「遺言(いごん)」という言葉は聞いたことがあっても、
「自分にはまだ必要ない」「資産家だけが作るものでは?」と感じている人は少なくありません。
たしかに、遺言がなくても相続手続きを進めること自体は可能です。
しかし実際には、家族構成や財産内容によっては、遺言がないことで相続トラブルにつながるケースもあります。
特に、
- 子どもがいない夫婦
- 再婚家庭
- 内縁関係
- 不動産を所有している人
などは、遺言の必要性が高いケースとしてよく挙げられます。
また、「まだ元気だから大丈夫」と考えていても、認知症などで判断能力が低下すると、遺言を作れなくなる可能性もあります。
この記事では、遺言が必要な人や、遺言がないことで起こりやすい相続トラブル、
「まだ早い」と思っている人こそ早めに準備した方がよい理由について、初心者にもわかりやすく解説します。
遺言の種類や法的効力、無効になるケースまで詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
遺言とは?種類・効力・書き方・無効になるケースまで徹底解説

目次
①:結論|遺言は「必要性が高い人」と「なくても進めやすい人」がいる
遺言がなくても相続手続きはできる
「遺言(いごん)がないと相続できない」と思われることがありますが、実際には、遺言がなくても相続手続きを進めることは可能です。
遺言がない場合は、民法で定められた「法定相続」に従うか、遺産分割協議(相続人同士で遺産の分け方を話し合う手続き)によって財産を分けることになります。
そのため、家族関係が良好で、財産内容もシンプルな場合は、遺言がなくても大きな問題なく相続が進むケースもあります。

ただし、遺言がないと揉めやすいケースは多い
一方で、遺言がないことで相続トラブルにつながるケースも少なくありません。
特に、
- 不動産がある
- 相続人同士が疎遠
- 再婚家庭
- 子どもがいない夫婦
などは、話し合いがまとまりにくくなる傾向があります。
また、「本人はこう考えていたはず」という認識が相続人ごとに異なり、感情的な対立につながるケースもあります。
遺言は、単に財産を分けるためだけでなく、「誰に、何を、どう残したいか」を明確にする役割もあります。
特に「想い通りに財産を残したい人」は遺言が重要
遺言が特に重要になるのは、「法定相続とは違う形で財産を残したい」と考えているケースです。
たとえば、
- お世話になった人へ財産を残したい
- 内縁のパートナーへ財産を渡したい
- 特定の子どもへ事業を承継したい
といった希望は、遺言がなければ実現できない場合があります。
また、「なぜその分け方にしたのか」という想いを付言事項(ふげんじこう)として残しておくことで、家族間の誤解や対立を防ぎやすくなることもあります。
②:まずは確認|遺言が必要になりやすい人の特徴
遺言(いごん)は、すべての人に必須というわけではありません。
しかし、家族構成や財産内容によっては、遺言がないことで相続トラブルにつながるケースがあります。
特に、次のような特徴に当てはまる場合は、早めに遺言を検討しておくことが大切です。
「そもそも遺言と遺書は何が違うの?」という方は、まずこちらの記事をご覧ください。
遺言と遺書の違いとは?法的効力や読み方をわかりやすく解説
家族構成が複雑な場合は相続トラブルにつながりやすい
家族関係や相続人の状況が複雑な場合、相続人同士の認識が食い違いやすく、話し合いがまとまりにくくなることがあります。
たとえば、
- 子どもがいない夫婦
- 50歳以上で現在独身
- 一人暮らしで身寄りがない
- 親族と疎遠
- 海外に移住した家族や親族がいる
- 行方不明の家族や親族がいる
といったケースでは、誰が相続人になるのか分かりにくくなったり、相続手続きが長期化したりする可能性があります。
そのため、「誰に財産を残したいのか」を遺言で明確にしておくことが重要です。
不動産や事業は遺産分割でもめやすい
不動産や事業は、現金のように均等に分けにくいため、相続トラブルにつながりやすい財産です。
特に、
- 不動産はあるが預貯金はほとんどない
- 共有名義の不動産がある
- 事業や商売をしている
といったケースでは、「誰が引き継ぐのか」「どのように分けるのか」をめぐって話し合いが長引くことがあります。
遺言によって意思を明確にしておくことで、相続人同士の対立を防ぎやすくなります。
法定相続とは違う希望がある場合は遺言が重要
遺言は、「法律どおりではなく、自分の意思で財産を残したい」と考えている場合に特に重要です。
たとえば、
- お世話になった人へ財産を残したい
- 障害のある家族へ多めに残したい
- 法定相続とは違う分け方をしたい
といった希望は、遺言がなければ実現できないケースがあります。
自分の意思どおりに財産を承継したい場合は、遺言によって明確に意思表示しておくことが大切です。
判断能力が低下すると遺言を作れなくなる
遺言は、本人に判断能力がある状態でしか作成できません。
そのため、
- 余命宣告を受けた
- アルツハイマー病の診断を受けた
- 認知症への不安がある
といった場合は、早めに準備しておくことが重要です。
「まだ元気だから大丈夫」と考えていても、認知症などによって判断能力が低下すると、遺言を作れなくなる可能性があります。
想いを残すことで家族間の誤解を防ぎやすくなる
遺言には、財産の分け方だけでなく、「なぜその分け方にしたのか」という想いを残す役割もあります。
たとえば、
- 家族へ感謝を伝えたい
- 介護してくれた人へ想いを残したい
- 相続で揉めてほしくない
と考える人も少なくありません。
遺言には、財産の分け方だけでなく、想いや理由を書き添えることもできます。
こうしたメッセージを残しておくことで、家族間の誤解や対立を防ぎやすくなることもあります。
③:遺言がないとどうなる?よくある相続トラブル

