【2026年閣議決定】デジタル遺言(保管証書遺言)とは?公正証書の電子化との違いと今選ぶべき方法

将来の相続を考える夫婦のイメージ(デジタル遺言と公正証書遺言の検討)

従来の遺言は、いずれも紙を前提とした制度です。

自筆証書遺言は自分で手書きする必要があり、公正証書遺言も最終的には紙の書面として作成されます。

そのため、
「もっと簡単に作成・修正できないのか」
「デジタルで管理できた方が安心ではないか」
と感じたことがある方も多いのではないでしょうか。

こうした背景のもと、2026年4月3日、パソコンやスマートフォンで作成できる新しい遺言制度、いわゆる「デジタル遺言(保管証書遺言)」が閣議決定されました。

デジタル技術を活用し、法務局で保管するという仕組みは、これまでの遺言制度と比べて利便性の高いものとして期待されています。

一方で、この制度はまだ施行前の段階にあり、

  • 実際の手続きはどこまで簡便になるのか
  • 法務局での運用はどのようになるのか
  • 本当に安心して任せられる制度なのか

といった点については、現時点では不確定な部分も少なくありません。

特に、すでに遺言の作成を検討している方にとっては、
「デジタル遺言の開始を待つべきか」
「今すぐ別の方法で作成すべきか」

という判断が重要になります。

そこで本記事では、2026年4月3日の閣議決定の内容を踏まえながら、

  • デジタル遺言(保管証書遺言)の概要と現時点で分かっている内容
  • メリットと注意点
  • 公正証書遺言など既存制度との違い
  • 今、どの方法を選ぶべきか

について、行政書士の実務視点から分かりやすく解説します。

そのうえで、
「今、遺言を考えている人にとって現実的な選択肢は何か」
という点についても整理していきます。

なお、「デジタル遺言」と聞くと、公正証書遺言の電子化をイメージされる方もいますが、今回の制度はそれとは異なり、新たに創設される遺言方式です。

目次

①:デジタル遺言(保管証書遺言)とは何か

制度の位置づけ(第4の遺言方式)

現行の民法では、遺言の方式として主に以下の3つが定められています。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

これに対し、今回閣議決定された「デジタル遺言(保管証書遺言)」は、

これらに続く「第4の遺言方式」として位置づけられる新しい制度です。

特徴としては、

  • パソコンやスマートフォンで作成できる
  • 法務局がデータを保管する

といった点が挙げられ、
「自筆証書遺言の手軽さ」と「公的保管の安心感」を組み合わせた仕組みといえます。

行政書士の視点
秘密証書遺言の利用頻度があまり高くないことから、デジタル遺言(保管証書遺言)を第3の遺言方式と紹介されている媒体もございます。
しかしながら、法律に沿って正しくお伝えすると、第4の遺言方式が正確になると思いますので、本記事では第4の遺言方式でご案内いたします。

従来の遺言との違い(自筆・公正・秘密との比較)

従来の遺言方式には、それぞれ以下のような特徴があります。

■自筆証書遺言

  • 手軽に作成できる
  • ただし無効リスクや紛失リスクがある

■公正証書遺言

  • 公証人が関与するため安全性が高い
  • その分、手続きや費用の負担がある

■秘密証書遺言

  • 内容を秘密にできる
  • ただし実務上ほとんど利用されていない

デジタル遺言(保管証書遺言)は、これらと比べて

  • 作成のしやすさ(デジタル)
  • 保管の確実性(法務局)
  • 手続きの簡略化(検認不要方向)

といった点で、従来制度の弱点を補うことが期待されている制度です。

なぜ新制度が必要とされたのか(背景)

デジタル遺言(保管証書遺言)が検討されるようになった背景には、いくつかの社会的な課題があります。

まず一つは、
自筆証書遺言のリスクの高さです。

  • 書き方の不備による無効
  • 紛失や改ざん
  • 相続開始後に見つからない

といった問題は、実務でも多く見られます。

また、公正証書遺言についても、

  • 公証役場に出向く必要がある
  • 証人が必要
  • 一定の費用がかかる

など、ハードルを感じる方がいるのも事実です。

さらに、高齢化の進展により

「もっと簡単で確実な遺言制度が必要」

というニーズが高まってきました。

こうした背景から、

デジタル技術を活用しつつ、公的機関が関与する新たな遺言制度

として、デジタル遺言(保管証書遺言)が検討・制度化されるに至っています。

遺言の種類を徹底解説!あなたに合った遺言の選び方

②:【2026年閣議決定】現時点で分かっている制度内容

デジタル遺言の仕組みを示すフローチャート。作成→本人確認→法務局保管→相続時利用の流れを図解
デジタル遺言は、作成・本人確認・法務局保管を経て、相続時に利用される仕組みです。

