親や夫が亡くなった直後は、気持ちの整理がつかないまま、葬儀や役所への届出、相続のことまで考えなければならず、何から手をつければよいのか分からなくなるものです。
「手続きに漏れがないか」「期限に間に合うのか」「自分で進めて大丈夫なのか」と、不安を感じてこのページにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
相続手続きは、すべてを一度に終わらせる必要はありません。大切なのは、急ぐことと、順番に進めればよいことを分けて考えることです。
この記事では、相続手続きの流れを時系列で整理し、今やるべきことを分かりやすく解説します。自分で進められるか、専門家に相談した方がよいかを考える目安もお伝えします。

目次
①相続手続きの流れをフローチャートで確認する
相続手続きは、すべてを同時に進める必要はありません。まずは全体の流れを把握し、期限の短いものから順番に確認していきましょう。

死亡後から相続完了までの手順
死亡届の提出や葬儀、年金・健康保険・生命保険など、まずは死亡後に必要な手続きを進めます。
公正証書遺言、法務局で保管された自筆証書遺言、自宅や貸金庫に保管された遺言書がないか確認します。
戸籍を集めて、誰が法定相続人になるのかを確認します。相続人が確定する前に遺産分割を進めないことが大切です。
預貯金、不動産、株式などのプラスの財産だけでなく、借金や未払金、保証債務も確認します。
財産と負債の内容を踏まえ、単純承認・相続放棄・限定承認のどれを選ぶか検討します。
故人に確定申告が必要だった場合は、相続人が代わって準確定申告を行います。
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産の分け方を話し合い、必要に応じて遺産分割協議書を作成します。
銀行口座、不動産、株式、証券口座、自動車などについて、相続手続きを進めます。
相続財産が基礎控除額を超える場合などは、相続税の申告と納付を行います。
この中で、最初に意識したいのが、遺言書の確認と相続財産の調査です。
遺言書がある場合とない場合では、その後の進め方が変わります。また、預貯金や不動産だけでなく、借金や未払金が見つかることもあります。相続放棄を検討する可能性がある場合は、早めに財産の全体像を確認しておくことが大切です。
各手続きにかかる日数や、相続全体が終わるまでの目安については、相続手続きが完了するまでの期間をご確認ください。
相続手続きの主な期限
相続手続きには、期限が決まっているものがあります。
| 目安 | 主な手続き |
|---|---|
| 死亡後できるだけ早く | 遺言書の確認、相続人・相続財産の調査 |
| 原則3か月以内 | 相続放棄・限定承認の検討 |
| 原則4か月以内 | 準確定申告 |
| 原則10か月以内 | 相続税の申告・納付 |
| 原則3年以内 | 相続登記 |
すべての手続きをすぐに終わらせる必要はありません。ただし、3か月・4か月・10か月といった期限があるため、「あとで考えよう」と放置しないことが重要です。
まずは、今すぐ確認することと、少し後から進めることを分けて整理しましょう。
②死亡直後に行う相続手続き
親や夫が亡くなった直後は、葬儀や役所への届出など、目の前の対応だけで精一杯になりやすい時期です。相続手続きまで一度に終わらせる必要はありません。
親の葬儀を終え、仕事に復帰した後に何から整理すればよいか迷っている方は、親が亡くなった後に子どもが最初の週末にやることも参考にしてください。
夫を亡くした妻は、相続手続きだけでなく、当面の生活費、自宅、夫名義の財産、前婚の子がいる場合の相続にも注意が必要です。
夫が亡くなった後の手続き|妻が生活を守りながら相続を進める方法で、妻の立場に絞って詳しく解説しています。
まずは、急いで確認すべきことから順番に進めましょう。
死亡届や葬儀などの手続きを進める
死亡直後は、死亡届の提出や火葬許可の申請、葬儀の手配などを進めます。病院や葬儀社が案内してくれることも多いため、分からないことはその都度確認しながら進めて問題ありません。
あわせて、健康保険、年金、勤務先、生命保険などへの連絡が必要になる場合もあります。
この段階では、相続財産の分け方まで急いで決める必要はありません。ただし、故人の通帳や契約書、印鑑、郵便物などは、後の相続手続きに必要になるため、まとめて保管しておきましょう。
故人の重要書類や所持品を確認する
相続手続きでは、故人が残した書類や郵便物が重要な手がかりになります。
次のようなものがないか確認してください。
- 預金通帳やキャッシュカード
- 不動産の権利証や固定資産税の通知書
- 証券会社や保険会社からの郵便物
- 借入れやローンに関する書類
- クレジットカードの利用明細
- 遺言書やエンディングノート
- 貸金庫や専門家との契約書類
見つけた書類は、処分せず一か所にまとめて保管します。内容が分からない書類も、後で財産や負債を調べる手がかりになる可能性があります。
遺言書がないか確認する

相続手続きを本格的に進める前に、遺言書の有無を確認します。
遺言書がある場合は、その内容によって遺産の分け方や手続きの進め方が変わるためです。
遺言書には、主に次のような保管方法があります。
| 遺言書の種類・保管方法 | 主な確認先 |
|---|---|
| 公正証書遺言 | 公証役場 |
| 法務局に保管された自筆証書遺言 | 法務局 |
| 自宅や貸金庫に保管された自筆証書遺言 | 自宅、貸金庫、重要書類の保管場所 |
| 専門家などに預けられた自筆証書遺言 | 行政書士、司法書士、弁護士、信託銀行など |
「遺言書はないだろう」と思い込まず、順番に確認することが大切です。
公正証書遺言を検索する
故人が公正証書遺言を作成していた場合、公証役場の遺言検索システムを利用して、その有無を確認できる場合があります。
自宅に遺言書の正本や謄本が見つからなくても、公証役場に原本が保管されている可能性があります。
あわせて、次のようなものが残っていないか確認しましょう。
- 公証役場から届いた封筒
- 公証人とのやり取り
- 遺言書の正本や謄本
- 行政書士、司法書士、弁護士などへの相談記録
- 遺言作成に関する領収書や契約書
公正証書遺言が確認できた後は、遺言書の内容、法定相続人、遺言執行者、現在の財産を確認し、預貯金や不動産などの手続きを進めます。詳しい手順は、公正証書遺言がある場合の相続手続きで解説しています。
法務局に保管された自筆証書遺言を確認する
故人が自筆証書遺言書保管制度を利用していた可能性もあります。
自宅に遺言書が見つからない場合でも、法務局に保管されていることがあります。次のような書類がないか確認してください。
- 法務局から届いた通知
- 保管証
- 申請書の控え
- 遺言書保管制度に関する案内
- 法務局とのやり取りが分かる書類
法務局に保管された自筆証書遺言は、自宅などで保管されていた自筆証書遺言とは、その後の扱いが異なります。
自宅や貸金庫などに保管された遺言書を探す
自筆証書遺言は、故人が自宅などに保管していることもあります。
特に、次のような場所を確認しましょう。
- 自宅の金庫
- 机や書棚
- 仏壇
- 通帳や印鑑の保管場所
- 重要書類のファイル
- 銀行の貸金庫
- 入院先や高齢者施設から返却された荷物
- 行政書士、司法書士、弁護士などの専門家
- 信託銀行や遺言信託に関する書類
エンディングノートに、遺言書そのものではなく、保管場所だけが書かれていることもあります。
遺言書を見つけた後の注意点
遺言書を見つけた後は、すぐに開封したり内容どおりに手続きを進めたりせず、まず遺言書の種類と保管状態を確認します。
封印された遺言書を自己判断で開封しない
封印された遺言書を見つけても、自己判断で開封しないようにしましょう。
自宅や貸金庫などで保管されていた自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認が必要になる場合があります。
