相続財産の調査方法|自分で調べる手順・調査先・必要書類を解説

相続財産調査で確認する不動産をイメージした2軒の家

親や配偶者が亡くなったあと、相続手続きを進めるためには、故人にどのような財産や借金があったのかを確認する必要があります。

ただ、実際には通帳や契約書がすべてそろっているとは限りません。どの銀行を利用していたのか分からなかったり、不動産や証券口座があるかもしれなかったり、借金が残っていないか心配になったりすることもあります。

相続財産調査は、こうした故人の財産や負債を一つずつ確認していく作業です。最初からすべてを把握しようとする必要はありません。手元に残された書類や郵便物などを手がかりに、順番に調べていくことが大切です。

この記事では、相続財産調査を何から始めればよいのか、自分で確認できることや具体的な調べ方、専門家へ相談した方がよいケースまで、わかりやすく解説します。

目次

①財産調査とは?相続財産を調べる方法と進め方

相続人が故人の通帳や書類を確認し、銀行・法務局・証券会社への照会を通じて預貯金・不動産・株式・借金を調査する流れ
自宅に残された通帳や郵便物、契約書などを確認し、金融機関や法務局、証券会社へ照会して相続財産を調査します。

財産調査とは、亡くなった方が持っていた財産や負債を確認し、相続の対象となるものを把握する作業です。

相続では、現金や預貯金、不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や未払金などのマイナスの財産も引き継ぐ可能性があります。そのため、価値のある財産だけを探すのではなく、返済義務や契約上の負担が残っていないかも含めて確認することが大切です。

相続財産には、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や未払金などのマイナスの財産も含まれます。相続財産に含まれるもの・含まれないものを先に確認したい方は、以下の記事をご覧ください。
相続財産とは?含まれるもの・含まれないものを一覧でわかりやすく解説

財産調査は何から始めるのか

相続財産調査は、まず故人の身の回りに残されたものを確認するところから始めます。

たとえば、通帳、キャッシュカード、固定資産税の通知書、証券会社や保険会社からの郵便物、借入契約書などは、財産や負債を見つける手がかりになります。パソコンやスマートフォン、メール、金融機関のアプリから、ネット銀行やネット証券の利用が分かることもあります。

手がかりを集めたあとは、判明した金融機関や法務局、証券会社、信用情報機関などへ照会し、財産の有無や残高を確認していきます。

財産調査で確認する主なもの

主な調査対象は、次のようなものです。

  • 現金や預貯金
  • 土地や建物などの不動産
  • 株式、投資信託、証券口座
  • 生命保険や死亡退職金
  • 自動車、貴金属、貸付金
  • 借金、ローン、未払金
  • 連帯保証などの保証債務
  • 暗号資産や電子マネーなどのデジタル資産

故人名義のものがすべて簡単に見つかるとは限りません。通帳が残っていない口座や、家族が把握していなかった借入れが見つかることもあるため、書類や取引履歴をたどりながら調べます。

財産調査を早めに始める理由

財産調査は、遺産の分け方を決めるだけでなく、相続するか放棄するかを判断するためにも必要です。

相続放棄や限定承認には、原則として相続が始まったことを知ったときから3か月以内という期限があります。調査に時間がかかることもあるため、財産の全体像が分からない場合でも、早めに手をつけることが大切です。

まずは手元の資料から調べ、分からない財産や負債について照会先を一つずつ確認していきましょう。

相続では、財産だけでなく、権利や義務も引き継ぐ可能性があります。相続の基本的な仕組みや、誰が相続人になるのかを確認したい方は、以下の記事をご覧ください。
相続とは?意味・種類・法律上の基本を簡単にわかりやすく解説

②相続財産調査を始める前に準備するもの

相続財産調査では、金融機関や証券会社などへ照会する際に、故人が亡くなったことや、自分が相続人であることを証明する書類が必要になります。

調査先によって必要書類は異なりますが、最初に基本的な資料をそろえておくと、その後の手続きを進めやすくなります。

故人と相続人の情報を整理する

まず、故人について次の情報を確認します。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 死亡日
  • 最後の住所
  • 本籍地
  • 勤務先や事業の有無

あわせて、自分を含めて誰が相続人になるのかも確認しておきます。

財産調査では、金融機関などから「相続人であることが分かる書類」の提出を求められることがあります。相続人が確定していない段階では手続きを進められない場合もあるため、戸籍を集めて相続関係を確認することが大切です。

