親や配偶者など、身近な方を亡くした直後は、気持ちの整理がつかないまま、相続のことまで考えなければならず、何から手をつければよいのか分からなくなるものです。
公正証書遺言が見つかったとしても、その後の手続きが自動的に終わるわけではありません。遺言書の内容を確認し、相続人や財産の状況を整理したうえで、預貯金の払戻しや不動産の名義変更などを進める必要があります。
この記事では、公正証書遺言がある場合の相続手続きについて、最初に確認することから、財産ごとの手続きを進めるまでの流れを順番に解説します。
なお、死亡届や葬儀、相続放棄、準確定申告などを含む相続手続き全体の進め方については、相続手続きの流れと手順で確認できます。

目次
①公正証書遺言がある場合の相続手続き
公正証書遺言が見つかった場合は、まず遺言書の内容を確認し、その後に相続人や財産の状況を整理します。
遺言書があっても、預貯金の払戻しや不動産の名義変更が自動的に行われるわけではありません。誰がどの財産を受け取るのかを確認し、必要な書類をそろえて、財産ごとに手続きを進めます。
また、公正証書遺言を作成してから亡くなるまでの間に、預金口座が変わったり、新しい財産が増えたりしていることもあります。そのため、遺言書の内容だけを見るのではなく、現在の財産や負債も確認することが大切です。
公正証書遺言の内容を確認する
最初に、公正証書遺言の正本または謄本を確認します。
遺言書には、主に次のような内容が記載されています。
- 誰がどの財産を取得するのか
- 相続人以外へ財産を遺贈する内容があるか
- 遺言執行者が指定されているか
- 遺言書に記載されていない財産の分け方が定められているか
遺言書の一部分だけを見て判断せず、最初から最後まで確認しましょう。財産の分け方だけでなく、遺言執行者や残った財産の取扱いについて記載されていることがあります。
相続人と現在の財産・負債を確認する
公正証書遺言がある場合でも、戸籍を集めて法定相続人を確認します。
遺言書を作成した後に相続人が亡くなっていたり、家族関係が変わっていたりする可能性があるためです。遺言書に財産を受け取る人が記載されていても、法定相続人の確認を省くことはできません。
同時に、現在の財産と負債も確認します。
預貯金、不動産、証券口座、自動車などの財産だけでなく、借金、ローン、未払金、保証債務などがないかも調べます。
遺言書に基づいて名義変更や払戻しを行う
遺言書の内容と現在の財産を確認したら、財産を取得する人や遺言執行者が手続きを進めます。
主な手続きは、預貯金の解約・払戻し、不動産の相続登記、株式や証券口座の名義変更などです。
必要な書類は、財産の種類や手続き先によって異なります。公正証書遺言、戸籍、本人確認書類などを準備し、金融機関や法務局などへ確認しながら進めます。
遺言書に記載されていない財産は別途対応する
遺言書に記載されていない財産が見つかった場合は、遺言書の中に「その他の財産」や「残余財産」の分け方が定められていないか確認します。
そのような記載によって取得する人を判断できれば、その内容に基づいて手続きを進めます。
一方、遺言書から取得する人を判断できない場合は、法定相続人全員で分け方を話し合い、必要に応じて遺産分割協議書を作成します。
②公正証書遺言がある場合の相続手続きの流れ
公正証書遺言がある場合は、遺言書を確認した後、相続人や財産の状況を調べ、遺言の内容に沿って手続きを進めます。
ただし、すべての手続きを順番どおりに一つずつ終わらせる必要はありません。戸籍の収集や財産調査など、並行して進められるものもあります。

STEP1 公正証書遺言の有無を確認し、正本または謄本を準備する
目安:できるだけ早く
まずは、自宅や貸金庫、重要書類を保管している場所などを確認し、公正証書遺言の正本または謄本を探します。
本人から「公正証書遺言を作成した」と聞いていたものの、書類が見つからないこともあります。公証役場の封筒や領収書、公証人の名刺、遺言作成を支援した行政書士などの専門家の連絡先などが残されていないかも確認しましょう。
手元に書類がなくても、相続人などの利害関係人は、近くの公証役場で公正証書遺言の有無を調べられます。平成元年以降に作成された公正証書遺言については、全国の公証役場から、遺言の有無と保管している公証役場を検索できます。インターネット上で自由に閲覧する仕組みではなく、公証役場へ申し出て利用する制度です。
検索する際は、一般に次の書類を準備します。
