遺言の法律用語一覧|遺言書でよく使う言葉をわかりやすく解説

「遺言(ゆいごん)」を書こうと思って調べてみたら、法律上は「遺言(いごん)」と呼ばれていることを知り、戸惑ったことはありませんか。

遺言について調べていると、「受遺者」「遺贈」「遺言執行者」など、普段あまり目にしない法律用語が出てくることがあります。

遺言書を読んでいて意味が分からなかったり、似た言葉の違いが分からず戸惑ったりした経験がある方もいるのではないでしょうか。

遺言書の内容を正しく理解するためには、まず基本的な法律用語の意味を押さえておくことが大切です。

例えば、「相続」と「遺贈」は似ているように見えて法的な意味が異なります。
また、「相続人」と「受遺者」も財産を受け取る人という点では共通していますが、立場や権利には違いがあります。

この記事では、遺言書でよく使われる法律用語の意味を一覧で紹介するとともに、特に理解しておきたい用語や間違えやすい言葉の違いについて分かりやすく解説します。

遺言書を読みながら、受遺者や遺贈、遺留分、遺言執行者などの法律用語について学んでいる高齢夫婦を描いたイラスト
遺言書を確認しながら、相続や遺言に関する法律用語を理解している様子を表現したイラストです。

①遺言の法律用語はなぜ知っておく必要があるのか

遺言書には、日常生活ではあまり使わない法律用語が数多く登場します。

例えば、「相続」「遺贈」「受遺者」などは、相続に関わる場面以外では目にする機会が少ない言葉です。しかし、これらの意味を正しく理解していないと、遺言書の内容を誤って解釈してしまう可能性があります。

例えば、「長男に自宅を相続させる」と書かれている場合と、「友人に現金100万円を遺贈する」と書かれている場合では、財産を受け取る人の立場や手続きが異なります。

また、「相続人」と「受遺者」はどちらも財産を受け取る人を指すように見えますが、法律上は別の意味を持つ言葉です。

このように、遺言書で使われる法律用語にはそれぞれ明確な意味があります。遺言書を正しく読み解くためにも、まずは基本的な法律用語の意味を理解しておくことが大切です。

②まず押さえたい遺言の法律用語一覧

遺言書を中心に、相続人・受遺者・遺贈・遺留分・遺言執行者・遺言能力などの法律用語を整理して配置した遺言制度の全体像を示すインフォグラフィック
遺言書に関連する主要な法律用語とその関係性をまとめた図解です。

遺言書を読む際によく登場する法律用語をまとめました。

まずはそれぞれの意味を大まかに理解し、その後の解説で詳しく確認していきましょう。

用語意味
遺言自分の死後に財産をどのように承継させるかなどを定める意思表示
遺言書遺言の内容を記載した書面
遺言者遺言を作成する本人
相続人法律上、亡くなった人の財産を相続する権利を持つ人
受遺者遺贈によって財産を受け取る人
遺産亡くなった人が残した財産や権利義務
相続相続人が亡くなった人の財産を引き継ぐこと
遺贈遺言によって特定の人や団体に財産を与えること
包括遺贈財産の全部または一定割合を与える遺贈
特定遺贈特定の財産を指定して与える遺贈
遺留分一定の相続人に法律上保障されている最低限の取り分
遺言執行者遺言の内容を実現するために手続きを行う人
遺言能力遺言の内容や結果を理解して判断できる能力

これらの用語は、遺言書を作成するときだけでなく、遺言書を読んで内容を理解する際にも重要になります。

例えば、「相続」と「遺贈」は似た意味に見えますが、財産を受け取る人や手続きに違いがあります。また、「受遺者」や「遺言執行者」は遺言書特有の用語であり、意味を知らないと遺言書の内容を正しく理解できないこともあります。

次の章では、特に理解しておきたい法律用語について詳しく解説します。

③遺言でよく使う法律用語を解説

遺言者が作成した遺言書をもとに、相続人と受遺者へ財産が承継される流れを比較して示したインフォグラフィック
遺言書によって財産が相続人や受遺者へ承継される仕組みと、相続と遺贈の違いを図解したイラストです。