2026年4月3日に閣議決定された内容では、デジタル遺言(保管証書遺言)について、大まかな制度の方向性が示されました。

ただし、現時点ではまだ法律として成立・施行されたわけではなく、細かい運用ルールはこれから決まっていく段階です。

現状は、制度の全体像は見えているものの、実際の使い勝手までは確定していない状態といえます。

ここでは、現時点で分かっているポイントを整理します。

作成・保管に関する仕組み

パソコン・スマートフォンによる作成が可能

デジタル遺言(保管証書遺言)の大きな特徴は、パソコンやスマートフォンで遺言を作成できる点です。

これまでの自筆証書遺言は、全文を手書きする必要がありました。

そのため、

  • 長い文章を書くのが大変
  • 高齢になると負担が大きい

といった課題がありました。

デジタル遺言(保管証書遺言)では、こうした負担の軽減が期待されています。

法務局による保管制度の導入

作成した遺言は、自分で保管するのではなく、法務局が保管する仕組みになる予定です。

現在の「自筆証書遺言書保管制度」に近い枠組みですが、デジタルデータとして管理される点が特徴です。

これにより、

  • 紛失
  • 改ざん
  • 相続時に見つからない

といったリスクの低減が期待されています。ます。

法務局の遺言書保管制度とは?制度の概要とメリット

本人確認と形式要件の見直し

本人確認の厳格化(対面・オンライン)

デジタルで作成できる一方で、「本人が本当に作成したのか」という点が重要になります。

そのため、デジタル遺言(保管証書遺言)では本人確認が厳格に行われる方向とされています。

具体的には、

  • 法務局での対面確認
  • オンラインでの本人確認

などが想定されています。

不正な作成やなりすましを防ぐための仕組みです。

押印要件の見直し(ハンコ不要)

従来の遺言では押印が必要とされてきましたが、デジタル遺言(保管証書遺言)では

押印を不要とする方向で見直しが検討されています

その代わりに、電子的な認証手段や本人確認手続きによって、遺言者の意思確認を行う仕組みが想定されています。

行政書士の視点
マイナンバーカードや、アプリでの認証になると思われます。

相続手続きへの影響

検認手続きの簡略化(不要方向)

現行の自筆証書遺言(自宅保管)では、相続開始後に家庭裁判所での「検認手続き」が必要となります。

これに対し、デジタル遺言(保管証書遺言)では

検認手続きを不要とする方向で検討されています

これが実現すれば、

  • 相続手続きの迅速化
  • 相続人の負担軽減

につながることが期待されます。

遺言書の検認に必要な書類と手続きの流れを徹底解説

実務上の論点(行政書士の視点)

実務の観点から見ると、本人確認の方法については運用面での課題も想定されます。

すべてを法務局での対面確認とした場合、

想定される課題

  • 利用者増加による混雑
  • 高齢者が法務局へ出向く負担
  • 法務局側の人員対応の限界

現実的な運用の方向性(推測)

そのため、今後の制度設計では、

  • オンライン本人確認の活用
  • 行政書士・弁護士など専門家の関与

といった形での運用が検討される可能性もあります。

現時点では確定していない部分ですが、
制度の使いやすさを左右する重要なポイントといえるでしょう。

現時点での整理

ここまでの内容から、デジタル遺言(保管証書遺言)は利便性と安全性の両立を目指した制度であることが分かります。

一方で、

  • 手続きの具体的な流れ
  • 実際の運用負担
  • 利用条件の詳細

などは今後の制度設計に委ねられています。

現時点では、「便利になりそうだが、実際の使い勝手はまだ見えていない段階」といえるでしょう。

③:デジタル遺言(保管証書遺言)のメリット

デジタル遺言(保管証書遺言)は、従来の遺言制度が抱えていた課題を踏まえて設計された制度です。

そのため、うまく運用されれば、これまでよりも使いやすく、実用性の高い仕組みになることが期待されています。

ここでは、主なメリットを整理します。

作成の負担軽減(高齢者にも配慮)

