相続が発生したとき、遺言書などで遺産の分け方が決まっていない場合は、相続人同士で「誰がどの財産を受け取るのか」を話し合って決めます。この話し合いが遺産分割協議です。
たとえば、父が亡くなり、相続人が妻・長男・次男の3人、相続財産が自宅3,000万円と預貯金1,000万円だったとします。遺言書がなく財産の分け方が決まっていなければ、3人で誰が何を受け取るのかを話し合うことになります。
この記事では、この家族のモデルケースを使いながら、遺産分割協議とは何か、誰が参加するのか、何を話し合うのか、どのように進めるのかをわかりやすく解説します。
目次
①遺産分割協議とは
遺産分割協議は相続人が遺産の分け方を話し合う手続き
遺産分割協議とは、亡くなった方が残した遺産について、誰がどの財産を受け取るのかを相続人同士で話し合って決めることです。
たとえば、相続財産に自宅と預貯金がある場合、
- 自宅は誰が取得するのか
- 預貯金をどのように分けるのか
- 不動産を残すのか、売却するのか
- 相続人ごとの取得額に差が出る場合、どのように調整するのか
といったことを話し合います。
自宅などの不動産を1人が取得し、他の相続人には金銭を渡して取得額を調整する方法として「代償分割」があります。代償分割の仕組みや代償金の決め方、不動産評価については、以下の記事で詳しく解説しています。
代償分割とは?代償金の決め方・不動産評価を解説
遺産分割そのものは「相続財産を誰にどのように分けるか」という広い意味を持ちますが、その分け方を相続人同士の話し合いで決めるのが遺産分割協議です。
遺産分割協議は、遺産分割を進める方法の一つです。法定相続分や現物分割・代償分割・換価分割など、遺産分割そのものの仕組みや財産の分け方については、別の記事でまとめています。
遺産分割とは?相続財産の分け方・割合・手続きの流れ
遺産分割協議では相続人全員の合意が必要
遺産分割協議は、一部の相続人だけで決めるものではありません。
原則として、遺産分割の対象となる財産について権利を持つ相続人が参加し、全員が分け方に合意する必要があります。
たとえば、妻・長男・次男の3人が相続人である場合、妻と長男だけで「自宅は妻が取得する」と決めても、次男が合意していなければ、その内容で遺産分割協議を成立させることはできません。
相続人同士で話し合っても分け方がまとまらない場合は、家庭裁判所で遺産分割調停を行う方法があります。調停でも合意に至らなければ、遺産分割審判に進むことになります。
相続手続きの中には、一人で進められるものもありますが、預貯金の引き出しや車の名義変更など、独断で進めるとトラブルにつながりやすいものもあります。相続人の一人が勝手に手続きを進めた場合の注意点については、以下の記事で詳しく解説しています。
相続手続きを勝手に進めた場合の注意点
法定相続分どおりに分ける必要はない
遺産分割協議では、必ず法定相続分どおりに財産を分けなければならないわけではありません。
法定相続分は、遺産の分け方を考える際の基準になりますが、相続人全員が合意すれば、それとは異なる分け方を決めることもできます。
たとえば、妻・長男・次男が相続人の場合でも、単純に法定相続分の割合に合わせて財産を分けるだけでなく、妻が自宅を取得し、長男・次男が預貯金などを取得する方法も考えられます。
実際の遺産分割協議では、法律上の割合だけを見るのではなく、財産の内容や相続人それぞれの事情を踏まえながら、全員が納得できる分け方を検討していくことが重要です。
ただし、自分の取り分が極端に少ない場合は、法定相続分とは別に、一定の相続人に最低限保障される遺留分についても確認しておくことが大切です。
相続で最低限保障される遺留分とは
なお、「法定相続分より少ない」と「遺留分が侵害されている」は同じ意味ではありません。遺贈や一定の生前贈与によって遺留分が侵害されている場合には、遺留分侵害額請求が問題になることがあります。
遺留分侵害額請求とは
②モデルケースで考える遺産分割協議

父が亡くなり妻・長男・次男が相続人になったケース
ここからは、具体的な家族を例にして、遺産分割協議をどのように進めるのか見ていきます。
父が亡くなり、相続人は妻・長男・次男の3人だったとします。父は遺言書を残していませんでした。
