遺言書を勝手に作成されたかも?無効・相続欠格と対応を解説

親が亡くなった後、突然遺言書が出てきた。
その内容が特定の兄弟や親族に有利なものだった場合、「本当に親が自分で作成したのだろうか」「誰かが勝手に作ったのではないか」と疑問を感じることがあります。

たとえば、生前に聞いていた話と内容が大きく違う場合や、親がそのような内容を望んでいたとは思えない場合には、不安や不信感を抱くのも無理はありません。

遺言書は、遺言者本人の意思に基づいて作成されるものです。
本人が作成していない遺言書や、本人の意思に基づかず親族が勝手に作成した遺言書は無効です。

また、本人の署名をまねて書いたり、印鑑を勝手に押したりした場合には、単に遺言書が無効になるだけでなく、刑事責任や相続欠格の問題に発展することもあります。

ただし、内容が不公平に見えるからといって、直ちに偽造や勝手な作成と決めつけられるわけではありません。
親があえてそのような内容を望んでいた可能性もありますし、家族が知らない事情があった可能性もあります。

大切なのは、感情的に相手を責めるのではなく、まず事実関係を冷静に整理することです。

この記事では、遺言書を勝手に作成することの違法性、勝手に作成された遺言書が無効になる理由、疑わしい遺言書を見つけたときの確認ポイント、やってはいけない行動を解説します。
あわせて、善意であっても親の同意なく遺言書を作成してはいけない理由と、将来疑われない遺言書を作るための注意点も紹介します。

親の死後に見つかった遺言書を前に、40代〜50代の兄弟姉妹が相続関係の書類や家族写真を確認しながら話し合っている様子。相続トラブルへの不安を抱えつつも、冷静に遺言内容を確認している場面。
遺言書が見つかった場合は、内容を確認しながら適切な手続きを進めることが大切です。相続人同士で情報を共有し、冷静に対応しましょう。

目次

①遺言書を勝手に作成するのは違法?

親族が勝手に作成した遺言書は無効になる

遺言書は、遺言者本人の意思を示すための書類です。

そのため、子どもや兄弟などの親族が、本人に無断で遺言書を作成することはできません。
たとえ「親のため」「家族のため」という気持ちがあったとしても、本人の意思に基づかない遺言書は、有効な遺言書にはなりません。

たとえば、親本人が内容を知らないまま、子どもが親の名前で遺言書を作成した場合、その遺言書は本人の最終意思を示すものではありません。

また、親が亡くなった後に、親が生前に作成したように見せかけて遺言書を作ることも当然に認められません。
このような遺言書は、相続手続きで使えるものではなく、後から大きな相続トラブルの原因になります。

遺言書は、相続人が自分たちの都合で作るものではありません。
あくまで、遺言者本人が、自分の意思で作成するものです。

遺言書のような書類と印鑑を前に、成人した子どもが書類を作成しようとしているところを禁止マークが示しているイラスト。背景には高齢の親のシルエットが描かれ、本人の意思なく遺言書を作成してはいけないことを表現している。
遺言書は本人の意思に基づいて作成されなければなりません。家族が代わりに内容を決めたり作成したりすることは認められていません。

善意でも親の同意なく作成してはいけない

遺言書を勝手に作成する人の中には、悪意ではなく善意から行動してしまう人もいます。

たとえば、次のようなケースです。

「親が高齢だから、代わりに準備してあげたい」
「相続で兄弟が揉めないようにしておきたい」
「親もきっとこの内容を望んでいるはず」
「親に話すと面倒がるから、先に作っておこう」

しかし、このような理由があっても、親本人の同意なく遺言書を作成してはいけません。

遺言書は、家族の希望を書く書類ではなく、本人の意思を書く書類です。
子どもが「親はこう考えているはず」と思っていても、それは親本人の意思そのものではありません。

特に、特定の子どもに多く財産を残す内容や、他の相続人の取り分を大きく減らす内容になっている場合、後から他の相続人に「勝手に作ったのではないか」と疑われやすくなります。

親のためを思うのであれば、子どもが先回りして遺言書を作るのではなく、まず親本人に遺言書の必要性を説明することが大切です。
そのうえで、親本人が作成を希望する場合には、行政書士などの専門家から本人に説明してもらい、本人の意思が明確に残る形で進めるべきです。

勝手に作成された遺言書は無効

本人が作成していない遺言書や、本人の意思に基づかずに作成された遺言書は無効です。

たとえば、次のような遺言書は有効なものとして扱われません。

本人の名前を親族が勝手に書いた。
本人の印鑑を無断で押した。
本人が内容を知らないまま、親族が文面を作った。
本人が作成したように見せかけて、親族が遺言書を作った。
本人が亡くなった後に、遺言書を作成した。

このような遺言書は、本人の最終意思を示すものではありません。
そのため、相続人の一人が「これが遺言書だ」と主張しても、法律上有効な遺言書として扱うことはできません。

ただし、実際の相続では、相手方が「これは本人が作成したものだ」と主張することがあります。
その場合には、単に「勝手に作ったはずだ」と言うだけでは足りず、作成当時の状況や客観的な資料をもとに確認していく必要があります。

つまり、親族が勝手に作成した遺言書は無効です。
一方で、相続人間で争いになった場合には、その遺言書が本当に本人の意思に基づいて作成されたものなのかを、冷静に整理していくことが重要です。

遺言書が無効になる理由は、勝手な作成や偽造だけではありません。
形式不備、遺言能力の問題、詐欺・強迫など、ほかにも無効が問題になるケースがあります。
遺言書が無効になるケースと確認ポイント

②遺言書を勝手に作成するとどのような責任を問われる?