必要になりやすい戸籍・本人確認書類

相続財産調査で必要になりやすい書類は、次のとおりです。

  • 故人の死亡が記載された戸籍謄本
  • 故人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人の戸籍謄本
  • 故人の住民票の除票
  • 相続人の本人確認書類
  • 印鑑証明書
  • 調査先が指定する申請書
  • 代理人へ依頼する場合の委任状

すべての調査先で同じ書類が必要になるわけではありません。戸籍の範囲や発行後の有効期間、原本を提出するのかコピーでよいのかなど、手続き先ごとに扱いが異なります。

書類を集める前に、金融機関や各機関の窓口へ連絡し、必要なものを確認しておくと、取り直しを減らせます。

法定相続情報一覧図を利用できる場合がある

複数の金融機関や証券会社で相続手続きを行う場合は、法定相続情報一覧図の写しを取得しておくと便利です。

法定相続情報一覧図とは、故人と法定相続人との関係を、戸籍の内容に基づいて一覧にした書類です。相続人が戸籍を集めて一覧図を作成し、法務局へ申し出ると、登記官の認証が付いた写しを交付してもらえます。

申し出は、主に次の所在地を管轄する法務局で行えます。

  • 故人の本籍地
  • 故人の最後の住所地
  • 申出人となる相続人の住所地
  • 故人名義の不動産の所在地

手続きでは、一般に、故人の出生から死亡までの戸籍、相続人の戸籍、故人の住民票の除票、作成した法定相続情報一覧図などを提出します。必要書類は相続関係によって異なるため、提出先の法務局へ事前に確認しておくと安心です。

認証された法定相続情報一覧図の写しは、必要な通数を無料で交付してもらえます。提出先が制度に対応していれば、戸籍一式の代わりに提出できるため、同じ戸籍を何度も持ち回る手間を減らせます。

どのような場合に取得するとよいか

IT行政書士事務所では、3つ以上の金融機関に口座がある場合を、法定相続情報一覧図の取得を検討する一つの目安として提案しています。

これは法律上の基準ではなく、実務上の負担を踏まえた目安です。

金融機関とのやり取りは、必要書類の確認、郵送、金融機関側の審査、書類の返送などにより、1か所あたり2週間程度かかることがあります。

たとえば、3つの金融機関に口座がある場合、戸籍一式を1か所ずつ順番に提出して返却を待つと、手続きだけで1か月以上かかる可能性があります。

一方、法定相続情報一覧図の写しを複数取得しておけば、複数の金融機関へ同時に提出しやすくなり、調査や相続手続きを並行して進められます。

次のような場合は、取得を検討するとよいでしょう。

  • 3つ以上の金融機関に口座がある
  • 銀行と証券会社の両方で手続きが必要
  • 不動産の相続登記も予定している
  • 生命保険や自動車など、ほかの相続手続きもある
  • 複数の手続きを同時に進めたい
  • 戸籍一式の返却を待つ時間を減らしたい

反対に、手続き先が金融機関1か所だけで、ほかに不動産や証券口座もない場合は、戸籍一式で手続きを済ませた方が早いこともあります。

なお、法定相続情報一覧図を利用できるかどうかは提出先によって異なるため、金融機関や証券会社へ事前に確認しておきましょう。

③まず自宅にある手がかりを確認する

親が亡くなったあと、相続人の女性が自宅で通帳や郵便物、契約書などを確認し、相続財産の手がかりを探している様子
相続財産の調査では、故人の自宅に残された通帳、郵便物、保険証券、契約書などを一つずつ確認します。

相続財産調査は、いきなり金融機関や法務局へ問い合わせるのではなく、まず故人の自宅に残された書類や所持品を確認するところから始めます。

通帳や契約書そのものが見つからなくても、郵便物や口座の引き落とし履歴、スマートフォンのアプリなどから、利用していた金融機関や保険会社、借入先が分かることがあります。

見つけた書類は、内容が分からなくても処分せず、一か所にまとめて保管しておきましょう。後から財産や負債を調べる手がかりになる可能性があります。

通帳・郵便物・契約書を探す

まずは、故人が重要書類を保管していた場所を確認します。

たとえば、次のような場所です。

  • 自宅の金庫
  • 机や書棚の引き出し
  • 仏壇
  • 通帳や印鑑の保管場所
  • 重要書類のファイル
  • 入院先や施設から返却された荷物
  • 銀行の貸金庫に関する書類

