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兄弟だけの相続って、思ったより大変
親が亡くなったあと、相続人が「兄弟だけ」になるケースは決して珍しくありません。
「両親ともに他界し、自分たち兄弟姉妹だけで相続することになった」という状況に直面したとき、多くの人はこう考えます。
「兄弟だけだし、家族なんだからスムーズに話がまとまるだろう」
「配偶者や子どもがいないから、かえって簡単なんじゃないか?」
しかし実際には、兄弟のみの相続こそトラブルが起きやすいということをご存知でしょうか。
なぜ兄弟の相続はもめるのか?
兄弟姉妹だけの相続では、次のような問題がよく起こります。
- 相続人が遠方に住んでいて、話し合いが進まない
- 過去の確執がある兄弟同士で感情的な対立が起きる
- 「親の介護をしてきた自分のほうが多くもらうべき」といった主張がぶつかる
- 代表して動く人がいないことで、手続きがストップする
このような事態になると、不動産の名義変更や預貯金の解約などの実務も進まないまま、何年も宙ぶらりんになるケースもあります。
この記事でわかること
この記事では、「兄弟のみで遺産相続することになった場合」に知っておくべき以下のポイントを、専門家目線でわかりやすく整理していきます。
- 兄弟が相続人になる具体的なケースと仕組み
- 兄弟だけの相続で起きやすいトラブルとその対策
- 遺言書の有無でどれだけスムーズさが変わるか
- 相続手続きの進め方と、専門家に頼るメリット
「兄弟だからこそ難しい」相続の現実と、どうすればもめずに手続きを終えられるかを知ることができます。
あなたとあなたの大切な家族が安心して相続を迎える準備ができるように、
この記事がお役に立てば幸いです。
①:兄弟だけが相続人になるケースとは?
相続人の順位と、兄弟が出てくるタイミング
相続には、民法で定められた「法定相続順位」というルールがあります。
この順位によって、誰が相続人になるかが決まります。
【法定相続の順位】
- 第1順位:子ども(直系卑属)
- 第2順位:父母などの親(直系尊属)
- 第3順位:兄弟姉妹
つまり、配偶者を除いて、まずは子どもが相続人になります。
もし子どもがいない場合は親が、親もいない場合に初めて兄弟が相続人となるのです。
たとえば、次のようなケースが該当します。
- 故人に配偶者と子どもがいない
- 故人の両親(または祖父母など直系尊属)もすでに他界している
- 生存している兄弟姉妹がいる(またはその子ども=甥・姪)
このようにして、「兄弟だけが相続人となるケース」が生まれます。
兄弟が相続人にならないケースもある?
一見、兄弟が当然相続人になりそうに見える場面でも、条件によっては相続権が発生しないこともあります。
たとえば
- 故人が遺言書で相続先を指定していた場合
→ 兄弟に相続権があっても、内容によっては相続できないことも - 兄弟がすでに亡くなっていて、代襲相続が発生しない場合
→ 甥・姪もいない場合は、相続人不在となり「相続財産管理人」の選任が必要になることも - 養子縁組や婚姻によって法的な兄弟関係がなかった場合
→ 親しいだけでは法的な相続権は認められない
法的には「戸籍上の関係」と「存命かどうか」がポイントになります。
代襲相続で「甥・姪」が出てくるケースも
兄弟姉妹の誰かがすでに亡くなっている場合、その子どもである甥や姪が「代襲相続人」として相続権を持つことがあります。
具体例
- 故人の兄が先に亡くなっていた
- 兄には成人した子ども(=甥)がいる
- この甥が、兄の代わりに相続権を持つ
このような代襲相続があると、話し合いの人数も増え、さらに複雑になる可能性があります。
また、甥・姪が遠方に住んでいたり、面識がなかったりすると、連絡や意思確認に手間取ることもよくあります。
ポイントまとめ
- 兄弟が相続人になるのは「第3順位」のケースのみ
- 子どもも親もいないときに、兄弟が登場する
- 兄弟がすでに他界している場合は甥・姪が代襲相続する
- 戸籍や遺言、関係性によっては相続権がないこともある
②:兄弟のみの相続で必要な手続きとは?