誤って開封したからといって、直ちに遺言書が無効になるとは限りません。ただし、そのまま手続きを進めず、必要な対応を確認することが大切です。
また、内容に納得できない場合でも、次のような行為をしてはいけません。
- 遺言書を破棄する
- 遺言書を隠す
- 内容を書き換える
- 一部を切り取る
- 他の相続人に見せずに保管する
見つけた遺言書は、そのままの状態で保管しましょう。
遺言書の種類によって必要な手続きが異なる
遺言書は、種類や保管方法によって、その後の手続きが異なります。
| 遺言書の種類 | 家庭裁判所の検認 |
|---|---|
| 公正証書遺言 | 原則として不要 |
| 法務局に保管された自筆証書遺言 | 原則として不要 |
| 自宅や貸金庫などで保管された自筆証書遺言 | 原則として必要 |
| 秘密証書遺言 | 原則として必要 |
遺言書が見つかったら、あわせて次の点も確認します。
- 遺言執行者が指定されているか
- どの財産について書かれているか
- 相続人以外への遺贈があるか
- 遺言書が複数残されていないか
- 日付や署名などに問題がないか
遺言書の内容や有効性に疑問がある場合は、自己判断で相続手続きを進めず、専門家へ相談することも検討しましょう。な手続きを確認します。
自宅や貸金庫から糊付けされた自筆証書遺言が見つかった場合は、すぐに開封せず、家庭裁判所の検認が必要かを確認します。詳しくは「自筆証書遺言がある場合の相続手続き」をご確認ください。
故人の財産を安易に処分しない
相続放棄を検討する可能性がある場合は、故人の財産を安易に使ったり処分したりしないことも重要です。
たとえば、次のような行為には注意が必要です。
- 故人の預金を私的に使う
- 不動産や自動車を売却する
- 高価な家財を処分する
- 故人の借金を自己判断で返済する
葬儀費用や日常的な管理に必要な支出など、事情によって扱いが異なる場合もあります。判断に迷うときは、財産を動かす前に専門家へ相談した方が安全です。
死亡直後に確認したいチェックリスト
以下の項目を、内容ごとに分けて確認しましょう。
死亡直後の手続き
- □ 死亡届や葬儀など、死亡直後に必要な手続きを進めた
- □ 故人の通帳・印鑑・契約書・郵便物を一か所にまとめた
遺言書の確認
- □ 公正証書遺言の有無を確認した
- □ 法務局に保管された自筆証書遺言の有無を確認した
- □ 自宅・貸金庫・重要書類の保管場所を確認した
- □ 専門家や信託銀行に遺言書を預けていないか確認した
遺言書を見つけた後の対応
- □ 見つけた遺言書を自己判断で開封していない
- □ 遺言書を破棄・隠匿・書き換えしていない
- □ 遺言書の種類と、検認が必要かどうかを確認した
故人の財産の取り扱い
- □ 故人の預金を私的に使用していない
- □ 不動産や自動車を安易に売却していない
- □ 高価な家財を自己判断で処分していない
- □ 故人の借金を自己判断で返済していない
すべてを一度に終える必要はありません。まずは、遺言書と重要書類の確認、故人の財産を不用意に動かさないことを優先しましょう。
このように「死亡直後の手続き」「遺言書の確認」「発見後の対応」「財産の取り扱い」に分けると、チェックリストの役割が分かりやすくなります。ん。まずは、遺言書と重要書類の確認を優先し、後の相続手続きに必要な情報を残しておくことが大切です。
③3か月を目安に相続人と相続財産を調べる

死亡直後の手続きと遺言書の確認が一段落したら、次は相続人と相続財産を調べます。
ここで最初の大きな目安になるのが、相続放棄や限定承認の期限です。原則として、自己のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に判断する必要があります。
そのため、3か月以内にすべての相続手続きを終える必要はありませんが、少なくとも次のことは早めに確認しておく必要があります。
- 誰が相続人になるのか
- どのような財産があるのか
- 借金や未払金がないか
- 相続するか、放棄するか
「預金や不動産があるから大丈夫」と思っていても、後から借金や保証債務が見つかることがあります。プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含めて確認することが重要です。
戸籍を集めて法定相続人を確認する
まずは、誰が相続人になるのかを戸籍で確認します。
家族が把握している範囲だけで判断せず、一般的には故人の出生から死亡までの戸籍を集め、婚姻歴や子の有無などを確認します。
相続人を確認するときは、次のような点に注意しましょう。
- 前の配偶者との間に子がいないか
- 認知した子がいないか
- 養子縁組をしていないか
- 兄弟姉妹が相続人になる場合、すでに亡くなっている人がいないか
- 相続人の中に未成年者や判断能力が十分でない人がいないか
相続人全員がそろわないまま遺産分割協議を行うと、その協議が無効になるおそれがあります。
戸籍の広域交付制度を利用できる場合がある
戸籍の収集には、戸籍の広域交付制度を利用できる場合があります。
この制度を利用すると、本籍地が遠方にある戸籍でも、最寄りの市区町村役場の窓口でまとめて請求できます。故人が転籍を繰り返している場合でも、複数の自治体へ個別に郵送請求する負担を減らせる点がメリットです。
ただし、広域交付制度には主に次のような制限があります。
- 請求できる人の範囲に制限がある
- 兄弟姉妹などの戸籍は請求できない場合がある
- 原則として本人が窓口へ出向く必要がある
- 郵送や代理人による請求はできない
- 戸籍の附票や一部の戸籍は対象外となる
そのため、すべての相続関係で広域交付制度だけを使って戸籍がそろうとは限りません。利用できない戸籍は、本籍地の市区町村へ別途請求します。
戸籍の広域交付制度の利用方法や、取得できる戸籍・取得できない戸籍、兄弟姉妹相続での注意点については、以下の記事で詳しく解説しています。
相続で戸籍の広域交付を利用する方法|取得できる戸籍・できない戸籍を行政書士が解説
預貯金・不動産・株式などの財産を調べる
相続人の確認と並行して、故人の財産を調べます。
主な調査対象は次のとおりです。
- 預貯金
- 不動産
- 株式や証券口座
- 生命保険
- 自動車
- 貴金属や骨董品
- 貸付金
- 暗号資産などのデジタル資産
- 事業用の財産
通帳、キャッシュカード、固定資産税の通知書、証券会社や保険会社からの郵便物などが手がかりになります。
また、スマートフォンやパソコン、メール、インターネットバンキングの利用履歴から、口座や契約が見つかることもあります。
借金・ローン・保証債務を優先的に確認する
相続放棄を判断するうえでは、借金や未払金の確認が特に重要です。
確認したい主な項目は次のとおりです。
- 銀行や消費者金融からの借入れ
- 住宅ローン
- クレジットカードの未払金
- 税金や社会保険料の未納
- 家賃や公共料金の未払い
- 個人間の借入れ
- 連帯保証債務
- 事業上の負債
本人が借金について家族に話していないこともあります。郵便物や通帳の引き落とし履歴、契約書などを丁寧に確認しましょう。
特に、故人が会社経営や個人事業をしていた場合は、事業上の債務や保証債務がないか注意が必要です。
相続財産目録を作成する
調べた財産は、相続財産目録として一覧にまとめると整理しやすくなります。
相続財産目録には、たとえば次のように記載します。
| 区分 | 財産の内容 | 評価額・残高 | 備考 |
|---|---|---|---|
| プラスの財産 | ○○銀行 普通預金 | 1,500,000円 | 残高証明書を取得予定 |
| プラスの財産 | 自宅不動産 | 調査中 | 固定資産税通知書あり |
| マイナスの財産 | クレジットカード未払金 | 120,000円 | 最終請求額を確認中 |
| 不明 | 連帯保証の有無 | 調査中 | 事業関係書類を確認 |
金額がまだ分からない財産も、「調査中」として記録しておきましょう。
