「遺言を書けば、自分の思い通りに財産を分けられる」
そう考えていませんか?
たしかに、遺言は相続において強い効力を持ちます。しかし、遺言があればすべて自由に決められるわけではありません。
なぜなら、法律には「遺留分」という制度があり、一定の相続人には最低限の取り分が保障されているからです。
そのため、たとえば「特定の子どもにすべての財産を遺す」といった遺言を残しても、他の相続人から遺留分侵害額請求がなされれば、遺言の内容どおりに相続が進まない可能性があります。
つまり、
遺言は優先されるが、遺留分によって制限される
これが結論です。
この仕組みを知らずに遺言を作成してしまうと、相続発生後にトラブルへ発展するリスクもあります。
この記事では、「遺言と遺留分はどちらが優先されるのか?」という疑問に対して結論からわかりやすく解説しつつ、実際に起こり得るケースや、トラブルを防ぐための具体的な対策まで詳しく紹介します。
「遺言を書こうと思っている」「できるだけ揉めない相続にしたい」と考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
① 結論:遺言は優先されるが、遺留分は無視できない
結論からいうと、遺言は相続において優先されますが、遺留分を無視することはできません。
遺言がある場合、原則としてその内容に従って遺産は分けられます。たとえば「長男にすべての財産を相続させる」といった遺言があれば、その内容が基本となります。
しかし、ここで重要なのが「遺留分」という制度です。
遺留分とは、一定の相続人(配偶者や子など)に法律上保障された最低限の取り分のことをいいます。
そのため、遺言の内容が遺留分を侵害している場合、対象となる相続人は遺留分侵害額請求を行うことができます。
この請求が行われると、たとえ遺言があったとしても、その内容どおりに財産を取得できるとは限りません。
遺言と遺留分の関係は、次の流れで理解するとわかりやすくなります。
① 遺言で財産の分け方を指定できる
遺言がある場合、原則としてその内容に従って相続が行われます。
つまり、誰にどの財産を渡すかを自由に決めることが可能です。
② 相続人全員の合意があれば、遺言と異なる分け方も可能
たとえ遺言があっても、相続人全員が納得すれば、遺産分割協議によって別の分け方をすることもできます。
③ 話し合いがまとまらない場合、遺留分が問題になる
相続人同士で合意できなかった場合、遺留分を侵害された相続人は「遺留分侵害額請求」を行うことができます。
つまりどういう関係か
遺言は相続の出発点になるが、最終的には遺留分によって調整される可能性があるという関係です。
遺言があっても遺留分は請求できる!家族関係と権利を守る正しい知識
この理解が重要な理由
「遺言を書けばすべて思い通りになる」と考えていると、
実際の相続では以下のようなズレが生じます。
- 相続人同士の話し合いで内容が変わる
- 遺留分侵害額請求によって金銭の支払いが発生する
つまり、
遺言=最終決定ではない
という点を押さえておくことが重要です。
「遺言で自由に決められるが、遺留分の範囲までは侵害できない」という関係です。
よくある誤解
「遺言を書けば、誰にでも自由に財産を渡せる」
このようなイメージを持っている方は少なくありません。
たしかに遺言を作成することで、どの財産を誰に渡すかを指定することは可能です。実際、遺言は相続において強い効力を持ち、原則としてその内容が優先されます。
しかし、ここで見落とされがちなのが「遺留分」という制度の存在です。
遺留分とは、配偶者や子などの一定の相続人に対して、法律上あらかじめ保障されている最低限の取り分のことをいいます。これは、被相続人の意思だけでは完全に排除することができない権利です。
そのため、たとえば「すべての財産を特定の相続人に相続させる」といった遺言を作成した場合でも、他の相続人の遺留分を侵害していれば、そのままでは済まない可能性があります。
具体的には、遺留分を侵害された相続人が「遺留分侵害額請求」を行うことで、不足している取り分について金銭の支払いを求めることができるのです。
つまり、遺言によって財産の分け方をある程度自由に決めることはできるものの、
遺留分の範囲を超えて完全に自由に処分することはできない
という点に注意が必要です。
実務上の重要ポイント
実際の相続では、遺言の内容そのものが無効になるわけではありません。
ただし、遺留分侵害額請求が行われた場合には、金銭の支払いなどによって調整が行われるのが一般的です。
つまり、遺言どおりに財産を取得したとしても、後から遺留分に相当する金銭の支払いを求められる可能性があります。
