兄弟のみで遺産相続する際の手続き・注意点まとめ|トラブル回避ガイド

「うちは兄弟だけだから、相続で揉めることなんてない」と思っていませんか?

たしかに、家族間であれば自然に話し合いがまとまりそうに感じるものです。しかし、現実には「兄弟だけの相続」で深刻なトラブルに発展するケースが、少なくありません。

特に、親が遺言書を残さずに亡くなった場合、「誰がどれだけ相続するか」を兄弟だけで話し合って決めなければならず、ちょっとした誤解や感情のズレから、関係が壊れてしまうこともあります。

しかも、相続に関する知識がなければ、どこから手をつけていいのかすら分からず、時間だけが過ぎてしまうケースも多く見られます。

この記事では、「兄弟だけで相続する場合にどんなトラブルが起こるのか」を詳しく解説し、
さらにその解決策として「遺言書」の重要性と、行政書士に相談するメリットについてわかりやすくお伝えしていきます。

この記事を読むことでわかること

  • 兄弟だけの相続で実際に起こるトラブルの具体例
  • 遺言書がある場合とない場合の違い
  • なぜ遺言書を行政書士に依頼すべきなのか

目次

第1章|兄弟だけの相続、実はこんなに揉めている!

兄弟だけなら、話し合いですぐにまとまるはず。

そう信じていたのに、いざ親が亡くなって相続の話になった途端、兄弟間で深刻な対立が起きてしまう。実はこうしたケース、少なくありません。

兄弟間での相続がトラブルになりやすい理由は、大きく分けて3つあります。

理由①|相続人が複数いて、全員の同意が必要

相続人が兄弟だけの場合でも、遺産を分けるには「遺産分割協議」という話し合いが必要になります。しかもこの協議、兄弟全員の合意がなければ成立しません。

1人でも納得しなければ、分割は決まりません。たとえ相続財産がわずかであっても、誰か1人が「それは不公平だ」と主張すれば、話し合いは長期化し、泥沼化することもあります。

理由②|「兄弟だから遠慮がない」ことが仇になる

兄弟は近しい存在だからこそ、感情がぶつかりやすい傾向にあります。

「昔から親に可愛がられていたのはあなただ」
「私は家のことをずっとやってきた」
といった過去のわだかまりが、一気に表面化するのです。

また、親の生前の世話や金銭的な援助などについても、「自分はこんなにやったのに、それが反映されていない」と不満を抱く人も多くいます。

理由③|現代は「兄弟でも疎遠」が当たり前の時代

かつては兄弟が近くに住み、家族ぐるみの交流も当たり前でした。


しかし、今はそれぞれが別の土地に住み、仕事や家庭で忙しく、兄弟同士のコミュニケーションがほとんどないというケースも珍しくありません。

そうした状況では、相続をきっかけに突然連絡を取り合い、重要な話し合いをすることになります。当然、信頼関係が築けていない状態で協議を行えば、衝突も起きやすくなるのです。

それでも「自分たちは大丈夫」と思っていませんか?

多くの方が、「うちは仲が良いから大丈夫」と考えています。

けれど実際にトラブルに発展した方々も、最初はそう思っていたのです。兄弟間の相続トラブルは、他人同士よりも根深く、ややこしいというのが専門家の実感です。

このあとご紹介するように、実際にあった具体的なトラブル事例を見れば、「自分たちの家も他人事ではない」と感じるはずです。

第2章|遺言書がないと、兄弟間でどんな問題が起きるのか?

親が亡くなったあと、遺言書が残されていない場合、兄弟だけで遺産をどう分けるかを決めなければなりません。このとき行われるのが「遺産分割協議」です。

しかし、この協議は思っているよりもハードルが高く、揉めごとの火種になりがちです。

全員一致じゃないとダメ!「遺産分割協議」の難しさ

遺産分割協議は、相続人全員で「遺産をどう分けるか」を話し合って決める場です。

兄弟が3人いれば3人、5人いれば5人、全員の合意が必要です。

1人でも納得していなければ、話はまとまりません。しかも、相続人の中に「疎遠な兄弟」や「頑固な性格の人」がいる場合、そもそも連絡がつかない、あるいは協議に非協力的という事態も起こり得ます。

不動産は分けづらい!「どうする?」実家の扱い

親名義の実家や土地は、相続財産の中でも特に揉めやすいポイントです。

  • 誰が住むのか?
  • 売るのか?残すのか?
  • 評価額はどうするのか?

