自筆証書遺言がある場合の相続手続き|開封前の注意点と検認の流れ

自筆証書遺言を見つけたときに、すぐ開封せず注意するよう呼びかける人物のイメージ

親が亡くなったあと、自宅から「遺言書」と書かれた、糊付けされた封筒が見つかることがあります。

大切な方を亡くした直後は、気持ちの整理がつかないまま、目の前の手続きを進めなければならず、不安になるのは当然です。遺言書を見つけたときも、「すぐに中を確認したほうがよいのでは」と焦ってしまうかもしれません。

ただ、このような場合は、まず開封せず、見つけた状態のまま大切に保管してください。自宅で保管されていた自筆証書遺言は、原則として家庭裁判所の検認が必要です。

この記事では、遺言書を見つけた直後の対応から、検認、その後の相続手続きまでを順番に解説します。すでに開封してしまった場合や、法務局に保管されている場合、遺言書が複数見つかった場合についても取り上げます。

親の自宅で封をされた遺言書らしい封筒を見つけ、開封せずに確認する子ども
封印された遺言書を見つけた場合は、すぐに開封せず、遺言書の種類や必要な手続きを確認することが大切です。

目次

①自筆証書遺言を見つけても、すぐに開封してはいけない

親の自宅を整理しているときに、「遺言書」と書かれた封筒が見つかると、内容を早く確かめたいと思うのは自然なことです。相続人や財産の分け方について、何か大切なことが書かれているのではないかと、気持ちが落ち着かなくなることもあるでしょう。

ただし、封筒が糊付けされている場合は、その場で開封しないでください。まずは見つけた状態のまま保管し、家庭裁判所での検認が必要かを確認します。

糊付けされた遺言書はそのまま保管する

封筒が糊付けされている自筆証書遺言は、家庭裁判所で検認を受ける前に、相続人が自分の判断で開封しないようにしましょう。

遺言書を見つけたら、次のような行動も避けることが大切です。

  • 封筒や遺言書に書き込みをする
  • 遺言書を折り直したり、貼り直したりする
  • 一部だけを切り取る
  • コピーを取るために無理に開封する
  • 他の書類と一緒に処分する

遺言書は、見つけたときの状態を保つことが重要です。紛失や汚損を防ぐため、別の封筒やクリアファイルなどに入れ、ほかの相続関係書類と分けて保管しておくとよいでしょう。

また、遺言書を見つけたことは、ほかの相続人にも共有しておくと安心です。一人だけで保管すると、後になって「いつ見つけたのか」「誰が保管していたのか」と疑問を持たれる可能性があるためです。

すでに開封してしまった場合の対応

遺言書だと気づかずに開封してしまったり、急いで内容を確認してしまったりすることもあります。

その場合でも、開封したことだけを理由に、遺言書が直ちに無効になるとは限りません。慌てて捨てたり、元の状態に戻そうとして糊付けし直したりせず、そのまま保管してください。

開封後は、遺言書や封筒に手を加えず、できるだけ早く検認の手続きを確認します。誰が、いつ、どのような状況で開封したのかを簡単に記録しておくと、その後の説明にも役立ちます。

大切なのは、「開けてしまったから、もう遅い」と考えないことです。これ以上状態を変えず、落ち着いて次の手続きへ進みましょう。

②自筆証書遺言には原則として家庭裁判所の検認が必要

家庭裁判所で職員が封筒入りの自筆証書遺言を確認し、相続人が説明を受けている様子
自筆証書遺言の検認は、家庭裁判所で遺言書の状態や内容を確認する正式な手続きです。

自宅で見つかった自筆証書遺言は、原則として家庭裁判所の検認を受ける必要があります。

「検認」と聞くと、遺言書が有効かどうかを裁判所が判断する手続きのように感じるかもしれません。しかし、検認の目的はそれとは異なります。

まずは検認の意味を理解し、そのうえで申立ての準備を進めましょう。

検認のルール|有効・無効を判断する手続きではない

検認は、家庭裁判所が遺言書の形状や内容を確認し、その状態を明らかにするための手続きです。

検認の期日には、家庭裁判所で遺言書を確認し、相続人に対して遺言書の存在や内容が知らされます。これにより、検認後に遺言書が書き換えられたり、内容をめぐって認識が食い違ったりすることを防ぎやすくなります。

