【保存版】遺言書の「検認」とは?手続きの流れ・注意点・トラブル事例まで徹底解説

目次

はじめに|自筆証書遺言は書くだけで安心ではない

「もしもの時のために、家族に迷惑をかけないように遺言書を書いておこう」

近年、このように考えて自筆証書遺言を残す方が増えています。特に高齢化が進むなか、遺産相続をめぐるトラブルを未然に防ぎたいという想いから、法的な手続きとして遺言書を活用する動きはとても前向きなものです。

しかし、ここに意外な落とし穴があります。

それは──「書いただけでは終わらない」ということ。

自筆証書遺言には、「検認」という重要な手続きが必要です。
検認とは、遺言書を見つけた相続人などが、家庭裁判所に申し立てて正式に確認してもらう手続きのこと。法律的に有効な内容であっても、この検認を経なければ、基本的に相続手続きや遺産分割を進めることができません。

ところがこの「検認」については、

  • 「聞いたことがない」
  • 「具体的にどうすればいいかわからない」
  • 「やらなくても大丈夫だと思っていた」

という方が非常に多いのが実情です。

また、検認を怠ったり、誤った対応をしてしまうことで、

  • 家族間でもめる
  • 相続がスムーズに進まない
  • 場合によっては遺言書自体が無効とされる


といった深刻な問題につながることも少なくありません。

本記事の目的:家族を守る検認の知識をわかりやすく

この記事では、

  • 「検認って何?どうやってやるの?」という基本的な疑問から
  • 実際の流れ・必要書類・費用感
  • よくあるトラブル事例や、行政書士としての経験談
  • そして「遺された家族が困らない遺言の書き方」まで

現場でよくあるリアルな声や、よくある間違いを交えながら、やさしく丁寧に解説していきます。

自筆証書遺言を書こうと思っている方、またはすでに発見して対応に悩んでいるご家族の方にとって、
「検認とは何か」がしっかりと理解でき、安心して次の行動に進めるような記事になることを目指します。

そもそも「検認」とは何か?|手続きの基礎をやさしく解説

検認とは?なぜ必要なのか?

「検認」とは、家庭裁判所が遺言書の存在と内容を確認し、その形式的な有効性を確認する手続きのことを指します。

ここでのポイントは、「遺言の内容に沿って遺産を分けるかどうか」を判断する場ではなく、あくまで遺言書が本物かどうか、改ざんなどが行われていないかを形式的にチェックすることにあります。

たとえば、自筆証書遺言は手書きで作成されるため、次のようなリスクが伴います。

  • 書いた日付が不明瞭で、複数の遺言があるときにどれが有効かわからない
  • 一部を消して書き直しており、偽造や改ざんを疑われる
  • 遺言書を発見した相続人が勝手に開封して、内容を改変した可能性がある

こうしたリスクを避けるために、家庭裁判所が中立的な立場で確認し、検認済証明書を交付するのが検認です。この手続きを終えることで、ようやく相続登記や金融機関での手続きに進むことができます。

検認が必要なケース・不要なケース

以下は、遺言の種類ごとに「検認が必要かどうか」の一覧です。

遺言の種類検認の必要性
自筆証書遺言(自宅保管)必要
自筆証書遺言(法務局保管制度)不要
公正証書遺言不要
秘密証書遺言必要

つまり、自宅で保管されていた自筆証書遺言を発見した場合、たとえ中身が明確であっても、必ず検認が必要です。これを飛ばして手続きを進めてしまうと、法的に無効とされる恐れがあります。

検認と「遺言執行」の違いに注意

混同しやすいのが、「検認」と「遺言執行」という言葉です。どちらも遺言に関わる言葉ですが、役割が異なります。

用語目的担当機関・人物
検認遺言書の形式確認と保全家庭裁判所
遺言執行遺言の内容を実際に実行(相続登記や名義変更など)遺言執行者(または相続人)

つまり、「検認はスタートライン」、「執行は実行フェーズ」と覚えると良いでしょう。

検認を怠るとどうなる?

