「遺言書を書いた方がいいとは聞くけれど、実際にどう書けばいいのかわからない…」
そんな不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
遺言書は、自分の財産を「誰に」「どのように」残すかを整理して伝えるための大切な書類です。
ただ、実際には「完成した遺言書」を見る機会はほとんどありません。
どのような形で書かれているのか、何をどこまで書けばいいのか分からず、まずは実際の例文を見ながらイメージしたいと感じる方も多いでしょう。
そこでこの記事では、まずはシンプルな遺言の例文から紹介したうえで、実際によく使われる全文サンプルや、ケース別の遺言例文まで、参考にしやすい形でまとめています。
「まずは例文を見ながら、自分ならどう書くか整理したい」
という方は、ぜひ参考にしてください。

目次
①まずは基本形|シンプルな遺言書の例文
まずは、最小限の内容で作成したシンプルな遺言の例文を紹介します。
一般的には「遺言書」という呼び方が広く使われていますが、法律上は「遺言」が正式な表現です。
この記事でも、例文内では「遺言」という表記で統一しています。
「遺言がどのような形で書かれているのか」をイメージするための基本例として参考にしてください。
遺言
遺言者 ○○○○ は、次のとおり遺言する。
第1条
遺言者は、○○銀行○○支店の普通預金口座を、妻 ○○○○ に相続させる。令和○年○月○日
住所 東京都○○区○○ ○丁目○番○号
氏名 ○○○○ 印○ ○○(自署)㊞
上記は、比較的シンプルなケースを想定した基本的な例文です。
次からは、遺言を書く前に最低限知っておきたいポイントや、実際によく使われる例文を紹介していきます。

②遺言書の例文を使う前に最低限知っておきたいポイント
自筆で作成する遺言(自筆証書遺言)は、自分で自由に書ける一方で、最低限守るべきルールがあります。
特に重要なのは、以下の4点です。
- 本文を自筆で書く
- 日付を記載する
- 氏名を自署する
- 押印する
これらが抜けていると、遺言が無効になる可能性があります。
なお、自筆証書遺言の詳しい書き方や、無効になりやすいケースについては、
「自筆証書遺言とは?」、「自筆証書遺言の書き方」で詳しく解説しています。
③実際によく使われる遺言書の例文【全文サンプル】

ここでは、比較的よく使われる内容をまとめた「全文サンプル」を紹介します。
遺言
遺言者 ○○○○ は、次のとおり遺言する。
第1条
遺言者は、東京都○○区○○所在の土地および建物を、長男 ○○○○ に相続させる。第2条
遺言者は、○○銀行○○支店の普通預金口座を、妻 ○○○○ に相続させる。第3条
遺言者は、△△証券株式会社 ○○支店の証券口座(口座番号○○○○)に保有する株式一切を、長女 ○○○○ に相続させる。第4条
遺言者は、本遺言に記載のないその他一切の財産を、妻 ○○○○ に相続させる。第5条
本遺言の遺言執行者として、長男 ○○○○ を指定する。付言事項
妻 ○○へ
これまで長年支えてくれて、本当にありがとうございました。
家族みんなで助け合いながら過ごしてもらえれば嬉しく思います。令和○年○月○日
住所 東京都○○区○○ ○丁目○番○号
氏名 ○○○○ 印
実際には、財産内容や家族構成によって記載内容は変わります。
また、不動産や預貯金などは、正式には所在地・地番・口座番号などをできるだけ正確に記載することが重要です。
次は、この全文サンプルの各項目について、意味や書き方を簡単に解説していきます。
④遺言書の各項目の意味と書き方
ここでは、先ほど紹介した全文サンプルをもとに、遺言でよく使われる項目の意味や書き方を簡単に解説します。
遺言では、単に「誰へ財産を渡したいか」だけでなく、
- 誰に何を相続させるか
- 相続人以外へ財産を残すか
- 記載漏れがあった場合をどうするか
- 誰が遺言内容を実行するか
なども整理して記載していきます。
第1条|不動産を相続させる場合
第1条
遺言者は、東京都○○区○○所在の土地および建物を、長男 ○○○○ に相続させる。
不動産を相続させる場合は、「誰に相続させるか」だけでなく、対象となる不動産を特定できるよう記載することが重要です。
実際には、所在地・地番・家屋番号などをできるだけ正確に記載します。
第2条|預貯金を書く場合
第2条
遺言者は、○○銀行○○支店の普通預金口座を、妻 ○○○○ に相続させる。
預貯金は、銀行名・支店名・口座種類などを記載しておくと、相続手続きを進めやすくなります。
複数の口座がある場合は、財産目録として整理するケースもあります。
第3条|株式・証券を書く場合
第3条
遺言者は、△△証券株式会社 ○○支店の証券口座(口座番号○○○○)に保有する株式一切を、長女 ○○○○ に相続させる。
株式や投資信託などを保有している場合は、証券会社名・支店名・口座番号などを整理して記載することがあります。
証券口座が複数ある場合は、どの口座の財産なのか区別できるよう整理しておくことが重要です。
第4条|「その他一切の財産」を書く理由
第4条
遺言者は、本遺言に記載のないその他一切の財産を、妻 ○○○○ に相続させる。
遺言作成後に新しい財産が見つかったり、記載漏れが発生したりするケースもあります。
そのため、「その他一切の財産」を誰へ相続させるか記載しておくことがあります。
第5条|遺言執行者を指定する場合
第5条
本遺言の遺言執行者として、長男 ○○○○ を指定する。
遺言執行者とは、遺言内容に沿って相続手続きを進める人のことです。
家族を指定するケースもあれば、専門家へ依頼するケースもあります。
次からは、実際によくあるケース別の遺言例文を紹介します。
⑤ケース別|遺言書の例文集
ここからは、実際によくあるケース別の遺言例文を紹介します。
家族構成や財産状況によって、遺言の書き方は変わります。
自分の状況に近い例文を参考にしながら確認してみてください。
(1)配偶者へすべての財産を残したい場合の例文