探すものは、通帳やキャッシュカードだけではありません。

金融機関、証券会社、保険会社、カード会社などから届いた封筒や通知書も確認します。固定資産税の納税通知書、借入契約書、クレジットカードの利用明細、確定申告書なども、財産や借金を見つける重要な資料です。

古い書類であっても、現在の取引先をたどるきっかけになることがあります。判断に迷う書類は、すぐに捨てずに保管しておく方がよいでしょう。

スマートフォン・メール・アプリを確認する

ネット銀行やネット証券、暗号資産などは、紙の通帳や郵便物が残っていないことがあります。

故人のスマートフォンやパソコンを確認できる場合は、次のようなものを探します。

  • 銀行や証券会社のアプリ
  • 暗号資産取引所のアプリ
  • 金融機関から届いたメール
  • クレジットカードや電子マネーのアプリ
  • 保険会社のマイページ
  • クラウド上に保存された契約書や明細

メールの検索欄に「銀行」「証券」「保険」「ローン」「請求」「振込」などの語を入力すると、関連する通知が見つかることもあります。

ただし、本人以外による端末やアカウントへのアクセスは、契約や利用規約との関係で問題になる場合があります。パスワードを推測して無理にログインするのではなく、利用していたサービスが分かった段階で、各事業者へ相続手続きの方法を確認することが大切です。

家族や関係者から聞き取る

書類だけでは分からない場合は、家族や故人と関わりのあった人へ確認します。

たとえば、次のようなことを聞いてみましょう。

  • 給与や年金をどの銀行で受け取っていたか
  • 日常的に利用していた銀行や証券会社はどこか
  • 保険へ加入していたか
  • 不動産や貸金庫を所有していたか
  • 知人や親族へお金を貸していなかったか
  • ローンや借金について話していなかったか
  • 税理士や行政書士などへ相談していなかったか

故人が会社経営者や個人事業主だった場合は、家族だけでなく、会社の経理担当者や顧問税理士へ確認することで、事業用口座や自社株、会社への貸付金、連帯保証などが分かることもあります。

自宅での確認は、財産調査の入口です。ここで得た手がかりを整理しておくと、その後の金融機関や法務局などへの照会を進めやすくなります。

④プラスの財産を調査する方法

相続で調査する預貯金、現金、不動産、株式、自動車、生命保険、貴金属、貸付金などのプラスの財産
相続財産調査では、預貯金や不動産だけでなく、株式、自動車、生命保険、貴金属、貸付金なども確認します。

自宅で通帳や郵便物などの手がかりを集めたら、金融機関や法務局、証券会社などへ確認し、財産の有無や内容を調べていきます。

相続財産には、預貯金や不動産だけでなく、株式、投資信託、自動車、貴金属、貸付金なども含まれることがあります。

すべてを一度に調べようとせず、手がかりが見つかったものから順番に確認しましょう。

預貯金を調べる

まず、故人の通帳やキャッシュカード、金融機関から届いた郵便物を確認します。銀行名が分かったら、その金融機関へ連絡し、相続人として残高証明書や取引履歴を取得する方法を確認します。

取引履歴には、別の銀行や証券会社への振込み、保険料、ローンの返済、貸金庫の利用料などが記録されていることがあります。ひとつの口座から、ほかの財産や負債が見つかることもあるため、残高だけでなく入出金の内容にも目を通しましょう。

照会時には、一般に次のような書類を求められます。

  • 故人の死亡が分かる戸籍
  • 相続人であることが分かる戸籍
  • 相続人の本人確認書類
  • 金融機関所定の申請書
  • 法定相続情報一覧図の写し

必要書類や取得できる取引履歴の期間は、金融機関によって異なります。事前に窓口へ確認してください。

利用していた銀行が分からない場合は、給与や年金の振込先、公共料金の引落口座、郵便物、スマートフォンの銀行アプリなどから手がかりを探します。ただし、ひとつの照会だけで故人のすべての銀行口座が必ず判明するとは限りません。

不動産を調べる

不動産は、固定資産税の納税通知書や権利証、登記識別情報通知などから確認します。

所在地が分かったら、法務局で登記事項証明書を取得し、土地や建物の名義、共有持分、抵当権の有無などを確認します。住宅ローンなどが残っている場合は、登記に抵当権が記録されていることがあります。

故人が所有していた不動産の所在地が分からない場合は、市区町村で名寄帳を取得する方法があります。名寄帳には、その市区町村内で故人が所有していた土地や建物がまとめられています。

