公正証書遺言を作りたいと考えたとき、
「何から始めればいいのか分からない」「どんな手続きが必要なのか不安」と感じる方は多いのではないでしょうか。
例えば、
「自分で進めてみたいけど、途中で止まったらどうしよう」
「内容の決め方が分からず、手続きに進めない」
といった不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
公正証書遺言は、公証人が関与して作成するため、自分で自由に書くものとは異なり、一定の手続きに沿って進める必要があります。
ただし、流れ自体はそれほど複雑ではなく、事前に全体像を理解しておけばスムーズに進めることができます。
一方で、準備不足や手順のミスによって、手続きがやり直しになったり、思った以上に時間がかかってしまうケースも少なくありません。
この記事では、公正証書遺言の具体的な作り方(手続きの流れ)と、完成までの期間の目安、失敗しやすいポイントまでをわかりやすく解説します。
これから公正証書遺言を作成したい方は、ぜひ参考にしてください。

目次
1. 公正証書遺言の作り方(具体的な流れ)
公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成するため、一定の手順に沿って進める必要があります。
全体の流れはシンプルですが、事前準備や内容の整理が不十分だとスムーズに進まないケースも多いため注意が必要です。
ここでは、実際の流れとあわせて、つまずきやすいポイントも解説します。
公正証書遺言の手続きの流れ(5ステップ)
- 遺言内容の整理
- 必要書類の準備
- 公証役場へ予約
- 公証人と打ち合わせ
- 作成・署名

まず最初に行うのが、遺言の内容(原案)を整理することです。
- 誰に財産を渡すのか
- どの財産を渡すのか
- どのような割合・方法で渡すのか
この段階で内容が曖昧なままだと、その後の手続きが止まります。
特に多いのが以下のようなケースです。
- 不動産の情報が曖昧で特定できない
- 預貯金の口座が整理できていない
- 誰にどれだけ渡すか決めきれていない
公正証書遺言は「書いてもらえばOK」ではなく、
“中身が決まっていないと進まない手続き”です。
この段階で内容が曖昧なまま進めてしまうと、
公証役場とのやり取りが何度も発生し、
結果的に手続きが長引く原因になります。
公正証書遺言が本当に必要か迷っている方は、
こちらの記事も参考にしてください。
公正証書遺言は本当に必要?自筆証書との違い・作るべき人・費用と手続きまで解説
なお、遺言書の有無が不明な場合は、先に確認しておく必要があります。
確認方法についてはこちらをご覧ください。
遺言公正証書の検索方法と落とし穴|見つからない原因と正しい手順を解説
内容が整理できたら、必要書類を準備します。
主な書類は以下のとおりです。
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 戸籍謄本や住民票
- 財産に関する資料(不動産登記・通帳など)
ここでもよくあるのが、
書類不足で打ち合わせがやり直しになるケースです。
特に不動産がある場合は、
「正確な登記情報」が必要になるため事前確認が重要です。
※一般的な住所や本籍地とは異なります。
準備ができたら、公証役場に連絡して予約を取ります。
このとき、事前に遺言内容を伝えておくことで、
公証人が原案を作成してくれるため、当日の手続きがスムーズになります。
逆に、準備せずに行くと
その場では作成できず、後日やり直しになることもあります。
特に多いのが、
「とりあえず予約してから考えよう」と進めてしまい、
当日に内容が固まっておらず、作成できないケースです。
公証役場がどのような機関かわからない方はこちら
遺言書は公証役場で作るべき?作成方法・費用・失敗例まで徹底解説
予約日に公証役場へ行き、内容の最終確認を行います。
- 内容に問題がないか
- 法的に問題のある表現がないか
- 不明確な部分がないか
などを公証人がチェックし、必要に応じて修正されます。
この段階で多いミスや不足事項
- 表現が曖昧で修正される
- 遺留分に関する指摘を受ける
- 内容の整理不足で再検討になる
内容に問題がなければ、公正証書遺言が作成されます。
当日の流れ
①本人確認と証人の立会い
公証人が、遺言者本人であること(免許証やマイナンバーカード等で確認)と、遺言能力があるかを確認します。また、以降の手続きに関して、終始2名以上の証人が立ち会います。
②遺言内容の口授(こうじゅ)
遺言者が公証人に対して、遺言の内容を口頭で伝えます。(※耳が不自由な場合などは、手話や筆談での対応も可能です)