など、決めるべきことが非常に多くあります。

一部の兄弟が「自分が住む」と言い出せば、他の兄弟との公平性に疑問が出ますし、「とりあえず売ろう」としても、売却に反対する人がいれば前に進みません。

「親の面倒を見た・見ていない」で主張がぶつかる

兄弟の中で、誰か1人が親の介護や生活費の負担を担っていた場合、その人が「寄与分」を主張して多めに遺産を受け取りたいと考えるのは自然です。

一方で、他の兄弟は「それは当然のことだったのでは?」と感じたり、「そんなに多くもらうのは不公平だ」と反発したりすることもあります。

こうした「思いの違い」や「価値観の違い」が、深い感情的な対立を生んでしまいます。

民法 第九百四条の二(寄与分)

共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
3 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。

「法定相続分」だけでは納得できないケースも

法律では、兄弟だけが相続人になる場合、原則として等分(均等)に相続することになっています。

しかし現実には、「兄が事業を継いだから多めに」「妹は親に生前援助を受けていたから減らしたい」など、家庭ごとの事情があります。

それらを遺言で事前に整理しておかないと、協議の場で感情がぶつかり合ってしまうのです。

結果:「もう兄弟とは話したくない」となる前に…

こうして話がまとまらなければ、相続手続きが進まないだけでなく、兄弟間の関係に深い溝ができてしまうことも。

実際に、「相続が原因で絶縁状態になった」「法廷で争うことになった」という事例は決して珍しくありません。相続が訴訟まで発展する割合は10%ほどと言われています。皆さんの想像よりもかなり高いのではないでしょうか?

こうした状況を避けるためにこそ、親が元気なうちに遺言書を作成しておくことが、残された家族への何よりの思いやりなのです。

第3章|具体的なトラブル事例:こんなにある!兄弟間相続の落とし穴

「兄弟での相続は、大きな財産がなければ問題にならない」と思っていませんか?

実際には、財産の多少にかかわらず兄弟間の相続トラブルは頻発しています。ここでは、行政書士の相談現場でもよく見られる、リアルな事例を5つご紹介します。

読みながら、「うちもこうなるかも」と感じたら、すぐに対策を考えましょう。

【事例①】兄が勝手に実家に住み始めた

親が亡くなったあと、兄が「ここは自分が長男だから」と言って、遺産分割もせずに実家に居座ってしまったケースです。

他の兄弟は「ちゃんと話し合いをして分けよう」と主張しても、兄は「自分が親の面倒を見てきたから当然」と話し合いを拒否します。結局、弁護士を通じて明け渡しを求める裁判にまで発展しました。

【事例②】親の面倒を見た妹と、何もしなかった兄が対立

末の妹が10年近く親の介護をしていたのに対し、兄は遠方に住んで何も協力していませんでした。

にもかかわらず、兄は法定相続分をしっかり主張してきます。

妹は「自分がどれだけ苦労したか考えてほしい」と憤り、兄は「介護は感情で語るものであって、相続とは関係ない」と主張し、議論は平行線です。兄妹はその後、一切口をきかなくなったといいます。