遺産分割協議の基本と注意点
親が亡くなり、相続人が兄弟のみとなった場合、まず行わなければならないのが「遺産分割協議」です。
これは、誰が何を相続するかを相続人全員で話し合い、合意を得る手続きです。
遺産分割協議を行うには、以下の条件を満たす必要があります。
- 相続人全員が参加すること(ひとりでも欠けると無効)
- 全員が合意していること(反対者がいると成立しない)
- 協議内容を書面に残すこと(遺産分割協議書を作成)
兄弟だけだから話しやすいと思いきや、感情のすれ違いや価値観の違いが浮き彫りになるのがこのタイミングです。
不動産、預貯金、株などの相続に必要な書類一覧
遺産分割がまとまったら、それぞれの財産ごとに名義変更や解約などの手続きが必要になります。
主な財産別に必要な書類を以下にまとめます。
不動産(土地・家屋など)の場合
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
- 不動産の登記簿謄本、固定資産評価証明書
預貯金の解約・名義変更
- 銀行ごとの相続手続き書類
- 相続関係を証明する戸籍一式
- 相続人全員の本人確認書類
- 遺産分割協議書(もしくは遺言書)
株式・証券などの金融資産
- 証券会社が指定する相続手続き書類
- 被相続人と相続人の続柄を示す戸籍
- 口座のある証券会社により異なるため事前確認が重要
このように、財産の種類によって必要な書類や流れが異なるため、スムーズに進めるには計画的な準備が必要です。
全員の同意がないと手続きできないという落とし穴
兄弟の相続では、「相続人全員の同意」が必要となる場面が非常に多いです。
とくに不動産の名義変更や、金融機関での口座解約は1人でも拒否や連絡がつかない人がいるとストップしてしまうことがあります。
- 兄弟のひとりが海外に住んでいて連絡がつかない
- 1人が「自分は何もいらない」と言いながら、書面にはサインしてくれない
- 遺産の内容を巡って意見が食い違い、話がまとまらない
このような事態に陥ると、相続手続きは進まず、時間と労力ばかりがかかってしまいます。
ポイントまとめ
- 兄弟だけでも「遺産分割協議」は必須であり、全員の合意が必要
- 財産の種類ごとに異なる書類と手続きが必要
- 誰かひとりでも協力的でないと、相続手続き全体が止まる可能性がある
③:兄弟だけの相続で起きやすいトラブル事例
「兄弟だけの相続だから、すぐに話がまとまると思っていた」
多くの人がそう期待しますが、実際にはトラブルが起きやすいのが兄弟間の相続です。
ここでは、実際によくあるトラブルのパターンをご紹介します。
音信不通の兄弟がいて連絡がつかない
離れて暮らしていた兄弟と長年連絡を取っていない場合、相続手続きに必要な連絡や書類のやり取りができず、遺産分割協議が進まないという事態が起こります。
よくあるケース
- 住所不明で郵送が届かない
- 携帯やSNSなどの連絡手段が分からない
- 音信不通をいいことに「無視」される
この場合、相手を探すために「戸籍の附票」や「住民票の除票」などを取得したり、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てるといった法的手続きをとることになります。
いずれにしても、相続が長期化しやすい典型パターンです。
兄弟間で「貢献度」の感じ方に差がある
- 長男が親の介護を長年担ってきた
- 末っ子は遠方に住んでいて何もしてこなかった
- 金銭援助をした兄弟が「多く相続すべき」と主張
このように、相続分を「法定どおり」にするか、「貢献度に応じて調整するか」で意見が対立することがあります。
民法には「寄与分」という制度があり、特別な貢献があった相続人に対して加算できる仕組みがありますが、実際の運用では証拠や金額評価が難しく、揉めやすいポイントになります。
実家をどうするかでもめるケース(売却 vs 維持)
実家を相続したい兄と、売却して現金化したい弟、こうした不動産に関する意見の食い違いは、兄弟間の感情的な対立を招きがちです。
よくある主張
- 「親の思い出があるから、残したい」
- 「管理が面倒だし、売ってお金を分けたい」
- 「今、空き家なのに固定資産税を払い続けるのは負担」
仮に一部の兄弟だけで住み続ける場合、共有名義にすることで将来的な処分が難しくなる問題もあります。
特に、将来の世代にわたって名義が分かれると、「争続」になる可能性が一気に高まります。
ポイントまとめ
- 音信不通の兄弟がいると手続き自体が止まる
- 貢献度の感じ方に差があると、法定相続分では納得されない
- 実家などの不動産の扱いで、売却 or 維持の対立が起こりやすい
- 感情と権利が交錯する場面こそ、兄弟間の相続で最ももめやすいポイント
④:遺言書がない兄弟相続の大変さとは?