遺言書を勝手に作成した場合、問題は大きく分けて 民事上の問題刑事上の問題 に整理できます。

民事上は、その遺言書が有効か無効か、相続手続きで使えるのか、相続人としての資格に影響するのかが問題になります。
刑事上は、本人の署名をまねて書いたり、印鑑を無断で押したりした行為について、犯罪として責任を問われるかが問題になります。

つまり、遺言書を勝手に作成する行為は、「家族内の揉めごと」だけでは済まない可能性があるということです。

民事上の問題|勝手に作成された遺言書は無効

まず、民事上の問題として、その遺言書が有効か無効かが問題になります。

遺言書は、遺言者本人の意思に基づいて作成される必要があります。
本人が作成していない遺言書や、本人の意思に基づかずに親族が勝手に作成した遺言書は無効です。

たとえば、子どもが親の名前で遺言書を書いた場合や、親が内容を知らないまま遺言書が作成された場合、その遺言書は本人の最終意思を示すものではありません。

そのため、相続手続きで「これが遺言書だ」と主張しても、法律上有効な遺言書として扱うことはできません。

ただし、実際の相続では、相手方が「これは本人が作成したものだ」と主張することがあります。
その場合には、遺言書の筆跡、押印、作成時期、保管状況、本人の状態などをもとに、誰がどのような経緯で作成したのかを確認していく必要があります。

民事上の問題|相続欠格により相続人の資格を失う可能性がある

民事上は、遺言書の有効・無効だけでなく、相続人としての資格も問題になります。

相続人が遺言書を偽造したり、内容を書き換えたり、破棄したり、隠したりした場合には、相続欠格として相続人の資格を失う可能性がある重大な行為です。

これは非常に重い効果です。

遺言書を勝手に作成する人の中には、「自分に有利な内容にすれば、多く財産を受け取れる」と考える人がいるかもしれません。
しかし、発覚すれば、遺言書が無効になるだけでなく、自分自身が相続から外される可能性があります。

つまり、遺言書を勝手に作成することは、相続を有利に進める手段ではありません。
むしろ、相続手続き全体を混乱させ、自分の相続権にも重大な影響を及ぼす危険な行為です。

刑事上の問題|署名や押印の偽造は犯罪になる可能性がある

次に、刑事上の問題です。

本人が作成していないにもかかわらず、本人が作成したように見せかけて遺言書を作る行為は、犯罪として問題になることがあります。

たとえば、次のような行為です。

本人の署名をまねて書く。
本人の印鑑を勝手に押す。
本人が書いた遺言書であるかのように装う。
本人の死後に、日付をさかのぼって遺言書を作る。
本人が書いた遺言書の一部を書き換える。

このような行為をした場合、私文書偽造罪などの刑事責任を問われる可能性があります。

「親のためだった」「家族のためだった」「本人もきっと望んでいたはず」という理由があっても、本人の意思に基づかない遺言書を作成してよいことにはなりません。

実際に刑事事件として扱われるかどうかは、行為の内容や証拠の有無によって個別に判断されます。
しかし、少なくとも、親族間のことだから問題にならないと考えるのは危険です。

公正証書遺言では「勝手に作成」は起こりにくいが、本人の意思が問題になることはある

遺言書には、自筆証書遺言のほかに、公正証書遺言があります。

公正証書遺言は、公証役場で公証人が関与して作成されます。
作成時には本人確認も行われるため、親族が本人に無断でこっそり作成するということは、通常は考えにくいといえます。

そのため、「遺言書を勝手に作成した」という問題は、主に自筆証書遺言で起こりやすい問題です。

もっとも、公正証書遺言であっても、本人の意思や判断能力がまったく問題にならないわけではありません。

たとえば、本人が内容を十分に理解できない状態だったのではないか。
特定の相続人が内容を強く誘導したのではないか。
本人が本心から望んだ内容ではなかったのではないか。

このような事情がある場合には、公正証書遺言であっても、作成当時の本人の状態や作成経緯が争われることがあります。

ただし、公正証書遺言は公証人が関与して作成されるため、形式面の信用性は高くなります。
単に「内容に納得できない」というだけで、勝手に作成されたものだと決めつけることはできません。

③勝手に作成・書き換えられた疑いがあるケース

相続人が虫眼鏡を使って遺言書や関連資料を確認している様子。机の上には遺言書、過去の手紙、メモ、封筒、印鑑が並び、筆跡や訂正箇所、押印の状態を慎重に確認している場面を表現している。
遺言書に疑問がある場合は、筆跡や訂正方法、押印の状態などを確認しながら冷静に事実関係を整理することが重要です。