検認を行わずに遺言の内容に従って遺産分割をしてしまった場合、後から他の相続人から異議申し立てがあったり、遺産分割が無効とされるリスクがあります。

さらに、民法第1004条では「検認前に遺言書を開封した場合には5万円以下の過料」が科される可能性があると定められています。軽く見られがちな手続きですが、法律的には非常に重要なステップなのです。

第千四条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

(遺言書の検認)民法第千四条

検認を受けたからといって「遺言の内容が正しい」とは限らない?

実はこれもよくある誤解です。検認は「内容の正しさ」や「遺留分の侵害がないか」などを判断するものではありません。
そのため、検認を受けても、後に相続人間で争いが起きる可能性はゼロではありません。

逆にいえば、検認前でも、遺言の内容に疑義があれば検認後に「遺言無効確認の訴訟」などが提起されるケースもあります。

まとめ:検認は「通過点」であり「重要な一歩」

検認とは、「この遺言書は確かに存在し、一定の形式を満たしています」と裁判所が確認する公的な手続きです。
そして、この手続きを経ることで、次のステップ(遺言執行・相続登記など)へ進むための前提条件が整います。

検認の本質を正しく理解しておくことで、「なぜ必要なのか?」という疑問が解消され、スムーズに手続きを進められるようになります。

自筆証書遺言の検認手続き|家庭裁判所への申立ての流れ

自筆証書遺言を発見したとき、「どうすればいいのか分からない」と戸惑う方は少なくありません。

ここでは、実際にどのような流れで「検認」を進めるのか、申立てに必要な書類や費用、注意点を時系列でやさしく解説します。

遺言書を見つけたとき最初にすべきこと

まず大前提として、自筆証書遺言を発見しても、すぐに開封してはいけません。

民法第1004条第1項により、「遺言書を発見した者は、遅滞なくこれを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない」と定められています。

また、第3項では「封印のある遺言書を家庭裁判所で開封せずに開けた者には5万円以下の過料が科される可能性がある」とされています。

(過料)
第千五条 前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。

(過料)第千五条

開封するのは家庭裁判所の場で行うのが原則!


封がされている場合は特に注意が必要です。中には家庭裁判所で開封の立ち合いを行うこともあります。

検認の申立てができる人は?

検認を申し立てできるのは、主に次のような方です。

  • 相続人(法定相続人)
  • 受遺者(遺言で財産を受け取る人)
  • 遺言執行者(すでに指定されている場合)

特別な資格は必要ありませんが、申立て後の手続きや準備は専門的になることも多いため、行政書士や司法書士に相談するケースも増えています。

家庭裁判所への申立ての流れ

以下は、典型的な申立ての流れです。

【STEP1】必要書類を準備する

  • 遺言書(原本)
  • 申立書(家庭裁判所指定の書式)
  • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までの連続したもの)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続関係図
  • 収入印紙(申立書に貼付)・郵便切手
    ※申立て先の裁判所によって細かな違いがありますので、事前確認が重要です。

【STEP2】家庭裁判所に申立てを行う

申立ては、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。郵送・窓口どちらも可能です。

遺言書の検認の申立書は家庭裁判所のWebサイトよりダウンロード可能です。

【STEP3】検認期日の通知

裁判所が申立てを受理すると、検認期日の通知が届きます。
この期日は、相続人などの関係者が集まって、遺言書の開封・内容確認を行う場です。

【STEP4】検認の実施

検認当日、家庭裁判所にて遺言書の形式確認・開封・内容確認が行われます。
裁判官が遺言の形式や状態、内容を確認し、必要があれば相続人へ事実関係の確認も行われます。

【STEP5】検認済証明書の交付

検認が完了すると、「検認済証明書」が発行されます。
この証明書がないと、不動産登記や金融機関での相続手続きを進めることができません。

検認にかかる費用と期間

費用の目安

  • 収入印紙代:800円(裁判所により異なる場合あり)
  • 郵便切手代:数百円〜1,000円程度(裁判所によって異なる)
  • 戸籍謄本・書類取得費用:数千円程度

申立て自体の費用はそこまで高額ではありませんが、戸籍の収集に時間がかかることも多く、事前準備が重要です。

手続きにかかる期間

  • 書類がすべて整ってから申し立て → 検認まで:1〜2か月程度が一般的
  • 繁忙期や不備があると、さらに延びることもあります

注意点:検認手続きでは中身の有効性までは判断されない

繰り返しになりますが、検認はあくまで形式的な確認作業です。

つまり、

  • 「遺言に書かれた内容が妥当か」
  • 「遺留分侵害がないか」
  • 「精神的に問題ない状況で書かれたか(遺言能力)」

といった点は、検認では判断されません。

これらが争点となる場合は、別途「遺言無効確認の訴訟」などが必要になるケースもあります。

検認申立てのサポートは誰に頼める?

