兄弟で不動産を相続するとどうなる?共同相続と共有を避ける分け方を解説

兄弟で実家などの不動産を相続するイメージ

親が亡くなり、兄弟で実家などの不動産を相続することになった場合、「とりあえず半分ずつ共有名義にすればよい」と考える方もいるかもしれません。

しかし、相続分が2分の1ずつだからといって、不動産まで半分ずつ共有する必要はありません。実家は兄、預貯金は弟というように、遺産全体で分け方を考えることもできます。

一方で、いったん共有名義にすると、売却や管理、次の相続で話が複雑になることがあります。

この記事では、共同相続とはどのような状態なのかを確認しながら、兄弟で不動産を相続するときの現実的な分け方と、共有名義にする前に知っておきたい注意点を解説します。

目次

①相続が始まると不動産はどうなる?共同相続の基本

親が亡くなると、その時点で相続が開始します。

相続は、亡くなった方の財産や権利・義務を引き継ぐ仕組みです。相続そのものの意味や基本的な流れについては、相続の基本的な仕組みで詳しく解説しています。

その後、遺言書の有無を確認し、戸籍を集めて相続人を確定し、預貯金や不動産などの遺産を調査していきます。そして、遺言書がなく相続人が複数いる場合には、遺産分割協議によって「誰がどの財産を取得するのか」を決めることになります。

大まかな流れを整理すると、次のようになります。

親が亡くなる

相続は、被相続人が亡くなった時点で開始します。

相続開始

預貯金や不動産などの財産は、相続の対象として扱われます。

遺言書の確認

遺言書がある場合は、まずその内容を確認して手続きを進めます。

相続人・相続財産の調査

戸籍で相続人を確定し、不動産や預貯金、借金などの財産を調べます。

遺産分割協議

遺言がない場合などは、相続人全員で誰がどの財産を取得するか話し合います。

誰が不動産を取得するか決定

実家は兄、預貯金は弟というように、遺産全体を見ながら分け方を決めます。

相続登記などの手続き

決まった内容に沿って、不動産の名義変更など必要な手続きを進めます。

父の死亡後、兄弟が実家と預貯金を共同相続し、遺産分割協議によって兄が実家、弟が現金を取得する流れを示すイラスト
相続開始時には兄弟が遺産を共同で相続しますが、遺産分割協議によって、実家は兄、預貯金は弟というように財産ごとの取得者を決めることができます。

このうち、相続(STEP.2)が開始してから遺産分割によって取得者が決まる(STEP.6)までの間、複数の相続人が遺産を共同で相続している状態が「共同相続」です。

遺産分割が終わるまでは共同相続の状態になる

たとえば、父が亡くなり、相続人が兄と弟の2人だったとします。

父の遺産に実家があっても、遺産分割をする前から「実家は兄のもの」「実家は弟のもの」と決まっているわけではありません。誰が取得するかを決めるまで、兄弟が共同で相続している状態になります。

つまり、共同相続は、相続手続きの途中で生じる状態と考えるとわかりやすいでしょう。

ここで大切なのは、「共同相続になった=最終的にも共有名義にしなければならない」という意味ではないことです。

共同相続になっても不動産を共有名義にする必要はない

遺産分割協議では、不動産だけを見るのではなく、預貯金などを含めた遺産全体について分け方を決めることができます。

たとえば、兄弟の法定相続分がそれぞれ2分の1だったとしても、

兄が実家を取得し、弟が預貯金を取得する

という分け方もできます。

法定相続分が2分の1ずつだからといって、実家まで兄弟それぞれ2分の1の共有名義にする必要はありません。

なお、法定相続分は遺産全体についての割合であり、各財産をその割合で共有しなければならないという意味ではありません。誰が相続人になるのか、法定相続分がどう決まるのかは、法定相続人と法定相続分の基本をご覧ください。

