取引先や元請会社から「建設業許可を取ってください」と求められ、何から確認すればよいのか迷っている方もいるでしょう。
建設業許可は、必要な要件や書類が多く、申請までにはいくつかの準備が必要です。取引先から許可取得の期限を指定されている場合は、早めに動くことも重要です。
建設業許可を取得するには、まず自社に必要な許可の種類を整理し、要件を満たしているか、資料で確認できるかを順番に見ていく必要があります。
この記事では、許可の種類、取得要件、必要書類、申請の流れから、取得後に必要となる届出や更新まで、順を追って解説します。
目次
①建設業許可を取得するには、まず何を確認する?
なぜ建設業許可が必要なのか
取引先や元請会社から建設業許可の取得を求められたら、まず「なぜ許可が必要になったのか」を確認します。
建設業では、軽微な建設工事のみを請け負う場合を除き、建設業許可が必要です。建築一式工事以外では、1件の請負代金が500万円未満(税込)の工事が軽微な建設工事にあたります。
今回の工事に建設業許可が必要か分からない場合は、工事内容や請負金額を確認しながら判断します。
建設業許可が必要な工事と判断方法
たとえば、これまでより大きな金額の工事を受注するようになり、軽微な建設工事の範囲を超える場合には、建設業許可が必要になります。
一方で、請負金額にかかわらず、取引先の社内方針として「建設業許可を持つ事業者に発注する」といった基準が設けられていることもあります。この場合は、許可がないことで今後の取引に影響する可能性があります。
そのため、建設業許可の取得を求められたときは、単に申請方法を調べるのではなく、まず許可が必要になった理由を整理することが大切です。
どの工事について、どの業種の許可を求められているのか
建設業許可は、建設工事の種類に応じて29業種に分かれています。
取引先や元請会社から許可の取得を求められた場合は、今後どのような工事を発注される予定なのかを確認し、その工事に対応する許可業種を整理します。
たとえば、給排水設備や空調設備などの工事を継続して請け負う予定であれば、管工事業の許可を検討することになります。
ただし、工事の呼び方だけで許可業種を判断できるとは限りません。実際にどのような工事を請け負っているのかを確認したうえで、必要な許可業種を判断することが重要です。
いつまでに取得する必要があるのか
もう一つ確認したいのが、取引先がいつまでの許可取得を求めているかです。
「次の契約までに必要」など、求められている時期によって準備できる期間は変わります。
建設業許可は、申請書を提出したその日に取得できるものではありません。取得要件を確認し、それを証明する資料を集め、申請書類を作成したうえで申請し、その後に審査があります。
また、申請しただけでは許可を取得したことにはなりません。
すでに具体的な案件が動いている場合は、取引先が求める時期と許可取得までのスケジュールを早い段階で確認しておく必要があります。
営業所技術者等として誰を置けるのかは、資格・学歴・実務経験によって判断します。詳しくは営業所技術者等(専任技術者)の要件をご覧ください。
②建設業許可を取得する前に確認したい種類と区分
建設業許可は、すべて同じ許可ではありません。取得する前に、どの業種の許可が必要なのか、営業所の所在地によってどの許可になるのか、一般建設業と特定建設業のどちらに該当するのかを整理する必要があります。
主に確認するのは、次の3点です。
- どの工事を行うか:29の業種区分
- 営業所をどこに置くか:知事許可と大臣許可
- 元請としてどの程度の下請契約をするか:一般建設業と特定建設業
この3つを先に整理しておくと、自社が取得すべき建設業許可が見えやすくなります。
29の業種区分
建設業許可は、建設工事の種類ごとに29業種に分かれています。代表的なものを含め、区分は次のとおりです。
| 業種 | 主な工事の例 |
|---|---|
| 土木工事業 | 道路、河川、造成などの土木一式工事 |
| 建築工事業 | 建物の新築・増改築などの建築一式工事 |
| 大工工事業 | 大工工事、型枠工事、造作工事 |
| 左官工事業 | 左官工事、モルタル工事など |
| とび・土工工事業 | 足場、掘削、盛土、コンクリート工事など |
| 石工事業 | 石積み、石張り工事 |
| 屋根工事業 | 瓦、スレート、金属薄板などの屋根工事 |
| 電気工事業 | 発電設備、送配電設備、照明設備など |
| 管工事業 | 給排水、空調、冷暖房、衛生設備など |