財産目録を作ると、相続するか放棄するかの判断だけでなく、その後の遺産分割や名義変更も進めやすくなります。
3か月以内に相続方法を判断できる状態を目指す
相続には、主に次の3つの方法があります。
| 相続方法 | 概要 |
|---|---|
| 単純承認 | プラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継ぐ |
| 相続放棄 | 財産も借金も原則として引き継がない |
| 限定承認 | 相続したプラスの財産の範囲内で借金などを負担する |
実際には、単純承認を選ぶケースが多いですが、借金が多い可能性がある場合や、財産の全体像が分からない場合は慎重な判断が必要です。
相続放棄や限定承認を検討する場合は、期限ぎりぎりになる前に相談した方が安全です。
財産調査が終わらない場合は早めに相談する
3か月以内に財産の全体像が分からないケースもあります。
たとえば、次のような場合です。
- 故人が複数の金融機関を利用していた
- 不動産が複数ある
- 会社経営や個人事業をしていた
- 借金や連帯保証の有無が分からない
- 相続人が多い
- 戸籍の収集に時間がかかっている
- 遺品整理が終わらず書類が見つからない
このような場合でも、そのまま放置するのは危険です。期限までに判断が難しいと感じた時点で、早めに専門家へ相談しましょう。
3か月までに確認したいチェックリスト
相続人の確認
- □ 故人の出生から死亡までの戸籍を集め始めた
- □ 誰が法定相続人になるのか確認した
- □ 前婚の子や認知した子がいないか確認した
- □ 相続人全員の連絡先を整理した
プラスの財産の確認
- □ 預貯金を確認した
- □ 不動産を確認した
- □ 株式や証券口座を確認した
- □ 生命保険や自動車などを確認した
マイナスの財産の確認
- □ 借金やローンを確認した
- □ クレジットカードの未払金を確認した
- □ 税金や公共料金の未納を確認した
- □ 連帯保証債務の有無を確認した
相続方法の判断
- □ 相続財産目録を作り始めた
- □ 相続放棄の可能性を検討した
- □ 3か月までの残り期間を確認した
- □ 判断が難しい場合の相談先を確認した
すべての財産を完全に把握してからでなければ何も進められないわけではありません。大切なのは、相続放棄の可能性を見落とさないよう、早い段階から相続人と財産の調査を始めることです。
④相続放棄を検討する場合の手順

相続財産を調べた結果、借金が多い可能性がある場合や、財産の全体像が分からない場合は、相続放棄を検討します。
相続放棄は、あとから自由に撤回できる手続きではありません。反対に、何もしないまま期限を過ぎると、原則として相続を承認したものとして扱われる可能性があります。
そのため、「借金があるかもしれない」「保証人になっていた可能性がある」と分かった時点で、早めに判断材料を集めることが大切です。
相続放棄とは
相続放棄とは、被相続人の財産を受け継がないための手続きです。
相続放棄が認められると、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や未払金などのマイナスの財産も、原則として引き継ぎません。
ただし、プラスの財産だけを受け取り、借金だけを放棄することはできません。
相続放棄を検討した方がよいケース
次のような場合は、相続放棄を検討する余地があります。
- 借金が財産を上回っている
- 借金の総額が分からない
- 連帯保証債務がある可能性がある
- 故人が会社経営や個人事業をしていた
- 遺産分割や相続トラブルに関わりたくない
- 管理が難しい不動産や負担の大きい財産がある
- 他の相続人との関係が複雑である
ただし、相続放棄が最善とは限りません。プラスの財産とマイナスの財産の内容を整理したうえで判断します。
相続放棄の期限は原則3か月
相続放棄は、原則として、自己のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。これは一般に「熟慮期間」と呼ばれます。根拠は民法915条です。
この3か月は、すべての相続手続きを終える期限ではありません。
3か月以内に必要なのは、主に次の判断です。
- 相続する
- 相続放棄する
- 限定承認を検討する
「まだ時間がある」と思っていると、戸籍の収集や財産調査に時間がかかり、期限が迫ることがあります。
財産調査が終わらない場合の対応
3か月以内に財産の全体像が分からない場合は、家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申し立てられることがあります。
ただし、申し立てをすれば必ず認められるとは限りません。また、期限直前では準備が間に合わないこともあります。
次のような場合は、早めに対応を検討しましょう。
- 金融機関が多く、残高確認に時間がかかる
- 借金の有無が分からない
- 故人が事業をしていた
- 戸籍収集に時間がかかっている
- 海外や遠方に財産がある
- 相続人が多い
- 保証債務の有無を確認できない
相続放棄に影響する可能性がある行為
相続放棄を検討している間は、故人の財産を安易に処分しないように注意します。
たとえば、次のような行為は慎重に判断する必要があります。
- 故人の預金を私的に使う
- 不動産や自動車を売却する
- 高価な家財を処分する
- 株式や投資信託を解約する
- 故人の借金を自己判断で返済する
- 遺産を自分のものとして分配する
これらの行為によって、相続を承認したと判断される可能性があります。
一方で、葬儀費用の支払いや、財産を守るための保存行為などは、事情によって扱いが異なります。迷う場合は、財産を動かす前に確認した方が安全です。
期限が迫っている場合の対応
3か月の期限が近い場合は、財産調査が完全に終わっていなくても、そのまま放置しないことが重要です。
まず、次の事項を整理しましょう。
- 相続が始まったことを知った日
- 被相続人の死亡日
- 現在把握している財産
- 現在把握している借金
- 不明な財産や債務
- これまでに故人の財産を使ったか
- 他の相続人が相続放棄を検討しているか
相続放棄は、相続人ごとに判断し、個別に手続きを行います。ある相続人が放棄したからといって、他の相続人も自動的に放棄したことにはなりません。
また、先順位の相続人が相続放棄すると、次順位の人が相続人になることがあります。自分だけでなく、家族全体への影響も考えておく必要があります。
「被相続人の死亡日」と「相続が始まったことを知った日」は同じとは限らない
相続放棄の3か月は、単純に「被相続人が亡くなった日」から数えるとは限りません。
法律上の起算点は、原則として、自分のために相続が始まったことを知った時です(民法915条)。
ここでいう「知った時」とは、一般に次の2点を知った時を指します。
- 被相続人が亡くなったこと
- 自分が相続人になったこと
たとえば、同居していた親が亡くなり、自分が相続人であることも分かっていた場合は、通常、死亡を知った日が3か月の起算点になります。
一方、次のようなケースでは、死亡日と起算点がずれることがあります。
| ケース | 3か月の起算点の考え方 |
|---|---|
| 親の死亡を当日に知り、自分が相続人であることも分かっていた | 通常は死亡を知った日 |
| 長期間疎遠で、死亡を後から知った | 死亡を知り、自分が相続人であることを知った日 |
| 先順位の相続人が相続放棄し、後から自分が相続人になった | 自分が相続人になったことを知った日 |
| 兄弟姉妹の死亡後、子や親が相続放棄して自分に順位が回ってきた | 自分に相続権が移ったことを知った日 |
ただし、「借金があることを知った日」から必ず3か月が始まるわけではありません。借金を後から知った場合でも、当然に期限が延びるとは限らないため注意が必要です。
期限を確認するときは、次の日付を整理しておきましょう。
- 被相続人の死亡日
- 死亡を知った日
