公正証書遺言でも遺留分は防げない?効力と対策をわかりやすく解説

「公正証書遺言を作っておけば安心」
そう考えていませんか?

確かに、公正証書遺言は公証人が関与して作成されるため、形式的な不備による無効リスクが低く、最も信頼性の高い遺言とされています。

しかし結論から言うと、
公正証書遺言であっても、遺留分を防ぐことはできません。

実際の相続では、

  • 遺言を書いた人の意図どおりに分けられない
  • 多く相続した人が、他の相続人から金銭を請求される
  • 逆に、少ない人が本来もらえるはずの権利に気づかない

といった問題が起こることがあります。

なぜこのようなことが起きるのか。
その原因が「遺留分」という制度です。

公正証書遺言はたしかに強力な手段ですが、
“形式として強い遺言”と“トラブルにならない遺言”は別物です。

この記事では、

  • 公正証書遺言の効力の正しい理解
  • 遺留分との関係
  • なぜ防げないのか
  • 実務上どのように対策すべきか

を、実際の相続で問題になりやすいポイントに絞ってわかりやすく解説します。

相続の流れを示す図。高齢男性が遺言書を作成し、その財産が複数の相続人に分配される中で、遺留分としてお金が調整される様子を表している
遺言で財産の分け方は決められますが、遺留分によって最低限の取り分が調整される仕組みがあります

目次

1. 公正証書遺言でも遺留分は防げない【結論】

公正証書遺言は「形式に強い」だけ

公正証書遺言は、公証人が関与して作成されるため、形式面において非常に信頼性の高い遺言です。

具体的には、

  • 法律の専門家である公証人が内容を確認する
  • 形式不備による無効リスクがほぼない
  • 原本が公証役場に保管され、紛失や改ざんの心配がない

といった点から、「確実に遺言を残す」という目的においては最も優れた方法といえます。

そのため、相続対策として公正証書遺言を選ぶこと自体は非常に合理的です。

しかし注意すべきなのは、
この強みはあくまで“形式面”に限られるという点です。

遺言の「内容」がすべて実現されるかどうかは、遺留分などの別の法律関係によって左右されます。

遺留分は遺言より優先される

遺留分とは、配偶者や子どもなど一定の相続人に法律で保障された「最低限の取り分」です。

この遺留分は、遺言の内容にかかわらず主張することができ、侵害されている場合には「遺留分侵害額請求」によって金銭で取り戻すことが可能です。

つまり、遺言は自由に財産の分け方を決めることができますが、
遺留分という制度によって、その内容は最終的に調整される仕組みになっています。
言い換えると、遺言が有効であることと、その内容がそのまま実現されることは別の問題です。

このため、

たとえ公正証書遺言で
「すべての財産を長男に相続させる」
と定めていたとしても、

他の相続人が遺留分を主張すれば、
遺言どおりに相続が完結しない可能性があります。

公正証書遺言は本当に必要?自筆証書との違い・作るべき人・費用と手続きを解説しています

2. 誰が困るのか?公正証書遺言と遺留分の影響

遺産の分配と遺留分の関係を示す図。中央の遺産から相続人に財産が分かれ、一部の相続人が少ない取り分に対して金銭請求を行う流れを表している
遺言によって財産の分け方が決まっても、不公平がある場合は遺留分により金銭で調整されます

書く人(被相続人)が困るケース

遺言を書く側にとって、遺留分は「思い通りに分けられない」という制約になります。

特に問題になりやすいのが、遺産の内容やバランスに余裕がないケースです。

遺留分を考慮できるほど遺産が多くない場合

相続財産に十分な余裕がない場合、すべての相続人の遺留分を満たすように分けること自体が難しくなります。

その結果、どのような遺言を書いたとしても、
後から遺留分による調整が必要になる可能性が高くなります。

遺産の大部分が自宅不動産である場合

財産の多くが自宅などの不動産で占められている場合、柔軟に分けることができません。

例えば「長男に自宅を相続させる」とした場合でも、
他の相続人の遺留分は金銭で支払う必要があります。

そのため、現金が不足している場合には、不動産を売却せざるを得ないといった状況に陥ることもあり、結果として当初の意図とは異なる相続になってしまう可能性があります。

中小企業・事業資産など現金化しにくい場合

中小企業の株式や事業用資産など、簡単に現金化できない財産が中心の場合も同様です。

後継者に事業を引き継がせるために財産を集中させたとしても、他の相続人の遺留分が問題となることがあります。
その結果、事業資金からの支払いや資産の売却が必要となり、事業運営に影響が及ぶ可能性があります。