ここで注意が必要なのが、遺留分侵害額請求は原則として「金銭」で解決する制度であるという点です。
たとえば、遺言で「自宅不動産を長男に相続させる」とされており、他に分けられる財産がない場合でも、他の相続人から遺留分侵害額請求が認められれば、長男はその遺留分に相当する金額を現金で支払う必要があります。
不動産そのものを分けるのではなく、あくまで金銭で調整することになるため、
- 手元に十分な預貯金がない
- 不動産を売却せざるを得ない
といった事態に発展するケースも少なくありません。
もっとも、これはあくまで一例であり、必ずしもすべてのケースで支払いが発生するとは限りません。
たとえば、相続人間で合意が成立した場合や、そもそも遺留分侵害額請求が行われない場合には、遺言どおりに相続が完了することもあります。
そのため、
遺言は基本的に有効だが、そのまま実現されるかどうかは遺留分や相続人の対応によって左右される
と理解しておくことが重要です。
遺言で遺留分を侵害しないために|想いを伝え、争いを防ぐもめない相続の作り方
よって、その不足分を金銭で請求することができます。

② 遺言と遺留分の関係をわかりやすく解説
遺言と遺留分の関係を正しく理解するためには、それぞれの制度の役割を押さえておくことが重要です。
ここでは、必要なポイントに絞ってわかりやすく解説します。
遺言とは?財産の分け方を指定できる制度
遺言とは、被相続人(亡くなった方)が自分の財産を「誰に・どのように」承継させるかをあらかじめ指定しておく制度です。
遺言がある場合、原則としてその内容が優先されるため、法定相続分とは異なる分け方をすることも可能です。
たとえば、
- 特定の子どもに多くの財産を残す
- 相続人以外の人に財産を渡す(遺贈)
といったことも、遺言によって実現できます。
この「自由に決められる」という点が、遺言の大きな特徴です。
遺留分とは?一定の相続人に保障された最低限の取り分
一方で、遺留分とは、配偶者や子などの一定の相続人に対して、法律上保障された最低限の取り分のことをいいます。
これは、たとえ遺言があったとしても完全に排除することはできません。
具体的には、以下のような相続人に遺留分が認められています。
- 配偶者
- 子(またはその代襲相続人)
- 直系尊属(親など)
※兄弟姉妹には遺留分はありません。
また、遺留分の割合は相続人の構成によって異なりますが、一般的には法定相続分の2分の1(直系尊属のみの場合は3分の1)とされています。
なぜ遺留分があるのか(制度の趣旨)
遺留分は、被相続人の意思だけで特定の相続人が著しく不利益を受けることを防ぐために設けられています。
もし遺留分がなければ、
- 「すべての財産を一人に相続させる」
- 「特定の相続人には一切渡さない」
といった極端な遺言も、そのまま実現してしまいます。
しかし、それでは残された家族の生活が不安定になるおそれがあります。
そのため、法律は一定の相続人に対して最低限の取り分を保障し、相続の公平を図っているのです。
遺言と遺留分の関係まとめ
ここまでを整理すると、次のような関係になります。
- 遺言:財産の分け方を自由に指定できる
- 遺留分:その自由を一定範囲で制限するルール
つまり、
「遺言による自由」と「遺留分による制限」のバランスで相続は成り立っている
といえます。
公正証書遺言でも安心できない?遺留分で相続できないケースと具体的対策を解説
③ 遺言があっても遺留分で覆るケース
遺言を作成していても、すべてがそのとおりに実現されるとは限りません。
実際の相続では、遺留分によって遺言の内容が事実上修正されるケースも多く見られます。
ここでは、よくある具体的なケースをもとに解説します。
ケース① 特定の相続人にすべての財産を相続させる場合
たとえば、「長男にすべての財産を相続させる」という遺言を作成したケースです。
一見するとシンプルで分かりやすい内容ですが、他に子どもがいる場合、それぞれに遺留分が認められます。
ここでは、同じ「遺産総額6,000万円」でも、内容によって結果が大きく異なる点に注意が必要です。
1:遺産が現金6,000万円の場合
- 相続人:長男・次男の2人
- 遺産:現金6,000万円
- 遺言:長男にすべて相続させる
この場合、次男の遺留分は1,500万円となります。
次男が遺留分侵害額請求を行えば、
長男はその現金の中から1,500万円を支払うことになります。
もともと現金があるため、
比較的スムーズに解決できるケースです。
2:遺産が6,000万円相当の不動産のみの場合
- 相続人:長男・次男の2人
- 遺産:自宅不動産(評価額6,000万円)
- 遺言:長男に不動産を相続させる
