目次
1. はじめに
親の資産を引き継ぐときに最も頭を悩ませるのが、相続税の問題です。
特に高齢の親を持つ方にとっては、相続税の負担がどれくらいになるのか、どうやって納税資金を準備するかが大きな不安要素となります。加えて、相続を円滑に進めるためには、単に「財産を渡す」だけではなく、どのように引き継ぐかも重要なポイントです。
その中で注目されているのが、一時払い終身保険を活用した相続対策です。
「一時払い終身保険なんて、よく聞くけれど本当に効果があるの?」と思う方も多いのではないでしょうか。実際、保険を使った相続対策には、非課税枠を活用できるといった大きなメリットがあります。
本記事では、一時払い終身保険が相続対策としてどれほど有効かについて、具体的に解説します。
また、よくある疑問や注意点についても触れ、実際の事例を紹介することで、読者がこの方法をどのように実行できるのかをわかりやすくお伝えしていきます。
親の資産をどう引き継ぐか、相続税が不安、納税資金が足りるかどうか心配な方に向けて、一時払い終身保険の活用法を知っていただき、最適な相続対策を考える手助けとなれば幸いです。
2. 一時払い終身保険とは?基本の解説
相続対策として注目されている「一時払い終身保険」ですが、その仕組みや特徴をしっかりと理解しておくことが、正しく活用するための第一歩です。
ここでは、一時払い終身保険とは何か、どのような特徴があり、なぜ相続対策に適しているのかを丁寧に解説していきます。
一時払い終身保険とは?
一時払い終身保険とは、保険料を契約時に一括で支払う終身保険のことです。
通常の生命保険では、毎月(あるいは毎年)保険料を支払い続ける形が一般的ですが、この一時払い終身保険は一度の支払いで一生涯の保障が得られるというのが最大の特徴です。
例えば、契約時に1,000万円を支払えば、それに応じた死亡保険金が保証され、契約者が亡くなるまで保障が継続されます。医療保険などのように「途中で切れる」ことがなく、一生涯、死亡保障が続くのです。
「一時払い」だからこそできる、シンプルで安心な相続対策
この保険の大きなメリットは、仕組みが非常にシンプルで管理しやすいという点にあります。
- 保険料の支払いは最初の一度だけ
- 以降の手続きや支払いが不要
- 契約者が亡くなった時点で、指定された受取人に保険金が支払われる
このような特性から、高齢の方や金融商品に詳しくない方でも使いやすく、相続対策として選ばれるケースが増えています。
終身保険の基本的な仕組み
「終身保険」とは、被保険者(契約で保障される人)が亡くなった時に死亡保険金が支払われる保険のことです。
保障期間は「一生涯」で、契約者が何歳まで生きても、いつ亡くなっても、必ず保険金が支払われるというのが最大の安心材料です。
また、死亡保険金は現金で遺族に支払われるため、相続税の納税資金としても非常に有効です。
相続対策として注目される理由
一時払い終身保険が相続対策として注目される最大の理由は、「死亡保険金には非課税枠がある」という税制上の優遇措置にあります。
相続税法では、死亡保険金について以下のような非課税枠が設定されています。
「500万円 × 法定相続人の数」
たとえば、法定相続人が3人いる場合は、1,500万円までの死亡保険金が非課税になります。
これにより、同じ金額の現金をそのまま相続するよりも、一時払い終身保険を活用して保険金として受け取ったほうが、相続税の課税対象となる金額を減らすことができるのです。
相続人にとってのメリット
- 手続きがスムーズ(死亡保険金は遺産分割協議を待たずに支払われる)
- 納税資金として即時活用可能
- 相続人間のトラブル回避(受取人が指定されているため、他の相続人と揉めづらい)
- 資産の分配がしやすい(現金として支払われるため、物納や不動産の分割と違って平等感がある)
こんな人に向いている
- まとまった資金(余裕資金)があり、相続対策を検討している人
- 親の資産をスムーズに引き継ぎたいと考えている人
- 将来、相続税の負担が懸念される家庭
- 家族間の相続トラブルを避けたい人
一時払い終身保険に関して小まとめ
一時払い終身保険は、「非課税枠の活用」「資産のスムーズな移転」「納税資金の確保」といった点で、相続対策に非常に効果的です。
ただし、これらの効果を得るためには、契約形態やタイミングなど、いくつか注意すべきポイントがあります。
次のセクションでは、相続対策として一時払い終身保険を使う際の具体的なメリットをさらに詳しく解説していきます。
3. 一時払い終身保険を使う相続対策のメリット
一時払い終身保険が相続対策として非常に有効だと言われるのには、いくつかの明確な理由があります。
