塗装工事業の建設業許可を取得するには、必要な条件や工事の範囲を正しく理解することが大切です。
建設業許可には、経営経験や技術者の資格・実務経験などの要件があり、実際に請け負う工事の内容によっても確認すべき点が異なるためです。
例えば、外壁塗装や屋根塗装を行う事業者では、塗装技能士の資格や実務経験のほか、足場工事・防水工事との関係が問題になることがあります。
この記事では、塗装工事業の建設業許可に必要な条件や資格、対象となる工事の範囲について解説します。
目次
① 塗装工事業の建設業許可を取得するための条件
塗装工事業の建設業許可を取得するには、経営管理体制や営業所技術者等の配置、財産的基礎など、建設業法で定められた要件を満たす必要があります。
東京都知事の一般建設業許可を取得する場合、主な要件は次のとおりです。
| 要件 | 主な内容 |
|---|---|
| 経営業務の管理体制 | 建設業の経営経験を持つ常勤役員等を配置するなど、適切な経営管理体制を整えていること |
| 営業所技術者等 | 塗装工事業に対応する資格や実務経験などの要件を満たす人を、営業所ごとに配置すること |
| 誠実性 | 請負契約の締結や履行に関して、不正・不誠実な行為をするおそれがないこと |
| 財産的基礎 | 自己資本500万円以上など、所定の財産的要件を満たすこと |
| 欠格要件 | 建設業法で定められた欠格要件に該当しないこと |
このほか、東京都内に建設業の営業所があることや、加入義務のある社会保険への適切な加入なども確認されます。
外壁塗装や屋根塗装を中心に行う事業者では、代表者自身の経営経験や、塗装職人としての資格・実務経験を活用できるかが、許可取得を検討する際の重要なポイントになります。
例えば、代表者が長年個人事業主として塗装工事を請け負ってきた場合でも、経営経験と技術者としての実務経験は、それぞれの要件に沿って確認する必要があります。
また、塗装技能士などの資格がなくても、一定の実務経験によって営業所技術者等の要件を満たせる場合があります。
営業所技術者等の具体的な資格や実務経験については、次のセクションで詳しく解説します。
経営業務の管理体制や財産的基礎など、建設業許可に共通する要件については、建設業許可の取得条件を解説した記事で詳しく紹介しています。
② 塗装工事業の営業所技術者等になるための要件

塗装工事業の一般建設業許可を取得するには、営業所ごとに、塗装工事業の技術要件を満たす「営業所技術者等」を配置する必要があります。
営業所技術者等になる方法は、大きく分けて、資格による方法、指定学科の学歴と実務経験を組み合わせる方法、実務経験による方法の3つです。
資格がある場合
塗装工事業では、次のような資格を営業所技術者等の要件に利用できます。
| 資格 | 主な要件 |
|---|---|
| 1級建築施工管理技士 | 資格によって要件を満たせる |
| 2級建築施工管理技士(仕上げ) | 資格によって要件を満たせる |
| 1級土木施工管理技士 | 資格によって要件を満たせる |
| 2級土木施工管理技士(鋼構造物塗装) | 資格によって要件を満たせる |
| 1級塗装技能士 | 資格によって要件を満たせる |
| 2級塗装技能士 | 合格後、原則として3年以上の塗装工事の実務経験が必要 |
※2級塗装技能士については、資格の取得時期によって必要な実務経験年数が異なる場合があります。
このほかにも、対象となる資格があります。
外壁塗装や屋根塗装を中心に行う事業者では、特に塗装技能士の資格を持っているか、何級を取得しているかが確認ポイントになります。
なお、2級塗装技能士については、資格を取得しただけで直ちに要件を満たすわけではありません。資格取得後の実務経験も確認する必要があります。
指定学科を卒業している場合
塗装工事業では、指定学科を卒業し、一定期間の塗装工事の実務経験がある場合にも、営業所技術者等の要件を満たせます。
| 学歴 | 必要な実務経験 |
|---|---|
| 大学・短期大学・高等専門学校などの指定学科を卒業 | 卒業後3年以上 |
| 専修学校の指定学科を卒業し、専門士・高度専門士を称する場合 | 卒業後3年以上 |
| 専修学校の指定学科を卒業した場合 | 卒業後5年以上 |
| 高等学校・中等教育学校などの指定学科を卒業 | 卒業後5年以上 |
塗装工事業の指定学科には、土木工学または建築学に関する学科が該当します。
ただし、学校や学科の名称だけで判断できない場合もあるため、卒業した学科が指定学科に該当するか確認することが重要です。
資格・指定学科の学歴がない場合
資格や指定学科の学歴がなくても、塗装工事について10年以上の実務経験があれば、営業所技術者等の要件を満たせる場合があります。
例えば、長年にわたって戸建住宅やアパートの外壁塗装・屋根塗装を施工してきた事業者でも、実務経験による許可取得を検討できます。
ただし、単に「塗装職人として10年以上働いている」というだけで、必ず要件を満たせるわけではありません。
許可申請では、実際に行ってきた工事の内容や期間について、契約書、注文書、請求書などの資料によって確認する必要があります。
