公正証書遺言でも安心できない?遺留分で相続できないケースと具体的対策を解説

公正証書遺言を作成すれば、相続トラブルは防げる。
そう考えている方は少なくありません。

確かに、公正証書遺言は法的に有効性が高く、形式不備による無効リスクも低いため、相続対策として非常に有効な手段です。
しかし実際には、公正証書遺言を作っていても、相続人同士のトラブルに発展してしまうケースは珍しくありません。

その大きな理由の一つが、「遺留分」という制度の存在です。
遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分のことであり、遺言の内容よりも優先される場合があります。

さらに注意すべきなのは、遺留分以外にも、公正証書遺言どおりに相続が進まないケースがあるという点です。
「せっかく作ったのに、思ったとおりに実現できない」という事態は、決して珍しいものではありません。

目次

1. 公正証書遺言でも安心とは限らない理由

相続について話し合う日本人の家族。中央に高齢の親が座り、周囲の子どもたちが不安や困惑した表情でテーブル上の遺言書を見つめている様子
相続では、家族それぞれの想いや不安が交錯し、トラブルのきっかけになることがあります

公正証書遺言があれば相続トラブルは防げるのか

公正証書遺言は、公証人が関与して作成されるため、形式面での不備がなく、法的に有効性の高い遺言です。
そのため、「公正証書遺言を作っておけば安心」と考えられることが多いでしょう。

しかし、公正証書遺言はあくまで「遺言者の意思を明確にするもの」であり、すべての相続問題を防げるわけではありません。
実際の相続では、相続人の権利関係や感情、財産の内容など、さまざまな要因が絡み合います。

その結果、遺言の内容について相続人同士で意見が対立したり、金銭の支払いを巡る話し合いが必要になったりするなど、遺言どおりに円滑に進まないケースも少なくありません。

遺留分によって遺言どおりに相続できないケースがある

特に注意が必要なのが、「遺留分」による影響です。
遺留分は、配偶者や子などの一定の相続人に認められている最低限の取り分であり、遺言によっても完全に排除することはできません。

そのため、たとえ公正証書遺言で特定の相続人に多くの財産を残す内容にしていたとしても、他の相続人が遺留分を主張すれば、その内容どおりに相続できない可能性があります。

さらに、公正証書遺言があっても、遺留分以外の理由によって遺言どおりに実現できないケースも存在します。

以下では、その代表的なケースを整理します。

ケース内容なぜ遺言どおりにいかないのか
相続人全員の合意相続人全員が話し合いで別の分け方に変更する遺言があっても全員合意があれば遺産分割は変更可能
財産状況の変化遺言作成後に不動産売却・資産変動があった遺言の前提となる財産が存在しない・内容が変わる
相続放棄・辞退相続人や受遺者が財産の受け取りを拒否遺言の配分前提が崩れる
遺言執行の支障相続人が協力しない・手続きが進まない実務上、遺言どおりに実行できない
特別受益・寄与分生前贈与や介護貢献が考慮される実質的な取り分が調整される可能性がある
遺言内容の不備曖昧な記載や法的に問題のある内容一部または全部が無効になる可能性がある

公正証書遺言と遺言執行者の役割とは|遺言書作成時のポイントと注意点

このように、公正証書遺言は有効性の高い手段ではあるものの、「必ずそのとおりに実現される」とは限りません。

その中でも特にトラブルに発展しやすいのが、法律上の権利として認められている遺留分です。
次の章では、公正証書遺言でも崩れてしまう具体的なケースについて、詳しく解説していきます。

公正証書遺言は本当に必要?自筆証書との違い・作るべき人・費用と手続きを解説しています

2. 公正証書遺言と遺留分の基本

公正証書遺言と遺留分は、相続を考えるうえで必ず押さえておくべき重要なポイントです。
ここを正しく理解していないと、「せっかく遺言を作ったのに思いどおりにいかない」という事態につながる可能性があります。

まずは、それぞれの基本的な内容を確認していきましょう。

公正証書遺言とは何か

公正証書遺言とは、公証人が関与して作成する遺言書のことをいいます。
遺言者が公証役場に出向き、公証人に対して内容を伝え、それをもとに公証人が遺言書を作成します。

この形式の特徴は、法律の専門家である公証人が関与するため、形式不備によって無効になるリスクが極めて低い点にあります。
また、原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配がないことも大きなメリットです。

そのため、自筆証書遺言と比べて安全性が高く、確実に意思を残したい場合に選ばれることが多い遺言形式といえます。

遺留分とは何か(対象者と割合)