- 自分が相続人であると知った日
- 先順位の相続人が放棄したことを知った日
- 借金や保証債務が判明した日
起算点の判断に迷う場合は、自己判断で期限を決めず、早めに家庭裁判所や専門家へ確認することが大切です。
相続放棄を検討するときのチェックリスト
期限の確認
- □ 相続が始まったことを知った日を確認した
- □ 3か月の期限を確認した
- □ 期限までの残り日数を確認した
財産と負債の確認
- □ 預貯金や不動産などの財産を調べた
- □ 借金や未払金を調べた
- □ 連帯保証債務の可能性を確認した
- □ 不明な財産や負債を整理した
財産の取り扱い
- □ 故人の預金を私的に使っていない
- □ 財産を売却・処分していない
- □ 借金を自己判断で返済していない
- □ 判断に迷う行為は専門家へ確認した
手続きの準備
- □ 相続放棄が必要か検討した
- □ 家庭裁判所への申述に必要な書類を確認した
- □ 財産調査が終わらない場合の対応を検討した
- □ 他の相続人への影響を確認した
相続放棄は、期限と財産の取り扱いが特に重要です。借金の有無が分からない場合や、期限が近づいている場合は、早めに専門家へ相談することを検討しましょう。
⑤4か月以内に故人の所得税申告が必要か確認する
故人が生前に確定申告をしていた場合や、亡くなった年に一定の所得があった場合は、相続人が代わりに「準確定申告」を行うことがあります。
すべての人に必要な手続きではありませんが、期限があるため、相続財産の調査と並行して早めに確認しておきましょう。
準確定申告とは
準確定申告とは、亡くなった人のその年の所得について、相続人が代わりに行う確定申告です。
通常の確定申告は、1月1日から12月31日までの所得を本人が申告します。しかし、年の途中で亡くなった場合は、1月1日から死亡日までの所得について、相続人が申告します。
たとえば、故人が7月に亡くなった場合は、その年の1月1日から7月の死亡日までの所得が対象になります。
準確定申告が必要になる主なケース
次のような場合は、準確定申告が必要になる可能性があります。
- 自営業や個人事業をしていた
- 不動産収入があった
- 株式や不動産の売却益があった
- 年金収入が一定額を超えていた
- 複数の勤務先から給与を受け取っていた
- 給与以外に一定額を超える所得があった
- 生前に確定申告をしていた
- 医療費控除や寄附金控除などを受ける予定だった
一方で、会社員で勤務先が年末調整を行っていた場合や、所得の状況によっては、準確定申告が不要なこともあります。
「毎年確定申告をしていたか」「税務署から書類が届いていなかったか」「確定申告書の控えが残っていないか」を確認すると判断しやすくなります。
準確定申告の期限を確認する
準確定申告は、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に行います。
相続放棄の期限が原則3か月であるため、相続放棄を検討している場合は、その判断と並行して準確定申告の必要性も確認することになります。
ただし、相続放棄をした人が必ず準確定申告を行うとは限りません。誰が申告するかは相続関係によって異なるため、判断に迷う場合は税務署や税理士へ確認しましょう。
準確定申告に必要な書類を集める
準確定申告では、故人の所得や控除に関する書類を集めます。
主な書類は次のとおりです。
所得を確認する書類
- 給与所得の源泉徴収票
- 公的年金等の源泉徴収票
- 事業の帳簿や売上資料
- 不動産収入に関する契約書や入金記録
- 株式や投資信託の取引報告書
- 不動産の売買契約書
控除を確認する書類
- 医療費の領収書や医療費通知
- 生命保険料控除証明書
- 地震保険料控除証明書
- 寄附金の受領証
- 社会保険料の支払証明書
相続人に関する書類
- 相続人の本人確認書類
- 故人との関係が分かる戸籍
- 相続人のマイナンバーに関する書類
- 相続人が複数いる場合の付表など
必要書類は、故人の所得や相続人の状況によって変わります。前年の確定申告書の控えが残っていれば、何を申告していたかを確認する手がかりになります。
相続人が複数いる場合の注意点
相続人が複数いる場合は、原則として相続人が連名で申告します。
ただし、実務上は一人の相続人が取りまとめて手続きを進めることもあります。誰が申告を担当するか、必要書類を誰が保管しているかを早めに確認しておきましょう。
また、準確定申告によって税金の還付が生じることもあれば、納税が必要になることもあります。
還付金や納税額は、その後の遺産分割や相続税申告にも関係する可能性があるため、金額を記録しておくことが大切です。
準確定申告が必要か分からない場合
次のような場合は、税務署や税理士への相談を検討しましょう。
- 故人が毎年確定申告をしていた
- 事業や不動産所得があった
- 株式や不動産を売却していた
- 帳簿や申告書が見つからない
- 複数の所得がある
- 期限まで時間がない
- 相続税申告も必要になりそう
準確定申告は、相続手続きの中でも税務に関する手続きです。行政書士が代わりに税務申告を行うことはできないため、申告内容の判断や税額計算については税理士へ確認するのが適切です。
4か月までに確認したいチェックリスト
申告が必要か確認する
- □ 故人が毎年確定申告をしていたか確認した
- □ 給与・年金・事業・不動産などの所得を確認した
- □ 株式や不動産の売却がなかったか確認した
- □ 前年の確定申告書の控えを探した
必要書類を集める
- □ 源泉徴収票を確認した
- □ 事業や不動産収入の資料を確認した
- □ 医療費や保険料などの控除資料を集めた
- □ 相続人に関する書類を準備した
期限と相談先を確認する
- □ 準確定申告の期限を確認した
- □ 誰が申告を担当するか決めた
- □ 還付または納税の可能性を確認した
- □ 判断が難しい場合は税務署や税理士に相談した
準確定申告は、相続人全員に必要なわけではありません。まずは故人の所得状況を確認し、申告が必要かどうかを早めに判断しましょう。
⑥遺産の分け方を決める

相続人と相続財産の確認ができたら、次は遺産をどのように分けるかを決めます。
ここでは、遺言書の有無によって進め方が変わります。遺言書がある場合は、まずその内容を確認し、遺言書がない場合は相続人全員で話し合います。
急いで分け方を決めるよりも、相続人と財産の全体像を確認したうえで進めることが大切です。
遺言書がある場合は内容を確認する
遺言書が見つかった場合は、誰にどの財産を引き継がせる内容になっているかを確認します。
主に確認したいのは、次の点です。
- 誰が財産を受け取ることになっているか
- どの財産について指定があるか
- 遺言執行者が指定されているか
- 相続人以外への遺贈があるか
- 遺留分に関係する内容がないか
- 複数の遺言書が残されていないか
遺言書に書かれていない財産がある場合や、内容が不明確な場合は、その部分について相続人同士で話し合う必要が生じることがあります。
また、遺言書があっても、すべての手続きが自動的に進むわけではありません。預金や不動産の名義変更では、遺言書のほかに戸籍や本人確認書類などが必要になることがあります。
公正証書遺言がある場合は、遺言書で指定された財産について、原則としてその内容に沿って手続きを進めます。ただし、遺言書に記載されていない財産が見つかった場合などは、別途対応が必要です。詳しくは、公正証書遺言による相続手続きの流れをご確認ください。
遺言書がない場合は遺産分割協議を行う
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産の分け方を話し合います。これを遺産分割協議といいます。
遺産分割協議では、法定相続分どおりに分ける必要はありません。相続人全員が合意すれば、実情に合わせて分け方を決めることができます。
たとえば、次のような分け方があります。
- 自宅は配偶者が相続し、預金は子が相続する
- 一人が不動産を取得し、他の相続人へ代償金を支払う