このセクションでは、相続対策における具体的なメリットを「税制」「実務」「心理面」の3つの視点から詳しく解説していきます。
① 税制面のメリット:非課税枠の活用
一番の魅力は、「500万円 × 法定相続人の数」までの死亡保険金が非課税になるという、税制上の優遇措置です。
例えば、以下のようなケースを考えてみましょう。
法定相続人の人数 | 非課税枠の上限額 |
---|---|
1人 | 500万円 |
2人 | 1,000万円 |
3人 | 1,500万円 |
4人 | 2,000万円 |
仮に法定相続人が3人いて、1,500万円の死亡保険金をそれぞれ500万円ずつ受け取る場合、この金額は相続税の課税対象外になります。
一方、現金や預貯金をそのまま相続した場合、このような非課税枠はありません。つまり、同じ金額を渡すにしても、保険を通した方が相続税が節約できるのです。
② 実務面のメリット:手続きがスムーズ
一時払い終身保険の大きな利点として、保険金は遺産分割協議を経ずに受け取れる点が挙げられます。
一般的に、現金や不動産などの財産は、相続人全員で遺産分割協議をしてからでないと分配できません。ですが、生命保険は「受取人固有の財産」とみなされるため、他の相続人と話し合う必要がなく、すぐに受け取ることが可能です。
これは特に、急ぎで納税資金や葬儀費用が必要なときに非常に助かります。
③ 心理面のメリット:家族間のトラブル回避
相続において最も多いトラブルの1つが、「誰がどれだけもらうか」をめぐる争いです。
特に現金や不動産の分割となると、話が長引き、家族関係にヒビが入ってしまうことも少なくありません。
その点、一時払い終身保険は、「受取人」をあらかじめ指定しておけるため、トラブルの芽を事前に摘むことができます。
受取人を複数人に設定しておけば、それぞれが保険会社から直接、等分された保険金を受け取れるので、「誰が得をした・損をした」といった不満も起きにくくなります。
④ 納税資金の確保:相続税の支払いを円滑に
相続税は、原則として相続開始から10か月以内に現金で一括納付する必要があります。
しかし、不動産や非流動性資産(換金しにくい資産)を多く持っている家庭では、いざというときに納税資金が足りず、売却や借入を強いられるケースもあります。
一時払い終身保険を活用すれば、受け取った保険金をそのまま納税資金に充てることができるため、資産を処分せずに済むという安心感があります。
⑤ 分割のしやすさ:現金資産として扱える
不動産や株式と違って、死亡保険金は「分けやすい資産」です。
現金で支払われるため、兄弟姉妹間での分配も容易。実際に、「遺産のうち保険金だけはトラブルなくスムーズに分けられた」というケースは非常に多いです。
これにより、「一部は不動産、一部は現金」といったバランスの取れた相続設計が可能になります。
⑥ 資産の圧縮効果:評価額を抑えられる
実は、一時払い終身保険は相続財産として評価額を圧縮できる効果もあります。
通常、相続財産としての現金は「額面通りの100%」で評価されますが、一時払い終身保険にすることで、保険契約時の条件や利率に応じて評価額が下がるケースがあるのです。
例えば、契約時に1,000万円を支払ったとしても、解約返戻金が800万円であれば、相続時の財産評価額は800万円となります。
このように、実際に持っている資産価値よりも評価額が下がるため、相続税の課税対象を減らすことができます。
一時払い終身保険を使う相続対策のメリットに関して小まとめ
一時払い終身保険を使った相続対策には、以下のような明確なメリットがあります。
観点 | メリット内容 |
---|---|
税制面 | 非課税枠の活用、評価額の圧縮 |
実務面 | 手続きが簡単、納税資金確保 |
心理面 | トラブル回避、分配のしやすさ |
これらのメリットを踏まえると、親の資産をどう引き継ぐかに悩むご家庭にとって非常に有力な選択肢となります。
ただし、メリットばかりに目を向けるのではなく、次のセクションでは、実際に活用する際に注意すべき契約形態やタイミングについて、詳しく見ていきましょう。
4. 注意すべきポイント:契約形態やタイミング
一時払い終身保険は、相続対策として非常に有効な手段である一方、「契約の仕方」や「加入のタイミング」を間違えると、かえって不利になるケースもあるのです。
ここでは、実際に活用する際に注意すべき主要なポイントを詳しく解説します。
① 契約形態の基本パターンを理解しよう
まずは、生命保険の契約には以下の3つの登場人物がいることを理解しましょう:
役割 | 内容 |
---|---|
契約者 | 保険料を支払う人 |
被保険者 | 保険の対象となる人(亡くなると保険金が支払われる) |
