません。

ここでは、遺言で寄付を考える際に、専門家へ相談した方がよいケースを整理します。

医療機関に寄付したいなど方針はあるが、具体的な寄付先が決まっていない

「医療に役立てたい」
「子ども支援に使ってほしい」
「教育や奨学金に関わる団体へ寄付したい」
「地域の福祉活動を支援したい」

このように、寄付したい分野や方針はあるものの、具体的な寄付先までは決まっていない方もいます。

この場合、まずは自分がどのような活動を支援したいのかを整理することが大切です。
全国的に活動している団体がよいのか、地域に根ざした団体がよいのか、特定の分野に絞りたいのかによって、候補となる寄付先は変わります。

専門家に相談することで、遺言書に書く前に、寄付の目的や財産の残し方を整理しやすくなります。

不動産や株式が財産に残っている

財産の中に不動産や株式がある場合は、特に注意が必要です。

現金や預貯金と違い、不動産は管理費、固定資産税、修繕費、売却手続きなどの負担が生じます。
株式や投資信託も、価格変動や換金手続きの問題があります。

そのため、寄付先によっては、不動産や株式の受け入れを断ることがあります。

このような場合は、不動産や株式そのものを遺贈するのか、売却後の現金を寄付する形にするのか、他の財産とのバランスをどうするのかを検討する必要があります。

財産の内容が複雑な場合は、遺言書を作成する前に相談しておくと安心です。

公益法人やNPOへの寄付を確実に実現したい

公益法人やNPO法人へ寄付したい相手が決まっている場合でも、遺言書にその希望を書くだけで必ず実現できるとは限りません。

遺言による寄付では、寄付先、寄付する財産、遺言執行者、受け入れ手続きまで含めて、相続発生後に実行できる形にしておく必要があります。

たとえば、団体名が正式名称で記載されていない場合や、寄付する財産が特定できない場合、遺言執行者が指定されていない場合には、手続きがスムーズに進まないことがあります。

また、寄付先によっては、遺言による寄付を受け入れるための窓口や必要書類、手続きの流れが決まっていることもあります。

「この団体へ、この財産を残したい」という希望がある場合こそ、遺言書の文言や財産の指定、遺言執行者の指定まで含めて確認しておくことが大切です。

専門家に相談することで、寄付の意思を遺言書として実行しやすい形に整理できます。

遺言執行者を誰にするか迷っている

遺言による寄付を実現するには、相続発生後に実際の手続きを進める人が必要です。

遺言執行者は、寄付先への連絡、金融機関での手続き、不動産の名義変更、財産の引き渡しなどを行います。

家族や親族を遺言執行者に指定することもできますが、寄付先とのやり取りや財産の引き渡しに慣れていない場合、負担が大きくなることがあります。

また、寄付先が複数ある場合や、不動産・株式などが含まれる場合は、手続きが複雑になりやすいです。

誰を遺言執行者にするか迷う場合は、遺言書の作成段階で相談しておくと、相続発生後の手続きを見据えた設計がしやすくなります。

遺言による寄付は、寄付先を選ぶだけでなく、財産の内容、遺言書の書き方、遺言執行者の指定まで含めて考えることが大切です。

「どの団体に寄付するか決まっていない」「財産の一部を社会貢献に使いたい」「確実に寄付を実現したい」という方は、早めに専門家へ相談しておくと安心です。

⑧よくある質問

Q. 遺言でNPO法人に寄付できますか?

はい。遺言によって、NPO法人へ財産を寄付することは可能です。

遺言書の中で、寄付先となるNPO法人と寄付する財産を明確に記載することで、亡くなったあとに財産を残すことができます。

ただし、NPO法人ごとに活動内容や受け入れ体制は異なります。寄付先を選ぶ際は、活動報告、事業報告書、会計情報、寄付金の使途などを確認し、自分の想いに合う団体かどうかを見ておくと安心です。