相続財産は、次のとおりです。
- 自宅:3,000万円
- 預貯金:1,000万円
- 合計:4,000万円
この場合、誰が自宅を取得するのか、預貯金をどのように分けるのかを3人で話し合って決める必要があります。
ただし、実際の遺産分割協議では、単純に金額だけを見て決められるとは限りません。
3人は自宅と預貯金をどう分けるか話し合う
この家族では、それぞれに異なる事情があります。
妻は60〜70代で、これまで暮らしてきた自宅にそのまま住み続けたいと考えています。
長男は30〜40代で、自分の家庭では子どもの教育費や住宅ローンの負担があります。一方で、将来は母を自宅に引き取るなどして支えたいという考えもあります。
次男も30〜40代ですが、勤務先のリストラによって収入が大きく減っており、不動産よりも現金を受け取りたいと考えています。
このように、同じ4,000万円の遺産でも、相続人それぞれの生活状況や希望によって、望ましい分け方は変わります。
遺産分割協議では、単に「誰がいくら受け取るか」だけでなく、誰がその財産を必要としているのか、今後どのように生活していくのかまで含めて話し合うことが大切です。
このモデルケースを使いながら、次に、どのような場合に遺産分割協議が必要になるのかを見ていきます。
③遺産分割協議が必要になるのはどんな場合?
相続人が複数いて、誰がどの財産を取得するのか決まっていない場合に、相続人全員で相続財産の分け方を話し合い、具体的な取得者を決める手続きです。
遺言書がなく相続人が複数いる場合
遺言書がなく相続人が複数いる場合は、誰がどの財産を取得するのかを相続人同士で決める必要があります。
遺言書による指定がなければ、法定相続分を確認しただけでは、「自宅を誰が取得するのか」「預貯金を誰が受け取るのか」といった具体的な財産の取得者までは決まりません。そのため、相続人全員で財産の分け方を話し合うことになります。
今回のモデルケースでは、父は遺言書を残しておらず、相続人は妻・長男・次男の3人です。相続財産には自宅3,000万円と預貯金1,000万円があります。
この場合、妻・長男・次男にはそれぞれ法定相続分がありますが、それだけでは自宅と預貯金を誰が取得するのかは決まりません。そこで3人が遺産分割協議を行い、誰が自宅を取得するのか、預貯金をどのように分けるのかを具体的に決めていきます。
遺言書に記載されていない財産や分け方が決まっていない財産がある場合
遺言書が残されていても、遺言書に記載されていない財産があったり、遺言書を作成した後に新たに取得した財産があったりする場合は、その財産について誰が取得するのか決まっていないことがあります。
たとえば、遺言書には自宅と当時の預貯金について記載されていたものの、その後に別の預金口座を開設したり、新たに不動産を取得したりしたケースです。
このように、遺言書だけでは取得者が決まらない財産が残っている場合は、その財産について相続人で遺産分割協議を行い、誰が取得するのかを決める必要があります。
遺言とは異なる分け方を検討したい場合は、相続人全員の合意だけでなく、受遺者や遺言執行者の有無なども確認する必要があります。詳しくは、遺言と遺産分割協議はどちらが優先される?で解説しています。
なお、遺言書があっても、その内容によって一定の相続人の遺留分が侵害されている場合は、別途遺留分の確認が必要になることがあります。
遺言と遺留分の関係を詳しく見る
遺産分割協議が不要な場合
一方、遺産分割協議を行う必要がないケースもあります。代表的なのは、次のような場合です。
- 法定相続人が一人しかいない場合
- 引き継ぐ財産がない場合
- 有効な遺言書によって財産の引継ぎ先がすべて決まっている場合
法定相続人が一人だけであれば、他の相続人と財産の分け方を話し合う必要はありません。また、そもそも引き継ぐ財産がなければ、分ける対象がないため遺産分割協議も不要です。
さらに、有効な遺言書によって誰がどの財産を取得するのかすべて決まっており、その内容どおりに相続手続きを進める場合も、原則として遺産分割協議を行う必要はありません。
つまり、遺産分割協議が必要かどうかは、相続人が複数いるか、分ける財産があるか、財産の引継ぎ先がすでに決まっているかを確認して判断します。
④遺産分割協議には誰が参加する?