ただし、検認を受けたからといって、その遺言書が法律上有効であると確定するわけではありません。

たとえば、日付がない、署名や押印に問題がある、本人が書いたものか疑いがあるといった事情があれば、検認後も有効性が問題になることがあります。

反対に、検認前に封筒を開けてしまったからといって、それだけで直ちに遺言書が無効になるわけでもありません。

検認は、遺言書の有効・無効を決める手続きではなく、遺言書の状態と内容を確認するための手続きだと理解しておきましょう。

検認の手続き|申立人・申立先・必要書類

検認の申立ては、遺言書を保管していた人や、遺言書を発見した相続人などが行います。

申立先は、原則として、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

申立ての際には、一般的に次のような書類を準備します。

  • 検認申立書
  • 遺言者の出生から死亡までの戸籍
  • 相続人を確認するための戸籍
  • 見つかった遺言書
  • そのほか家庭裁判所から求められる書類

必要となる戸籍は、相続人の構成によって異なります。親の出生から死亡までの戸籍だけでなく、兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる場合には、さらに多くの戸籍が必要になることもあります。

申立て後は、家庭裁判所から相続人へ検認期日の案内が送られます。期日には遺言書を持参し、家庭裁判所で開封や内容の確認が行われます。

なお、検認が終わるまで何もできないわけではありません。戸籍の収集、相続人の確認、預貯金や不動産、証券、借金などの財産調査は並行して進められます。

一方で、遺言書を使って銀行口座や不動産などの名義変更を進める場合は、検認後に発行される検認済証明書が必要になることがあります。まずは検認の申立てを進めながら、その後の相続手続きに必要な資料も集めておくと、手続きを止めずに進めやすくなります。

関連記事:遺言書の検認とは?家庭裁判所での流れ・必要書類・開封してしまった場合を解説

③法務局で保管された自筆証書遺言は検認が不要

自宅保管と法務局保管の自筆証書遺言について、検認手続きの違いを確認する相続人
自宅で保管されていた自筆証書遺言は原則として検認が必要ですが、法務局の保管制度を利用した遺言書は検認が不要です。

自筆証書遺言であっても、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合は、家庭裁判所の検認は必要ありません。

そのため、自宅で遺言書らしい書類や関連資料を見つけたときは、すぐに検認を申し立てるのではなく、法務局に保管されている遺言書かどうかも確認しましょう。

法務局の保管制度を利用していた痕跡を確認する

亡くなった方の書類の中に、次のようなものがないか確認します。

  • 法務局から交付された保管証
  • 自筆証書遺言書保管制度に関する案内
  • 法務局へ提出した申請書の控え
  • 遺言書の保管番号が分かる書類
  • 法務局から届いた通知
  • エンディングノートや手帳に残されたメモ

これらが見つかった場合は、法務局で自筆証書遺言を保管している可能性があります。

ただし、関連書類が見つからないからといって、法務局に遺言書がないとは限りません。亡くなった方が家族に知らせずに保管制度を利用していたことも考えられるため、必要に応じて相続人が法務局へ確認します。

また、自宅で見つかった封筒の中に「遺言書」と書かれていても、それだけでは法務局保管か自宅保管かを判断できません。封筒を開けず、周囲の書類や保管証などから確認しましょう。

相続人が法務局で保管の有無を確認する

相続人は、亡くなった方の自筆証書遺言が法務局に保管されているかどうかを確認できます。

まず、法務局に対して遺言書の保管の有無を確認する証明書を請求します。保管されていることが分かった場合は、遺言書の内容を確認するための遺言書情報証明書を請求します。

請求の際には、一般的に次のような書類が必要です。

  • 亡くなった方の死亡を確認できる戸籍
  • 請求する人が相続人であることを確認できる戸籍
  • 請求する人の本人確認書類
  • 所定の請求書
  • 手数料

必要書類は、誰が請求するかや相続関係によって異なることがあります。事前に法務局へ確認しておくと安心です。

遺言書情報証明書が交付されると、法務局からほかの相続人などへ、遺言書が保管されていることが通知されます。法務局保管の自筆証書遺言は検認が不要なため、証明書を取得した後は、その内容を確認して相続手続きを進めます。

なお、自宅から自筆証書遺言が見つからなくても、遺言書がないとは限りません。法務局に保管された自筆証書遺言のほか、公正証書遺言が作成されている可能性もあります。遺言書の有無が分からない場合は、法務局と公証役場の両方を確認しましょう。