この場合も、次男の遺留分は同じく1,500万円です。
そして、次男が遺留分侵害額請求を行った場合、
長男はこの1,500万円を現金で支払う必要があります。
ここが重要なポイント
このケースで問題となるのは、
長男が取得したのは不動産であり、現金ではないという点です。
つまり、
- 不動産は6,000万円相当ある
- しかし手元に現金がない
- それでも1,500万円を支払わなければならない
という状況になります。
その結果、
- 預貯金を取り崩す
- 借入れをする
- 不動産を売却する
といった対応を迫られる可能性があります。
「6,000万円の財産を相続したのに、1,500万円の現金を用意できずに困る」
という事態は、実際の相続でもよく起こります。
結果として、長男は財産をすべて取得できたとしても、
他の相続人に対して金銭を支払う必要が生じる可能性があります。

ケース② 内縁の配偶者や第三者に財産を遺す場合
内縁の配偶者や友人など、法定相続人ではない人に財産を遺すケースもあります。
この場合、遺言によって財産を渡すこと自体は可能ですが、配偶者や子などの相続人には遺留分があるため、その権利を侵害する内容であれば問題が生じます。
たとえば、すべての財産を内縁の配偶者に遺すという遺言を作成した場合、法定相続人は遺留分侵害額請求を行うことで、一定の金銭を取り戻すことができます。
「遺言で渡したはずの財産」が、そのまま確定しない典型的なケースです。
注意すべき実務上のリスク
さらに注意が必要なのは、財産がいったん第三者(内縁の配偶者など)に渡ってしまった場合です。
このようなケースでは、たとえ遺留分侵害額請求が認められたとしても、
- 相手がすでに財産を使ってしまっている
- 現金の所在が分からない
- 任意に支払いに応じない
といった事情により、実際の回収がスムーズに進まない可能性があります。
特に、不動産を相続した後に売却され、その売却代金の行方が分からなくなってしまった場合には、回収がより困難になるため注意が必要です。

一方で、不動産が残っていれば回収できる可能性もある
もっとも、相続した不動産がまだ処分されずに残っている場合には、対応の余地があります。
たとえば、遺留分侵害額請求が認められ、支払いに応じない場合には、
不動産に対して強制執行(差押え)を行うことが可能です。
この場合、最終的には不動産を競売にかけ、その売却代金から回収を図ることになります。
重要なポイント
このように、
- すでに現金化されて使われているケース
- 不動産として残っているケース
とでは、回収のしやすさが大きく異なります。
「遺留分侵害額請求ができるか」だけでなく、「実際に回収できるか」まで見据えることが重要です。実にすぐ回収できる」とは限らない
という点は、特に注意が必要です。
ケース③ 財産が不動産しかない場合(実務上のリスク)

遺産の大半が自宅などの不動産であり、「この不動産を特定の相続人に相続させる」という遺言を作成するケースも少なくありません。
このような場合、形式上は遺言どおりに不動産を取得することができますが、遺留分の問題は別に存在します。
他の相続人から遺留分侵害額請求が認められた場合、財産が不動産しかなくても、遺留分に相当する金額を現金で支払う必要があります。
不動産特有の問題
ここで問題となるのは、不動産はすぐに現金化できないという点です。
そのため、実務上は以下のような問題が生じやすくなります。
- 預貯金が不足しており支払いができない
- 不動産をすぐに売却できない(買い手が見つからない)
- 売却価格が想定より下がる
- 相続人間で売却の是非をめぐって対立する
結果として起こり得ること
このような状況が続くと、
- 支払いができずに紛争が長期化する
- 最終的に競売に至る
- 想定より低い価格で処分される
といった不利益が生じる可能性があります。
「不動産を残すつもりの遺言が、結果的に不動産を手放す原因になる」
というケースは、実務でも少なくありません。に、結局手放すことになる」
という事態も現実には起こり得ます。
ケースからわかる重要なポイント
これらのケースからわかるとおり、
- 遺言はあくまでスタート地点である
- 相続人の意向や遺留分によって結果が変わる
- 思いどおりに実現されないことも多い
というのが実務の実態です。
つまり、
「遺言を書けば安心」ではなく、「遺留分まで考えて初めて意味がある」
といえるでしょう。
④ 遺留分侵害額請求とは?遺言が崩れる仕組み
遺言と遺留分の関係を理解するうえで重要なのが、「遺留分侵害額請求」という制度です。
これは、遺留分を侵害された相続人が、その不足分を取り戻すための手続きです。