ただし、名寄帳で全国の不動産を一括して確認できるわけではありません。複数の市区町村に不動産がある場合は、それぞれの自治体で確認する必要があります。

別荘、山林、農地、共有持分、未登記建物などは、家族が把握していないこともあります。過去の住所、固定資産税の通知、確定申告書なども確認しましょう。

株式・投資信託・証券口座を調べる

株式や投資信託は、証券会社から届いた取引報告書、配当金の通知、銀行口座の入出金履歴などから確認します。

証券会社が判明したら、相続人であることを示す書類を提出し、故人名義の口座や保有商品の内容を照会します。

利用していた証券会社が分からない場合は、証券保管振替機構、いわゆる「ほふり」へ、故人の口座開設先に関する情報の開示を請求する方法があります。

ただし、ほふりへの照会で分かるのは、主に口座を開設している証券会社などの情報です。保有銘柄や数量、評価額まで分かるわけではないため、口座開設先が判明した後は、各証券会社へ改めて照会する必要があります。
また、非上場株式や、ほふりの制度で管理されていない金融商品などは確認できない場合があります。

故人が会社経営者だった場合は、自社株を保有している可能性もあります。会社の株主名簿、決算書、顧問税理士が保管している資料なども確認してください。

生命保険・死亡退職金を調べる

生命保険は、保険証券、保険会社からの郵便物、通帳の保険料引落しなどから確認します。

契約していた保険会社が分かったら、死亡保険金の受取人や請求方法を問い合わせます。加入先が分からない場合は、生命保険契約の照会制度を利用できることがあります。

故人が会社員だった場合は、勤務先へ死亡退職金や弔慰金の制度がないか確認しましょう。就業規則や会社の制度によって、支給対象者や必要な手続きが異なります。

生命保険金や死亡退職金は、受取人や制度の内容によって、通常の相続財産とは異なる扱いになることがあります。遺産分割の対象になるかどうかと、相続税上どのように扱われるかは、分けて確認することが大切です。

自動車・貴金属・貸付金などを調べる

自動車やバイクは、車検証を確認し、所有者名義とローンの有無を調べます。ローンが残っている場合、故人ではなく販売会社や信販会社が所有者になっていることもあります。

貴金属、美術品、骨董品、コレクションなどは、購入時の領収書や鑑定書を探します。価値が分からない場合は、専門業者へ査定を依頼する方法があります。

故人が親族や知人へお金を貸していた場合、その返済を求める権利も相続財産になることがあります。借用書だけでなく、銀行の振込記録、メール、確定申告書なども確認しましょう。

見つかった財産については、金融機関名、支店名、口座番号、不動産の所在地、確認した残高などを記録しておくと、後の手続きを進めやすくなります。詳しい整理方法は、相続財産目録の記事で解説します。

調査で判明した財産は、種類ごとに相続財産目録へ整理しておくと、その後の確認がしやすくなります。具体的な記載方法は、以下の記事で解説しています。
財産ごとの書き方や評価額の記載例、Word・Excelのひな形は、以下の記事で解説しています。
相続財産目録の作り方|書き方・評価額・記載例をひな形付きで解説

⑤借金や保証債務を調査する方法

相続人がローン契約書や請求書、通帳、保証契約書を確認し、借金や未払金、保証債務を調査している様子
相続財産調査では、預貯金や不動産だけでなく、借金、未払金、保証債務などのマイナスの財産も確認します。

相続財産調査では、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金や未払金などの負債も確認する必要があります。

故人に借金があることを家族が知らなかった場合でも、原則として相続の対象になる可能性があります。相続放棄を検討する場合は期限があるため、負債の調査はできるだけ早めに始めましょう。

請求書・通帳・契約書を確認する

まずは、故人の自宅に残された書類や郵便物を確認します。

借金や未払金を調べる手がかりになるのは、次のようなものです。

  • 金融機関や消費者金融との借入契約書
  • クレジットカードの利用明細
  • ローン会社や信販会社からの請求書
  • 税金や社会保険料の納付書
  • 家賃、医療費、公共料金などの請求書
  • 督促状や内容証明郵便
  • 連帯保証に関する契約書
  • 個人間の借用書