自宅に自筆証書遺言が見つからなくても、公正証書遺言が作成されている可能性があります。公証役場での確認方法や、公正証書遺言がある場合の相続手続きについては、「公正証書遺言がある場合の相続手続き」で解説しています。

④検認後は遺言書の内容に沿って相続手続きを進める

自筆証書遺言の検認後に、相続人確認、財産調査、預貯金・証券手続き、不動産名義変更へ進む流れ
検認後は、相続人と財産を確認し、預貯金・証券口座の手続きや不動産の名義変更を順番に進めます。

家庭裁判所で検認が終わったら、遺言書の内容を確認し、誰がどの財産を受け取るのかを整理します。

ただし、遺言書があるからといって、その内容だけを見てすぐに預金の払戻しや名義変更を始めるのは避けましょう。遺言執行者の有無や相続人、現在の財産状況を確認したうえで、順番に手続きを進めることが大切です。

遺言執行者と財産を受け取る人を確認する

まず、遺言書に遺言執行者が指定されているかを確認します。

遺言執行者は、遺言書の内容を実現するために、財産の管理や名義変更などを進める人です。遺言執行者が指定されている場合は、相続人がそれぞれ独自に手続きを始めるのではなく、遺言執行者と連絡を取りながら進めます。

あわせて、遺言書に書かれている財産と、その財産を受け取る人を整理します。相続人以外の人へ財産を渡す内容がある場合や、財産の特定が難しい場合は、手続きが複雑になることがあります。

なお、遺言執行者が指定されていない場合の対応は、後ほどよくある質問で説明します。

相続人と相続財産を調査する

遺言書があっても、戸籍を集めて法定相続人を確認し、亡くなった方の財産と負債を調べる必要があります。

相続人調査では、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍などを集め、誰が法定相続人になるのかを確認します。

財産調査では、主に次のようなものを確認します。

  • 預貯金
  • 株式や投資信託などの有価証券
  • 土地や建物
  • 自動車
  • 生命保険
  • 借金やローン
  • その他の権利や負債

遺言書を作成してから亡くなるまでに、財産を売却したり、新たな口座を開設したりしていることもあります。そのため、遺言書に書かれた内容と、亡くなった時点の財産状況が一致しているとは限りません。

遺言書と調査結果を照らし合わせ、どの財産について、誰が、どの手続きを行うのかを整理しましょう。

預貯金・証券・不動産などの相続手続きを進める

遺言書の内容と現在の財産状況を確認したら、財産ごとに手続きを進めます。

銀行口座では、解約や払戻し、名義変更などを行います。証券口座では、相続人名義の口座への移管や名義変更が必要になることがあります。

金融機関によって必要書類や手続き方法が異なるため、事前に窓口へ確認しておくとスムーズです。

不動産については、相続登記を行い、所有者の名義を変更します。不動産登記は司法書士の専門分野となるため、必要に応じて司法書士と連携して進めます。

遺言書があっても、相続手続きは財産ごとに必要です。すべてを一度に終わらせようとせず、まず相続人と財産の全体像を整理し、その後に必要な手続きを一つずつ進めましょう。

⑤遺言書に書かれていない遺産がある場合の対応

財産調査を進めると、遺言書に書かれていない預貯金や証券、不動産などが見つかることがあります。

この場合、すぐに遺産分割協議(相続人全員で、誰がどの財産を取得するかを話し合う手続き)が必要になるとは限りません。まずは遺言書全体を確認し、記載のない財産の取得者まで定められていないかを確認します。取得者が定められていない場合は、その財産について相続人全員で遺産分割協議を行います。

記載のない財産について相続人全員で話し合う

たとえば、遺言書には自宅不動産と特定の預金口座だけが書かれていたものの、後から別の銀行口座や証券口座が見つかることがあります。

遺言書に、その財産を誰が取得するかについて定めがなければ、相続人全員で分け方を決めます。相続人の一部だけで決めても、原則として有効な遺産分割にはなりません。

ただし、遺言書に次のような包括的な条項がある場合は、扱いが異なることがあります。

本遺言書に記載のない遺言者の有する一切の財産は、長男〇〇に相続させる。

このような記載があれば、個別に書かれていない財産についても、指定された人が相続する内容と読める場合があります。

もっとも、似た表現があるからといって、必ず同じ結論になるとは限りません。遺言書全体の内容や財産の特定方法、ほかの条項との関係、有効性を含めて確認する必要があります。。