遺言書の内容に納得できないからといって、すぐに「誰かが勝手に作成した」と決めつけることはできません。

ただし、遺言書の見た目や内容、作成時期、発見状況などに不自然な点がある場合は、作成経緯を慎重に確認した方がよいケースもあります。

ここでは、遺言書を勝手に作成された、または後から書き換えられたのではないかと疑問を持ちやすい場面を整理します。

筆跡や署名が本人のものと違う

自筆証書遺言の場合、遺言書の本文や署名が本人の筆跡かどうかは重要です。

過去の手紙、年賀状、日記、メモ、申請書、契約書などと比べて、明らかに筆跡が違うように見える場合は、誰が書いたものなのか確認する必要があります。

特に、署名だけが不自然に整っている、本文と署名の筆跡が違う、普段の文字の癖と大きく異なるといった場合には、注意が必要です。

ただし、筆跡は年齢や体調によって変わることがあります。
高齢になって手が震えるようになったり、病気や入院によって文字が乱れたりすることもあります。

そのため、「前と字が違う気がする」というだけで偽造と断定するのではなく、複数の資料を比較しながら慎重に確認することが大切です。

不自然な訂正・加筆がある

遺言書に訂正や加筆がある場合も、確認が必要です。

たとえば、財産を受け取る人の名前が書き換えられている。
金額や不動産の記載が後から足されたように見える。
訂正部分だけ筆跡が違う。
訂正印や押印の位置が不自然。
重要な部分だけ別の筆記具で書かれている。

このような事情がある場合、誰が、いつ、どのような理由で訂正したのかが問題になることがあります。

自筆証書遺言では、訂正や加筆の方法にもルールがあります。
そのため、訂正があること自体がすぐに問題になるわけではありませんが、訂正方法が不自然な場合や、遺言の内容に大きく影響する部分が書き換えられている場合には、遺言書の有効性が争われる原因になります。

特に、もともとの内容を消して、特定の相続人に有利な内容へ変更されているように見える場合は、原本の状態を保ったまま、慎重に確認する必要があります。

押印や印鑑の管理状況が不自然

遺言書に押印がある場合でも、それだけで本人が押したと判断できるわけではありません。

たとえば、本人が管理していたはずの印鑑を、特定の相続人が持っていた。
本人が押印できる状態ではなかった。
印鑑の保管場所を本人以外が自由に管理していた。
遺言書に押されている印影に違和感がある。

このような場合には、押印がどのような経緯で行われたのかを確認する必要があります。

もちろん、家族が印鑑の保管を手伝っていたというだけで、直ちに不正があったとはいえません。
高齢の親の代わりに、通帳や印鑑を子どもが管理している家庭もあります。

しかし、遺言書は本人の意思を示す重要な書類です。
本人が内容を理解し、自分の意思で押印したのかどうかは、後から大きな争点になることがあります。

遺言書の内容が特定の相続人に極端に有利

遺言書の内容が、特定の相続人に極端に有利な場合も、他の相続人が疑問を持ちやすい場面です。

たとえば、長男にすべての財産を相続させる内容になっている。
同居していた子どもだけが大部分の財産を受け取る内容になっている。
これまで親と疎遠だった相続人が、突然多くの財産を受け取る内容になっている。

このような内容を見ると、「本当に親が望んだ内容なのか」と感じることがあります。

ただし、遺言書の内容が不公平に見えるだけで、直ちに無効になるわけではありません。
親が介護への感謝から特定の子どもに多く残したいと考えていた可能性もあります。
生前に他の相続人へ援助していたため、遺言書でバランスを取ろうとした可能性もあります。

問題になるのは、その内容が本人の意思に基づいて作成されたものかどうかです。

生前の発言、家族関係、介護の状況、過去に作成された遺言書との違いなどを確認しながら、内容だけでなく作成の背景を整理することが大切です。

作成時期に本人の判断能力や身体能力に疑問がある

遺言書の作成日当時、本人の判断能力や身体能力に疑問がある場合も注意が必要です。

たとえば、作成日とされる時期に、本人が重度の認知症だった。
入院中で意思疎通が難しかった。
寝たきりに近い状態だった。
手の震えや麻痺があり、長い文章を書くことが難しかった。
文字を書く習慣がほとんどなくなっていた。

このような事情がある場合、「本当に本人がこの遺言書を書けたのか」「内容を理解したうえで作成できたのか」が問題になります。

特に、自筆証書遺言では、本人が自筆することが重要です。
そのため、本人が自分で文字を書ける状態ではなかったにもかかわらず、自筆の遺言書が見つかった場合には、作成経緯を慎重に確認する必要があります。

この場合、診療記録、介護記録、要介護認定に関する資料、当時の生活状況を知る人の説明などが、事実関係を整理するうえで重要になります。

遺言書の発見状況や保管状況が不自然

遺言書がどこから、どのような状態で見つかったのかも重要です。

たとえば、特定の相続人だけが遺言書の存在を知っていた。
亡くなった後、突然その相続人から遺言書が出てきた。
発見場所が本人の生活状況と合っていない。
封筒や保管状態に違和感がある。
原本ではなくコピーしか示されない。

このような場合には、遺言書がいつから存在していたのか、誰が保管していたのか、他の相続人がその存在を知る機会があったのかを確認する必要があります。

ただし、遺言書を一人の相続人が保管していたからといって、それだけで勝手に作成されたとはいえません。
親が信頼している子どもに預けていた可能性もあります。

大切なのは、発見状況や保管状況をできるだけ具体的に記録しておくことです。
遺言書を見つけた日時、場所、封筒の有無、保管されていた状態、誰が最初に確認したのかなどを整理しておくと、後から事実関係を確認しやすくなります。

疑わしい点がある場合ほど、感情的に動かず、遺言書の状態や発見時の状況をそのまま残しておくことが重要です。

④遺言書を勝手に作成されたかもしれないときに確認すべきこと

封筒に入った遺言書を中央に配置し、その周囲に「捨てる」「持ち去る」「勝手に開封する」「書き換える」といった行為を示すアイコンと禁止マークが描かれたイラスト。遺言書を見つけた際に避けるべき行動を分かりやすく表現している。
遺言書に疑問があっても、捨てたり隠したり書き換えたりしてはいけません。まずは内容や状況を確認し、適切な手続きを検討しましょう。