- 不動産を売却し、売却代金を分ける
- 預金を一定の割合で分ける
ただし、一人でも参加していない相続人がいると、遺産分割協議は有効に成立しません。
相続人全員で遺産の分け方を話し合う
遺産分割協議では、相続人全員の合意が必要です。
直接集まって話し合うほか、電話やオンライン、書面のやり取りで進めることもあります。ただし、最終的には全員が同じ内容に合意していることを明確にする必要があります。
遺言書がある場合でも、相続人全員がその内容を理解したうえで合意すれば、遺言書とは異なる分け方を選べることがあります。
ただし、遺言執行者が指定されている場合や、相続人以外への遺贈がある場合などは、相続人だけの話し合いでは整理できないことがあります。そのため、遺言書の内容や関係者を確認したうえで進めることが大切です。
話し合う前に、次の情報をそろえておくと進めやすくなります。
- 相続人の一覧
- 相続財産目録
- 不動産や預貯金の評価額
- 借金や未払金
- 遺言書の有無と内容
- 生前贈与の有無
- 葬儀費用や立替金
- 誰がどの財産を希望しているか
財産の内容が不明確なまま話し合いを始めると、後から新たな財産が見つかったときに、再度協議が必要になることがあります。
また、遺言書と異なる分け方をする場合は、その合意内容を遺産分割協議書に明確に残しておくことが重要です。産が見つかったときに再度協議が必要になることがあります。
遺産分割協議書を作成する
相続人全員で遺産の分け方が決まったら、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書は、合意内容を証明するための書類です。法律上、必ず作成しなければならない場合ばかりではありませんが、預金の解約や不動産の名義変更などで必要になることがあります。
一般的には、次のような内容を記載します。
- 被相続人の氏名
- 死亡日
- 最後の住所
- 相続財産の内容
- 誰がどの財産を取得するか
- 後から財産が見つかった場合の扱い
- 相続人全員の住所と氏名
- 相続人全員の署名・押印
不動産については、登記事項証明書の記載に合わせて、所在や地番などを正確に記載する必要があります。
預金についても、金融機関名、支店名、口座種別、口座番号などを特定できるように記載します。
話し合いがまとまらない場合の対応を確認する
相続人同士で意見が合わず、遺産分割協議がまとまらないこともあります。
たとえば、次のようなケースです。
- 不動産を誰が取得するか決まらない
- 生前贈与を受けた人がいる
- 介護や家業への貢献をめぐって意見が分かれる
- 特定の相続人と連絡が取れない
- 遺言書の内容に納得できない相続人がいる
- 財産の評価額で意見が合わない
話し合いが難しい場合は、感情的な対立が深まる前に第三者へ相談することも大切です。
行政書士は、相続人間で争いがない場合の遺産分割協議書の作成などを扱えます。一方、すでに対立がある場合や、代理で交渉してほしい場合は、弁護士への相談が必要になります。
遺産分割で確認したいチェックリスト
遺言書の確認
- □ 遺言書の内容を確認した
- □ 遺言執行者の指定を確認した
- □ 遺言書に書かれていない財産がないか確認した
- □ 複数の遺言書がないか確認した
遺産分割協議の準備
- □ 相続人全員を確定した
- □ 相続財産目録を作成した
- □ 財産の評価額を確認した
- □ 借金や未払金を確認した
合意内容の整理
- □ 相続人全員で話し合った
- □ 誰がどの財産を取得するか決めた
- □ 後から財産が見つかった場合の扱いを決めた
- □ 遺産分割協議書を作成した
遺産の分け方は、相続人全員の生活や関係に影響します。期限だけを気にして急いで決めるのではなく、財産の内容を正確に把握し、全員が納得できる形を目指しましょう。
遺言書がない場合は、相続人と相続財産を把握したうえで、相続人全員による遺産分割協議を行います。戸籍収集や財産調査、遺産分割協議書の作成までの詳しい流れは、以下の記事で解説しています。
遺言書がない場合の相続|遺産分割協議の流れと注意点
⑦遺産相続の名義変更手続きを行う

遺産の分け方が決まったら、実際に預金や不動産、証券口座などの名義変更や解約手続きを進めます。
どの手続きでも、戸籍や遺産分割協議書、印鑑証明書などが必要になります。ただし、必要書類や提出先は財産の種類によって異なります。
手続きを進める前に、誰がどの財産を取得するのか、遺言書や遺産分割協議書の内容と一致しているかを確認しましょう。
銀行口座の相続手続きを行う
故人名義の預貯金は、金融機関で相続手続きを行います。
一般的には、次のような書類を求められます。
- 被相続人の戸籍
- 相続人の戸籍
- 相続人の印鑑証明書
- 遺言書
- 遺産分割協議書
- 金融機関所定の相続届
- 通帳やキャッシュカード
必要書類は、遺言書の有無や相続人の人数によって変わります。
銀行によっては、相続手続きを始めると口座が凍結され、入出金ができなくなります。家賃や公共料金の引き落としが続いている場合は、支払方法の変更も確認しておきましょう。
不動産の相続登記を行う
土地や建物を相続した場合は、法務局で相続登記を行います。
相続登記では、一般的に次のような書類が必要です。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍
- 相続人の戸籍
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人の住民票
- 遺言書または遺産分割協議書
- 固定資産評価証明書
- 登記申請書
不動産の名義変更は、銀行口座の解約などとは異なり、登記手続きが必要です。
遺産分割協議書に不動産を記載する際は、固定資産税の通知書だけでなく、登記事項証明書の表示に合わせて正確に記載することが大切です。
株式・証券口座の相続手続きを行う
故人が株式や投資信託を保有していた場合は、証券会社で相続手続きを行います。
一般的には、相続人名義の証券口座へ移管するか、売却して現金化したうえで分けます。
確認したい主な事項は次のとおりです。
- どの証券会社に口座があるか
- 上場株式や投資信託を保有しているか
- NISA口座があるか
- 配当金の未受領分がないか
- 信用取引や先物取引が残っていないか
証券口座では、預金とは異なる書類や手続きが必要になることがあります。取引報告書や証券会社からの郵便物を確認しましょう。
自動車やその他の財産の名義変更を行う
自動車、ゴルフ会員権、電話加入権、事業用資産なども、必要に応じて名義変更を行います。
自動車の場合は、車検証、遺産分割協議書、印鑑証明書などが必要になることがあります。
また、賃貸物件や事業用設備、許認可に関係する財産は、単なる名義変更だけでは済まない場合があります。
故人が個人事業をしていた場合は、契約の継続可否や取引先への連絡も確認しましょう。
相続手続きに必要な書類を確認する
相続手続きでは、同じ書類を複数の金融機関や役所へ提出することがあります。
よく使う書類は、次のとおりです。
| 書類 | 主な用途 |
|---|---|
| 被相続人の戸籍 | 相続関係の確認 |
| 相続人の戸籍 | 相続人であることの確認 |
| 印鑑証明書 | 遺産分割協議書や金融機関の手続き |
| 遺言書 | 遺言内容に沿った名義変更 |
| 遺産分割協議書 | 誰が財産を取得するかの証明 |
| 住民票 | 不動産登記など |
| 固定資産評価証明書 | 相続登記の登録免許税計算など |
| 残高証明書 | 預貯金額の確認 |
| 登記事項証明書 | 不動産の特定 |
提出先によっては、原本還付に対応してもらえることがあります。戸籍や印鑑証明書を何通用意するか、事前に確認しておくと効率的です。
名義変更を進めるときの注意点
名義変更では、遺言書や遺産分割協議書の内容と、実際の手続きが一致していることが重要です。
次のような点に注意しましょう。
- 財産の取得者が書類どおりになっているか