合意内容を遺産分割協議書にまとめる

遺言書に書かれていない財産について相続人全員で合意できたら、その内容を遺産分割協議書にまとめます。

遺産分割協議書には、どの財産を誰が取得するのかを具体的に記載し、相続人全員が署名・押印します。

作成した遺産分割協議書は、銀行口座の解約や払戻し、証券口座の移管、不動産の相続登記などで提出を求められることがあります。

相続人間で合意ができている場合は、行政書士が戸籍や財産調査の結果をもとに、合意内容を反映した遺産分割協議書を作成できます。

相続人間で争いがある場合は弁護士へ相談する

記載のない財産の分け方について意見がまとまらない場合や、そもそも包括条項がその財産に及ぶかについて対立している場合は、当事者だけで無理に進めないことが大切です。

行政書士は、すでに合意した内容を文書にまとめることはできますが、相続人同士の交渉や紛争の代理はできません。

分け方をめぐる対立や遺言内容の解釈について争いがある場合は、弁護士へ相談し、必要に応じて遺産分割調停なども含めて対応を検討します。

⑥自筆証書遺言がある場合も期限のある手続きに注意する

自筆証書遺言が見つかると、まず検認のことに意識が向きやすくなります。

しかし、検認を進めている間も、相続放棄や準確定申告、相続税申告などの期限は止まりません。遺言書の確認と並行して、期限のある手続きがないかも早めに整理しておくことが大切です。

相続放棄・準確定申告・相続税申告の期限を確認する

相続放棄は、原則として、自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てます。

遺言書に財産を受け取る内容が書かれていても、借金や保証債務が見つかることがあります。相続放棄を検討する可能性がある場合は、預貯金や不動産だけでなく、負債も含めて早めに調査しましょう。

また、亡くなった方に確定申告が必要な所得があった場合は、相続人が準確定申告を行うことがあります。準確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。

相続税の申告と納付が必要な場合は、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に手続きを行います。

遺言書があるかどうかや、検認が終わっているかどうかにかかわらず、これらの期限は進んでいきます。財産の全体像が分からない、相続税がかかるか判断できない、相続放棄を検討しているといった場合は、期限を迎える前に専門家へ相談しましょう。

なお、遺言によって財産を受け取ることと、相続放棄や遺贈の扱いとの関係は、状況によって判断が複雑になることがあります。この記事では深入りしませんが、放棄を検討している場合は、自己判断で財産を処分したり、手続きを進めたりしないことが大切です。

検認と並行して進められる準備もある

検認が終わるまで、すべての相続手続きを止める必要はありません。

戸籍を集めて相続人を確認することや、通帳、不動産関係書類、証券会社からの通知、借入れに関する資料を集めて財産と負債を調べることは、検認前でも進められます。

一方で、自筆証書遺言を使って銀行口座の払戻しや不動産の名義変更などを行う場合は、原則として検認後に進めます。

検認の申立てを待っている間に相続人調査と財産調査を進めておけば、検認後の手続きへ移りやすくなります。検認だけに集中するのではなく、期限と準備を並行して管理することが大切です。

相続放棄、準確定申告、相続税申告、預貯金や不動産の名義変更など、相続手続き全体の順番と期限については、「相続手続きの流れと手順」で詳しく解説しています。

⑦自筆証書遺言が見つかったときに行政書士へ相談できること

行政書士が相続関係の書類を整理し、弁護士・税理士・司法書士と連携して対応する様子
行政書士は相続全体の状況を整理し、必要に応じて弁護士・税理士・司法書士などの専門家へつなぎます。

自筆証書遺言が見つかった後は、検認だけでなく、戸籍の収集、相続人の確認、財産調査、金融機関への手続きなど、さまざまな作業が続きます。

それぞれの手続きを自分で進めることもできますが、相続人が多い場合や、財産の全体像が分からない場合は、途中で手が止まってしまうこともあります。

このようなときは、まず行政書士に相談し、相続全体の状況を整理する方法があります。

戸籍調査・相続人調査・財産調査を依頼する

相続手続きを進めるには、誰が相続人になるのかを戸籍で確認する必要があります。

亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を集めるほか、相続人の構成によっては、さらに多くの戸籍が必要になります。転籍や婚姻などで本籍地が変わっていると、複数の市区町村から戸籍を取り寄せなければならないこともあります。

