相続というと、「亡くなった人の遺産を引き継ぐこと」と考える方が多いかもしれません。
もちろん、預貯金や不動産などの財産を受け継ぐことは、相続の中心的な内容です。ですが、相続で引き継ぐのは、プラスの財産だけではありません。
借金や未払金などのマイナスの財産も、原則として相続の対象になります。さらに、亡くなった方が持っていた契約上の地位や、他人に対して持っていた権利なども、内容によっては引き継がれます。
つまり相続とは、財産を受け取るだけではなく、亡くなった方が持っていた財産・権利・義務を、一定の人が引き継ぐ仕組みです。
また、誰が相続人になるのか、遺言書がある場合にどのように扱われるのか、相続するか放棄するかといった点には、法律上のルールがあります。家族の話し合いだけで自由に決められるとは限らないため、まずは基本的な仕組みを理解しておくことが大切です。
この記事では、相続とは何かを説明しながら、誰が相続するのか、財産の行き先はどう決まるのか、相続にはどのような方法があるのかを解説します。
目次
①相続とは簡単にいうと何か

亡くなった人の財産・権利・義務を引き継ぐこと
相続とは、亡くなった人が持っていた財産や権利、義務を、相続人が引き継ぐことをいいます。
引き継ぐものには、預貯金や不動産、株式などのプラスの財産だけでなく、借金や未払金といったマイナスの財産も含まれます。
また、相続の対象になるのは、金銭的な価値のあるものだけではありません。たとえば、亡くなった人が他人にお金を貸していた場合、その返済を求める権利も相続の対象になることがあります。反対に、借入金の返済義務なども、原則として相続人へ引き継がれます。
そのため、相続は「遺産を受け取る手続き」とだけ考えるのではなく、亡くなった人の法律上の立場を引き継ぐ仕組みとして理解することが大切です。
「相続」と「遺産相続」の違い
「相続」と「遺産相続」は、日常的にはほぼ同じ意味で使われています。
ただし、「相続」は、財産や権利、義務を引き継ぐ法律上の仕組み全体を指す言葉です。一方、「遺産相続」は、預貯金や不動産など、亡くなった人の遺産を受け継ぐことに重点を置いた表現です。
たとえば、「遺産相続の話し合い」という場合は、遺産を誰がどのように受け取るかという意味で使われることが多いでしょう。
もっとも、相続ではプラスの財産だけでなく、借金なども引き継ぐ可能性があります。したがって、「遺産相続」という言葉から、受け取る財産だけをイメージしないよう注意が必要です。
相続は亡くなった時に始まる
相続は、相続人が手続きを始めた時や、遺産分割の話し合いを始めた時に発生するものではありません。
法律上、相続は人が亡くなった時に始まります。
そのため、相続人がまだ相続について何も話し合っていなくても、亡くなった時点で相続関係は生じています。預貯金や不動産などの財産だけでなく、借金などの義務についても、相続の対象になる可能性があります。
相続が発生した後は、誰が相続人になるのか、どのような財産や債務があるのかを確認したうえで、相続するかどうかを判断していくことになります。
②相続で引き継ぐもの
相続では、預貯金や不動産のように目に見える財産だけでなく、亡くなった人が持っていた権利や義務も引き継ぐことがあります。
ただし、すべてが相続の対象になるわけではありません。本人だけに認められていた権利や、性質上ほかの人へ引き継げないものは、相続の対象外になることがあります。
預貯金や不動産などの財産
相続の対象として、まずイメージしやすいのが預貯金や不動産です。
たとえば、次のようなものが含まれます。
- 現金や預貯金
- 土地や建物
- 株式や投資信託
- 自動車
- 貴金属や骨董品
これらは、一般にプラスの財産として扱われます。
ただし、相続する財産は、通帳や不動産の資料だけを見ればすべて分かるとは限りません。証券口座や貸付金、インターネット上の資産などが見つかることもあります。
契約上の地位や権利
相続では、物やお金だけでなく、一定の権利も引き継がれることがあります。
たとえば、亡くなった人が誰かにお金を貸していた場合、その返済を求める権利は、相続人に引き継がれることがあります。
