遺言書を作成するとき、
- 「認印でも大丈夫?」
- 「実印じゃないと無効?」
- 「シャチハタは使える?」
- 「押印を忘れたらどうなる?」
など、印鑑について疑問を持つ方は少なくありません。
特に自筆証書遺言(遺言者が自分で全文を書く遺言)では、押印は法律上の重要な要件とされており、印鑑の種類や押し方によっては、遺言が無効と判断される可能性があります。
もっとも、自筆証書遺言に使える印鑑には一定の幅があり、認印でも有効とされるケースがあります。一方で、「法律上は有効」であっても、後から有効性が争われにくい形で作成することも重要です。
そこでこの記事では、
- 自筆証書遺言に使える印鑑の種類
- 実印・認印・シャチハタの違い
- 押印ミスによる無効リスク
- 印鑑を使う際の注意点
などをわかりやすく解説します。

目次
①自筆証書遺言の印鑑は認印でもいい?
自筆証書遺言では、実印でなければならないという決まりはありません。
そのため、認印でも法律上は有効と考えられています。
もっとも、「法律上有効であること」と、「本人が作成した遺言であることを後から説明しやすいこと」は別の問題です。
そのため、自筆証書遺言では、認印でも有効と考えられる一方で、IT行政書士事務所としては、本人性を確認しやすい実印の使用をおすすめしています。
特に、実印は市区町村へ登録された印鑑であり、印鑑証明書(登録された印鑑であることを証明する書類)と照合できるため、本人性を確認しやすいという特徴があります。
②自筆証書遺言では押印が必要
自筆証書遺言では、印鑑を押すこと(押印)が法律上の要件とされています。
そのため、本文を書いて署名していても、押印がなければ無効になる可能性があります。
ここでは、自筆証書遺言における押印の意味や、なぜ押印が必要なのかを解説します。
押印は法律上の要件

民法では、自筆証書遺言について、「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と定められています。
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
つまり、自筆証書遺言では、
- 本文を自筆で書く
- 日付を書く
- 氏名を書く
- 押印する
という4つが基本的な要件になります。
このうち1つでも欠けていると、遺言として認められない可能性があります。
なお、自筆証書遺言の基本的なルールや無効になるケースについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
自筆証書遺言とは?書き方・無効になるケース
署名だけでは足りない
「自分で署名していれば十分では?」と思われることもありますが、自筆証書遺言では署名だけでは足りません。
裁判例では、押印には、
- 遺言者本人が作成したことを示す
- 遺言として完成させる
という意味があるとされています。
もっとも、押印がなくても例外的に有効と判断された裁判例もあります。
たとえば、日本に帰化した外国人が、押印の代わりにサインをしていたケースでは、その国では重要書類にサインをする慣行があることなどを踏まえ、遺言が有効と判断されました。
ただし、これは非常に特殊な事例です。
日本では、重要な文書に署名と押印を行う慣行があるため、一般的には押印が必要と考えておくべきでしょう。
押印漏れは無効になる可能性がある
自筆証書遺言では、押印は法律上の要件とされています。