子どもがいない夫婦の場合、遺言がないと、配偶者だけでなく父母や兄弟姉妹などにも相続権が発生するケースがあります。
そのため、「配偶者へすべての財産を残したい」と考える場合は、遺言を作成しておくことが検討されます。
遺言
遺言者 ○○○○ は、次のとおり遺言する。
第1条
遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、妻 ○○○○ に相続させる。
令和○年○月○日
住所 東京都○○区○○ ○丁目○番○号
氏名 ○○○○ 印
子どもがいない夫婦では、配偶者へ財産を集中して残したいという理由から、このような内容の遺言が利用されることがあります。
(2)子どもへ財産を分ける例文
配偶者と子どもがいる家庭で、財産を分けて相続させる場合の例文です。
遺言
遺言者 ○○○○ は、次のとおり遺言する。
第1条
遺言者は、東京都○○区○○所在の土地および建物を、妻 ○○○○ に相続させる。第2条
遺言者は、○○銀行○○支店の普通預金口座を、長男 ○○○○ に相続させる。第3条
遺言者は、△△証券株式会社 ○○支店の証券口座(口座番号○○○○)に保有する株式一切を、長女 ○○○○ に相続させる。令和○年○月○日
住所 東京都○○区○○ ○丁目○番○号
氏名 ○○○○ 印
配偶者の生活を守りつつ、預貯金や株式などを子どもへ分けて相続させたい場合に利用されることがあります。
(3)再婚家庭の例文

再婚家庭では、前婚の子どもと現在の配偶者・子どもが相続人になるケースもあります。
たとえば、
- 前婚の子ども(長男)
- 現在の配偶者(妻)
- 現在の婚姻関係での子ども(長女)
がいるケースでは、遺言がないと、前婚の子どもにも相続権が発生します。
そのため、「現在の配偶者や現在の家族へ財産を残したい」と考える場合は、誰にどの財産を相続させるのかを明確に整理しておくことが重要です。
※なお、この記事は遺言の例文紹介を目的としているため、遺留分などの法的論点については考慮していません。
遺言
遺言者 ○○○○ は、次のとおり遺言する。
第1条
遺言者は、東京都○○区○○所在の土地および建物を、妻 ○○○○ に相続させる。第2条
遺言者は、○○銀行○○支店の普通預金口座を、長女 ○○○○ に相続させる。令和○年○月○日
住所 東京都○○区○○ ○丁目○番○号
氏名 ○○○○ 印
再婚家庭では、相続人同士の認識違いが起きやすいケースもあるため、早めに遺言内容を整理しておくことが検討されます。
(4)相続人以外へ財産を残す例文
相続人ではない相手へ財産を残したい場合は、「相続」ではなく「遺贈」という形で記載します。
「相続させる」は法律上の相続人に対して使う表現ですが、相続人ではない相手へ財産を残す場合は、「遺贈する」という表現になります。
内縁配偶者へ財産を残したい場合

