「特定の相続人には財産を相続させたくない」
そのように考える背景には、
- 長年疎遠になっている
- 前婚の子どもとの関係が複雑
- 介護や支援の負担に差がある
など、さまざまな事情があります。
もっとも、相続は法律上のルールに基づいて行われるため、単に「相続させない」と遺言書に書けば希望どおりになるとは限りません。相続人には遺留分が認められる場合もあり、内容によっては配慮や工夫が必要になります。
また、遺言書の作成方法によっては、後の手続きや家族間の関係に影響することもあるため、適切な形で準備を進めることが大切です。
本記事では、
- 遺言書で特定の相続人に相続させないことは可能なのか
- よくあるケース別の対応方法
- 遺留分や相続廃除との違い
- 遺言書を書く際の注意点
- トラブルを防ぐためのポイント
について、わかりやすく解説します。

目次
①遺言書で特定の相続人に相続させないことはできる?
特定の相続人に財産を相続させたくない場合、遺言書によって財産の配分を調整することは可能です。
たとえば、
- 「長男には相続させたくない」
- 「前婚の子どもへの相続割合を減らしたい」
- 「介護をしてくれた子どもへ多く残したい」
といった希望を、遺言によって一定程度反映できます。
ただし、遺言書に「相続させない」と記載しても、法律上、完全に希望どおりの内容が実現できるとは限りません。
特に、配偶者や子どもなどには「遺留分(法律上保障された最低限の相続分)」が認められているため、一定の財産を請求される可能性があります。
また、被相続人への虐待や重大な侮辱などがある場合には、「相続廃除(家庭裁判所の手続きによって相続権を失わせる制度)」によって、法律上の相続権そのものを失わせられる可能性があります。
まずは、遺言によってどこまで指定できるのかを整理しておきましょう。
遺言の基本的な仕組みや種類については、以下の記事で詳しく解説しています。
遺言とは?種類・効力・作成方法を解説
原則として遺言で財産の配分は指定できる
遺言書では、誰にどの財産を相続させるかを指定できます。
たとえば、
- 「自宅は長女に相続させる」
- 「預貯金は次男に相続させる」
- 「長男には相続させない」
といった内容を記載すること自体は可能です。
実際には、「相続させない」と直接書くというよりも、「特定の財産を他の相続人へ相続させる」という形で財産配分を調整するケースが一般的です。
また、介護や生活支援への貢献、家族関係などを踏まえて、相続割合に差を設けたいと考える方も少なくありません。
もっとも、遺言による指定には一定の限界もあります。
ただし遺留分があるため完全に排除できない場合もある
配偶者や子どもなどの一定の相続人には、「遺留分」という最低限の取り分が法律上認められています。
そのため、遺言で「相続させない」と記載しても、遺留分を持つ相続人から請求を受ける可能性があります。
特に、配偶者や子ども、父母などの直系尊属には「遺留分」が認められているため、一定の財産を請求される可能性があります。
一方で、兄弟姉妹には遺留分がありません。
一方で、兄弟姉妹には遺留分がありません。そのため、兄弟姉妹が相続人となるケースでは、遺言によって相続させない内容を指定しやすいといえます。
なお、遺留分への対応を十分に考慮せずに遺言を作成すると、後に相続人間での争いにつながるケースもあるため注意が必要です。
遺留分については、遺言の効力とも深く関係します。
詳しくは、以下の記事もあわせてご覧ください。
遺言の法的効力|無効になるケースと正しい作成方法

相続権そのものを失わせる「廃除」という制度もある
特定の相続人に重大な問題行為がある場合には、「推定相続人の廃除」という制度を利用できる可能性があります。
たとえば、
- 被相続人への虐待
- 重大な侮辱
- 著しい非行
などがある場合、家庭裁判所の判断によって相続権を失わせられることがあります。
ただし、廃除が認められるハードルは高く、単に「関係が悪い」「疎遠になっている」というだけでは認められないケースが一般的です。
そのため、実際には、遺言による財産配分の調整に加えて、生前贈与や付言事項の活用などを組み合わせながら対応を検討するケースも少なくありません。
推定相続人の廃除については、以下の記事で詳しく解説しています。
遺言で相続人廃除|認められる条件
②相続させたくないと考える主なケース
特定の相続人に財産を相続させたくないと考える理由は、人によってさまざまです。
単に感情的な対立だけではなく、
- 長年疎遠になっている
- 介護や生活支援の負担に差がある
- 再婚家庭で家族関係が複雑になっている