【事例③】形見の取り合いで絶縁状態に

相続財産は多くなかったものの、父親の時計や母親の着物など形見分けでもめるケースもあります。

「それは私が欲しかった」「あなたは昔から優先されてばかり」といった感情的なやりとりが続き、結果として、兄弟3人は相続後、連絡を絶つことになります。

金銭の問題ではなく、“思い出の価値”に差があることも争いの原因になります。

【事例④】疎遠な兄弟と連絡が取れず、手続きが進まない

長年会っていなかった兄弟に連絡を取ろうとしたものの、住所も電話番号も不明、ようやく見つけても「今さら何?」と協議に非協力的な場合です。

1人でも合意しなければ相続は進まないため、他の兄弟は手も足もでません。

こうした事例は、兄弟が全国各地に散らばっている現代では非常に多く見られます。

【事例⑤】「相続放棄したと思っていた」兄が権利を主張

その兄が突然、「やっぱり自分も相続する」と主張し、大混乱に陥ります。

兄が「相続放棄する」と口では言っていたため、残りの兄弟で話し合いを進めたものの、後になって正式な放棄手続きをしていないことが判明します。

相続放棄は、家庭裁判所で正式に手続きをしなければ効力がないため、口約束では何の効力もないのです。

「うちは大丈夫」では済まされない時代に

これらの事例に共通するのは、「兄弟だけなら、なんとかなると思っていた」という油断です。

相続は、金銭の問題であると同時に、感情の問題でもあります。「兄弟だからこそ揉める」そんな現実があることを、まずは受け止めることが大切です。

次の章では、こうしたトラブルを避けるために、「遺言書」がどれほど有効なのかを詳しく見ていきましょう。

第4章|遺言書があると、ここまで変わる!兄弟間のトラブル回避術

これまで見てきたように、兄弟だけの相続でもトラブルは数多く起こります。

しかし、それらの多くを未然に防げる方法があるのをご存じですか?

それが、「遺言書の作成」です。

親が元気なうちに遺言書を残しておけば、相続は一気にスムーズになります。ここでは、遺言書の力がどれほど大きいのかを解説します。

遺産分割協議が不要になるケースもある

遺言書には、法的な効力があります。

特に「誰に、どの財産を、どのように渡すか」が明確に書かれていれば、相続人全員による話し合い(遺産分割協議)をしなくても相続手続きができる場合があります。

つまり、「この家は長男に、この預貯金は次男に」と明記されていれば、兄弟同士で揉める必要すらなくなるのです。

感情的なトラブルを防ぐ“メッセージ”になる

遺言書には、「なぜそのように分けたのか」という親の意思や考えを記すこともできます。


「介護をしてくれた○○に多めに残したい」
「家業を継いでいる○○に不動産を引き継いでほしい」など、理由が書いてあれば、他の兄弟も納得しやすくなるのです。

たとえ完全な平等ではなくても、「お父さん(お母さん)がそう考えていたなら…」と感情的な衝突を避けられる可能性が高まります。

たとえ財産が少なくても、遺言書は役に立つ

「うちは財産が少ないから、遺言書なんて必要ない」と思われるかもしれません。


でも実際には、少ない財産こそ揉めやすい傾向にあります。

限られた財産をどう分けるか?
誰が何を受け取るのか?
そこに感情が絡んでしまうと、たちまち衝突が起こります。

そのため、財産の多寡にかかわらず、遺言書を残すことは極めて有効なのです。

公正証書遺言なら、さらに安心!

遺言書にはいくつかの種類がありますが、もっともトラブルを防ぎやすいのが、「公正証書遺言」です。

  • 専門家である公証人が作成に関わる
  • 法的ミスや形式不備がなく、無効になるリスクが少ない
  • 原本が公証役場に保管されるため、紛失・改ざんの心配もなし

兄弟が争わずに手続きを進められるようにしたいなら、やはり公正証書での遺言書作成が最も確実です。

親の「意思」を残すことが、家族を守る最善の方法

兄弟間のトラブルは、遺産そのものではなく「納得できない気持ち」から生まれます。

だからこそ、親が自分の意思をはっきりと残すことが、最も大切な備えなのです。

次章では、その遺言書を作成する際に知っておくべきポイントや、行政書士に相談するメリットについて詳しくご紹介します。

第5章|遺言書を作る前に知っておきたいポイント

「遺言書が大切なのはわかったけど、どう作ればいいのかわからない…」そんな不安を感じる方も多いと思います。

ここでは、実際に遺言書を作る前に押さえておきたい基本的なポイントをわかりやすく解説します。これを知っておくだけで、より確実で安心な遺言書を作ることができますよ。

自筆証書遺言と公正証書遺言の違いを知ろう

遺言書には大きく分けて2つの形式があります。

種類特徴メリットデメリット
自筆証書遺言自分で全文を書く手軽・費用が安いミスがあると無効になることも/発見されないリスク
公正証書遺言公証人が作成に関与し、公証役場で保管される法的に確実/改ざんや紛失の心配なし費用がかかる/手続きがやや複雑