内縁関係の場合、法律上の配偶者とは異なり、遺言がなければ原則として相続権はありません。
そのため、「長年一緒に暮らしてきた相手へ財産を残したい」と考える場合は、遺言を作成しておくことが検討されます。
遺言
遺言者 ○○○○ は、次のとおり遺言する。
第1条
遺言者は、○○銀行○○支店の普通預金口座を、内縁の妻 ○○○○ に遺贈する。令和○年○月○日
住所 東京都○○区○○ ○丁目○番○号
氏名 ○○○○ 印
友人・親族・団体などへ財産を残したい場合
お世話になった友人や親族、支援していた団体など、相続人ではない相手へ財産を残したいと考えるケースもあります。
遺言
遺言者 ○○○○ は、次のとおり遺言する。
第1条
遺言者は、○○銀行○○支店の普通預金口座を、甥 ○○○○ に遺贈する。令和○年○月○日
住所 東京都○○区○○ ○丁目○番○号
氏名 ○○○○ 印
相続人ではない相手へ財産を残したい場合は、遺言がなければ原則として財産を残すことはできません。
そのため、お世話になった友人や親族、支援していた団体などへ財産を残したい場合は、事前に遺言で整理しておくことが検討されます。
(5)介護してくれた子へ多く財産を残したい場合の例文

生前の介護や生活支援などを特に受けていた場合、「介護をしてくれた子へ多く財産を残したい」と考えるケースもあります。
たとえば、同居しながら日常的に介護をしていた場合や、通院の付き添い・生活支援などを長年続けていた場合など、他の相続人より大きな負担を担っていたケースでは、その子へ多く財産を残したいと考えることがあります。
その場合は、どの財産を誰へ相続させるのかを遺言で明確に整理しておくことが検討されます。
遺言
遺言者 ○○○○ は、次のとおり遺言する。
第1条
遺言者は、東京都○○区○○所在の土地および建物を、長女 ○○○○ に相続させる。第2条
遺言者は、○○銀行○○支店の普通預金口座を、長女 ○○○○ に相続させる。第3条
遺言者は、△△証券株式会社 ○○支店の証券口座(口座番号○○○○)に保有する株式一切を、長男 ○○○○ に相続させる。令和○年○月○日
住所 東京都○○区○○ ○丁目○番○号
氏名 ○○○○ 印
※なお、この記事は遺言の例文紹介を目的としているため、遺留分などの法的論点については考慮していません。
⑥付言事項とは?感謝の気持ちを伝える例文
付言事項(ふげんじこう)とは、遺言の最後などに記載するメッセージのことです。
法的な効力がある部分ではありませんが、
- 家族への感謝
- 財産の分け方の理由
- 「争わずに仲良くしてほしい」という想い
などを伝えるために記載されることがあります。
特に、相続割合に差をつける場合などは、気持ちや理由を書き残しておくことで、相続人同士のトラブル防止につながるケースもあります。
配偶者への感謝を伝える例文
付言事項
妻 ○○へ
長年にわたり、私を支えてくれて本当にありがとうございました。
これからも体に気をつけて、穏やかに過ごしてください。
介護への感謝を伝える例文
付言事項
長女 ○○へ
長年にわたり、生活や通院の支援をしてくれて感謝しています。
本当にありがとうございました。
家族へ「争わないでほしい」と伝える例文
付言事項
家族のみなさんへ
遺産のことで争うことなく、お互いに協力しながら過ごしてほしいと思っています。
どうかよろしくお願いします。
⑦遺言書の例文に関するよくある質問
Q:例文をそのまま使っても問題ありませんか?
例文は、遺言の形をイメージする参考として活用できます。
ただし、実際には家族構成や財産内容によって記載方法が変わるため、自分の状況に合わせて整理することが重要で
Q:財産はどこまで具体的に書く必要がありますか?
不動産であれば所在地・地番、預貯金であれば銀行名・支店名・口座情報など、できるだけ具体的に記載することが検討されます。
Q:相続人ではない相手へ財産を残すことはできますか?
可能です。
ただし、相続人ではない相手へ財産を残す場合は、「相続」ではなく「遺贈」という形で記載します。
Q:付言事項を書くのは少し恥ずかしいのですが、書いた方がいいですか?
付言事項に法的効力はありませんが、感謝の気持ちや財産の分け方の理由などを書き残しておくことで、相続人同士の認識違いを防ぎやすくなるケースがあります。
また、「ありがとう」や「仲良くしてほしい」といった短いメッセージだけでも、家族へ気持ちを伝えやすくなります。
「そもそも遺言とは何か」「どんな種類があるのか」から整理したい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
遺言書の基礎知識をまとめて解説した記事はこちら

まとめ|まずは例文を参考に、自分の考えを整理してみよう
遺言は、「誰に」「どの財産を」残したいのかを整理するための大切なものです。
ただ、実際には完成した遺言を見る機会が少なく、
- どのような形で書くのか
- どこまで書けばいいのか
- 自分のケースではどう整理するのか
イメージしづらい方も少なくありません。
まずは、この記事で紹介した例文を参考にしながら、自分ならどのように財産を残したいか整理してみてください。
また、不動産が多い場合や、再婚家庭・内縁関係など家族構成が複雑な場合、相続人以外へ財産を残したい場合などは、例文だけでは整理が難しいケースもあります。
そのような場合は、専門家へ相談しながら内容を整理することも検討してみてください。
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