など、現実的な事情が背景にあるケースも少なくありません。
ここでは、実際によくあるケースを紹介します。
(1)子どもに相続させたくないケース
子どもに相続させたくないと考えるケースでは、家族関係や生活状況が大きく影響していることがあります。
■疎遠・絶縁状態の子ども
長年連絡を取っていない、親子関係が事実上途絶えているなどの理由から、「財産を相続させたくない」と考えるケースがあります。
たとえば、長期間にわたって交流がなくなっている場合や、家族間の対立、親族間トラブル、介護への非協力などをきっかけに、親子関係が事実上途絶えてしまうケースもあります。
ただし、単に疎遠であるという理由だけでは、相続権そのものを失わせることは難しいため、遺言による財産配分の調整を検討することになります。
■前婚の子ども
再婚家庭では、前婚の子どもとの関係に悩むケースも少なくありません。
たとえば、離婚後に親権を元配偶者が持つことになり、当初は定期的に子どもと会えていたものの、次第に面会交流の機会が失われてしまうケースもあります。中には、元配偶者との関係悪化や影響によって、子どもが被相続人に対して否定的な感情を持つようになり、長年疎遠な状態が続いているケースもあります。
そのような背景から、現在の配偶者や今の家族へ多く財産を残したいと考える一方で、前婚の子どもにも相続権があるため、相続割合をどう調整するかが問題になります。
特に、遺留分への配慮を欠くと、相続開始後に相続人間で争いになる可能性もあるため注意が必要です。
■面倒を見てくれた子どもへ多く財産を残したいケース
長年にわたって介護や生活支援を担ってくれた子どもへ、できるだけ多く財産を残したいと考える方も少なくありません。
たとえば、同居しながら長年介護を続けてくれたり、通院の付き添いや日常生活の支援を継続的に行ってくれたりする一方で、他の兄弟姉妹はほとんど関与していなかったというケースもあります。そのような事情から、介護や支援を担ってくれた子どもへ、より多く財産を残したいと考える方も少なくありません。
このような場合には、遺言によって財産配分を調整するほか、付言事項を活用して配分理由や感謝の気持ちを伝える方法も検討されます。
■ニート状態の子ども
長期間働いておらず、生活面で自立できていない子どもに対して、「多額の財産を一度に渡すことが本人のためになるのか」と悩むケースがあります。
たとえば、親としては生活を支えてあげたい気持ちがある一方で、相続によってかえって自立の機会を失ってしまうことを心配するケースも少なくありません。
そのため、財産の渡し方を工夫したり、信託などの活用を検討したりするケースもあります。
■浪費癖がある子ども
浪費癖や多額の借金などがある場合、「財産を相続させても適切に管理できないのではないか」と不安を抱くケースがあります。
特に、ギャンブルや過度な消費によって金銭トラブルを繰り返している場合には、将来的に借金などを抱えた際、他の家族に支援してあげてほしいという思いから、他の家族へ多く財産を残したいと考えるケースもあります。
もっとも、こうした事情だけで相続権を失わせることは容易ではないため、遺言による配分調整などを含めて慎重に検討する必要があります。
■孫に直接財産を渡したいケース
子どもではなく、孫へ直接財産を残したいと考えるケースもあります。
たとえば、孫が進学を希望しているものの、子どもの経済状況や家庭の事情によって十分な支援が難しく、将来のために教育費を援助してあげたいと考えるケースがあります。
また、日頃から孫が身の回りの世話や介護を手伝ってくれており、その感謝の気持ちとして財産を残したいと考える方も少なくありません。
ただし、孫は代襲相続などを除き、通常は法定相続人にならないため、財産を残したい場合には遺言による指定が重要になります。ないため、遺言による指定が重要になります。
(2)配偶者に相続させたくないケース
配偶者との関係性によっては、「できるだけ相続させたくない」と考えるケースもあります。
もっとも、配偶者には法律上強い相続権や遺留分が認められているため、子どもや兄弟姉妹とは異なる視点で対策を検討する必要があります。
■離婚予定の配偶者
すでに別居している場合や、離婚協議を進めている場合には、「配偶者へ財産を残したくない」と考えるケースがあります。
もっとも、法律上の離婚が成立していない限り、配偶者には相続権があります。そのため、離婚前の段階では、遺言によって現在の配偶者へ渡す財産を調整し、子どもなど他の相続人へ多く財産を残す方法が検討されます。