遺言がある場合はまず内容を確認する

遺言書がある場合は、まずその内容を確認して相続手続きを進めます。

この記事では、遺言書がない場合、または遺言書があっても相続人全員で別の分け方を検討する場合を想定して、不動産の分け方を解説していきます。

不動産は「とりあえず兄弟で半分ずつ」と共有名義にしてしまうと、その後の管理や売却で判断が難しくなることがあります。

そのため、共同相続の段階で、誰が不動産を取得するのか、ほかの財産とどう組み合わせて分けるのかを検討しておくことが重要です。

②不動産を兄弟の共有名義にする前に考えたいこと

兄弟で不動産を相続すると、「法定相続分が2分の1ずつなら、不動産も2分の1ずつ共有すれば公平」と考えやすいものです。

しかし、不動産を共有すると、それぞれが自由に管理・処分できるわけではありません。

特に実家の場合は、相続した直後には問題がなくても、数年後に「売りたい」「住み続けたい」「修繕したい」と兄弟の考えが分かれることがあります。

共有不動産について、どのような行為を誰の判断でできるのかを整理すると、次のようになります。

行為の種類内容具体例共有者の同意
保存行為共有物の現状を維持したり、権利を守ったりするための行為雨漏りを防ぐための応急修理、時効完成を防ぐための対応など各共有者が単独でできる
管理行為共有物の利用方法を決めるなど、通常の管理に関する行為賃貸に出す、使用方法を決める、一定の修繕を行うなど持分価格の過半数で決める
変更行為共有物の形状や性質を大きく変える行為建物の大規模な改築、土地の形状を大きく変える工事など原則として共有者全員の同意が必要
処分行為共有物そのものを処分する行為不動産全体を売却する、建物を取り壊すなど原則として共有者全員の同意が必要
兄弟2人が実家を共有し、一方は売却、もう一方は維持を希望している状況を表すイラスト
実家を兄弟で共有すると、売却したい人と残したい人で意見が分かり、不動産の処分や管理が難しくなることがあります。

兄弟が2分の1ずつ共有している場合、管理行為は持分価格の過半数が必要なので、どちらか一人だけでは決められません。一方、不動産全体の売却などは原則として二人とも同意する必要があります。

2分の1ずつ共有すると管理行為でも二人の合意が必要になる

保存行為は、各共有者が単独で行うことができます。

一方、共有物の利用方法などに関する管理行為は、原則として共有者の持分価格の過半数で決めます。

ここで注意したいのが、兄弟2人で実家を2分の1ずつ共有しているケースです。

兄も弟も持分は50%なので、どちらか一人だけでは過半数に達しません。そのため、管理に関する判断でも、実際には兄弟2人で合意する必要が出てきます。

不動産全体の売却は原則として全員の同意が必要

さらに、不動産全体を売却するなどの処分行為は、原則として共有者全員の同意が必要です。

たとえば、弟が「誰も住まないなら実家を売りたい」と考えても、兄が「親の家だから残したい」と反対すれば、弟一人の判断で不動産全体を売却することはできません。

また、共有物に大きな変更を加える場合も、原則として共有者全員の同意が必要です。

ただし、形状や効用を著しく変えない一定の変更については、持分価格の過半数で決められる場合があります。

つまり、共有不動産では、「自分も半分持っているから、自分の判断で半分は自由にできる」というわけではありません。

「とりあえず共有」にすると将来の調整が増える

共有名義は、遺産分割の時点では公平で簡単な方法に見えることがあります。

しかし、その後に売却、利用、修繕などについて兄弟の意見が分かれると、その都度話し合いが必要になります。

さらに、兄や弟が亡くなれば、その共有持分が子どもなどに相続されることもあります。共有者が増えれば、それだけ合意形成も難しくなりやすくなります。

そのため、不動産については最初から2分の1ずつ共有するのではなく、実家は兄、預貯金は弟というように、遺産全体を見ながら共有しない分け方ができないかを先に検討することが大切です。