- 口座番号や不動産の表示に誤りがないか
- 相続人全員の合意が取れているか
- 必要書類の有効期限が切れていないか
- 相続税申告との整合性が取れているか
- 後から見つかった財産の扱いが決まっているか
また、財産ごとに手続きを個別に進めると、誰が何を取得したか分かりにくくなることがあります。進捗表を作り、提出先・必要書類・完了日を記録しておくと安心です。
名義変更で確認したいチェックリスト
銀行・預貯金
- □ 故人名義の口座を洗い出した
- □ 金融機関ごとの必要書類を確認した
- □ 公共料金などの引き落とし先を変更した
- □ 預金の払戻し先を確認した
不動産
- □ 登記事項証明書を取得した
- □ 誰が不動産を取得するか確認した
- □ 相続登記の必要書類を準備した
- □ 固定資産税の納付先を確認した
株式・証券
- □ 証券会社を確認した
- □ 相続人名義の証券口座を準備した
- □ 未受領配当金を確認した
- □ 信用取引などの有無を確認した
その他の財産
- □ 自動車の名義変更を確認した
- □ 保険や会員権などの手続きを確認した
- □ 事業用資産や契約の承継を確認した
- □ 手続きの進捗を一覧で管理した
名義変更は、財産の種類ごとに手続きが異なります。すべてを同時に終わらせようとせず、必要書類がそろったものから順番に進めると負担を減らせます。
⑧10か月以内に相続税申告が必要か確認する
遺産の内容と分け方が見えてきたら、相続税の申告が必要かを確認します。
相続税は、相続した人全員にかかるわけではありません。まずは相続財産の合計額を整理し、基礎控除額を超えるかどうかを確認することが出発点です。
申告が必要な場合は、原則として、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に、申告と納付を行います。
相続税申告が必要になる人
相続財産の課税価格の合計額が、基礎控除額を超える場合は、原則として相続税の申告が必要です。
基礎控除額は、次の式で計算します。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
たとえば、法定相続人が3人の場合の基礎控除額は、4,800万円です。
3,000万円+600万円×3人=4,800万円
相続財産の合計額が基礎控除額を下回る場合は、通常、相続税の申告は必要ありません。
ただし、財産の評価方法や控除・特例の適用によって判断が変わるため、単純に預金残高だけで決めないことが大切です。
相続財産の評価を行う
相続税の申告が必要かを判断するには、相続財産を金額に置き換えて評価します。
主な財産には、次のようなものがあります。
- 現金・預貯金
- 土地・建物
- 株式・投資信託
- 生命保険金
- 死亡退職金
- 自動車
- 貴金属・骨董品
- 貸付金
- 事業用財産
- 暗号資産
- 相続開始前の一定期間内に行われた贈与財産
一方、借金や未払金、一定の葬式費用などは、相続財産から差し引ける場合があります。
特に不動産や非上場株式は、預金のように金額が明確ではありません。評価方法によって相続税額が変わることがあるため、財産の種類が多い場合は慎重に確認しましょう。
生命保険金や死亡退職金も確認する
生命保険金や死亡退職金は、民法上の遺産とは扱いが異なる場合がありますが、相続税の計算では課税対象になることがあります。
ただし、相続人が受け取る生命保険金や死亡退職金には、それぞれ一定の非課税限度額があります。
そのため、「遺産分割の対象ではないから相続税にも関係しない」と考えないよう注意が必要です。
申告の要否を確認するときは、預金や不動産だけでなく、生命保険金や死亡退職金も含めて整理しましょう。
相続税の申告期限を確認する
相続税の申告と納付は、原則として、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
たとえば、4月10日に亡くなったことを知った場合は、原則として翌年2月10日が期限になります。
期限までに必要になる主な作業は次のとおりです。
- 相続人を確定する
- 相続財産と債務を調査する
- 財産を評価する
- 遺産の分け方を決める
- 相続税額を計算する
- 申告書を作成する
- 税務署へ申告し、税金を納める
10か月あるように見えても、戸籍収集や不動産評価、遺産分割協議に時間がかかると、余裕はそれほどありません。
相続税がかかる可能性がある場合は、遺産分割がまとまるのを待ってから動くのではなく、財産調査と評価を並行して進めましょう。
遺産分割が終わっていない場合の注意点
相続税の申告期限までに遺産分割協議が終わらないこともあります。
その場合でも、申告期限が自動的に延びるわけではありません。いったん未分割の状態で申告し、後から遺産分割が成立した際に修正手続きを行うことがあります。
ただし、未分割のままでは、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などを、当初の申告で適用できない場合があります。
そのため、遺産分割が長引きそうな場合は、申告期限までにどのような対応が必要か、早めに税理士へ確認することが大切です。
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例も確認する
相続税には、一定の条件を満たすと税負担を大きく軽減できる制度があります。特に重要なのが、配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例です。
配偶者の税額軽減
配偶者が相続した財産については、原則として、次のうち多い金額まで相続税がかかりません。
- 1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分に相当する金額
そのため、配偶者が多くの財産を相続する場合でも、相続税が大きく軽減されることがあります。
ただし、税額だけを見て配偶者に財産を集中させると、配偶者が亡くなったときの二次相続で税負担が増えることもあります。一次相続だけでなく、その後の相続まで見据えて分け方を考えることが大切です。
小規模宅地等の特例
自宅や事業用の土地を相続した場合、一定の要件を満たせば、土地の評価額を大きく減額できる制度です。
代表的なものでは、被相続人が住んでいた宅地について、一定の要件のもとで評価額を最大80%減額できる場合があります。
ただし、土地の利用状況や、誰が相続するか、相続後も住み続けるかなどによって適用条件が変わります。
また、これらの制度を利用するためには、相続税の申告が必要になる場合があります。財産額が基礎控除内に見えても、特例の適用を前提にしている場合は、申告要否を慎重に確認しましょう。
相続税の納付方法も確認する
相続税は、原則として金銭で一括納付します。
相続財産の多くが不動産で、手元に現金が少ない場合でも、申告期限までに納税資金を準備する必要があります。
特に、次のようなケースでは早めの資金確認が必要です。
- 自宅や土地が財産の大部分を占める
- 預金が少ない
- 不動産を売却して納税する予定がある
- 相続人ごとの取得財産に偏りがある
- 代償金の支払いも必要になる
納税が難しい場合には、一定の要件のもとで延納や物納を検討できることがありますが、利用には条件があります。
「相続税額が確定してから考える」のではなく、財産の評価と並行して納税資金も確認しておきましょう。
税理士への相談を検討した方がよいケース
次のような場合は、早い段階で税理士への相談を検討すると安心です。
- 相続財産が基礎控除額を超えそう
- 土地や建物がある
- 賃貸不動産や事業用不動産がある
- 非上場株式を相続する
- 生前贈与を受けた人がいる
- 名義預金の可能性がある
- 生命保険金や死亡退職金が多い
- 配偶者の税額軽減を利用したい
- 小規模宅地等の特例を利用したい
- 遺産分割がまとまっていない
- 納税資金に不安がある