また、自宅を現在の子どもへ相続させる、預貯金の配分を明確に指定するなど、遺言によって財産の承継先を具体的に決めておくことで、後の手続きや相続人間での混乱を防ぎやすくなります。
ただし、配偶者には遺留分が認められているため、その点も踏まえながら内容を検討することが重要です。動産や自宅を誰に残すかは、後のトラブルにつながりやすいため、遺言によって明確に意思を残しておくことが重要です。
■内縁関係の場合
現在の配偶者ではなく、長年一緒に生活している内縁関係の相手へ財産を残したいと考えるケースもあります。
もっとも、法律上の配偶者には相続権や遺留分が認められているため、離婚が成立していない限り、配偶者にまったく相続させないことは容易ではありません。
そのため、内縁関係の相手へ財産を遺贈(遺言によって財産を渡すこと)しつつ、配偶者へ渡す財産を調整する形で遺言を作成するケースがあります。
ただし、配偶者から遺留分を請求される可能性もあるため、財産配分や付言事項の内容を含めて慎重に検討することが重要です。
■熟年離婚を検討しているケース
長年婚姻関係が続いていても、老後の生活や価値観の違いなどから、熟年離婚を検討しているケースもあります。
もっとも、離婚が成立するまでは配偶者に相続権があるため、「別居しているから相続されない」と誤解しているケースも少なくありません。
そのため、離婚協議が長期化している場合には、子どもへ多く財産を残す内容の遺言を作成し、配偶者へ相続させる財産を調整する方法が検討されます。
ただし、配偶者には遺留分が認められているため、その点も踏まえて慎重に内容を検討することが重要です。
(3)兄弟姉妹に相続させたくないケース
配偶者や子どもがいない場合には、兄弟姉妹が相続人になるケースがあります。
もっとも、兄弟姉妹との関係性や生活状況によっては、「できるだけ相続させたくない」と考える方も少なくありません。
一方で、兄弟姉妹には遺留分がないため、配偶者や子どものケースと比べると、遺言によって財産配分を調整しやすい特徴があります。
■独身・おひとりさまの相続
配偶者や子どもがいない場合、兄弟姉妹が法定相続人になるケースがあります。
もっとも、長年交流がない、価値観が大きく異なるなどの理由から、兄弟姉妹ではなく、お世話になった親族や友人へ財産を残したいと考える方もいます。
近年では、ペットの世話を引き受けてくれる親族や知人に対し、飼育費用の負担も考慮して財産を残したいという相談も、行政書士実務の現場で増えています。
兄弟姉妹には遺留分がないため、このようなケースでは、遺言によって財産の承継先を明確に指定しておくことが重要になります。
■疎遠な兄弟姉妹
兄弟姉妹とは長年連絡を取っておらず、事実上関係が途絶えているケースもあります。
たとえば、相続や親族間トラブルをきっかけに疎遠になったり、長期間交流がなくなったりして、「財産を相続させたくない」と考えるケースも少なくありません。
兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言によって他の親族や第三者へ財産を渡す内容を指定しやすい点が特徴です。

③ケース別|相続させたくない場合の対応方法一覧
相続させたくない相手や家族関係によって、検討すべき対応方法は異なります。
たとえば、遺言による財産配分の調整で対応しやすいケースもあれば、遺留分への配慮や相続廃除の検討が必要になるケースもあります。
主なケースごとの対応方法と注意点を整理すると、以下のとおりです。
| 分類 | ケース | 主な対応方法 | 注意点・ポイント |
|---|---|---|---|
| 子ども | 疎遠・絶縁状態の子ども | 遺言による財産配分の調整 | 子どもには遺留分がある |
| 子ども | 前婚の子ども | 現在の家族への配分を調整 | 相続人間で争いになりやすい |
| 子ども | ニート状態の子ども | 信託・段階的な財産承継を検討 | 自立への配慮も必要 |
| 子ども | 浪費癖がある子ども | 他の家族へ多めに配分する | 借金・金銭トラブルへの配慮が必要 |
| 子ども | 孫へ直接財産を残したい | 遺言による遺贈を行う | 孫は通常、法定相続人ではない |
| 配偶者 | 離婚予定の配偶者 | 子どもへ多く配分する遺言を作成 | 離婚成立前は相続権がある |
| 配偶者 | 内縁関係のケース | 内縁相手への遺贈を指定する | 配偶者の遺留分に注意 |
| 配偶者 | 熟年離婚を検討しているケース | 子どもへの配分割合を増やす | 遺留分への配慮が必要 |
| 兄弟姉妹 | 疎遠な兄弟姉妹 | 他の親族・第三者へ遺贈する | 兄弟姉妹には遺留分がない |
