建設業許可では、健康保険・厚生年金保険・雇用保険について、加入義務がある場合に適切に加入していることが求められます。
ただし、法人か個人事業主か、従業員を雇用しているかによって、適用される保険は異なります。
この記事では、建設業許可における社会保険の加入要件と、申請時に用意する確認資料についてわかりやすく解説します。
目次
①建設業許可で求められる社会保険の加入要件
建設業許可では、健康保険・厚生年金保険・雇用保険について、それぞれの法令上、加入義務がある場合に適切に加入していることが許可要件の一つとなっています。
社会保険への加入義務そのものが、建設業法によって新しく生じるわけではありません。
健康保険、厚生年金保険、雇用保険にはそれぞれ適用のルールがあり、事業形態や従業員の雇用状況などによって加入義務が決まります。
まずは全体像を図で確認する
建設業者が事業所・雇用主として加入する社会保険を大きく整理すると、次のようになります。
| 事業者の状況 | 健康保険 | 厚生年金保険 | 雇用保険 |
|---|---|---|---|
| 法人 | 原則加入 | 原則加入 | 対象者がいれば加入 |
| 個人事業所・常時5人以上 | 原則加入 | 原則加入 | 対象者がいれば加入 |
| 個人事業所・常時1~4人 | 原則加入義務なし | 原則加入義務なし | 対象者がいれば加入 |
| 個人事業所・従業員なし | 加入義務なし | 加入義務なし | 加入義務なし |

※この表は、建設業者が事業所・雇用主として負う加入義務を整理したものです。個人事業主本人の国民健康保険や国民年金への加入とは別に考えます。
法人の場合、健康保険・厚生年金保険は原則として適用対象になります。
個人事業所では、建設業の場合、常時使用する従業員数などによって健康保険・厚生年金保険の適用関係が変わります。
雇用保険については、事業形態ではなく、対象となる労働者を雇用しているかどうかによって適用関係を判断します。
建設業法でも適切な社会保険加入が許可要件になっている
社会保険への加入義務は、それぞれの社会保険関係法令によって決まります。
そのうえで建設業許可では、加入義務がある事業者が必要な届出を行い、適切に加入していることが求められます。
つまり、社会保険について必要な手続きを整えたうえで、建設業許可申請へ進むという関係になります。
社会保険以外にも、建設業許可では常勤役員等、営業所技術者等、財産的基礎、営業所、欠格要件など複数の条件を満たす必要があります。
建設業許可の取得条件・申請要件
②建設業許可申請で確認される社会保険の加入状況と確認資料

建設業許可申請では、営業所ごとに健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入状況を記載します。
加入している場合は、その内容を確認できる資料も準備します。
健康保険・厚生年金の加入状況と確認資料
健康保険・厚生年金保険については、事業所整理記号や事業所番号などを確認できる資料を用意します。
主な確認資料には、たとえば次のようなものがあります。
- 納入告知書納付書・領収証書
- 保険料納入告知額・領収済額通知書
- 社会保険料納入確認書
- 健康保険組合が発行する保険料の領収書類
新たに加入した直後など、通常の保険料納付資料がまだ発行されていない場合には、加入手続きを行ったことが分かる資料で対応できることがあります。
また、建設国保などの国民健康保険組合に加入し、健康保険の適用除外承認を受けている場合は、健康保険と厚生年金保険を分けて考える必要があります。
雇用保険の加入状況と確認資料
雇用保険については、雇用保険に関する労働保険番号を確認できる資料を用意します。
主な確認資料としては、
- 労働保険概算・確定保険料申告書と領収済通知書
- 労働保険料等納入通知書と領収済通知書
などがあります。
労働保険事務組合を利用している場合は、事務組合から発行される資料によって加入状況を確認することがあります。
加入義務がない場合の確認方法
たとえば、従業員を雇用していない個人事業所であれば、事業所として健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入義務はありません。
建設業許可申請では、実際の事業形態や雇用状況に応じて、各保険が加入対象なのか、適用除外なのかを判断します。
事業所整理記号や本店一括適用の扱い
健康保険・厚生年金保険・雇用保険について、法令上加入義務がない場合は、未加入ではなく適用除外となります。
たとえば、従業員を雇用していない個人事業所であれば、事業所として健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入義務はありません。
建設業許可申請では、実際の事業形態や雇用状況に応じて、各保険について加入または適用除外として記載します。
③社会保険に未加入だった場合はどうする?