故人名義の預貯金口座も確認しましょう。毎月同じ時期に一定額が引き落とされている場合は、ローン返済やクレジットカードの支払いである可能性があります。

通帳に記載された会社名だけでは内容が分からないこともあります。その場合は、引落先の名称や連絡先を調べ、相続人として契約内容を確認できるか問い合わせます。

信用情報機関へ開示を請求する

銀行、消費者金融、クレジットカード会社などからの借入れについては、信用情報機関へ故人の情報開示を請求する方法があります。

主な信用情報機関は、次の3つです。

  • CIC
  • JICC
  • 全国銀行個人信用情報センター

信用情報機関ごとに加盟している金融機関や登録される情報が異なります。そのため、1つの機関へ照会しただけでは、すべての借入れを確認できない場合があります。

たとえば、クレジットカードや信販会社の利用、消費者金融からの借入れ、銀行ローンなどは、登録先が異なることがあります。故人の借入先が分からない場合は、複数の信用情報機関への開示請求を検討します。

開示請求では、一般に次のような書類を求められます。

  • 故人が亡くなったことを確認できる書類
  • 開示請求者が相続人であることを確認できる戸籍
  • 相続人の本人確認書類
  • 各機関所定の申込書
  • 手数料

必要書類、請求方法、開示される内容は各機関で異なるため、申請前に公式の案内を確認してください。

信用情報だけでは分からない負債もある

信用情報機関へ照会しても、故人の負債がすべて判明するわけではありません。

たとえば、次のようなものは信用情報に登録されていない可能性があります。

  • 親族や知人からの借金
  • 税金や社会保険料の未納
  • 家賃や公共料金の未払い
  • 医療費や介護費用の未払い
  • 事業上の買掛金や未払金
  • 連帯保証や身元保証に関する債務

そのため、信用情報の開示結果だけで「借金はない」と判断するのは避けましょう。

郵便物や契約書、通帳の履歴、確定申告書、事業関係の書類などもあわせて確認する必要があります。

不動産の抵当権を確認する

故人が不動産を所有していた場合は、法務局で登記事項証明書を取得し、抵当権や根抵当権が設定されていないか確認します。

抵当権とは、住宅ローンなどの返済ができなくなった場合に、金融機関などが不動産から優先的に返済を受けるための権利です。

登記事項証明書に抵当権が記載されている場合は、借入先や債権額などを確認し、現在もローンが残っているか金融機関へ問い合わせます。

ただし、登記上の抵当権が残っていても、すでに借入れを完済していることがあります。反対に、抵当権が見当たらなくても、無担保ローンなどの借金が存在する可能性があります。

登記だけで判断せず、金融機関への確認とあわせて調べることが大切です。

会社経営者は連帯保証や会社との貸し借りにも注意する

故人が会社経営者や個人事業主だった場合は、一般的な家庭の負債調査よりも確認する範囲が広くなります。

特に注意したいのは、次のようなものです。

  • 会社の借入れに対する連帯保証
  • 会社から個人への貸付金
  • 故人から会社への貸付金
  • 事業用ローン
  • リース契約
  • 買掛金や外注費などの未払金
  • 事業用クレジットカードの残高

会社の借金そのものは、原則として会社の債務です。しかし、故人が連帯保証人になっていた場合は、その保証債務が相続の対象になる可能性があります。

会社の決算書、借入契約書、保証契約書、株主名簿などを確認し、必要に応じて会社の経理担当者や顧問税理士へ問い合わせましょう。

借金が見つかった場合は返済前に内容を確認する

故人の借金や請求書が見つかっても、すぐに相続人の財産から返済するのではなく、まず債権者、残高、契約内容を確認します。

相続放棄を検討している場合、相続財産の処分や債務の支払いが、その後の手続きに影響する可能性があります。

特に、財産よりも借金の方が多い可能性がある場合や、保証債務の金額が分からない場合は、自己判断で進めず、早めに専門家へ相談した方がよいでしょう。

相続放棄や限定承認は、原則として相続が始まったことを知ったときから3か月以内に判断する必要があります。財産調査が終わらない場合も、期限が過ぎる前に対応を検討することが大切です。

⑥デジタル遺産を調査する方法

相続人がスマートフォンやノートパソコンを確認し、ネット銀行、ネット証券、暗号資産、電子マネーなどのデジタル遺産を調査している様子
相続財産調査では、スマートフォンやパソコンを手がかりに、ネット銀行、ネット証券、暗号資産、電子マネーなども確認します。

故人がスマートフォンやパソコンを利用していた場合は、ネット銀行、ネット証券、暗号資産、電子マネーなどのデジタル遺産が残っていないかも確認します。

デジタル遺産は、通帳や証券などの紙の資料が残らないことがあり、家族が存在そのものを把握していない場合もあります。相続財産には、暗号資産やインターネット上の残高などが含まれることもあるため、見落とさないよう注意が必要です。

