建設業許可を電気工事で申請するには?取得条件・資格・500万円基準を解説

建設業許可を取得して電気工事を行う事業者のイメージ

電気工事業で500万円以上の工事を請け負うには、原則として建設業許可が必要です。なお、この500万円には工事代だけでなく、材料費なども含めて考えます。

許可を取得するには、建設業許可に共通する要件に加えて、電気工事業に対応する営業所技術者等の資格や実務経験についても見る必要があります。

この記事では、電気工事業の建設業許可を取得するための条件や、資格・実務経験、500万円基準の考え方についてわかりやすく解説します。

①電気工事で建設業許可を取得するための条件

電気工事業で建設業許可を取得するには、営業所技術者等を含む、建設業許可の各要件を満たす必要があります。

主な要件は次のとおりです。

要件内容
経営業務の管理常勤役員等について、建設業の経営経験などの要件を満たす
営業所技術者等電気工事業に対応する資格・学歴・実務経験などの要件を満たす人を営業所に置く
財産的基礎一般建設業では、自己資本500万円以上などの基準を満たす
営業所建設業の営業所として継続的に使用できる場所を設ける
欠格要件・誠実性欠格要件に該当せず、請負契約に関して不正・不誠実な行為をするおそれがないこと
社会保険加入義務がある健康保険・厚生年金保険・雇用保険に適切に加入している

建設業許可に共通する取得条件については、こちらの記事で詳しく解説しています。
建設業許可の取得条件を詳しく見る

このうち、電気工事業で特に内容を見ておきたいのが営業所技術者等の要件です。

どの資格を持っているか、指定学科を卒業しているか、どのくらい実務経験があるかによって、要件を満たす方法が変わります。

次に、電気工事業で営業所技術者等になれる資格・実務経験を詳しく見ていきます。

②電気工事の建設業許可で営業所技術者等になるための要件

電気工事業の営業所技術者等になるための資格・学歴・実務経験の3つのルートを示す図解
電気工事業の営業所技術者等の要件は、一定の資格、指定学科の卒業と実務経験、一定期間の実務経験など、複数のルートから確認します。