③不動産は共有せず、遺産全体で分けることもできる

兄弟の法定相続分が2分の1ずつだからといって、実家も預貯金もすべて2分の1ずつ分ける必要はありません。

遺産分割では、相続財産全体を見ながら、誰がどの財産を取得するかを決めることができます。

たとえば、父の遺産が次のような内容だったとします。

  • 実家:2,000万円
  • 預貯金:2,000万円
  • 相続人:兄と弟の2人

この場合、兄弟それぞれの法定相続分は2分の1です。

だからといって、実家を兄弟で2分の1ずつ共有し、預貯金も1,000万円ずつ分けなければならないわけではありません。

兄が実家2,000万円を取得し、弟が預貯金2,000万円を取得するという分け方も考えられます。

このように分ければ、不動産を共有名義にせず、それぞれが単独で財産を取得できます。

この記事では不動産の分け方を中心に解説していますが、預貯金などを含めた兄弟相続全体の進め方については、親の遺産を兄弟で相続する場合の分け方と進め方で詳しく解説しています。

公平とは「すべてを半分ずつ持つこと」ではない

相続でいう公平は、必ずしも個々の財産を同じ割合で持つことではありません。

特に不動産は、預貯金のように簡単に分けられない財産です。

実家に住み続けたい兄がいる一方で、弟は遠方に住んでいて不動産を必要としていないのであれば、兄が実家を取得し、弟が現金など別の財産を取得するほうが、現実的なこともあります。

大切なのは、「不動産をどう均等に分けるか」ではなく、「遺産全体をどう分ければ、それぞれにとって納得できるか」という視点です。

不動産と現金の価値が一致するとは限らない

実際の相続では、先ほどの例のように、不動産2,000万円、預貯金2,000万円ときれいに分かれるケースばかりではありません。

たとえば、実家が3,000万円、預貯金が1,000万円であれば、兄が実家、弟が預貯金を取得するだけでは、取得する財産の価値に大きな差が生じます。

このような場合には、一人が不動産を取得し、もう一人に金銭を支払って調整する方法も検討できます。

次のセクションでは、このような「一人が不動産を取得し、もう一人に代償金を支払う方法」について具体的に見ていきます。

④現実的な分け方①|兄が実家、弟が現金を相続する

兄が実家、弟が預貯金を相続し、不動産を共有せず財産ごとに取得者を分ける遺産分割のイラスト
実家を兄弟の共有名義にせず、兄が不動産、弟が預貯金を取得するなど、財産ごとに取得者を分ける方法があります。

不動産を兄弟で相続するときは、すべての財産を法定相続分どおりに細かく分けるのではなく、財産ごとに取得する人を決める方法があります。

たとえば、親と同居していた兄が実家を取得し、弟が預貯金を取得するといった分け方です。

この方法であれば、不動産を兄弟の共有名義にする必要がありません。兄は実家を単独で取得でき、弟も共有不動産の管理や売却について、将来にわたって兄と調整する必要がなくなります。

