建設業許可には、「一般建設業」と「特定建設業」という区分があります。
この違いについて、「工事金額が大きければ特定建設業が必要になる」と考えられがちですが、実際はそうではありません。
この記事では、一般建設業と特定建設業の違いと、特定建設業が必要になる条件を分かりやすく解説します。
目次
① なぜ一般建設業と特定建設業に分かれているのか
建設業許可が一般建設業と特定建設業に分かれているのは、単に工事の規模を分類するためではありません。
特定建設業は、一定規模以上の下請契約を伴う工事で、下請業者を保護し、適正な施工体制を確保するために設けられている制度です。
建設業許可には、一般・特定の区分以外にも、許可業種や知事許可・大臣許可などの区分があります。建設業許可全体の仕組みはこちらで解説しています。
建設業許可の全体像
特定建設業は下請業者を保護するための制度
元請業者が多数の下請業者へ工事を発注する場合、元請業者の経営状態や施工管理の状況は、下請業者にも大きく影響します。
そのため、一定規模以上の下請契約を行う元請業者には、一般建設業より高い責任が求められます。
特定建設業は、元請業者の経営悪化や施工体制の不備による影響が下請業者へ広がることを防ぎ、下請業者を保護しながら、工事全体を適正に進めるための制度です。

特定建設業では財務面・技術面の要件が厳しくなる
特定建設業では、一定規模以上の下請契約を行う元請業者として、安定した経営と適切な施工体制を維持できることが求められます。
そのため、一般建設業と比べて、営業所技術者等や財産的基礎について、より厳しい要件が設けられています。
財産的基礎では、自己資本や資本金、流動比率など複数の基準があり、営業所技術者等についても、一般建設業より高い資格や経験が求められる場合があります。
具体的な要件の違いについては後ほど整理し、次のセクションでは、どのような場合に特定建設業が必要になるのかを、元請・下請の立場や下請発注額から見ていきます。
② 特定建設業が必要になる条件と金額基準
特定建設業が必要かどうかは、元請として受注した工事について、下請に出す金額で判断します。
自社が受注した工事の請負金額そのものではなく、元請・下請の立場、工事の種類、下請契約の合計額を順に見ていきます。
| 立場 | 業種 | 下請に出す金額 | 特定建設業 | 一般建設業 |
|---|---|---|---|---|
| 元請 | 建築一式工事以外 | 5,000万円未満 | – | 該当 |
| 元請 | 建築一式工事以外 | 5,000万円以上 | 該当 | – |
| 元請 | 建築一式工事 | 8,000万円未満 | – | 該当 |
| 元請 | 建築一式工事 | 8,000万円以上 | 該当 | – |
| 元請 | 全業種 | すべて自社で施工 | – | 該当 |
| 下請 | 全業種 | 問わない | – | 原則こちら |
※下請として工事を受注する場合は、その受注金額だけで特定建設業が必要になるわけではありません。

元請として工事を請け負う場合に判断する
特定建設業の金額基準が問題になるのは、発注者から直接工事を請け負った元請業者です。
東京都の公共工事を自社で直接受注する場合も、自社が発注者と直接契約する元請になります。東京都発注の工事へ入札するために必要な資格や条件については、東京都の公共工事へ直接入札するための入札参加資格をご覧ください。
元請として受注した工事の全部または一部を下請へ発注し、その下請契約の合計額が基準以上になる場合に、特定建設業が必要になります。
反対に、元請として受注していても、工事をすべて自社で施工する場合は、下請発注額は0円です。この場合、請負金額が大きいという理由だけで特定建設業になるわけではありません。
下請として受注する場合はこの基準で判断しない
下請として工事を受注する場合は、その受注金額だけで特定建設業が必要になるわけではありません。
特定建設業の金額基準は、元請業者が下請へいくら発注するかを見るためのものです。
そのため、まずは自社がその工事で元請なのか下請なのかを分けて考える必要があります。
建築一式工事以外は5,000万円が基準
建築一式工事以外では、元請として受注した工事について、下請契約の合計額が5,000万円以上になる場合に特定建設業が必要です。
5,000万円未満であれば、この金額基準では一般建設業の範囲になります。
建築一式工事は8,000万円が基準
建築一式工事では、下請契約の合計額が8,000万円以上になる場合に特定建設業が必要です。