配偶者と子ども2人の家族構成における相続割合を示したインフォグラフィック。左に法定相続分(配偶者1/2、子ども各1/4)、右に遺留分(配偶者1/4、子ども各1/8)を円グラフで比較している。
法定相続分と遺留分は異なります。配偶者と子ども2人の場合、遺留分はそれぞれ法定相続分の半分になります。

遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分のことをいいます。

対象となるのは、主に以下の相続人です。

  • 配偶者
  • 子(代襲相続人を含む)
  • 直系尊属(父母など)

※兄弟姉妹には遺留分は認められていません。

遺留分の割合は、相続人の構成によって異なりますが、原則として以下のとおりです。

  • 配偶者や子がいる場合:法定相続分の2分の1
  • 直系尊属のみの場合:法定相続分の3分の1

この遺留分は、遺言の内容よりも優先される権利であり、侵害された場合には金銭で請求することができます。

なぜ公正証書遺言でも遺留分は防げないのか

公正証書遺言は法的に有効な遺言ですが、それでも遺留分を完全に防ぐことはできません。

その理由は、遺留分が法律によって強く保護された権利だからです。
たとえ遺言で「すべての財産を特定の相続人に相続させる」と定めたとしても、他の相続人が遺留分を主張すれば、その内容どおりに相続することはできなくなります。

また、遺留分は「遺留分侵害額請求」という形で、金銭の支払いを求めることができる権利です。
そのため、財産の分け方によっては、相続人間で金銭の支払いをめぐる調整が必要になることもあります。

行政書士の視点
「遺留分侵害額請求」を代理できるのは弁護士のみとなります。
正確に申し上げると、「比較的少額な請求」であれば特別な資格を持つ司法書士も代理可能ですが、相続で訴訟を起こすような金額である場合、「比較的少額な請求」である可能性は極めて低く、実質的には対応できないと考えられます。

このように、公正証書遺言を作成するだけでは不十分であり、遺留分を踏まえた設計を行うことが重要になります。

遺留分と遺言はどちらが優先?相続で損しないための知識はこちら

3. 公正証書遺言でも崩れる4つのケース

相続トラブルの典型例を4つのシーン(不動産・会社経営・生前贈与・介護)で示した図解
相続トラブルは「不動産・会社・お金・介護」の4つが典型です

公正証書遺言を作成していても、財産の内容や相続人の状況によっては、遺言どおりに相続できないケースがあります。
特に、遺留分が関係する場面では、遺言の内容と実際の分け方にズレが生じやすくなります。

ここでは、実際に多く見られる代表的な4つのケースを紹介します。

①不動産が多く遺留分を満たせないケース

相続財産の大半が自宅や賃貸不動産などの不動産で占められている場合、遺留分の問題が生じやすくなります。

例えば、「長男に自宅を相続させる」といった内容の公正証書遺言を作成したとしても、他の相続人には遺留分が認められています。
しかし、不動産は簡単に分割することができず、現金のように柔軟に配分することができません。

その結果、他の相続人から遺留分侵害額請求がされると、現金で支払う必要が生じたり、不動産を売却せざるを得なくなったりする可能性があります。
「住み続けたい自宅を手放さなければならない」といった事態にもつながりかねません。

②会社を特定の相続人に承継させるケース(事業承継)

中小企業の事業承継では、会社の株式を後継者に集中させる必要があります。
そのため、「長男にすべての株式を相続させる」といった遺言が作成されることも少なくありません。

しかし、株式の評価額が高い場合、他の相続人の遺留分を侵害する可能性があります。
遺留分侵害額請求がされると、後継者は多額の金銭を支払う必要が生じ、資金繰りに影響が出るおそれがあります。

最悪の場合、株式の分散や会社の経営への影響といった問題にも発展しかねません。
事業を安定して引き継ぐための遺言が、かえって経営リスクになる可能性もあるのです。

③生前贈与によって財産に偏りがあるケース

高齢の親を介護する家族と、それを少し離れて見守る別の家族の様子。介護をめぐる気持ちのすれ違いが表現されている
介護の負担や関わり方の違いは、相続時のトラブルにつながることがあります

