遺言書は法律に沿って作るべき|公正証書と自筆の違い・専門家の活用法

「遺言書を書いたほうがいいかな」と思ってはいるけれど、
「まだ早いかな」「自分でなんとかなるかも」と、そのまま手をつけずにいる。
そんな方は意外と多いのではないでしょうか。

しかし、遺言書は法律に沿っていなければ無効になる可能性がある重要な文書です。
形式を間違えたり、書き方に不備があったりすると、せっかくの意思が反映されず、
残された家族がトラブルに巻き込まれてしまうことも。

特に最近は、自筆で書いた遺言書のリスクが注目されており、
法的に確実な「公正証書遺言」を、行政書士に依頼して作成する方法が広く選ばれています。

この記事では、「遺言書」と「法律」の関係を基礎から解説し、
自筆遺言と公正証書遺言の違いや、行政書士に依頼するメリットについて、
わかりやすくお伝えしていきます。

目次

はじめに:遺言はいつかやろうでは遅い

日本の高齢化が加速するなか、相続に関するトラブルが年々増加しています。家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割調停の件数は、毎年1万件を超えており、その背景には「遺言書の不備」や「そもそも遺言がなかった」という事例が少なくありません。

「うちは財産なんてほとんどないから大丈夫」
「家族は仲が良いから争いにはならない」

そう考えている方ほど、いざ相続の場面になるとトラブルに巻き込まれるリスクが高まります。特に、遺言書を書いたつもりで安心してしまい、実際には法的に無効だった、あるいは見つからなかったというケースは珍しくありません。

遺言は、万が一のときに家族へ思いを託す「未来への手紙」です。ですが、ただ思いを込めただけでは法的に意味を持たないこともあるのが現実です。だからこそ、「法的に有効な遺言書を、確実に残すこと」が大切なのです。

本記事では、「遺言書って必要?」「どう作るのが一番いいの?」といった疑問をお持ちの方に向けて、自筆証書遺言と公正証書遺言の違いや、法律的な注意点、専門家に依頼するメリットまでを網羅的に解説していきます。

遺言は、いつかやろうと思っていても、その「いつか」が突然訪れることもあります。
後悔しないために、今、正しい知識と判断を身につけておきましょう。

1.遺言書はなぜ法律に沿って作る必要があるのか?

遺言書は、自分の死後に財産をどのように分けるかを指定する重要な文書です。
しかし、どれだけ想いを込めて書いたとしても、「法律に適合していない」遺言書は無効になる可能性があります。

たとえば、「口頭で伝えた」「形式が整っていない」「署名や日付がない」など、
法律の要件を満たしていないケースでは、遺言書として認められず、
法定相続のルールに従って財産が分配されてしまいます。

こうしたミスは、本人に悪意がなくても簡単に起きてしまうものです。
実際、相続トラブルの多くは「遺言書がなかった」「遺言書が無効だった」「内容が不明確だった」などが原因です。

逆に、法律に沿って適切に作成された遺言書は、相続人間の争いを防ぎ、故人の意思を尊重する力を持ちます。
そのため、遺言書を作成する際は「法律を理解したうえで、正しい形式で書くこと」が何より大切なのです。

2. 遺言書の3つの種類と法律上の違い

遺言書には、法律で認められている3つの基本的な形式があります。
それぞれに特徴があり、メリット・デメリットも異なります。
ここでは、法律上の違いや注意点をわかりやすく解説します。

自筆証書遺言|手軽だけど要注意

自筆証書遺言は、全文を自分で手書きして作成する最も手軽な方法です。
費用がかからず、思い立ったときにすぐ書けるのが大きなメリットですが、法律上の形式ミスが起きやすいのが最大の弱点です。

署名・日付・押印の欠落、添付資料の不備など、細かいルールを守らないと無効になるリスクがあります。
また、家庭裁判所での「検認」が必要で、発見されない・紛失する・改ざんされる可能性もゼロではありません。

公正証書遺言|最も確実で安全な方法

公正証書遺言は、公証人が内容を確認し、公正証書として作成する方式です。
法律の専門家である公証人がチェックするため、法的に無効となる可能性が非常に低く、もっとも信頼性が高い方法とされています。

作成には2人の証人が必要で、公証役場で手続きする必要がありますが、原本は公証役場に保管されるため紛失や改ざんの心配もありません
また、家庭裁判所の検認も不要で、相続開始後すぐに効力を発揮できます。

秘密証書遺言|使われにくい理由とは?