- 申告期限が迫っている
相続税の申告書作成や税額計算、税務相談は税理士の業務です。
行政書士は、相続人調査や財産目録、遺産分割協議書などの書類作成を支援できますが、相続税申告が必要な場合は、税理士と連携して進めることになります。
10か月までに確認したいチェックリスト
申告の要否
- □ 法定相続人の人数を確認した
- □ 基礎控除額を計算した
- □ 相続財産の合計額を整理した
- □ 借金や未払金を整理した
- □ 生命保険金や死亡退職金を確認した
財産の評価
- □ 預貯金の残高を確認した
- □ 不動産の評価が必要か確認した
- □ 株式や投資信託の評価額を確認した
- □ 生前贈与の有無を確認した
- □ 評価方法が分からない財産を整理した
申告と納付
- □ 相続税の申告期限を確認した
- □ 遺産分割が期限までに終わるか確認した
- □ 納税資金を準備できるか確認した
- □ 特例や控除を利用できるか確認した
- □ 必要に応じて税理士へ相談した
相続税の申告が必要かどうかは、財産の種類や評価方法によって変わります。「基礎控除を超えないだろう」と自己判断せず、財産を一通り整理したうえで確認しましょう。
⑨相続手続きを自分で進められるか判断する
相続手続きは、自分で進められるものもあれば、専門家へ相談した方がよいものもあります。
すべてを自分で行えば費用を抑えられますが、戸籍の収集や財産調査、書類作成には時間と手間がかかります。また、相続人関係や財産内容が複雑な場合は、手続きの漏れや判断ミスにつながることもあります。
大切なのは、「自分でできるか」だけでなく、自分で進めることで期限や正確性に問題が出ないかを考えることです。
自分で進めやすい相続手続き
次のような場合は、比較的自分で進めやすいと考えられます。
- 相続人が配偶者と子など、関係が分かりやすい
- 相続人同士の関係が良好である
- 遺言書の内容が明確である
- 預貯金など、財産の種類が少ない
- 借金や保証債務がない
- 不動産がない、または少ない
- 相続税申告が不要である
- 平日に役所や金融機関へ行く時間を確保できる
たとえば、相続人が配偶者と子だけで、財産が一つの銀行口座のみというケースであれば、必要書類を確認しながら自分で進められる可能性があります。
ただし、一見単純に見えても、戸籍を確認すると認識していなかった相続人が見つかることもあります。家族関係だけで判断せず、正式な戸籍確認は必要です。
専門家へ相談した方がよいケース
次のような場合は、専門家の支援を受けることで、手続きの負担やミスを減らしやすくなります。
- 戸籍の収集方法が分からない
- 相続人が多い
- 前婚の子や代襲相続人がいる
- 遺産分割協議書の作成に不安がある
- 複数の金融機関に口座がある
- 不動産や株式など財産の種類が多い
- 故人が個人事業や会社経営をしていた
- 遺言書の内容が分かりにくい
- 相続人が遠方に住んでいる
- 仕事や育児で手続きに時間を割けない
専門家へ相談することは、必ずしもすべての手続きを任せることではありません。
たとえば、戸籍収集や遺産分割協議書の作成だけを依頼し、銀行手続きは自分で進めるなど、一部だけを依頼する方法もあります。
仕事を続けながら、家族で分担することと専門家へ依頼することを整理したい方は、仕事を続ける子どもの相続手続きの進め方をご覧ください。
早急に専門家へ相談した方がよいケース
次のような場合は、早めの相談をおすすめします。
- 借金や連帯保証債務がある可能性がある
- 相続放棄の3か月が迫っている
- 相続人同士ですでに対立がある
- 遺言書の有効性に疑問がある
- 誰が相続人になるのか判断できない
- 財産をすでに処分してしまった
- 行方不明の相続人がいる
- 相続人に未成年者や判断能力が十分でない人がいる
- 相続税申告の10か月が迫っている
- 不動産の評価や納税資金に不安がある
こうしたケースでは、後から修正しようとしても難しい場合があります。
特に相続放棄や相続税申告には期限があるため、「もう少し自分で調べてから」と迷っている間に時間が過ぎないよう注意しましょう。
自分で行うか迷ったときの判断基準
自分で進めるか迷ったときは、次の4点で判断すると整理しやすくなります。
| 判断項目 | 自分で進めやすい状態 | 相談を検討したい状態 |
|---|---|---|
| 相続人 | 少なく、関係が明確 | 多い、関係が複雑 |
| 財産 | 種類が少なく把握済み | 不明な財産や負債がある |
| 期限 | 十分な余裕がある | 3か月・10か月が迫っている |
| 合意 | 相続人全員が協力的 | 意見の対立や連絡不通がある |
さらに、次の質問に一つでも「はい」がある場合は、相談を検討してもよいでしょう。
- 必要書類がそろっているか自信がない
- どの専門家に相談すべきか分からない
- 平日に役所や金融機関へ行けない
- 手続きの全体像がまだ整理できていない
- 判断を間違えることへの不安が大きい
専門家へ相談する前に整理しておくこと
相談前に、分かる範囲で次の情報をまとめておくと、話が進みやすくなります。
- 被相続人の氏名と死亡日
- 相続人と思われる人の一覧
- 遺言書の有無
- 把握している財産
- 把握している借金
- 不動産の有無
- 相続放棄を検討しているか
- 相続人同士で争いがあるか
- 迫っている期限
- どこまで自分で進めたいか
すべて分かっていなくても問題ありません。「何が分からないか」を整理しておくだけでも、必要な支援を判断しやすくなります。
自分で進めるか判断するためのチェックリスト
相続人と財産
- □ 相続人を戸籍で確認できている
- □ 相続財産と借金をおおむね把握している
- □ 遺言書の有無と内容を確認している
- □ 不明な財産や負債が少ない
時間と期限
- □ 相続放棄などの期限に余裕がある
- □ 平日に手続きを進める時間がある
- □ 必要書類を自分で収集できる
- □ 手続きの進捗を管理できる
相続人同士の関係
- □ 相続人全員と連絡が取れる
- □ 遺産の分け方について大きな対立がない
- □ 必要書類への署名や押印に協力してもらえる
- □ 相続人の中に特別な手続きが必要な人がいない
専門家への相談判断
- □ 自分で行う手続きと依頼する手続きを分けた
- □ 期限が迫っている場合の相談先を確認した
- □ 税務・登記・紛争など、必要な専門分野を確認した
- □ 分からないまま放置している手続きがない
相続手続きを自分で進めるかどうかは、費用だけで決める必要はありません。時間、期限、相続人関係、財産の複雑さを含めて判断することが大切です。
⑩相続手続きは誰に相談すればよいか

相続手続きは、内容によって相談先が異なります。
戸籍の収集や遺産分割協議書の作成、不動産の名義変更、相続税の申告、相続人同士の争いでは、それぞれ対応できる専門家が違います。
「とりあえず誰かに相談したい」という場合でも、困っている内容を整理してから相談先を選ぶと、たらい回しを避けやすくなります。
行政書士に相談できる相続手続き
行政書士は、相続関係の書類作成や手続きの準備を支援できます。
主な相談内容は次のとおりです。
- 戸籍の収集
- 相続人調査
- 相続関係説明図の作成
- 相続財産目録の作成
- 遺産分割協議書の作成
- 銀行や証券会社に提出する書類の作成支援
- 遺言書の内容確認や相続手続きの整理
- 他の専門家が必要かどうかの案内
相続人同士で争いがなく、必要な書類を正確に整えたい場合には、行政書士へ相談しやすいでしょう。
一方で、行政書士は、相続人同士の争いについて代理で交渉したり、相続税を計算・申告したり、不動産登記を代理申請したりすることはできません。
そのため、相談内容によっては、弁護士・税理士・司法書士と連携して進める必要があります。
司法書士に相談した方がよい相続手続き
司法書士は、不動産の相続登記を中心とした登記手続きの専門家です。
主な相談内容は次のとおりです。
- 不動産の相続登記
- 土地や建物の名義変更