また、外壁改修工事には、塗装工事のほかにシーリング工事や防水工事などが含まれることもあります。そのため、塗装工事業の実務経験として認められる工事かどうかも重要です。
代表者自身が営業所技術者等になる場合も、資格・実務経験の要件に加えて、営業所における常勤性などを確認する必要があります。
③ 建設業許可の「塗装工事業」に含まれる工事とは

建設業許可における塗装工事業は、塗料や塗材などを工作物に吹き付けたり、塗り付けたり、貼り付けたりする工事を行う業種です。
住宅の外壁塗装や屋根塗装だけでなく、鉄骨などの塗装工事も含まれます。
主な工事は、次のとおりです。
| 工事の種類 | 主な内容 |
|---|---|
| 外壁塗装工事 | 戸建住宅やアパート、マンションなどの外壁を塗装する工事 |
| 屋根塗装工事 | スレート屋根や金属屋根などを塗装する工事 |
| 鉄部塗装工事 | 鉄骨階段、手すり、鉄製扉などの塗装工事 |
| 鋼構造物塗装工事 | 橋梁や鉄骨構造物などの塗装工事 |
| 吹付け塗装工事 | 塗料などを吹き付けて仕上げる工事 |
外壁塗装・屋根塗装工事
戸建住宅やアパートなどの外壁・屋根を塗り替える工事は、塗装工事業の代表的な工事です。
例えば、外壁の高圧洗浄や古い塗膜の除去、下塗り・中塗り・上塗りといった工程を経て仕上げる塗装工事が該当します。
屋根についても、スレート屋根や金属屋根などに塗料を塗り、表面を保護する工事は塗装工事業に含まれます。
ただし、屋根材そのものを交換する工事や、屋根を新たに葺く工事は、塗装工事とは区別して考える必要があります。
鉄部・鉄骨などの塗装工事
塗装工事業には、住宅の外壁や屋根以外の塗装も含まれます。
例えば、アパートの外階段や手すり、鉄骨部分などの塗装工事です。
こうした工事では、さびを落とすケレン作業や下地処理を行い、さび止め塗料などを使用して仕上げることがあります。
また、橋梁などの鋼構造物を塗装する工事も、塗装工事業に該当します。
塗装前の下地処理や補修を伴う場合
外壁塗装では、塗料を塗る前に高圧洗浄やケレン、ひび割れの補修などを行うことがあります。
塗装を適切に施工するための下地処理は、塗装工事と一体として行われることがあります。
一方で、外壁の大規模な補修やシーリングの打替え、防水層の施工などは、工事内容によって別の建設業種が関係する場合があります。
そのため、「外壁改修工事」という名称だけで塗装工事業に該当すると判断するのではなく、実際の施工内容を確認することが重要です。
④ 塗装工事業の建設業許可が必要になる500万円基準

塗装工事業では、1件の請負代金が500万円(税込)以上となる工事を請け負う場合、原則として建設業許可が必要です。
戸建住宅の塗り替え工事では500万円未満で収まることもありますが、アパートやマンションの外壁塗装、複数棟をまとめた改修工事などでは、請負金額が500万円以上になることがあります。
足場代や塗料代も含めて500万円を判断する
500万円の基準は、塗装作業の施工費だけで判断するものではありません。
例えば、外壁塗装工事を足場の設置・解体まで含めて請け負う場合は、足場代や塗料代なども含めた請負代金で判断します。
| 工事費用の内訳 | 金額(税込) |
|---|---|
| 外壁・屋根塗装の施工費 | 300万円 |
| 塗料・副資材費 | 90万円 |
| 足場の設置・解体費 | 120万円 |
| 合計 | 510万円 |
この場合、塗装の施工費だけなら500万円未満ですが、請負代金の合計は510万円となるため、原則として建設業許可が必要です。
足場工事を外注する場合でも、自社が足場工事を含めて請け負っているなら、下請業者に支払う費用を除外して判断することはできません。
注文者から塗料や材料の支給を受ける場合
注文者から塗料などの材料を無償で支給される場合も注意が必要です。
建設業法上、注文者が材料を提供する場合は、その市場価格と運送費を請負代金に加えて、500万円の基準を判断します。
例えば、請負代金が450万円(税込)でも、注文者から支給された塗料の市場価格と運送費が80万円であれば、判定上の金額は530万円となります。
ただし、注文者から支給される物の内容や契約条件によって判断が必要になる場合もあるため、迷う場合は事前に許可行政庁へ確認しましょう。
一つの工事を複数の契約に分けた場合
500万円未満にするために、一つの工事を複数の契約に分けても、必ずしも許可が不要になるわけではありません。
例えば、同じ建物の外壁塗装について、塗装工事と足場工事を別契約にした場合でも、実態として一つの工事を分割して請け負っていると判断されれば、合計額で判定されることがあります。
そのため、契約書や見積書の分け方だけでなく、実際の工事内容や契約の実態を確認することが重要です。
500万円以上となる工事を受注する予定がある場合は、契約を締結する前に、必要な建設業許可を取得しておきましょう。
建設業許可が必要になる金額の考え方や、材料支給・契約分割の取扱いについては、「建設業許可が必要になる500万円基準」を解説した記事でも詳しく紹介しています。
⑤ 塗装工事業の許可だけでどこまで請け負える?