秘密証書遺言は、内容を秘密にしたまま、作成の存在だけを公証人に証明してもらう形式です。
パソコンで作成してもOKで、内容を家族に知られたくない人にとってはメリットもあります。

しかし、内容の確認はされないため、法的に無効な内容でも作成できてしまいます。
また、保管も自己責任となるため、紛失や改ざんのリスクも高く、現実的にはあまり利用されていません。

このように、それぞれの遺言書には法律上のルールと実務上の特性があります。
確実に遺言を残したい場合は、公正証書遺言がもっともおすすめといえるでしょう。

3. 自筆遺言は本当に大丈夫?失敗しやすいポイント

「とりあえず自分で遺言書を書いてみよう」と思う方は多いですが、
自筆証書遺言には数多くの落とし穴があります。
形式が簡単に見えて、実は細かい法律上のルールを守らなければ無効になってしまうケースも少なくありません。

形式要件の不備で無効になる

自筆証書遺言は、全文を自筆で書き、日付・氏名・押印が必要です。
ところが、以下のような例はすべて無効と判断される可能性があります。

  • 日付が「2025年8月」など曖昧で特定できない
  • パソコンで打った文章を印刷しただけ
  • 押印がない、または拇印しかない
  • 署名が本名ではなく通称やあだ名になっている

このようなミスは、本人が真剣に書いたつもりでも、法律上はまったく通用しないのです。

発見されない・改ざんされるリスク

自筆遺言は、本人が保管するのが基本です。
そのため、以下のようなトラブルが起きやすくなります。

  • 死後、誰にも見つけてもらえなかった
  • 特定の相続人が意図的に破棄・隠蔽した
  • 内容を改ざんされたが証明できなかった

これらは実際の相続トラブルでもたびたび問題になります。
せっかく書いた遺言が無視される可能性すらあるということです。

家庭裁判所の「検認」が必要

自筆証書遺言は、相続発生後に家庭裁判所で「検認」という手続きを受ける必要があります。
これは「本当に本人が書いたものか?改ざんされていないか?」を確認する手続きで、相続手続きをすぐに始めることができません。

一方、公正証書遺言であればこの検認が不要で、すぐに相続手続きに入れるという大きな違いがあります。

こうしたリスクを踏まえると、自筆遺言は「簡単そうに見えて、実は難しい」方法なのです。
確実に想いを伝えるためには、より安全な選択肢を検討することが大切です。力ともに優れた公正証書遺言について、詳しく見ていきましょう。

4. 公正証書遺言なら、なぜ安心なのか?

「確実に遺言を残したい」と考えるなら、公正証書遺言が最も信頼できる方法です。
法律のプロである公証人が関与することで、形式ミスや内容の不備が起きにくく、後のトラブルを防げるのが大きな強みです。

ここでは、公正証書遺言がなぜ安心と言えるのか、その理由を具体的に見ていきましょう。

法律の専門家(公証人)が内容を確認

公正証書遺言は、公証役場に出向き、公証人に内容を伝えて作成する方式です。
公証人は法律の専門家であり、本人の意思が適切に表現されているか、法的に有効な内容かどうかをしっかりチェックします。