「うちは財産も少ないし、兄弟だけだから遺言書なんて必要ない」
そう考える人は多いかもしれません。しかし実際には、遺言書がないことで兄弟相続がスムーズに進まないケースが非常に多いのです。
ここでは、遺言書がない兄弟相続の大変さを具体的に見ていきます。
法定相続分のもとで「公平」が逆にもめごとを呼ぶ?
民法では、兄弟姉妹が相続人となる場合、相続分は原則として均等(1/人数)です。
兄弟が2人いれば1/2ずつ、3人なら1/3ずつ…という具合です。
しかし、実際のところ兄弟姉妹の間では、
- 「親の面倒を見たのは自分だ」
- 「金銭的に援助していたのに平等なのか?」
- 「あの兄は生前に多くもらっていたのに…」
といった不公平感が拭えず、感情的な対立が生まれやすくなります。
遺言書があれば、被相続人の意思を明確に示すことができ、この「平等だけど不公平」な状況を避けることが可能になります。
代表者がいないと全ての手続きが止まる
相続手続きは、誰かが代表して動くことでスムーズに進みます。
しかし兄弟だけの相続では、代表者を自然に選びにくいという特徴があります。
- 長男が仕切るのが当然?
- 一番近くに住んでいる人?
- 財産が一番多く欲しい人?
こうした話し合いができないまま、「誰も動かない」「お互いに牽制し合う」状況になってしまうと、金融機関での口座凍結解除や、不動産の名義変更も進まなくなります。
遺言書に「この人に相続させる」「この人が遺言執行者である」と明記しておけば、代表者が明確になり、必要な手続きも迅速に進みます。
争族にならないために、遺言書の力は絶大
相続トラブルはしばしば「争族(そうぞく)」と呼ばれます。
特に兄弟間では、普段は問題がなかった関係が、相続をきっかけに壊れてしまうことも少なくありません。
遺言書には以下のような効果があります。
- 法定相続に縛られず、配分を自由に決められる
- 感情的な対立を防ぎやすくなる(「親の意思」として尊重されやすい)
- 特定の人を代表者(遺言執行者)に指定できる
- 甥・姪の代襲相続など、複雑化したケースも整理しやすい
遺言書があるだけで、相続にかかる時間・労力・ストレスを大幅に減らすことができるのです。
ポイントまとめ
- 法定相続分だけでは「公平=納得」とならず、兄弟間で揉めやすい
- 遺言書がないと代表者が決まらず、手続きが止まる
- 兄弟の関係を守るためにも、遺言書は重要な対策ツールになる
⑤:遺言書がある場合のメリット
遺言書がない兄弟相続では、感情的・実務的なトラブルが起きやすいことを前セクションで見てきました。
では逆に、遺言書がある場合にはどんなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、兄弟相続における遺言書の重要性と、その実際の効果を具体的に解説します。
手続きが圧倒的にスムーズになる理由
遺言書がある場合、そこに「誰に何を相続させるか」が明記されていれば、原則として遺産分割協議は不要になります。
つまり、相続人同士で話し合って決める必要がなく、遺言書に従って各種の手続きを進めることができるのです。
特に兄弟だけの相続では:
- 全員の同意を得るのが難しい
- 音信不通の兄弟がいる
- 手続きに非協力的な人がいる
といった問題が多発しますが、遺言書があれば、遺言内容どおりに相続が進むため、そうした事態を避けられます。
感情的な対立を最小限にできる
相続での揉め事の多くは、「誰がどれだけ相続するか」という金額以上に、気持ちのぶつかり合いに起因しています。
- 「親は自分に感謝していたはずなのに」
- 「あの兄だけ多くもらうのは納得できない」
- 「そもそも連絡すら取ってこなかったのに」
しかし、遺言書があると、これは「親の意思」であると受け止めやすくなるため、相続人同士の感情的な対立を和らげる効果があります。
また、公正証書遺言など法的に有効かつ形式が整った遺言書であれば、トラブルの発生率はぐっと下がります。
兄弟間の不公平感を防ぐ書き方のポイント
兄弟相続において遺言書を作成する際には、単に「誰にどれだけ渡すか」を記載するだけでなく、気持ちを伝える補足文(付言事項)を加えることも非常に効果的です。
付言事項例
- 「長男には生前の介護に感謝して、少し多めに遺すことにしました」
- 「妹には学費を多く支援していたため、今回の相続は等分にします」
- 「この実家は、思い出の場所なので長女に残したいと思います」