建築一式工事だけ基準額が異なるため、工事内容を分けて判断する必要があります。
複数の下請会社に分けても合計額で判断する
下請発注額は、1社ごとの契約金額ではなく、その工事について締結する下請契約の合計額で判断します。
複数の下請会社へ発注している場合でも、それぞれの契約額を合計して基準額を超えるかどうかを見ます。
契約変更で基準額を超える場合は変更契約前に切り替える
当初の下請契約では基準額を下回っていても、追加工事などによる契約変更で下請発注額が増えることがあります。
契約変更後に下請契約の合計額が基準以上になる場合は、その変更契約を締結する前に特定建設業へ切り替える必要があります。
そのため、当初の下請発注額だけでなく、追加工事や設計変更によって金額が増える可能性も見ておくことが重要です。
③ ケース別に一般建設業・特定建設業を判断する
ここでは、前のセクションで見た基準を実際の工事に当てはめてみます。

ポイントは、受注金額そのものではなく、元請か下請か、建築一式工事かそれ以外か、下請発注額がいくらかです。
| ケース | 判断 |
|---|---|
| 6,000万円の内装仕上工事を元請で受注し、すべて自社施工 | 一般建設業 |
| 8,000万円の電気工事を元請で受注し、4,000万円を下請へ発注 | 一般建設業 |
| 8,000万円の電気工事を元請で受注し、6,000万円を下請へ発注 | 特定建設業 |
| 1億円の工事を下請として受注 | 受注額だけでは特定建設業にならない |
| 2億円の建築一式工事を元請で受注し、9,000万円を下請へ発注 | 特定建設業 |
6,000万円の内装仕上工事をすべて自社で施工する場合
延床1,000㎡程度の大型物販店舗で、軽量鉄骨下地、石こうボード、天井、壁、床などの内装仕上工事を6,000万円で元請受注し、自社の職人だけですべて施工するケースです。
この場合、下請発注額は0円です。
工事の請負金額は6,000万円ですが、受注金額が大きいという理由だけで特定建設業が必要になるわけではありません。
このケースでは一般建設業で対応できます。
同じ8,000万円の電気工事でも下請発注額で判断が分かれる
工場や物流施設の電気設備改修工事を、元請として8,000万円で受注したケースを考えます。
下請への発注額が4,000万円であれば、建築一式工事以外の5,000万円基準を下回るため、一般建設業の範囲です。
一方、同じ8,000万円の工事でも、下請への発注額が6,000万円になる場合は、5,000万円以上となるため特定建設業が必要です。
つまり、同じ金額の工事を受注しても、下請発注額によって一般建設業と特定建設業の判断が変わります。
下請として1億円の工事を受注する場合
一次下請として1億円の工事を受注した場合でも、その受注金額だけを理由に特定建設業が必要になるわけではありません。
特定建設業の金額基準は、発注者から直接工事を請け負った元請業者が、下請へいくら発注するかを見るための基準です。
そのため、「1億円の工事を受注したから特定建設業」という判断にはなりません。
2億円の建築一式工事で9,000万円を下請に出す場合
2億円の建物新築工事を元請として受注し、基礎工事、電気工事、管工事、内装工事などを複数の下請会社へ発注し、その合計額が9,000万円になるケースです。
建築一式工事では、下請契約の合計額が8,000万円以上になると特定建設業が必要です。
このケースでは9,000万円を下請に出すため、特定建設業の許可が必要になります。
このように、一般建設業か特定建設業かを判断するときは、工事全体の請負金額だけを見るのではなく、実際の受注形態と下請発注額を当てはめて考えることが大切です。
④ 一般建設業と特定建設業では取得要件も一部異なる
一般建設業と特定建設業では、許可を受けるための要件がすべて違うわけではありません。
常勤役員等、誠実性、欠格要件、社会保険、営業所などは共通して確認されます。
一方で、営業所技術者等と財産的基礎については、特定建設業の方が厳しい要件が設けられています。
まずは違いを表で見てみましょう。
| 要件 | 一般建設業 | 特定建設業 |
|---|---|---|
| 常勤役員等 | 共通 | 共通 |
| 誠実性 | 共通 | 共通 |
| 欠格要件 | 共通 | 共通 |
| 社会保険 | 共通 | 共通 |
| 営業所 | 共通 | 共通 |
| 営業所技術者等 | 一般建設業の要件 | より厳しい資格・経験要件 |
| 財産的基礎 | 500万円以上の自己資本など | 資本金・自己資本・流動比率・欠損比率のすべてを満たす |