「この遺言書は本当に親が作成したのだろうか」と疑問を感じた場合でも、すぐに相手を責めたり、遺言書を処分したりしてはいけません。

まずは、遺言書そのものと、その周辺事情を冷静に確認することが大切です。
ここでは、勝手に作成された疑いがある場合に確認しておきたいポイントを整理します。

遺言書の原本を確認する

まず確認すべきなのは、遺言書の原本です。

コピーや写真だけでは、紙の状態、筆跡、押印、訂正の有無、封筒の状態などを十分に確認できません。

原本がある場合は、次のような点を確認します。

作成日が記載されているか。
署名や押印があるか。
訂正や加筆があるか。
筆記具や紙の状態に不自然な点がないか。
封筒に入っていた場合、封印や保管状態はどうなっているか。

ただし、疑わしいからといって、原本に書き込みをしたり、折り目を直したり、汚れを拭き取ったりすることは避けましょう。
後から状態を確認する必要が出てくる可能性があるため、できるだけ発見時の状態を保つことが重要です。

筆跡を比較できる資料を集める

自筆証書遺言の場合、本人の筆跡かどうかは重要な確認ポイントになります。

過去の手紙、年賀状、日記、メモ、申請書、契約書、銀行関係の書類など、本人が実際に書いたと分かる資料を集めておくと、遺言書の筆跡と比較しやすくなります。

ただし、筆跡は年齢や病気、体調によって変化することがあります。
そのため、若い頃の文字だけで判断するのではなく、できるだけ遺言書の作成時期に近い資料を確認することが大切です。

また、筆跡が違うように見える場合でも、それだけで偽造と断定するのは危険です。
複数の資料を見比べ、作成当時の本人の状態もあわせて確認する必要があります。

作成時期の本人の状態を確認する

遺言書の作成日とされている時期に、本人がどのような状態だったのかも確認しましょう。

たとえば、認知症の診断を受けていたか。
入院中だったか。
意思疎通ができる状態だったか。
自分で文字を書ける身体状態だったか。
薬の影響や病状によって、判断能力に変動がなかったか。

このような事情は、遺言書が本人の意思に基づいて作成されたものかを考えるうえで重要です。

確認資料としては、診療記録、介護記録、要介護認定に関する資料、入退院の記録、当時本人と接していた人の話などが考えられます。

ただし、医療記録や介護記録は、誰でも自由に取得できるものではありません。
必要な場合は、相続人としてどの範囲で確認できるのか、専門家に相談しながら進めると安心です。

誰が遺言書の作成に関与したか確認する

遺言書が作成された経緯も重要です。

誰が遺言書の存在を知っていたのか。
誰が保管していたのか。
誰が最初に遺言書を見つけたのか。
作成当時、本人の近くにいたのは誰か。
文案を用意した人がいたのか。

こうした事情を整理することで、遺言書がどのように作成されたのかを確認しやすくなります。

もっとも、特定の相続人が遺言書の保管をしていたからといって、それだけで不正があったとは限りません。
親が信頼している子どもに遺言書を預けていた可能性もあります。

大切なのは、「誰が悪いか」を先に決めることではなく、作成から発見までの流れを事実として整理することです。

過去の遺言書や生前の発言と矛盾がないか確認する

過去に別の遺言書が作成されていた場合は、その内容との違いも確認しましょう。

以前の遺言書では相続人全員に分ける内容だったのに、新しい遺言書では一人だけが大部分を取得する内容になっている。
生前には「兄弟で公平に分けてほしい」と話していたのに、遺言書では特定の相続人だけに有利な内容になっている。

このような場合、なぜ内容が変わったのかを確認する必要があります。

ただし、生前の発言と遺言書の内容が違うからといって、直ちに遺言書が無効になるわけではありません。
本人の考えが後から変わった可能性もありますし、家族が知らない事情があった可能性もあります。

そのため、過去の遺言書、エンディングノート、生前のメモ、家族への説明、介護や生活支援の状況などをあわせて整理することが大切です。

疑わしい遺言書ほど、感情ではなく資料と事実関係をもとに確認する必要があります。
争いが大きくなりそうな場合や、無効を主張したい場合は、早めに弁護士へ相談することも検討しましょう。

⑤疑わしい遺言書を見つけたときにやってはいけないこと

封筒に入った遺言書を中央に配置し、その周囲に「捨てる」「持ち去る」「勝手に開封する」「書き換える」といった行為を示すアイコンと禁止マークが描かれたイラスト。遺言書を見つけた際に避けるべき行動を分かりやすく表現している。
遺言書に疑問があっても、捨てたり隠したり書き換えたりしてはいけません。まずは内容や状況を確認し、適切な手続きを検討しましょう。

遺言書に不自然な点があると、「こんなものは使わせたくない」「誰かが勝手に作ったに違いない」と感じることがあります。

しかし、疑わしい遺言書を見つけたときほど、感情的に動くのは危険です。
対応を誤ると、本来は遺言書の有効性を争いたかった側が、かえって不利な立場になることもあります。

