「遺言書に預貯金を書く場合、どこまで詳しく書けばいいのだろう?」
自筆証書遺言を作成するとき、預貯金の記載方法で悩む方は少なくありません。銀行名だけでよいのか、口座番号まで必要なのか、「預貯金一切」とまとめて書いても問題ないのかなど、実際に書こうとすると迷いやすいポイントが多くあります。また、ゆうちょ銀行やネット銀行をどのように記載すべきか、不安に感じる方もいるでしょう。
預貯金は、不動産のように登記情報がある財産とは異なり、銀行口座を正確に特定できるよう記載することが重要です。
記載が曖昧だと、相続発生後に金融機関で手続きが進まなかったり、相続人同士でトラブルになったりする可能性があります。
一方で、必要以上に難しく考える必要はありません。
基本的には、
- 金融機関名
- 支店名
- 口座種別
- 口座番号
を整理して記載すれば、預貯金を特定しやすい遺言書を作成できます。
本記事では、遺言書に預貯金を書く際の基本ルールを、実際の記載例やよくあるミスを交えながらわかりやすく解説します。
「預貯金一切」とまとめて書く場合の注意点や、ゆうちょ銀行・ネット銀行の扱いについても紹介するので、これから遺言書を作成する方はぜひ参考にしてください。

目次
①遺言書の預貯金はどう書く?【まず結論】
自筆証書遺言や財産目録で預貯金を正確に記載するためのポイントをまとめた図解イラストです。銀行通帳を例に、「銀行名」「支店名」「口座種別」「口座番号」の確認場所を矢印で示し、相続手続きで口座を特定しやすくする記載方法を分かりやすく説明しています。白背景とやさしい配色で、法律・相続サイト向けのシンプルなフラットデザインに仕上げています。
遺言書に預貯金を記載する場合は、できるだけ具体的に口座を特定できるように書くことが重要です。
一般的には、金融機関名や支店名、口座情報などを記載します。
たとえば、
○○銀行 △△支店 普通預金 口座番号1234567を長男○○に相続させる
のように記載すると、どの口座を対象としているのかが明確になります。
預貯金は、不動産のように登記情報で特定する財産とは異なり、銀行口座ごとに管理されています。そのため、記載が曖昧だと、相続発生後に金融機関で手続きが進まない原因になることがあります。
特に、
- 同じ銀行に複数口座がある
- 支店が複数ある
- 定期預金や貯蓄預金も保有している
といったケースでは、できるだけ具体的に記載した方が安心です。
一方で、預貯金口座が多数ある場合は、すべてを本文に細かく書くと、遺言書全体が煩雑になることもあります。その場合は、別紙で整理する方法が用いられることもあります。
証券口座の記載方法については、「遺言書の証券口座の書き方」で詳しく解説しています。
遺言書の証券口座の書き方
また、相続時には銀行側で口座確認を行うため、通帳やキャッシュカード、インターネットバンキングの情報を見ながら、正確に転記することが大切です。