そのため、押印がない場合は、自筆証書遺言として必要な要件を満たさず、原則として無効となります。
特に、自筆証書遺言では、本文を書き終えたことで安心してしまい、最後の押印を忘れるケースがあります。
また、封筒には印鑑を押していても、遺言書本文への押印が漏れていたり、書き直しや修正をした際に必要な押印をしていなかったりするケースもあります。
自筆証書遺言では、内容だけでなく形式面(法律で定められた書き方)も重要になるため、押印漏れには注意が必要です。
実際の書き方や記載例については、こちらの記事も参考にしてください。
自筆証書遺言の書き方|自分で作成する方法・例文・無効になるケースを解説
③自筆証書遺言で使用される印鑑の種類
自筆証書遺言では、実印以外にもさまざまな印鑑が使用されることがあります。
もっとも、「法律上有効とされること」と、「自筆証書遺言に適していること」は必ずしも同じではありません。
たとえば、認印でも有効と考えられる一方で、本人が使用していたことを後から確認しやすい実印が推奨されるケースもあります。
また、裁判例では、拇印(親指の指印)が有効と判断されたケースもある一方、花押(かおう)は押印として認められていません。
ここでは、自筆証書遺言で問題になりやすい印鑑の種類について解説します。
実印
実印とは、市区町村へ印鑑登録された印鑑のことです。
自筆証書遺言では、実印でなければならないという決まりはありません。
もっとも、実印は印鑑証明書(登録された印鑑であることを証明する書類)と照合できるため、本人が使用していた印鑑であることを確認しやすいという特徴があります。
そのため、自筆証書遺言では、本人性を確認しやすい印鑑として、実印の使用が推奨されます。
認印
認印でも、自筆証書遺言の押印としては有効と考えられています。
もっとも、認印は広く使われている反面、同じような印鑑が存在しやすいという特徴があります。
そのため、自筆証書遺言に使用する場合は、普段から継続して使用している印鑑を使うことで、「本人が普段使用していた印鑑である」と説明しやすくなる場合があります。
拇印・指印
拇印(親指に朱肉をつけて押す指印)や指印についても、裁判例では有効と判断されています。
もっとも、本人の指印であることを後から確認しにくい点には注意が必要です。
また、印影が毎回変わりやすく、安定しないという特徴もあります。
そのため、自筆証書遺言では、一般的には印鑑を使用する方が望ましいでしょう。
花押は押印として認められない
花押(かおう)とは、昔の署名のように使われていた記号・サインのことです。
現在でも、一部の芸術家や著名人などが独自のマークとして使用することがあります。
もっとも、自筆証書遺言では、花押は押印の代わりとして認められていません。
裁判例でも、「花押を書くことは、印章による押印と同視できない」と判断されています。
そのため、自筆証書遺言では、一般的な印鑑を使用する必要があります。
シャチハタは避けた方がよい
シャチハタ(インクが内蔵されたスタンプ式印鑑)については、法律上明確に無効とされているわけではありません。
なお、「シャチハタ」は本来メーカー名であり、ホッチキス(ステープラーの商品名)と同じように、一般的にはインク浸透印全体を指して使われています。
一般的な印鑑は、朱肉をつけて押印しますが、シャチハタタイプの印鑑は、文字部分のゴムに小さな穴が開いており、内部にためられたインクが少しずつ染み出す構造になっています。