電気工事業の営業所技術者等になる方法は、大きく分けて、資格による方法、指定学科の学歴と実務経験による方法、実務経験による方法があります。

自社の営業所技術者等になる人が、どの方法で要件を満たせるのかを見ていきましょう。

資格がある場合

電気工事業に対応する資格を持っている場合は、その資格によって営業所技術者等の要件を満たせます。

代表的な資格には、次のようなものがあります。

資格実務経験
第一種電気工事士不要
第二種電気工事士免状交付後3年以上の電気工事の実務経験が必要
1級電気工事施工管理技士不要
2級電気工事施工管理技士不要

第一種電気工事士であれば、資格によって営業所技術者等の要件を満たせます。

一方、第二種電気工事士は、資格を取得しただけでは足りず、免状の交付を受けた後に3年以上の電気工事の実務経験が必要です。

このほかにも、電気主任技術者など、一定の実務経験と組み合わせることで要件を満たせる資格があります。

資格はないが指定学科を卒業している場合

電気工事業に対応する資格を持っていなくても、電気工学に関する指定学科を卒業し、その後に一定期間の実務経験があれば、営業所技術者等の要件を満たせます。

必要となる実務経験の目安は次のとおりです。

学歴必要な実務経験
大学・短期大学・高等専門学校などで指定学科を卒業卒業後3年以上
高等学校などで指定学科を卒業卒業後5年以上

たとえば、工業高校や大学などで電気工学に関する指定学科を卒業し、その後、必要な実務経験を積んでいる場合は、この方法で営業所技術者等の要件を満たせます。

資格・指定学科の学歴がない場合

資格がなく、指定学科も卒業していない場合は、電気工事について10年以上の実務経験によって営業所技術者等の要件を満たす方法があります。

この方法では、10年以上働いていたというだけではなく、その期間に電気工事の実務に従事していたことを証明する必要があります。

以前勤務していた会社での経験を使う場合と、個人事業主として請け負ってきた電気工事の経験を使う場合では、用意する資料も異なります。

そのため、実務経験を使って申請する場合は、必要な経験年数を満たしているかだけでなく、その経験をどの資料で証明できるかまで見ておくことが重要です。

営業所技術者等の制度全体や、資格・学歴・実務経験の考え方については、こちらも参考にしてください。
営業所技術者等の要件を詳しく見る

③建設業許可の電気工事業に含まれる工事とは

建設業許可の電気工事業は、発電設備、送配電設備、構内電気設備などの電気設備を設置する工事を対象とする業種です。

実際には、住宅や店舗の配線工事から、ビルや工場の受変電設備まで幅広い工事が含まれます。

自社の工事が電気工事業以外の業種にも当てはまるか迷う場合は、29業種の選び方も確認しておくと判断しやすくなります。
建設業許可29業種の選び方

電気工事業に含まれる主な工事

たとえば、次のような工事が電気工事業に該当します。

  • 住宅・店舗・事務所の配線工事
  • コンセント・スイッチ・照明設備の設置や増設
  • 分電盤・配電盤の設置や交換
  • 建物への引込線や幹線の工事
  • 工場・倉庫などの動力設備工事
  • 受変電設備・キュービクルに関する工事
  • LED照明への更新工事
  • EV充電設備の設置
  • 太陽光発電設備や蓄電池に関する電気工事
  • 空調機器を設置する際の電源・配線工事

「電気設備に関係する工事」というだけで一律に判断するのではなく、実際にどの部分を施工するのかを見ることが大切です。

電気工事業と他の建設業種の境界に注意

設備工事の中には、電気工事業だけでなく、別の建設業種が関係するものがあります。

たとえば、空調設備では電源や配線の施工は電気工事業に当たる一方、冷媒配管などは管工事業が関係します。

また、LANや通信設備などの施工では電気通信工事業、自動火災報知設備などでは消防施設工事業が関係することがあります。

そのため、「空調工事」「通信設備工事」といった仕事の名称だけで許可業種を決めるのではなく、自社が実際に請け負う施工内容をもとに判断する必要があります。

空調工事では、電気工事だけでなく、冷媒配管やドレン配管などの管工事業が関係する場合があります。
管工事業の建設業許可

自動火災報知設備などの消防設備工事について、消防施設工事業の工事範囲や取得条件はこちらで詳しく解説しています。
消防施設工事業の建設業許可

④500万円以上の電気工事を請け負うなら建設業許可が必要

電気工事業では、1件の請負金額が500万円以上になる工事を請け負う場合、建設業許可が必要です。

小規模な配線工事や照明交換では500万円未満でも、マンション1棟やビル、工場などをまとめて施工すると、請負金額は大きくなります。

500万円以上になりやすい電気工事の例

たとえば、次のような工事では請負金額が大きくなります。

住宅の小規模な電気工事とマンション・ビル・工場の大規模な電気工事を比較したイラスト
電気工事は、住宅の照明・コンセント工事から、マンションやビル、工場の配線・受変電設備・EV充電設備まで、施工内容によって工事規模が大きく変わります。
工事の例金額が大きくなりやすいケース
配線・コンセント・スイッチ工事マンション1棟やオフィス全体をまとめて施工する
照明設備工事ビルやマンション共用部の照明を一括して更新する
分電盤・配電盤工事建物全体の設備をまとめて交換する
受変電設備工事キュービクルや受変電設備を新設・更新する
動力設備工事工場や倉庫で機械設備に対応する電源・配線を施工する
EV充電設備工事集合住宅や事業所などに複数台を設置する

工事費だけでなく材料費も含めて考える

請負金額を見るときは、職人の施工費だけでなく、工事に使用する材料や設備機器の代金も含めて考えます。

電気工事では、ケーブルや照明器具、分電盤、受変電設備、EV充電設備など、部材や機器そのものが高額になることがあります。

そのため、施工費だけを見るのではなく、材料や設備機器を含めた工事全体の金額を見ることが重要です。

発注者から支給された材料も請負金額に加算する

発注者から工事に使用する材料の支給を受ける場合は、その材料の市場価格を請負代金に加えて金額を判定します。運送費を発注者が負担している場合は、その運送費も加算します。

そのため、設備機器を発注者が用意していて、自社の請負代金だけでは500万円未満であっても、支給された設備や材料を加えることで500万円以上になることがあります。

電気工事では、受変電設備や照明器具、分電盤など高額な機器を使用することもあるため、契約書に記載された工事代だけで判断しないことが重要です。

500万円の判定方法や、材料支給・分割発注の考え方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
建設業許可の500万円基準を詳しく見る