また、不動産や株式などを寄付したい場合は、受け入れが難しいこともあるため、事前確認が大切です。

Q. 公益法人へ遺言で寄付できますか?

はい。公益社団法人や公益財団法人などへ、遺言で財産を寄付することもできます。

たとえば、教育支援、奨学金支援、医療・福祉、災害支援、研究支援など、自分が関心を持っている分野に取り組む公益法人を寄付先として検討することがあります。

公益法人へ寄付する場合も、遺言書には団体名を正式名称で記載し、どの財産を遺贈するのかを明確にしておく必要があります。

寄付先によって受け入れ方法や必要な手続きが異なるため、遺言書を作成する前に確認しておくと安心です。

Q. 寄付先がまだ決まっていなくても相談できますか?

はい。具体的な寄付先が決まっていない段階でも相談できます。

実際には、「医療に役立てたい」「子ども支援に使ってほしい」「教育や奨学金に関わる団体へ残したい」など、方針だけが決まっているケースも少なくありません。

そのような場合は、まず自分の財産をどのような目的に使ってほしいのかを整理するところから始めます。

寄付先を決める前に、財産の内容や遺言書の作り方を確認しておくことで、後から具体的な団体を検討しやすくなります。

Q. 不動産や株式を寄付できますか?

不動産や株式を遺言で寄付することも考えられます。

ただし、現金や預貯金と異なり、不動産や株式は寄付先が受け入れを断ることがあります。

不動産には、固定資産税、管理費、修繕費、売却手続きなどの負担が生じます。株式や投資信託についても、価格変動や換金手続きの問題があります。

そのため、不動産や株式を寄付したい場合は、遺言書に書く前に、寄付先が受け入れ可能かどうかを確認することが重要です。

場合によっては、不動産や株式そのものではなく、売却後の現金を寄付する形を検討することもあります。

Q. 自筆証書遺言でも寄付できますか?

はい。自筆証書遺言でも、NPO法人や公益法人などへ寄付することは可能です。

ただし、自筆証書遺言は、形式不備や記載内容のあいまいさに注意が必要です。寄付先の団体名が正確でなかったり、寄付する財産が特定できなかったりすると、相続発生後に手続きが進みにくくなることがあります。

また、自宅で保管している場合には、遺言書が見つからない、紛失するなどのリスクもあります。

遺言による寄付を確実に実現したい場合は、公正証書遺言で作成し、遺言執行者の指定まで含めて検討すると安心です。

まとめ

遺言を作成すれば、NPO法人や公益法人、医療・福祉団体などへ財産を寄付することができます。

遺言による寄付は、単に財産の行き先を決めるだけではありません。
教育支援や奨学金支援に役立てたい、医療や福祉に感謝を残したい、関心のある社会課題に取り組む団体を応援したいなど、自分の想いを社会につなげる方法でもあります。

一方で、希望どおりに寄付を実現するためには、事前の準備が大切です。

寄付先の活動内容や受け入れ体制を確認すること、寄付する財産を明確にすること、遺言書に正式名称や財産内容を正確に記載すること、必要に応じて遺言執行者を指定することが重要になります。

また、不動産や株式などを寄付したい場合は、団体側が受け入れられるかどうかを事前に確認しておく必要があります。寄付先が将来なくなる可能性に備えて、予備的な寄付先を検討しておくことも有効です。

遺言による寄付を確実に実現したい場合は、公正証書遺言で作成し、遺言執行者の指定まで含めて設計しておくと安心です。

「寄付したい分野はあるが、具体的な寄付先が決まっていない」
「NPO法人や公益法人へ財産を残したい」
「不動産や株式を含めて、どのように遺言書を作ればよいか分からない」

このような場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

自分の財産をどのような未来につなげたいのか。
その想いを確実に形にするためにも、遺言による寄付は、寄付先・財産・遺言書・遺言執行者をセットで考えて準備しておきましょう。

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