あなたは今、こんな状況ではありませんか?
- 遺言書を見て「自分の取り分が少ない」と感じている
- 親の遺言に納得できず、遺留分について調べている
- これから遺言を書こうとして「本当にこの内容で大丈夫か」と不安になっている
相続の現場では、「遺言があればすべて決まる」と思われがちです。
しかし実際には、遺言があっても“遺留分”という最低限の取り分は法律で守られています。
つまり、
遺言の内容によっては、後から遺留分を請求できるケースもあれば、
逆に、遺言を書く側が遺留分を考慮していないとトラブルになるケースも少なくありません。
実際、遺留分をめぐる相続トラブルは珍しいものではなく、
「知らなかった」ことが原因で家族関係が悪化してしまうこともあります。
この記事では、
- 遺留分とは何か(基本からわかりやすく)
- 遺言と遺留分の関係
- 遺留分を請求できるかの判断ポイント
- 実際の請求方法と注意点
- 遺留分トラブルを防ぐ遺言の作り方
まで、初心者でも理解できるように体系的に解説します。
まずは結論からお伝えします。
遺言があっても、遺留分は請求できます。
そのうえで、あなたが今すべきことは何か。
この記事を読み進めながら、一つずつ整理していきましょう。

目次
①:まず結論|遺言があっても遺留分は請求できる
結論からお伝えします。
遺言書があっても、遺留分は請求できます。
「遺言にそう書いてあるから仕方ない」と思ってしまう方は多いですが、
法律上、遺言の内容がすべて優先されるわけではありません。
なぜなら、相続人には「遺留分」という
最低限保障された取り分があるからです。
たとえば、遺言書に
「すべての財産を長男に相続させる」
と書かれていたとしても、
配偶者や他の子どもには遺留分が認められており、
そのまま何も受け取れないということはありません。
この場合、遺留分が侵害されている相続人は、
「遺留分侵害額請求」という手続きを行うことで、
本来受け取るべき最低限の取り分を金銭で取り戻すことができます。
一方で、これは「遺言を書く側」にとっても重要なポイントです。
遺言によって自由に財産を分けることはできますが、
遺留分を考慮していない場合、相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
実際に多いのが、
「感謝している子どもに多く渡したい」「介護してくれた人にすべて残したい」といった思いから、特定の相続人に偏った遺言を書いてしまうケースです。
しかしその結果、他の相続人から遺留分侵害額請求を受け、トラブルに発展してしまうことも少なくありません。
つまり、遺言と遺留分の関係を一言でいうと、
「遺言は自由に書けるが、遺留分によって一定の制限を受け、最終的に調整される」仕組みです。
では、あなた自身はどうでしょうか。
遺言によって自分の取り分が少なくなっているのか、それとも、これから遺言を書こうとしているのか。立場は違っていても、まず確認すべきポイントは共通しています。
それが、
「自分に遺留分があるのか」「請求できる状態なのか」という点です。
次の章では、あなたが遺留分を請求できるかどうかを、1分で判断できるチェックリストを用意しています。
まずはご自身の状況を、整理するところから始めてみましょう。単に整理してみましょう。
遺言書の種類は3つ|結局どれを選ぶべき?公正証書遺言が安心な理由を解説
②:あなたは遺留分を請求できる?【1分チェック】
遺留分について理解したところで、
次に気になるのは「自分が請求できるのかどうか」ではないでしょうか。
ここでは、あなたの状況を簡単に整理できるように、
1分で確認できるチェックリストを用意しました。
次の項目に当てはまるものがあるか確認してみてください。
- 配偶者・子ども・親など、法定相続人にあたる立場である
- 遺言書で特定の人に財産が大きく偏っている
- 自分の取り分が極端に少ない、またはほとんどない
- 一部の相続人だけが生前に多くの贈与を受けている
これらのうち2つ以上当てはまる場合は、遺留分が侵害されている可能性があります。
また、1つでも強く当てはまる場合は、具体的な状況によって請求できるケースもあります。