生前に特定の相続人へ多額の贈与をしている場合も注意が必要です。

例えば、住宅購入資金の援助や事業資金の支援など、特定の子だけが大きな利益を受けているケースでは、それが「特別受益」として扱われる可能性があります。

このような場合、遺言での配分だけでなく、生前贈与も含めて遺留分が計算されるため、思っていた以上に他の相続人の取り分が不足することがあります。

その結果、「すでに十分にもらっているはずなのに、さらに請求される」といった形で不満が生じ、金銭請求や話し合いが必要になるケースも少なくありません。

④介護した人に多く残すなど偏った遺言のケース

長年にわたって親の介護を担ってきた相続人に対して、「多くの財産を残したい」と考えるのは自然なことです。

しかし、遺言で特定の相続人に大きく偏った配分をした場合、他の相続人の遺留分を侵害する可能性があります。

法律上は、介護などの貢献があっても、必ずしも遺留分が減るわけではありません。
そのため、「これだけ尽くしたのに認められないのか」という不満と、「不公平だ」という他の相続人の感情がぶつかりやすくなります。

その結果、感情的な対立が生じやすく、金銭請求だけでなく関係性の悪化につながるケースもあります。

遺言があっても遺留分は請求できる!家族関係と権利を守る正しい知識

4. なぜ遺留分トラブルが起きるのか

公正証書遺言を作成していても、相続の場面で意見の対立や金銭の請求が発生してしまうのには、いくつかの共通した原因があります。

これらの原因を理解しておくことで、「なぜ遺言どおりに進まないのか」が明確になり、適切な対策を検討しやすくなります。

ここでは、遺留分をめぐる問題が生じやすい主な理由を解説します。

財産が分けにくい(不動産・株式など)

相続財産の内容によっては、そもそも公平に分けることが難しい場合があります。

例えば、不動産や非上場株式などは、現金のように単純に分割することができません。
そのため、特定の相続人にまとめて相続させる必要が出てくるケースもあります。

しかし、その結果として他の相続人の遺留分が不足すると、不足分を金銭で請求されることになります。
特に現金が少ない場合には、資金の準備ができず、不動産の売却などを検討せざるを得ない状況になることもあります。

相続人間の感情的な不公平感

相続では、法律上の公平と、当事者が感じる公平が一致しないことが少なくありません。

例えば、「介護をしてきた」「長年同居してきた」といった事情がある場合、それに応じた配分を望むのは自然な感情です。
一方で、他の相続人からすれば、「法律上は同じ権利がある」と考えることもあります。

このように、それぞれの立場によって感じ方が異なるため、遺言の内容に納得できず、意見の対立が生じやすくなります。

生前の説明不足

遺言の内容がどれだけ合理的であっても、その理由が共有されていなければ、相続人にとっては納得しにくいものになります。

特に、特定の相続人に多くの財産を残す場合には、「なぜそのような分け方なのか」が伝わっていないと、不信感につながる可能性があります。

その結果、「不公平ではないか」「何か隠されているのではないか」といった疑念が生まれ、話し合いが複雑化する要因となります。

遺言だけで解決しようとしている

遺言はあくまで財産の分け方を示す手段であり、それだけですべての問題を解決できるわけではありません。

特に、遺留分の問題が関係する場合には、財産の内容や相続人の状況を踏まえた事前の対策が不可欠です。

しかし、遺言の作成だけで安心してしまい、他の対策を講じていない場合には、結果として金銭の請求や話し合いが必要になるケースがあります。

そのため、「遺言を作ること」だけでなく、「どのように実現されるか」まで含めて考えることが重要です。

遺言書は本当に安心?遺留分トラブルを防ぐために知っておくべき基礎知識と対策

5. 遺留分トラブルを防ぐための具体的対策

行政書士などの専門家が日本人の家族に相続について説明している様子。テーブルに書類を広げ、家族が安心した表情で話を聞いている
専門家に相談することで、相続の不安や疑問を整理し、安心して手続きを進めることができます

ここまで見てきたとおり、公正証書遺言を作成していても、遺留分によって遺言どおりに相続できないケースは少なくありません。

しかし、あらかじめ対策を講じておくことで、相続人同士の対立や金銭の請求をできるだけ避けることは可能です。

ここでは、実務上有効とされる具体的な対策を解説します。

相続人へ事前に説明しておく

遺言の内容について、事前に相続人へ説明しておくことは非常に重要です。

特に、特定の相続人に多くの財産を残す場合には、「なぜそのような分け方にしたのか」という理由を伝えておく必要があります。

もっとも、説明をしたからといって、その場ですぐに納得してもらえるとは限りません。
むしろ、話を聞いた時点では「不公平ではないか」と不満を感じるケースも少なくないでしょう。