- 登記に必要な戸籍や書類の確認
- 相続登記に関する申請書の作成
- 法務局への登記申請
- 相続した不動産の権利関係の整理
- 家庭裁判所へ提出する一部書類の作成
相続財産に土地や建物がある場合は、司法書士への相談を検討します。
特に、不動産が複数ある場合や、長期間名義変更をしていない場合、過去の相続が未処理のまま残っている場合は、手続きが複雑になりやすいため、早めの相談が安心です。
税理士に相談した方がよい相続手続き
税理士は、相続税や準確定申告など、税務に関する手続きを扱います。
主な相談内容は次のとおりです。
- 相続税申告が必要かどうかの判断
- 相続財産の税務上の評価
- 相続税額の計算
- 相続税申告書の作成・提出
- 準確定申告
- 配偶者の税額軽減
- 小規模宅地等の特例
- 生前贈与や名義預金の確認
- 納税資金や二次相続を踏まえた分割の検討
次のような場合は、早めに税理士へ相談するとよいでしょう。
- 財産が基礎控除額を超えそう
- 不動産が多い
- 非上場株式がある
- 生前贈与を受けた人がいる
- 名義預金の可能性がある
- 相続税の申告期限が迫っている
- 特例を使えるか分からない
相続税申告は、財産の評価や特例の適用で税額が変わることがあります。単純な足し算だけでは判断できない場合があるため、不動産や事業用財産がある場合は特に注意が必要です。
弁護士に相談した方がよい相続手続き
弁護士は、相続人同士の争いや交渉、訴訟など、紛争性のある相続を扱います。
主な相談内容は次のとおりです。
- 相続人同士で意見が対立している
- 遺産分割協議がまとまらない
- 他の相続人と連絡が取れない
- 遺言書の有効性を争いたい
- 遺留分を請求したい、または請求された
- 財産を隠している相続人がいる
- 不当な生前贈与や使い込みが疑われる
- 家庭裁判所での調停や審判が必要
- 相続放棄の期限や有効性をめぐって問題がある
すでに相続人同士で対立が生じている場合は、書類作成だけでは解決できません。代理で交渉してもらう必要があるときは、弁護士への相談が適切です。
相談内容ごとの目安
| 困っていること | 主な相談先 |
|---|---|
| 戸籍収集や相続人調査 | 行政書士 |
| 相続財産目録や遺産分割協議書の作成 | 行政書士 |
| 不動産の名義変更 | 司法書士 |
| 相続税申告や準確定申告 | 税理士 |
| 相続人同士の争い・交渉 | 弁護士 |
| 何から始めればよいか分からない | 行政書士などの相続窓口 |
| 複数の専門分野が関係する | 専門家同士の連携がある事務所 |
相談先を選ぶときのポイント
同じ資格を持つ専門家でも、相続実務の経験には差があります。
相談先を選ぶときは、次の点を確認しましょう。
- 相続案件を日常的に扱っているか
- 自分の相談内容に対応できるか
- 対応できない業務を明確に説明してくれるか
- 他士業との連携体制があるか
- 費用や追加料金を事前に説明してくれるか
- 手続きの見通しや期限を示してくれるか
- 話を急かさず、状況を整理してくれるか
「相続に詳しい」と書かれていても、登記・税務・争いのすべてを一人で対応できるわけではありません。自分の困りごとに合う専門家かどうかを確認することが大切です。
専門家に相談するときのチェックリスト
相談内容を整理する
- □ 相続人と思われる人を整理した
- □ 遺言書の有無を確認した
- □ 分かる範囲で財産と借金をまとめた
- □ 迫っている期限を確認した
- □ 何に困っているかを書き出した
専門家を選ぶ
- □ 相続案件の経験を確認した
- □ 対応できる業務範囲を確認した
- □ 費用や報酬の説明を受けた
- □ 他の専門家との連携体制を確認した
- □ 依頼する範囲を明確にした
相続手続きでは、最初から相談先を完璧に選ぶ必要はありません。まずは、自分が困っていることを整理し、その内容に合う専門家へ相談することが大切です。
⑪相続手続きの流れに関するよくある質問
Q:相続手続きは何から始めればよいですか
まず、遺言書の有無を確認し、故人の通帳や契約書などをまとめます。その後、戸籍で相続人を確認し、財産と借金を調べます。
Q:遺産相続の手続きは自分でできますか
相続人や財産が少なく、争いがなければ自分で進められる場合があります。相続人関係が複雑な場合や、不動産・借金・相続税申告がある場合は、専門家への相談を検討しましょう。
Q:相続手続きにはどれくらいの期間がかかりますか
単純なケースでは数か月で終わることもありますが、財産や相続人が多い場合は半年以上かかることもあります。相続放棄は原則3か月、準確定申告は4か月、相続税申告は10か月が目安です。
Q:遺言書がない場合の相続手順はどうなりますか
相続人と相続財産を確認したうえで、相続人全員で遺産分割協議を行います。分け方が決まったら、遺産分割協議書を作成し、名義変更を進めます。
遺言書がない場合は、相続人と相続財産を確認したうえで、相続人全員による遺産分割協議を行います。話し合いがまとまったら、必要に応じて遺産分割協議書を作成し、預貯金や不動産などの相続手続きへ進みます。
戸籍収集、財産調査、遺産分割協議書の作成までの詳しい流れは、遺言書がない場合の相続をご覧ください。
Q:相続財産が分からない場合はどうすればよいですか
通帳、郵便物、固定資産税の通知書、証券会社や保険会社の書類などを確認します。借金や未払金も含めて調べ、相続放棄の期限が近い場合は早めに相談しましょう。
Q:相続放棄の判断がつかない場合はどうすればよいですか
プラスの財産と借金を一覧にし、3か月の期限までに判断できるよう整理します。財産調査が終わらない場合は、熟慮期間の伸長も含めて早めに専門家へ相談しましょう。
Q:相続人の一人と連絡が取れない場合はどうなりますか
遺産分割協議には、原則として相続人全員の参加が必要です。住所調査をしても所在が分からない場合は、家庭裁判所での手続きが必要になることがあります。
Q:借金があるか分からなくても相続放棄できますか
借金の全額が分かっていなくても、相続放棄を検討できます。ただし、放棄すると預貯金や不動産などの財産も原則として相続できません。
Q:相続手続きで同じ戸籍を何度も提出する必要がありますか
提出先ごとに戸籍を求められることがあります。原本還付や法定相続情報一覧図を利用できる場合があるため、事前に確認すると負担を減らせます。
まとめ|相続手続きは期限と順番を確認して進める
相続手続きは、すべてを一度に終わらせる必要はありません。まずは全体の流れを把握し、期限の短いものから順番に進めることが大切です。
特に早めに確認したいのは、次の3点です。
- 遺言書があるか
- 誰が相続人になるか
- 財産だけでなく借金もあるか
相続放棄を検討する場合は、原則3か月という期限があります。遺言書や財産の確認を後回しにすると、判断に必要な時間が足りなくなることもあります。
一方で、相続手続きには、戸籍収集、財産調査、遺産分割協議、名義変更、準確定申告、相続税申告など、多くの作業があります。相続人や財産の状況によっては、自分ですべて進めるのが難しいこともあります。
不安がある場合は、期限が迫ってからではなく、早めに専門家へ相談しましょう。必要な部分だけを依頼することもできます。
相続手続きで大切なのは、急いで結論を出すことではなく、今やるべきことを整理し、一つずつ確実に進めることです。
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✅ 行政書士プロフィール
特定行政書士 野中雅敏(IT行政書士事務所)
- 国家資格:行政書士(登録番号:25080391)
- 経歴:IT業界出身/相続・遺言分野を専門取り組み中
- 趣味:競泳
- メッセージ:
「遺言は“難しいこと”ではなく、“優しさのカタチ”です。
家族を守るために、ぜひ一緒に考えていきましょう。」
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