なお、兄弟姉妹には遺留分は認められていないため、相続人であっても請求できない場合がある点には注意が必要です。
ここまで読んで、自分が対象になるのか判断がつかない、財産の内容がよく分からない、あるいは家族間で揉めそうな気がする。そんな不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
そのような場合は、早めに専門家に確認することをおすすめします。
遺留分の問題は、最初の対応を誤ると不利な条件で話が進んでしまうこともあるため、初動がとても重要です。
公正証書遺言でも安心できない?遺留分で相続できないケースと具体的対策を解説
③:遺留分とは?(基本をわかりやすく)
ここまでで、「遺留分を請求できる可能性があるかもしれない」と感じた方もいると思います。
では、そもそも遺留分とは何なのでしょうか。
遺留分とは、
一定の相続人に法律で保障された「最低限の取り分」ことです。
たとえば、遺言で「すべての財産を長男に相続させる」と書かれていたとしても、
配偶者や他の子どもには、この遺留分が認められています。
つまり、遺言の内容にかかわらず、
まったく何も受け取れないという事態を防ぐための制度です。
なぜ遺留分があるのか
遺留分制度の目的は、相続人の生活を守ることにあります。
もし遺留分がなければ、すべての財産を特定の人に渡したり、家族以外の第三者にすべて遺贈したりする遺言も、そのまま有効になってしまいます。
そうなると、配偶者や子どもが生活に困る可能性もあります。
こうした事態を防ぐために、法律によって一定の相続人には最低限の取り分が保障されているのです。が生活に困る可能性もあるため、
法律によって最低限の取り分が確保されているのです。
遺留分がある人・ない人
遺留分が認められるのは、以下の相続人です。
- 配偶者
- 子ども(養子を含む)
- 直系尊属(父母など)
一方で、
兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
そのため、兄弟姉妹が相続人となるケースでは、
遺言によって取り分がゼロになる可能性もあります。
遺留分の割合(ざっくり理解)
遺留分の割合は、原則として
法定相続分の1/2です。
ただし、相続人が直系尊属(親など)のみの場合は、
法定相続分の1/3となります。
代表的なケースを表で整理すると、次のとおりです。
| 相続人の構成 | 法定相続分 | 遺留分 |
|---|---|---|
| 配偶者+子ども | 配偶者1/2、子ども1/2 | 配偶者1/4、子ども1/4 |
| 配偶者+親 | 配偶者2/3、親1/3 | 配偶者1/3、親1/6 |
| 子どものみ | 全体で1 | 全体で1/2(人数で分割) |
ここまでをまとめると、遺留分は
「完全に自由な相続を防ぐための最低限のセーフティネット」といえます。

ただし、ここで一つ重要なポイントがあります。
遺留分は「自動的にもらえるもの」ではありません。
遺留分が侵害されている場合でも、
自分から請求しなければ実際に受け取ることはできないのです。
次の章では、
遺言と遺留分がどのように関係するのか(どこまで有効で、どこから調整されるのか)
を具体的に解説していきます。
遺言で遺留分侵害は起こる?対策・計算・請求までわかりやすく解説
④:遺言と遺留分の関係
遺言と遺留分は、どちらも相続において重要な役割を持っていますが、その関係は少し誤解されやすいポイントでもあります。
多くの方が「遺言があれば、その内容がすべて優先される」と考えがちですが、実際にはそうではありません。
遺言は、被相続人の意思を尊重し、財産の分け方を自由に決めることができる制度です。
そのため、特定の人に多くの財産を渡したり、家族以外の人に遺贈したりすることも可能です。
しかし、その自由には一定の制限があります。
それが、遺留分です。
すでにお伝えしたとおり、遺留分は
一定の相続人に保障された最低限の取り分です。
そのため、遺言によってこの遺留分が侵害されている場合、
相続人は「遺留分侵害額請求」を行うことで、その不足分を請求することができます。
ここで重要なのは、
遺言そのものが無効になるわけではないという点です。
遺留分が問題になる場合でも、遺言の内容自体は有効です。