ここでは、疑わしい遺言書を見つけたときに避けるべき行動を整理します。

遺言書を破棄・隠蔽・改ざんしない

疑わしい遺言書であっても、勝手に捨てたり、隠したり、書き換えたりしてはいけません。

「どうせ偽造されたものだから」
「こんな内容は認められないから」
「相手に使われる前に処分しておきたい」

このように考えたとしても、遺言書を勝手に処分する行為は非常に危険です。

遺言書が有効か無効かは、最終的には証拠や事実関係をもとに判断される問題です。
相続人の一人が、自分の判断だけで遺言書を破棄したり隠したりすると、他の相続人から「都合の悪い遺言書を隠したのではないか」と疑われる原因になります。

また、相続人が遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した場合には、相続欠格として相続人の資格を失う可能性がある重大な行為になります。

疑わしい遺言書ほど、原本の状態を保ったまま、発見時の状況を記録しておくことが大切です。

感情的に相手を犯罪者扱いしない

遺言書の内容が特定の相続人に有利だった場合、その相続人に対して強い不信感を持つことがあります。

しかし、証拠が十分でない段階で、

「あなたが偽造したんでしょう」
「親をだましたんじゃないか」
「犯罪だ」

と強く責めるのは避けた方がよいです。

相手を犯罪者扱いする言い方をすると、親族間の対立が一気に深まります。
本来であれば話し合いで確認できたことも、相手が態度を硬化させ、資料の開示や協議が難しくなることがあります。

もちろん、遺言書の偽造や勝手な作成が疑われる場合に、問題を放置する必要はありません。
ただし、最初から相手を断定的に非難するのではなく、「作成時の状況を確認したい」「原本を確認したい」「親の状態について資料を見たい」という形で、事実確認から進める方が現実的です。

疑いが強く、冷静な話し合いが難しい場合には、直接対立を深める前に弁護士へ相談することも検討しましょう。

原本を勝手に持ち去らない

遺言書の原本は、非常に重要な資料です。

そのため、「改ざんされないように自分が預かっておこう」と考える方もいるかもしれません。
しかし、他の相続人に知らせずに原本を持ち去ると、今度は自分が遺言書を隠していると疑われる可能性があります。

特に、相続人同士ですでに不信感がある場合、原本の所在が分からなくなること自体が大きなトラブルになります。

遺言書の原本を確認する必要がある場合は、できるだけ相続人間で共有できる形を取りましょう。
たとえば、発見日時や発見場所を記録する、封筒や遺言書の状態を写真で残す、誰が保管するのかを明確にする、といった対応が考えられます。

すでに争いが起きている場合や、原本の保管方法で意見が分かれる場合には、無理に自分だけで管理しようとせず、弁護士に相談したうえで対応する方が安全です。

封印された遺言書を勝手に開封しない

封印のある遺言書を見つけた場合は、勝手に開封しないよう注意が必要です。

自筆証書遺言などで封印されているものは、原則として、家庭裁判所で相続人またはその代理人の立会いのもとで開封する必要があります。

「中身を早く確認したい」
「偽造かどうか確かめたい」
「相続手続きを進めたい」

と思っても、自己判断で開封してしまうと、後から開封時期や保管状況をめぐって争いになることがあります。

また、家庭裁判所で行う検認は、遺言書の有効・無効を判断する手続きではありません。
検認は、遺言書の形状や状態を確認し、後日の偽造・変造を防ぐための手続きです。

つまり、検認を受けたからといって、その遺言書が有効だと確定するわけではありません。
一方で、勝手に開封したからといって、それだけで直ちに遺言書が無効になるわけでもありません。

重要なのは、疑わしい遺言書ほど、開封や保管の過程を不透明にしないことです。
封印された遺言書を見つけた場合は、まず家庭裁判所での手続きが必要かを確認し、勝手に開封しないようにしましょう。

疑わしい遺言書を見つけたときは、「すぐに否定する」「相手を責める」「自分だけで処理する」のではなく、状態を保ち、記録を残し、必要に応じて専門家に相談することが大切です。

遺言書に不自然な点がある場合でも、内容に納得できないからといって、遺言書を無視したり、隠したり、破棄したりすることは避ける必要があります。
「納得できない遺言書」を見つけたときのNG行動や正しい初動は、以下の記事で詳しく解説しています。
遺言書に納得できないときにしてはいけない行動

⑥勝手に作成された疑いがある場合の対応の流れ

遺言書が勝手に作成された疑いがある場合の対応手順を示したフローチャートイラスト。遺言書の発見から、発見状況の記録、原本の保全、資料整理、相続人との情報共有、専門家への相談、法的手続きの検討までの流れをアイコンと矢印で表現している。
遺言書に不自然な点があっても、すぐに無効と決めつけるのではなく、証拠の保全や情報整理を行いながら冷静に対応することが重要です。

遺言書を勝手に作成された疑いがある場合は、感情的に相手を追及する前に、順番を決めて対応することが大切です。

最初から「偽造だ」と決めつけて動くと、相続人同士の対立が深まり、必要な資料を確認しにくくなることがあります。
一方で、疑わしい点を放置してしまうと、その遺言書を前提に相続手続きが進んでしまう可能性もあります。