- 遺言者が亡くなったことを確認できる戸籍
- 申出人が相続人であることを確認できる戸籍
- 運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類
遺言の存在が確認できたら、保管している公証役場へ正本または謄本の交付について問い合わせます。

STEP2 戸籍を集めて法定相続人を確認する
目安:相続開始後3か月以内に確認を進める
公正証書遺言に財産を受け取る人が書かれていても、戸籍による法定相続人の確認は必要です。
遺言書を作成してから亡くなるまでの間に、結婚や離婚、子どもの出生、相続人となる人の死亡など、家族関係が変わっていることがあるためです。
亡くなった人の出生から死亡までの戸籍を集め、配偶者、子ども、親、兄弟姉妹など、誰が法定相続人になるのかを確認します。
相続人の確認自体に3か月という期限があるわけではありません。ただし、借金などがあり相続放棄を検討する可能性もあるため、財産と負債の調査を進めながら、早めに確認しておくことが大切です。
STEP3 遺言執行者と財産を受け取る人を確認する
時期:相続人の確認と並行して進める
次に、公正証書遺言に遺言執行者が指定されているかを確認します。
遺言執行者は、遺言の内容を実現するために、預貯金や不動産などの手続きを進める人です。指定されている場合は、本人へ連絡し、就任する意思があるかを確認します。
あわせて、遺言書を読み、財産を受け取る相続人や受遺者を確認します。相続人以外の親族、知人、団体などへ財産を遺贈する内容が含まれていることもあります。
遺言執行者が指定されていない場合でも、すべての相続手続きで遺言執行者が必要になるわけではありません。遺言の内容によっては、財産を取得する相続人などが手続きを進められることもあります。
一方、相続人以外への遺贈がある場合や、相続人だけでは遺言内容を実現しにくい場合などは、遺言執行者の選任が必要になることがあります。その場合は、相続人や受遺者などの利害関係人が、家庭裁判所へ選任を申し立てます。
そのため、遺言執行者の指定がない場合は、まず遺言書の内容と必要な手続きを確認したうえで、選任申立てが必要かを判断します。
STEP4 遺言書の内容と現在の財産・負債を照合する
目安:相続開始後3か月以内に全体像を把握する
公正証書遺言に書かれている財産が、現在も残っているかを確認します。
預貯金であれば、通帳や取引履歴を確認します。不動産であれば、登記事項証明書や固定資産税の通知書などから、所在地や名義、共有持分を確認します。
遺言書を作成した後に、預金口座を解約していたり、不動産を売却していたりすることもあります。一方で、新しい口座や不動産、証券など、遺言書に記載されていない財産が増えている場合もあります。
借金、住宅ローン、未払金、保証債務なども含め、現在の財産と負債を一覧にして整理しましょう。

STEP5 遺言書に基づいて財産ごとの相続手続きを行う
時期:必要書類がそろい次第進める
遺言書の内容と現在の財産を確認したら、財産ごとの相続手続きを進めます。
預貯金については金融機関へ払戻しや名義変更を申し込み、不動産については相続登記を行います。株式、証券口座、自動車などがある場合も、それぞれの手続き先へ必要書類を提出します。
誰が手続きするのかは、遺言書の内容や遺言執行者の有無によって異なります。また、金融機関などによって必要書類が異なるため、手続きを始める前に確認しておくと進めやすくなります。
不動産を遺言によって取得した相続人には、その取得を知った日などから3年以内に相続登記を申請する義務があります。
STEP6 遺言書に記載されていない財産の分け方を決める
目安:相続税申告が必要な場合は10か月以内の合意を目指す
遺言書に記載されていない財産が見つかった場合は、まず「その他一切の財産」や「残余財産」についての記載がないかを確認します。
その記載によって財産を取得する人を判断できる場合は、遺言書の内容に沿って手続きを進めます。
一方、遺言書から取得する人を判断できない場合は、法定相続人全員で分け方を話し合います。合意した内容は、必要に応じて遺産分割協議書にまとめます。
遺産分割自体に一律の10か月という期限があるわけではありません。ただし、相続税申告が必要な場合は税額や特例に関係するため、申告期限を意識して進めることが大切です。
STEP7 相続税申告など期限のある手続きを確認する