遺言があっても相続がそのとおりに進まない理由は、この制度にあります。
遺留分侵害額請求の基本
遺留分侵害額請求とは、遺言や贈与によって遺留分が侵害された場合に、その不足分に相当する金銭の支払いを求めることができる権利です。
ここで重要なのは、現在の制度では
「金銭での請求」が原則であるという点です。
かつての制度(遺留分減殺請求)とは異なり、財産そのものを取り戻すのではなく、金銭で調整する仕組みになっています。
また、この請求ができるのは以下の相続人に限られます。
- 配偶者
- 子(または代襲相続人)
- 直系尊属(親など)
※兄弟姉妹には遺留分がないため、請求することはできません。
さらに、請求には期限があり、
- 相続の開始および侵害を知った時から1年
- または相続開始から10年
を経過すると権利を行使できなくなります。
実際の流れと「遺言が崩れる」理由
遺留分侵害額請求は、一般的に次のような流れで進みます。
被相続人が亡くなると、遺言書の有無や内容を確認することになります。ここで、自分の取り分が極端に少ない、またはまったくないことが分かり、遺留分の問題が表面化します。
遺言の内容が一部の相続人に有利である場合、不利益を受けた相続人が「自分の遺留分が侵害されているのではないか」と考えることがあります。特に、全財産を一人に相続させる内容や、第三者へ遺贈する内容では争いになりやすい傾向があります。
まずは当事者同士で話し合いを行い、金額や支払方法について協議するのが一般的です。この段階で合意できれば、訴訟に進まずに解決できるため、時間や費用の負担を抑えやすくなります。
話し合いで解決できない場合は、遺留分侵害額請求を正式に行います。通常は内容証明郵便などを使って請求の意思を明確に示し、後で「いつ請求したか」が分かる形にしておくことが重要です。
正式に請求しても相手が支払いに応じない場合は、家庭裁判所での調停や、地方裁判所等での訴訟に進むことがあります。ここでは遺留分の有無や金額、支払方法などについて法的に判断されることになります。
このようなプロセスを経て請求が認められると、遺言そのものが無効になるわけではないものの、
- 想定していなかった金銭の支払いが発生する
- 財産の一部を手放す必要が出てくる
- 最終的な取得額が変わる
といった影響が生じます。
その結果、
「遺言どおりに実現されない」状態になるため、実務上は“遺言が崩れる”と表現されるのです。
遺言は作るだけで安心ではなく、「請求される前提」で設計することが重要です。
⑤ 遺言だけに頼ると危険な理由
遺言は相続対策として非常に有効な手段ですが、遺言だけに頼ってしまうと、かえってトラブルの原因になることがあります。
特に、遺留分を考慮せずに作成された遺言は、相続発生後に大きな問題を引き起こす可能性があります。
「遺言を書いたから安心」は危険
「遺言を作成したから大丈夫」と考えてしまう方は少なくありません。
しかしこれまで見てきたとおり、遺言があっても遺留分侵害額請求が行われれば、その内容どおりに相続が進まないことがあります。
その結果、
- 想定外の金銭支払いが発生する
- 不動産を手放す必要が出てくる
- 相続人同士の関係が悪化する
といった事態に発展する可能性があります。
トラブルは「感情」から大きくなる
相続トラブルは、単なるお金の問題ではなく、感情の問題として深刻化することが多いのが特徴です。
たとえば、
- 「自分だけ不公平に扱われた」
- 「親の意思とはいえ納得できない」
- 「特定の相続人だけ優遇されている」
といった不満がきっかけとなり、話し合いがこじれてしまうケースも少なくありません。
遺言の内容が極端であるほど、このような感情的対立は生じやすくなります。
遺言が“争いの原因”になることもある
本来、遺言は相続トラブルを防ぐために作成されるものです。
しかし、遺留分を無視した内容や、説明不足の遺言である場合、かえって争いを引き起こしてしまうことがあります。
特に、
- 全財産を一人に相続させる
- 内縁の配偶者や第三者に多くの財産を遺す
- 相続人間のバランスが大きく崩れている
といったケースでは、遺留分をめぐる争いに発展しやすくなります。
問題の本質は「設計不足」
こうしたトラブルの多くは、遺言そのものが悪いのではなく、
遺留分を踏まえた設計がされていないことが原因です。
遺言はあくまでスタート地点であり、
- 遺留分をどう考えるか
- 相続人の関係性をどう調整するか
- 実際に支払える資金をどう確保するか
といった点まで含めて設計する必要があります。
遺言は「書けば安心」ではなく、「どう設計するか」が重要です。