すぐに納得できないのが自然です。

しかし、事前に思いや理由を伝えておくことで、その後の受け止め方が大きく変わることがあります。
例えば、親が年齢を重ね、体調を崩していく姿を見守る中で、「親なりに考えた結果だったのだ」と理解が深まり、最終的にその意思を尊重しようと考えるようになるケースもあります。

このように、時間の経過が感情を和らげ、結果として相続時の対立を防ぐことにつながることもあります。

「その場で納得してもらうこと」だけでなく、「時間をかけて理解してもらうこと」も見据えて、早めに伝えておくことが大切です。


行政書士の視点
遺言作成をお手伝いした際、ご依頼者に相続人へ遺言内容の説明をするように薦めております。
多くのご依頼者は直感的に難しいと感じますが、時間の経過とともに必要性を感じ、少し時間を空けてお話する方が多い印象です。

遺言書の付言事項で思いを伝える

すべての相続人に直接説明することが難しい場合には、遺言書の「付言事項」を活用する方法があります。

付言事項とは、法的な効力は持たないものの、遺言者の思いや背景を自由に記載できる部分です。

相続は、単なる財産の分配ではなく、それぞれの相続人の立場や感情が強く関わる場面です。
そのため、分け方だけが示されていると、「なぜこのような内容になっているのか」が分からず、不満や疑問が生じやすくなります。

そこで、付言事項の中で例えば次のような内容を丁寧に伝えることが重要です。

  • なぜこの分け方にしたのかという理由
  • それぞれの相続人に対するこれまでの感謝の気持ち
  • 相続人同士で争ってほしくないという願い
  • 自分なりに考え抜いた結果であるという思い

このような言葉が残されていることで、相続人は単なる「不公平な分配」としてではなく、「親なりに考えた結果」として受け止めやすくなります。

もちろん、それだけですべての不満がなくなるわけではありません。
しかし、何も説明がない場合と比べると、受け止め方には大きな差が生まれます。
理由がわからないままでは、不信感だけが残ってしまう可能性もあります。

感情的な対立が起きやすい場面だからこそ、遺言者の言葉で思いを残しておくことには、大きな意味があります。

遺言書の付言が家族を救う!失敗しないための具体例と成功事例

遺留分に備えた資金準備と分け方の設計

遺言を作成する際には、単に「誰に何を渡すか」を決めるだけでなく、遺留分が発生することを前提に考えることが重要です。

実際には、不動産や自社株などが財産の大半を占めている場合、すべての相続人に十分な財産を分けることが難しいケースも少なくありません。
そのため、「誰かに多く渡す」こと自体は避けられない場面もあります。

また、人によっては十分な遺産を渡せない場合もありますが、それでも被相続人としては、その時点でできる限りの配慮をしているケースがほとんどです。
限られた財産の中で、家族の状況やこれまでの経緯を踏まえ、悩みながら分け方を決めているという現実があります。

このような前提を踏まえたうえで重要になるのは、「遺留分の請求があったときにどう対応するか」まで見据えておくことです。

例えば、生命保険などを活用して、あらかじめ現金を準備しておくことで、遺留分の支払いに対応しやすくなります。
これは単なる相続対策というだけでなく、相続人に過度な負担をかけないための配慮でもあります。

準備がない場合、相続人同士で金銭を巡る話し合いが必要になることもあり、大きな負担や対立につながる可能性があります。

無理に均等に分けようとすると、かえって現実的でない遺言になることもあります。
そのため、「どのように分けるか」だけでなく、「どのように実現するか」まで含めて設計しておくことが重要です。

行政書士など専門家へ相談する重要性

こここまで見てきたように、遺留分を踏まえた遺言の設計には、法律だけでなく財産構成や家族関係も考慮する必要があります。

そのため、ご自身だけで判断しようとすると、「この分け方で本当に大丈夫なのか」「後から問題にならないか」といった不安が残ることも少なくありません。

例えば、次のような悩みを抱える方は多くいらっしゃいます。

  • 遺産の大半が自宅などの不動産であり、どのように分ければよいかわからない
  • 自宅や事業用の不動産を特定の相続人に引き継がせたいが、他の相続人とのバランスに不安がある
  • 生前に特定の相続人へ資金援助をしており、遺留分にどのような影響があるのか知りたい
  • 会社の株式を後継者に引き継ぎたいが、他の相続人への配慮をどうすべきか悩んでいる
  • 家族関係が複雑で、どのような遺言内容にすればよいのかわからない