多くもらう人が困るケース(請求される側)

不動産を相続したものの現金が足りず困っている人物と、他の相続人から金銭を請求されている様子を示す図
不動産を相続しても、遺留分請求により現金が必要になるケースがあります

遺言によって多くの財産を受け取った人は、遺留分侵害額請求を受ける立場になります。

ここで問題になるのが、
「受け取った財産」と「支払う方法」のズレです。

現金化しにくい資産でも、支払いは現金が原則

遺留分は、原則として金銭で支払う必要があります。
しかし実際の相続では、不動産や自社株、事業用資産といった現金化しにくい財産を受け取るケースも少なくありません。
その結果、手元に現金がないにもかかわらず支払いを求められ、不動産の売却や借入による資金調達を迫られることがあります。

具体的には
長男が自宅不動産を相続したものの、他の兄弟から遺留分を請求され、支払いのために自宅を売却せざるを得なくなったというケースもあります。

また
生前に特定の相続人へ住宅購入資金などの援助をしていた場合、その贈与も含めて遺留分が計算されることがあります。
その結果、遺言では他の相続人に配慮していたつもりでも、想定外に遺留分を請求されるケースもあります。

少ない人・もらえない人が困るケース(請求できる側)

遺言の内容を見て「仕方ない」と感じてしまう方も多いですが、
遺留分がある場合には請求することが可能です。

ただし、ここで重要なのは、
遺留分は自動的にもらえるものではないという点です。

知らないと請求できず損をする

遺留分は、侵害されている場合でも、自分から請求しなければ受け取ることはできません。

そのため、遺言があるから従うしかないと思い込んでいたり、そもそも制度自体を知らなかったりすると、本来受け取れるはずの財産を受け取れないままになってしまう可能性があります。
その結果、大きな不利益を受けてしまうこともあります。

遺留分と遺言はどちらが優先?相続で損しないための知識はこちら

3. なぜ「公正証書遺言なら安心」と誤解されるのか

公証人が関与することによる安心感

公正証書遺言は、公証人という法律の専門家が関与して作成される遺言です。

公証人という専門家が関与し、法的に問題のない形で作成されることから、
「これなら安心」と感じる方が多いのも無理はありません。

実際に、形式面での信頼性は非常に高いといえます。

実際、公正証書遺言は形式面において非常に信頼性が高く、
自筆証書遺言のように不備で無効になるリスクが低いという大きなメリットがあります。

「無効にならない=トラブルにならない」という誤解

しかしここで注意が必要なのは、
「遺言が有効であること」と「トラブルにならないこと」は別の問題であるという点です。

公正証書遺言は、あくまで「形式として有効な遺言」を作るための仕組みであり、
その内容が相続人全員にとって納得できるものかどうかまでは保証していません。

特に遺留分は、遺言の形式に関係なく発生します。
そのため、公正証書遺言であっても、特定の相続人に財産を集中させている場合や、
生前贈与によって財産に偏りがある場合には、後から請求される可能性があります。
その結果、遺言どおりに相続が完結しないケースも少なくありません。

つまり、公正証書遺言は「無効にならない遺言」を作ることはできますが、
「争いにならない遺言」を保証するものではありません。

遺言があっても遺留分は請求できる!家族関係と権利を守る正しい知識

4. 公正証書遺言の効力と限界

法的効力は非常に高い

公正証書遺言とは、公証人が関与して作成される遺言のことで、法律に沿った形式で作成されるため、最も信頼性の高い遺言方式とされています。

公証人が遺言の内容を確認しながら作成するため、

  • 形式不備による無効リスクがほとんどない
  • 原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配がない
  • 相続開始後の手続きがスムーズに進みやすい

といったメリットがあります。

そのため、「確実に遺言を残したい」という観点では、非常に有効な手段といえます。

「トラブルを防ぐ万能ツールではない」

一方で、公正証書遺言はあくまで「有効な遺言を作成するための仕組み」であり、相続トラブルそのものを防ぐことを保証するものではありません。

特に遺留分については、遺言の形式に関係なく発生します。そのため、特定の相続人に財産を集中させている場合や、生前贈与などによって財産に偏りがある場合には、後から遺留分侵害額請求が行われる可能性があります。