| タイル・れんが・ブロック工事業 | タイル張り、れんが積み、ブロック工事 |
| 鋼構造物工事業 | 鉄骨、橋梁、鉄塔など |
| 鉄筋工事業 | 鉄筋の加工・組立て |
| 舗装工事業 | アスファルト舗装、コンクリート舗装など |
| しゅんせつ工事業 | 河川・港湾などのしゅんせつ工事 |
| 板金工事業 | 板金加工・取付け |
| ガラス工事業 | ガラス加工・取付け |
| 塗装工事業 | 塗装、溶射、ライニングなど |
| 防水工事業 | アスファルト防水、シート防水など |
| 内装仕上工事業 | 壁、床、天井、間仕切りなどの内装工事 |
| 機械器具設置工事業 | 機械器具の組立て・設置 |
| 熱絶縁工事業 | 冷暖房設備などの断熱工事 |
| 電気通信工事業 | 通信設備、データ通信設備など |
| 造園工事業 | 植栽、公園、緑地工事など |
| さく井工事業 | 井戸、温泉掘削など |
| 建具工事業 | サッシ、ドア、シャッターなど |
| 水道施設工事業 | 取水、浄水、配水施設など |
| 消防施設工事業 | 消火設備、火災報知設備など |
| 清掃施設工事業 | ごみ処理施設、し尿処理施設など |
| 解体工事業 | 工作物の解体工事 |
ここで注意したいのは、土木一式工事業や建築一式工事業の許可を持っていても、各専門工事業の許可まで持っていることにはならない点です。軽微ではない専門工事を単独で請け負う場合は、その専門工事に対応する許可が必要です。
建設業許可は29業種に分かれており、実際に行う工事内容によって申請する業種を考える必要があります。
建設業許可29業種の選び方
知事許可と大臣許可
知事許可と大臣許可の違いは、工事を行う場所ではなく、建設業を営む営業所をどこに置くかで決まります。
一つの都道府県内だけに営業所を設けて建設業を営む場合は都道府県知事許可、複数の都道府県に営業所を設ける場合は国土交通大臣許可となります。
たとえば、本店が大田区、支店が品川区にあり、どちらでも建設業の営業を行っている場合でも、営業所は東京都内だけなので東京都知事許可です。
一方、東京都の本店に加えて、千葉県や神奈川県にも建設業を営む営業所を設ける場合は、国土交通大臣許可が必要になります。
ここでいう営業所とは、単なる登記上の本店や事務所ではなく、見積り・入札・契約など、建設工事の請負契約に関する実体的な行為を行う事務所をいいます。
また、東京都知事許可だからといって、施工できる場所が東京都内に限られるわけではありません。東京都内の営業所で締結した契約に基づく工事であれば、東京都外の現場で施工することもできます。
大田区・品川区で実際に建設業許可を取得する場合の考え方や申請準備については、地域向けガイドで詳しく解説しています。
大田区・品川区で建設業許可を取得する方法
複数の都道府県に建設業を営む営業所がある場合の国土交通大臣許可については、申請要件・営業所技術者等の配置・申請先・必要書類までこちらで詳しく解説しています。
国土交通大臣の建設業許可申請
一般建設業と特定建設業
一般建設業と特定建設業の区分は、まず自社が元請なのか、下請なのかを確認し、そのうえで元請の場合は、下請に出す契約金額がいくらになるのかで判断します。
| 自社の立場 | 下請に出す契約金額(税込) | 必要となる区分 |
|---|---|---|
| 元請 | 5,000万円未満 | 一般建設業 |
| 元請(建築一式工事) | 8,000万円未満 | 一般建設業 |
| 元請 | 5,000万円以上 | 特定建設業 |
| 元請(建築一式工事) | 8,000万円以上 | 特定建設業 |
| 下請 | 上記の基準では判定しない | 一般建設業で対応 |
特定建設業が必要になるのは、発注者から直接工事を請け負った元請が、その工事について一定額以上を下請に出す場合です。複数の下請業者に発注する場合は、1社ごとの金額ではなく、下請契約額の合計で判断します。
そのため、元請として大きな金額の工事を受注していても、自社ですべて施工するのであれば、請負金額が大きいことだけを理由に特定建設業が必要になるわけではありません。
また、同じ業種について一般建設業と特定建設業の両方の許可を受けることはできません。
一般建設業と特定建設業の違いは、工事の請負金額そのものではなく、元請として下請に出す金額で判断します。具体的な金額基準や判断例はこちらで解説しています。
一般建設業と特定建設業の違い