常勤役員等、営業所技術者等、財産的基礎、営業所、社会保険など、建設業許可に共通する取得条件についてはこちらで詳しく解説しています。
建設業許可の取得条件
営業所技術者等の要件がより厳しくなる
一般建設業と特定建設業では、営業所技術者等になれる条件が異なります。
さらに特定建設業では、許可を受ける業種が指定建設業7業種に該当するかどうかによっても要件が変わります。
指定建設業に該当するのは、次の7業種です。
- 土木工事業
- 建築工事業
- 電気工事業
- 管工事業
- 鋼構造物工事業
- 舗装工事業
- 造園工事業
主な違いを整理すると、次のようになります。
| 営業所技術者等になる方法 | 一般建設業 | 特定建設業・指定建設業以外 | 特定建設業・指定建設業7業種 |
|---|---|---|---|
| 資格で満たす | 対象業種に対応する国家資格等で満たせる。例:管工事業なら2級管工事施工管理技士など | 特定建設業に対応する資格で満たす。または、一般建設業側の要件を満たしたうえで指導監督的実務経験による方法を使える場合がある | 原則として対象業種に対応する1級国家資格等が必要。例:管工事業なら1級管工事施工管理技士、電気工事業なら1級電気工事施工管理技士など |
| 指定学科卒業+実務経験 | 指定学科を卒業し、所定の実務経験があれば満たせる。例:大学・高専卒は3年以上、高校等卒は5年以上の実務経験 | 一般建設業側の要件を満たしたうえで、さらに2年以上の指導監督的実務経験があれば対象になり得る | 学歴と実務経験だけでは満たせない。原則として1級国家資格等が必要 |
| 資格なし・指定学科卒業なし+実務経験 | 原則として10年以上の実務経験があれば満たせる | 一般建設業側の実務経験要件を満たしたうえで、さらに2年以上の指導監督的実務経験があれば対象になり得る | 10年以上の実務経験だけでは満たせない。原則として1級国家資格等が必要 |
この表で押さえておきたいのは、一般建設業で営業所技術者等になれている人が、そのまま特定建設業でも営業所技術者等になれるとは限らないという点です。
指定建設業以外の業種では、一般建設業の営業所技術者等になれる要件を満たしたうえで、一定の指導監督的実務経験を加えることで、特定建設業の要件を満たせる場合があります。
一方、指定建設業7業種では、この経験による方法は使えません。原則として、対象業種に対応する1級施工管理技士などの国家資格等が必要です。
たとえば管工事業では、一般建設業なら2級管工事施工管理技士などでも営業所技術者等になれますが、特定建設業では指定建設業に該当するため、原則として1級管工事施工管理技士など、特定建設業側の資格要件を満たす必要があります。
そのため、一般建設業から特定建設業への切替を考える場合は、現在配置している営業所技術者等について、保有資格だけでなく、許可業種が指定建設業に該当するか、実務経験による方法を使えるかまで見ておく必要があります。
財産的基礎の要件も厳しくなる
一般建設業では、自己資本が500万円以上あることや、500万円以上の資金調達能力があることなど、所定の条件のいずれかを満たせば財産的基礎の要件を満たします。
これに対して、特定建設業では次のすべてを満たす必要があります。
| 特定建設業の財産的基礎 | 基準 |
|---|---|
| 欠損額 | 資本金の20%以下 |
| 流動比率 | 75%以上 |
| 資本金 | 2,000万円以上 |
| 自己資本 | 4,000万円以上 |
特定建設業では大きな下請契約を伴う工事を扱うため、一般建設業よりも高い財務的な安定性が求められます。
そのため、一般建設業から特定建設業へ切り替える場合は、技術者だけでなく、直前の決算内容や資本金なども確認しておく必要があります。
一般建設業で営業所技術者等になるための資格・学歴・実務経験などの基本要件については、こちらで詳しく解説しています。
営業所技術者等の要件
一般建設業で求められる500万円の財産要件や、法人・個人事業主ごとの考え方についてはこちらで詳しく解説しています。
建設業許可の財産的基礎
一般建設業から特定建設業へ切り替える場合
現在、一般建設業の許可を受けている事業者が、特定建設業を新たに取得する場合は、単に下請発注額の基準を超えるだけでは足りません。
特定建設業として求められる営業所技術者等と財産的基礎の要件を満たしたうえで、必要な申請を行う必要があります。