塗装工事業の建設業許可を取得しても、外壁や屋根に関係する工事をすべて請け負えるわけではありません。
外壁改修工事には、塗装工事のほかに足場工事やシーリング工事、防水工事などが含まれることがあります。
こうした工事を請け負う場合は、別業種の許可が必要な工事なのか、塗装工事に附帯する工事として対応できるのかを確認する必要があります。
別業種でも500万円未満の軽微な建設工事なら許可は不要
建設業許可は、原則として業種ごとに取得する仕組みです。
ただし、建築一式工事以外の専門工事では、1件の請負代金が500万円(税込)未満の軽微な建設工事であれば、その業種の建設業許可がなくても請け負うことができます。
例えば、塗装工事業の許可を持つ事業者が、独立した防水工事を請け負う場合でも、その防水工事が500万円未満であれば、建設業法上は防水工事業の許可を必要としません。
一方、500万円以上の防水工事を独立して請け負う場合は、原則として防水工事業の許可が必要です。
塗装工事に附帯する工事なら別業種の許可が不要な場合がある
塗装工事を施工するために必要な工事については、附帯工事として、別業種の許可がなくても一緒に請け負える場合があります。
例えば、外壁塗装に伴う足場の設置・解体や、塗装を行うために必要な下地補修などが考えられます。
ただし、同じ現場で施工する工事が、すべて附帯工事になるわけではありません。
附帯工事に該当するかどうかは、主たる工事との関係や施工目的、工事内容などから判断します。また、附帯工事を実際に施工する際には、必要に応じて主任技術者の配置などにも注意が必要です。
足場の設置・解体工事は、とび・土工工事業に該当します。足場工事の範囲や許可要件については、「とび・土工工事業の建設業許可」を解説した記事で詳しく紹介しています。
外壁塗装とシーリング・防水工事の違い

外壁塗装では、目地やサッシまわりのシーリングを打ち替えたり、ベランダの防水工事を一緒に行ったりすることがあります。
しかし、塗装工事と防水工事は、建設業許可上では別の業種です。
| 工事内容 | 関係する主な業種 |
|---|---|
| 外壁や屋根の塗り替え | 塗装工事業 |
| 外壁目地のシーリング打替え | 防水工事業 |
| ベランダのウレタン塗膜防水 | 防水工事業 |
| 外壁塗装に必要な足場の設置・解体 | とび・土工工事業 |
| 外壁のモルタル補修 | 左官工事業など |
特に注意したいのが、塗料を塗る工事と、塗膜防水を施工する工事の違いです。
どちらも液状の材料を塗り付ける作業ですが、塗装工事業か防水工事業かは、材料の名称だけでなく、施工目的や工事内容を踏まえて判断する必要があります。
例えば、外壁の美観や表面保護を目的とする塗装と、ベランダに防水層を形成する工事では、関係する業種が異なります。
外壁改修工事を一括で請け負う場合の注意点
アパートやマンションの外壁改修では、足場の設置、ひび割れ補修、シーリングの打替え、外壁塗装などをまとめて受注することがあります。
このような場合、工事全体を「外壁塗装工事」と呼んでいても、塗装工事業の許可だけで対応できるとは限りません。
例えば、シーリング工事や防水工事が塗装工事とは独立した工事として位置付けられる場合は、それぞれの業種について許可の要否を検討する必要があります。
一方、主たる塗装工事に附帯する工事として認められる場合は、別業種の許可が不要となることもあります。
そのため、見積書の工事項目だけで判断せず、実際の施工内容と主たる工事との関係を整理することが重要です。
⑥ 塗装工事業の建設業許可についてよくある質問
Q:個人事業主でも塗装工事業の建設業許可を取得できますか?