また、賃貸借契約などについても、契約の内容によっては、亡くなった人の立場を相続人が引き継ぐ場合があります。
ただし、契約上の地位がすべて自動的に引き継がれるわけではありません。契約の内容や性質によって扱いが異なるため、個別に確認する必要があります。
借金や未払金などの義務
相続では、プラスの財産だけでなく、借金や未払金などのマイナスの財産も、原則として引き継ぎます。
たとえば、次のようなものです。
- 金融機関からの借入れ
- クレジットカードの未払金
- 税金や社会保険料の未納
- 家賃や公共料金の未払い
- 連帯保証による債務
そのため、預貯金や不動産だけを確認して、相続するかどうかを判断するのは危険です。
相続では、受け取れる財産と、引き継ぐ可能性のある負担の両方を確認することが大切です。
相続の対象にならないものもある
亡くなった人に関係するすべてのものが、相続の対象になるわけではありません。
たとえば、本人だけに認められていた資格や、本人の身分に強く結びついた権利は、通常、相続人へ引き継がれません。
- 運転免許
- 医師や行政書士などの資格
- 会社員としての地位
- 委任契約など、本人の能力や信頼を前提とした契約上の立場
また、扶養を受ける権利など、本人の身分や生活関係に強く結びついた権利も、原則として相続の対象にはなりません。
一方で、生命保険金のように、亡くなったことをきっかけに受け取るものであっても、契約で受取人が指定されている場合は、一般的な相続財産とは異なる扱いになることがあります。
このように、相続の対象になるかどうかは、財産の名前だけでなく、その権利や契約が本人だけに認められたものか、ほかの人へ引き継げる性質のものかによって判断されます。
相続財産に含まれるもの・含まれないものについては、現金、預貯金、不動産、車、貴金属、借金、連帯保証債務などの具体例とあわせて、以下の記事で詳しく整理しています。
相続財産とは?含まれるもの・含まれないものを一覧でわかりやすく解説
相続の対象になる財産や借金は、通帳や不動産資料だけですべて分かるとは限りません。故人の財産をどのような順番で調べればよいかは、以下の記事で詳しく解説しています。
相続財産の調査方法|自分で調べる手順・調査先・必要書類を解説
相続の対象となる財産や負債を確認したら、内容を相続財産目録にまとめておくと、相続人全員で全体像を共有しやすくなります。
相続財産目録の書き方や評価額の記載方法、Word・Excelのひな形については、以下の記事で解説しています。
相続財産目録の作り方|書き方・評価額・記載例をひな形付きで解説
③誰が相続するのか

相続が発生すると、誰でも自由に財産を引き継げるわけではありません。
法律上、相続人になれる人の範囲や順位には基本的なルールがあります。まずは、亡くなった人との関係によって、誰が相続人になる可能性があるのかを確認することが大切です。
配偶者は原則として相続人になる
亡くなった人に配偶者がいる場合、その配偶者は原則として相続人になります。
ここでいう配偶者とは、法律上の婚姻関係にある夫または妻のことです。長年一緒に暮らしていたとしても、婚姻届を提出していない内縁の配偶者は、原則として法定相続人にはなりません。
配偶者は、子や親、兄弟姉妹など、ほかの相続人と一緒に相続することがあります。
たとえば、亡くなった人に配偶者と子がいる場合は、配偶者と子が相続人になります。子がいない場合は、配偶者と亡くなった人の親が相続人になることがあります。
子・親・兄弟姉妹には相続順位がある
配偶者以外の相続人には、法律上の順位があります。
最も優先されるのは子です。子がいない場合は親などの直系尊属、さらにその人たちもいない場合は兄弟姉妹が相続人になります。
基本的な順位は次のとおりです。
- 第1順位:子
- 第2順位:父母や祖父母などの直系尊属
- 第3順位:兄弟姉妹
上の順位の人がいる場合、下の順位の人は原則として相続人になりません。
たとえば、亡くなった人に子がいる場合、通常は親や兄弟姉妹は相続人になりません。子がいないときに初めて親が相続人となり、子も親もいないときに兄弟姉妹が相続人になります。