期限:相続税申告は原則10か月以内
相続手続きには、期限のあるものがあります。
主な期限は次のとおりです。
- 借金が多い場合などに相続放棄を検討するとき:原則として相続の開始を知ったときから3か月以内
- 亡くなった人に確定申告が必要な所得があったとき:準確定申告を原則として相続開始を知った日の翌日から4か月以内
- 相続税の申告が必要なとき:原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内
- 不動産を相続したとき:相続登記を原則として取得を知った日から3年以内
準確定申告は、亡くなった人に事業所得や不動産所得があった場合などに、相続人が本人に代わって行う所得税の申告です。すべての相続で必要になるわけではありません。
相続放棄、準確定申告、相続税申告、相続登記などを含め、死亡後から相続完了までに確認したい期限は、相続手続きは何をいつまでに進めるかで時系列に沿って解説しています。
③公正証書遺言がある場合、遺産分割協議は必要か
公正証書遺言がある場合は、遺言書に誰がどの財産を取得するのかが明確に書かれていれば、その財産について相続人全員で改めて話し合う必要はありません。
一方で、遺言書に記載されていない財産が見つかった場合や、記載だけでは取得する人を判断できない場合は、遺産分割協議が必要になることがあります。
遺言書で取得者が決まっている財産は原則として協議しない
たとえば、遺言書に「自宅の土地と建物を長男に相続させる」「○○銀行の預金を妻に相続させる」と書かれていれば、原則としてその内容に基づいて手続きを進めます。
この場合、相続人全員で同じ財産の分け方を改めて決める必要はありません。金融機関や法務局などへ必要書類を提出し、遺言書の内容に沿って払戻しや名義変更を行います。
ただし、遺言書の記載と現在の財産が一致しているかは確認が必要です。
遺言書に記載されていない財産は協議が必要になることがある
遺言書を作成した後に新しい預金口座を開設したり、不動産や株式を取得したりして、遺言書に書かれていない財産が残ることがあります。
まずは、遺言書に「その他一切の財産」や「残余財産」の取得者が定められていないかを確認します。
そのような記載がなく、遺言書から取得する人を判断できない場合は、法定相続人全員で分け方を話し合います。合意した内容は、預貯金や不動産の手続きに使えるよう、遺産分割協議書にまとめます。
遺言書と異なる分け方を希望する場合は慎重に判断する
相続人全員が、遺言書とは異なる分け方を希望することもあります。
ただし、相続人以外の受遺者がいる場合や、遺言執行者が指定されている場合は、相続人だけで内容を変更できるとは限りません。財産を受け取る人の権利や、遺言執行者の立場にも関係するためです。
遺言書と異なる分け方を検討するときは、関係者と遺言内容を確認したうえで、税金や登記への影響も含めて慎重に判断しましょう。
④公正証書遺言による相続手続きの必要書類
公正証書遺言に基づいて相続手続きを進める場合は、遺言書だけでなく、戸籍や本人確認書類なども必要になります。
ただし、必要書類は、財産の種類、遺言執行者の有無、財産を受け取る人が相続人か受遺者かによって異なります。最初からすべてをそろえようとせず、手続き先へ確認しながら準備しましょう。
相続手続きで共通して準備する書類
主に準備する書類は、次のとおりです。
- 公正証書遺言の正本または謄本
- 亡くなった人の死亡を確認できる戸籍
- 法定相続人を確認するための戸籍
- 財産を取得する人の本人確認書類
- 財産を取得する人の印鑑証明書
- 遺言執行者の本人確認書類や印鑑証明書
- 手続き先が指定する申請書や届出書
戸籍については、すべての手続きで同じ範囲を求められるとは限りません。遺言書の内容や手続きをする人によって、必要な戸籍が異なることがあります。
印鑑証明書にも有効期限を設けている金融機関があるため、早い段階で大量に取得するより、提出先を確認してから準備した方が無駄を抑えられます。
財産ごとに必要となる主な書類
預貯金の払戻しでは、通帳、キャッシュカード、金融機関所定の相続届などを求められることがあります。
不動産の相続登記では、遺言書や戸籍のほか、固定資産評価証明書、住民票、登記申請に必要な書類などを準備します。
株式や証券口座については、証券会社所定の相続手続書類、相続人や受遺者の口座情報などが必要です。自動車の場合は、車検証や車庫証明などを求められることがあります。