デジタル遺言(保管証書遺言)では、パソコンやスマートフォンを使って遺言を作成できるため、これまでのように全文を手書きする必要がありません。

自筆証書遺言の場合、

  • 長文を書く負担が大きい
  • 書き損じによる書き直しが発生する

といった点がネックになることがありました。

デジタル化されることで、文章の修正や加筆が容易になり、より柔軟に内容を検討できるようになります。

また、身体的な理由で手書きが難しい方だけでなく、

「字を書くこと自体に苦手意識がある方」にとっても利用しやすい制度といえます。

遺言は正確に内容を残すことが重要であるため、読みやすく整った形で作成できる点は、実務上も大きなメリットです。があります。

紛失・改ざんリスクの低減

従来の自筆証書遺言(特に自宅保管)の場合、

  • 保管場所が分からなくなる
  • 相続人に見つけてもらえない
  • 内容を書き換えられる

といったリスクがありました。

デジタル遺言(保管証書遺言)では、法務局がデータとして保管することが想定されており、こうしたリスクの低減が期待されています。

遺言の内容が確実に保存されるという点は、大きな安心材料の一つといえるでしょう。

相続手続きの円滑化

現行の自筆証書遺言(自宅保管)では、相続開始後に家庭裁判所で「検認」という手続きが必要になります。

この手続きには一定の時間と手間がかかり、相続手続き全体の遅れにつながることもあります。

デジタル遺言(保管証書遺言)では、検認手続きを不要とする方向で検討されているため、手続きの迅速化が期待されています。

結果として、相続人の負担軽減にもつながる可能性があります。

遺言の発見性向上

遺言が作成されていても、相続開始後に発見されなければ意味がありません。

自宅で保管されている遺言は、存在自体が知られていないケースも少なくありません。

デジタル遺言(保管証書遺言)では、法務局で保管されることにより、一定の方法で遺言の有無を確認できる仕組みが整備されることが想定されています。

これにより、「遺言があったのに見つからない」といった問題の防止が期待されます。

デジタル遺言のメリットをまとめた図解。作成が簡単・紛失しない・改ざん防止・手続きがスムーズの4つを解説
デジタル遺言は「簡単・安全・確実」。紛失や改ざんのリスクを抑え、相続手続きもスムーズに進められます。

このパートのポイント

ここまで見てきたように、デジタル遺言(保管証書遺言)は利便性と安全性の両面で、従来の遺言制度の課題を補うことが期待されている仕組みです。

特に、作成のしやすさや保管の確実性といった点では、これまで遺言作成にハードルを感じていた方にとって、有力な選択肢になり得る制度といえるでしょう。

一方で、現時点ではまだ制度の詳細が確定していない段階であり、実際の使い勝手や運用面については不透明な部分も残されています。

そのため、メリットだけで判断するのではなく、現実的な課題についてもあわせて確認しておくことが重要です。

④:ただし注意|デジタル遺言(保管証書遺言)の現実的な課題

ここまで見てきたように、デジタル遺言(保管証書遺言)は利便性の高い制度として期待されています。

一方で、現時点では制度が完成しているわけではなく、実務面ではいくつか注意すべき点もあります。

ここでは、現時点で想定される主な課題を整理します。

制度は未施行(2028年前後予定)

デジタル遺言(保管証書遺言)は、2026年4月3日に閣議決定された段階であり、現時点ではまだ利用することができません。

施行時期については、2028年前後になる見込みとされています。

つまり、今すぐ遺言を作成したい場合には、別の方法を選ぶ必要があります。

また、制度開始までの間に内容が変更される可能性もあり、現時点の情報だけで判断することには注意が必要です。

法務局手続きの手間と制約

デジタル遺言(保管証書遺言)は「簡単に作れる」というイメージが先行しがちですが、実際には法務局が関与する制度である以上、一定の手続きは避けられません。

特に本人確認については、厳格な運用が想定されており、

  • 対面での確認
  • オンラインでの認証手続き

など、一定の手間が発生する可能性があります。

また、法務局の運用体制や利用者数によっては、手続きに時間がかかることも考えられます。

現時点では詳細は未確定ですが、「完全に手軽な制度」とまでは言い切れない点には注意が必要です。

実務が固まっていない不確実性

制度の方向性は示されているものの、実際の運用についてはこれから設計されていく段階です。

そのため、

  • 具体的な手続きの流れ
  • 必要書類や要件
  • 利用時の制約

などについては、今後変更や調整が入る可能性があります。

制度開始直後は、現場でも試行錯誤が続くことが予想され、想定外の手間やトラブルが発生する可能性も否定できません。

ITリテラシーへの依存

デジタル遺言(保管証書遺言)は、その性質上、パソコンやスマートフォンの操作が前提となります。

そのため、

  • 機器の操作に不慣れな方
  • オンライン手続きに抵抗がある方

にとっては、かえってハードルになる可能性もあります。

また、電子的な手続きにおいては、

  • 認証方法の理解
  • 操作ミスによる不備

といった点も注意が必要です。

デジタル遺言の注意点とデメリットをまとめた図解。施行前・手続きの手間・制度未確定・IT操作が必要な点を解説
デジタル遺言は便利な仕組みですが、制度はまだ整備途中です。導入前に注意点を理解しておくことが重要です。