| 兄弟姉妹 | 独身・おひとりさまの相続 | 財産承継先を明確に指定する | 遺言がないと兄弟姉妹が相続人になる |
| 兄弟姉妹 | ペットを託したいケース | 世話を引き受ける人へ遺贈する | 飼育費用も考慮して指定する |
ケースによっては、遺言だけでなく、生前贈与や家族信託などを組み合わせながら検討した方がよい場合もあります。
また、感情的な対立が予想されるケースでは、付言事項を活用して配分理由や家族への思いを残しておくことも、相続人間でのトラブル防止につながります。
④特定の相続人に相続させないための主な方法
特定の相続人に財産を相続させたくない場合には、状況に応じてさまざまな方法が検討されます。
もっとも、「相続させない」といっても、相続権そのものを失わせるケースもあれば、財産配分を調整するケースもあり、方法によって法的な効果や注意点が異なります。
ここでは、代表的な方法を紹介します。
遺言で他の相続人へ多く財産を配分する
もっとも一般的なのは、遺言によって他の相続人へ多く財産を配分する方法です。
たとえば、
- 子どものうち一人へ多く財産を残す
- 配偶者へ渡す財産を減らす
- 疎遠な兄弟姉妹以外へ財産を承継させる
など、遺言によって財産の承継先を具体的に指定できます。
もっとも、配偶者や子どもなどには遺留分が認められているため、完全に相続させないことが難しいケースもあります。
そのため、遺留分も踏まえながら、どのように財産を配分するかを検討することが重要です。
生前贈与を活用する
生前のうちに、特定の家族へ財産を渡しておく方法もあります。
たとえば、
- 介護をしてくれている子どもへ支援したい
- 孫の教育費を援助したい
- 内縁の相手へ財産を残したい
といったケースで活用されることがあります。
もっとも、生前贈与の内容によっては、相続開始後に「特別受益(特定の相続人が生前に受けた利益)」として扱われる可能性もあるため注意が必要です。
たとえば、特定の相続人へ生前に多額の財産を渡していた場合、その贈与分を遺産に加算して各相続人の取り分を計算することがあります。これを「持ち戻し」といいます。
そのため、生前贈与によって特定の相続人へ多く財産を渡したつもりでも、結果として想定していたほど相続割合に差がつかないケースもあります。
また、税務面への配慮も必要になるため、事前に専門家へ相談しながら進めることが望ましいでしょう。
推定相続人の廃除を検討する
被相続人への虐待や重大な侮辱などがある場合には、「推定相続人の廃除(家庭裁判所の手続きによって相続権を失わせる制度)」を検討するケースもあります。
たとえば、
- 長期間にわたる虐待
- 深刻な暴力行為
- 著しい非行
などが問題になるケースがあります。
もっとも、単に疎遠である、価値観が合わないといった理由だけでは、廃除が認められるケースは多くありません。
また、家庭裁判所での手続きが必要になるため、実際には遺言による財産配分の調整とあわせて検討されることもあります。
推定相続人の廃除については、以下の記事で詳しく解説しています。
遺言で相続人廃除|認められる条件・失敗例・遺留分との違いを解説
家族信託など他制度を活用する
財産の管理や承継方法に不安がある場合には、生前の対策として家族信託を活用する方法もあります。
家族信託では、信頼できる家族などに財産の管理を任せ、財産をどのように承継・管理していくかをあらかじめ決めておくことができます。
たとえば、ニート状態の子どもや浪費癖のある家族に対して、一度に多額の財産を渡すのではなく、生活費として段階的に給付するよう設計するケースもあります。
もっとも、家族信託は遺言書とは異なり、生前に契約しておく必要があります。また、制度設計が複雑になることもあるため、遺言との使い分けを含めて慎重に検討することが重要です。ースもあるため、遺言との使い分けも含めて慎重に検討することが重要です。
⑤遺言書を書く際の注意点
特定の相続人に相続させたくない場合、遺言書の内容や作成方法によっては、後に相続人間でトラブルになるケースもあります。
特に、
- 内容が曖昧になっている
- 法律上の要件を満たしていない
- 感情的な表現が強すぎる
といった場合には、遺言の有効性や解釈をめぐって争いになる可能性もあるため注意が必要です。
ここでは、遺言書を作成する際に押さえておきたいポイントを紹介します。
自筆証書遺言は無効リスクがある
自筆証書遺言(本人が手書きで作成する遺言)は手軽に作成できる一方で、形式不備によって無効になるリスクがあります。
たとえば、
- 日付が不明確
- 署名・押印がない