ただし、そのまま実現されるのではなく、遺留分の範囲で金銭的に調整されることになります。
たとえば、
「すべての財産を長女に相続させる」
という遺言があった場合でも、他の相続人に遺留分があるときは、その分について金銭で支払う必要が生じる可能性があります。
この場合、財産を多く受け取った長女が、他の相続人に対して遺留分に相当する金額を支払うことになります。
つまり、遺言と遺留分の関係を整理すると、
遺言は自由に書けるが、遺留分によって一定の制限を受け、最終的に調整される仕組みです。
この関係を理解していないと、遺言を書いたにもかかわらず相続トラブルに発展してしまったり、逆に遺言があるからといって本来請求できる遺留分を見逃してしまったりといった、もったいない状況につながる可能性があります。
そこで次は、あなたの立場に応じて
- 遺留分を請求したい場合はどうすればいいのか
- 遺言を書く場合に何に注意すべきか
を、それぞれ具体的に解説していきます。防ぐための「遺言書作成」についてご紹介します。
遺留分を請求したい方へ
遺言によって自分の取り分が少なくなっている場合でも、遺留分が侵害されていれば、その不足分を請求することができます。
ここでは、遺留分を請求するために知っておきたい基本を整理します。
遺留分侵害額請求の方法と流れ
遺留分が侵害されている場合に行うのが、
「遺留分侵害額請求」です。
これは、遺留分を侵害している相手に対して、不足分を金銭で支払うよう求める手続きです。
一般的には、次のような流れで進みます。

相手に対して「遺留分を請求する」という意思を正式に通知します(証拠を残すことが重要です)
内容証明郵便は、相手に強い意思表示を伝える手段であり、関係性によっては心理的な距離が生じることもあるため、タイミングや伝え方には注意が必要です
金額や支払い方法について、当事者間で合意を目指します
話し合いで解決できない場合は、家庭裁判所での手続きに移行します
請求期限(非常に重要)
遺留分の請求には期限があります。
相続開始と遺留分侵害を知った日から1年以内
または相続開始から10年以内
この期間を過ぎると、原則として請求できなくなります。
そのため、「あとで考えよう」と放置するのは非常にリスクが高いといえます。
さらに、期限を過ぎた後に「特別に認めてほしい」と主張しても、例外的に認められる可能性は極めて低く、実務上はほとんど認められないと考えておいた方がよいでしょう。
自分でやる?弁護士に依頼する?
遺留分の請求は自分で行うことも可能ですが、ケースによっては専門家に依頼した方が安全です。
比較的シンプルなケースであれば、自分で対応できる場合もありますが、遺留分の計算や財産の評価、相手方との交渉など、実務的に難しいポイントも多くあります。
そのため、財産の内容が複雑な場合や、相続人同士の関係に不安がある場合には、弁護士への依頼を検討するのが現実的です。る場合や、不動産・事業が関係する場合は、専門家の関与が重要になります。
このような場合は早めの相談を
- 遺産の大半が不動産である
- 相手方が話し合いに応じない可能性がある
- すでに家族間で対立がある
このような場合は、早い段階で専門家に相談することで、無用なトラブルを避けられる可能性があります。
初動の対応によって結果が大きく変わることもあります。
遺言を書きたい方へ
これから遺言書を作成しようと考えている方にとって、遺留分は避けて通れない重要なポイントです。
遺言によって財産の分け方を自由に決めることはできますが、遺留分を考慮していない場合、相続開始後に他の相続人から請求を受ける可能性があります。
遺留分を無視するとどうなるか
遺留分を考慮せずに遺言を書いてしまうと、結果として相続トラブルにつながることがあります。
たとえば、特定の相続人に多くの財産を渡したいという思いから偏った内容にした場合でも、他の相続人には遺留分があります。そのため、相続開始後に遺留分侵害額請求が行われ、財産を多く受け取った人が金銭で補償する必要が生じることになります。
こうした状況になると、せっかくの遺言がそのまま実現されないだけでなく、金銭のやり取りをきっかけに家族間の関係が悪化してしまう可能性もあります。
公正証書遺言でも防げる?