受取人 | 死亡保険金を受け取る人 |
これらの組み合わせによって、保険金が「相続財産」となるか、「一時所得」や「贈与」となるかが大きく異なります。
一般的で望ましい契約形態(相続対策として有効)
- 契約者:親
- 被保険者:親
- 受取人:子(法定相続人)
この形であれば、死亡保険金は相続財産とみなされ、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠を適用することができます。
避けるべき契約形態(贈与税がかかる可能性)
- 契約者:子
- 被保険者:親
- 受取人:子
このパターンだと、保険料を子が支払い、保険金も自分が受け取るため、保険金は一時所得扱いになります。
ただし、保険料の出所が親である場合は「贈与」と見なされ、贈与税の課税対象になることもあるため注意が必要です。
② 契約のタイミングが非常に重要
保険会社によっては、契約できる年齢の上限が80歳〜85歳前後に設定されています。
さらに、加入時には健康状態の告知が求められ、病歴や持病によっては契約を断られるケースもあります。
よくある落とし穴
- 「親が入院してから相続の準備を始めたが、保険に入れなかった」
- 「高齢で健康診断の結果が悪く、加入を断られた」
こうした事態を防ぐためにも、親がまだ元気なうちに対策を始めることが重要です。
また、なるべく早く加入した方が保険料(初期一時払い金額)も割安になる傾向があります。
③ 誰を受取人にするか?家族構成に応じた検討が必要
受取人の設定には慎重を期す必要があります。
たとえば、子どもが複数いる場合、一部の子どもだけを受取人にすると他の相続人から不満が出ることも。
対応策
- 子ども全員を均等に受取人に指定する
- 保険契約を複数に分けて、それぞれに対応させる
- 遺言とセットで保険を活用する
「保険は遺産ではないから自由に受取人を決められる」という認識もありますが、家族の関係性や将来的なトラブルを防ぐ観点からは、公平性を重視することが大切です。
④ 保険商品選びも慎重に
一時払い終身保険と一口に言っても、保険会社ごとに商品設計が異なります。
チェックすべきポイント
- 死亡保険金額と払込額のバランス(元本割れしないか)
- 解約返戻金の推移(途中で解約するといくら戻るのか)
- 運用型の保険の場合、利率や運用リスク
特に最近は、外貨建てや変額型など、元本保証がない保険商品も多く出回っています。
相続対策としての安定性を重視するのであれば、円建ての定額型終身保険を検討するのが無難です。
⑤ 保険金の受け取り時期と税務上の注意点
死亡保険金を受け取った相続人は、その金額を相続税の申告書に記載する必要があります。
また、非課税枠を超えた部分については、相続税が課税されます。このとき、保険金を申告し忘れると、過少申告加算税や延滞税の対象になる可能性もあるため注意が必要です。
注意すべきポイント:契約形態やタイミングに関する小まとめ
一時払い終身保険を相続対策として最大限に活かすためには、以下の点に注意してください:
ポイント | 注意すべき内容 |
---|---|
契約形態 | 「契約者=親、受取人=子」で設定 |
加入のタイミング | 親が元気なうちに、できれば70代前半までに |
受取人の設定 | 家族構成や公平性に配慮する |
商品の選び方 | 元本保証の有無、解約返戻金、利率に注意 |
税務手続き | 相続税申告で保険金の申告漏れに注意 |
こうした点をしっかり押さえれば、一時払い終身保険は非常に強力な相続対策ツールとなります。
次のセクションでは、実際にこの保険を活用して相続を円滑に行えた事例を紹介しながら、より具体的なイメージを持っていただきます。
5. 実際の事例紹介
ここでは、一時払い終身保険を活用して相続税の負担を減らし、家族の絆を守ることができたケースを紹介します。
実話をベースに、個人情報を変更・加工しております。
事例1:父が残した保険が、私たち家族を救った
【登場人物】
- Aさん(長男・50代前半、会社員)
- 父親(享年82歳)
- 母親(存命、80歳)
- 妹(専業主婦・40代後半)
Aさんの父は、地方で自営業を営んでおり、数千万円の預金と不動産を保有していました。
晩年は病院と自宅を行き来する生活が続き、相続の準備を本格的に考え始めたのは、父が78歳のとき、「お前たちが揉めないようにしておきたい」と、父が口にしたのがきっかけで、Aさんは保険と相続に強いファイナンシャルプランナー(FP)に相談しました。
保険加入の決断
FPのアドバイスで提案されたのが、一時払い終身保険です。
父が健康診断で問題なしという結果をもらっていたこともあり、すぐに動けました。
- 契約者・被保険者:父
