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遺言書の検認の目的
遺言書の検認とは、家庭裁判所が遺言書の形式や内容を確認し、改ざんや偽造を防ぐための手続きです。検認が行われることで、遺言書が信頼性を持つ形で相続手続きに活用されます。
法的効力と検認の関係
検認は、遺言書そのものに法的効力を与えるものではありません。しかし、検認を経ていない遺言書は相続手続きに使用できないため、重要なプロセスとなります。
検認が必要なケース
自筆証書遺言 | 検認が必要(法務局保管を除く) |
公正証書遺言 | 検認の手続きは不要 |
秘密証書遺言 | 検認が必要 |
第千四条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。
遺言書検認の手続きの流れ
1. 検認の申立て
家庭裁判所に検認を申立てる必要があります。申立人は、相続人や遺言執行者が行うのが一般的です。
必要書類
以下の書類の提出が必要です。
- 申立書
- 遺言書(開封していないもの)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
遺言書の検認の申立書は家庭裁判所のWebサイトよりダウンロード可能です。
このほか、遺言者と相続人の関係によって必要な書類が異なります。
提出先
遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。
2. 検認期日の通知
裁判所が検認期日を決定し、相続人全員宛に郵便で通知を送ります。期日は相続人の都合を考慮して決められることが多いです。
3. 検認期日における審査
相続人が裁判所に集まり、遺言書が開封されます。その場で遺言書の状態や内容が確認され、裁判所が検認済証明書を発行します。
4. 検認後の手続き
遺言の執行に必要な「検認済証明書」の申請を行います。この証明書がないと、遺産の名義変更や銀行での手続きができない場合があります。
検認手続きで注意すべきポイント
1. 遺言書を勝手に開封しない
遺言書を検認前に開封すると、法律で罰せられる可能性があります(罰金または拘留)。必ず未開封のまま家庭裁判所に提出しましょう。
(過料)
第千五条 前条の規定により遺言書を提出することを怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所外においてその開封をした者は、五万円以下の過料に処する。
2. 全相続人への通知が必要
検認期日には、すべての相続人が出席する必要はありませんが、通知を行うことが必須です。通知漏れがあると、手続きが無効になる場合があります。
3. 遺言執行者の有無
遺言執行者が指定されている場合、その役割に基づいて検認後の手続きを進めることが求められます。遺言執行者は遺言書内で指定される、または、利害関係人の請求によって家庭裁判所が選任することができます
(遺言執行者の指定)
第千六条 遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
2 遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
3 遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。
(遺言執行者の選任)
第千十条 遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。
遺言書検認に関するよくある質問
Q1. 公正証書遺言でも検認は必要ですか?
A. 公正証書遺言は公証人によって作成されているため、検認は不要です。ただし、相続手続きでは公正証書遺言の写しが必要になる場合があります。
Q2. 検認にはどのくらいの費用がかかりますか?
A. 検認手続きにかかる費用は、遺言書の枚数に応じて数百円の収入印紙や数百円程度の郵送費などです。また、戸籍謄本や住民票の取得費用も考慮する必要があります。
Q3. 検認の期間はどれくらいですか?
A. 検認手続き自体は、申立てから1~2か月程度で完了することが一般的です。ただし、相続人間のトラブルが発生すると、さらに時間がかかる可能性があります。
Q4. 検認に欠席した場合はどうなりますか?
A.検認期日に相続人が欠席しても、法的な義務違反にはなりません。欠席した場合でも、検認は行われ、後日、検認の結果が通知されます。ただし、申立人は欠席することができません
まとめ:遺言書の検認は早めに対応を
遺言書の検認は、相続手続きをスムーズに進めるための重要なプロセスです。自筆証書遺言や秘密証書遺言を作成した場合は、家庭裁判所での検認を忘れずに行いましょう。
相続手続きの円滑化を図るため、遺言執行者や専門家の助けを借りるのも一つの方法です。遺言書の検認手続きに関する疑問や不安があれば、司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
この記事が、遺言書の検認についての理解を深め、相続手続きの第一歩を踏み出す手助けとなれば幸いです。