基本は「銀行名・支店名・口座種別・口座番号」を記載する
預貯金を書く際は、金融機関名だけではなく、支店名や口座番号まで記載するのが一般的です。
たとえば、「○○銀行の預貯金を相続させる」とだけ書かれている場合、複数口座が存在すると、どの口座を指しているのか判断が難しくなることがあります。
そのため、次の情報を確認しながら記載しましょう。
- 金融機関名
- 支店名
- 口座種別(普通・当座・定期など)
- 口座番号
通帳やキャッシュカードが残っている場合は、それらを見ながら転記するとスムーズです。
預貯金はできるだけ具体的に書く
預貯金は、「できるだけ具体的に記載する」という意識が大切です。
特に、高齢になると口座数が増えていたり、昔作った口座を忘れていたりするケースも少なくありません。
また、銀行の統廃合によって支店名が変わっている場合もあります。
そのため、
- 現在利用している口座か
- 解約済みではないか
- 支店名に変更がないか
なども確認しておくと安心です。
曖昧な記載でも遺言として有効になる場合はありますが、実際の相続手続きでは、口座を特定しやすい記載の方が望ましいでしょう。
預貯金が多い場合は別紙整理も検討する
複数の金融機関に口座がある場合は、本文だけで整理しようとすると、遺言書が長くなりすぎることがあります。
そのような場合は、別紙で預貯金一覧を整理する方法が検討されることもあります。
ただし、別紙を利用する場合でも、どの財産を対象としているのかが分かるよう、内容を整理しておくことが重要です。
預貯金が多い場合や、財産全体を一覧化したい場合は、財産目録を活用する方法もあります。
②遺言書の預貯金の記載例
預貯金の記載方法に決まった書式はありませんが、どの口座を対象としているのかが分かるよう、具体的に記載することが重要です。
特に、同じ金融機関に複数口座を持っている場合や、普通預金・定期預金の両方を保有している場合は、口座を特定できるよう整理しておきましょう。
ここでは、実務でよく使われる記載例を紹介します。
普通預金の記載例
普通預金は、金融機関名・支店名・口座種別・口座番号を記載するのが一般的です。
記載例
○○銀行 △△支店 普通預金 口座番号1234567を長男○○に相続させる。
比較的シンプルな形ですが、対象口座を特定しやすい記載方法です。
通帳がある場合は、記載内容をそのまま確認しながら転記すると、記載ミスを防ぎやすくなります。
定期預金の記載例
定期預金がある場合は、「普通預金」と区別して記載しておくと分かりやすくなります。
記載例
○○銀行 △△支店 定期預金 口座番号7654321を妻○○に相続させる。
同じ銀行・同じ支店に複数の預金口座がある場合は、口座種別を書き分けておくことで、対象財産を整理しやすくなります。
複数口座がある場合の記載例
複数の銀行口座を保有している場合は、金融機関ごとに整理して記載すると読みやすくなります。
記載例
○○銀行 △△支店 普通預金 口座番号1234567を長男○○に相続させる。
□□銀行 ○○支店 定期預金 口座番号9876543を長女○○に相続させる。
口座数が多い場合は、番号を付けながら整理すると、遺言書全体が見やすくなります。
また、銀行ごとに誰へ相続させるのかを明確にしておくことで、相続発生後の確認もしやすくなります。
ゆうちょ銀行の記載例
ゆうちょ銀行は、一般的な銀行口座とは異なり、「記号・番号」で管理されているケースがあります。
そのため、通帳を確認しながら、ゆうちょ銀行の表記に合わせて記載すると安心です。
記載例
ゆうちょ銀行 記号12340 番号5678901の定額貯金を妻○○に相続させる。
ゆうちょ銀行では、「支店名」ではなく「記号番号」で管理されている場合もあるため、通常の銀行と同じ感覚で書かないよう注意しましょう。
「預貯金一切」と書く場合の記載例
口座数が多い場合などは、「預貯金一切」とまとめて記載するケースもあります。
記載例
私名義のすべての預貯金を長男○○に相続させる。
包括的に財産を指定できるため、将来的に口座が増減した場合にも対応しやすいというメリットがあります。
一方で、どの口座が対象なのか分かりにくくなる場合もあるため、実務上は具体的に記載した方が望ましいケースも少なくありません。
「預貯金一切」と記載する場合の注意点については、次の章で詳しく解説します。
③「預貯金一切」と書いても有効?

預貯金口座が多い場合や、今後口座が増減する可能性がある場合には、
「私名義のすべての預貯金を長男○○に相続させる」
のように、「預貯金一切」と包括的に記載するケースがあります。
「預貯金一切」のような包括的な書き方でも、他の条項と矛盾しておらず、誰に取得させるのかが明確であれば、一般的には有効と解釈されることが多いです。
また、包括的に記載した場合でも、相続開始時に存在する遺言者名義の預貯金が対象になると考えられるため、遺言作成後に新しく開設した口座が直ちに対象外になるわけではありません。
ただし、対象口座が具体的に記載されていない場合には、相続発生後に相続人側で各金融機関への残高確認や口座調査が必要になることがあります。
また、金融機関ごとの名義変更や解約手続きに時間がかかるケースもあるため、実務上は主要な口座を個別に記載しておいた方が、手続きを進めやすい場合もあります。
④遺言書の預貯金の書き方でよくあるミス