ただし、サービスによって相続時の取扱いや必要書類が異なります。アカウントへ無理にログインするのではなく、利用先を特定したうえで、各事業者へ相続手続きの方法を確認しましょう。

ネット銀行・ネット証券を確認する

ネット銀行やネット証券では、紙の通帳や取引報告書が発行されていないことがあります。

故人のスマートフォンやパソコン、メールを確認できる場合は、次のような手がかりを探します。

  • 銀行や証券会社のアプリ
  • 口座開設や取引に関するメール
  • 入出金や約定を知らせる通知
  • ワンタイムパスワード用のアプリ
  • 他の銀行口座からの振込履歴
  • 確定申告書や年間取引報告書

ネット銀行やネット証券の利用先が分かったら、相続人であることを示す戸籍などを準備し、各金融機関へ口座の有無や残高を確認する方法を問い合わせます。

ログイン情報が分かっていても、相続人が故人のアカウントを自由に操作してよいとは限りません。残高の確認や解約、移管については、金融機関が案内する正式な相続手続きに従うことが大切です。

暗号資産を確認する

暗号資産は、国内外の取引所やウォレットで管理されていることがあります。

調査の手がかりとして、次のようなものを確認します。

  • 暗号資産取引所のアプリ
  • 口座開設や本人確認に関するメール
  • 取引や入出庫の通知
  • 銀行口座から取引所への送金履歴
  • 確定申告書や取引履歴
  • ウォレットに関する書類や端末
  • 秘密鍵や復元用フレーズの保管記録

暗号資産は、取引所へ預けている場合と、故人自身がウォレットで管理している場合とで、確認方法が異なります。

取引所が分かった場合は、相続手続きの案内に従って照会します。一方、個人のウォレットで管理されている暗号資産は、必要な情報を失うと取り出せなくなる可能性があります。

ただし、パスワードや復元用フレーズを推測して操作すると、資産の移動や記録の消失につながるおそれがあります。価値が大きい場合や管理方法が分からない場合は、自己判断で操作せず、暗号資産に詳しい専門家へ相談した方がよいでしょう。

電子マネー・ポイントを確認する

故人が利用していた電子マネーやポイントにも、残高が残っていることがあります。

スマートフォンの決済アプリ、カード、利用明細、メールなどから、使用していたサービスを確認します。

ただし、電子マネーやポイントが相続できるか、払い戻しを受けられるかは、サービスごとの利用規約によって異なります。残高があるからといって、必ず相続人へ引き継げるとは限りません。

利用先が分かったら、次の点を確認しましょう。

  • 死亡時の届出が必要か
  • 残高の払い戻しや移行ができるか
  • 相続人が提出する書類
  • 手続きの期限
  • アカウントやカードの停止方法

電子マネーやポイントは少額に見えても、複数のサービスを利用していると一定の金額になることがあります。

クラウドサービス・オンラインアカウントを確認する

デジタル遺産には、金銭的な価値のあるものだけでなく、クラウド上の写真や文書、オンラインサービスのアカウントなども含まれます。

たとえば、次のようなものです。

  • クラウドストレージ上の写真や書類
  • メールアカウント
  • SNSアカウント
  • 動画・音楽などの配信サービス
  • オンラインショップのアカウント
  • サブスクリプション契約
  • ドメインやウェブサイト
  • インターネット上の事業用データ

これらの中には、毎月の利用料金が発生しているものもあります。クレジットカードや預金口座の明細を確認し、継続課金されているサービスがないか調べましょう。

写真や文書などを家族が引き継げるか、アカウントを削除できるかは、サービスの規約や設定によって異なります。

各サービスの利用規約に従って手続きする

デジタル遺産の調査では、故人が利用していたサービスを特定することと、正式な手続きを確認することを分けて考える必要があります。

サービスが見つかったら、運営会社へ連絡し、死亡時の手続きや必要書類を確認します。一般に、故人の死亡が分かる戸籍、相続人であることを示す戸籍、本人確認書類などを求められることがあります。

また、スマートフォンやパソコンを初期化したり、アプリを削除したりすると、財産を調べる手がかりが失われる可能性があります。調査が終わるまでは、端末やメール、契約情報を安易に消去しないようにしましょう。

⑦相続財産調査を自分でできるケースと専門家へ相談する目安

相続人が行政書士へ相続財産調査について相談し、戸籍や通帳、相続関係図、財産資料を確認している様子
相続財産の範囲や調査方法が分からない場合は、戸籍や通帳などの資料を持参して専門家へ相談すると整理しやすくなります。