遺言(いごん)がない場合、相続人全員で「遺産分割協議(相続人同士で遺産の分け方を話し合う手続き)」を行う必要があります。
話し合いがスムーズにまとまるケースもありますが、家族構成や財産内容によっては、感情的な対立につながることも少なくありません。
実際には、次のようなトラブルが起こるケースがあります。
家族関係が複雑で揉めたケース
子どもがいない夫婦の場合、配偶者だけでなく、亡くなった方の兄弟姉妹が相続人になるケースがあります。
その結果、長年ほとんど交流がなかった親族とも遺産について話し合う必要が生じたり、自宅を誰が引き継ぐのかで感情的な対立につながったりするケースがあります。
また、内縁関係(事実婚)のパートナーは、遺言がなければ原則として財産を相続できません。
「長年一緒に暮らしていたのに何も受け取れなかった」というケースもあります。
財産の分け方で対立したケース
不動産は、現金のように均等に分けにくいため、相続トラブルの原因になりやすい財産です。
たとえば、同居していた家を誰が引き継ぐのか、売却するのか、そのまま住み続けるのかなどで意見が分かれ、話し合いが長期化するケースがあります。
また、「生前に父から『この家はお前に任せる』と言われていた」といった口約束があっても、遺言がなければ法的には反映されないことがあります。
想いが伝わらず誤解が生まれたケース
遺言がない場合、「なぜその人に多く財産を残したかったのか」が家族へ伝わらないことがあります。
たとえば、長年介護してくれた家族へ感謝の気持ちとして多めに財産を残したかったり、お世話になった人へ恩返しとして財産を渡したかったりしても、遺言がなければ実現できないケースがあります。
また、理由が共有されないまま話し合いが進むことで、「不公平だ」と感じる相続人が出てしまい、家族関係が悪化することもあります。
遺言によって意思を明確にしておくことは、財産を分けるためだけでなく、家族間の誤解を防ぐ意味でも重要です。
④:「まだ早い」は危険?遺言は生前にしか作れない

「遺言(いごん)は高齢になってから考えればいい」と思っている人も少なくありません。
しかし実際には、遺言は“作りたいと思った時に必ず作れるもの”ではありません。
特に、認知症などによって判断能力が低下すると、遺言を作成できなくなる可能性があります。
そのため、「まだ早い」と感じている段階から準備を始めることが大切です。
判断能力がないと遺言は作れない
遺言を作成するためには、「遺言能力」が必要です。
ここでいう判断能力とは、「自分がどのような内容の遺言を作ろうとしているのかを理解し、判断できる能力」を指します。
たとえば、
- 誰に財産を残すのか
- どの財産を相続させるのか
- 遺言を書くことでどのような効果があるのか
を理解できる状態であることが重要です。
そのため、本人が遺言の内容を理解できない状態では、有効な遺言を作成することはできません。
また、判断能力が不十分な状態で作成された場合、後から「遺言は無効ではないか」と争われる可能性もあります。
遺言は、本人の意思を法的に残すためのものだからこそ、「自分で判断できる状態」で作成することが重要です。」で作成することが重要です。
認知症になると無効リスクがある
認知症になったからといって、直ちに遺言を作れなくなるわけではありません。
ただし、遺言を作成した時点で、遺言内容を理解・判断できる能力(遺言能力)がなかったと判断された場合、その遺言は無効になる可能性があります。
実際には、
- 医師の診断内容
- 遺言作成時の受け答え
- 作成時の状況
などをもとに、「遺言作成時に判断能力があったか」が争われるケースもあります。
そのため、「そのうち作ろう」と考えているうちに、判断能力が低下し、遺言を作れなくなってしまうケースも少なくありません。こともあります。
元気なうちに準備する人が増えている
近年では、相続トラブルや認知症リスクに備えて、元気なうちから遺言を準備する人が増えています。
特に、
- 子どもがいない夫婦
- 不動産を所有している人
- 家族構成が複雑な人
などは、「まだ元気だからこそ、今のうちに整理しておきたい」と考えるケースも少なくありません。
遺言は、“死を意識したもの”というよりも、「自分の意思を家族へきちんと残すための準備」と考えることが大切です。
⑤:遺言が不要なケースはある?
「遺言(いごん)は必要だと言われても、自分にも本当に必要なのか分からない」と感じる人もいるかもしれません。
実際、すべての人に遺言が必須というわけではありません。
家族構成や財産内容によっては、遺言がなくても比較的スムーズに相続が進むケースもあります。
相続人関係が単純で財産も少ないケース
たとえば、
- 相続人が配偶者と子どもだけ
- 家族関係が良好
- 財産のほとんどが預貯金
といったケースでは、遺産分割協議(相続人同士で遺産の分け方を話し合う手続き)が大きなトラブルなくまとまることもあります。
また、「法定相続どおりで問題ない」と家族全員が考えている場合は、遺言がなくても相続手続きを進めやすいケースがあります。
それでも「不要と言い切れない」理由
一方で、「今は問題なさそう」と思っていても、将来的に状況が変わることは少なくありません。
たとえば、
- 家族関係の変化
- 財産内容の変化
- 認知症などによる判断能力の低下
によって、後から「やはり遺言を作っておけばよかった」と感じるケースもあります。
また、遺言には財産を分けるだけでなく、「自分の意思を家族へ明確に残す」という役割もあります。
そのため、「絶対に必要ない」と考えるのではなく、一度は自分の状況に当てはめて検討してみることが大切です。
⑥:遺言を作るなら自筆証書と公正証書どちらがいい?