行政書士の実務では「不動産は兄、現預金は弟」という分け方も多い

行政書士の実務では、「不動産は兄、現預金は弟」など、財産ごとに取得する人を分ける方法がよく見られます。

たとえば、

  • 親と同居していた兄は実家を取得する
  • 遠方に住み、自宅を持っている弟は現預金を取得する

といった分け方です。

この場合、それぞれが取得する財産の金額に差が出ることもあります。

しかし、相続人全員が財産の内容や金額を確認したうえで合意しているのであれば、必ずしも法定相続分どおりにぴったり同額に分ける必要はありません。

「兄弟だからすべて半分ずつ」と考えるのではなく、相続後の生活や財産の管理まで考えて、誰が何を取得するのが現実的なのかを話し合うことが大切です。

誰が不動産を必要としているのかも考える

特に実家については、金額だけでなく、今後誰が利用するのかも重要です。

親と同居していた兄が今後も住み続けたい一方、弟は遠方で生活しており実家を利用する予定がないのであれば、兄が単独で取得するほうが実情に合っていることがあります。

反対に、兄弟の誰も実家を必要としていないのであれば、別の分け方を考えたほうがよいケースもあります。

遺産分割では、金額だけの公平ではなく、相続後にその財産をどう使い、どう管理していくのかまで考えることが重要です。

なお、不動産の価値が高く、取得額の差をそのままにすることについて相続人間で納得できない場合には、差額を金銭で調整する方法もあります。

⑤現実的な分け方②|一人が不動産を相続し、もう一人に代償金を支払う

兄が実家を取得し、弟に代償金を支払う遺産分割の代償分割を表すイラスト
代償分割では、一人の相続人が不動産を単独で取得し、その代わりに他の相続人へ代償金を支払って調整します。

「実家は兄が取得する」という点では合意できても、不動産の価値が高く、弟が取得する現預金との差が大きい場合があります。

そのような場合に検討できるのが、不動産を取得する人が、ほかの相続人に金銭を支払って調整する方法です。一般に「代償分割」と呼ばれます。

たとえば、父の遺産が次のような場合を考えてみます。

  • 実家:3,000万円
  • 預貯金:1,000万円
  • 相続人:兄と弟の2人

遺産総額は4,000万円です。

兄が3,000万円の実家を取得し、弟が1,000万円の預貯金を取得したうえで、兄から弟へ1,000万円を代償金として支払えば、それぞれの取得額を2,000万円相当に調整できます。

実家を売らずに残したい場合に検討できる

代償分割のメリットは、不動産を売却したり共有したりせず、一人が単独で取得できることです。

たとえば、親と同居していた兄が「これからも実家に住みたい」と考えている場合でも、弟との取得額の差を金銭で調整できれば、実家を残せる可能性があります。

もちろん、必ず法定相続分どおりの金額まで調整しなければならないわけではありません。どの程度の代償金を支払うかについても、相続人同士で話し合って決めることになります。

代償金を支払える資力が必要

一方で、代償分割には大きな問題があります。

不動産を取得する人自身に、代償金を支払える資力が必要なことです。

先ほどの例では、兄が実家を取得するために弟へ1,000万円を支払うことになります。

実家という財産は取得できても、手元に十分な現金がなければ代償金を用意するのは簡単ではありません。

そのため、「実家を残したい」という希望だけではなく、代償金を現実に支払えるかまで確認しておく必要があります。

不動産をいくらと評価するかでも代償金は変わる

もう一つ問題になるのが、不動産の評価額です。

同じ実家でも、固定資産税評価額、相続税評価額、不動産市場での売却価格の目安など、見る価格によって金額が異なります。

実家を3,000万円と評価するのか、2,500万円と評価するのかによって、必要と考える代償金も変わります。

兄弟だけで「この家はだいたい3,000万円くらいだろう」と決めると、後になって「そんなに価値はない」「もっと高いはずだ」と意見が分かれることもあります。

代償分割を検討するときは、不動産の評価と代償金を支払える資力の両方を確認し、必要に応じて専門家にも相談しながら決めることが大切です。

⑥話し合いがまとまらない場合は売却して現金で分ける方法もある

相続した実家を売却し、兄弟2人で売却代金を分ける換価分割を表すイラスト
換価分割では、相続した不動産を売却し、その売却代金を相続人同士で分けます。

兄弟のどちらも不動産を取得することを希望しない場合や、一人が取得する方法では話し合いがまとまらない場合には、不動産を売却し、その代金を分ける方法もあります。

不動産そのものは分けにくい財産ですが、売却して現金にすれば、兄弟それぞれの取得額を調整しやすくなります。

たとえば、兄弟2人が相続人で実家を3,000万円で売却できた場合、売却に必要な費用などを差し引いた残額を、合意した割合で分けることができます。

一般に、このように不動産などの遺産を売却して、その代金を相続人で分ける方法を「換価分割」といいます。

誰も実家を必要としていない場合には現実的な選択肢

たとえば、

  • 兄弟ともすでに自宅を持っている
  • 実家から離れた地域で生活している
  • 今後、誰も実家に住む予定がない
  • 空き家として維持していく負担を避けたい