- 財産の内容が曖昧
- 修正方法が法律上の要件を満たしていない
といったケースでは、遺言の有効性が問題になることがあります。
特に、「相続させない」という内容を含む遺言では、相続人間で争いになりやすいため、内容を明確に作成することが重要です。
感情的な表現を書きすぎない
相続させたくない理由が強い不満や対立にある場合でも、遺言書へ感情的な表現を書きすぎることは避けた方がよいでしょう。
たとえば、
- 一方的な非難
- 人格を否定するような表現
- 強い恨みを書き連ねる内容
などは、相続人間の対立を深刻化させる原因になることがあります。
特に、遺言書は相続開始後に家族が目にする文書です。
そのため、配分理由を伝えたい場合には、付言事項を活用しながら、できるだけ冷静かつ具体的に記載することが望ましいでしょう。
財産内容・相続割合を明確に記載する
遺言書では、「誰に」「どの財産を」「どのように承継させるのか」を具体的に記載することが重要です。
たとえば、
- 不動産の表示が不正確
- 預貯金口座が特定できない
- 相続割合が曖昧
といった場合には、後の手続きで混乱が生じる可能性があります。
また、「相続させない」とだけ記載しても、具体的な財産の承継先が決まっていなければ、十分な効果を持たないケースもあります。
そのため、他の相続人や受遺者(遺言によって財産を受け取る人)への承継内容も含めて、明確に記載しておくことが大切です。

公正証書遺言で作成するのが安全
相続トラブルをできるだけ防ぎたい場合には、公正証書遺言(公証人が作成に関与する遺言)で作成する方法が有力です。
公正証書遺言では、公証人が内容や形式を確認しながら作成するため、自筆証書遺言と比べて無効リスクを抑えやすい特徴があります。
また、
- 内容を明確に整理しやすい
- 原本が公証役場に保管される
- 相続開始後の手続きが進めやすい
といったメリットもあります。
特に、「相続させない」という内容を含む遺言では、後に相続人間で争いになる可能性もあるため、専門家へ相談しながら慎重に作成することが重要です。
⑥遺言書の書き方例とNG例
特定の相続人に相続させたくない場合でも、遺言書では単に「相続させない」と記載するのではなく、誰にどの財産を承継させるのかを具体的に記載することが重要です。
ここでは、ケース別の記載例を紹介します。
相続させない場合の記載例
遺言書では、「誰に相続させるか」を具体的に記載することで、結果として特定の相続人へ承継させない形にするのが一般的です。
たとえば、次のような記載例があります。
NG例
「長男には相続させない」
これだけでは、他の財産を誰が取得するのかが不明確です。
記載例
第1条
遺言者は、○○銀行○○支店の普通預金口座(口座番号○○)の預貯金を、長女〇〇に相続させる。第2条
遺言者は、○○市○○町○丁目○番所在の土地および建物を、次男△△に相続させる。
このように、財産の承継先を具体的に指定することで、内容を明確にしやすくなります。
配偶者へ相続させる財産を調整する場合の記載例
離婚予定の配偶者がいる場合などには、子どもへ多く財産を残す内容の遺言を作成するケースがあります。
記載例
遺言者は、○○銀行○○支店の普通預金を、長男〇〇に相続させる。
遺言者は、○○市○○町○丁目○番所在の土地建物を、長女△△に相続させる。
このように、財産の承継先を具体的に指定することで、配偶者へ承継する財産を調整しやすくなります。
孫へ財産を承継させる場合の記載例
子どもではなく、孫へ直接財産を残したい場合には、遺言によって承継先を明確に指定しておくことが重要です。
記載例
遺言者は、○○銀行○○支店の定期預金500万円を、孫〇〇に遺贈する。
このように孫へ遺贈することで、結果として特定の相続人へ渡る財産を調整できる場合があります。続人ではないため、「遺贈(遺言によって財産を渡すこと)」として明確に記載しておくことが大切です。
内縁の相手へ財産を残したい場合の記載例
法律上の配偶者ではない内縁関係の相手へ財産を残したい場合も、遺言による指定が必要になります。
記載例
遺言者は、○○銀行○○支店の普通預金を、内縁の妻〇〇へ遺贈する。
内縁関係の相手には法定相続権がないため、財産内容を具体的に指定しておくことが重要です。
付言事項の記載例
付言事項を活用することで、財産配分の理由や家族への思いを伝えやすくなります。
記載例
「長年にわたり介護や生活支援をしてくれたことに感謝しています。」
「現在の生活状況などを考慮し、このような配分としました。」
感情的な非難ではなく、感謝や配慮を中心に記載することで、相続人間での感情的対立を和らげられる場合もあります。