つまり、公正証書遺言は

  • 「無効にならない遺言」を作ることはできる
  • しかし「争いにならない遺言」を保証するものではない

という点を理解しておくことが重要です。

遺言書は本当に安心?遺留分トラブルを防ぐために知っておくべき基礎知識と対策

5. 公正証書遺言と遺留分の関係

遺言は有効だが、遺留分で調整される

公正証書遺言は、法的に有効な遺言として強い効力を持ちます。
そのため、遺言の内容自体が無効になることは基本的にありません。

しかし、遺留分が関係する場合は別です。

遺留分は、一定の相続人に認められた最低限の取り分であり、
遺言の内容にかかわらず主張することができます。

そのため、たとえ遺言が有効であっても、
遺留分によって内容が後から調整されることになります。

遺留分侵害額請求の仕組み

遺留分が侵害されている場合、相続人は「遺留分侵害額請求」を行うことができます。

この請求は、遺言の内容を無効にするものではなく、不足している分を金銭で補う仕組みです。
つまり、遺言をやり直すのではなく、「遺言はそのままに、不足分だけを金銭で調整する」という点が重要です。

親に効力のある公正証書遺言をすすめたいあなたへ|言い出しづらさを乗り越える実践ガイド

6. 結局、公正証書遺言で遺留分は防げるのか?

原則として遺留分は防げない

結論として、遺留分は法律で保障された権利であるため、
遺言の内容によって完全に防ぐことはできません。

これは、公正証書遺言であっても同様です。

どれだけ形式的に整った遺言であっても、
遺留分が侵害されている場合には、相続人は請求を行うことができます。

そのため、「公正証書遺言を作れば遺留分も防げる」という考えは誤りです。

例外はあるが現実的ではない

遺留分を防ぐ方法として、「遺留分の放棄」という制度があります。

これは、相続開始前に相続人が遺留分を放棄することで、
将来的な請求を防ぐというものです。

しかし、この方法は

  • 家庭裁判所の許可が必要
  • 放棄に合理的な理由が求められる

といったハードルがあり、
実務上は一般的な対策とは言えません。

また、相続人全員に放棄してもらう必要があるため、
現実的には利用が難しいケースが多いのが実情です。だけ抑えることが可能になります。

遺言で遺留分を侵害しないために|想いを伝え、争いを防ぐもめない相続の作り方

7. 実務的な対策|遺留分トラブルを防ぐ方法

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遺留分を踏まえた遺言設計を行う

もっとも重要なのは、最初から遺留分を前提に遺言を設計することです。

遺留分を無視して特定の相続人に財産を集中させると、後から請求が発生し、結果的にトラブルにつながる可能性が高くなります。

そのため、各相続人の遺留分を把握したうえで配分を検討し、
極端な偏りが生じないようにすることが重要になります。

これにより、遺留分請求によるトラブルのリスクを抑えることができます。

「どう分けるか」ではなく、
「請求されても崩れないか」という視点で設計することがポイントです。

親に効力のある公正証書遺言をすすめたいあなたへ|言い出しづらさを乗り越える実践ガイド

生命保険を活用して現金を確保する

遺留分は金銭での支払いが原則であるため、
現金をどのように準備するかが重要になります。

そこで有効なのが生命保険の活用です。

生命保険金は受取人固有の財産として扱われるため、
遺産分割の対象外となるケースが多く、現金を確保する手段として有効です。

その結果、不動産を売却せずに済んだり、事業資産を維持できたりするなど、
相続後の資産運用を安定させる効果が期待できます。

生命保険と遺留分の関係を徹底解説!相続トラブルを防ぐための知識と対策

生前贈与は計画的に行う

生前贈与は有効な対策の一つですが、やり方を誤ると逆に遺留分トラブルの原因になります。

特に、相続開始前の一定期間に行われた贈与や、
特定の相続人に偏った贈与は、遺留分の計算対象に含まれる可能性があります。

例えば、特定の子どもに住宅購入資金を援助していた場合や、
孫の学費を継続的に負担していた場合などは、
他の相続人から「不公平ではないか」と受け取られることがあります。

そのため、生前贈与を行う際は、誰に・いつ・いくら贈与するのかを、
相続全体のバランスを踏まえて慎重に検討することが重要です。

「よかれと思って行った生前贈与」が、相続時には不公平感の原因になることもあるため注意が必要です。

付言事項で意図や理由を伝える

遺言書には法的効力のある内容だけでなく、付言事項として想いや理由を記載することができます。
付言事項とは、法的な効力は持たないものの、遺言者の意思や背景を伝えるためのメッセージ部分のことです。
これにより、相続人の納得感を高めることが可能です。

例えば、付言事項には次のような内容を記載することがあります。

  • なぜ特定の相続人に多く配分したのか(同居して介護をしてくれたため など)
  • 生前に援助していない相続人へ多く配分した理由
  • 家族それぞれに対する感謝の気持ちやメッセージ

このように理由や想いを明確にしておくことで、遺留分請求そのものを完全に防ぐことはできなくても、トラブルの発生を抑える効果が期待できます。

遺言書の付言が家族を救う!失敗しないための具体例と成功事例

8 . よくある質問(FAQ)

Q:公正証書遺言を作れば遺留分は無視できますか?