- 受取人:長男・長女(50%ずつ)
- 保険金:1,500万円(非課税枠の上限)
- 一時払い保険料:1,000万円(父の預金から拠出)
「使い道が決まってない現金をただ持っているだけじゃ、相続税がかかる。だったら、非課税で渡せる保険に換えておこう」と父は言い、迷わず保険契約を行います。
父の他界と保険金の支払い
それから約4年後、父が他界しました。
葬儀後すぐに、保険会社から死亡保険金1,500万円が指定口座に振り込まれました。
遺産分割協議や不動産の評価などで親族会議が長引くなか、保険金は即時に使える資金として非常に助かりました。
- 納税資金(相続税)
- 葬儀費用の補填
- 母親の今後の生活資金として一部を確保
Aさんは言います。
「遺産の分け方をめぐっては少しギクシャクしたけれど、保険金だけは事前に割り当てが決まっていたから、妹とももめずに済んだ。あの時、父が入ってくれていて本当に良かった。」
相続税の試算:保険で節税に成功
もし、父がその1,000万円をただの現金として残していた場合、以下のような税負担が想定されました。
- 現金としてそのまま相続:課税対象額が増加
- 保険金として相続:非課税枠(500万円 × 2人)内に収まり、相続税ゼロ
この差は家族全体で見れば、数十万円〜数百万円単位の節税効果となったのです。
教訓:元気なうちが勝負
父が元気だったからこそ、保険に入れました。
もし病気で告知に引っかかっていたら、契約は不可能だったかもしれません。
Aさんは語ります。
「一時払い終身保険は、“お金を残す”というより“家族関係を守るツール”だったと思う。親が元気なうちに考えるのが本当に大事です。」
事例2:母が遺した“静かな備え”が、私の未来を守ってくれた
【登場人物】
- Bさん(40代後半・シングルマザー、会社員)
- 母親(享年79歳)
- 親族:叔父(母の弟)1人のみ
Bさんの母は、長年公務員として働き、退職後は年金と少しの預貯金で質素に暮らしていました。
父親はBさんが20代の頃に他界。兄弟もおらず、母娘ふたりきりの家庭でした。Bさん自身も早くに離婚を経験し、10代の娘と2人暮らし。仕事と子育てに追われる日々の中、老後や相続のことを話す余裕はほとんどなかったといいます。
ある日、母からの“静かな提案”
母が一時払い終身保険に加入したのは、74歳の時です。
特に重い病気をしたわけでもなく、むしろ健康そのものです。ただ、友人の1人が「相続税が大変だった」と話していたのをきっかけに、「何か準備しておいた方がいいかもしれない」と感じたそうです。
当時母は、約1,200万円の預金を持っており、そのうちの1,000万円を使って保険に加入しました。
- 契約者・被保険者:母
- 受取人:Bさん
- 保険金:1,000万円(ちょうど非課税枠におさまる金額)
その手続きの後、母はBさんにこう言ったそうです。
「これで、もしものときの準備はしておいたから。何かあったら、保険会社に連絡すればいいからね。」
当時のBさんは、「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」と笑って返したと言います。
突然の別れと保険金の存在
それから5年後、母は突然の心疾患で他界しました。
元気で歩いていた数日前の姿を思い出しながら、Bさんは放心状態で葬儀の手配に追われました。
その直後、母の残してくれた「封筒」を見つけます。中には、保険契約書の控えと、手書きのメモが。
「この保険はB子のために入ったものです。お葬式や税金に使ってください。」
Bさんはその瞬間、涙が止まらなかったと語ります。
「母は、最期の最期まで、私と娘のことを考えて準備してくれていたんだと分かって…。本当にありがたくて、誇らしくて。」
実際の手続きと活用
保険会社に連絡を入れ、手続きは1週間ほどで完了しました。
スムーズに1,000万円の死亡保険金が振り込まれ、Bさんは、その保険金を以下のように使いました。
- 約150万円:葬儀・納骨などの費用
- 約300万円:相続税(不動産・預金の一部に課税)
- 約550万円:高校・大学進学を控える娘の教育資金、老後資金
特にありがたかったのは、「相続税の納税資金を確保してくれていたこと」だったそうです。
「正直、そんなにかかると思っていなかったし、税金って申告してからすぐに払わなきゃいけない。
保険金がなかったら、ローンを組んでたかもしれない。本当に救われました。」
周囲との摩擦もなく、円満な相続
母の遺産としては、住んでいたマンション(母名義・評価額2,000万円)と預金200万円ほどが残りました。
相続人はBさんだけだったため、遺産分割協議は不要。しかし、母の弟(Bさんの叔父)から「何か手伝えることがあれば」と連絡が来たそうです。