⑦付言事項を活用するとトラブル予防につながる
特定の相続人へ財産を相続させない内容の遺言では、相続人間で不満や感情的な対立が生じるケースもあります。
そのような場合に活用されるのが、「付言事項(遺言書へ家族への思いや配分理由などを記載する部分)」です。
付言事項自体には法的な効力はありませんが、遺言者の考えや背景事情を伝えることで、相続人間での無用な誤解や対立を和らげられる場合があります。
なぜその配分にしたのかを伝えられる
遺言書では財産の承継先を指定できますが、「なぜそのような配分にしたのか」までは伝わりません。
たとえば、
- 長年介護をしてくれた
- 生活支援を続けてくれた
- 現在の生活状況へ配慮した
など、配分理由を付言事項へ記載することで、遺言者の意図を相続人へ伝えやすくなります。
特に、「相続させない」「相続割合を減らす」といった内容を含む場合には、理由を一定程度説明しておくことで、感情的な反発を抑えられるケースもあります。
感謝や家族への思いを残せる
付言事項では、財産の話だけでなく、家族への感謝や思いを伝えることもできます。
たとえば、
「長年にわたり支えてくれたことに感謝しています。」
「家族が今後も穏やかに過ごしてくれることを願っています。」
など、感謝や配慮を記載するケースもあります。
特に、相続内容に差を設ける場合には、財産配分だけが強調されると、相続人が「自分は否定された」と受け取ってしまうこともあります。
そのため、付言事項を通じて遺言者の思いを補足しておくことには一定の意味があります。
相続人間の感情対立を和らげる効果が期待できる
相続では、法律上の権利だけでなく、感情面の対立が問題になるケースも少なくありません。
特に、
- 疎遠な家族がいる
- 再婚家庭で相続関係が複雑
- 相続割合に大きな差がある
といったケースでは、遺言内容への不満が強くなることもあります。
もっとも、付言事項によって必ずトラブルを防げるわけではありません。
それでも、遺言者本人の言葉で背景事情や配慮を伝えておくことで、相続開始後の相続人間での感情的対立を和らげられる場合があります。
⑧遺言書で相続させない場合によくあるトラブル
特定の相続人へ財産を相続させない内容の遺言では、相続開始後に相続人間でトラブルになるケースもあります。
もっとも、トラブルの原因は単に「相続させない」という内容そのものではなく、
- 遺留分への配慮が不足している
- 遺言内容が曖昧
- 遺言者の意思が十分に伝わっていない
といった事情が重なることで発生するケースも少なくありません。
ここでは、実際によくあるトラブル例を紹介します。
遺留分侵害額請求を受けるケース
配偶者や子どもなどには遺留分が認められているため、遺言によって財産を相続させない内容にした場合でも、後に遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
たとえば、
- 前婚の子どもへ財産を残さなかった
- 配偶者へ渡す財産を大きく減らした
- 一部の子どもへ大半の財産を承継させた
といったケースでは、相続開始後に金銭請求へ発展することもあります。
そのため、遺留分も踏まえながら、財産配分や付言事項の内容を検討することが重要です。
遺言無効を主張されるケース
遺言内容に不満がある場合、相続人から「遺言は無効ではないか」と主張されるケースもあります。
たとえば、
- 遺言作成時に認知症だったのではないか
- 本人の意思で作成されたものではない
- 自筆証書遺言の形式に不備がある
といった点が争われることがあります。
特に、「相続させない」という内容を含む遺言では、相続人間の対立が強まりやすいため、内容や作成手続きの適切性が問題になるケースも少なくありません。
そのため、公正証書遺言を活用し、作成過程を明確にしておくことがトラブル防止につながります。
相続人間で感情的な対立が深刻化するケース
相続では、法律上の問題だけでなく、感情的な対立が大きなトラブルにつながることもあります。
特に、
- 「自分だけ相続割合が少ない」
- 「親から否定されたように感じる」
- 「配分理由に納得できない」
と受け取られると、相続人間の関係悪化につながるケースもあります。
また、遺言内容が十分に整理されていない場合には、相続手続きそのものが進まなくなることもあります。
そのため、単に「誰に相続させないか」だけでなく、
- なぜその配分にしたのか
- どのような思いがあったのか
- 今後どのように家族関係を維持してほしいのか
といった点も含めて整理しながら遺言を作成することが重要です。