  • 行政書士: 戸籍収集、書類作成などに強い
  • 司法書士: 登記手続きなどとセットで依頼できる
  • 弁護士: 相続人間のトラブルが見込まれる場合に相談

状況に応じて、誰に頼むべきかを考えることも大切です。
「とりあえず書類だけでも…」という方には、行政書士のサポートが適しています。

まとめ:検認は最初の大きな一歩。でも準備すれば難しくない

検認手続きは、一見ハードルが高そうに思えますが、実際の流れは「必要書類をそろえて、裁判所に申立てる」ことが基本です。

早めに必要な書類を把握し、わからない部分は専門家にサポートを求めることで、スムーズかつトラブルなく検認を完了させることができます。

検認に関するよくあるトラブルと注意点

検認は形式的な手続きとはいえ、誤った対応をしてしまうと相続人同士の争いや、相続全体のやり直しにつながるケースもあります。

ここでは、実際に起きやすいトラブル事例と、行政書士として現場で感じる注意点を具体的にご紹介します。

家族が遺言の存在を知らずに遺産を分けてしまった

あるご家庭では、父親の死後すぐに長男が主導して遺産分割を進め、他の兄弟と遺産分割協議をまとめてしまいました。

しかし、相続手続きがほぼ完了した段階で、押し入れから自筆証書遺言が見つかり、検認の必要性が判明。

この遺言には、「次男に自宅を相続させる」と明記されていたため、すでに登記変更された名義を再度やり直す必要が発生しました。しかも相続税申告も済んでいたため、税務上の修正申告や罰則リスクも生じました。

ポイント
検認前の手続きは慎重に。遺言が出てくる可能性が少しでもあるなら、すぐに処理を進めないことが重要です。

勝手に遺言書を開封してしまい、疑念を招いた事例

別のケースでは、遺言書を発見した長女が「中身を確認しようと思ってつい開封してしまった」といいます。
しかし他の兄弟たちからは「改ざんしたのではないか?」「封印が破られているのはおかしい」と疑念が生じ、家庭裁判所での検認時にも険悪な空気に。

このように、封印された遺言書を勝手に開ける行為は、たとえ悪意がなくても大きなトラブルを引き起こします。

民法でも禁止されており、過料の対象にもなります。

ポイント
遺言書を見つけたら「すぐに開けずに、専門家に相談」するのが鉄則。

検認後に無効とされた遺言書のパターン

検認を終えたとしても、その後の相続手続きでトラブルになることがあります。
以下のようなケースは、検認後でも「無効」とされる可能性があります。

  • 遺言書の日付が空欄、もしくは明らかに不自然(例:未来の日付)
  • 署名が戸籍の名前と一致していない
  • 第三者が代筆していた
  • 遺言者の認知症が進行していた時期と一致していた

実際に、家庭裁判所が検認を終えたにも関わらず、他の相続人が「遺言能力に疑義がある」として無効確認の訴訟を起こし、遺言の効力が否定されたケースもあります。

ポイント
検認=完全な保証ではない。作成時点の状況や内容の妥当性も重要です。

行政書士として経験したリアルなケース

ケース①:「遺言はあったのに、誰にも伝わっていなかった」

80代の男性が、生前にしっかりと自筆証書遺言を作成していました。しかし、その存在を家族に伝えておらず、亡くなった後、遺品整理の段階まで誰も気づきませんでした。

その間に、相続人たちは遺産分割協議を進めてしまい、協議書に基づいて不動産の名義変更まで完了。

ところが遺言書には、ある不動産を特定の孫に相続させると明記されており、最終的には協議が無効とされ、相続手続きを全てやり直すことに。

このケースでは、相続人同士の関係にも亀裂が入り、感情的な対立が数年にわたって続きました。

ケース②:「検認の必要性を知らず、信託会社に相談してトラブルに」

ある高齢女性の子どもが、母親の遺言書(自筆)を持って信託銀行に相談に行きました。
しかし検認を経ていなかったため、銀行からは「検認済証明書がない限り手続きは進められない」と断られ、手続きを長期間保留にすることになりました。