第1順位の「子」には、実子だけでなく、養子や一定の条件を満たす胎児も含まれます。一方、再婚相手の連れ子や、一般に婿養子と呼ばれている人は、養子縁組の有無によって相続権が変わります。詳しくは、「養子・連れ子・胎児に相続権はある?相続分や婿養子との違いも解説」をご覧ください。
法律で決められた相続人を法定相続人という
法律のルールにより相続人になる人を、法定相続人といいます。
法定相続人になる可能性があるのは、原則として配偶者、子、親などの直系尊属、兄弟姉妹です。
ただし、家族が把握している関係だけで判断するのは危険です。前の配偶者との間に子がいる場合や、認知した子、養子がいる場合など、戸籍を確認しなければ分からない相続人がいることもあります。
相続人が一人でも漏れたまま遺産の分け方を決めると、あとで手続きをやり直すことになりかねません。そのため、実際の相続では、戸籍を確認して相続人を確定する必要があります。
法定相続人の範囲や順位、相続人の組み合わせごとの法定相続分については、
「相続人とは?法定相続人の範囲・順位・法定相続分をわかりやすく解説」で詳しく説明しています。
代襲相続によって次の世代が相続することもある
本来相続人になるはずだった子や兄弟姉妹が、亡くなった人より先に死亡している場合、その人の子が代わりに相続人になることがあります。
これを代襲相続といいます。
たとえば、父が亡くなった時点で、その子がすでに亡くなっていた場合、その子に子どもがいれば、孫が代わって相続人になることがあります。
兄弟姉妹が相続人になる場合にも、代襲相続が生じることがあります。その場合は、亡くなった兄弟姉妹の子である、おい・めいが相続人になる可能性があります。
このように、相続人の範囲は、現在の家族関係だけを見ても判断できないことがあります。相続が発生したときは、亡くなった人の戸籍をたどり、誰が相続人になるのかを正確に確認することが重要です。
代襲相続が発生する条件や、親の相続で兄弟がすでに亡くなっている場合の相続人については、「代襲相続とは?親の相続で兄弟が死亡している場合や遺言との関係を解説」で詳しく説明しています。
たとえば、子どものいないおじ・おばが亡くなり、本来相続人になる兄弟姉妹も先に亡くなっている場合には、甥・姪が相続人になることがあります。具体的な条件や、その後の手続きについては、「おじ・おばが亡くなった場合、甥・姪は相続人になる?」で解説しています。
④財産の行き先はどのように決まるのか

相続財産を誰が受け取るかは、遺言書の有無や相続人同士の話し合いによって決まります。
法律では相続人の範囲や相続分の目安が定められていますが、実際の財産が必ずその割合どおりに分けられるとは限りません。
遺言書がある場合
亡くなった人が遺言書を残していた場合は、原則として、その内容をもとに財産の行き先を確認します。
たとえば、
- 自宅は配偶者に相続させる
- 預貯金は子どもに相続させる
- 特定の財産を特定の人に渡す
といった内容が書かれていることがあります。
遺言書がある場合は、まず誰にどの財産を渡す内容になっているかを確認します。ただし、遺言書の内容によっては、ほかの相続人との関係や法律上の権利に注意が必要です。
遺言書がない場合
遺言書がない場合は、法律で定められた相続人を確認し、その全員で財産の分け方を決めます。
法律上、相続人ごとの取り分の目安は定められています。これを法定相続分といいます。
ただし、法定相続分は、必ずその割合どおりに財産を分けなければならないという意味ではありません。
たとえば、預貯金は子どもが取得し、自宅は配偶者が取得するなど、相続人全員が合意すれば、財産ごとに分け方を決めることができます。
相続人全員で遺産の分け方を決める場合
相続人全員で遺産の分け方を話し合うことを、遺産分割協議といいます。
遺産分割協議では、
- 誰がどの財産を取得するか
- 不動産を売却して代金を分けるか
- 一人が財産を取得し、ほかの相続人へ金銭を支払うか
といった点を話し合います。
この話し合いは、相続人全員が参加して行う必要があります。一部の相続人だけで決めた内容では、後から問題になる可能性があります。