といった場合には、実家を無理に残すより、売却して現金で分けたほうが整理しやすいことがあります。

共有名義のまま不動産を持ち続ければ、固定資産税や修繕、草木の管理なども続きます。利用する予定のない不動産であれば、売却も選択肢の一つです。

「売れば公平に分けられる」とは限らない

ただし、売却すれば簡単に問題が解決するとは限りません。

特に実家の場合、相続人が考えている価値と、実際に売却できる価格が大きく異なることがあります。

たとえば、固定資産税評価額や周辺の土地価格を見て「3,000万円くらいで売れるだろう」と考えていても、実際には建物が古かったり、交通の便が悪かったりすると、その価格では買い手が見つからないことがあります。

立地や築年数によっては大幅な値下げが必要になることもある

不動産の売れやすさは、物件ごとに大きく異なります。

駅から遠い、人口が減っている地域にある、建物の築年数が古い、道路条件がよくないといった事情があると、長期間売れないケースもあります。

また、相続手続きを早く終わらせたいなどの理由で売却を急ぐと、買い手を見つけるために当初の希望価格から大幅に値下げしなければならないこともあります。

そのため、「実家を売れば3,000万円になり、兄弟で1,500万円ずつ分けられる」といった前提だけで遺産分割を考えるのは注意が必要です。

売却を前提にするのであれば、遺産分割を決める前に、不動産会社などへ相談して、実際にどの程度の価格で、どのくらいの期間で売れそうなのかを確認しておくことが大切です。

共有、単独取得、代償金による調整、売却にはそれぞれメリットと注意点があります。不動産の状態や兄弟それぞれの希望を踏まえて、現実的な方法を選ぶ必要があります。

⑦共有名義にした後は問題が複雑になりやすい

相続の時点では兄弟仲に問題がなくても、共有名義にした不動産は、その後の生活状況や考え方の変化によって扱いが難しくなることがあります。

特に実家は、すぐに売却や処分をするとは限りません。数年、十数年と共有状態が続くうちに、それぞれの事情が変わることもあります。

住み続けたい人と売りたい人で意見が分かれることがある

たとえば、兄は実家に住み続けたい一方で、弟は「使わない不動産なら売却して現金化したい」と考えることがあります。

しかし、共有不動産全体を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。

そのため、一方が売却を希望していても、もう一方が反対すれば、簡単には進められません。

相続直後には「とりあえず共有でいい」と思っていても、将来まで兄弟の考えが一致し続けるとは限らない点には注意が必要です。

固定資産税や修繕費の負担でも意見が分かれやすい

共有不動産を持ち続けると、固定資産税や修繕費、庭や建物の管理費用なども発生します。

ここで、

「実際に住んでいる兄が多く負担するのか」

「所有している割合に応じて兄弟で負担するのか」

といった問題が出てくることがあります。

特に、片方だけが実家を利用している場合には、費用負担に対する公平感がずれやすくなります。

共有者が亡くなると、その持分も相続される

さらに注意したいのが、共有者の一人が亡くなった場合です。

たとえば、兄と弟が実家を2分の1ずつ共有していて、その後に弟が亡くなれば、弟の共有持分は弟の相続人へ引き継がれる可能性があります。

その結果、兄と弟という2人だけの共有だったものが、兄と弟の配偶者や子どもなど、複数人の共有になることもあります。

共有者が増えるほど、不動産の管理や売却について話し合う相手も増えていきます。

なお、親より先に兄弟の一人が亡くなっていた場合は、今回のような『共有後に共有者が亡くなったケース』とは異なり、代襲相続が問題になることがあります。詳しくは、相続人になるはずだった兄弟が先に亡くなっている場合をご覧ください。