まずは、次の流れで事実関係を整理しましょう。

遺言書と発見状況を記録する

いつ、どこで、誰が見つけたのかを記録します。封筒や保管状態も、できるだけ発見時のまま残します。

原本と関連資料を保全する

遺言書に書き込みをしたり、破棄したりせず、原本の状態を保ちます。過去の手紙やメモなども確認資料になります。

筆跡・判断能力・作成経緯を整理する

本人の筆跡と比べる資料、作成時期の健康状態、誰が作成や保管に関わったのかを整理します。

他の相続人と冷静に情報共有する

いきなり相手を責めるのではなく、遺言書の発見経緯や作成時の状況を事実確認として共有します。

争いになりそうな場合は弁護士に相談する

遺言書の有効性を争う可能性がある場合は、証拠の集め方や今後の対応を弁護士に確認します。

話し合いで解決しない場合は法的手続きを検討する

話し合いで解決できない場合は、遺言書の有効・無効を争う手続きも検討します。費用や時間も確認が必要です。

STEP1 遺言書と発見状況を記録する

まずは、遺言書がどのような状況で見つかったのかを記録します。

いつ、どこで、誰が見つけたのか。
封筒に入っていたのか。
封印はされていたのか。
誰が保管していたのか。
他の相続人はいつ遺言書の存在を知ったのか。

こうした情報は、後から作成経緯や保管状況を確認するうえで重要になります。

記録を残すときは、「怪しい」「不自然だ」といった評価ではなく、できるだけ事実をそのまま残すことが大切です。

STEP2 原本と関連資料を保全する

次に、遺言書の原本と関連資料を保全します。

疑わしい遺言書であっても、破棄したり、書き込みをしたり、勝手に修正したりしてはいけません。
原本の状態が変わってしまうと、後から筆跡、訂正、押印、紙の状態などを確認しにくくなります。

封筒、押印、折り目、訂正箇所、添付資料なども含めて、発見時の状態をできるだけ保ちましょう。

また、過去の手紙、日記、メモ、契約書、医療・介護に関する資料なども、事実関係を整理するために役立つことがあります。

STEP3 筆跡・判断能力・作成経緯を整理する

遺言書の原本を保全したら、疑わしい点を整理します。

主に確認するのは、次の3つです。

確認項目見るポイント
筆跡本人が書いた手紙、年賀状、メモなどと比べて不自然な点がないか
判断能力作成日当時、本人が内容を理解できる状態だったか
作成経緯誰が文案を用意し、誰が保管し、誰が遺言書の存在を知っていたか

ここで大切なのは、最初から結論を決めないことです。

「偽造に違いない」と決めつけるのではなく、どこに不自然な点があるのかを具体的に整理しましょう。

STEP4 他の相続人と冷静に情報共有する

遺言書に疑問がある場合でも、他の相続人とのやり取りは冷静に行う必要があります。

いきなり「あなたが勝手に作ったのではないか」と責めると、相手が態度を硬化させ、話し合いが難しくなることがあります。

まずは、次のような事実確認から始める方が現実的です。

遺言書はどこで見つかったのか。
いつから保管していたのか。
作成時に本人はどのような状態だったのか。
他に遺言書やメモはなかったのか。
専門家に相談して作成したものなのか。

すでに強い対立がある場合や、相手が資料を見せようとしない場合には、無理に直接交渉を続ける必要はありません。

STEP5 争いになりそうな場合は弁護士に相談する

遺言書の有効性を争う可能性がある場合や、相続人同士で話し合いが難しい場合は、弁護士に相談しましょう。

特に、次のような場合は早めの相談を検討した方がよいです。

相手が遺言書の原本を見せない。
筆跡や訂正に強い違和感がある。
本人が作成できたとは思えない時期の遺言書である。
相続人同士で話し合いができない。
相手がその遺言書を前提に手続きを進めようとしている。

弁護士に相談することで、どの資料を集めるべきか、どのような主張ができるか、法的手続きまで進むべきかを確認できます。

STEP6 話し合いで解決しない場合は法的手続きを検討する

相続人同士の話し合いで解決できない場合には、法的手続きを検討することになります。

たとえば、遺言書が本人によって作成されたものではないと主張する場合には、遺言書の有効性を争う手続きが問題になります。

ただし、法的手続きに進めば、時間も費用もかかります。
親族関係がさらに悪化する可能性もあります。

そのため、単に「納得できない」という理由だけで進めるのではなく、無効を主張できる事情があるのか、それを裏付ける資料があるのか、手続きにかかる負担に見合うのかを確認することが重要です。

疑わしい遺言書に直面したときは、早く結論を出したくなるものです。
しかし、相続の場面では、初動を誤ると後から取り返しがつかないことがあります。

まずは、記録する、保全する、整理する、冷静に確認する。
そのうえで、争いになりそうな場合は弁護士に相談し、必要な手続きを検討しましょう。

相続人同士の話し合いで解決できず、遺言書の有効性を裁判で争う場合には、遺言無効確認訴訟を検討することになります。
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⑦善意でも親の同意なく遺言書を作成してはいけない

高齢の親と成人した子どもが専門家から遺言書について説明を受けている相談風景。机の上には遺言書、財産資料、家族関係図、メモ、封筒などが整然と並び、本人の意思を尊重しながら将来の相続対策について話し合っている様子を表現している。
遺言書は家族が勝手に作るものではなく、本人の意思を確認しながら専門家とともに内容を整理していくことが大切です。

ここまでは、「兄弟や親族が親の遺言書を勝手に作成したのではないか」と疑っている側の視点で解説してきました。

一方で、遺言書を勝手に作成しようとする人の中には、悪意ではなく、善意から動いてしまう人もいます。

「親が高齢だから、今のうちに準備しておいた方がいい」
「親は手続きが苦手だから、子どもが代わりに進めた方が早い」
「兄弟で揉めないように、先に内容を決めておきたい」
「親もきっとこの内容で納得するはず」