全員の合意がまとまった場合は、その内容を遺産分割協議書にまとめるのが一般的です。
遺産分割では、法定相続分を基準にしながら、現物分割・代償分割・換価分割などから、財産や家族の事情に合った分け方を考えます。
遺産分割とは?具体的な分け方を詳しく見る
実際の遺産分割協議では、相続人全員の参加・合意が必要になるほか、それぞれの生活事情や希望を踏まえながら分け方を検討します。遺産分割協議の具体的な進め方については、別の記事で詳しく解説しています。
相続人以外へ財産を渡す「遺贈」
遺言書では、相続人以外の人に財産を渡すこともできます。
たとえば、
- 内縁の配偶者に財産を渡す
- お世話になった人に預貯金を渡す
- 団体へ財産を寄付する
といった内容です。
このように、遺言によって財産を無償で渡すことを遺贈といいます。
遺贈は、相続人が法律上の立場として財産を引き継ぐ相続とは、別の仕組みです。そのため、遺贈を受ける人は、必ずしも法定相続人である必要はありません。
ただし、遺贈の内容や財産の種類によっては、受け取るための手続きや税金の扱いが異なることがあります。遺言書に遺贈の記載がある場合は、内容を確認したうえで手続きを進める必要があります。
遺産に不動産が含まれる場合は、相続人全員で共有する以外にも、一人が不動産を取得し、ほかの相続人が現預金を取得するなどの分け方があります。兄弟で実家などを相続する場合は、不動産を共有名義にする前に考えたい分け方も参考にしてください。
⑤財産や借金をどう引き継ぐか

相続が始まったからといって、必ずすべてを引き継がなければならないわけではありません。
亡くなった人の財産や借金をどのように引き継ぐかについては、主に「単純承認」「限定承認」「相続放棄」という3つの考え方があります。
どの相続方法を選ぶかの判断軸
どの方法を選ぶかは、亡くなった人の財産と借金の状況を確認したうえで判断します。
主な判断軸は、次のとおりです。
- プラスの財産がどれくらいあるか
- 借金や未払金がどれくらいあるか
- 連帯保証など、把握しにくい負債がないか
- 財産の全体像を把握できているか
- 引き継ぎたい不動産や事業用財産があるか
- ほかの相続人と足並みをそろえられるか
たとえば、プラスの財産が明らかに多く、借金の心配も少ない場合は、単純承認が選ばれることが多いでしょう。
一方で、借金の方が多い場合や、財産を引き継ぐ意思がない場合は、相続放棄を検討することになります。
また、借金の総額が分からないものの、残したい財産がある場合には、限定承認が候補になることもあります。
ただし、限定承認は相続人全員で行う必要があり、手続きも複雑です。単純に「借金があるか分からないから限定承認」と決めるのではなく、財産の内容や相続人の状況も含めて判断する必要があります。
単純承認
単純承認とは、亡くなった人の財産や権利、義務をそのまま引き継ぐことです。
預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や未払金などのマイナスの財産も引き継ぎます。
たとえば、預貯金が1,000万円あり、借金が200万円ある場合、単純承認をすると、どちらも相続することになります。
特別な手続きをしなくても、一定の場合には単純承認をしたものとして扱われることがあります。そのため、借金の有無が分からない場合は、故人の財産を安易に使ったり処分したりせず、まず全体を確認することが大切です。
限定承認
限定承認とは、相続によって得たプラスの財産の範囲内で、借金などを負担する方法です。
たとえば、相続財産が500万円、借金が800万円ある場合でも、限定承認を選ぶと、原則として500万円の範囲で借金を清算します。
借金があるかどうか分からない場合や、負債の総額を把握できていない場合に検討されることがあります。
ただし、限定承認は相続人全員で行う必要があり、手続きも複雑です。実際に選ぶ場合は、早めに専門家へ相談した方がよいでしょう。
相続放棄
相続放棄とは、亡くなった人の財産や借金を原則として引き継がない方法です。