結局、当初のスケジュールよりも3か月以上遅れてようやく手続きが開始されました。

このように、金融機関や不動産登記などでは「検認済証明書」がないと受け付けてもらえないケースが多く、検認の有無がタイムロスとストレスの原因になることも少なくありません。

ケース③:「亡くなる直前に書かれた遺言書が親族間トラブルの火種に」

がんの闘病中に書かれたという自筆証書遺言が、死亡後に発見されました。遺言書には、特定の長女に多くの財産を譲る内容が書かれていたものの、他の兄弟は「母がそんな判断できる状態ではなかったはず」と納得できず、検認後に遺言無効の訴訟へと発展。

結果的に、遺言能力があったかどうかを巡って医療記録や診断書が争点となり、1年以上にわたる法廷闘争に突入。
遺言を書くタイミングや、精神状態が重要であることを痛感した事例です。

ケース④:「保管場所が分からず、結局なかったことにされかけた」

ある高齢男性が遺言書を書いたことを口頭で家族に伝えていたものの、「どこに保管してあるか」を明示しないまま亡くなりました。

家族が遺品を全て整理しても見つからず、数か月後に古いスーツの内ポケットから発見されるという偶然で発覚。

すでに相続人たちは遺産分割を済ませていたため、発見された遺言書の内容(長女への特定財産の集中配分)に強く反発する声が上がり、最終的に家庭裁判所での調停へ。

保管場所や伝え方の不備は、せっかくの遺言の効力を争いの元に変えてしまう可能性があります。

ケース⑤:「他の遺言があとから出てきた二重遺言問題」

検認も済ませて、遺言通りの相続手続きを進めていたご家族。
ところが不動産の名義変更の直前になって、別の相続人が「こちらが新しい遺言書だ」と別の自筆証書遺言を提出。

最初に検認された遺言書よりも日付が新しく、内容も異なることから、再度の検認申立てが必要に。
相続人同士の主張が食い違い、すべての手続きが一時停止。

複数の遺言が存在する場合は、「日付が新しいもの」が優先されますが、最初の検認だけで安心しきるのは危険です。

まとめ:トラブルは「知らなかった」「先走った」が原因に

検認に関するトラブルの多くは、「手続きを知らなかった」「必要性を軽視していた」「焦って動いてしまった」ことが引き金です。
特に、自筆証書遺言の場合は個人が作成・保管していることが多く、発見のタイミングや取り扱い方次第で、家族に大きな負担をかけることになります。

検認を正しく理解し、落ち着いて対応することこそが、家族の信頼関係を守る第一歩です。

自筆証書遺言を作る前に知っておくべきこと

自筆証書遺言は、紙とペンさえあれば手軽に作成できるため、多くの方が「これなら自分でもできそう」と思うかもしれません。

しかし、書き方や保管方法を誤ると、残された家族が検認手続きで苦労したり、最悪の場合は無効と判断されてしまうリスクもあります。

このセクションでは、実務上よくある「作成前に知っておいてほしい3つの重要ポイント」を整理します。

遺された家族が困らないためのポイント

自筆証書遺言で最も多いトラブルは、「本人の意図は明確だったのに、形式の不備で無効になってしまった」というものです。
その多くは、本人の気遣いが家族に正しく届かなかったケースでもあります。

以下の点に注意することで、残された家族が手続きで困る可能性を大きく下げることができます。

ポイント①:日付・署名・押印を忘れずに

民法では、「全文自書」「日付の記載」「署名・押印」が有効要件です。

特に多いミスが「日付の記載漏れ」や「○月吉日のような不明確な日付」です。これは無効の判断がされやすいポイントなので、注意が必要です。

ポイント②:遺言書の保管場所を明確に

せっかく書いても、家族がその存在を知らなければ意味がありません。

可能であれば、信頼できる家族に「遺言を書いた」「この場所にある」と伝えておきましょう。
または、後述する「法務局の保管制度」を利用するのも一つの方法です。

ポイント③:添付資料やメモも検討する

遺言書は法的な文章ですが、それとは別に「家族へのメッセージ」や「資産のリスト」「意図の説明メモ」などを添えておくと、遺族が判断しやすく、心情的にも納得を得やすいです。

「法務局の保管制度」を活用するという選択肢

2020年7月からスタートした「自筆証書遺言書保管制度」をご存じでしょうか?