このため、無効になる可能性が非常に低く、自筆のような形式ミスや誤解の心配がほぼありません。

原本は公証役場で保管される

作成された公正証書遺言の原本は、公証役場で厳重に保管されます。
万が一、本人の手元の写し(正本・謄本)を紛失しても、公証役場で確認・再発行が可能です。

つまり、改ざん・隠ぺい・紛失といったトラブルが極めて起きにくいのが、公正証書遺言の大きな安心ポイントです。

検認が不要ですぐに効力を発揮できる

自筆証書遺言と違い、公正証書遺言は家庭裁判所の検認手続きが不要です。
相続発生後、すぐに手続きを始めることができるため、相続人の精神的・事務的な負担を軽減できます。

時間的ロスや手続きミスのリスクも減り、相続をスムーズに進められます。

このように、公正証書遺言は「法的に有効な遺言を確実に残したい」と考える方にとって、もっとも安心できる選択肢です。

さらに、行政書士などの専門家にサポートを依頼すれば、手続きも一層スムーズになります。るためのキーパーソン、行政書士の役割について詳しくご紹介します。

5. 公正証書遺言の作成は行政書士に依頼すべき理由

公正証書遺言は、もっとも確実で安全な遺言の形式ですが、手続きがやや複雑で時間もかかるのが現実です。
「自分ひとりで全部こなせるか不安…」という方も多いのではないでしょうか?

そんなときに頼りになるのが、行政書士です。
行政書士に依頼すれば、法律に沿った遺言書の作成を、スムーズかつ確実に進めることができます。

法律の要件を満たす文案作成が可能

行政書士は、法律に基づく文書作成を業務とする国家資格者です。
遺言書の作成にあたっては、民法の知識が求められ、細かな表現や文言にも注意が必要です。

行政書士に依頼することで、本人の意思を正確に反映しつつ、法的に有効な形に仕上げることができます。
自己流で書くのとは違い、プロの目線でチェックが入るので安心です。

公証役場とのやり取り・証人手配も丸ごと任せられる

公正証書遺言の作成には、公証役場とのやり取りや、証人の手配、必要書類の準備など、実務的な手間が多く発生します。

行政書士は、これらの手続き全体を代行してくれます。
本人は面談で意思を伝えるだけでよく、時間や精神的な負担が大幅に軽減されるのです。

結果として、より「安心」かつ「確実」な遺言に

「法律に沿っているか不安」「公証役場の対応が難しそう」
そんな不安を感じている方ほど、行政書士のサポートによって安心して遺言書を作成できるはずです。

また、家族にとっても「専門家が関わっている遺言書」という点で、信頼性が高く、争いが起きにくいというメリットもあります。

公正証書遺言を確実に残したいなら、行政書士への依頼は非常に有効な選択肢です。
費用はかかりますが、トラブルを未然に防ぎ、大切な想いを形にするためには、必要な投資とも言えるでしょう。より安全に作成したい場合にも力になってくれます。

6. 実際のトラブル事例と、専門家を活用するメリット

遺言書があるからといって、必ずしも相続がスムーズに進むとは限りません。
「遺言があるのに争いになった」「内容をめぐって親族間で対立が起きた」
そんなケースも現実には多く見られます。

ここでは、実際のトラブル事例を紹介しつつ、専門家を関与させることの重要性を解説します。

実例①:形式ミスで無効になった自筆遺言

ある高齢男性が、自筆で遺言書を作成し、自宅の机に保管していました。
死後、その遺言書が発見されたものの、日付が「2025年8月」とだけ書かれており、法律上は無効と判断されました。

結果、本人の希望していた財産分配は実現されず、法定相続通りに分割。
一部の家族が「納得いかない」と主張し、調停にまで発展しました。

実例②:遺言の内容が曖昧で相続人同士が対立

別の事例では、「長男に感謝を込めて多めに財産を渡す」と書かれた遺言が問題に。
「多め」とは具体的にいくらか?が明記されておらず、相続人間で解釈が分かれ、争いが発生。

最終的には弁護士を立てた交渉に発展し、家族関係が完全に崩れてしまいました。

実例③:保管場所がわからず、遺言が見つからなかった

ある女性が、生前に自筆で遺言書を作成していたものの、保管場所を誰にも伝えていなかったため、
死亡後に家族がどれだけ探しても見つからず、遺言がないものとして相続が開始されました。