相続放棄をすると、借金だけでなく、預貯金や不動産などのプラスの財産も受け取れません。
たとえば、財産より借金の方が多い場合や、保証債務がある可能性がある場合には、相続放棄を検討することがあります。
相続放棄は、相続人ごとに判断します。ある相続人が放棄しても、ほかの相続人まで自動的に放棄したことにはなりません。
また、先の順位の相続人が放棄すると、次の順位の人が相続人になることがあります。自分だけでなく、ほかの親族への影響も確認しておく必要があります。
3つの違いを比較
| 方法 | プラスの財産 | 借金など | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 単純承認 | 引き継ぐ | 引き継ぐ | 財産も負債もそのまま相続する |
| 限定承認 | 引き継ぐ | プラスの財産の範囲内で負担する | 相続人全員で行う必要がある |
| 相続放棄 | 引き継がない | 原則として引き継がない | 相続人ではなかったものとして扱われる |
どの方法を選ぶかによって、財産や借金の扱いは大きく変わります。
特に借金や保証債務があるか分からない場合は、預貯金や不動産だけを見て判断せず、マイナスの財産も含めて確認することが重要です。
⑥相続にはどのような法律が関係するのか
相続には、誰が相続人になるのか、どの財産をどのように引き継ぐのか、相続を受け入れるか放棄するかといった基本的なルールがあります。
これらの多くは、民法という法律に定められています。
ただし、相続では法律に書かれた割合どおりに財産が分けられるとは限りません。遺言書の内容や相続人全員の話し合いによって、実際の分け方が変わることもあります。
相続の基本ルールは民法に定められている
民法では、相続が始まる時期や相続人になる人、相続財産の引き継ぎ方などが定められています。
たとえば、相続は人が亡くなった時に始まり、亡くなった人が持っていた財産上の権利や義務は、原則として相続人へ引き継がれます。
また、相続人になれる人の範囲や順位も、家族が自由に決めるものではなく、法律上の基本的なルールがあります。
このため、家族の中で「この人が相続するだろう」と考えていても、実際には戸籍を確認しなければ正確に判断できないことがあります。
相続人や相続分にも法律上のルールがある
法律では、配偶者や子、親、兄弟姉妹など、相続人になる可能性がある人の範囲が定められています。
さらに、相続人の組み合わせに応じて、相続分の目安も決められています。これを法定相続分といいます。
たとえば、配偶者と子が相続人になる場合は、それぞれの取り分について法律上の目安があります。
ただし、法定相続分は、必ずその割合どおりに預貯金や不動産を分けなければならないという意味ではありません。実際には、遺言書の内容や相続人全員の合意によって、異なる分け方をすることもできます。
遺言や遺産分割によって法律どおりに分けない場合もある
亡くなった人が遺言書を残している場合は、原則として、その内容をもとに財産の行き先を確認します。
遺言書がない場合や、遺言書に書かれていない財産がある場合は、相続人全員で遺産の分け方を話し合うことがあります。
この話し合いによって、相続人全員が合意すれば、法定相続分とは異なる割合で財産を分けることも可能です。
たとえば、配偶者が自宅を取得し、子が預貯金を取得するなど、財産の内容に応じて分け方を決められます。
法律上のルールは、相続の基準になります。ただし、実際の分け方は、遺言書や相続人同士の合意によって変わることがあると理解しておくことが大切です。
相続方法によって法律上の扱いが異なる
単純承認、限定承認、相続放棄は、それぞれ法律上の効果が異なります。
単純承認をすると、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も原則として引き継ぎます。
限定承認では、相続によって得たプラスの財産の範囲内で、借金などを負担します。
相続放棄をすると、原則として初めから相続人ではなかったものとして扱われます。
このように、どの方法を選ぶかによって、引き継ぐ財産や負担が大きく変わります。判断する際は、財産と借金の内容を確認したうえで、自分の希望だけでなく、ほかの相続人への影響も考える必要があります。