このように考えること自体は、家族を心配する気持ちから出ているのかもしれません。

しかし、どれだけ親のためを思っていたとしても、親本人の同意なく遺言書を作成してはいけません。

親のためでも勝手に作るのは危険

遺言書は、子どもや親族が「こうしておいた方がよい」と考えた内容を書く書類ではありません。

あくまで、遺言者本人が、自分の財産をどのように残したいのかを示す書類です。

そのため、子どもが親の名前で遺言書を作ったり、親が内容を理解していないまま文面を用意したり、親の同意なく署名や押印をしたりすることは認められません。

たとえ家族のためと思っていても、本人の意思に基づかない遺言書は無効です。

また、親の死後にその遺言書が見つかれば、他の相続人から「誰が作ったのか」「親は本当に内容を理解していたのか」「特定の子どもが有利になるように誘導したのではないか」と疑われる可能性があります。

結果として、相続トラブルを防ぐために用意したはずの遺言書が、かえって親族間の不信感や争いを生む原因になってしまいます。

親のためを思うのであれば、子どもが先回りして作るのではなく、親本人の意思を尊重することが何より大切です。

親に説明したうえで、専門家から本人に説明してもらう

親に遺言書を作ってほしいと考えている場合は、まず子どもから親本人に、なぜ遺言書が必要だと思うのかを説明しましょう。

たとえば、

「相続で兄弟が揉めないようにしておきたい」
「不動産の分け方をはっきりさせておいた方がよいと思う」
「親の希望をきちんと形に残しておいた方が安心だと思う」

といった形で、遺言書を作る目的を伝えます。

ただし、ここで大切なのは、子どもが内容を決めつけないことです。

「長男に全部残す内容で作って」
「この土地は自分に相続させると書いて」
「他の兄弟には少なくして」

このように、特定の内容を強く求めると、後から「親が自分の意思で作ったのではない」と疑われる原因になります。

親が遺言書の作成に前向きになった場合は、行政書士などの専門家から親本人に説明してもらう形を取るのがおすすめです。

専門家から、遺言書の種類、作成方法、注意点、財産の分け方によって起こり得る影響などを説明してもらうことで、親本人が内容を理解したうえで判断しやすくなります。

また、専門家が親本人の意思を確認しながら進めることで、後から「子どもが勝手に作った」「親は内容を理解していなかった」と疑われるリスクを下げることにもつながります。

疑われない遺言書を作るには作成過程の透明性が重要

遺言書は、内容そのものだけでなく、どのように作成されたのかも重要です。

特に、特定の相続人が多く財産を受け取る内容にする場合や、家族関係が複雑な場合には、作成過程が不透明だと、後から争いになりやすくなります。

たとえば、特定の子どもだけが親と専門家のやり取りをしていた。
他の相続人には何も知らされていなかった。
遺言書の文案を、財産を多く受け取る子どもが用意していた。
親が内容をどこまで理解していたのか分からない。

このような事情があると、遺言書の内容に不満を持つ相続人から疑われやすくなります。

もちろん、遺言書の内容を生前に相続人全員へ公開しなければならないわけではありません。
しかし、少なくとも、親本人が自分の意思で専門家に相談し、内容を理解したうえで作成したことが分かるようにしておくことは大切です。

親本人が専門家と直接話す機会を設ける。
子どもが内容を一方的に決めない。
作成時期や相談の経緯を記録しておく。
必要に応じて公正証書遺言も検討する。

こうした工夫によって、将来「勝手に作成された遺言書ではないか」と疑われるリスクを下げることができます。

将来のトラブル予防は行政書士など専門家に相談する

これから親が遺言書を作成する場合は、行政書士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

行政書士は、遺言書の文案作成や必要書類の整理、公正証書遺言を作成する際の準備などをサポートできます。

特に、家族関係が複雑な場合、不動産がある場合、特定の相続人に多く財産を残したい場合には、自己判断で進めると、後から誤解や不満が生じやすくなります。

専門家に相談することで、親本人の意思を確認しながら、形式面にも配慮した遺言書を作成しやすくなります。

大切なのは、子どもが親の代わりに遺言書を作ることではありません。
親本人が、自分の意思で、内容を理解したうえで遺言書を作成できる環境を整えることです。

善意であっても、親の同意なく遺言書を作成することは避けましょう。
親のため、家族のために準備したいのであれば、まず親本人に説明し、そのうえで行政書士などの専門家から親本人へ説明してもらう形で進めることが大切です。

⑧遺言書の勝手な作成に関するよくある質問

Q:親の代わりに子どもが遺言書を作成してもよいですか?

親本人の同意なく、子どもが勝手に遺言書を作成することはできません。

遺言書は、遺言者本人の意思を示す書類です。
子どもが「親はこう考えているはず」と思っていても、それだけでは本人の意思に基づく遺言書とはいえません。

親に遺言書を作ってほしい場合は、まず親本人に必要性を説明し、本人が作成を希望する場合に、専門家から本人へ説明してもらう形で進めるのが安心です。

Q:勝手に作成された遺言書は有効ですか?

本人が作成していない遺言書や、本人の意思に基づかず親族が勝手に作成した遺言書は無効です。

たとえば、本人の名前をまねて書いた場合や、本人の印鑑を無断で押した場合、本人が内容を知らないまま作成された場合などは、有効な遺言書として扱われません。

ただし、相続人間で争いになった場合には、「本当に本人が作成したものではない」といえる資料や事実関係を整理する必要があります。

Q:筆跡が違う気がするだけで偽造といえますか?