相続財産調査は、故人が利用していた金融機関や所有していた不動産がある程度分かっていれば、自分で進められることもあります。

一方で、借金の有無が分からない場合や、相続放棄の期限が迫っている場合は、調査に時間をかけすぎることで不利益が生じるおそれがあります。

「自分でできるか」だけで判断するのではなく、財産の種類、資料の有無、期限、相続人同士の関係などを踏まえて、専門家へ相談するか検討しましょう。

自分で進めやすいケース

次のような場合は、相続人自身で調査を進めやすいでしょう。

  • 通帳や契約書などの資料がそろっている
  • 利用していた金融機関が分かっている
  • 所有している不動産の所在地が分かっている
  • 財産の種類や数が少ない
  • 借金や保証債務がないと見込まれる
  • 故人が会社経営者や個人事業主ではない
  • 相続人が少なく、連絡も取りやすい
  • 相続放棄などの期限に余裕がある

たとえば、故人の財産が自宅、預貯金口座1つ、生命保険だけで、必要な書類も保管されている場合は、各機関へ確認しながら自分で進められる可能性があります。

ただし、資料がそろっているように見えても、別の金融機関の口座や借入れが隠れていることがあります。現在分かっている財産だけで判断せず、郵便物や取引履歴も確認しておくことが大切です。

早めに相談した方がよいケース

次のような場合は、早めに専門家へ相談することを検討しましょう。

  • 相続放棄の3か月が迫っている
  • 借金や連帯保証の有無が分からない
  • 通帳や契約書がほとんど見つからない
  • 利用していた金融機関が複数ある
  • 不動産が複数の市区町村にある
  • 故人が会社経営者や個人事業主だった
  • 非上場株式や事業用資産がある
  • 暗号資産や海外資産がある
  • 相続人の一部と連絡が取れない
  • 相続人同士で意見が分かれている

特に、相続財産よりも借金の方が多い可能性がある場合は、調査の順番と期限に注意が必要です。

相続放棄や限定承認は、原則として相続が始まったことを知ったときから3か月以内に判断する必要があります。財産調査が終わらないからといって、自動的に期限が延びるわけではありません。調査に時間がかかりそうな場合は、期限が迫る前に対応を検討しましょう。

行政書士に相談できること

行政書士には、相続財産調査に関連して、次のような手続きを相談できます。

  • 戸籍の収集
  • 法定相続人の確認
  • 財産調査に必要な書類の整理
  • 金融機関などへの照会手続きの支援
  • 相続財産目録の作成
  • 遺産分割協議書の作成
  • 相続手続き全体の進行整理

IT行政書士事務所では、戸籍収集や財産調査の支援だけでなく、調査後の相続財産目録や遺産分割協議書の作成についても相談できます。

ただし、不動産の名義変更は司法書士、相続税の申告は税理士、相続人同士で争いがある場合は弁護士の対応が必要になることがあります。

相談先が分からない場合でも、まず現在分かっている財産、借金、相続人、期限を整理して相談すると、その後に必要な専門家を判断しやすくなります。

調査後は相続財産目録へ整理する

財産調査で確認した内容は、金融機関名、不動産の所在地、残高、借入先、債務額などを一覧にして整理します。

調査結果を相続財産目録にまとめておくと、相続するかどうかの判断や、遺産分割協議、その後の名義変更を進めやすくなります。

相続財産調査で確認できた預貯金、不動産、株式、借金などは、相続財産目録にまとめます。
目録には、財産の種類や金額だけでなく、金融機関名、支店名、不動産の所在地、共有持分、評価額の基準日なども記載しておくと、その後の遺産分割協議や遺産分割協議書の作成を進めやすくなります。

財産ごとの書き方や評価額の記載例、Word・Excelのひな形は、以下の記事で解説しています。
相続財産目録の作り方|書き方・評価額・記載例をひな形付きで解説

⑧相続財産調査に関するよくある質問

Q:故人の通帳が見つからない場合はどうすればよいですか

通帳が見つからない場合は、故人宛ての郵便物、キャッシュカード、スマートフォンの銀行アプリ、給与や年金の振込先、公共料金の引落口座などを確認します。

ほかの預金口座の取引履歴から、別の金融機関への振込みが見つかることもあります。利用していた金融機関が判明したら、相続人であることを示す戸籍などを準備し、口座の有無や残高を照会します。