「公正証書遺言にしておけば安心」と考える方も多いですが、これは半分正しく、半分誤解です。
たしかに、公正証書遺言は形式的な不備がなく、無効になるリスクは低いというメリットがあります。
しかし、
遺留分の問題は「遺言の形式」とは別の問題です。
たとえば、被相続人(亡くなった方)が
「すべての財産を長女に相続させる」
という内容の公正証書遺言を作成したとします。
この場合、遺言を書いた被相続人の意思としては長女にすべてを渡す内容になっていますが、他の相続人(たとえば配偶者や他の子ども)には遺留分があります。
そのため、遺留分が侵害されている場合には、
遺言によって多くの財産を受け取った長女が
他の相続人から遺留分侵害額請求を受けることになります。
そして、請求を受けた長女は、
不足している遺留分に相当する金額を、金銭で支払う必要が生じます。
つまり、
- 誰が遺言を書くのか → 被相続人
- 誰の遺留分が問題になるのか → 他の相続人
- 誰が請求を受けるのか → 多く財産を受け取った人
という関係になります。
したがって、公正証書遺言であっても、遺留分を侵害していれば請求の対象になる点は変わりません。
「形式として正しい遺言」と「トラブルにならない遺言」は別物であるという点に注意が必要です。
自筆証書遺言 vs 公正証書遺言(遺留分の観点)
遺言の形式によって、遺留分そのものが変わるわけではありませんが、トラブルの起こりやすさには違いがあります。
| 項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
|---|---|---|
| 有効性 | 不備で無効の可能性あり | ほぼ無効にならない |
| 安全性 | 低い | 高い |
| トラブル耐性 | やや弱い | 比較的強い |
確実性やトラブル回避を重視する場合は、公正証書遺言が選ばれることが多いです。
その理由の一つとして、公証人や行政書士などの専門家が関わって遺言を作成する過程で、遺留分にも配慮した内容にするよう助言を受けられる点が挙げられます。
なお、行政書士は、遺言書の作成支援や相続手続きに関する書類作成を行う専門家であり、法的な観点から内容の整理やリスクの指摘を受けることができます。
相続人の関係や財産の状況を踏まえて、実務的な観点から遺言内容を整理できる点も特徴です。
遺留分対策の具体例
遺留分トラブルを防ぐためには、あらかじめ対策を取っておくことが重要です。
具体的には、遺留分を考慮した配分にすることに加え、生命保険などを活用して現金を確保しておくことや、付言事項によって遺言の理由や思いを丁寧に伝えることが有効です。
これらの対策を組み合わせることで、相続人の納得感を高め、結果としてトラブルを未然に防ぐことにつながります。
このような場合は専門家への相談を
- 特定の人に多く財産を渡したい
- 不動産など分けにくい財産が多い
- 相続人の関係が複雑
このような場合は、遺留分を踏まえた設計が必要になるため、専門家に相談しながら遺言を作成するのが安心です。
特に、遺留分に配慮せずに内容を決めてしまうと、相続開始後に請求を受ける可能性があるため、事前の検討が重要になります。
遺言は「書けば安心」ではなく、遺留分を含めた設計ができているかどうかで、その後の結果が大きく変わります。
⑤:よくある遺留分トラブル事例
遺留分をめぐるトラブルは、特別なケースではなく、実際の相続の現場でも頻繁に起こっています。
ここでは、よくある典型的な事例を見ながら、なぜトラブルになるのかを確認していきましょう。
ケース①:特定の相続人にすべて相続させた場合
「長年面倒を見てくれた長男にすべてを相続させたい」と考え、たとえば同居して介護を担ってくれていたことへの感謝の気持ちから、全財産を一人に集中させる遺言を作成するケースです。
しかし、このような場合でも、他の相続人(配偶者や他の子ども)には遺留分があります。
その結果、相続開始後に遺留分侵害額請求が行われ、財産を受け取った長男が他の相続人に金銭を支払う必要が生じることになります。
このケースでは、「感謝の気持ち」を形にしたつもりの遺言が、結果的に金銭トラブルへと発展してしまうことがあります。
ケース②:生前贈与による偏り
生前に特定の子どもへ多額の資金援助や不動産の贈与を行っていたケースです。
一見すると遺言とは関係ないように見えますが、一定の範囲では生前贈与も遺留分の計算に含まれるため、結果的に遺留分を侵害することがあります。
(原則として、相続開始前の一定期間内の贈与や、特別受益にあたる贈与などが対象になります)
そのため、相続開始後に「すでに多くもらっているのに、さらに遺言でも優遇されている」として、他の相続人から請求を受けるケースが少なくありません。
ケース③:不動産しか財産がない場合

遺産の大半が自宅や土地などの不動産で、現金がほとんどないケースです。
この場合、遺留分は「金銭で支払う」必要があるため、不動産を取得した相続人が資金を用意できず、売却を余儀なくされることがあります。
実際に、行政書士の実務においても、不動産はあるものの現金が不足していることから、遺留分への対応に苦慮するケースは少なくありません。