そのため、今後の受注予定で特定建設業が必要になりそうな場合は、下請発注額だけでなく、技術者の資格・経験と財務内容もあわせて早めに確認しておくことが重要です。
一般建設業から特定建設業を取得する場合は、特定建設業側の要件を満たしたうえで「般・特新規」の申請を行います。必要書類や申請の流れはこちらで詳しく解説しています。
一般建設業から特定建設業へ切り替える般・特新規を見る
⑤ 特定建設業に該当するかの確認フロー

特定建設業に該当するか迷った場合は、次の順番で確認すると判断しやすくなります。
いいえ → その受注金額だけで特定建設業にはなりません。
はい → STEP.2へ
いいえ → この工事では特定建設業は不要です。
はい → STEP.3へ
いいえ → 下請契約の合計額を確認します。STEP.4へ
はい → 建築一式工事の基準額で確認します。STEP.4へ
建築一式工事以外で5,000万円以上 → 特定建設業に該当します。
建築一式工事で8,000万円以上 → 特定建設業に該当します。
それ未満 → 一般建設業の範囲ですが、STEP.5で確認してください。
超える場合 → 基準額を超える変更契約を締結する前に特定建設業への切替えが必要です。
超えない場合→ 一般建設業の範囲
⑥ 一般建設業と特定建設業についてよくある質問
Q:一般建設業で1億円の工事を請け負えますか?
はい。請負金額が1億円だからという理由だけで、特定建設業が必要になるわけではありません。
一般建設業か特定建設業かは、元請として受注した工事について、下請に出す金額で判断します。
たとえば、1億円の工事を元請として受注しても、すべて自社で施工する場合や、下請発注額が基準未満であれば、この基準では一般建設業の範囲です。
Q:下請として1億円の工事を受注する場合は特定建設業が必要ですか?
いいえ。下請として受注した工事の金額だけを理由に、特定建設業が必要になるわけではありません。
特定建設業の金額基準は、発注者から直接工事を請け負った元請業者が、下請へいくら発注するかを見るものです。
そのため、「1億円を受注した」という金額だけでは判断しません。
Q:下請に出す金額が基準を超えたら、その工事だけ特定建設業にできますか?
いいえ。特定建設業は、工事ごとに一般建設業と切り替えて使う許可ではありません。
同じ建設業種について、一般建設業と特定建設業の両方の許可を受けることもできません。
元請として予定している下請発注額が基準以上になる場合は、その工事について必要な契約を締結する前に、特定建設業の許可を受けられる体制を整えておく必要があります。
Q:複数の下請会社に分ければ、特定建設業は不要になりますか?
いいえ。
特定建設業の金額基準は、1社ごとの下請契約額ではなく、その工事について下請に出す契約金額の合計で判断します。
たとえば、建築一式工事以外で3社に2,000万円ずつ発注する場合、1社あたりは5,000万円未満でも、合計は6,000万円になるため、特定建設業が必要です。
Q:建築一式工事だけ基準額が違うのはなぜですか?
建築一式工事は、建物の新築や増改築などについて、元請として総合的に企画・指導・調整しながら施工する工事です。
特定建設業の判定では、建築一式工事は8,000万円、それ以外の建設工事は5,000万円と、法令上それぞれ異なる基準額が設けられています。
Q:一般建設業から特定建設業へ変更できますか?
はい。一般建設業から特定建設業へ切り替えることはできます。
特定建設業の要件を満たしたうえで、般・特新規の申請を行います。特定建設業が必要になる工事を予定している場合は、契約前に申請準備を進めておく必要があります。
⑦ まとめ|一般か特定かは「元請として下請に出す金額」で判断する
一般建設業と特定建設業の違いは、単純に工事金額の大きさで決まるものではありません。
判断するときは、まず自社がその工事を元請として受注するのかを見ます。そのうえで、下請に出す金額がいくらになるのか、建築一式工事かそれ以外かを分けて考えます。
建築一式工事以外では下請契約の合計額が5,000万円以上、建築一式工事では8,000万円以上になる場合に、特定建設業が必要です。
一方で、高額な工事を受注していても、すべて自社で施工する場合や、下請として受注する場合は、その受注金額だけで特定建設業になるわけではありません。
また、特定建設業では、営業所技術者等や財産的基礎について一般建設業より厳しい要件が設けられています。
今後、大きな工事を元請として受注する予定がある場合は、工事金額だけを見るのではなく、下請発注額まで含めて許可区分を判断することが重要です。