こうした説明を添えることで、遺された兄弟間の納得感が高まり、不満や誤解を防ぐことができます。
さらに、以下の点にも注意すると安心です。
- 自筆よりも公正証書遺言のほうが安全(検認不要、改ざんリスク減)
- 遺言執行者の指定をしておくと手続きが格段にスムーズ
- 定期的な見直し(5年に1回など)で、内容の陳腐化を防ぐ
ポイントまとめ
- 配分の理由や想いを付け加えることで、兄弟間の理解を深められる
- 遺言書があると、遺産分割協議が不要になり、手続きが格段に早くなる
- 「親の意思」として感情的な対立を和らげる効果がある
そのためにも、信頼できる専門家との継続的な関係を持つことが、家族の将来を守るうえで非常に大切なのです。
⑥:専門家に相談すべきタイミングとメリット
兄弟間だけの相続は、人数が少ない分シンプルに見えがちですが、感情的・実務的トラブルが起きやすい構造を持っています。
そのため、早い段階で専門家に相談することが、円満な相続のカギとなります。
ここでは、どのタイミングで誰に相談すべきか、また相談することで得られる具体的なメリットを解説します。
いつから相談すればいい?(亡くなる前・後の両方)
専門家への相談タイミングは、「相続が起きる前」でも「起きた後」でもOKですが、以下のような場面では早めの相談がおすすめです。
生前(相続発生前)
- 高齢の親がいて、兄弟相続になる可能性が高い
- 親が「遺言書を書いておきたい」と考えている
- 家族関係に不安があり、「争族」を避けたいと思っている
この段階で相談すれば、遺言書の作成・家族間の意識合わせ・節税対策など、先回りの対応ができます。
死後(相続発生後)
- 遺産の分け方や手続きに関して話がまとまらない
- 不動産や金融資産が複雑で、何から始めていいか分からない
- 音信不通の兄弟や非協力的な相続人がいる
この場合は、遺産分割協議書の作成、相続登記、調整のアドバイスなど、実務的な支援を受けられます。
行政書士・司法書士・弁護士、それぞれの役割
相続に関わる専門家は複数ありますが、目的に応じて選ぶことが重要です。
行政書士
- 遺産分割協議書の作成
- 戸籍収集や相続人の確定調査
- 遺言書の作成サポート(自筆・公正証書)
- 遺言執行者としての実務代行も可能
「書類や手続き面でのサポート」が得意です。
司法書士
- 不動産の名義変更(相続登記)
- 法務局関連の手続き代行
- 遺言執行者としての実務代行も可能
「不動産がある相続」では強い味方になります。
弁護士
- 相続人同士でもめている場合の交渉・代理
- 調停や裁判への対応
- 遺留分や寄与分など、法律的な争点の解決
「もめている」「争いになりそう」というケースは弁護士しか対応できません。
専門家に相談するメリットとは?
専門家に相談することで、次のような具体的なメリットがあります。
- 相続の流れや必要書類が明確になる(安心感UP)
- 手続きミスを防ぎ、時間と労力を大幅に削減できる
- 第三者が入ることで、感情的対立を中和できる
- トラブルになりかけている問題も、法的根拠に基づいて整理してもらえる
- 将来の「争続」を防ぐための提案も受けられる(特に生前相談)
また、初回相談は無料の事務所も多く、気軽に問い合わせできる環境が整っています。
ポイントまとめ
- 感情や制度の複雑さをクリアにするためにも、専門家の存在は心強い味方
- 相続前でも後でも、専門家に相談することでトラブルや手続きの混乱を回避できる
- 行政書士・司法書士・弁護士にはそれぞれ得意分野があるため、状況に応じて選択を
⑦:よくある質問(Q&A形式)
兄弟だけの相続に関しては、手続きや関係性が特殊なだけに、実際の現場では多くの疑問や不安の声が寄せられます。
ここでは、そうしたよくある質問とその回答をQ&A形式でご紹介します。
Q1:兄弟のひとりが認知症です。手続きはどうなりますか?
A:成年後見制度の利用が必要になる可能性があります。
認知症などで判断能力が著しく低下している相続人がいる場合、その人の意思確認ができないため、遺産分割協議が無効になるリスクがあります。
このようなケースでは、家庭裁判所に「成年後見人」の選任を申し立てる必要があります。
成年後見人が就任すれば、その人が代わって協議に参加できるようになりますが、手続きには数ヶ月かかる場合もあるため早めの対応が必要です。
Q2:一部の兄弟が「相続放棄」したら、残りは自動的に均等に分けられますか?