⑥ 遺留分対策|遺言を書くときにやるべきこと
ここまで見てきたとおり、遺言は有効な手段である一方、遺留分を無視するとトラブルの原因になります。
そのため、遺言を作成する際は、あらかじめ遺留分を踏まえた対策を講じておくことが重要です。
ここでは、代表的な対策を紹介します。
被相続人ができること(生前の対策)
遺言を作成しようと考えるとき、多くの方は「家族のためにきちんと準備しておきたい」という思いを持っています。
一方で、
- 「この子に多く残したいが、不公平と思われないだろうか」
- 「相続で揉めてほしくない」
- 「でも、自分の希望もできるだけ実現したい」
といった葛藤を抱える方も少なくありません。
遺留分対策は、こうした思いと現実のバランスを取る作業ともいえます。
そのため、単に制度を知るだけでなく、「どう設計するか」が非常に重要になります。
・遺留分を考慮した財産配分にする
特定の相続人に多くの財産を残したい事情がある場合でも、他の相続人の遺留分をまったく無視してしまうと、結果的にトラブルにつながる可能性があります。
たとえば、「長男に自宅を残したい」という思いがあっても、他の相続人の取り分が極端に少ない場合、不満が生じやすくなります。
そのため、
「なぜこの分け方にするのか」まで含めて、バランスを考えることが重要です。
単に均等にするのではなく、理由のある配分にすることで、後の納得感も大きく変わってきます。
・代償金となる現金を準備しておく
不動産などを特定の相続人に相続させたい場合、「気持ちとしては残したいが、現実的に大丈夫か」という点を考える必要があります。
実際には、遺留分侵害額請求がなされた場合、金銭での支払いが必要になるため、
- 現金が足りずに支払えない
- 不動産を売却せざるを得ない
といった事態に陥るケースも少なくありません。
こうした事態を防ぐためには、
- 預貯金を一定程度残しておく
- 生命保険を活用する
といった方法により、支払い原資をあらかじめ確保しておくことが重要です。
「想いどおりに残すために、現実的に支払える設計にしておく」ことがポイントです。
・生前贈与などを活用する
生前のうちから財産の移転を進めておくことで、相続時の偏りを緩和することも可能です。
ただし、
- どの範囲まで遺留分の計算に含まれるのか
- どのタイミングで行うのが適切か
といった点は専門的な判断が必要になります。
思いつきで行うのではなく、全体のバランスを見ながら進めることが大切です。
・相続人に意向を伝えておく
遺言の内容だけでなく、その背景にある考えや気持ちを伝えておくことも、非常に重要な対策の一つです。
相続トラブルの多くは、「内容そのもの」よりも「納得できない」という感情から生じます。
そのため、
- なぜこの分け方にしたのか
- どのような思いがあるのか
を事前に伝えておくだけでも、相続人の受け止め方は大きく変わります。
“気持ちを残すこと”も、遺言の重要な役割です。
・専門家に相談して設計する
遺言や遺留分の問題は、制度だけでなく「家族関係」や「財産の内容」によって最適な形が変わります。
そのため、
- 法律的に問題がないか
- 実際に実現できる内容か
- 将来トラブルにならないか
といった点を総合的に検討する必要があります。
行政書士などの専門家は、単に書類を作成するだけでなく、
「どうすれば想いを実現しつつ、トラブルを防げるか」という視点でサポートします。
「何から考えればよいかわからない」という段階でも問題ありません。
早めに相談することで、選択肢の幅を広げることができます。
遺言は、財産を分けるためのものではなく、“想いを形にするためのもの”です。
その想いをきちんと実現するために、遺留分まで見据えた設計が重要になります。
相続人ができること(相続発生後の対応)
相続が発生し、遺言の内容を確認したとき、
- 「思っていたよりも取り分が少ない」
- 「なぜ自分だけ…」
- 「納得できないが、どうすればいいのか分からない」
このような戸惑いや不満を感じる方は少なくありません。
しかし、そのまま何も対応しなければ、本来守られるはずの権利を失ってしまう可能性もあります。
相続人の立場でも、適切に対応することで不利益を回避することができます。
・遺言内容と遺留分を確認する
まずは遺言の内容を確認し、自身の遺留分が侵害されているかどうかを把握することが重要です。
遺留分は法律上保障された権利ですが、自動的に受け取れるものではありません。
自ら確認し、必要に応じて行動することではじめて守られるものです。
「そもそも侵害されているのか」を正しく把握することが出発点になります。
・期限内に遺留分侵害額請求を行う