③内容の読み上げ・確認
公証人が筆記した内容を、遺言者と証人に読み上げるか、閲覧させます。間違いがないか全員で確認します。
④署名・押印
内容に問題がなければ、遺言者と証人がそれぞれ署名し、押印(実印)します。
⑤公証人の署名・押印
最後に公証人が署名・押印して公正証書が完成します。
⑥手数料の支払い
公証人手数料を支払い、遺言書の「正本」と「謄本」を受け取ります。
※正本と謄本は、どちらも原本の写しですが、法的効力に決定的な違いがあります。
・正本は原本と同一の法的効力を持ち、手続きに使用可能です。
・謄本は原本の全内容を写したコピーであり、通常は証拠確認や控え用として使われ、原則として原本と同じ手続き効力は持ちません。
当日の公証役場での所要時間は、おおむね30分〜1時間程度です。
遺言の本文が少ない場合で30分、財産が多く記載と確認に手間取った場合でも2時間以内に終了します。
完成した遺言原本は、公証役場に原本が保管されるため、
紛失や改ざんの心配はありません。
✔ ポイントまとめ
公正証書遺言の作成は、一見難しそうに感じますが、
実際の手続きの流れ自体はシンプルです。
ただし、スムーズに進められるかどうかは、
事前準備と内容の整理に大きく左右されます。
- 手続きの流れ自体はシンプル
- 事前準備ができているかどうかが重要
- 遺言内容の複雑さによって難易度が変わる
特に、「誰に何をどのように残すか」が明確でない場合、
手続きが途中で止まってしまうこともあるため注意が必要です。
スムーズに進めるためには、まずSTEP1の「遺言内容の整理」をしっかり行うことが重要です。
遺言書の代筆は可能?代筆に関する法律と注意点、適切な作成方法を徹底解説
2. 公正証書遺言の作成にかかる期間の目安
公正証書遺言の作成にかかる期間は、一般的に2週間〜1ヶ月程度が目安です。
ただし、遺言の内容や準備状況によって前後します。
最短で作成できるケース(約1〜2週間)
- 財産内容が整理されている
- 必要書類がすぐ揃う
- 公証役場の予約がスムーズに取れる
このような場合は、比較的短期間で作成できます。
一般的なケース(約2週間〜1ヶ月)
- 財産や相続内容の整理に時間がかかる
- 書類の取得に数日〜1週間程度かかる
- 公証役場の予約待ちがある
多くの方はこのパターンになります。
時間がかかるケース(1ヶ月以上)
- 不動産が多く、資料の整理に時間がかかる
- 相続内容(誰に何を渡すか)が決まっていない
- 家族間の調整が必要
このような場合は、準備段階で時間がかかる傾向があります。
補足(重要)
公正証書遺言は「当日行けばすぐ作れる」というものではなく、
事前準備の完成度によって期間が大きく変わる手続きです。
スムーズに進めるためには、
STEP1で解説した「遺言内容の整理」をしっかり行うことが重要です。
3. 公正証書遺言は自分で作れる?専門家に依頼すべき?
公正証書遺言は自分で作成することも可能ですが、内容によっては専門家のサポートが必要になるケースもあります。
ここでは、自分でできるケースと依頼すべきケース、そして判断のポイントを整理します。

自分で作成できるケース
以下のような場合は、自分で作成することも現実的です。
- 財産が預貯金中心でシンプル
- 相続人が少なく関係が明確
- 相続割合も一般的な範囲で問題ない
このようなケースであれば、内容を整理し、公証役場とやり取りを行うことで対応できる可能性があります。
ただし、あくまで「シンプルな場合に限る」という点は押さえておく必要があります。
「自分でできそう」と感じる場合でも、
実際には途中で判断に迷い、手続きが止まってしまうケースも少なくありません。
特に、
・誰にどの割合で渡すか
・遺留分をどう考えるか
といった部分で悩む方が多いのが実情です。
専門家への依頼を検討すべきケース
一方で、次のようなケースでは注意が必要です。
- 相続人以外に財産を渡したい(遺贈・寄付)
- 相続割合を調整したい
- 不動産など分けにくい財産がある
- 確実にトラブルを防ぎたい
これらは、内容の設計ミスがそのまま結果に影響する可能性があります。
特に、
「特定の人に渡したい」「団体に寄付したい」
といったケースでは、書き方次第で意思が実現されないリスクもあるため、慎重な判断が必要です。
判断のポイント
最も重要なのは、「費用」ではなく「確実性」で判断することです。
公正証書遺言は、単に作ることが目的ではなく、
自分の意思を確実に実現するための手続きです。
もし迷った場合は、次の視点で考えてみてください。
- 手間をかけてでも自分で進めたいか
- 費用をかけてでも確実に残したいか
公正証書遺言はやり直すこと自体は可能ですが、