特に、兄弟間のトラブルを確実に防ぎたい場合は、
信頼性の高い「公正証書遺言」を選ぶのが圧倒的におすすめです。

遺留分ってなに?誰かを完全に外すことはできる?

民法では、一部の相続人に「遺留分」という最低限の取り分が認められています。

兄弟姉妹にはこの遺留分はありませんが、配偶者や子どもがいる場合には注意が必要です。

たとえば、「すべてを長男に相続させる」という遺言内容にしても、遺留分を侵害している場合、他の相続人から異議を申し立てられる可能性があります。

遺留分の計算や影響についても、専門家のアドバイスを受けることが重要です。

無効になりやすい遺言書のNG例とは?

遺言書は、ちょっとしたミスで無効になるリスクがあります。

  • 日付があいまい(例:「〇年〇月」など)
  • 自署ではなくパソコンで作成されている
  • ハンコが押されていない
  • 財産の内容や相続人が不明確

こうした形式的な不備があると、せっかく書いた遺言書が無効となることもあります。だからこそ、専門家によるチェックやサポートが欠かせません。

遺言書を作るなら、行政書士への依頼がおすすめ!

行政書士は、遺言書の作成に関する知識・経験が豊富な法律の専門家です。

相談者の事情を丁寧にヒアリングしながら、以下のようなサポートをしてくれます。

  • 相続関係の整理(誰が相続人か?)
  • 財産リストの作成と分け方のアドバイス
  • 法的に有効な文言・形式での作成
  • 公正証書遺言の手続きの代行や同行

「自分で書くのは不安」「何から始めていいかわからない」という方には、行政書士への依頼がもっとも安心・確実な方法です。

一度作ったら終わり?定期的な見直しも大切です

遺言書は「一度作ったら完成」ではありません。

家族構成や財産の内容が変わった場合には、内容の見直し・書き換えも必要になります。

そのためにも、信頼できる専門家との継続的な関係を持つことが、家族の将来を守るうえで非常に大切なのです。

【まとめ】兄弟だからこそ、親が元気なうちに「遺言書の準備」を

「兄弟だけの相続だから、大きな問題にはならない」

そう思っていたのに、相続をきっかけに関係が壊れてしまった。そんなご相談は、行政書士の現場で数多く寄せられています。

兄弟同士の相続トラブルは、財産の多さではなく感情のすれ違いから生まれることがほとんどです。

  • 介護をしたのに、感謝されていない
  • 親に援助されていたのに黙っているなんてずるい
  • 長男なのに、扱いが軽すぎる

こうした積み重なった気持ちの差が、「争族(そうぞく)」という言葉のとおり、家族の絆を引き裂いてしまうのです。

トラブルを防ぐ一番の方法は、「親が意思をはっきり残しておくこと」

どれだけ家族が仲良くしていても、明確なルールや指針がなければ不安が残ります。

だからこそ、親が元気なうちに遺言書を作成しておくことが、家族への一番の思いやりです。

特に「公正証書遺言」は、法的効力が強く、形式ミスによる無効化リスクもありません。親の想いを、きちんとカタチにして家族に遺すために、行政書士への依頼がもっとも確実で安心です。

まずは「一度相談してみようかな」と思うことから

もしこの記事を読んで、少しでも「うちも準備しておいたほうがいいかも…」と感じたなら、それが家族を守る第一歩です。

遺言書の作成に関する疑問や不安、手続きの流れなど、どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。

行政書士が、あなたとご家族の想いに寄り添い、将来の安心につながるサポートをご提供します。未来のトラブルを防ぐ一通の遺言が、家族の心をつなぎます。

遺言書のご相談は、どうぞお早めに。