共有を解消する方法はあるが、後からでは負担が大きくなりやすい

共有名義になった後でも、一人が他の共有者の持分を取得したり、不動産を売却したりすることで共有関係を解消できる場合があります。

しかし、全員の希望や金額条件が一致するとは限りません。

話し合いがまとまらなければ、専門家への相談や、場合によっては裁判所での共有物分割手続きなどを検討することもあります。

だからこそ、不動産を相続する段階で、「共有にしてから考える」のではなく、共有にする前に単独取得や現預金との組み合わせ、代償金、売却などを比較しておくことが重要です。

⑧兄弟で不動産を相続するときは共有名義にする前に専門家へ相談する

不動産の相続では、「兄が実家を取得する」「弟が現預金を取得する」「代償金で差額を調整する」「売却して現金で分ける」など、いくつかの方法があります。

ただし、どの方法が適しているかは、遺産の内容や不動産の価値、兄弟それぞれの生活状況によって変わります。

そのため、「半分ずつなら公平だろう」「このくらいの価値だろう」と個人判断だけで決めてしまうのは注意が必要です。

まずは遺産全体の内容を確認する

不動産の分け方だけを先に考えるのではなく、預貯金、有価証券、借金なども含めて遺産全体を確認することが大切です。

たとえば、現預金が十分にあれば「兄が実家、弟が現預金」という分け方がしやすくなります。

一方、遺産のほとんどが不動産という場合には、代償金や売却も含めて検討する必要があります。

誰が不動産を取得するのが現実的かを考える

金額だけではなく、その不動産を誰が利用するのかも確認します。

親と同居していた兄がそのまま住み続けるのか、兄弟とも別に自宅があるのか、不動産を維持していく意思があるのかによって、現実的な分け方は変わります。

将来の管理まで考えずに共有名義にすると、後から兄弟の考えが分かれることもあります。

不動産の評価額や売却可能性も確認する

不動産を一人が取得する場合には、その不動産をいくらと考えるのかが重要です。

また、売却を検討する場合には、希望する価格で本当に売れるのか、どの程度の期間がかかりそうなのかも確認しておく必要があります。

立地や築年数によっては、想定していた価格より大幅に低い金額でなければ売れないこともあります。

古い戸建てでは建物や増築部分が未登記のこともある

行政書士の実務では、相続財産を調査していると、建物そのものが未登記だったり、増築部分が登記に反映されていなかったりするケースに出会うことがあります。

特に築年数の古い一戸建てでは、実際の建物の状態と登記記録が一致していないことがあります。

このような場合には、土地家屋調査士に建物の現況や登記状況を確認してもらい、必要に応じて建物表題登記や建物表題部変更登記などを行います。

その後、所有権保存登記や相続による所有権移転登記など、権利に関する登記が必要な場合には司法書士へ相談します。

遺産分割協議や登記を進める前に相談する

特に注意したいのは、一度「兄弟2分の1ずつ」で共有名義にしてから考えればよい、と安易に決めないことです。

共有名義にした後でも解消方法はありますが、兄弟の意見が分かれたり、次の相続が発生したりすると、関係が複雑になることがあります。

そのため、不動産の取得者や分け方に迷っている段階で、行政書士をはじめ、必要に応じて司法書士、税理士、不動産会社などの専門家に相談しながら進めることが大切です。

特に、遺産分割協議書を作成する前に、「この分け方で本当に問題がないか」「共有にしない方法はないか」を確認しておくと、その後の手続きを進めやすくなります。

⑨兄弟の不動産相続・共同相続に関するよくある質問

Q:兄弟で相続した不動産は必ず共有になりますか?

いいえ、必ず共有名義にしなければならないわけではありません。

相続人が複数いる場合、遺産分割前は共同相続の状態になりますが、遺産分割協議によって、一人が不動産を取得し、ほかの相続人が預貯金などを取得することもできます。

共同相続の状態になることと、最終的に共有名義にすることは別です。

Q:法定相続分が2分の1ずつなら、不動産も半分ずつにする必要がありますか?