原則として相続人全員が参加する
遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があります。
ここでいう相続人とは、配偶者や子どもなど、戸籍などを確認したうえで法律上相続人となる人です。普段ほとんど連絡を取っていない人や、家族の中で相続に関わらないと思われていた人でも、法律上の相続人であれば協議から外すことはできません。
誰が法定相続人になるのかは、配偶者・子・父母・兄弟姉妹などの家族関係や相続順位によって変わります。法定相続人の範囲・順位・法定相続分については、別の記事で詳しく整理しています。
今回のモデルケースでは、相続人は妻・長男・次男の3人です。そのため、この3人全員が遺産分割協議に参加します。
妻と長男だけで「自宅は妻が取得し、預貯金は長男が取得する」と決めても、次男が参加していなければ、その内容だけで遺産分割協議を成立させることはできません。
そのため、遺産分割協議を始める前に、まず誰が相続人なのかを正確に確認しておくことが重要です。
なお、遺産分割協議は相続手続きの一部分です。相続では、遺産の分け方だけでなく、誰が相続人になるのか、借金を含めて何を引き継ぐのか、相続放棄をするのかなども確認する必要があります。
相続とは?意味・種類・法律上の基本
相続放棄・相続欠格・廃除などにより相続権がない人は参加しない
一方で、戸籍上は相続人になり得る立場にあっても、その相続について相続権を持たない人は遺産分割協議には参加しません。
代表的なのは、次のような場合です。
- 家庭裁判所で相続放棄をした人
- 相続欠格に該当する人
- 被相続人から廃除された人
相続放棄をした人は、その相続については初めから相続人ではなかったものとして扱われます。また、相続欠格や廃除により相続権を失っている場合も、その人を遺産分割協議の参加者として扱うことはありません。
ただし、相続放棄や欠格、廃除によって次の順位の相続人が新たに相続人になる場合や、代襲相続が発生する場合もあります。
そのため、「この人は参加しない」で終わらせるのではなく、その結果として誰が相続人になるのかまで確認することが大切です。
⑤遺産分割協議を始める前に確認すること

遺産分割協議を始める前に、次の3点を確認しておきます。
戸籍などを確認し、誰が遺産分割協議に参加する相続人なのかを確定します。認知した子や養子、前婚の子がいる場合も確認が必要です。
預貯金や不動産など、協議の対象となる財産を整理します。後から財産が見つかると、分け方を見直す必要が生じることがあります。
遺言書がある場合は、どの財産について引継ぎ先が決まっているのかを確認します。遺言書に記載されていない財産や、遺言作成後に取得した財産がないかも確認します。
この3点を整理してから、相続人全員で具体的な分け方を話し合います。
⑥遺産分割協議では何を話し合う?