このパートのポイント

デジタル遺言(保管証書遺言)は、確かに魅力のある制度ですが、

  • まだ使えない
  • 手続きは一定程度必要
  • 実務はこれから固まる

という現実があります。

制度のイメージだけで判断するのではなく、こうした点も踏まえたうえで検討することが重要です。

⑤:現行制度との比較|結局どれを選ぶべきか

日本の遺言制度(デジタル遺言・公正証書遺言・自筆証書遺言・秘密証書遺言)の違いを比較した表
遺言の種類ごとの特徴を一覧で比較。安全性・手軽さ・検認の有無がひと目で分かります。

ここまで、デジタル遺言(保管証書遺言)の概要とメリット・課題を見てきました。

では、実際に遺言を作成する場合、
どの方式を選ぶべきなのでしょうか。

ここでは、現行制度との違いを整理したうえで、実務的な選び方を解説します。

自筆証書遺言との違い

自筆証書遺言は、自分で手軽に作成できる点が大きな特徴です。

費用もほとんどかからず、思い立ったときにすぐ作れるため、現在でも一定の利用があります。

一方で、

  • 書き方の不備による無効リスク
  • 紛失や改ざんのリスク
  • 相続時に発見されない可能性

といった課題があります。

特に自宅で保管する場合は、これらのリスクがそのまま残る点に注意が必要です。

デジタル遺言(保管証書遺言)は、こうした自筆証書遺言の弱点を補う制度として設計されていますが、現時点ではまだ利用できない点が大きな違いです。

公正証書遺言との違い

公正証書遺言は、公証人が関与して作成されるため、

  • 内容の法的チェックが行われる
  • 無効になるリスクが極めて低い
  • 原本が公証役場で保管される

といった高い安全性が特徴です。

また、相続開始後も検認手続きが不要であり、実務上もスムーズに手続きを進めることができます。

一方で、

  • 公証役場との調整が必要
  • 証人の手配が必要
  • 一定の費用がかかる

といった負担があります。

デジタル遺言(保管証書遺言)は利便性の面では魅力がありますが、現時点では公正証書遺言のような「確実性」までは担保されていない点が大きな違いです。

秘密証書遺言との違い

秘密証書遺言は、内容を秘密にしたまま作成できる遺言方式です。

一見するとメリットがあるように見えますが、実務上はほとんど利用されていません。

その理由としては、

  • 公証人は内容を確認しないため、無効リスクが残る
  • 相続時には検認手続きが必要
  • 安全性・利便性のいずれも中途半端

といった点が挙げられます。

デジタル遺言(保管証書遺言)は、一定の秘密性を保ちつつも、公的機関が関与する仕組みが想定されているため、制度の方向性としては秘密証書遺言に近い部分を持ちながらも、より実用的な設計になっているといえます。

ケース別の選び方

ここまでの違いを踏まえると、選び方の目安は次のとおりです。

手軽さを重視したい場合

  • 自筆証書遺言(※ただし法務局保管が前提)
  • 将来的にはデジタル遺言(保管証書遺言)

費用を抑えつつ、自分で作成したい場合には選択肢となります。

ただし、自宅保管はリスクが大きいため、利用する場合でも保管制度の活用が前提になります。

確実性・安全性を重視したい場合

公正証書遺言

相続トラブルを防ぎたい場合や、確実に遺言を実現したい場合には最も適した方法です。

実務上も最も安定しており、「確実に効力を発揮させる」という観点では有力な選択肢となります。

デジタル遺言を検討している場合

デジタル遺言(保管証書遺言)は将来的には有力な選択肢となる可能性があります。

ただし、現時点ではまだ利用できず、制度の詳細も確定していません。

そのため、

  • 急いでいない
  • 制度開始まで待てる

という場合に限って検討対象になるといえるでしょう。

ここでの結論

現時点においては、

  • 手軽さ → 自筆証書(保管制度前提)
  • 将来性 → デジタル遺言(保管証書遺言)
  • 確実性 → 公正証書遺言

という整理になります。

特に、すでに遺言の作成を検討している方にとっては、

「確実に効力を発揮させる」という観点を重視するかどうか

が重要な判断ポイントになります。

⑥:行政書士が考える実務上の結論

遺言を今すぐ公正証書で作成する場合とデジタル遺言を待つ場合を比較した図解。確実性とリスクの違いを説明
遺言は「今すぐ作る」か「デジタル遺言(保管証書遺言)を待つ」かでリスクが大きく異なります。確実性を重視するなら早めの作成が安心です。