⑨トラブルを防ぐなら公正証書遺言がおすすめ
特定の相続人へ財産を相続させない内容の遺言では、後に相続人間で争いになるリスクもあるため、できるだけ内容や作成手続きを明確にしておくことが重要です。
そのような場合に、有力な方法として検討されるのが「公正証書遺言(公証人が関与して作成する遺言)」です。
自筆証書遺言と比べて無効リスクを抑えやすく、内容も整理しやすいため、相続トラブルの予防につながるケースがあります。
公証人が関与するため無効リスクを減らせる
公正証書遺言は、公証人が法律上の形式を確認しながら作成するため、自筆証書遺言と比べて形式不備による無効リスクを抑えやすい特徴があります。
たとえば、日付の記載漏れや署名・押印漏れ、財産内容の記載不備などが起こりにくくなります。
特に、「相続させない」という内容を含む遺言では、相続人から内容を争われるケースもあるため、作成過程を明確にしておくことには大きな意味があります。
内容を明確に残しやすい
公正証書遺言では、公証人と内容を確認しながら作成するため、誰に、どの財産を、どのように承継させるのかを整理しながら記載できます。
また、遺留分への配慮や、不動産表示・預貯金口座の確認なども含めて整理しやすいため、相続開始後の手続きや解釈をめぐる争いを防ぎやすくなります。
さらに、原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんリスクを抑えられる点もメリットです。
専門家に相談するメリット
「相続させない」という内容を含む遺言では、遺留分への対応や相続廃除との違い、生前贈与との関係、付言事項の記載内容など、検討すべきポイントが多くなります。
特に、前婚の子どもがいる場合や、再婚家庭で相続関係が複雑になっているケース、疎遠な家族がいるケース、内縁関係の相手へ財産を残したいケースなどでは、遺言内容によって後のトラブルリスクが大きく変わることもあります。
そのため、公正証書遺言を作成する際には、専門家へ相談しながら内容を整理することで、希望に沿った形で準備を進めやすくなります。遺言を作成する際には、専門家へ相談しながら内容を整理することで、希望に沿った形で準備を進めやすくなります。

⑩よくある質問(FAQ)
Q:遺言書で完全に相続させないことはできますか?
配偶者や子どもには遺留分があるため、遺言だけで完全に相続させないことはできません。
一方で、兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言によって相続させない内容を指定することは可能です。
Q:遺留分を請求されたらどうなりますか?
遺留分を侵害している場合、財産を受け取った相続人などに対して、金銭の支払いが必要になる可能性があります。
これを「遺留分侵害額請求」といいます。
そのため、特定の相続人へ多く財産を承継させる内容の遺言では、相続開始後に金銭トラブルへ発展するケースもあります。
Q:相続廃除が認められるのはどんなケースですか?
被相続人への虐待や重大な侮辱、著しい非行などがある場合には、相続廃除が認められる可能性があります。
もっとも、相続廃除が認められるかどうかは家庭裁判所が判断します。
そのため、単に疎遠である、価値観が合わないといった理由だけでは認められないケースが一般的です。
Q:前婚の子どもにも遺留分はありますか?
前婚の子どもであっても、法律上の子どもである以上、原則として相続権や遺留分があります。
そのため、現在の家族へ多く財産を残したい場合でも、遺留分への配慮が必要になるケースがあります。
Q:兄弟姉妹には遺留分がありますか?
兄弟姉妹には遺留分がありません。
そのため、兄弟姉妹が相続人となるケースでは、遺言によって他の親族や第三者へ財産を承継させやすい特徴があります。
Q:公正証書遺言にした方がよいですか?
「相続させない」という内容を含む遺言では、公正証書遺言で作成することをおすすめします。
公証人が内容や形式を確認しながら作成するため、自筆証書遺言と比べて無効リスクを抑えやすく、後に相続人間で争いになるリスクも軽減しやすいためです。
また、原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんを防ぎやすい点もメリットです。
Q:自筆証書遺言でも有効ですか?
法律上の要件を満たしていれば、自筆証書遺言でも有効です。
もっとも、形式不備や内容の曖昧さによって無効が争われるケースもあるため、「相続させない」という内容を含む場合には慎重な作成が求められます。
Q:付言事項には何を書けばよいですか?