取得する許可の種類と区分が決まったら、次は自社が建設業許可の要件を満たしているかを確認します。
③建設業許可を取得するための要件

建設業許可では、経営体制、営業所技術者等、財産的基礎、営業所、誠実性、欠格要件、社会保険への加入状況など、複数の要件を確認します。
取得する許可の種類と区分が決まったら、次は自社が許可の要件を満たしているかを確認します。
取得条件をまとめて詳しく確認したい方は、建設業許可の取得条件・申請要件もあわせてご覧ください。
ここから、それぞれの要件を順番に見ていきます。
(1)経営業務を適正に管理できる体制があるか
建設業許可を取得するには、建設業の経営を適正に管理できる体制が必要です。
代表的なのは、常勤役員等のうち1人が、建設業について5年以上、経営業務の管理責任者としての経験を持っている場合です。
法人の役員や個人事業主として建設業を経営してきた場合などが該当します。このほかにも、一定の執行役員等としての経験や、経営業務を補佐してきた経験などによって要件を満たせる場合があります。
それぞれの経験については、役職名だけで判断するのではなく、どの期間に、どのような立場や権限で建設業の経営に携わっていたのかを確認する必要があります。
そのため、まずは代表者や役員などの経歴から、建設業の経営経験として使える期間があるかを確認します。
常勤役員等については、どの立場で何年間経営業務に携わってきたのかに加えて、その経験を申請で証明できるかも重要です。
常勤役員等の要件と経営経験の証明方法
(2)営業所技術者等を置くことができるか
建設業許可を取得するには、営業所ごとに、許可を受けようとする業種について一定の技術的な要件を満たす専任の「営業所技術者等」を置く必要があります。
一般建設業の場合、営業所技術者等の要件を満たす方法には、主に「資格」「指定学科の卒業+実務経験」「実務経験」の3つがあります。
| 確認するもの | 主な要件 |
|---|---|
| 資格 | 許可業種に対応する国家資格等を保有している |
| 大学・短期大学・高等専門学校 | 指定学科を卒業後、実務経験3年以上 |
| 高等学校・中等教育学校 | 指定学科を卒業後、実務経験5年以上 |
| 専修学校 | 指定学科を卒業後、実務経験5年以上 |
| 専修学校(専門士・高度専門士) | 指定学科を卒業後、実務経験3年以上 |
| 上記に該当しない場合 | 許可を受けようとする業種について実務経験10年以上 |
指定学科は、取得しようとする許可業種によって異なります。たとえば、機械工学、建築学、土木工学、電気工学などがあり、それぞれ対応する建設業種が定められています。
資格についても、資格を持っていれば一律に実務経験が不要になるわけではありません。資格の種類によっては、合格後に一定期間の実務経験が必要になるものがあります。
そのため、営業所技術者等の要件を確認するときは、まず保有資格を確認し、次に学歴と指定学科、それでも該当しない場合は実務経験を確認すると整理しやすくなります。明書等で指定学科を修了していることを示します。
資格が必要なのか、実務経験だけでも要件を満たせるのかなど、詳しい判断方法は営業所技術者等(専任技術者)の資格・実務経験で解説しています。
(3)財産的基礎があるか
建設業許可では、一定の財産的基礎があることも求められます。
一般建設業では、主に次のいずれかを満たしているかを確認します。
- 自己資本の額が500万円以上ある
- 500万円以上の資金調達能力がある
- 直前5年間、許可を受けて継続して営業した実績がある
たとえば、自己資本が500万円未満でも、金融機関の預金残高証明書や融資証明書によって500万円以上の資金調達能力を確認できる場合があります。
特定建設業については、一般建設業よりも厳しい財産要件が設けられています。
建設業許可では、一定の財産的基礎を備えていることも必要です。一般建設業の500万円基準については、財産的基礎の要件と判断方法で詳しく解説しています。
(4)建設業を営む営業所の要件を満たしているか
建設業許可でいう営業所は、単に会社を登記している場所であればよいわけではありません。
見積り、入札、契約など、建設工事の請負契約に関する営業活動を実際に行う場所であることが必要です。
また、事務所として使用する権原があることや、電話、机、事務台帳など営業に必要な設備があること、外部から営業所であることが分かる状態になっていることなども確認されます。営業所については、こうした実体を資料で示す必要があります。