現在の記事でも、金融機関と不動産では必要書類や手続き先が異なるため、事前確認が重要と整理されています。
遺言執行者や受遺者が手続きする場合の追加書類
遺言執行者が手続きする場合は、遺言執行者に指定されていることを確認できる公正証書遺言のほか、就任を証明する書類などを求められることがあります。
家庭裁判所で遺言執行者が選任された場合は、選任審判書や確定証明書などが必要になることもあります。
また、相続人以外の受遺者が財産を受け取る場合は、受遺者の住民票、印鑑証明書、本人確認書類などが必要です。不動産の遺贈や金融機関での手続きでは、相続人が取得する場合と必要書類や進め方が異なることがあります。
提出先によって取扱いが異なるため、実際に手続きをする前に、遺言書の内容と手続きをする人を伝え、必要書類を確認しておきましょう。
⑤公正証書遺言に基づく財産別の相続手続き
公正証書遺言の内容と必要書類を確認したら、財産ごとに相続手続きを進めます。
手続き先や必要書類は、預貯金、不動産、株式、自動車などで異なります。また、遺言執行者が手続きするのか、財産を取得する相続人や受遺者が手続きするのかによっても、進め方が変わることがあります。
預貯金・証券口座の相続手続き
預貯金については、金融機関へ死亡の事実を伝え、相続手続きに必要な書類を確認します。
一般には、公正証書遺言、戸籍、本人確認書類、印鑑証明書、金融機関所定の相続届などを提出し、預金の払戻しや口座の解約を行います。
遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者が手続きを進めることがあります。一方、指定されていない場合は、財産を取得する相続人などが手続きします。
証券口座については、証券会社へ連絡し、相続専用の口座への移管や売却などを進めます。証券会社ごとに手続きが異なるため、早めに必要書類を確認しておきましょう。
不動産の相続登記
土地や建物を取得した場合は、不動産の名義を亡くなった人から取得者へ変更する相続登記を行います。
公正証書遺言の内容だけでなく、不動産の所在地、地番、家屋番号、共有持分などが登記内容と一致しているか確認します。
遺言書に書かれた不動産の表示と現在の登記内容が異なる場合や、私道、共有持分、未登記建物などがある場合は、そのまま手続きを進められないことがあります。
相続登記は司法書士へ依頼できます。自分で申請する場合でも、必要書類や登記申請書の記載方法を事前に確認しておきましょう。
自動車・その他の財産の名義変更
亡くなった人名義の自動車がある場合は、運輸支局などで名義変更を行います。
車検証、遺言書、戸籍、印鑑証明書などが必要になりますが、自動車の種類や使用場所によって、車庫証明などの追加書類を求められることがあります。
そのほか、ゴルフ会員権、貸金庫、賃貸物件、事業用資産、知的財産権などがある場合も、それぞれの管理先や契約先へ確認します。
財産によっては、名義変更だけでなく、契約の解約や承継の手続きが必要です。
相続人以外への遺贈
遺言書で、相続人ではない親族や知人、法人などへ財産を渡すことを遺贈といいます。
受遺者が財産を受け取る意思があるかを確認し、遺言執行者がいる場合は、遺言執行者を中心に手続きを進めます。
不動産の遺贈では、受遺者だけでは登記手続きを完了できず、遺言執行者や相続人の協力が必要になることがあります。預貯金についても、金融機関ごとに必要書類や手続き方法が異なります。
受遺者が財産を受け取らない場合や、すでに亡くなっている場合は、遺言書の内容だけで処理できないこともあるため、早めに確認しましょう。
⑥遺言書の内容と現在の財産が異なる場合の対応
公正証書遺言を作成してから亡くなるまでの間に、財産の内容が変わっていることがあります。
遺言書に書かれた財産がすでに存在しない場合や、反対に、遺言書に記載されていない財産が見つかった場合は、遺言書の文言と現在の財産状況を照らし合わせて対応します。

遺言書に記載された財産がすでに存在しない場合
遺言書に特定の預金口座や不動産が記載されていても、亡くなる前に解約や売却が行われていることがあります。
たとえば、「○○銀行の預金を長男に相続させる」と書かれていても、その口座がすでに解約されていれば、原則としてその口座についての相続手続きは行えません。