このとき、Bさんは「実は保険を残してくれていて…」と話すと、叔父はこう返してくれたと言います。
「お姉さん、立派だったなあ。うちの子にもちゃんと話しとこうかな。」
教訓:口にしなくても、準備は“愛”だった
母は「あなたに迷惑をかけたくないから」と生前よく言っていたそうです。
その言葉の裏側に、自分が元気なうちにできることは全部やっておこうという決意があったと、Bさんは今になって実感しています。
「私は母から、財産だけじゃなく、“備えの大切さ”を教わった気がします。
今は、私自身も娘のために保険を検討し始めました。」
このケースから学べるポイント
ポイント | 内容 |
---|---|
高齢でも健康なら加入できる | 74歳で問題なく契約できた事例 |
非課税枠を有効に活用できた | 1,000万円全額が非課税で受け取れた |
女性の一人親家庭でも無理なく実行 | 預金の一部を使った実行可能な対策 |
家族にトラブルや負担がなかった | 円滑な手続きと感謝される遺産設計 |
このBさんのように、静かに、でも確かな備えをしておくことが、
「残される家族への最大の思いやり」になるのかもしれません。
6. 一時払い終身保険のデメリットと限界
これまで、一時払い終身保険のメリットや成功事例についてご紹介してきました。
どんな制度にも裏側に落とし穴や限界は存在します。
このセクションでは、「使ってから後悔しないために知っておくべきこと」として、デメリットや注意点を整理していきます。
冷静に見つめてこそ、本当に役立つ活用ができるのです。
① 初期費用が高額:一括払いの負担
一時払い終身保険は、その名の通り「契約時に保険料をまとめて支払う必要がある」保険です。
一般的に、500万円、1,000万円、1,500万円といった単位で契約されることが多く、その金額を一括で拠出しなければなりません。
つまり、相続税を節税したいが、まとまった資金が用意できない人にはハードルが高い、老後資金が不安な方が無理をして契約すると、かえって生活を圧迫する問題の発生が考えられます。
アドバイス
一時払い終身保険はあくまで「余裕資金の一部で運用する相続対策」として捉えるのが安全です。
老後資金と競合させるような使い方は避けましょう。
② 加入年齢・健康状態によっては“入れない”リスク
この保険に加入するには、被保険者が一定の健康状態を満たしている必要があります。
多くの保険会社では、
- 加入年齢の上限:おおむね80歳〜85歳
- 告知義務あり(健康状態・既往歴の申告)
加入を断られるケース例
- がん治療中または完治後間もない
- 心疾患・脳疾患の既往歴がある
- 糖尿病・高血圧などの持病が進行している
また、タイミングを逃すと加入そのものができなくなるリスクがあります。
健康なうちに備えることが、何よりの“保険”と言えるでしょう。
③ 解約リスク:途中解約で元本割れする場合も
一時払い終身保険は「長期契約前提」の商品であり、契約から数年以内に解約すると、解約返戻金が支払った額を下回る(=元本割れ)ことがあります。
たとえば:
契約期間 | 解約返戻率 |
---|---|
1年以内 | 90%(元本割れ) |
5年後 | 100〜103% |
10年後以降 | 返戻率が徐々に増加 |
問題となるのは、「急に資金が必要になった」「親が亡くならず、資産として寝かせたままになってしまった」というケースです。
アドバイス
保険に回す資金は、「今後使う予定のないお金」であることが前提です。
生活資金と混同しないように注意しましょう。
④ 相続対策として“万能”ではない
一時払い終身保険は確かに便利ですが、あくまでも部分的な手段に過ぎません。
限界点 | 内容 |
---|---|
節税できる金額に限界がある | 非課税枠は「500万円×法定相続人の数」まで |
全財産をカバーできるわけではない | 現金・不動産・有価証券など、他の資産の対策も必要 |
法改正の影響を受ける可能性 | 税制変更で非課税枠が縮小するリスクもゼロではない |
相続全体を設計するには、贈与・不動産対策・家族信託など、複数の対策を組み合わせる必要があります。
⑤ 受取人トラブル:事前の説明がないと“火種”に
「保険金は遺産ではない」とはいえ、他の相続人から見れば、一部の人が多くもらったように見えることもあります。
実際に起きたトラブル事例
- 長男だけが受取人になっていたことで、妹から不満が出た
- 「なぜ自分には保険金がないのか」と親戚から責められた
- 遺言書と受取人設定が食い違っていたために、トラブルが泥沼化
アドバイス
- 複数の相続人がいる場合は、受取人を均等に設定する
- 家族に事前に説明しておくこと(これが最も重要!)