自宅の一部を営業所として使用している場合や、他社と同じフロアを使用している場合などは、独立した営業所として認められる状態になっているかを個別に確認します。
営業所については、営業実態や使用権原、区画・設備なども確認されます。
営業所要件と自宅・賃貸物件の考え方
(5)誠実性があるか
建設業の許可を受けるには、法人、役員等、個人事業主などが、請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないことが求められます。
「不正な行為」とは、請負契約の締結や履行に際して詐欺、脅迫、横領など法律に違反する行為をいい、「不誠実な行為」とは、工事内容や工期などについて請負契約に違反する行為をいいます。
過去にこうした行為があった場合などは、誠実性の要件を満たすか個別に確認する必要があります。
(6)欠格要件に該当していないか
誠実性とは別に、建設業法で定められた欠格要件に該当していないことも必要です。
たとえば、次のような事項を確認します。
- 破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない
- 建設業許可の取消処分を受け、一定期間を経過していない
- 一定の刑罰を受け、所定の期間を経過していない
- 暴力団員等に該当しない
- 法人の場合、役員等に欠格要件へ該当する者がいない
欠格要件は会社だけを確認すればよいものではなく、法人の役員等を含めて確認する必要があります。
建設業許可では、経営経験や技術者、財産的基礎だけでなく、欠格要件に該当しないことや誠実性も確認されます。
欠格要件・誠実性の確認
(7)必要な社会保険に加入しているか
建設業許可では、健康保険・厚生年金保険・雇用保険について、加入義務がある事業者は適切に加入していることが求められます。
申請時には加入状況を記載するだけでなく、保険料の領収証書など、実際の加入状況を確認できる資料を提出します。
ここまで見てきた要件は、どれか一つだけ満たせばよいものではありません。それぞれを満たしていることに加えて、申請時にその内容を資料で確認できることが重要です。
建設業許可では、社会保険についても、法令上加入義務がある場合に適切に加入していることが求められます。」
社会保険加入要件と確認資料
④要件を満たしていても、確認資料で示せなければ許可を受けられない

建設業許可では、要件を満たしているだけでは足りません。
経営経験や実務経験などについて、申請する内容を資料で確認できることも必要です。
たとえば、「以前から建設業を経営してきた」「長年現場で働いてきた」という事実があっても、その期間や立場、工事内容を確認できる資料がなければ、その経験を申請に使えない場合があります。
そのため、許可要件を確認するときは、「自分は経験があるか」だけでなく、その経験を何の資料で示せるかまで確認することが重要です。
経営経験は、期間と立場を資料で示す
常勤役員等の要件で経営経験を使う場合は、必要な期間に、建設業の経営にどのような立場で携わっていたのかを資料で示します。
たとえば、法人の役員としての経験を使う場合は、登記事項証明書などによって役員であった期間を確認します。個人事業主としての経験を使う場合は、確定申告書などが確認資料になります。
さらに、その期間に建設業を営んでいたことについては、契約書、注文書、請求書などの資料によって示します。
つまり、確認するのは「その立場にあったこと」と「その期間に建設業を営んでいたこと」の両方です。
実務経験は、年数だけでなく内容も資料で示す
営業所技術者等の要件を実務経験で満たす場合は、「10年以上現場をやってきた」という説明だけでは足りません。
必要なのは、許可を受けようとする業種について、必要な期間、実際にその工事に携わっていたことを資料で示すことです。
そのため、実務経験証明書を作成するだけでなく、その期間の工事実績を裏付ける契約書、注文書、請求書などの確認資料が必要になります。
ここで重要なのは、単に建設業界で働いていた年数ではなく、申請する業種に対応する実務経験を示せるかという点です。
過去の資料が残っているかを早めに確認する
新規申請では、過去の経営経験や実務経験を資料で示す必要があります。
申請する人の経歴や要件の満たし方によっては、5年、場合によっては10年前までさかのぼって資料をそろえる必要があります。
そのため、契約書、注文書、請求書などの過去資料がどの程度残っているかは、早い段階で確認しておくことが重要です。