その後、数年後に偶然発見されたものの、すでに分割協議が完了しており、やり直しができない状況に。
「ちゃんと残してあったのに…」という悔しさと後悔が家族の中で長く尾を引く結果となりました。

専門家が関与することで、こうしたトラブルは防げる

行政書士や弁護士などの専門家が遺言作成に関与すれば、
法律に合った明確な表現、正しい形式、適切な保管方法まで整えられます。

また、第三者として中立な立場で介入することにより、感情的なもつれも最小限に抑えることができます。

生前から相談することで、相続全体の対策が可能に

遺言書の作成を通じて、専門家とやり取りする中で、相続税対策や贈与の活用など、より広い視点でのアドバイスが得られることもあります。

早めに準備を始めておくことで、家族全体が安心できる相続対策へとつながっていくのです。

「自分の想いを正しく伝えたい」「家族に余計な負担をかけたくない」
そう願うのであれば、専門家の力を借りることは、最も賢明な判断といえるでしょう。

7. よくある質問(Q&A形式)

遺言書の作成を考え始めると、さまざまな疑問や不安が出てくるものです。
ここでは、よくある質問に対して、わかりやすくお答えします。

Q1. 遺言書はあとから変更できますか?

はい、遺言書は何度でも変更可能です。
新しく作成した遺言書が、古い遺言書よりも優先されます(ただし、日付が明確であることが必要です)。

公正証書遺言も、自筆証書遺言も変更は可能ですが、前の遺言と矛盾しないよう整理しておくことが大切です。

Q2. 家族に内緒で遺言書を作ってもいいですか?

はい、遺言書は本人の意思に基づいて自由に作成できます
公正証書遺言であっても、行政書士や公証人には守秘義務があるため、家族に知られずに作成することも可能です。

ただし、あまりに家族と情報を共有せずに進めてしまうと、死後にトラブルの原因になることもあるため注意が必要です。

Q3. 遺言書はどこに保管すればいいですか?

自筆証書遺言の場合、家庭裁判所の「検認」が必要なので、法務局での保管制度(自筆証書遺言保管制度)を利用するのがおすすめです。
これにより、紛失や改ざんのリスクを減らすことができます。

一方、公正証書遺言は、公証役場で原本を保管してくれるため安心です。
写し(正本・謄本)は自宅や信頼できる家族に渡しておくとよいでしょう。

Q4. 公正証書遺言の作成費用はどのくらい?

費用は、遺言の内容(財産の金額など)によって異なりますが、
数万円〜10万円前後が一般的です(別途、行政書士への報酬がかかる場合もあります)。

費用はかかりますが、法的な確実性と安全性を考えれば、十分に価値のある投資と言えるでしょう。

このように、遺言書には知っておくべきポイントがいくつもあります。
迷ったときは、一人で悩まず、専門家に相談してみることが最善の一歩です。

8. まとめ|確実な遺言を残すなら、法律と専門家の力を借りよう

遺言書は、人生の集大成とも言える大切な意思表示です。
しかし、その想いを正しく、確実に届けるためには「法律に沿った形式」で作成することが不可欠です。

手軽に始められる自筆証書遺言には、形式ミスや保管上のリスク、無効になる可能性があることを忘れてはなりません。
一方で、公正証書遺言であれば、法律の専門家である公証人が関与し、内容も形式も法的に保証されるため、安心感が大きく異なります。

さらに、行政書士に依頼すれば、

  • 法律に合った文案の作成
  • 公証役場とのやり取りの代行
  • 証人の手配や必要書類の準備まで一括サポート

など、自分ひとりでは難しい手続きもスムーズに進めることができます。

遺言書は、「いつかやろう」では遅いものです。
思い立った今こそが、最も適切なタイミング。
大切な人たちのために、そして自分自身が安心して人生を締めくくるために、専門家のサポートを受けながら、公正証書遺言の作成を進めてみてはいかがでしょうか。