これは、法務局(遺言者の住所地や本籍地を管轄する)にて、自筆証書遺言を保管してもらえる制度で、一定の形式で書かれた遺言書を提出すると、検認が不要になります。

【制度の主な特徴】

項目内容
検認不要(法務局で保管されていれば)
保管料3,900円(2025年現在)
対象遺言者本人が直接申請
提出方法書面・予約制で法務局窓口へ持参
保管期間遺言者の死亡まで

【利用のメリット】

  • 相続人が検認せずにすぐに相続手続きに入れる
  • 紛失・改ざん・隠ぺいのリスクが極めて低い
  • 家族が遺言の存在をすぐに把握できる

実務上も、「自宅保管より圧倒的に安心」と感じるご相談が増えています。
公証役場より手軽で、検認も不要という意味で、自筆の手軽さ+公的な安心の良いとこ取りともいえます。

公正証書遺言との違いとは?

自筆証書遺言との比較でよく出てくるのが「公正証書遺言」です。
これは、公証人が内容を確認しながら作成する遺言書で、以下のような特徴があります。

【公正証書遺言の特徴】

比較項目自筆証書遺言公正証書遺言
作成方法自分で全文を書く公証人が作成
検認必要(自宅保管)不要
保管自宅・法務局(任意)公証役場で保管
費用原則無料(法務局保管は3,900円)数万円~数十万円(財産額による)
証人不要2名必要

公正証書遺言は費用こそかかりますが、法的な安全性と確実性が高く、相続トラブルを未然に防ぎたい方には非常に有効な手段です。

どちらを選ぶべきか?行政書士の視点から

どちらの方式が良いかは、「何を優先したいか」によって変わります。

  • 費用を抑えたい・気軽に始めたい → 自筆証書遺言(+法務局保管)
  • 確実に相続争いを避けたい・複雑な財産がある → 公正証書遺言

いずれの場合も、誰に・何を・どのように残すのかという設計が一番大切です。

形式だけでなく、「家族への想いがしっかり伝わるか?」という視点を持っていただけると、遺言書はより意味のあるものになります。

まとめ:遺言は「書くこと」よりも「伝わること」が大事

遺言書は、家族への最期のメッセージであり、思いやりのかたちです。

でも、それが法的に認められなかったり、内容が誤解されてしまえば、かえって争いの火種になってしまうこともあります。

  • 正しい形式で書く
  • 保管場所を考える
  • 必要に応じて制度を活用する
  • そして、必要なら専門家に相談する

これらを意識することで、自筆証書遺言は家族を守る確かな手段として機能します。

よくある質問(Q&A)

ここでは、遺言書の「検認」に関して実際によく寄せられる質問をまとめました。
読者の不安や疑問をそのまま取り上げることで、記事全体の信頼性と実用性がさらに高まります。

Q1:検認にはどのくらい時間がかかりますか?

検認にかかる期間は、申し立てから完了までおおよそ1〜2か月程度が一般的です。
ただし、以下のような事情で遅れることもあります。

  • 必要書類(特に戸籍)が揃っていない
  • 相続人の所在や連絡がつかない
  • 裁判所の繁忙期(3月~5月など)

書類に不備がなければ比較的スムーズに進みますが、「早めの準備」が何より大切です。

Q2:検認を受けないとどうなりますか?

自筆証書遺言(自宅保管)を検認せずに使って相続手続きを進めると、その行為自体が無効になる可能性があります。

たとえば、

  • 金融機関での名義変更が受け付けられない
  • 不動産の登記ができない
  • 他の相続人から異議を出される

といった問題が起こります。

また、民法第1004条により、封印された遺言書を勝手に開封した場合は、5万円以下の過料(罰金)が科される可能性もあります。

検認は法的義務であり、「省略できるものではない」と理解しておきましょう。

Q3:複数の遺言書が見つかった場合はどうすればいい?