長く建設業を続けていても、必要な期間の資料が年度ごとに整理されているとは限りません。以前勤務していた会社での経験を使う場合は、自社だけでは必要な資料をそろえられないこともあります。
申請書を作り始める前に、どの要件について、何年分の資料が必要で、その資料が手元にあるかを整理しておくと、その後の準備が進めやすくなります。
⑤東京都知事許可を取得するまでの流れ
建設業許可の新規申請は、いきなり申請書を作成するのではなく、取得する許可を決め、要件と確認資料を整理してから申請へ進みます。

全体の流れは次のとおりです。
まず、どの許可を取得するのかを整理します。
確認するのは、主に次の3点です。
- どの業種の許可を取るのか
- 知事許可と大臣許可のどちらになるのか
- 一般建設業と特定建設業のどちらになるのか
ここが決まらないと、次に確認する要件や必要書類も定まりません。
取得する許可が決まったら、建設業許可の要件を満たしているかを確認します。
常勤役員等、営業所技術者等、財産的基礎、営業所、誠実性、欠格要件、社会保険への加入状況などを順番に確認します。
要件を満たしていることを確認できたら、それを証明する資料を集めます。
特に、経営経験や実務経験を使って要件を満たす場合は、過去の契約書、注文書、請求書などが必要になることがあります。
申請する人の経歴によっては、数年前までさかのぼって資料をそろえる必要があります。
必要な資料がそろったら、建設業許可申請書や添付書類を作成します。
申請書に記載する経歴や工事内容と、確認資料の内容が一致していることも確認します。
申請書類と確認資料をそろえて、東京都へ申請します。
東京都知事許可の申請先は、東京都都市整備局市街地建築部建設業課です。
申請が受け付けられると、提出した申請書類や確認資料をもとに審査が行われます。
必要に応じて追加の確認や資料提出を求められることもあるため、申請後も対応が必要になる場合があります。
審査を経て許可されると、主たる営業所へ許可通知書が送付されます。
東京都知事許可の標準処理期間は、申請受付後25日です。ただし、この期間には申請前の要件確認、過去資料の収集、申請書類の作成にかかる時間は含まれません。
そのため、取引先から許可取得の期限を示されている場合は、審査期間だけを見るのではなく、STEP1〜4の準備にかかる時間も見込んで進めることが重要です。
新規申請の必要書類や料金、申請から許可までの流れを詳しく確認したい方は、こちらの記事をご覧ください。
東京都知事・一般建設業の新規許可申請
⑥大田区で多い業種を例に見る注意点

当事務所が所在する大田区では、管工事業、電気工事業、とび・土工・コンクリート工事業の事業者が多く、当事務所でも建設業許可に関するご相談が多い業種です。
ここでは、この3業種を例に、許可取得の際に確認しておきたいポイントを見ていきます。
管工事業
管工事業には、冷暖房設備、冷凍冷蔵設備、空気調和設備、給排水・給湯設備、厨房設備、衛生設備、ガス管配管、ダクトなどの工事が含まれます。
「設備工事」という呼び方だけで判断するのではなく、実際にどのような設備を設置・施工しているのかを確認することが重要です。
電気工事業
電気工事業には、発電設備、送配電設備、引込線、変電設備、構内電気設備、照明設備などの工事が含まれます。
電気工事業で注意したいのは、建設業許可だけで手続が完結するとは限らないことです。実際に行う工事によっては、電気工事業法上の登録や届出についても確認する必要があります。
とび・土工・コンクリート工事業
とび・土工・コンクリート工事業は対象範囲が広く、足場等の仮設工事、重量物の運搬配置、くい工事、掘削、盛土、コンクリート工事、地盤改良、外構工事、アンカー工事などが含まれます。
工事の呼び方だけでは施工内容が分からないことも多いため、実際に何を施工しているのかを確認して業種を判断することが重要です。
とび・土工工事業の取得条件や、足場・外構・コンクリート・重量物・あと施工アンカーなど対象となる工事については、こちらで詳しく解説しています。
とび・土工工事業の建設業許可
工事の呼び方だけで許可業種を決めない
実務では、普段使っている工事名と、建設業法上の業種がそのまま一致するとは限りません。
特に次のような工事は、具体的な施工内容まで確認して判断する必要があります。
| よく使われる工事の呼び方 | 該当する可能性のある業種 | 確認したいポイント |
|---|---|---|