ここまで見てきた内容を踏まえ、実務の観点から整理すると、デジタル遺言(保管証書遺言)は今後有力な選択肢になる可能性を持った制度といえます。

一方で、現時点ではまだ制度が確定・施行されておらず、実際の運用や使い勝手については不透明な部分も多く残されています。

そのため、これから遺言を作成する方にとっては、「制度の将来性」と「現時点での確実性」を分けて考えることが重要になります。

デジタル遺言(保管証書遺言)は「自筆証書遺言+法務局保管の進化版」

制度の位置づけとしては、デジタル遺言(保管証書遺言)は

「自筆証書遺言(法務局保管制度)のデジタル版」

と捉えるのが分かりやすいでしょう。

作成のしやすさや保管の確実性といった点では改善が期待される一方で、

  • 内容の法的チェックが入らない
  • 最終的な紛争予防力は限定的

といった性質は、自筆証書遺言と共通する部分があります。

自筆証書遺言(特に自宅保管)のリスク

実務上、特に注意したいのが自筆証書遺言の扱いです。

中でも、自宅で保管されている遺言については、

  • 要件不備による無効
  • 紛失や未発見
  • 内容をめぐるトラブル

といった問題が現実に発生しています。

手軽に作成できる反面、結果として「遺言が機能しない」ケースも少なくありません。

そのため、少なくとも自筆証書遺言を選択する場合でも、法務局の保管制度を利用することが前提になると考えられます。

“今すぐ対策”なら公正証書が現実解

現時点で遺言を作成するのであれば、

公正証書遺言が最も現実的で確実な選択肢です。

公証人が関与することで、

  • 内容の適法性が担保される
  • 無効リスクが極めて低い
  • 原本が公的に保管される

といったメリットがあり、実務上も安定した運用がされています。

特に、

  • 相続人間でのトラブルが想定される場合
  • 財産内容が複雑な場合
  • 確実に遺言を実現したい場合

には、公正証書遺言の有効性は非常に高いといえます。

遺言は「制度待ち」より「実行」が重要

デジタル遺言(保管証書遺言)は、将来的には利便性の高い制度として活用されていく可能性があります。

しかし、現時点ではまだ利用することができず、制度の詳細や運用もこれから固まっていく段階です。

一方で、遺言は「必要だと思ったとき」が重要なタイミングでもあります。

特に注意すべきなのが、

  • 判断能力の低下
  • 突発的な病気や事故

といったリスクです。

これらは、制度の開始時期に関係なく起こり得るものであり、状況によっては遺言そのものを作成できなくなる可能性もあります。

そのため、

「より良い制度を待つ」ことよりも、「今の制度で確実に遺言を残しておく」ことの方が、実務的には重要といえます。

将来の制度に期待することと、現時点で備えておくことは別の問題として考える必要があります。

遺言は、残せなければ意味がありません。

その観点からは、今利用できる制度の中で、確実性の高い方法を選択することが現実的な対応といえるでしょう。

このパートの結論

デジタル遺言(保管証書遺言)は、今後の相続実務において重要な選択肢になる可能性があります。

しかし、現時点で遺言を検討している方にとっては、

「今すぐ確実に効力を持たせること」

が何より重要です。

その観点から見ると、現状では公正証書遺言が最も合理的な選択といえるでしょう。

⑦:秘密証書遺言はどうなるのか

制度としての位置づけと実務の実態

デジタル遺言(保管証書遺言)の創設により、既存の遺言制度の位置づけにも変化が生じる可能性があります。

その中でも、特に影響を受けると考えられるのが「秘密証書遺言」です。

まず前提として、今回の閣議決定によって秘密証書遺言が廃止されるわけではありません。
民法上の遺言方式としては、引き続き制度として存続する見込みです。

もっとも、実務の現場では、秘密証書遺言はすでにほとんど利用されていないのが実情です。
公証役場でも取り扱い件数は非常に少なく、一般の方が選択するケースは限定的といえます。