いいえ、公正証書遺言を作成しても遺留分を無視することはできません。
遺留分は法律で保障された権利であり、遺言の形式に関係なく主張することができます。

Q:公正証書遺言と自筆証書遺言で遺留分の扱いは変わりますか?

いいえ、変わりません。
遺留分は遺言の種類に関係なく認められる権利であるため、公正証書遺言でも自筆証書遺言でも同様に請求することができます。

Q:遺留分を請求された場合、必ず支払わなければなりませんか?

遺留分が認められる場合には、原則として金銭で支払う必要があります。
ただし、具体的な金額や支払い方法については、当事者間の話し合いによって調整されることもあります。

Q:遺留分の請求には期限がありますか?

はい、あります。
遺留分侵害額請求は、原則として「相続の開始および遺留分侵害を知った時から1年以内」に行う必要があります。
この期間を過ぎると請求できなくなるため注意が必要です。

Q:遺留分対策として一番重要なことは何ですか?

最も重要なのは、遺留分を前提にした遺言設計を行うことです。
遺留分を無視した遺言は、結果としてトラブルにつながる可能性が高くなります。

Q:生前贈与をすれば遺留分対策になりますか?

生前贈与は対策の一つですが万能ではありません。
贈与の内容によっては遺留分の計算対象に含まれ、逆にトラブルの原因になることもあります。

Q:遺留分を完全に防ぐ方法はありますか?

原則として、遺留分を完全に防ぐことはできません。
遺留分の放棄という制度はありますが、家庭裁判所の許可が必要であり、実務上はハードルが高い方法です。

Q:遺留分トラブルを避けるにはどうすればよいですか?

遺留分を前提とした遺言設計に加え、

  • 現金を確保する(生命保険など)
  • 生前贈与を計画的に行う
  • 付言事項で理由や想いを伝える

といった対策を組み合わせることが重要です。

Q:遺留分はいくらもらえるのか?

遺留分の割合は、相続人の構成によって異なります。

基本的には、法定相続分の一定割合が遺留分として認められています。

具体的には次のとおりです。

相続人の構成遺留分の割合
配偶者や子どもが相続人の場合法定相続分の2分の1
直系尊属(親など)のみが相続人の場合法定相続分の3分の1

例えば、配偶者と子ども1人の場合は次のように計算されます。

項目内容
子どもの法定相続分2分の1
遺留分その半分の4分の1

ただし、実際の金額は、生前贈与の有無や財産の内容(不動産・現金など)、他の相続人との関係などによって変わるため、個別の事情によって大きく異なります。

まとめ|公正証書遺言は「作るだけ」では不十分

公正証書遺言は、形式面において非常に信頼性の高い遺言です。
しかし、それだけで相続トラブルを完全に防ぐことはできません。

特に遺留分については、遺言の形式に関係なく発生するため、
公正証書遺言であっても後から請求される可能性があります。

その結果、

  • 遺言どおりに相続が進まない
  • 多く相続した人が金銭の支払いを求められる
  • 少ない相続人が権利を主張する

といった問題が起こることがあります。

そのため重要なのは、

「形式として正しい遺言」を作ることではなく、
「実際にトラブルにならない遺言」を設計することです。

具体的には、

  • 遺留分を前提にした配分設計
  • 現金確保(生命保険など)
  • 生前贈与の適切な活用
  • 付言事項による意思の共有

といった対策を組み合わせていくことが重要になります。

公正証書遺言はあくまで“手段”であり、
相続対策の本質は「設計」にあります。

遺言を作成する際には、遺留分も含めた全体設計を意識することで、
将来のトラブルを大きく減らすことにつながります。

詳しく知りたい方へ

遺言と遺留分の関係や、実際に起こるトラブル事例・対策については、以下の記事で詳しく解説しています。

遺言があっても遺留分は請求できる!家族関係と権利を守る正しい知識

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