売却した不動産の代金や、解約した預金を別の口座へ移している場合でも、新しい財産が当然に同じ人へ引き継がれるとは限りません。ほかの遺言内容も確認し、取得する人を判断できない場合は、相続人による話し合いが必要になることがあります。
遺言書に記載されていない財産が見つかった場合
遺言書を作成した後に開設した預金口座や、新たに取得した不動産、株式などが見つかることもあります。
まずは、遺言書に「その他一切の財産」や「残余財産」の取得者が定められていないか確認します。
その記載によって取得する人を判断できれば、遺言書に基づいて手続きを進めます。取得する人を判断できない場合は、法定相続人全員で分け方を話し合い、必要に応じて遺産分割協議書を作成します。
財産の範囲や取得者を判断できない場合
遺言書に財産が記載されていても、どこまでを対象としているのか判断に迷う場合があります。
たとえば、不動産について、土地と建物のほかに私道の共有持分がある場合や、登記されていない建物がある場合です。預貯金についても、「すべての預貯金」と書かれているのか、特定の金融機関や口座だけを指定しているのかによって、対象となる範囲が変わります。
遺言書の一部分だけで判断せず、財産の記載方法や、残余財産についての記載も含めて全体を確認することが大切です。
財産を受け取る人が先に亡くなっている場合
遺言書で財産を受け取るとされた人が、遺言者より先に亡くなっていることもあります。
この場合、その人の子どもが当然に代わって財産を受け取れるとは限りません。遺言書に予備的な指定があるかを確認し、指定がない場合は、その財産を誰が取得するのかを別途判断する必要があります。
遺言書の内容だけでは判断が難しい場合は、相続人だけで結論を出さず、専門家へ相談したうえで手続きを進めましょう。
⑦遺言執行者がいる場合の相続手続き
公正証書遺言に遺言執行者が指定されている場合は、その人を中心に遺言内容を実現するための手続きを進めます。
ただし、遺言執行者が指定されていても、本人が必ず就任するとは限りません。まずは連絡を取り、就任する意思があるかを確認します。
遺言執行者が行う主な手続き
遺言執行者は、遺言書の内容を確認し、相続人や受遺者へ必要な連絡をしたうえで、財産の名義変更や払戻しなどを進めます。
主な手続きには、次のようなものがあります。
- 相続人や受遺者への通知
- 相続財産の調査
- 財産目録の作成
- 預貯金の解約や払戻し
- 不動産や証券などの名義変更
- 相続人以外への遺贈の実行
実際に行う手続きは、遺言書の内容によって異なります。すべての財産を遺言執行者が管理するとは限らないため、どこまでの手続きが必要かを確認して進めます。
相続人は勝手に財産を処分しない
遺言執行者が就任している場合、相続人が独自の判断で預金を引き出したり、不動産を売却したりすると、遺言執行者による手続きに支障が出ることがあります。
公正証書遺言が見つかった後は、遺言執行者へ連絡する前に財産を動かさず、まず遺言書の内容を確認しましょう。
葬儀費用や当面の支払いのために預金を利用したい場合も、自己判断で進めず、遺言執行者や金融機関へ確認することが大切です。
遺言執行者が就任できない場合の対応
遺言書に指定された人が就任を辞退した場合や、すでに亡くなっている場合は、その人が遺言執行者として手続きを進めることはできません。
ただし、遺言執行者がいないからといって、すべての相続手続きが止まるわけではありません。遺言の内容によっては、財産を取得する相続人などが手続きを進められる場合もあります。
一方、相続人以外への遺贈がある場合など、遺言執行者がいなければ手続きを進めにくいときは、家庭裁判所へ新たな遺言執行者の選任を申し立てることを検討します。
⑧公正証書遺言があっても手続きが複雑になりやすいケース
公正証書遺言があっても、相続人や財産の状況によっては、手続きが思うように進まないことがあります。
特に、関係者と連絡が取れない場合や、遺言書の内容をめぐって意見が分かれている場合は、早めに状況を整理することが大切です。
相続人や受遺者と連絡が取れない
相続人や受遺者の住所が分からない、長年交流がない、連絡しても返事がないといった場合は、必要な通知や書類の受け渡しが進まないことがあります。
公正証書遺言がある場合でも、法定相続人への連絡や、財産を受け取る人の意思確認が必要になることがあります。
住所が分からない場合は、戸籍の附票などから現在の住所を確認します。それでも連絡が取れない場合は、手続きの内容に応じて専門家へ相談した方がよいでしょう。