⑤電気工事の建設業許可と電気工事業法の登録・届出

電気工事業を営む場合は、建設業許可とは別に、電気工事業法に基づく登録・届出・通知などの手続が必要です。

建設業許可とは別に登録・届出の制度がある

電気工事業法では、施工する電気工作物の種類や建設業許可の有無によって、事業者を次のように区分しています。

  • 登録電気工事業者
  • 通知電気工事業者
  • みなし登録電気工事業者
  • みなし通知電気工事業者

どの手続が必要になるかは、どのような電気工事を行うのか、建設業許可を受けているかによって変わります。

建設業許可の有無によって手続の区分が変わる

電気工事業法上の手続は、建設業許可があるかどうかによって区分が変わります。

建設業許可がない場合は、行う工事の内容に応じて登録または通知の手続を行います。

その後、建設業許可を取得した場合は、みなし登録電気工事業者などの区分に応じて、あらためて所定の届出や通知を行います。

⑥電気工事の建設業許可についてよくある質問

Q:電気工事士の資格があれば建設業許可を取得できますか?

電気工事士の資格があれば、それだけで建設業許可を取得できるわけではありません。

電気工事士の資格は、主に営業所技術者等の要件を満たすために関係する資格です。たとえば第一種電気工事士は資格によって要件を満たせますが、第二種電気工事士は免状交付後3年以上の実務経験が必要です。

そのうえで、建設業許可を取得するには、常勤役員等、財産的基礎、営業所、欠格要件・誠実性、社会保険など、ほかの許可要件も満たす必要があります。

Q:第二種電気工事士でも営業所技術者等になれますか?

第二種電気工事士でも、免状の交付を受けた後に3年以上の電気工事の実務経験があれば、一般建設業の電気工事業で営業所技術者等の要件を満たせます。

第一種電気工事士とは実務経験の扱いが異なるため、資格の種類と実務経験を分けて考える必要があります。

Q:500万円未満の電気工事なら建設業許可は不要ですか?

1件の請負金額が500万円未満の電気工事であれば、原則として建設業許可は不要です。

ただし、金額を判断するときは施工費だけでなく、材料費や設備機器の代金も含めます。発注者から材料の支給を受ける場合も、その市場価格などを加えて判断します。

Q:建設業許可があれば電気工事業法上の手続は不要ですか?

不要にはなりません。

電気工事業を営む場合は、建設業許可とは別に、電気工事業法に基づく手続が必要です。建設業許可の有無や施工する電気工作物の種類によって、登録・届出・通知などの区分が変わります。

Q:電気工事業と電気通信工事業は同じですか?

別の建設業種です。

配線や照明、受変電設備などは電気工事業が中心ですが、LANや通信設備などは電気通信工事業が関係します。

同じ設備工事でも、実際にどの部分を施工するのかによって必要な許可業種が変わります。

LAN配線、無線LAN、防犯カメラなど、電気通信工事業に該当する工事や取得条件についてはこちらで詳しく解説しています。
電気通信工事業の建設業許可と取得条件

Q:個人事業主でも電気工事業の建設業許可を取得できますか?

取得できます。

法人であることは建設業許可の条件ではありません。個人事業主でも、営業所技術者等や経営業務の管理、財産的基礎などの要件を満たせば申請できます。

個人事業主が建設業許可を取得する際の要件や必要書類については、こちらの記事で詳しく解説しています。
個人事業主が建設業許可を取得する方法

まとめ|電気工事で建設業許可を取得するときのポイント

電気工事業で建設業許可を取得するには、営業所技術者等をはじめ、経営業務の管理、財産的基礎、営業所、欠格要件・誠実性、社会保険などの要件を満たす必要があります。

営業所技術者等については、資格だけでなく、指定学科の学歴と実務経験、または一定期間の実務経験によって要件を満たす方法もあります。

また、電気工事では、マンション1棟やビル、工場などをまとめて施工すると請負金額が大きくなります。材料費や設備機器の代金、発注者から支給された材料も含めて、建設業許可が必要になる金額かを判断することが重要です。

さらに、電気工事業を営む場合は、建設業許可とは別に、電気工事業法に基づく登録や届出などの手続も必要になります。

建設業許可の要件、実際に請け負う工事内容、電気工事業法上の手続をそれぞれ分けて考えることが、電気工事業の許可申請では大切です。