行政書士は、必要な戸籍を収集し、法定相続人を整理する相続人調査を支援できます。

また、預貯金、証券、不動産、保険、借金などの資料を整理し、相続財産の全体像を確認する財産調査も依頼できます。遺言書に書かれた財産と、亡くなった時点で実際に残っている財産を照らし合わせる作業にも役立ちます。

財産目録・遺産分割協議書などの書類作成を依頼する

財産調査の結果は、財産目録として整理できます。

財産目録があると、どのような財産と負債があるのかを相続人同士で共有しやすくなり、その後の手続きも進めやすくなります。

また、遺言書に書かれていない財産について相続人全員で合意できた場合は、その内容を遺産分割協議書にまとめます。

相続人同士で争いがなく、分け方が決まっている場合は、行政書士が合意内容に基づいて遺産分割協議書を作成できます。

一方で、誰がどの財産を取得するかについて意見が対立している場合や、相続人同士の交渉が必要な場合は、弁護士への相談が必要です。

銀行口座・証券口座の相続手続き支援を依頼する

遺言書の内容と相続関係が整理できたら、銀行や証券会社で財産ごとの手続きを進めます。

行政書士には、銀行口座の解約や払戻し、証券口座の移管や名義変更に必要な書類の準備や、手続きの支援を依頼できます。

金融機関ごとに必要書類や書式が異なるため、複数の口座がある場合は、確認や書類の準備だけでも大きな負担になります。仕事や家事を続けながら対応するのが難しい場合は、必要な部分だけ依頼する方法もあります。

まず行政書士が状況を整理し、必要な専門家と連携する

相続手続きのすべてを行政書士だけで対応できるわけではありません。

相続人同士の争いや、遺言書の有効性をめぐる対立がある場合は弁護士、相続税申告が必要な場合は税理士、不動産の相続登記は司法書士へ相談します。

そのため、最初の相談窓口として行政書士が状況を整理し、必要に応じて弁護士、税理士、司法書士と連携できる体制があると安心です。

どの専門家へ相談すべきか分からない場合でも、まず戸籍、財産、遺言書の状況を整理することで、次に必要な手続きと相談先が見えやすくなります。

⑧自筆証書遺言に関するよくある質問

Q:自筆証書遺言を開封してしまうと無効になりますか

糊付けされた封筒を家庭裁判所での検認前に開封しても、それだけで自筆証書遺言が直ちに無効になるわけではありません。

ただし、開封後に遺言書へ書き込みをしたり、元の状態に戻そうとして封筒を貼り直したりすると、遺言書の状態をめぐる疑問が生じることがあります。

すでに開封してしまった場合は、遺言書と封筒に手を加えず、そのまま保管してください。誰が、いつ、どのような状況で開封したのかを記録したうえで、検認の手続きを進めます。

Q:法務局に保管された自筆証書遺言も検認が必要ですか

法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用して保管されている遺言書は、家庭裁判所の検認が不要です。

亡くなった方の書類から保管証や法務局からの通知などが見つかった場合は、相続人が法務局へ保管の有無を確認します。保管されていることが分かったら、遺言書情報証明書を請求し、その内容を確認して相続手続きを進めます。

自宅に遺言書が見当たらない場合でも、法務局に保管されている可能性があります。

Q:自筆証書遺言が複数見つかった場合はどうなりますか

複数の自筆証書遺言が見つかった場合は、すべてをそのまま保管し、それぞれについて検認の要否を確認します。

一般に、作成時期の異なる遺言書がある場合、内容が重なる部分については、後に作成された遺言書が優先されることがあります。一方で、内容が矛盾しない部分は、以前の遺言書の記載が残ることもあります。

単純に「日付が新しい遺言書だけを使えばよい」とは限りません。複数の遺言書を並べて内容を確認し、どの記載が有効に残るのかを整理する必要があります。

Q:遺言書が有効か分からない場合はどうすればよいですか

自筆証書遺言には、全文、日付、氏名、押印など、形式上確認すべき点があります。また、訂正方法に問題がある場合や、本人が書いたものか疑いがある場合、内容を特定できない場合などは、有効性が問題になることがあります。