遺留分や遺言内容をめぐって意見が対立している
遺言書によって一部の相続人に多くの財産が残されていると、ほかの相続人から遺留分を請求されることがあります。
また、不動産や預貯金の範囲について、相続人同士で遺言書の解釈が分かれることもあります。
意見の対立が生じている場合は、行政書士が相続人の一方を代理して交渉することはできません。話し合いによる解決が難しいときは、弁護士への相談を検討します。
財産・負債や不動産の権利関係が複雑である
不動産が複数ある、土地や建物が共有名義になっている、私道の持分や未登記建物があるといった場合は、遺言書の記載と現在の登記内容を慎重に照合する必要があります。
また、預貯金や証券口座が多い場合や、借金、保証債務、事業上の未払金がある場合も、財産の全体像を把握するまでに時間がかかります。
遺言書に書かれた財産だけを確認して手続きを始めるのではなく、財産と負債を一通り整理してから進めましょう。
相続人以外への遺贈がある
相続人ではない親族や知人、法人などへ財産を遺贈する内容がある場合は、通常の相続より手続きが複雑になることがあります。
受遺者が財産を受け取る意思があるかを確認し、不動産や預貯金について必要な手続きを進めます。受遺者が遺贈を受けない場合や、遺言者より先に亡くなっている場合は、財産の取扱いを改めて確認しなければなりません。
相続人、受遺者、遺言執行者など、関係者が多い場合は、それぞれの立場と必要な手続きを整理して進めることが大切です。

⑨公正証書遺言の相続手続きは誰に相談すればよいか
公正証書遺言があっても、戸籍の収集、財産の確認、預貯金や不動産の手続きなど、対応する内容はさまざまです。
相談先は、困っている内容によって異なります。まずは、現在どの段階で手続きが止まっているのかを整理しましょう。
戸籍収集や預貯金の手続きで困っている場合は行政書士へ相談する
行政書士には、戸籍の収集、法定相続人の確認、財産目録の作成、預貯金や証券口座の相続手続きなどを相談できます。
相続人同士に争いはないものの、必要書類の収集や金融機関の手続きを自分で進めることが難しい場合に相談しやすい専門家です。
不動産の名義変更が必要な場合は司法書士へ相談する
土地や建物を相続した場合は、不動産の相続登記を司法書士へ相談します。
遺言書に記載された不動産と現在の登記内容が一致しない場合や、共有持分、私道、未登記建物などがある場合も、早めに確認した方がよいでしょう。
相続税の申告や財産評価で迷っている場合は税理士へ相談する
相続税の申告が必要か分からない場合や、相続財産が基礎控除額を超える可能性がある場合は、税理士へ相談します。
不動産や非上場株式など、財産の評価が難しい場合や、配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例を利用したい場合も、税理士が主な相談先です。
相続人同士の争いや遺留分の問題がある場合は弁護士へ相談する
遺言書の内容をめぐって意見が対立している場合や、遺留分を請求された場合は、弁護士へ相談します。
相続人の一方を代理して交渉したり、家庭裁判所の調停や訴訟に対応したりできるのは弁護士です。
公正証書遺言が見つからない場合は公証役場へ確認する
本人から公正証書遺言を作成したと聞いていたものの、正本や謄本が見つからない場合は、公証役場へ確認します。
公証役場では、公正証書遺言の検索や謄本等の交付に関する手続きを確認できます。ただし、戸籍収集や財産調査、金融機関の相続手続きを代行する窓口ではありません。
⑩公正証書遺言の相続手続きに関するよくある質問
Q:公正証書遺言があるかどうかは、どのように調べますか
本人から公正証書遺言を作成したと聞いていたものの、正本や謄本が見つからない場合は、公証役場で遺言の有無を確認します。
遺言者が亡くなったことや、請求する人との関係を確認できる戸籍、本人確認書類などが必要です。必要書類や申出方法は、公証役場へ事前に確認しておきましょう。
Q:公正証書遺言の正本や謄本が見つからない場合はどうしますか
手元に正本や謄本がなくても、公正証書遺言そのものが失われたとは限りません。
公証役場で遺言の存在を確認し、作成した公証役場が分かったら、謄本等の交付を請求します。公正証書遺言の原本は公証役場で保管されているため、まずは近くの公証役場へ相談しましょう。
Q:公正証書遺言があれば遺産分割協議書は不要ですか