相続では、誰が相続人になるのか、どの割合を基準に財産を分けるのか、遺言がある場合にどのように考えるのかなど、民法のルールが重要になります。
民法における相続の基本や、遺言がある場合・ない場合の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。
民法の相続ルールとは?遺言がない場合・相続人・法定相続分を解説
⑦相続について最初に確認しておきたいこと

相続が発生したときは、いきなり財産の分け方を決めるのではなく、まず基本となる事実を確認することが大切です。
特に確認したいのは、遺言書の有無、相続人の範囲、財産と借金の内容です。
これらが分からないまま話を進めると、あとから相続人の漏れや借金の存在が判明し、手続きをやり直すことになりかねません。
遺言書があるか
まず、亡くなった人が遺言書を残していないか確認します。
遺言書がある場合は、誰にどの財産を渡すのかが書かれていることがあります。そのため、遺言書の有無によって、財産の行き先や相続人同士の話し合いの範囲が変わります。
自宅に見当たらない場合でも、公証役場や法務局に保管されていることがあります。亡くなった人の重要書類や保管場所だけで判断せず、残されている可能性を確認することが大切です。
ただし、この段階では、遺言書の詳しい手続きまで理解する必要はありません。まずは、遺言書があるか、どのような内容が書かれているかを把握することが第一です。
誰が相続人になるか
次に、誰が相続人になるのかを確認します。
配偶者や子など、家族が把握している人だけで判断できるとは限りません。前の配偶者との間の子、認知した子、養子などが相続人になる場合もあります。
また、子がすでに亡くなっている場合には、孫が代わりに相続人になることもあります。
相続人の範囲を正確に確認しないまま財産の分け方を決めると、あとから別の相続人がいることが分かり、話し合いをやり直す可能性があります。
そのため、実際の相続では、戸籍を確認して相続人を確定することが必要です。
財産だけでなく借金もあるか
相続では、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や未払金などのマイナスの財産も確認します。
たとえば、次のようなものがないか確認します。
- 銀行や消費者金融からの借入れ
- クレジットカードの未払金
- 税金や社会保険料の未納
- 住宅ローン
- 連帯保証による債務
- 事業上の借金
亡くなった人が借金について家族に話していなかった場合、通帳の引き落とし、郵便物、契約書などから判明することがあります。
プラスの財産だけを見て相続を決めると、あとから大きな負債が見つかる可能性があります。相続するかどうかを考えるためにも、財産と借金の両方を確認することが重要です。
独身で一人暮らしをしていた兄弟が亡くなった場合は、相続人や財産だけでなく、勤務先、生命保険、賃貸住宅なども確認する必要があります。情報が少ない状態から手続きを進める方法は、「独身の兄弟が亡くなった場合の相続人と手続き」で具体的に解説しています。
自分で判断せず専門家に相談した方がよい場合
相続の内容によっては、自分たちだけで判断するより、早めに専門家へ相談した方がよいことがあります。
たとえば、次のような場合です。
- 相続人が誰か分からない
- 借金や保証債務の有無が分からない
- 遺言書の内容について疑問がある
- 相続人同士で意見が分かれている
- 事業用の財産や複数の不動産がある
- 相続するか放棄するか判断できない
相続では、確認する内容によって相談先も異なります。
書類収集や遺産分割協議書の作成などは行政書士、不動産の名義変更は司法書士、相続税は税理士、相続人同士の争いがある場合は弁護士が主な相談先になります。
すべてを最初から一人で解決しようとせず、分からない点を整理したうえで、必要な専門家へ相談することが大切です。