筆跡が違うように見えるだけで、直ちに偽造と断定することはできません。

高齢になると字が震えたり、病気や体調によって筆跡が変わったりすることがあります。
そのため、過去の手紙、年賀状、日記、メモなど、本人が書いたと分かる資料と比較しながら、慎重に確認する必要があります。

作成時期の本人の健康状態や、遺言書の保管状況もあわせて整理しましょう。

Q:遺言書の内容が不公平なら無効になりますか?

内容が不公平に見えるだけで、直ちに無効になるわけではありません。

親が特定の子どもに多く財産を残したいと考えていた可能性もあります。
介護への感謝や、生前贈与とのバランスなど、家族が知らない事情がある場合もあります。

問題になるのは、その内容が本人の意思に基づいて作成されたものかどうかです。

Q:遺言書を偽造した相続人は相続できなくなりますか?

相続人が遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した場合、相続欠格として相続人の資格を失う可能性があります。

これは、相続を有利に進めるどころか、自分自身が相続から外される可能性のある重大な問題です。

遺言書に不自然な点がある場合でも、疑っている側が勝手に破棄したり隠したりすることは避けましょう。

Q:公正証書遺言でも勝手に作成されることはありますか?

公正証書遺言は、公証役場で公証人が関与して作成されます。
作成時には本人確認も行われるため、親族が本人に無断でこっそり作成することは通常考えにくいです。

ただし、公正証書遺言であっても、本人が内容を理解していたか、特定の相続人による強い誘導がなかったか、作成当時の判断能力に問題がなかったかが争われることはあります。

Q:封印された遺言書を見つけたら開けてもよいですか?

封印された遺言書を見つけた場合は、自己判断で開封しないようにしましょう。

自筆証書遺言などで封印されているものは、家庭裁判所で相続人または代理人の立会いのもとで開封する必要がある場合があります。

検認は遺言書の有効・無効を判断する手続きではありませんが、遺言書の状態を確認し、後日のトラブルを防ぐために重要です。

Q:遺言書を勝手に作成された疑いがある場合、誰に相談すべきですか?

すでに相続人同士で争いになっている場合や、遺言書の有効性を争う可能性がある場合は、弁護士に相談するのが基本です。

一方で、これから親が遺言書を作成する場合や、将来「勝手に作成された」と疑われない遺言書を作りたい場合は、行政書士などの専門家に相談することで、本人の意思が明確に残る形で準備しやすくなります。

⑨まとめ|遺言書を勝手に作成するのは絶対に避けるべき

遺言書は、遺言者本人の意思を残すための重要な書類です。

そのため、子どもや兄弟などの親族が、本人の同意なく遺言書を作成することはできません。
本人が作成していない遺言書や、本人の意思に基づかずに作成された遺言書は無効です。

たとえ「親のため」「家族のため」という善意があったとしても、親の名前で遺言書を作成したり、本人の印鑑を勝手に押したり、本人が作成したように見せかけたりすることは絶対に避けるべきです。

このような行為は、単に遺言書が無効になるだけではありません。
内容によっては、私文書偽造罪などの刑事責任を問われる可能性があります。
また、相続人が遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した場合には、相続欠格として相続人の資格を失う可能性がある重大な行為になります。

一方で、遺言書の内容に納得できないからといって、すぐに「誰かが勝手に作った」と断定することも危険です。

筆跡が違うように見えても、加齢や病気によって文字が変化した可能性があります。
特定の相続人に有利な内容だったとしても、親がそのような内容を望んでいた可能性もあります。

大切なのは、感情的に相手を責める前に、事実関係を冷静に整理することです。

遺言書の原本、発見状況、筆跡を比較できる資料、作成時期の本人の状態、保管状況、作成に関わった人などを確認し、不自然な点がある場合は慎重に対応しましょう。

疑わしい遺言書を見つけた場合でも、破棄したり、隠したり、勝手に開封したりすることは避ける必要があります。
対応を誤ると、本来は遺言書の有効性を争いたかった側が、かえって不利な立場になることもあります。

すでに相続人同士で争いになっている場合や、遺言書の有効性を争う可能性がある場合は、弁護士に相談するのが基本です。
証拠の集め方、相手方への対応、法的手続きの見通しを確認しながら進めましょう。

また、これから親が遺言書を作成する場合には、子どもが先回りして作るのではなく、まず親本人に必要性を説明することが大切です。
そのうえで、行政書士などの専門家から親本人へ説明してもらい、本人が内容を理解し、自分の意思で作成したことが分かる形で進めましょう。

遺言書は、家族の争いを防ぐために作るものです。
しかし、本人の意思が不明確なまま作成された遺言書は、かえって相続トラブルの原因になります。

将来、「勝手に作成された遺言書ではないか」と疑われないためにも、遺言書は本人の意思を丁寧に確認し、作成過程の透明性を意識して準備することが大切です。

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✅ 行政書士プロフィール

特定行政書士 野中雅敏(IT行政書士事務所)

  • 国家資格:行政書士(登録番号:25080391)
  • 経歴:IT業界出身/相続・遺言分野を専門取り組み中
  • 趣味:競泳
  • メッセージ:
     「遺言は“難しいこと”ではなく、“優しさのカタチ”です。
    家族を守るために、ぜひ一緒に考えていきましょう。」

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