遺産分割協議では、相続人全員で誰がどの財産を取得するのかを具体的に話し合います。
ただし、金額や財産の割り振りだけを決めればよいわけではありません。相続人それぞれの生活事情や希望、これまでの家族関係などによって、納得できる分け方は変わります。
誰がどの財産を取得するかなど具体的な分け方を話し合う
まず話し合うのは、誰がどの財産を取得するのかという具体的な分け方です。
今回のモデルケースでは、自宅3,000万円と預貯金1,000万円があるため、
- 妻が自宅を取得するのか
- 預貯金を誰がどのように取得するのか
- 自宅を残すのか、売却するのか
- 取得額に差が出る場合、どのように調整するのか
といった点を検討します。
不動産のようにそのまま分けにくい財産がある場合には、一人が不動産を取得して他の相続人へ金銭を支払ったり、不動産を売却して現金で分けたりする方法も考えられます。
大切なのは、法定相続分の割合だけを見るのではなく、実際にある財産を誰がどのような形で取得するのかまで具体的に決めることです。
自宅を一人が取得し、他の相続人へ代償金を支払う代償分割を検討する場合もあります。代償金を一括で用意できない場合の対応については、以下の記事で詳しく解説しています。
代償分割で現金がない場合はどうする?
相続人それぞれの生活事情や希望を考慮する
財産の分け方を考えるときは、相続人それぞれの生活事情や希望も確認します。
今回のモデルケースでは、母はこれまで暮らしてきた自宅に住み続けたいと考えています。
長男は、子どもの教育費や住宅ローンを抱えている一方、将来は母を自宅に引き取るなどして支えたいと考えています。
次男は、勤務先のリストラによって収入が大きく減っているため、不動産より現金を受け取りたいと考えています。
このように、同じ財産を前にしていても、必要としている財産や今後の生活は相続人によって異なります。
そのため、単純に金額をそろえることだけを考えるのではなく、それぞれの事情や希望を共有したうえで、現実的な分け方を検討していくことが大切です。
相続人の誰も実家を利用する予定がない場合には、不動産を売却して現金に換え、その売却代金を分ける「換価分割」を検討することもできます。
実家を売却して分ける換価分割について
行政書士の実務から見た遺産分割|財産が少なくても揉めることはある
相続は、ときに「争族」と揶揄されるほど、家族の間で意見が対立しやすい場面です。
「うちは財産がそれほど多くないから、揉めることはないだろう」と考える方もいるかもしれません。しかし、遺産の金額が大きくなければ安心というわけではありません。
令和6年の司法統計を見ると、家庭裁判所で扱われ、認容・調停成立となった遺産分割事件のうち、遺産価額5,000万円以下のケースが約78%を占めています。内訳を見ると、1,000万円以下でも約36%あります。
考えてみれば、数百万円、数千万円という金額は、多くの人にとって決して小さなお金ではありません。
日々の生活費を払い、住宅ローンや教育費を負担しながら貯蓄を続けている人にとっては、何年、場合によっては何十年もかけて貯める金額に相当する財産を、一度の遺産分割で受け取る可能性があります。
相続では、それぞれに生活上の事情があり、「自分にはこの財産が必要だ」と考える理由があります。
だからこそ、自分の希望だけを強く主張するのではなく、相手にも事情があることを踏まえて、一度立ち止まって考えることが大切です。
遺産分割をめぐる対立が長引けば、それまで良好だった家族関係が壊れてしまうこともあります。
遺産分割協議では、「自分はいくら受け取れるのか」だけでなく、この分け方で今後も家族として付き合っていけるのかという視点も持ちながら、全員が受け入れられる着地点を探していくことをおすすめします。
金額だけでは表せない感情や家族関係も踏まえて考える
遺産分割協議では、数字だけでは整理できない事情が話し合いに影響することもあります。
たとえば、母にとって自宅は単なる3,000万円の不動産ではなく、長年暮らしてきた生活の場所であり、亡くなった夫との思い出が残る場所でもあります。
一方、長男や次男から見れば、母が自宅を取得することで自分の取得する財産が少なくなることに、複雑な気持ちを持つこともあるでしょう。また、これまで誰が親を支えてきたのかといった家族間の事情が、話し合いに影響することもあります。
こうした気持ちは、財産の評価額だけでは整理できません。
遺産分割協議では、「誰がいくら受け取るか」だけでなく、それぞれが何を大切にしているのかも共有しながら、全員が納得できる分け方を探していくことが重要です。大切です。
⑦遺産分割協議は相続人全員の合意で成立する

遺産分割協議では、相続人の一部だけで分け方を決めることはできません。 誰がどの財産を取得するのかについて、相続人全員が合意してはじめて協議が成立します。
今回のモデルケースでも、妻・長男・次男の3人全員が、最終的な分け方に納得する必要があります。
多数決ではなく相続人全員の合意が必要