小まとめ:使い方を間違えなければ、非常に有効
一時払い終身保険は、使い方次第で「相続対策の強い味方」となりますが、
以下のようなデメリットやリスクを理解した上で活用すべきです。
デメリット・限界 | 対応策 |
---|---|
高額な一括払い | 余裕資金で契約する |
加入制限(年齢・健康) | 健康なうちに準備する |
解約時の元本割れ | 長期前提で活用する |
相続対策としての限界 | 他の手段と組み合わせる |
トラブルの火種に | 受取人設定の説明を事前に行う |
7. まとめ
一時払い終身保険は「お金を残す」だけのものではない
ここまでの記事で、一時払い終身保険が持つ相続対策としての力を、さまざまな視点からご紹介してきました。
税制の優遇、納税資金の確保、トラブル回避、これらは単なる節税テクニックではなく、家族に安心を残すための思いやりの手段でもあることが、お分かりいただけたのではないでしょうか。
記事の要点まとめ
ポイント | 内容 |
---|---|
非課税枠の活用 | 死亡保険金は「500万円 × 法定相続人」の非課税枠対象 |
スムーズな資産移転 | 遺産分割協議を待たず、現金で即時に支払われる |
トラブル回避 | 受取人指定により、相続人間の不平等感を軽減 |
納税資金の準備 | 相続税の支払いに備えられる確実な資金確保手段 |
契約の注意点 | 契約者・受取人の設定、健康状態、タイミングが重要 |
とはいえ、「万人向け」ではないことも忘れずに
- 一括払いの負担が大きい
- 高齢や持病によって加入できない場合がある
- 解約すると元本割れのリスクも
このように、メリットとデメリットのバランスを見極めたうえで、ご自身やご家族に合った選択をすることが非常に大切です。
今すぐできる3つのアクション
1. ご家族と話してみる
「万が一のとき、どうしたいか」「どう残したいか」相続の話はタブーではなく、準備です。
ちょっと勇気がいるかもしれませんが、今だからこそできる会話が、将来の大きな安心につながります。先送りしているうちに認知症に罹ってしまうというのはよくあるケースです。
2. 保険会社・FPに相談する
一時払い終身保険の商品設計や条件は、保険会社ごとに大きく異なります。
信頼できる専門家に一度相談してみることで、自分に合った商品が見つかるはずです。
✔ 加入年齢と健康条件
✔ 保険金額と解約返戻金の設計
✔ 相続全体のバランス(贈与・不動産との兼ね合い)
などを丁寧に見てくれる専門家を選びましょう。
3. 相続全体を見直してみる
一時払い終身保険は相続対策の1パーツです。
- 不動産の名義は適切か?
- 遺言書は用意されているか?
- 生前贈与との併用は検討しているか?
全体のバランスを考えて、トータルで「争族」リスクをなくす設計を目指しましょう。
最後に:相続は「今」から準備できる、未来のプレゼント
「相続の話は、親が高齢になってから」
「まだ元気だから大丈夫」
そう思っていた方こそ、ぜひ今一度、今日という日にできる一歩を踏み出してみてください。
一時払い終身保険は、目に見えるお金以上の“思いやり”を残す選択肢です。
ご自身とご家族の将来に、ほんの少しの安心を備える。
そんな第一歩になれば、この記事の役目は果たせたと思います。