はい。個人事業主でも、経営管理体制や営業所技術者等、財産的基礎などの要件を満たせば、塗装工事業の建設業許可を取得できます。
例えば、個人で外壁塗装や屋根塗装を長年請け負ってきた場合、その経営経験や実務経験を許可申請に活用できる可能性があります。
ただし、経営経験と技術者としての実務経験は、それぞれの要件に沿って証明する必要があります。
Q:塗装技能士の資格がなくても許可を取得できますか?
はい。塗装技能士などの資格がなくても、塗装工事について原則10年以上の実務経験があれば、営業所技術者等の要件を満たせる場合があります。
また、指定学科を卒業している場合は、必要な実務経験の年数が短くなることもあります。
ただし、実務経験による申請では、経験年数だけでなく、その期間に塗装工事を行っていたことを資料で確認できるかが重要です。
Q:一人親方でも建設業許可を取得できますか?
はい。一人親方でも、建設業許可の取得は可能です。
代表者自身が経営管理体制に関する要件と営業所技術者等の要件を満たし、その他の許可要件も備えていれば、申請を検討できます。
ただし、現場作業を続けながら営業所技術者等を兼ねる場合には、営業所での常勤性や業務の実態について確認が必要です。
Q:外壁塗装と屋根塗装を両方行う場合、許可は2種類必要ですか?
通常の外壁塗装と屋根の塗り替え工事であれば、どちらも塗装工事業に該当するため、塗装工事業の許可で対応できます。
一方、屋根材の葺き替えや新設工事などは、屋根工事業に該当する場合があります。
「屋根の工事」という名称だけでなく、塗装なのか、屋根材を施工する工事なのかによって判断することが大切です。
Q:塗装工事業の許可があれば、シーリング工事も請け負えますか?
シーリング工事は、建設業許可の業種区分では防水工事業に該当します。
ただし、塗装工事に附帯する工事として認められる場合は、塗装工事業の許可で一緒に請け負えることがあります。
また、独立したシーリング工事であっても、1件の請負代金が500万円(税込)未満の軽微な建設工事であれば、建設業許可は原則として不要です。
塗装工事と同じ現場で行うという理由だけで、必ず附帯工事になるわけではない点に注意しましょう。
Q:昔の請求書や契約書が残っていなくても、実務経験を証明できますか?
実務経験を証明する資料が不足している場合でも、ほかの資料によって確認できる可能性はあります。
ただし、東京都知事許可の申請では、経験した工事の内容や期間を所定の資料で確認する必要があります。
請求書や契約書が一部しか残っていない場合は、どの期間を、どの資料で証明できるかを整理することが重要です。
資料が不足している場合の取扱いは個別の事情によって異なるため、申請前に確認しておくと安心です。

まとめ|塗装工事業の建設業許可は資格・実務経験と工事範囲の確認が重要
塗装工事業の建設業許可を取得するには、経営管理体制や営業所技術者等、財産的基礎などの要件を満たす必要があります。
外壁塗装や屋根塗装を中心に行う事業者では、特に塗装技能士などの資格や、これまでの実務経験を許可申請に活用できるかが重要なポイントです。
また、足場代や塗料代を含めた請負金額が500万円(税込)以上になる場合は、原則として建設業許可が必要です。シーリング工事や防水工事などを一緒に請け負う場合には、塗装工事業の許可で対応できる範囲も確認しておきましょう。
個人事業主や一人親方でも、必要な要件を満たせば建設業許可を取得できます。ただし、経営経験や実務経験をどの資料で証明するかは、事業者ごとに異なります。
東京都で塗装工事業の建設業許可を検討している方は、申請前に資格・経験・請負工事の内容を整理しておくことが大切です。
塗装工事業の建設業許可申請でお困りの方へ
当事務所では、東京都知事の一般建設業許可について、申請要件の確認から必要書類の整理、申請手続きまでサポートしています。
「塗装技能士の資格を使えるか知りたい」「10年の実務経験を証明できるか不安」「外壁塗装と防水工事をまとめて請け負いたい」といった場合も、まずは現在の状況をお聞かせください。
塗装工事業の建設業許可をご検討の方は、お気軽にご相談ください。
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