相続が発生した後は、遺言書の確認、相続人や相続財産の調査、相続方法の判断、遺産分割、名義変更などを順番に進めます。具体的な手順や期限、必要書類については、以下の記事で詳しく解説しています。
相続手続きの流れと手順|何をいつまでにする?期限・必要書類をわかりやすく解説
⑧相続とは何かに関するよくある質問
ここでは、相続の基本についてよくある疑問を整理します。
Q:相続と遺産相続は同じ意味ですか
日常的には、ほぼ同じ意味で使われています。
ただし、「相続」は、亡くなった人の財産・権利・義務を引き継ぐ法律上の仕組み全体を指します。
一方、「遺産相続」は、預貯金や不動産などの遺産を引き継ぐことに重点を置いた表現です。
そのため、意味は近いものの、「相続」のほうが、借金や契約上の地位なども含む広い言葉と考えると分かりやすいでしょう。
Q:相続では借金も引き継ぎますか
はい。相続では、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や未払金などのマイナスの財産も、原則として引き継ぎます。
たとえば、金融機関からの借入れ、クレジットカードの未払金、税金の未納、連帯保証による債務などが含まれることがあります。
借金の有無が分からないまま相続を進めると、あとから負担が見つかる可能性があります。プラスの財産だけでなく、マイナスの財産もあわせて確認することが大切です。
Q:相続の種類は何種類ありますか
相続の種類は、どのような視点で分けるかによって異なります。
財産の行き先という視点では、遺言書の内容、法律上のルール、相続人全員の話し合いによって決まる場合があります。
一方、財産や借金をどう引き継ぐかという視点では、主に次の3つがあります。
- 単純承認
- 限定承認
- 相続放棄
このため、「相続には何種類あるか」という質問には、単純に一つの数字で答えるより、何を基準に分類しているかを確認することが大切です。
Q:遺言書があれば必ずそのとおりになりますか
遺言書がある場合は、原則として、その内容をもとに財産の行き先を確認します。
ただし、遺言書があれば必ずすべてがそのまま決まるとは限りません。
たとえば、遺言書に書かれていない財産がある場合や、遺言書の内容について確認が必要な場合があります。また、一定の相続人には、最低限の取り分に関する法律上の権利が認められることもあります。
そのため、遺言書が見つかった場合は、内容だけでなく、相続人や財産の状況もあわせて確認することが必要です。
Q:相続しないことはできますか
相続放棄をすることで、亡くなった人の財産や借金を原則として引き継がない選択ができます。
ただし、相続放棄をすると、借金だけでなく、預貯金や不動産などのプラスの財産も受け取れません。
また、ある相続人が放棄すると、次の順位の人が相続人になることがあります。自分だけの問題ではなく、ほかの親族に影響する可能性もあります。
そのため、相続放棄を検討する場合は、財産と借金の内容を確認し、ほかの相続人への影響も考えたうえで判断することが大切です。
⑨まとめ|相続とは権利と義務を引き継ぐ仕組み
相続とは、亡くなった人の預貯金や不動産などの財産だけでなく、権利や義務も相続人が引き継ぐ仕組みです。
相続では、プラスの財産だけでなく、借金や未払金などのマイナスの財産も引き継ぐ可能性があります。また、契約上の地位や、他人に対して持っていた権利などが相続の対象になることもあります。
誰が相続人になるのか、財産の行き先をどのように決めるのか、相続するか放棄するかといった点には、法律上の基本的なルールがあります。
一方で、実際の財産の分け方は、遺言書の内容や相続人全員の話し合いによって変わることがあります。
また、財産や借金の引き継ぎ方には、主に次の3つがあります。
- 単純承認
- 限定承認
- 相続放棄
どの方法を選ぶかによって、引き継ぐ財産や負担は大きく変わります。
相続が発生したときは、まず遺言書の有無、相続人の範囲、プラスの財産とマイナスの財産を確認することが大切です。
相続の基本を理解したうえで、自分たちの状況に合った方法を考えていきましょう。
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