このような悩みに対して、行政書士などの専門家に相談することで、以下のようなサポートを受けることができます。

  • 財産の内容や家族構成を踏まえた遺言内容の提案
  • 遺留分を考慮した現実的な分け方の設計
  • 将来的な金銭請求のリスクを見据えたアドバイス
  • 公正証書遺言の作成手続きのサポート
  • 必要に応じた他士業(弁護士・税理士など)との連携

また、専門家に相談することで、自分では気づかなかったリスクや選択肢を知ることができる点も大きなメリットです。

相続は一度発生するとやり直しがきかないため、「これで大丈夫だろう」と自己判断するのではなく、事前に専門家の視点を取り入れておくことが重要です。

公正証書遺言を単に作成するだけでなく、「実際に円滑に実現されるか」まで見据えるのであれば、専門家への相談は非常に有効な選択肢といえるでしょう。

6. 公正証書遺言と遺留分に関するよくある質問(Q&A)

ここでは、公正証書遺言と遺留分に関してよくある質問をまとめました。
記事の内容とあわせて確認することで、より理解を深めることができます。

Q:公正証書遺言があれば遺留分は無視できますか?

公正証書遺言を作成していても、遺留分を無視することはできません。

遺留分は、配偶者や子など一定の相続人に法律上認められている権利であり、遺言の内容よりも優先される場合があります。
そのため、遺言で特定の相続人にすべての財産を相続させるといった内容にしていても、他の相続人が遺留分を主張すれば、金銭の支払いが必要になる可能性があります。

Q:遺留分を請求された場合、必ず支払う必要がありますか?

遺留分侵害額請求がされた場合には、原則として金銭での支払いが必要になります。

ただし、すぐに支払えない場合には、分割での支払いや支払方法について話し合いが行われることもあります。
また、そもそも遺留分がどの程度あるのか、計算に争いがあるケースも少なくありません。

いずれにしても、請求を受けた場合には、早めに専門家へ相談することが重要です。

Q:遺留分対策としてできることは何がありますか?

主な対策としては、以下のようなものがあります。

  • 相続人への事前説明
  • 遺言書の付言事項による意思の共有
  • 生命保険などを活用した資金準備
  • 遺留分を踏まえた遺言内容の設計

これらを組み合わせることで、相続人同士の対立や金銭の請求をできるだけ抑えることが可能になります。

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Q:生前に遺留分を放棄してもらうことはできますか?

遺留分は、生前に放棄してもらうことも可能ですが、家庭裁判所の許可が必要となります。

また、放棄が認められるためには、「本人の自由な意思であること」や「合理的な理由があること」などが求められます。
そのため、実務上は簡単に進められるものではなく、慎重な対応が必要です。

具体的に検討する場合には、専門家へ相談することをおすすめします。

将来に安心した表情を見せる日本人の高齢者と家族。相続の不安が解消され、穏やかに並んでいる様子
相続の準備をしておくことで、家族みんなが安心して将来を迎えることができます

まとめ|公正証書遺言は遺留分対策とセットで考えることが重要

公正証書遺言は、法的に有効性が高く、相続対策として非常に有効な手段です。
しかし、公正証書遺言を作成しただけで、すべてが安心というわけではありません。

特に、遺留分という制度がある以上、遺言の内容どおりに相続できないケースは現実に起こり得ます。
不動産が多い場合や、特定の相続人に財産を集中させる場合には、遺留分による金銭の請求や相続人同士の意見の対立が生じる可能性があります。

また、相続は単なる財産の問題ではなく、それぞれの相続人の感情やこれまでの関係性も大きく影響します。
そのため、「形式として正しい遺言」を作るだけでなく、「実際に円滑に実現される遺言」を意識することが重要です。

そのためには、

  • 相続人への事前の説明
  • 付言事項による思いの共有
  • 遺留分に備えた資金準備や設計

といった対策を組み合わせていく必要があります。

もっとも、財産の状況や家族関係は一人ひとり異なるため、「これが正解」という分け方があるわけではありません。
限られた財産の中で、どのように分けるかを悩みながら決めていくことになります。

だからこそ、「自分なりに考えたつもりでも、本当に問題がないのか」と不安を感じる場面もあるのではないでしょうか。

そのような場合には、早い段階で行政書士などの専門家へ相談することも検討してみてください。
第三者の視点を取り入れることで、見落としていたリスクに気づけたり、より現実的な解決策が見えてくることがあります。

公正証書遺言は、「作ること」が目的ではなく、「残された家族が安心して相続を進められること」が本来の目的です。
そのためにも、遺留分を踏まえた準備を行い、後悔のない形で遺言を整えていくことが大切です。

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