遺産分割協議は、多数決で決めるものではありません。
たとえば、妻と長男の2人が「妻が自宅を取得する」という案に賛成していても、次男がその分け方に納得していないのであれば、その内容で協議を成立させることはできません。
一方で、最初から全員の希望が一致している必要もありません。
今回のモデルケースでは、
- 妻は自宅に住み続けたい
- 長男は母を支えたい一方で、自分の家計にも負担がある
- 次男は現金を受け取りたい
というように、それぞれの希望は異なっています。
遺産分割協議では、こうした違いを出発点として、分け方を調整しながら、最終的に全員が受け入れられる内容にまとめていくことが重要です。
相続人全員が同じ場所に集まる必要はない
相続人全員の合意は必要ですが、全員が同じ日時に同じ場所へ集まって話し合わなければならないわけではありません。
たとえば、一人が遠方に住んでいる場合には、電話やオンラインで意見を確認したり、書類を郵送して内容を確認したりしながら進めることもできます。
大切なのは、話し合いの形式ではなく、相続人全員が最終的な分け方を確認し、その内容に合意していることです。
電話や郵送などを利用して協議することもできる
相続人が離れて暮らしている場合は、複数の方法を組み合わせて協議を進めることができます。
たとえば、
- 電話でそれぞれの希望を確認する
- オンラインで話し合う
- 分け方案を書面で共有する
- 最終的な内容を郵送で確認する
といった方法です。
ただし、やり取りが増えるほど、「聞いていた内容と違う」「その条件には同意していない」といった認識のずれが生じることもあります。
そのため、協議がまとまりつつある段階では、誰がどの財産を取得するのかを具体的に整理し、相続人全員で同じ内容を確認することが大切です。
⑧相続人と連絡が取れない・協議に参加してもらえない場合

遺産分割協議には相続人全員の合意が必要ですが、実際には、相続人が遠方に住んでいたり、長年疎遠だったり、話し合いそのものに応じてもらえなかったりすることがあります。
ただし、事情があるからといって、その相続人を除外して遺産分割を進めることはできません。
相手の状況によって、どのように対応するかを分けて考える必要があります。
遠方に住んでいるだけなら対面で集まる必要はない
相続人が遠方に住んでいても、全員が同じ場所に集まって遺産分割協議をする必要はありません。
電話やオンラインで希望を確認したり、分け方案を書面やメールで共有したりしながら、話し合いを進めることができます。
重要なのは、相続人全員が同じ内容を確認し、最終的な分け方に合意していることです。
そのため、遠方に住んでいるという理由だけで、遺産分割協議ができなくなるわけではありません。
疎遠でも相続人であれば連絡を取る必要がある
長年交流のない兄弟や前婚の子などが相続人になることもあります。
「何十年も会っていない」「連絡先を知らない」という事情があっても、法律上の相続人である以上、その人を除いて遺産分割協議を成立させることはできません。
まずは現在の住所や連絡先を確認し、相続が発生したことや遺産分割について話し合う必要があることを伝えます。
疎遠な相続人へ連絡するときは、いきなり「この内容で署名してください」と求めるよりも、相続が発生したこと、どのような財産があるのか、今後どのような話し合いが必要なのかを順番に説明することが大切です。
連絡できても遺産分割協議に応じてもらえない場合
相続人の所在や連絡先が分かっていても、電話に出ない、返事をしない、話し合いそのものを拒否するといった場合があります。
この場合、他の相続人だけで多数決をして分け方を決めることはできません。
まずは、相手がなぜ協議に応じないのかを確認します。
財産の内容に疑問があるのか、提示された分け方に納得していないのか、家族関係に不満があるのかによって、必要な対応は変わります。
それでも話し合いを進めることができない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、裁判所を介して合意を目指す方法があります。遺産分割調停は、相続人の一人または複数人から、他の相続人全員を相手方として申し立てる手続きです。
相続人の所在そのものが分からない場合
相続人がどこに住んでいるのか分からず、連絡を取ること自体ができない場合は、単にその人を除外して協議を進めることはできません。
まずは戸籍や戸籍の附票などをたどり、現在の所在を確認します。
それでも所在が分からず、従来の住所や居所を離れて容易に戻る見込みがないような場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法があります。
選任された不在者財産管理人は、不在者本人に代わって財産を管理します。遺産分割協議に参加する場合には、家庭裁判所の権限外行為許可を得たうえで、不在者に代わって協議を行うことになります。
⑨遺産分割協議が成立したら何をする?