受遺者とは

受遺者とは、遺言によって財産を受け取る人のことです。

相続人が法律で定められた範囲の親族であるのに対し、受遺者にはそのような制限はありません。

そのため、友人や知人、法人、公益団体などを受遺者に指定することもできます。

例えば、

「友人Aに現金100万円を遺贈する」

という遺言があった場合、友人Aが受遺者にあたります。

遺言書を読む際は、「相続人」と「受遺者」が異なる意味で使われていることを理解しておくことが大切です。

遺贈とは

遺贈とは、遺言によって財産を与えることをいいます。

遺言者は、相続人だけでなく、友人や団体などに財産を残すことができます。その際に利用される仕組みが遺贈です。

例えば、

「友人Aに現金100万円を遺贈する」

「○○団体に寄付金として50万円を遺贈する」

といった記載は、いずれも遺贈にあたります。

遺贈は相続と似ていますが、法律上は異なる制度です。

包括遺贈とは

包括遺贈とは、財産の全部または一定割合を指定して行う遺贈のことです。

具体的な財産を指定するのではなく、

「全財産の3分の1を友人Aに遺贈する」

「全財産を○○法人に遺贈する」

のように、割合や全体を指定する方法です。

財産の内容が変動しても対象に含まれるため、遺言作成時に個別の財産を細かく指定する必要がないという特徴があります。

特定遺贈とは

特定遺贈とは、特定の財産を指定して行う遺贈のことです。

包括遺贈とは異なり、何を渡すのかを明確に指定します。

例えば、

「東京都○○区の土地を友人Aに遺贈する」

「○○銀行の預金100万円を友人Bに遺贈する」

といった記載は特定遺贈にあたります。

遺言書では、対象となる財産をできるだけ具体的に記載することが重要です。

遺留分とは

遺留分とは、一定の相続人に法律上保障されている最低限の取り分のことです。

遺言によって財産の分け方を自由に決めることはできますが、配偶者や子どもなどの一定の相続人には、遺留分が認められています。

例えば、

「全財産を長男に相続させる」

という遺言があった場合でも、他の相続人は遺留分を主張できる可能性があります。

ただし、遺留分の問題があるからといって、直ちに遺言書が無効になるわけではありません。

遺言執行者とは

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人のことです。

遺言書に認知や遺贈などの内容が含まれている場合、遺言執行者が中心となって手続きを進めます。

例えば、預貯金の解約や名義変更、不動産の相続登記、遺贈の実行などを行うことが主な役割です。

遺言執行者は相続人の中から指定することもできますし、弁護士や行政書士などの専門家を指定することもできます。

遺言執行者が指定されていることで、遺言内容を実現するための手続きが進めやすくなり、相続人間の負担軽減にもつながります。

遺言執行者は、遺言の内容を実現する責任者ともいえる存在です。

遺言執行者の役割や選び方について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
遺言執行者とは?役割・権限・選任方法をわかりやすく解説

遺言能力とは

遺言能力とは、遺言の内容や結果を理解し、自らの意思で判断できる能力のことです。

遺言書は本人が作成したものであっても、作成時に遺言能力が認められなければ無効となる可能性があります。

特に認知症が関係するケースでは、遺言書の日付時点で十分な判断能力があったかが重要なポイントになります。

遺言能力については判断基準や認知症との関係など重要な論点があるため、詳しくは関連記事をご覧ください。

遺言能力について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
遺言能力とは?認知症でも有効になる条件と判断基準を解説

④遺言書でよく使われる法律表現

遺言書には、日常会話ではあまり使わない独特の表現が登場します。

こうした表現は法律上の意味を持つため、言葉の意味を正しく理解しておくことが大切です。

ここでは、遺言書でよく使われる代表的な法律表現を紹介します。

「相続させる」とは

「相続させる」とは、相続人に対して財産を承継させる際に使われる表現です。

例えば、

「長男〇〇に東京都〇〇区〇〇番地の土地を相続させる」

という記載がある場合、長男は相続人としてその土地を取得することになります。

「相続させる」という表現は、相続人に財産を引き継がせる場合に用いられるため、遺言書でもよく見かける表現の一つです。

「遺贈する」とは

「遺贈する」とは、遺言によって財産を与えることを意味します。

「相続させる」と似ていますが、遺贈は相続人以外の人や法人などに財産を渡す場合にも利用できます。

例えば、

「友人Aに現金100万円を遺贈する」

「公益財団法人〇〇に100万円を遺贈する」

といった記載がある場合は、遺贈によって財産を取得することになります。

遺言書では、「相続させる」と「遺贈する」が使い分けられていることがあるため、違いを理解しておくと内容を読み取りやすくなります。

「遺言執行者に指定する」とは

遺言書では、遺言執行者を指定する旨の記載がされることがあります。

例えば、

「長男〇〇を遺言執行者に指定する」

「行政書士〇〇を遺言執行者に指定する」

といった記載です。

この場合、指定された人が遺言執行者として遺言内容の実現に必要な手続きを行います。

遺言執行者の指定は必須ではありませんが、遺贈や認知などの手続きを円滑に進めるために指定されることがあります。

⑤間違えやすい遺言用語の違い

遺言に関する法律用語の中には、意味が似ているため混同されやすいものがあります。

用語の違いを理解しておくことで、遺言書の内容をより正確に読み取れるようになります。

「遺言」「遺言書」「遺書」の違いを比較した図解。意味、形式、法的効力、目的などを3つに分けて整理しているインフォグラフィック。
混同されやすい「遺言」「遺言書」「遺書」の違いを、法的効力や目的の観点から比較した図解です。