複数の遺言書が見つかった場合、もっとも日付が新しい遺言書が優先されます。

ただし、すべての遺言書を裁判所に提出し、検認の対象とすることが原則です。また、新旧の遺言で内容が大きく異なる場合は、他の相続人が無効を主張して紛争に発展するケースもあります。

新しい遺言書を見つけた際は、すでに検認を終えていても再度申立てが必要になる可能性がある点に注意してください。

Q4:検認は誰が申し立てる必要がありますか?

検認は、原則として遺言書を発見した人、もしくは相続人が申し立てる必要があります。

具体的には以下の方が対象になります。

  • 遺言書を発見した相続人
  • 遺言で利益を受ける人(受遺者)
  • 遺言執行者(すでに指定されている場合)

家庭裁判所は「誰が申し立てるべきか」を細かく指定していませんが、発見者が動かないと何も始まりません。

実務的には、申立てをリードする相続人が1人いて、他の相続人と連絡を取り合う形が多いです。

Q5:弁護士・行政書士・司法書士…誰に相談すべき?

専門家の選び方は、状況や目的によって異なります。

以下に主な違いを整理しました。

専門家得意なこと向いているケース
行政書士遺言書作成・戸籍収集・書類作成検認不要な公正証書遺言を作成したい、手続きの簡素化を図りたい
司法書士登記関連の手続き(不動産名義変更など)検認申立ての代行や、相続登記も一緒に進めたい場合
弁護士法律相談・相続トラブル対応・訴訟代理相続争いや遺言の有効性が争点になりそうな場合

単純な手続き支援であれば行政書士、トラブル含みであれば弁護士、登記・法務局への申請であれば司法書士への相談が適切です。

Q6:法務局の保管制度を使えば検認は不要なのですか?

はい、法務局で保管された自筆証書遺言は検認が不要です。

2020年から始まったこの制度を利用すれば、家庭裁判所を経ずに遺言内容の執行に進むことができます。

ただし、指定されたフォーマットに沿って作成し、遺言者本人が法務局に持参して申請する必要があります。
保管費用も比較的安価(3,900円)で、制度としての利便性・信頼性も高いです。

まとめ:小さな疑問がトラブルの火種になる前に

検認に関しては、調べる前は「面倒そう」「よく分からない」と思われがちですが、実は多くの人が同じような疑問や不安を抱えています。

  • 正確な情報を得る
  • 専門家に早めに相談する
  • 自分たちの状況に合った選択をする

こうした一つひとつの積み重ねが、家族の平和な相続を守るカギになります。
気になることがあれば、遠慮せず専門家に確認しましょう!

行政書士が教える|検認で損しないための3つのアドバイス

行政書士として日々多くの相続相談を受ける中で、
「もっと早く知っていれば…」
「こうしておけば手間もトラブルも避けられたのに…」
という声にたびたび出会います。

このセクションでは、現場での実体験にもとづいて、自筆証書遺言と検認に関して絶対に押さえておきたい3つの実践的アドバイスをお届けします。

アドバイス①:早めに専門家に相談することの大切さ

「検認って自分でできるんですよね?」

はい、それは事実です。ただし…

  • 書類の不備で何度も差し戻される
  • 提出すべき戸籍が一部足りない
  • 相続人に連絡が取れず、スムーズに進まない

といったケースが多発しています。

特に自筆証書遺言の検認では、戸籍謄本の収集(出生から死亡まで)が非常に大変です。
本籍地が移動していたり、除籍・改製原戸籍が必要になる場合もあり、1人で取り組むには限界があることも。

行政書士に依頼することで、

  • 戸籍収集の代行
  • 申立書の作成支援
  • 必要書類リストの整理
  • 手続き全体の進行サポート

が可能となり、「初めての手続き」でも安心して進めることができます。

特に高齢のご家族や、相続人が遠方に住んでいるケースでは、早めの相談が後々の安心につながります。

アドバイス②:書き方・保管・伝え方を一貫して設計する

自筆証書遺言を作成する際、多くの方が「書くこと」だけに意識が向きがちです。
でも本当に重要なのは、「家族が遺言書を見つけて、正しく使えるようにすること」。

そのためには、「①書き方」「②保管方法」「③誰に知らせるか」の3つをセットで考えることが必要です。

書き方のポイント

  • 全文手書き(代筆NG)
  • 明確な日付(○年○月○日)
  • 押印と署名(実印が望ましい)