遺言(いごん)にはいくつか種類がありますが、実際によく利用されているのは、
- 自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)
- 公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)
の2つです。
それぞれ特徴が異なるため、「手軽さ」を重視するのか、「確実性」を重視するのかによって向いている方法が変わります。
手軽さ重視なら自筆証書遺言
自筆証書遺言は、自分で作成する遺言です。
紙とペンがあれば作成できるため、費用を抑えやすく、「まずは自分で準備したい」という人に向いています。
一方で、
- 日付漏れ
- 押印漏れ
- 内容の不備
など、形式ミスによって無効になるケースもあります。
また、家族に見つからなかったり、内容をめぐって争いになったりする可能性もあるため注意が必要です。
近年では、法務局で保管できる「自筆証書遺言書保管制度(法務局が自筆証書遺言を保管してくれる制度)」を利用する人も増えています。
確実性重視なら公正証書遺言
公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する遺言です。
本人が内容を伝え、それをもとに公証人が法律に沿って作成するため、形式不備によって無効になるリスクを大きく減らせます。
また、公正証書遺言は原本が公証役場に保管されるため、自筆証書遺言と比べて、紛失や改ざん、家族に発見されないといったリスクを抑えやすい点も特徴です。
費用や証人が必要になるという負担はありますが、「確実に意思を残したい」「相続トラブルを防ぎたい」という場合には、多く利用されている方法です。
⑦:よくある質問(FAQ)
Q:遺言は普通の家庭でも必要ですか?
はい。遺言(いごん)は資産家だけのものではありません。
特に、不動産がある場合や、子どもがいない夫婦、再婚家庭などでは、一般家庭でも遺言の必要性が高くなることがあります。
Q:遺言がないと必ず揉めますか?
必ず揉めるわけではありません。
ただし、不動産がある場合や、相続人同士の関係が複雑な場合は、遺産分割協議(相続人同士で遺産の分け方を話し合う手続き)がまとまりにくくなるケースがあります。
Q:遺言は何歳くらいから考えるべきですか?
法律上は15歳から遺言を作成できます。
実際には年齢よりも、家族構成や財産内容によって必要性が変わります。近年では、認知症リスクに備えて早めに準備する人も増えています。
Q:認知症になった後でも遺言は作れますか?
認知症になった後でも、遺言内容を理解・判断できる能力(遺言能力)があれば作成できる場合があります。
ただし、判断能力が不十分な状態で作成すると、後から無効を争われる可能性があります。
Q:自分で書いた遺言でも有効ですか?
はい。法律上の要件を満たしていれば、自分で作成した「自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)」も有効です。
ただし、日付や署名漏れなど、形式不備によって無効になるケースもあります。
Q:遺言があれば相続トラブルは完全に防げますか?
遺言があることで、相続トラブルを防ぎやすくなるのは事実です。
ただし、内容が曖昧だったり、相続人への配慮が不足していたりすると、遺言があっても対立につながる可能性があります。
まとめ|「自分にはまだ早い」と思う人ほど一度考えておきたい
遺言(いごん)は、資産家だけが作るものではありません。
実際には、
- 子どもがいない夫婦
- 再婚家庭
- 不動産を所有している人
- 相続人同士の関係に不安がある人
など、一般家庭でも遺言の必要性が高いケースは少なくありません。
また、遺言がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があり、家族構成や財産内容によっては、相続トラブルにつながる可能性もあります。
さらに、遺言は判断能力がある状態でしか作成できないため、「そのうち考えよう」と思っているうちに、準備できなくなってしまうケースもあります。
遺言は、「亡くなった後のため」だけではなく、自分の意思や想いを家族へきちんと残すための準備でもあります。
「まだ早い」と感じている人ほど、一度、自分に遺言が必要かどうかを考えてみることが大切です。
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