遺留分侵害額請求には期限があります。
- 遺留分が侵害されていることを知った時から1年
- 相続開始から10年
この期間を過ぎると、たとえ遺留分が侵害されていても請求できなくなります。
相続直後は気持ちの整理がつかないことも多いですが、
「知らなかった」では済まされないのがこの期限の厳しさです。
・まずは話し合いでの解決を検討する
いきなり法的手続きに進むのではなく、まずは当事者同士での話し合いによる解決を目指すのが一般的です。
相続は家族間の問題でもあるため、
- 感情的な対立を避けたい
- 関係性をできるだけ維持したい
と考える方も多いでしょう。
話し合いによって柔軟な合意ができれば、時間や費用の負担を抑えながら解決することが可能です。
・回収可能性も踏まえて判断する
遺留分侵害額請求は、権利として認められていても、実際に回収できるかは別の問題です。
たとえば、
- 相手に十分な資力がない
- 財産がすでに処分されている
- 現金の所在が不明である
といった場合、請求が認められても回収が難航することがあります。
「請求できるか」だけでなく、「実際に回収できるか」まで見据えて判断することが重要です。
・必要に応じて専門家に相談する
遺留分の計算や請求の進め方は、状況によって大きく異なります。
- 自分のケースで請求できるのか
- いくら請求できるのか
- どのように進めるのが適切か
といった点は、専門的な判断が必要になる場面も多くあります。
行政書士などの専門家は、手続きだけでなく、
「どのような選択が現実的か」という視点からサポートすることが可能です。
迷った段階で相談することで、不必要なトラブルや不利益を避けることにつながります。
相続は、「事前の設計」と「事後の対応」の両方が重要です。
どちらか一方だけでは、思いどおりの結果にならないことも少なくありません。
⑦ よくある質問(FAQ)とまとめ
Q. 遺言があれば遺留分は無視できますか?
いいえ、無視することはできません。
遺言は原則として優先されますが、遺留分を侵害している場合には、遺留分侵害額請求によって金銭の支払いを求められる可能性があります。
Q. 遺留分は必ず請求されるものですか?
必ずしも請求されるわけではありません。
相続人が納得している場合や、請求しないという判断をした場合には、遺言どおりに相続が進むこともあります。
Q. 兄弟姉妹にも遺留分はありますか?
兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分が認められるのは、配偶者・子(代襲相続人を含む)・直系尊属に限られます。
Q. 遺留分侵害額請求はどのように行うのですか?
まずは当事者間での話し合いを行い、解決できない場合には内容証明郵便などで正式に請求します。
それでも解決しない場合は、調停や訴訟といった法的手続きに進むことになります。
Q. 遺留分対策として何をすればよいですか?
遺留分を考慮した遺言の作成や、代償金の準備、生前贈与の活用などが考えられます。
ただし、個別の状況によって最適な方法は異なるため、専門家に相談しながら進めることが重要です。
遺言書は税理士に相談すべき?行政書士・弁護士との違いと正しい選び方を解説
まとめ|遺言と遺留分はセットで考えることが重要
この記事では、「遺言と遺留分はどちらが優先されるのか」というテーマについて解説してきました。
結論としては、
遺言は優先されるが、遺留分によって制限される
という関係にあります。
遺言があれば自由に財産を分けられると思われがちですが、実際には遺留分という制度によって、その内容どおりに実現されないケースも少なくありません。
特に、
- 特定の相続人にすべての財産を相続させる場合
- 不動産のみを相続させる場合
- 内縁の配偶者や第三者に財産を遺す場合
などでは、遺留分をめぐるトラブルが生じやすくなります。
そのため重要なのは、
- 遺言だけでなく遺留分まで含めて設計すること
- 相続発生後も適切に対応すること
です。
遺言は「書けば安心」ではなく、
「どのように設計し、どう実現されるか」まで考えて初めて意味を持ちます。
また、相続人の立場でも、遺留分という権利を正しく理解し、適切に対応することが重要です。
相続は、家族の想いと現実が交差する場面でもあります。
だからこそ、
- トラブルを防ぎたい
- 自分の意思をきちんと残したい
- 納得できる形で相続を進めたい
と考えたときには、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
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