もっとも、自筆証書遺言では、シャチハタは一般的に推奨されていません。
その理由として、インク式であるため印影が変化・劣化する可能性があることや、重要書類に用いる印鑑としては本人確認の意味合いが弱く見られる可能性があるためです。
また、裁判例では「墨、朱肉等をつけて押捺(押印)する」と表現されており、インク式印鑑について明確には触れられていません。
そのため、自筆証書遺言では、できるだけ朱肉を使う一般的な印鑑を使用することが望ましいでしょう。
④自筆証書遺言で印鑑ミスするとどうなる?
自筆証書遺言では、押印も法律上の要件のひとつです。
そのため、押印に不備があると、自筆証書遺言としての有効性が問題になることがあります。
特に、自筆証書遺言は自分で作成できる反面、形式面(法律で定められた書き方)のミスが起こりやすいため注意が必要です。
ここでは、自筆証書遺言で問題になりやすい押印ミスについて解説します。
押印漏れ

自筆証書遺言では、押印がない場合、法律上の要件を満たさず、原則として無効となります。
特に、本文を書き終えたことで安心してしまい、最後の押印を忘れるケースがあります。
また、封筒には印鑑を押していても、遺言書本文への押印が漏れているケースもあります。
自筆証書遺言では、「内容を書けばよい」というものではなく、法律で定められた形式を満たす必要があります。
印影がかすれている場合
押印されていても、印影(押した印鑑の跡)が極端に薄かったり、欠けていたりすると、印鑑の種類や本人性が分かりにくくなる場合があります。
もっとも、多少かすれているだけで直ちに無効になるわけではありません。
ただし、自筆証書遺言では、後から本人が押印したものか確認されることもあるため、できるだけ鮮明に押印しておくことが望ましいでしょう。
違う印鑑を押した場合
自筆証書遺言では、本文中の署名と異なる名前の印鑑を押した場合、本人が押印したものか問題になることがあります。
たとえば、
- 旧姓の印鑑
- 家族名義の印鑑
- 全く別人名義の印鑑
などを使用すると、押印として認められるか争いになる可能性があります。
そのため、自筆証書遺言では、氏名と整合する印鑑を使用することが重要です。
訂正時の押印ミス
自筆証書遺言では、本文を書き直したり修正したりする場合にも、法律上のルールがあります。
たとえば、単に二重線で消しただけでは、適切な訂正として認められない可能性があります。
また、訂正箇所に必要な押印を忘れるケースも少なくありません。
自筆証書遺言では、修正方法にも細かなルールがあるため、訂正する際には注意が必要です。
実際の書き方や修正方法については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
訂正方法を間違えると無効になる可能性がある
⑤自筆証書遺言では押印以外の要件にも注意
自筆証書遺言では、押印だけでなく、日付・署名・自筆による作成など、法律で定められた要件を満たす必要があります。
たとえ印鑑に問題がなくても、日付の記載方法が曖昧だったり、署名が漏れていたりすると、自筆証書遺言として必要な要件を満たさず、無効となる可能性があります。
また、書き直しや訂正の方法にも法律上のルールがあるため、修正方法を誤ると、その訂正自体が認められないケースもあります。
自筆証書遺言では、内容だけでなく形式面(法律で定められた書き方)も重要になるため、押印だけでなく全体の作成方法にも注意が必要です。
実際の書き方や修正方法については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
自筆証書遺言の書き方|自分で作成する方法・例文・無効になるケースを解説

⑥よくある質問(FAQ)
Q:自筆証書遺言の印鑑は認印でも有効ですか?
はい。自筆証書遺言では、実印でなければならないという決まりはなく、認印でも法律上は有効と考えられています。
もっとも、IT行政書士事務所としては、本人性を確認しやすい実印の使用をおすすめしています。
Q:自筆証書遺言にシャチハタは使えますか?
シャチハタ(インクが内蔵されたスタンプ式印鑑)について、法律上明確に無効とされているわけではありません。
ただし、印影の変化や劣化の可能性があることなどから、自筆証書遺言では一般的に推奨されていません。
そのため、できるだけ朱肉を使う一般的な印鑑を使用することが望ましいでしょう。
Q:押印を忘れた自筆証書遺言は有効ですか?
自筆証書遺言では、押印は法律上の要件です。
そのため、押印がない場合は、自筆証書遺言として必要な要件を満たさず、原則として無効となります。
Q:実印でないと自筆証書遺言は作成できませんか?
いいえ。自筆証書遺言は、実印でなくても作成できます。
認印でも法律上は有効と考えられていますが、本人性を確認しやすいという観点からは、実印の使用が推奨されます。
Q:拇印や指印でも有効ですか?
はい。裁判例では、拇印(親指の指印)や指印について、有効と判断されたケースがあります。
もっとも、本人の指印であることを後から確認しにくいため、一般的には印鑑を使用する方が望ましいでしょう。
Q:花押でも押印の代わりになりますか?
いいえ。花押(かおう)は、自筆証書遺言の押印として認められていません。
裁判例でも、花押は印章による押印と同視できないと判断されています。
Q:訂正するときも押印は必要ですか?
はい。自筆証書遺言では、訂正方法にも法律上のルールがあります。
訂正箇所への押印が必要になるケースもあるため、単純に書き直しただけでは適切な修正として認められない場合があります。
まとめ|自筆証書遺言では印鑑選びと押印ミスに注意
自筆証書遺言では、押印が法律上の要件とされています。
そのため、押印が漏れている場合はもちろん、使用する印鑑の種類によっては、後から本人性が問題になるケースもあります。
もっとも、法律上は認印でも有効と考えられており、必ずしも実印でなければならないわけではありません。
ただし、IT行政書士事務所としては、本人性を確認しやすいという観点から、実印の使用をおすすめしています。
また、シャチハタのようなインク浸透印は、法律上明確に否定されているわけではないものの、一般的には避けた方がよいでしょう。
自筆証書遺言では、内容だけでなく、押印を含めた形式面も重要になります。
そのため、印鑑の種類や押印方法を正しく理解したうえで、法律上の要件を満たす形で作成することが大切です。
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