相続人全員で遺産の分け方に合意できたら、合意した内容を確認し、その内容に基づいて実際の相続手続きを進めます。
合意した内容を確認する
まず、誰がどの財産を取得するのかを改めて確認します。
今回のモデルケースであれば、自宅3,000万円を誰が取得するのか、預貯金1,000万円をどのように分けるのかを、相続人全員で明確にしておきます。
遺産分割協議書に合意内容をまとめる
合意した内容は、必要に応じて遺産分割協議書として書面にまとめます。
遺産分割協議書は、不動産の相続登記や預貯金の払戻しなどで必要になることがあります。
遺産分割協議書の作成方法や、法務局・預貯金・自動車の相続手続きでどのように使われるのかは、遺産分割協議書の作成や法務局・預貯金・車での使い方で詳しく解説しています。
名義変更や払戻しなどの相続手続きを行う
その後、協議で決めた内容に基づいて、
- 不動産の相続登記
- 預貯金の払戻し
- 株式・証券口座の相続手続き
- 自動車の名義変更
などを進めます。
遺産分割協議は、誰が何を取得するのかを決める手続きです。合意しただけで財産の名義が自動的に変わるわけではないため、その後の手続きまで進める必要があります。
⑩遺産分割協議がまとまらない場合はどうする?

相続人同士で合意できない場合は弁護士への相談を検討する
遺産分割協議は、相続人全員が合意して初めて成立します。
そのため、話し合いを続けても意見の対立が解消せず、当事者同士で合意することが難しくなった場合は、依頼者の立場として弁護士への相談を検討する段階になります。
たとえば、
- 自分の取得分をもっと増やしてほしい
- 不動産の評価額に納得できない
- 自宅を売却するかどうかで折り合わない
- 他の相続人の提案を受け入れられない
- 財産の範囲や使い込みについて争いがある
といった状況です。
このように相続人間の利害対立が明確になり、当事者同士での調整が難しい場合は、弁護士に相談し、必要に応じて代理人として他の相続人との交渉を依頼することを検討します。
紛争性が生じた場合は行政書士として本件から辞任する
一方、行政書士の立場では、相続人同士の意見対立が明確になり、一方の相続人の立場で他の相続人と交渉する必要が生じた段階で、対応を継続することはできません。
行政書士は、相続人間で合意できた内容を遺産分割協議書としてまとめたり、相続手続きに必要な書類を整えたりすることはできますが、紛争状態にある相続人同士の間に入り、一方の代理人として交渉することはできません。
そのため、紛争性が生じた場合は、弁護士対応への切り替えを案内したうえで、行政書士としては本件から辞任することになります。
そして、ここまで状況が進んだということは、相続手続きが一段深刻な局面に入ったということでもあります。
弁護士への依頼費用だけでなく、相続人同士の交渉や資料整理にかかる時間、やり取りの手間、精神的な負担も大きくなります。解決までに長い時間を要することもあります。
つまり、遺産分割協議で合意できず弁護士対応へ切り替わるということは、それまで以上に費用・時間・手間を必要とする段階に進んだということです。
だからこそ、まだ相続人同士で話し合える段階では、自分の希望だけを主張するのではなく、相手にも事情があることを意識しながら、できる限り話し合いで着地点を探していくことが大切です。
⑪遺産分割協議についてよくある質問
Q:遺産分割協議に期限はありますか?