また、住宅ローンについては団体信用生命保険(団信)によって完済され、自宅をそのまま維持できると思っていたにもかかわらず、遺留分の支払いのために結果的に資金が必要となるケースも見られます。
その結果、自宅を手放すことになったり、金銭の負担をめぐって相続人同士の対立が深まったりといった問題に発展することもあります。
ケース④:事業承継が絡む場合
会社の経営を引き継ぐ後継者に株式や事業用資産を集中させるケースです。
中小企業では、会社の株式を分散して相続してしまうと、経営の意思決定が難しくなったり、経営権が不安定になったりするおそれがあります。そのため、事業を円滑に引き継ぐために、後継者に株式を集中させることが一般的に行われています。
また、会社の業績が赤字か黒字かのぎりぎりで運営されている場合でも、会社には資産や事業としての価値があり、その株式は相続財産として評価される点にも注意が必要です。
さらに、建設業などのように、会社の運営に土地や建物といった不動産が不可欠な業種では、これらの資産が事業そのものを支えているケースも少なくありません。
しかし、こうした対応は事業の継続という観点では合理的である一方で、他の相続人の遺留分を侵害することがあります。
その結果、遺留分請求によって、
後継者が他の相続人に対して金銭を支払う必要が生じ、事業資金の流出や経営への影響が出るリスクがあります。
場合によっては、事業に必要な不動産を維持することが難しくなるなど、経営そのものに支障が出る可能性もあります。
トラブル事例まとめ
これらの事例に共通しているのは、
「遺言の意図」と「遺留分の制度」がぶつかっている点です。
そして、こうしたトラブルの多くは、事前に遺留分を考慮した対策を取っていれば、回避できる可能性があります。
では、具体的にどのような対策をすればよいのでしょうか。
次の章では、遺留分トラブルを防ぐための具体的な方法について解説していきます。
⑥:遺留分トラブルを防ぐための対策

ここまで見てきたように、遺留分をめぐるトラブルは決して特別なものではなく、誰にでも起こり得る問題です。
しかし、その多くは事前の対策によって回避できる可能性があります。
ここでは、遺留分トラブルを防ぐために押さえておきたいポイントを解説します。
遺留分を踏まえた遺言内容にする
まず重要なのは、遺留分を無視した内容にしないことです。
遺言によって財産の分け方を自由に決めることはできますが、遺留分を侵害する内容にしてしまうと、相続開始後に請求を受ける可能性があります。
そのため、あらかじめ遺留分を踏まえた配分にしておくことで、後のトラブルを防ぎやすくなります。
もっとも、遺留分を厳密に満たすことが理想ではあるものの、実務上は、ある程度遺留分に配慮した配分になっていれば、相続人間の納得が得られ、必ずしも紛争に発展するとは限りません。
重要なのは、形式的に満たしているかどうかだけでなく、全体として納得感のある設計になっているかどうかです。
現金を確保しておく(生命保険の活用など)
遺留分は金銭で支払う必要があるため、現金を準備できるかどうかが非常に重要になります。
特に、不動産が中心の相続では、遺留分の支払いのために不動産の売却を余儀なくされるケースもあります。
そのため、生命保険などを活用して現金を確保しておくことで、相続発生後の資金負担を軽減することができます。
また、生命保険を活用する際には、誰を受取人にするかという点も重要なポイントになります。
一般的には、遺言によって多くの財産を取得する人を受取人に指定しておくことで、その人が遺留分の支払いに充てるための資金を確保でき、結果としてスムーズな解決につながるケースもあります。
ただし、生命保険の受取人の指定や保険金の扱いは、遺留分や相続全体のバランスにも影響するため、個別の事情に応じた検討が必要です。
生命保険と遺留分の関係を徹底解説!相続トラブルを防ぐための知識と対策
付言事項で理由や思いを伝える
遺言書には、法的効力のある内容とは別に「付言事項」として、自分の思いや理由を記載することができます。
たとえば、なぜ特定の人に多く財産を残したのか、どのような考えで分けたのかといった背景を伝えておくことで、相続人の納得感が高まり、トラブルの予防につながることがあります。
実際に、行政書士として関与した相続案件においても、付言事項の有無がその後の関係に大きく影響したケースがあります。
あるケースでは、長年同居し介護を担っていた相続人に多くの財産を残す内容の遺言が作成されていました。
このとき、単に配分だけが記載されていると不満が出やすい状況でしたが、遺言書には、
長年にわたり生活を支え、介護にも尽力してくれたことへの感謝の気持ちから、このような分け方としました。
という趣旨の付言事項が記載されていました。
その結果、他の相続人にも事情が伝わり、感情的な対立に発展することなく、比較的円満に手続きが進んだというケースがあります。
また、事業承継の場面でも、
会社の経営を安定して引き継ぐため、後継者に株式を集中させました。