必ずしも半分ずつにする必要はありません。

法定相続分は遺産全体についての割合であり、個々の財産をすべて同じ割合で取得しなければならないという意味ではありません。

たとえば兄弟2人が相続人でも、兄が実家、弟が現預金を取得するといった分け方ができます。

Q:兄だけが実家を相続することはできますか?

できます。

遺言の内容や遺産分割協議の結果によって、兄だけが実家を取得することは可能です。

たとえば、兄が親と同居していて今後も実家に住み続ける場合には、兄が実家を取得し、弟が現預金を取得する方法も考えられます。

財産額の差を調整したい場合には、兄から弟へ代償金を支払う方法もあります。

Q:兄が実家、弟が預金という分け方はできますか?

できます。

行政書士の実務でも、不動産は一人、現預金は別の相続人というように、財産ごとに取得者を分ける形はよく見られます。

取得する財産の金額に多少差があっても、相続人全員が内容を理解して合意しているのであれば、必ずしも法定相続分どおりに同額へそろえる必要はありません。

Q:共有名義にした後でも解消できますか?

共有名義にした後でも、共有関係を解消する方法はあります。

たとえば、一人がほかの共有者の持分を取得したり、不動産全体を売却したりする方法が考えられます。

ただし、共有者間で価格や売却方針について意見が合わない場合には、話し合いが難しくなることがあります。

そのため、共有にしてから解消方法を考えるより、遺産分割の段階で共有しない方法を検討することが重要です。

Q:兄弟で話し合いがまとまらない場合はどうなりますか?

遺産分割について相続人同士の話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停などを検討することになります。

行政書士が相続人同士の争いを仲裁したり、紛争の代理人として交渉したりすることはできません。

相続人同士ですでに意見が対立している場合には、弁護士への相談を検討したほうがよいケースもあります。

兄弟相続では、不動産だけでなく財産情報の共有や介護負担などが対立の原因になることもあります。詳しくは、兄弟間で起こりやすい相続トラブルと対処法も参考にしてください。

まとめ|不動産は「とりあえず共有」にせず、遺産全体で分け方を考える

兄弟で不動産を相続する場合、法定相続分が2分の1ずつだからといって、不動産まで2分の1ずつ共有する必要はありません。

相続人が複数いると、遺産分割が終わるまでは共同相続の状態になりますが、その後の遺産分割協議では、兄が実家、弟が現預金を取得するなど、遺産全体を見ながら分け方を決めることができます。

また、不動産の価値が高く差額を調整したい場合には代償金を支払う方法、誰も不動産を必要としていない場合には売却して現金で分ける方法もあります。

一方で、安易に共有名義にすると、管理や売却のたびに兄弟間で調整が必要になり、次の相続で共有者が増えることもあります。

不動産の評価額や売却しやすさ、建物の登記状況なども物件ごとに異なります。古い戸建てでは、建物や増築部分が未登記になっているケースもあるため、誰が取得するかだけでなく、不動産そのものの状態を確認することも大切です。

「公平だから半分ずつ共有する」と決めるのではなく、誰がその不動産を必要としているのか、ほかにどのような財産があるのか、その後の管理まで含めて現実的な分け方を検討しましょう。

判断に迷う場合には、共有名義にしてから考えるのではなく、遺産分割協議や登記を進める前に専門家へ相談することをおすすめします。

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特定行政書士 野中雅敏(IT行政書士事務所)

  • 国家資格:行政書士(登録番号:25080391)
  • 経歴:IT業界出身/相続・遺言分野を専門取り組み中
  • 趣味:競泳
  • メッセージ:
     「遺言は“難しいこと”ではなく、“優しさのカタチ”です。
    家族を守るために、ぜひ一緒に考えていきましょう。」

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