付言事項には、財産配分の理由や家族への感謝、今後の希望などを記載するケースがあります。
たとえば、
「長年介護を支えてくれたことに感謝しています。」
など、感謝や配慮を伝える内容がよく利用されます。
一方で、強い非難や感情的な表現を書きすぎると、相続人間での対立を深める可能性もあるため注意が必要です。
まとめ
遺言書によって、特定の相続人へ財産を相続させない形に調整することは可能です。
もっとも、配偶者や子どもには遺留分が認められているため、単に「相続させない」と記載するだけで、必ず希望どおりになるとは限りません。
また、
- 前婚の子どもとの関係
- 疎遠な家族
- 離婚予定の配偶者
- 兄弟姉妹への相続
など、家族関係や背景事情によって、適切な対応方法は異なります。
そのため、
- 遺言による財産配分の調整
- 生前贈与
- 相続廃除
- 付言事項の活用
などを状況に応じて検討することが重要です。
特に、「相続させない」という内容を含む遺言では、後に相続人間で争いになるケースもあるため、内容を明確に整理したうえで、公正証書遺言によって作成しておくことが望ましいでしょう。
当事務所では、公正証書遺言の作成サポートや、相続トラブルを見据えた遺言内容の整理についてご相談を承っています。
「どのように財産を残せばよいかわからない」
「前婚の子どもとの相続関係に悩んでいる」
「できるだけ争いを避けたい」
といった場合には、お早めにご相談ください。
無料相談受付中|まずは一度、お気軽にお話ししませんか?
この記事をここまで読んでくださったあなたへ。
もしかすると今、心の中にこういう想いがあるかもしれません。
- 「まだ元気だけど、そろそろ考えておいた方がいいかも」
- 「相続で家族が揉めるのは絶対に避けたい」
- 「親が高齢になってきて、何か準備が必要そう…」
そう感じた今こそ、行動を起こすチャンスです。
まだ何も決まっていなくてOK。まずは一度、お話をお聞かせください。
✅ 無料相談でできること
当事務所では、初回のご相談は無料で承っております。相談の内容は、まだ漠然としたものでまったく構いません。
ご相談内容の例
- 遺言って何から始めればいいの?
- うちの家族関係でもトラブルなく進められる?
- 自分で書いた遺言書を見てほしい
- 公正証書遺言ってどこに行けばいいの?
- 相続の流れも一緒に知りたい など
💡 専門家に話すことで、「今すべきこと」が明確になります。
✅ 実績・対応エリアについて
当事務所では、これまでに数十件以上の遺言・相続サポートを行ってきました。
地域に根ざした対応と、丁寧でわかりやすい説明をモットーに、多くのお客様から喜びの声をいただいています。
- 対応地域:大田区・品川区・近隣エリア(オンライン相談も対応可)
- ご高齢の方やご家族向けの「ご自宅訪問」も可能です
✅ ご相談の流れ
- 【STEP1】お問い合わせ
→ 電話・メールフォームのいずれかでご連絡ください - 【STEP2】日程調整
→ ご都合の良い日程を調整いたします(平日夜・土日対応もOK) - 【STEP3】無料相談(60分程度)
→ ご状況やお悩みをじっくりお伺いします - 【STEP4】ご提案・お見積り
→ ご希望に応じて、最適なプランをご提案。無理な営業は一切しません。
💬 「話してよかった」「気持ちが軽くなった」そんなご感想を多くいただいています。
✅ ご相談方法(選べます!)
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 📞 電話相談 | お急ぎの方や対面が難しい方におすすめ |
| 🖥 オンライン相談 | ご自宅から安心して相談できます(Zoom対応) |
| 🏠 訪問相談 | ご高齢の方、外出が難しい方のために訪問も可 |
✅ 行政書士プロフィール
特定行政書士 野中雅敏(IT行政書士事務所)
- 国家資格:行政書士(登録番号:25080391)
- 経歴:IT業界出身/相続・遺言分野を専門取り組み中
- 趣味:競泳
- メッセージ:
「遺言は“難しいこと”ではなく、“優しさのカタチ”です。
家族を守るために、ぜひ一緒に考えていきましょう。」
📩 お問い合わせはこちら
- ☎ お電話:03-6820-3968
- 📝 お問い合わせフォーム
- 📍 事務所所在地:東京都大田区大森北3-24-27 ルミエールN
あなたの「不安」を「安心」に変えるお手伝いを、私たち行政書士が全力でサポートいたします。
どんな小さなことでも構いません。
今すぐ、気軽にご連絡ください。