遺言書によって取得する人が明確に決められている財産については、原則として遺産分割協議を行いません。
一方、遺言書に記載されていない財産があり、残余財産の取得者も定められていない場合は、法定相続人全員で分け方を決め、遺産分割協議書を作成することがあります。
Q:遺言執行者が指定されていない場合は誰が手続きしますか
遺言執行者が指定されていない場合でも、財産を取得する相続人などが手続きを進められることがあります。
ただし、相続人以外への遺贈がある場合など、遺言執行者が必要になることもあります。まず遺言書の内容と手続き先の取扱いを確認し、必要であれば家庭裁判所への選任申立てを検討します。
Q:遺言書に記載されていない財産が見つかった場合はどうしますか
まず、遺言書に「その他一切の財産」や「残余財産」の取得者が定められていないか確認します。
その記載から取得する人を判断できない場合は、法定相続人全員で分け方を話し合います。後から新たな財産が見つかった場合に備えて、その取扱いを遺産分割協議書に記載しておく方法もあります。
Q:公正証書遺言があっても相続放棄できますか
公正証書遺言があっても、相続放棄を検討できます。
借金や保証債務がある可能性がある場合は、預金の払戻しや財産の処分を始める前に、財産と負債を確認することが大切です。相続放棄には期限があるため、判断に迷う場合は早めに弁護士へ相談しましょう。
Q:公正証書遺言があっても相続税申告は必要ですか
公正証書遺言の有無と、相続税申告の要否は別の問題です。
相続財産の総額が基礎控除額を超える場合などは、相続税申告が必要になることがあります。不動産など評価が必要な財産がある場合や、特例を利用したい場合は、税理士へ確認するとよいでしょう。
Q:公正証書遺言があれば相続手続きを自分でできますか
相続人が少なく、財産の内容が分かりやすい場合は、自分で進められることもあります。
一方、遺言書と現在の財産が一致しない場合、相続人以外への遺贈がある場合、不動産や金融機関が複数ある場合は、手続きが複雑になりやすくなります。すべてを任せるのではなく、戸籍収集や預貯金の手続きなど、負担の大きい部分だけ専門家へ依頼する方法もあります。
自宅から手書きの遺言書が見つかった場合は、公正証書遺言とは異なり、家庭裁判所の検認が必要になることがあります。開封前の注意点や検認の流れは、「自筆証書遺言がある場合の相続手続き」で解説しています。
まとめ|公正証書遺言と現在の財産を確認して相続手続きを進める
公正証書遺言がある場合は、まず正本または謄本を確認し、戸籍による法定相続人の確認、遺言執行者や財産を受け取る人の確認へ進みます。
その後、遺言書に記載された内容と現在の財産・負債を照らし合わせ、預貯金、不動産、証券口座などについて、それぞれ必要な手続きを行います。
遺言書に記載されていない財産が見つかった場合や、遺言書の内容だけでは取得する人を判断できない場合は、相続人全員で話し合いが必要になることもあります。
また、相続放棄、準確定申告、相続税申告など、期限を意識しなければならない手続きもあります。公正証書遺言があるからと安心して手続きを後回しにせず、分かるところから順番に整理していくことが大切です。
戸籍収集や預貯金の手続き、不動産の相続登記、相続税申告、相続人同士の争いなど、困っている内容によって相談先は異なります。自分だけで進めることが難しいと感じたときは、現在の状況を整理したうえで、早めに専門家へ相談しましょう。
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✅ ご相談方法(選べます!)
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 📞 電話相談 | お急ぎの方や対面が難しい方におすすめ |
| 🖥 オンライン相談 | ご自宅から安心して相談できます(Zoom対応) |
| 🏠 訪問相談 | ご高齢の方、外出が難しい方のために訪問も可 |
✅ 行政書士プロフィール
特定行政書士 野中雅敏(IT行政書士事務所)
- 国家資格:行政書士(登録番号:25080391)
- 経歴:IT業界出身/相続・遺言分野を専門取り組み中
- 趣味:競泳
- メッセージ:
「遺言は“難しいこと”ではなく、“優しさのカタチ”です。
家族を守るために、ぜひ一緒に考えていきましょう。」
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