相続が発生した後に修正することはできません。
そのため、
「この内容を確実に実現したいかどうか」
を基準に判断することが重要です。
また、仕事が忙しく時間がない、収入が多い方は専門家に頼る方がコスパが高いと思います。
なお、公正証書遺言の費用は一般的に数万円〜10万円程度が目安ですが、内容や作成方法によって異なります。
費用の内訳や具体的なシミュレーションについては、こちらで詳しく解説しています
公正証書遺言の費用はいくら?総額・手数料・節約方法をわかりやすく解説
「まだ早いのではないか」
「もう少し考えてからでもいいのではないか」
と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、公正証書遺言は「思い立ったとき」に準備しておくことで、
後から慌てずに済むケースが多いのも事実です。
なお、遺言書がすでに作成されているかどうかによっても、今後の対応は変わります。
事前に確認しておきたい方はこちらをご覧ください。
遺言公正証書の検索方法と落とし穴|見つからない原因と正しい手順を解説
4. よくある質問(FAQ)
ここまで読んでいただいた方から、よくある質問をまとめました。
Q. 公正証書遺言はどこで作るのですか?
公正証書遺言は、公証役場で作成します。
公証役場とは、公証人が法律に基づいて契約書や遺言書などを作成・認証する公的な機関です。
手続きの流れとしては、事前に公証役場へ連絡して予約を取り、
遺言内容や必要書類を準備したうえで、公証人と打ち合わせを行い、最終的に遺言書を作成します。
なお、公証役場は全国にあり、原則としてどこの公証役場でも作成可能です。
自宅や入院先などへの出張対応が可能な場合もあるため、状況に応じて相談するとよいでしょう。
※公証役場の役割や探し方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
遺言書は公証役場で作るべき?作成方法・費用・失敗例まで徹底解説
Q. 公正証書遺言は自分で書くことはできますか?
公正証書遺言は自分で文章を書くものではなく、公証人が作成する遺言書です。
ただし、内容(誰に何を渡すか)は自分で決める必要があります。
Q. 相続人以外に財産を渡すことはできますか?
可能です。これを「遺贈」といいます。
ただし、書き方や内容に不備があると実現できない可能性があるため、正確に記載することが重要です。
Q. 公正証書遺言でもトラブルになることはありますか?
形式的に無効になるリスクは低いですが、内容が曖昧だったり、遺留分を考慮していなかったりすると、相続トラブルにつながる可能性があります。
Q. 公正証書遺言は自分で作るべき?専門家に依頼すべき?
財産や相続関係がシンプルな場合は自分で作成することも可能です。
一方で、遺贈や相続割合の調整などがある場合は、専門家への依頼を検討した方が安心です。
Q. 公正証書遺言の費用はいくらくらいかかりますか?
一般的には数万円〜10万円程度が目安ですが、財産額や作成方法によって異なります。
詳しい費用の内訳やシミュレーションについては、こちらで解説しています。
公正証書遺言の費用はいくら?総額・手数料・節約方法をわかりやすく解説

まとめ|確実に意思を実現するために
公正証書遺言は、正しい方法で作成すれば、
自分の財産を「誰に」「どのように」残すかを確実に実現できる仕組みです。
一方で、内容の設計を誤ると、
- 意図した相手に財産が渡らない
- 相続人とのトラブルになる
といったリスクもあります。
特に、
- お世話になった人に財産を残したい
- 応援している団体に寄付したい
- 自分の意思で相続内容を決めたい
といった場合は、
作り方の精度がそのまま結果に直結します。
公正証書遺言はやり直すことはできますが、
相続が発生した後に修正することはできません。
そのため、
「確実に実現したい内容かどうか」
を基準に、作成方法を選ぶことが重要です。
もし、
- 自分で進められるか不安がある
- 内容に間違いがないか確認したい
- 確実に遺言を残したい
と感じている場合は、専門家のサポートを活用することも一つの選択肢です。
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特定行政書士 野中雅敏(IT行政書士事務所)
- 国家資格:行政書士(登録番号:25080391)
- 経歴:IT業界出身/相続・遺言分野を専門取り組み中
- 趣味:競泳
- メッセージ:
「遺言は“難しいこと”ではなく、“優しさのカタチ”です。
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