といった理由が明記されていたことで、偏った配分であっても合理性が理解され、大きなトラブルに至らなかった事例もあります。
このように、付言事項は法的な効力こそありませんが、
相続人の感情面に働きかけることで、トラブルを防ぐ重要な役割を果たします。
生前贈与・資産配分を計画的に行う
生前贈与も遺留分の計算に影響するため、場当たり的に行うのではなく、全体のバランスを考えて計画的に行うことが重要です。
特に、特定の相続人に偏った贈与が続くと、相続開始後に「すでに多く受け取っているにもかかわらず、さらに遺言でも優遇されている」と受け取られ、遺留分トラブルの原因になることがあります。
生前贈与・遺言・保険などを含めて、トータルで設計する視点が重要です。
専門家に相談すべきケース
次のような場合は、遺留分を踏まえた設計が重要になるため、専門家への相談をおすすめします。
- 特定の相続人に多く財産を渡したい
- 不動産や自社株など評価が難しい財産がある
- 相続人の関係が複雑、またはトラブルの可能性がある
こうしたケースでは、遺留分を考慮した全体設計を行うことで、将来のトラブルを大きく減らすことができます。
遺留分トラブルを防ぐための対策まとめ
遺言は「書けば安心」ではなく、
遺留分を踏まえて設計することで初めて意味を持つものです。
遺言によって財産の分け方は自由に決められますが、その内容が遺留分を大きく侵害している場合、結果としてトラブルに発展してしまう可能性があります。
だからこそ重要なのは、形式だけでなく、
「遺留分とのバランスをどう取るか」という視点で内容を考えることです。
事前に適切な設計を行うことで、相続人の納得感を高め、無用な争いを防ぐことにつながります。
内容に不安がある場合は、早い段階で専門家に相談することも重要です。
遺言と遺留分はどちらが優先?|結論と具体例でわかりやすく解説
⑦:遺言と遺留分に関するよくある質問(FAQ)
Q:遺言があれば遺留分は無視できますか?
A:いいえ、無視することはできません。
遺言によって財産の分け方を自由に決めることはできますが、遺留分は法律で保障された最低限の取り分であるため、侵害されている場合には請求の対象になります。
Q:公正証書遺言なら遺留分トラブルは防げますか?
A:完全に防げるわけではありません。
公正証書遺言は形式的に有効である点で安心ですが、遺留分は遺言の形式とは別の問題です。そのため、公正証書遺言であっても、遺留分を侵害していれば請求される可能性があります。
Q:遺留分は自動的にもらえるのですか?
A:自動的にはもらえません。
遺留分は、侵害されている場合でも、自分から「遺留分侵害額請求」を行わなければ受け取ることはできません。
Q:遺留分の請求には期限がありますか?
A:はい、あります。
原則として「遺留分の侵害を知った日から1年以内」、または「相続開始から10年以内」に請求する必要があります。この期間を過ぎると、原則として請求できなくなります。
Q:兄弟姉妹にも遺留分はありますか?
A:いいえ、ありません。
遺留分が認められているのは、配偶者・子ども・直系尊属(親など)に限られます。兄弟姉妹には遺留分はないため、遺言によって取り分がゼロになることもあります。
Q:生命保険は遺留分の対象になりますか?
A:ケースによって異なります。
生命保険金は原則として受取人固有の財産とされますが、著しく不公平な場合には、遺留分の算定に含めて考慮されることがあります。
Q:遺留分を侵害しないようにするにはどうすればいいですか?
A:事前の設計が重要です。
遺留分を踏まえた遺言内容にすることに加え、生命保険の活用や付言事項の記載などを組み合わせることで、トラブルを防ぐことができます。
まとめ|遺言と遺留分で後悔しないために
遺言は、自分の意思で財産の分け方を決めることができる重要な手段です。
しかし、その内容が遺留分を大きく侵害している場合、相続開始後にトラブルへと発展してしまう可能性があります。
本記事で解説してきたとおり、
遺言は「自由に書ける」が、「遺留分によって一定の制限を受け、最終的に調整される」ものです。
だからこそ、単に遺言を書くのではなく、
遺留分を踏まえた“設計”として考えることが重要です。
また、
- 自分が遺留分を請求できる立場なのか
- 遺言の内容が遺留分を侵害していないか
- トラブルにならない分け方になっているか
といった点は、個別の事情によって大きく異なります。
そのため、
少しでも不安がある場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。
初期の段階で適切な判断をしておくことで、後の大きなトラブルを防ぐことにつながります。
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特定行政書士 野中雅敏(IT行政書士事務所)
- 国家資格:行政書士(登録番号:25080391)
- 経歴:IT業界出身/相続・遺言分野を専門取り組み中
- 趣味:競泳
- メッセージ:
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