遺産分割協議そのものについて、「相続開始から○か月以内に必ず成立させなければならない」という一律の期限があるわけではありません。
ただし、相続登記や相続税の申告、相続放棄など、相続に関連する別の手続にはそれぞれ期限があります。また、相続開始から長期間が経過すると、遺産分割における特別受益や寄与分の扱いにも影響するため、必要以上に先延ばしにしない方がよいでしょう。
Q:遺産分割協議は口頭の合意だけでも成立しますか?
遺産分割協議について、必ず書面でなければ合意できないというものではありません。
ただし、口頭だけでは後から「その内容には同意していない」「聞いていた話と違う」といった問題が生じる可能性があります。
また、不動産の相続登記などでは、遺産分割の内容を確認するために遺産分割協議書が必要になる場面があります。
そのため、相続人全員で合意した内容は、遺産分割協議書として明確に残しておくのが一般的です。
Q:法定相続分と違う内容で合意してもよいですか?
相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる内容で遺産を分けることもできます。
今回のモデルケースでも、妻・長男・次男が法定相続分に相当する金額をそのまま取得する必要はありません。
妻が自宅に住み続けたい、次男は現金を必要としているといった事情を踏まえて、3人が納得できる分け方を話し合うことができます。
Q:遺産分割協議の途中で新しい財産が見つかった場合はどうなりますか?
協議の途中で新しい預貯金や不動産などが見つかった場合は、その財産も含めて分け方を検討します。
遺産分割では、どの財産が遺産に含まれるのかを整理したうえで話し合う必要があります。家庭裁判所の遺産分割手続でも、遺産の範囲や内容が前提となり、財産の存在について争いがある場合には、それを裏付ける資料が必要になります。
そのため、できるだけ協議を始める前に財産を確認しておくことが大切です。
Q:遺産分割協議の後に遺言書が見つかった場合はどうなりますか?
遺産分割協議が終わった後に遺言書が見つかった場合は、その内容を確認する必要があります。
特に自宅などで保管されていた自筆証書遺言を発見した場合、原則として家庭裁判所で検認の手続が必要です。なお、公正証書遺言や法務局で保管されている自筆証書遺言については、検認は必要ありません。
そのうえで、すでに行った遺産分割協議と遺言の内容がどのような関係になるのかを確認します。遺言書や遺産分割協議書によってすでに分け方が決まっている財産と、まだ分け方が決まっていない財産とでは扱いが異なります。
Q:一度成立した遺産分割協議をやり直すことはできますか?
一度成立した遺産分割協議について、一人の相続人が「やはり気が変わった」という理由だけで一方的に内容を変更することはできません。
そのため、協議を成立させる前に、誰がどの財産を取得するのかを十分に確認し、相続人全員が納得したうえで合意することが重要です。
また、後から新しい財産が見つかった場合などは、すでに決めた財産とは別に、その財産について改めて話し合う必要が生じることがあります。
遺産分割協議は、一度成立させて終わりではなく、相続人・財産・合意内容を十分に確認したうえで成立させることが大切です。
まとめ
遺産分割協議とは、遺言書などで財産の引継ぎ先が決まっていない場合に、相続人全員で誰がどの財産を取得するのかを話し合って決める手続きです。
今回のモデルケースでは、父が亡くなり、妻・長男・次男の3人が、自宅3,000万円と預貯金1,000万円をどのように分けるのかを話し合いました。
遺産分割協議で大切なのは、単に法定相続分や金額だけを見ることではありません。
母は自宅に住み続けたい、長男には教育費や住宅ローンの負担がある、次男は収入が減って現金を必要としているというように、相続人それぞれに異なる生活事情や希望があります。
そのため、誰がどの財産を取得するのかを具体的に検討するとともに、お互いの事情にも目を向けながら、全員が受け入れられる着地点を探していくことが重要です。
また、遺産分割協議は多数決ではなく、相続人全員の合意によって成立します。話し合いでは解決できないほど意見の対立が深まった場合には、弁護士への相談を検討する段階になります。
遺産分割をめぐる対立が深刻になれば、専門家への依頼費用だけでなく、解決までの時間や手間、家族それぞれの精神的な負担も大きくなります。
だからこそ、自分の希望だけを主張するのではなく、相手にも事情があることを意識し、話し合える段階でできるだけ納得できる分け方を探すことが、遺産分割協議では大切です。
無料相談受付中|まずは一度、お気軽にお話ししませんか?