| 設備工事 | 管工事業、電気工事業、機械器具設置工事業など | 「設備工事」という名称だけでは業種を特定できないため、空調・給排水・電気設備・機械設置など、実際の施工内容から判断する |
| 外構工事 | とび・土工工事業、舗装工事業、タイル・れんが・ブロック工事業など | 掘削・盛土、舗装、ブロック積みなど、具体的に何を施工するかで業種が変わる |
| リフォーム工事 | 大工工事業、内装仕上工事業、管工事業、電気工事業、建具工事業など | 「リフォーム工事業」という許可業種はないため、実際に行う工事ごとに業種を確認する |
| 機械の設置工事 | 機械器具設置工事業、電気工事業、管工事業など | 機械器具設置工事に見えても、他の専門工事と重複するものは原則としてその専門工事に分類される |
| 解体工事 | 解体工事業、各専門工事業、土木工事業、建築工事業 | 建物等を壊して更地にする工事、専門工事で作ったものを解体する工事、解体を伴う新設工事などで区分が変わる |
特に機械器具設置工事や解体工事のように、工事名だけでは許可業種を判断しにくいものもあります。
オフィスのLAN・無線LAN・防犯カメラなどを施工する場合に必要となる電気通信工事業の許可について、取得条件や工事範囲を詳しく解説しています。
電気通信工事業の建設業許可
そのため、許可業種を決めるときは、会社案内や見積書に記載している名称だけで判断せず、実際にどのような工事を請け負っているのかを基準に確認することが重要です。
⑦建設業許可の取得でよくある誤解
建設業許可について調べていると、「資格があれば取れる」「申請中なら工事をしてもよい」など、誤解しやすい点があります。
ここでは、許可取得を検討するときに特に注意したいポイントを整理します。
資格があれば許可を取れる
資格は、営業所技術者等の要件を確認するうえで重要です。
ただし、建設業許可では営業所技術者等だけでなく、経営業務の管理体制、財産的基礎、営業所、誠実性、欠格要件、社会保険への加入状況なども確認されます。
そのため、対応する資格を持つ人がいるだけで、会社として建設業許可を取得できるわけではありません。
長く建設業をやっていれば経験は認められる
建設業で長く働いてきたことと、許可要件として必要な経験を示せることは別です。
経営経験であれば、必要な期間にどのような立場で建設業の経営に携わっていたのか、実務経験であれば、申請する業種の工事にどの程度携わっていたのかを資料で示す必要があります。
経験年数だけでなく、その経験を確認資料で裏付けられるかが重要です。
申請中なら許可が必要な工事も請け負える
建設業許可は、申請した時点で取得したことにはなりません。
軽微な建設工事を除き、建設業を営むには許可が必要です。許可が必要な工事については、「申請中だから大丈夫」と考えず、実際に許可を受けているかを基準に判断する必要があります。
一つ許可を取れば何でもできる、許可のない業種は何もできない
建設業許可は、業種ごとに取得します。
そのため、ある業種の許可を持っているからといって、すべての建設工事を自由に請け負えるわけではありません。許可を受けていない業種について、軽微な建設工事の範囲を超える工事を請け負う場合は、その業種の許可が必要です。
一方で、許可を持っていない業種について、すべての工事ができなくなるわけでもありません。軽微な建設工事の範囲であれば、その業種の許可を受けずに請け負うことができます。
つまり、判断するときは、「会社として建設業許可を持っているか」ではなく、「その工事に対応する業種の許可を持っているか」「持っていない場合、その工事が軽微な建設工事の範囲か」を確認します。
500万円未満になるよう契約を分ければ許可はいらない
一つの工事を複数の契約に分けても、正当な理由がない場合は、それぞれの請負代金を合計して判断します。
そのため、本来は一つの工事であるものを、建設業許可が不要となる金額に収める目的で複数の契約に分けても、それぞれを別の工事として扱えるとは限りません。
⑧建設業許可を取得すると、その後も届出・更新が続く

建設業許可は、一度取得すればそのままでよいわけではありません。
許可取得後も、毎年の決算変更届、会社や営業所などに変更があった場合の変更届、5年ごとの更新申請など、継続して必要になる手続があります。
許可を維持するためには、取得後の手続もあわせて把握しておくことが重要です。
許可取得後に必要となる決算変更届、各種変更届、更新申請などを、時系列でまとめて確認したい方はこちらをご覧ください。