その理由としては、制度上の構造的な問題があります。

  • 公証人は遺言の「存在」を確認するのみで、内容の適法性まではチェックしない
  • 相続開始後には家庭裁判所での検認手続きが必要となる
  • 安全性と利便性のいずれの面でも中途半端な位置づけになっている

結果として、

  • 確実性を重視する場合は公正証書遺言
  • 手軽さを重視する場合は自筆証書遺言

といった形で、他の制度に役割を取られているのが現状です。

こうした状況の中で、デジタル遺言(保管証書遺言)は、

  • 一定の秘密性を保ちながら作成できる
  • 法務局による保管が前提となる
  • 検認手続きが不要となる方向で検討されている

といった特徴を持つことが想定されています。

これらは、秘密証書遺言が本来担っていた役割と重なる部分が多く、制度としてはいわば上位互換に近い位置づけになる可能性があります。

そのため、デジタル遺言(保管証書遺言)が実際に運用されれば、
秘密証書遺言の利用はさらに減少していく可能性が高いと考えられます。

役割を取られているのが実情です。

デジタル遺言(保管証書遺言)との関係

デジタル遺言(保管証書遺言)は、

  • 一定の秘密性を保ちながら作成できる
  • 法務局による保管が前提
  • 検認不要となる方向

といった特徴を持つことが想定されています。

これらは、秘密証書遺言が本来持っていた役割と重なる部分があります。

そのため、制度が実際に運用されれば、

秘密証書遺言の利用はさらに減少していく可能性が高いと考えられます。

⑧:施行時期と今後の見通し

施行は2028年前後見込み

デジタル遺言(保管証書遺言)制度は、2026年4月3日に閣議決定された段階であり、実際の施行は2028年前後になる見込みとされています。

現時点では、まだ利用することはできません。

制度確定はこれから

制度の詳細については、今後の法案審議や省令等によって具体化されていきます。

そのため、現段階では、

  • 実際の手続きの流れ
  • 利用条件
  • 運用の細部

などは確定していません。

今動くか、待つかの判断

デジタル遺言(保管証書遺言)に関心を持っている方にとっては、

「制度開始を待つべきか」
「今すぐ別の方法で作成すべきか」

という点が重要な判断になります。

すでに遺言の必要性を感じている場合は、制度開始を待つことでリスクが高まる可能性もあります。

そのため、

「今できる確実な方法で対応する」という視点が重要になります。

パブリックコメントという関与方法とその現実

制度設計の過程では、パブリックコメント(意見募集)が実施されることがあります。

具体的な案件の確認や意見提出は、以下の政府ポータルサイトから行うことができます。

こうした仕組みを通じて、制度に対して意見を届けることは可能です。

一方で、提出された意見がそのまま制度に反映されるケースは多くはなく、制度の大枠が大きく変わる可能性は限定的と考えられます。

そのため、制度が自分にとって使いやすくなることを前提に「待つ」という判断は、現実的とはいえない側面があります。

⑨:まとめ|デジタル遺言(保管証書遺言)の本質

単なるデジタル化ではない

デジタル遺言(保管証書遺言)は、単に紙の遺言をデジタルに置き換えるものではなく、

作成・保管・手続きのあり方そのものを見直す制度として位置づけられます。

公的管理+利便性の両立

法務局による保管とデジタル技術の活用により、

  • 紛失防止
  • 手続きの簡略化
  • 利用しやすさの向上

といった点の両立が目指されています。

今後の相続対策の新しい選択肢

将来的には、デジタル遺言(保管証書遺言)は有力な選択肢の一つになる可能性があります。

ただし、現時点ではまだ制度は完成しておらず、利用もできません。

今、遺言を残すことを考えている方へ

デジタル遺言(保管証書遺言)に期待が集まる一方で、

遺言は「いつか」ではなく「必要なとき」に準備するものです。

制度の開始を待っている間に、遺言を残す機会そのものを失ってしまうリスクもあります。

そのため、現時点で遺言の必要性を感じているのであれば、

今利用できる制度の中で、確実性の高い方法(公正証書遺言)を選択することが、最も現実的な対応といえるでしょう。

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特定行政書士 野中雅敏(IT行政書士事務所)

  • 国家資格:行政書士(登録番号:25080391)
  • 経歴:IT業界出身/相続・遺言分野を専門取り組み中
  • 趣味:競泳
  • メッセージ:
     「遺言は“難しいこと”ではなく、“優しさのカタチ”です。
    家族を守るために、ぜひ一緒に考えていきましょう。」

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