ただし、家庭裁判所の検認は、遺言書の有効・無効を確定する手続きではありません。

遺言書の形式や内容に疑問がある場合でも、自己判断で無効と決めつけて処分したり、遺言書を無視して遺産分割を進めたりしないようにしましょう。相続人間で意見が対立している場合や、有効性を法的に争う可能性がある場合は、弁護士へ相談します。

Q:遺言執行者が指定されていない場合はどうしますか

遺言書に遺言執行者の指定がなくても、遺言書の内容によっては、相続人などが手続きを進められる場合があります。

一方で、相続人以外への遺贈がある場合や、手続きに遺言執行者が必要となる内容が含まれている場合は、家庭裁判所へ遺言執行者の選任を申し立てることを検討します。

誰が手続きを行うべきか分からない場合は、遺言内容と財産の状況を整理したうえで、専門家へ確認すると安心です。

Q:遺言書どおりに分けると遺留分を侵害する場合はどうなりますか

まずは遺言書の内容に沿って、誰がどの財産を取得するのかを整理します。

その結果、兄弟姉妹以外の一定の相続人について、法律上保障された最低限の取り分である遺留分が侵害されている場合は、遺留分侵害額請求が問題になることがあります。

遺留分は、遺言書に基づく相続手続きそのものとは分けて検討する論点です。請求の可否や相続人との交渉が必要な場合は、弁護士へ相談します。

Q.行政書士に相続手続きを依頼できますか?

はい。相続人同士に争いがない場合は、戸籍の収集や相続人調査、財産調査、相続関係書類の作成、銀行・証券口座の相続手続き支援などを行政書士へ依頼できます。

行政書士は、他人の依頼を受けて、報酬を得て、官公署へ提出する書類や、権利義務・事実証明に関する書類を作成することを業務としています。また、これらの書類作成に伴う相談にも対応できます(行政書士法第1条の2・第1条の3)。

相続では、主に次のような業務を依頼できます。

  • 戸籍を収集し、法定相続人を確認する
  • 預貯金、証券、不動産などの財産資料を整理する
  • 相続関係説明図や財産目録を作成する
  • 相続人全員の合意内容に基づいて遺産分割協議書を作成する
  • 銀行口座の解約・払戻しや、証券口座の移管・名義変更に必要な書類を準備する
  • 金融機関の相続手続きを支援する

行政書士が相続人に代わって戸籍を取得する場合は、依頼内容に応じて委任状や職務上請求書を使用します。職務上必要な戸籍の請求については、戸籍法に基づく制度が設けられています(戸籍法第10条の2)。

ただし、行政書士が対応できるのは、原則として相続人間に争いがなく、手続きや書類作成を進めるケースです。遺産の分け方について交渉が必要な場合、遺言書の有効性を争う場合、遺留分の請求を行う場合などは、弁護士へ相談します。不動産の相続登記は司法書士、相続税の申告は税理士の業務です。

そのため、まず行政書士が遺言書、戸籍、財産の状況を整理し、必要に応じて弁護士・税理士・司法書士と連携する形で進めると、相談先を何度も探し直す負担を減らせます。

まとめ|自筆証書遺言を見つけたら、開封せずに手続きを確認する

親が亡くなったあと、自宅から「遺言書」と書かれた、糊付けされた封筒が見つかった場合は、その場で開封せず、見つけた状態のまま保管してください。

自宅で保管されていた自筆証書遺言は、原則として家庭裁判所の検認が必要です。検認を待つ間も、戸籍の収集や相続人調査、財産と負債の確認は進められます。

検認後は、遺言書の内容や遺言執行者の有無を確認し、預貯金、証券、不動産などの手続きを進めます。遺言書に書かれていない財産がある場合は、その財産の取得者まで定められているかを確認し、定めがなければ相続人全員で遺産分割協議を行います。

手続きが複雑な場合は、まず行政書士に相談し、必要に応じて弁護士・税理士・司法書士と連携して進めると安心です。

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✅ 行政書士プロフィール

特定行政書士 野中雅敏(IT行政書士事務所)

  • 国家資格:行政書士(登録番号:25080391)
  • 経歴:IT業界出身/相続・遺言分野を専門取り組み中
  • 趣味:競泳
  • メッセージ:
     「遺言は“難しいこと”ではなく、“優しさのカタチ”です。
    家族を守るために、ぜひ一緒に考えていきましょう。」

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