建設業許可取得後に必要な手続と期限管理を見る
毎年、決算変更届を提出する
建設業許可を受けた事業者は、毎事業年度終了後、決算変更届を提出する必要があります。
提出期限は、事業年度終了後4か月以内です。
決算変更届では、工事経歴書、直前3年の各事業年度における工事施工金額、財務諸表などを提出します。
税務申告とは別の手続なので、決算が終わったら建設業許可の届出も必要になることを忘れないようにします。
決算変更届で提出する書類や料金、手続の進め方を詳しく確認したい方は、こちらの記事をご覧ください。
東京都知事・一般建設業の決算変更届
会社や営業所などに変更があったら届出をする
許可取得後に会社の情報や許可要件に関わる事項が変わった場合は、変更届が必要になることがあります。
たとえば、次のような変更です。
- 商号や名称
- 営業所の所在地
- 役員等
- 資本金
- 常勤役員等
- 営業所技術者等
変更内容によって提出期限や必要書類が異なるため、変更があった時点で確認することが重要です。
特に、常勤役員等や営業所技術者等の変更は、許可要件そのものに関わるため注意が必要です。
所在地、役員、資本金、営業所、常勤役員等、営業所技術者等など、変更内容ごとの手続を詳しく確認したい方は、こちらの記事をご覧ください。
東京都知事・一般建設業の各種変更届
5年ごとに更新する
建設業許可の有効期間は5年間です。
引き続き建設業を営む場合は、有効期間が満了する前に更新申請を行います。
更新申請は、許可の有効期間が満了する日の30日前までに行う必要があります。
また、更新申請をしていても、決算変更届や必要な変更届が提出されていない場合は、その整理が必要になることがあります。
期限までに更新申請を行い、申請が受理されていれば、審査中に現在の許可の有効期間が満了しても、更新について処分がされるまでは従前の許可が有効とされます。
許可取得後は、毎年の届出と5年ごとの更新を前提に、期限管理をしていくことが大切です。
更新前に確認する項目や必要書類、更新期限について詳しく確認したい方は、こちらの記事をご覧ください。
東京都知事・一般建設業の更新申請
⑨建設業許可の取得を自分で進める場合に確認したいこと

建設業許可は、自分で申請することもできます。
ただし、新規申請では、制度を調べるだけでなく、自社がどの要件を満たしているのかを整理し、それを確認できる資料を集め、申請書類を作成する必要があります。
自分で進める場合は、申請手数料だけでなく、準備にかかる時間や取引先から求められている期限も含めて考えておくことが大切です。
制度を調べ、資料をそろえ、申請書を作る時間が必要になる
建設業許可の新規申請では、取得する許可の種類を整理し、許可要件を確認したうえで、必要な資料を集めて申請書類を作成します。
特に経営経験や実務経験を使う場合は、過去の契約書、注文書、請求書などを確認しながら、必要な期間の経験を示せるかを整理する必要があります。
申請する人の経歴によっては、5年、場合によっては10年前までさかのぼって資料を確認することもあります。
そのため、自分で申請する場合は、申請書を作る時間だけでなく、要件の確認や資料収集にかかる時間も見込んでおく必要があります。
取引先から求められた期限も考える
取引先や元請会社から許可取得を求められている場合は、自分で申請できるかどうかだけでなく、「いつまでに取得する必要があるのか」も重要です。
建設業許可は、申請前の準備に加えて、申請後の審査にも時間がかかります。
必要な資料がなかなか見つからなかったり、要件の確認に時間がかかったりすると、その分だけ申請時期も後ろにずれます。
具体的な案件や契約の予定がある場合は、許可が必要になる時期から逆算して準備することが大切です。
新規申請は、何度も経験する手続ではない
決算や税務申告のように毎年行う手続と違い、建設業許可の新規申請は、通常は何度も経験する手続ではありません。
そのため、自分で進める場合は、今回の申請のために制度や書類の作り方を一から確認することになります。
自社で対応する時間と、行政書士へ依頼する場合の費用を比べて、どちらが自社に合っているかを判断するとよいでしょう。
特に、取引先から取得期限を示されている場合や、過去の経験をどの資料で証明すればよいか判断しにくい場合は、早めに専門家へ相談する方法もあります。
⑩ 建設業許可の取得に関するよくある質問
建設業許可の取得を検討している方から、よくある質問をまとめます。
Q:個人事業主でも建設業許可を取得できますか?