保管のポイント

  • 湿気や火災に強い場所(耐火金庫・封筒)
  • 家族に伝える or 法務局に保管を依頼する

伝え方のポイント

  • どこにあるかを信頼できる家族に伝える
  • 遺言の存在を知らせるメモを残す
  • 重要な部分について家族と事前に共有しておく

書いただけでは不完全。「使える状態」で残すことが、本当の意味での準備です。

アドバイス③:「遺言書」だけでなく「家族への手紙」も残す配慮

これは法的には必要のないことですが、実際の現場では非常に効果的です。

というのも、遺言書の内容が正しくても、「なぜこうしたのか」が伝わらないと、残された家族が感情的に納得できず、トラブルの火種になることがあります。

たとえば──
「長男にはすでに生前贈与をしていたため、遺産は他の子に多めに渡す」
「介護してくれた娘に感謝を込めて不動産を託した」
といった想いが、文章として補足されているだけで、家族の受け取り方は全く変わります。

この「手紙」は、法的拘束力があるわけではありませんが、

  • 家族の誤解を防ぎ
  • 感情的な納得を生み
  • 相続トラブルの未然防止につながる

という点で、非常に効果的なツールです。

法と心の両面を整えることが、争族を防ぐ最大の武器です。

まとめ:検認で「損しない」人は、備えている人

検認という手続きは、一度きりの相続のなかで大きなポイントになります。
だからこそ、失敗や後悔を減らすためには、準備と情報収集が何より大切です。

  • 専門家に早めに相談する
  • 遺言を「書く・残す・伝える」の3点を意識する
  • 想いを補足するメッセージも忘れない

この3つを押さえておけば、自筆証書遺言は「面倒な手続き」ではなく、家族を守る大切な意思表示になります。

まとめ|検認を知れば、自筆証書遺言はもっと安心できる

「自筆証書遺言」は手軽に作成できる分、書いた本人も、残された家族も、検認という手続きを軽視してしまいがちです。

しかし、その一手間を怠ったばかりに、思いがけないトラブルや手続きの遅延、そして家族間の不信につながるケースを私たちはたくさん見てきました。

自筆証書遺言は、正しく扱えばとても有効な手段

検認というプロセスを知っていれば、自筆証書遺言も立派な法的手段として活用できます。

  • 書いた本人には「家族の負担を減らす」という安心感が
  • 見つけた家族には「正しい手順を踏める」という行動指針が
  • そして結果的に、トラブルなく“故人の意思を尊重した相続”へつながります

検認を「めんどう」「難しそう」と感じる方は多いですが、実際は書類の準備と段取りがわかれば、決して高いハードルではありません。

必要なら行政書士や専門家に相談すれば、スムーズな対応が可能です。

遺言を書く人・発見した人、どちらにも冷静な行動が大切

  • 書く人には、「誰に何を伝えたいか」をしっかり考えてもらうこと
  • 発見した人には、「勝手に開けず、まず検認へ進むこと」を知ってもらうこと

相続の場面は、感情的になりやすく、焦って行動しがちです。
だからこそ、“知っておく”という事前の備えが、家族関係を守る大きな力になります。

家族のトラブルを防ぐには、正しい知識と準備がすべて

  • 検認の流れ
  • トラブル事例
  • 作成時の注意点
  • 制度の選び方(法務局の保管、公正証書遺言との比較)
  • 専門家に頼るメリット

これらを知っておくだけでも、相続の場面は大きく変わります。
実際、「早めに準備しておいて本当によかった」とおっしゃるご家族も少なくありません。

不安なときは専門家へ。私たち行政書士にできること

もしあなたが今、

  • 「検認って必要なの?」
  • 「この遺言書で問題ないの?」
  • 「相続人が複雑で不安…」

と感じているなら、一人で悩まずにご相談ください。

行政書士は、検認の申立て準備や戸籍収集、相続関係図の作成、書類チェックなどを通じて、あなたとご家族の安心を全力でサポートします。

相続は一生に何度もあるものではありません。だからこそ、初めてでも、失敗しないように。
「想いをきちんとつなぐために、法的な手続きを丁寧に。」
そのお手伝いができれば幸いです。