預貯金の記載は、一見すると簡単そうに見えますが、実際には細かな記載ミスが相続手続きの支障につながることがあります。
特に、金融機関側で対象口座を特定できない場合には、確認に時間がかかったり、追加資料を求められたりするケースもあります。
ここでは、遺言書でよく見られる預貯金の記載ミスを紹介します。
銀行名・支店名が曖昧になっている
よくあるのが、
「○○銀行の預金を長男に相続させる」
のように、支店名まで記載されていないケースです。
同じ銀行でも複数の支店口座を保有している場合があり、支店名がないと対象口座を特定しづらくなることがあります。
また、地方銀行や信用金庫では、支店統廃合によって名称変更が行われているケースもあります。
通帳やキャッシュカードを確認しながら、現在の正式名称で記載するようにしましょう。
口座番号を書き漏らしている
銀行名や支店名だけでも口座を特定できるケースはありますが、実務上は口座番号まで記載しておいた方が安心です。
特に、
- 同じ支店で複数口座を持っている
- 普通預金と定期預金がある
- 家族が財産状況を把握していない
といった場合には、口座番号の記載が役立ちます。
また、金融機関によっては、口座番号まで特定できないと、残高確認や相続手続きに関する問い合わせに十分対応できないケースもあります。
そのため、相続発生後の名義変更や解約手続きを円滑に進めるという観点でも、口座番号まで記載しておくことが望ましいでしょう。
通帳やインターネットバンキングの画面を確認しながら、正確に転記することが大切です。
ネット銀行を書き忘れている
楽天銀行・住信SBIネット銀行・PayPay銀行などのネット銀行も、通常の銀行口座と同様に相続対象となる預貯金です。
しかし、紙の通帳がないことから、遺言書作成時に記載漏れが生じるケースもあります。
ネット銀行を利用している場合は、銀行名・支店名・口座番号などを確認し、他の預貯金口座と同様に整理して記載しておきましょう。

⑤遺言書の預貯金に関するFAQ
Q:遺言書に口座番号は必須ですか?
法律上、口座番号がないだけで遺言が無効になるわけではありません。
ただし、相続手続きでは口座特定が必要になるため、実務上は口座番号まで記載しておくことが望ましいでしょう。
Q:「預貯金一切」でも有効ですか?
「私名義のすべての預貯金を長男○○に相続させる」のような包括的記載でも、他の条項と矛盾せず、取得者が明確であれば、一般的には有効と解釈されることが多いです。
もっとも、実務上は対象口座の確認に時間がかかることもあるため、主要口座は個別記載した方が分かりやすい場合もあります。
Q:預金残高まで書く必要はありますか?
通常、預金残高まで記載する必要はありません。
残高は日々変動するため、金融機関名・支店名・口座番号など、口座を特定できる情報を記載することが重要です。きる情報を中心に記載することが多いです。
Q:ゆうちょ銀行はどう書けばいいですか?
ゆうちょ銀行は、「記号・番号」で管理されているケースがあります。
通帳を確認しながら、ゆうちょ銀行の表記に合わせて記載しましょう。に記載します。
Q:ネット銀行も記載した方がいいですか?
楽天銀行・住信SBIネット銀行・PayPay銀行などのネット銀行も、通常の銀行口座と同様に相続対象となる預貯金です。
紙の通帳がないケースもありますが、利用している場合は、他の預貯金口座と同様に整理して記載しておくことが望ましいでしょう。
Q:通帳が見つからない場合はどうすればいいですか?
キャッシュカードやインターネットバンキングの情報から、金融機関名・支店名・口座番号を確認できる場合があります。
また、取引履歴や年金振込先などから、利用している金融機関が分かるケースもあります。
不明な点がある場合は、金融機関へ確認することも検討しましょう。
Q:口座を解約した場合、遺言書は無効になりますか?
遺言作成後に口座を解約した場合でも、遺言書全体が直ちに無効になるわけではありません。
もっとも、対象財産が既に存在していない場合には、その口座に関する部分は実現できなくなります。
預貯金は増減しやすい財産のため、遺言作成後も定期的に内容を見直すことが大切です。
Q:古い遺言書のままでも大丈夫ですか?
預貯金は、口座解約・支店変更・新規口座開設などによって内容が変わることがあります。
そのため、長期間見直しをしていない場合は、現在の財産状況と一致しているか確認しておくと安心です。
特に、金融機関の統廃合やネット銀行利用開始などがある場合には、遺言内容の見直しを検討しましょう。
まとめ|預貯金は「特定できる書き方」が重要
遺言書に預貯金を記載する場合は、金融機関名だけではなく、支店名・口座種別・口座番号まで具体的に記載しておくことが重要です。
特に、同じ金融機関に複数口座がある場合や、家族が財産状況を把握していない場合には、口座を特定しやすい形で整理しておくことで、相続発生後の確認や金融機関での手続きを進めやすくなります。
また、「預貯金一切」のような包括的な記載でも、他の条項と矛盾しておらず、取得者が明確であれば、有効と解釈されることはあります。
もっとも、実務上は相続人側で口座調査が必要になるケースもあるため、主要な口座については個別に記載しておいた方が安心です。
預貯金は増減しやすい財産でもあるため、遺言書を作成した後も、現在の財産状況と内容が一致しているか定期的に見直すようにしましょう。
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