個人事業主でも、建設業許可の要件を満たしていれば取得できます。
法人でなければ取得できない制度ではありません。ただし、経営業務を適正に管理できる体制や営業所技術者等、財産的基礎などの要件を満たし、それを必要な資料で確認できることが必要です。
Q:東京都知事許可でも東京都外の工事を請け負えますか?
請け負えます。
知事許可と大臣許可の区分は、工事を行う場所ではなく、建設業を営む営業所の所在地によって決まります。
そのため、東京都知事許可を受けている事業者でも、東京都外の現場で工事を行うことができます。
Q:申請してからどのくらいで許可を取得できますか?
東京都知事許可の新規申請では、申請受付後に審査期間があります。
ただし、実際に許可を取得するまでの期間は、審査期間だけでは決まりません。申請前に、取得する許可の整理、要件確認、過去資料の収集、申請書類の作成などが必要です。
特に経営経験や実務経験を資料で示す場合は、資料収集に時間がかかることがあります。
Q:どの段階で行政書士に相談すればよいですか?
取得する許可や要件が整理できてからでなければ、行政書士に相談できないわけではありません。
「取引先から許可を取るように言われた」「どの業種の許可が必要か分からない」「自分の経験で要件を満たせるか確認したい」といった段階でも相談できます。
また、必要な資料がすべてそろっていなくても問題ありません。過去の契約書や注文書、請求書などが一部しか残っていない場合でも、まず手元にある資料を確認し、どの資料で要件を示せるかを整理していきます。
特に取得期限が決まっている場合は、資料をすべて集めてからではなく、早い段階でスケジュールを確認しておくと進めやすくなります。
まとめ|建設業許可を取得するには、順番に確認していくことが大切
建設業許可を取得するには、まず自社に必要な許可の種類を整理し、そのうえで許可要件を満たしているか、必要な資料で確認できるかを順番に見ていく必要があります。
申請書を作成することだけが取得方法ではありません。どの業種の許可が必要なのか、知事許可と大臣許可のどちらになるのか、一般建設業と特定建設業のどちらに該当するのかを整理し、経営体制や営業所技術者等、財産的基礎などの要件を確認することが重要です。
また、経営経験や実務経験を使う場合は、過去の契約書、注文書、請求書などをさかのぼって確認することもあります。
取引先や元請会社から取得期限を示されている場合は、審査期間だけでなく、申請前の準備にかかる時間も含めて早めに進めることが大切です。
建設業許可を取得した後も、毎年の決算変更届、変更があった場合の届出、5年ごとの更新が続きます。取得時だけでなく、その後の維持まで含めて考えておきましょう。
建設業許可の新規申請、更新、決算変更届、各種変更届までの手続をまとめて確認したい方は、「建設業許可の申請・更新・各種手続」をご覧ください。
補足|なぜ建設業には許可制度があるのか
建設業許可制度は、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促すために設けられています。
建設工事は、完成後すぐには不具合が分からないこともあり、施工不良が発生した場合には発注者や利用者に大きな影響を与えることがあります。
そのため、一定規模以上の建設工事を請け負う事業者については、経営体制、技術者、財産的基礎、誠実性などの要件を満たしているかを確認したうえで、建設業を営むことが求められています。
また、許可を取得した後も、決算変更届や各種変更届、5年ごとの更新が必要です。
これは、一度許可を取得した時点だけでなく、その後も建設業者の経営状況や許可要件に関する情報を継続的に確認していく仕組みになっているためです。
建設業許可は、単に工事を請け負うための手続ではなく、建設業者の資質を一定水準以上に保ち、発注者を保護するための制度として位置づけられています。


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