Q:利用していた銀行が分からなくても調べられますか

故人が利用していた銀行を全国一括で確認できるとは限りません。

まずは、自宅に残された郵便物、メール、スマートフォンのアプリ、確定申告書、給与や年金の振込記録などから手がかりを探します。また、判明している口座の取引履歴を確認すると、別の銀行との資金移動が見つかる場合があります。

手がかりが少ない場合は、故人が住んでいた地域や勤務先の近くにある金融機関へ照会する方法もありますが、金融機関ごとに手続きが必要です。

Q:信用情報を確認すれば借金はすべて分かりますか

信用情報機関へ開示を請求しても、故人の借金がすべて判明するとは限りません。

CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センターでは、それぞれ加盟する会社や登録される情報が異なります。また、親族や知人からの借金、税金や社会保険料の未納、家賃、医療費、事業上の未払金、連帯保証などは確認できない場合があります。

信用情報の結果だけで判断せず、郵便物、契約書、通帳の取引履歴、不動産登記、事業関係書類などもあわせて確認しましょう。

Q:名寄帳を取得すれば全国の不動産が分かりますか

名寄帳を取得しても、全国の不動産を一括して確認できるわけではありません。

名寄帳には、原則として、その市区町村内で故人が所有している土地や建物が記載されます。別の市区町村にも不動産がある場合は、それぞれの自治体で確認する必要があります。

故人が過去に住んでいた地域、別荘地、実家のある地域などに不動産を所有していた可能性がある場合は、固定資産税の通知書や確定申告書なども確認してください。

Q:相続財産調査が3か月以内に終わらない場合はどうなりますか

相続放棄や限定承認の期限は、原則として、相続が始まったことを知ったときから3か月以内です。財産調査が終わっていないことだけを理由に、期限が自動的に延びるわけではありません。

財産や借金の全体像が分からず、期限内に判断できない場合は、家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てられることがあります。ただし、必ず認められるとは限らないため、期限が迫る前に専門家へ相談することが大切です。

Q:相続財産調査だけを専門家へ依頼できますか

財産調査の一部だけを専門家へ相談できる場合があります。

たとえば、戸籍の収集、金融機関への照会に必要な書類の整理、不動産や預貯金の調査支援、相続財産目録の作成などです。

ただし、不動産の相続登記は司法書士、相続税の申告は税理士、相続人同士に争いがある場合は弁護士など、相談内容によって適切な専門家が異なります。

Q:財産調査にはどれくらいの期間がかかりますか

財産の種類や数、資料の残り方によって異なります。

通帳や契約書がそろっており、調査先が少なければ比較的短期間で進むこともあります。一方で、複数の金融機関や証券会社への照会、不動産の確認、信用情報の開示などが必要になると、数週間から数か月かかることがあります。

金融機関とのやり取りは、1か所だけでも必要書類の確認、郵送、審査、返送などに2週間程度かかる可能性があります。調査先が複数ある場合は、法定相続情報一覧図を利用し、手続きを並行して進めることも検討しましょう。

まとめ|相続財産調査は、手がかりを集めて順番に進める

相続財産調査では、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金、未払金、保証債務などのマイナスの財産も確認する必要があります。

まずは、故人の自宅に残された通帳、郵便物、契約書、スマートフォン、メールなどを確認し、利用していた金融機関や証券会社、保険会社、借入先の手がかりを集めましょう。

その後、判明した金融機関、法務局、証券会社、信用情報機関などへ照会し、財産や負債の内容を一つずつ確認していきます。デジタル遺産についても、紙の資料が残らないことがあるため、見落とさないよう注意が必要です。

相続財産調査は、自分で始めることもできます。ただし、借金や連帯保証の有無が分からない場合、故人が会社経営者だった場合、複数の金融機関や不動産がある場合などは、調査が複雑になりやすくなります。

また、相続放棄や限定承認には原則3か月以内という期限があります。財産調査が終わらないまま期限が迫っている場合は、そのままにせず、早めに専門家へ相談することが大切です。

IT行政書士事務所では、戸籍収集、相続財産調査の支援、相続財産目録や遺産分割協議書の作成について相談できます。何から調べればよいか分からない場合も、現在分かっている範囲を整理するところから進めていきましょう。

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特定行政書士 野中雅敏(IT行政書士事務所)

  • 国家資格:行政書士(登録番号:25080391)
  • 経歴:IT業界出身/相続・遺言分野を専門取り組み中
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