社会保険に加入していない場合は、まず、その保険への加入義務があるかを確認します。
健康保険・厚生年金保険・雇用保険ではそれぞれ適用条件が異なるためです。
加入義務がない場合は適用除外として扱います。
一方、加入義務があるにもかかわらず手続きが行われていない場合は、建設業許可申請に進む前に、必要な加入手続きを進めます。
健康保険・厚生年金保険については年金事務所など、雇用保険についてはハローワークなど、それぞれの窓口で手続きを行います。
加入後は、建設業許可申請で加入状況を確認できる資料も準備しておきましょう。
なお、
- 法人化後に社会保険の手続きをしていない
- 従業員数が増えて適用関係が変わった
- どの保険について加入義務があるのか分からない
- 未加入の状態から建設業許可申請までどう進めればよいか分からない
といった場合は、申請準備の段階で整理しておくと進めやすくなります。
建設業許可については行政書士へ相談できます。社会保険・労働保険そのものの加入手続きについては、年金事務所、ハローワーク、社会保険労務士などの専門窓口と連携して進めます。
④なぜ建設業許可で社会保険加入が求められるのか
社会保険への加入義務は、建設業法によって新しく生じるものではありません。
それぞれの法令上、加入義務がある事業者は、本来適切に加入している必要があります。
そのうえで、建設業許可でも社会保険への適切な加入が要件とされていることには、建設業者に対して法令遵守をより明確に求める意味もあるように思います。
法律を扱う行政書士の立場から見ると、社会保険加入は単なる申請書類上の項目ではなく、建設業を適正に営んでいくための一つの基盤と捉えることができます。
将来的に、法令上必要な社会保険への加入が建設業界全体で自然な前提として定着すれば、こうした要件をあえて許可制度の中で設ける必要性も、少しずつ変わっていくのかもしれません。
建設業許可では、社会保険への適切な加入だけでなく、欠格要件に該当しないことや、請負契約に関する誠実性も求められます。
建設業許可の欠格要件と誠実性
⑤社会保険加入要件についてよくある質問
Q:従業員を雇用していない法人でも社会保険への加入は必要ですか?
法人は、従業員を雇用していない場合でも、健康保険・厚生年金保険の適用事業所となるのが原則です。
一方、雇用保険は対象となる労働者を雇用している場合に適用されます。
Q:個人事業主でも健康保険・厚生年金保険への加入は必要ですか?
建設業を営む個人事業所では、常時使用する従業員が5人以上の場合、原則として健康保険・厚生年金保険の適用事業所となります。
常時使用する従業員が1~4人の場合は、原則として強制適用の対象外です。
なお、これは事業所としての加入義務についての説明であり、個人事業主本人の国民健康保険・国民年金とは別です。
従業員を雇用している個人事業主が、社会保険を含む各要件を確認しながら建設業許可を取る流れはこちらで紹介しています。
個人事業主が建設業許可を取るまでの流れ
Q:一人親方の場合はどうなりますか?
従業員を雇用せず、一人で事業を営んでいる個人事業主であれば、事業所・雇用主として健康保険・厚生年金保険・雇用保険への加入義務はありません。
ただし、一人親方という名称だけではなく、実際の雇用状況によって判断します。
Q:雇用保険に加入していなくても建設業許可を受けられますか?
雇用保険の加入義務がない場合は、加入していなくても適用除外として扱われます。
加入義務がある場合は、必要な加入手続きを行ったうえで建設業許可申請を進めます。
Q:社会保険が未加入でも建設業許可を申請できますか?
まず、健康保険・厚生年金保険・雇用保険について、それぞれ加入義務があるかどうかを確認します。
加入義務がある保険について未加入の場合は、必要な手続きを行ったうえで申請準備を進めます。
「自社がどの保険の対象なのか分からない」「未加入の状態から建設業許可申請までどのように進めればよいか分からない」という場合は、申請前に行政書士へご相談ください。
Q:社会保険の加入手続中でも建設業許可を申請できますか?
社会保険へ新たに加入した直後は、通常の保険料納付資料がまだ発行されていないことがあります。
その場合は、加入手続きを行ったことが分かる資料で対応できるかを確認しながら申請準備を進めます。
Q:加入義務がない場合は何を提出しますか?
加入義務がない保険については、適用除外となります。
申請時には、事業形態や従業員の状況などに応じて各保険の適用関係を確認し、必要に応じてその内容が分かる資料を準備します。
まとめ
建設業許可では、健康保険・厚生年金保険・雇用保険について、それぞれの法令上、加入義務がある場合に適切に加入していることが求められます。
どの保険への加入が必要になるかは、法人か個人事業主か、従業員を雇用しているか、その人数や雇用状況などによって異なります。加入義務がない場合は、未加入ではなく適用除外となります。
建設業許可申請では、こうした適用関係に応じて各保険の加入状況を記載し、健康保険・厚生年金保険の事業所整理記号や、雇用保険の労働保険番号などを確認できる資料を準備します。
加入義務があるにもかかわらず手続きが済んでいない場合は、先に必要な加入手続きを進めることになります。
社会保険は建設業許可のためだけに加入するものではありませんが、建設業許可においても、事業者として必要な社会保険手続きが適切に行われていることが要件の一つになっています。
自社がどの保険の対象になるのか、加入直後でどの資料を用意すればよいのかなど、申請時の扱いに迷う場合は、建設業許可申請の前に行政書士へご相談ください。
社会保険を含む取得条件を満たせる見込みが立ったら、必要書類を準備して建設業許可の新規申請へ進みます。
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