A:はい、基本的には残った兄弟で再計算されて分けることになります。
たとえば、兄弟3人で相続人がいたとして、1人が相続放棄をした場合、残る2人で1/2ずつ相続することになります(1/2+1/2=100%)。
注意点
- 放棄した兄弟の子ども(甥・姪)には代襲相続は起きない
- 相続放棄は家庭裁判所への正式な手続きが必要(口約束では無効)
Q3:自筆の遺言書でも有効ですか?家庭で書いたものでも大丈夫?
A:法律の要件を満たしていれば有効ですが、注意点があります。
自筆証書遺言は、以下の条件を守っていれば法的に有効です。
- 全文を本人が自筆で書いている(PC印刷や代筆はNG)
- 日付と氏名を明記している
- 捺印がある(認印でも可)
ただし、家庭で保管していた場合には、相続発生後に家庭裁判所での「検認手続き」が必要になります。
これに数週間〜1ヶ月以上かかることもあります。
もし不安がある場合は、法務局で保管ができる「自筆証書遺言保管制度」や、確実性の高い「公正証書遺言」の利用がおすすめです。
Q4:兄弟で相続しても、相続税はかかりますか?
A:一定額を超えると課税対象になりますが、課税されないケースも多いです。
相続税は、遺産の総額が基礎控除額を超えた場合に発生します。
【基礎控除額の計算式】
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
兄弟が相続人となる場合、多くても2〜3人であることが多いため、合計で4,200万〜4,800万円以下の遺産であれば課税されないケースが多いです。
注意点
- 相続税の申告は「10ヶ月以内」に行う必要あり
- 課税対象となった場合、兄弟は他の相続人よりも税率が高くなる
兄弟は「法定相続人でも二親等」なので、基礎控除が少なく税率が高いという特徴があります。
Q5:兄弟が海外に住んでいます。手続きはどうすれば?
A:国際郵便と在外公館(大使館・領事館)を活用して進めることが可能です。
海外在住の兄弟がいる場合でも、以下のような方法で対応できます。
- 郵送で「遺産分割協議書」や「印鑑証明書に代わる書類(在留証明・署名証明)」を送付
- 日本大使館・領事館での手続きを利用
- 必要に応じて、翻訳付きの書類や公証人の証明を添える
ただし、やり取りに時間がかかりやすく、サインや書類の不備で再送になるリスクもあるため、余裕を持って進めるのが大切です。
ポイントまとめ
- 海外在住の兄弟とは在外公館などを活用して対応可能
- 認知症の兄弟がいる場合は成年後見人が必要になる
- 相続放棄は正式手続きが必要、甥姪には代襲なし
- 自筆遺言は要件を満たせば有効だが検認が必要
- 相続税は兄弟相続の場合、条件次第で高くなることも
まとめ・結論
兄弟だけで遺産を相続する。
一見すると「家族だけだし、トラブルもなくスムーズに進むはず」と思われがちですが、実は兄弟相続こそが最も複雑で揉めやすい相続形態のひとつです。
兄弟だけの相続が複雑になる理由をもう一度振り返ると…
- 法定相続分が均等であるがゆえに「不公平感」が生まれやすい
- 長年音信不通だった兄弟の存在や、連絡・書類の不備で手続きが滞る
- 「誰が代表するか」が決まらず、実務が進まない
- 実家などの不動産の扱いで、感情的対立が起きやすい
- 甥や姪が相続人になることで、関係がさらに遠く・複雑になる
これらの要素が重なると、たとえ金額が大きくなくても、手続きが長期化したり、兄弟間の関係に大きなヒビが入ることすらあります。
対策として何ができるのか?
このようなトラブルを防ぐために、今からできることはたくさんあります。
- 遺言書を作成しておく(公正証書遺言がおすすめ)
- 兄弟での相続の流れと必要書類を把握しておく
- 専門家(行政書士・司法書士・弁護士)に早めに相談する
- 生前から家族間で情報を共有し、「意識のズレ」を減らす
特に遺言書は、兄弟相続において非常に有効です。
被相続人の意思が明確になることで、残された兄弟同士が感情ではなく「ルール」に基づいて話を進めることができるからです。
最後に:家族の絆を守るための相続準備を
相続は「お金の話」でもありますが、それ以上に「人間関係の話」でもあります。
兄弟であっても、人生の歩み方や価値観はそれぞれ違います。だからこそ、相続をきっかけに関係が壊れてしまうことのないよう、準備と知識が必要なのです。
この記事を通じて、兄弟相続の実情と、必要な対策が少しでも伝わったなら幸いです。
不安な方は、ぜひ一度、専門家にご相談ください。
早めの一歩が、あなたとご家族を守ることにつながります。