遺言(いごん)・遺言書(いごんしょ)・遺書(いしょ)の違い

「遺言」「遺言書」「遺書」は似た言葉ですが、それぞれ意味が異なります。

用語意味
遺言自分の死後の財産の承継方法などを定める意思表示
遺言書遺言の内容を記載した文書
遺書死後に家族や知人へ気持ちを伝えるための手紙

例えば、

「長男に自宅を相続させる」

という法的効力を持つ内容は遺言にあたります。

その内容を文書として作成したものが遺言書です。

一方で、

「今までありがとう」

「家族仲良く暮らしてください」

といったメッセージは遺書に記載されることが多く、原則として法的効力はありません。

なお、日常会話では「ゆいごん」と読まれることが多いですが、法律上は「いごん」と読むのが一般的です。

相続と遺贈の違い

相続と遺贈は、どちらも亡くなった人の財産を引き継ぐ仕組みですが、財産を受け取る人に違いがあります。

用語財産を受け取る人
相続相続人
遺贈遺言で指定された人や団体

例えば、

「長男に自宅を相続させる」

という場合は相続です。

一方で、

「友人Aに現金100万円を遺贈する」

という場合は遺贈になります。

遺贈は相続人以外にも財産を残せる点が大きな特徴です。

相続人と受遺者の違い

相続人と受遺者は、どちらも財産を受け取る立場ですが、財産を取得する根拠が異なります。

用語財産を取得する根拠
相続人法律の規定
受遺者遺言の指定

例えば、亡くなった人の配偶者や子どもは、法律上の相続人に該当します。

一方で、

「友人Aに現金100万円を遺贈する」

という遺言がある場合、友人Aは受遺者です。

受遺者は相続人である必要はなく、友人や団体なども指定できます。

そのため、遺言書を読む際には、「相続人」と「受遺者」が別の意味で使われていることを理解しておくことが大切です。

⑥よくある質問

Q:「ゆいごん」と「いごん」はどちらが正しいですか?

どちらも間違いではありません。

日常会話では「ゆいごん」と読まれることが多い一方、法律の世界では「いごん」と読むのが一般的です。

例えば、家庭裁判所や公証役場、専門家の解説では「いごん」という読み方が使われることが多く見られます。

ただし、法律上の効力に違いはなく、どちらも同じ「遺言」を指しています。

Q:遺言書に法律用語を使わないと無効になりますか?

必ずしも法律用語を使う必要はありません。

重要なのは、遺言者の意思や財産の承継内容が明確に読み取れることです。

例えば、

「長男に自宅を残す」

という記載であっても、対象となる財産や受け取る人が明確であれば、直ちに無効になるわけではありません。

ただし、表現が曖昧だと解釈を巡る争いが生じる可能性があります。そのため、遺言書を作成する際は、法律用語にこだわるよりも内容を明確に記載することが大切です。

遺言書が有効と認められるための条件については、以下の記事で詳しく解説しています。
遺言書の有効性とは?有効・無効を判断する5つのチェックポイントを解説

Q:受遺者は相続人でなければなりませんか?

いいえ、受遺者は相続人である必要はありません。

受遺者とは、遺言によって財産を受け取る人のことです。

そのため、友人や知人、お世話になった人のほか、法人や公益団体などを受遺者に指定することもできます。

例えば、

「友人Aに現金100万円を遺贈する」

という遺言があれば、友人Aは受遺者として財産を受け取ることができます。

Q:遺言執行者は必ず必要ですか?

必ずしも必要ではありません。

遺言執行者が指定されていなくても、相続手続きを進められるケースは多くあります。

ただし、認知や遺贈が含まれている場合や、相続人同士の調整が必要になる場合には、遺言執行者を指定しておくことで手続きを円滑に進めやすくなります。

また、相続人だけでなく、弁護士や行政書士などの専門家を遺言執行者に指定することも可能です。

遺言書を読みながら相続に関する法律用語を理解し、安心した表情を見せる中高年夫婦のイラスト
遺言書に登場する法律用語を理解しながら、相続準備を進める夫婦の様子を表現したイラストです。

まとめ

遺言書には、「受遺者」「遺贈」「遺言執行者」など、日常生活ではあまり使わない法律用語が数多く登場します。

こうした用語の意味を正しく理解していないと、遺言書の内容を誤って解釈したり、本来の法的効果を見落としたりする可能性があります。

まずは、

  • 受遺者
  • 遺贈
  • 包括遺贈
  • 特定遺贈
  • 遺留分
  • 遺言執行者
  • 遺言能力

といった基本的な用語の意味を押さえておきましょう。

また、「相続」と「遺贈」、「相続人」と「受遺者」のように似た用語でも法律上の意味が異なることがあります。

遺言書を読むときや作成するときは、用語の意味を正しく理解したうえで内容を確認することが大切です。

さらに詳しく知りたい用語がある場合は、それぞれの専門記事も参考にしてください。

遺言の種類や法的効力、書き方などを基礎から学びたい方は、以下の記事も参考にしてください。
遺言とは?種類・効力・書き方をわかりやすく解説

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特定行政書士 野中雅敏(IT行政書士事務所)

  • 国家資格:行政書士(登録番号:25080391)
  • 経歴:IT業界出身/相続・遺言分野を専門取り組み中
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