この記事をここまで読んでくださったあなたへ。
もしかすると今、心の中にこういう想いがあるかもしれません。
- 「まだ元気だけど、そろそろ考えておいた方がいいかも」
- 「相続で家族が揉めるのは絶対に避けたい」
- 「親が高齢になってきて、何か準備が必要そう…」
そう感じた今こそ、行動を起こすチャンスです。
まだ何も決まっていなくてOK。まずは一度、お話をお聞かせください。
✅ 無料相談でできること
当事務所では、初回のご相談は無料で承っております。相談の内容は、まだ漠然としたものでまったく構いません。
ご相談内容の例
- 遺言って何から始めればいいの?
- うちの家族関係でもトラブルなく進められる?
- 自分で書いた遺言書を見てほしい
- 公正証書遺言ってどこに行けばいいの?
- 相続の流れも一緒に知りたい など
💡 専門家に話すことで、「今すべきこと」が明確になります。
✅ 実績・対応エリアについて
当事務所では、これまでに数十件以上の遺言・相続サポートを行ってきました。
地域に根ざした対応と、丁寧でわかりやすい説明をモットーに、多くのお客様から喜びの声をいただいています。
- 対応地域:大田区・品川区・近隣エリア(オンライン相談も対応可)
- ご高齢の方やご家族向けの「ご自宅訪問」も可能です
✅ ご相談の流れ
- 【STEP1】お問い合わせ
→ 電話・メールフォームのいずれかでご連絡ください - 【STEP2】日程調整
→ ご都合の良い日程を調整いたします(平日夜・土日対応もOK) - 【STEP3】無料相談(60分程度)
→ ご状況やお悩みをじっくりお伺いします - 【STEP4】ご提案・お見積り
→ ご希望に応じて、最適なプランをご提案。無理な営業は一切しません。
💬 「話してよかった」「気持ちが軽くなった」そんなご感想を多くいただいています。
✅ ご相談方法(選べます!)
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 📞 電話相談 | お急ぎの方や対面が難しい方におすすめ |
| 🖥 オンライン相談 | ご自宅から安心して相談できます(Zoom対応) |
| 🏠 訪問相談 | ご高齢の方、外出が難しい方のために訪問も可 |
✅ 行政書士プロフィール
特定行政書士 野中雅敏(IT行政書士事務所)
- 国家資格:行政書士(登録番号:25080391)
- 経歴:IT業界出身/相続・遺言分野を専門取り組み中
- 趣味:競泳
- メッセージ:
「遺言は“難しいこと”ではなく、“優しさのカタチ”です。
家族を守るために、ぜひ一緒に考えていきましょう。」
📩 お問い合わせはこちら
- ☎ お電話:03-6820-3968
- 📝 お問い合わせフォーム
- 📍 事務所所在地:東京都大田区大森北3-24-27 ルミエールN
あなたの「不安」を「安心」に変えるお手伝いを、私たち行政書士が全力でサポートいたします。
どんな小さなことでも構いません。
今すぐ、気軽にご連絡ください。

