換価分割とは?実家を売却して相続人で分ける方法・注意点を解説

相続した実家を前に立つ男性と2軒の家の模型

親が亡くなり、地方にある実家を相続することになったものの、子どもたちはすでに都市部で生活しており、今後実家に戻る予定がないというケースがあります。

親にとっては思い入れのある家でも、子どもにとっては、誰も住む予定のない実家です。そのまま残せば、固定資産税や管理の負担も続きます。

こうしたときに検討できる遺産分割の方法の一つが「換価分割」です。換価分割では、実家などの不動産を売却して現金に換え、その売却代金を相続人で分けます。

この記事では、換価分割の仕組みやメリット・注意点、進め方についてわかりやすく解説します。

目次

①換価分割とは

換価分割とは、相続した不動産などを売却して現金に換え、その売却代金を相続人で分ける遺産分割の方法です。

実家や土地などの不動産は、そのままでは複数の相続人で分けにくいことがあります。換価分割では、不動産を売却して現金に換えることで、相続人で分けやすくします。

たとえば、相続した実家を売却し、仲仲介手数料(不動産会社に売買の仲介を依頼した場合に支払う報酬)どの費用を差し引いた売却代金を相続人で分ける、といった方法です。

代償分割が、特定の相続人が不動産を取得して他の相続人へ代償金を支払う方法であるのに対し、換価分割は不動産そのものを売却する点が異なります。

実家を残したいものの、他の相続人へ支払う代償金を用意できない場合は、分割払いや支払期限の調整などを検討できることもあります。
代償分割で現金がないときの解決策

②誰も使わない実家なら換価分割を検討しやすい

相続した地方の実家に誰も住まず、都市部で暮らす長男と長女が遠方から管理に悩んでいる様子を示したイラスト
相続した実家に誰も住まない場合、遠方で暮らす相続人にとって、建物や庭の管理、郵便物の確認などが継続的な負担になることがあります。

地方の実家を相続しても、子どもが戻るとは限らない

たとえば、地方の実家で暮らしていた父が亡くなり、長男と長女が実家を相続することになったとします。

長男も長女もすでに都市部で仕事や生活の基盤を築いており、今後実家に戻って暮らす予定はありません。

親にとっては長年暮らしてきた思い入れのある家で、「できれば残してほしい」と考えることもあるでしょう。一方、子どもにとっては、親が亡くなったあと誰も住む予定のない実家になることもあります。

そのため、親の思いだけで残すかどうかを決めるのではなく、今後その家を誰が使い、誰が管理していくのかまで考える必要があります。

誰も住まない実家にも維持費や管理の負担は続く

実家に誰も住まなくても、所有している限り固定資産税や火災保険、庭木・雑草の手入れ、建物の修繕などの負担が続くことがあります。

さらに、実家が遠方にあれば、管理のために帰省する時間や交通費も必要です。

「とりあえず残しておこう」と先送りするほど、使わない実家のための費用や手間が積み重なる可能性があります。

松本明子さんの「実家じまい」から考える、実家を残すことの負担

タレントの松本明子さんは、父親から「実家を頼む」と言われたことをきっかけに、香川県の実家を長期間維持した経験を紹介しています。

その間、固定資産税や保険、光熱費、庭木の剪定、雑草の処理などの費用がかかり、実家じまいまでの25年間で多額の負担になったとされています。

もちろん、すべての実家で同じような負担が生じるわけではありません。

ただ、誰も住む予定がない実家を残すのであれば、「親が残してほしいと言っていたから」という理由だけでなく、今後誰が管理し、その費用を負担していくのかまで考えておくことが大切です。

③換価分割のメリット

換価分割のメリットは、実家や土地などの分けにくい不動産を現金に変えられることです。

長男と長女のどちらも実家を使う予定がない場合、不動産そのものを誰が取得するかで悩むより、売却して現金にしたほうが分けやすくなります。

また、売却できれば、誰も利用しない実家を相続後も持ち続ける必要がありません。固定資産税や管理、修繕などの負担を将来にわたって抱え続けずに済む点もメリットです。

ただし、実際に売却できるまでは管理や費用の負担が続くため、換価分割を選んだからといって、すぐに負担がなくなるわけではありません。

一方、実家を売却せず、長男や長女のどちらかがそのまま引き継ぎたい場合は、代償分割という方法もあります。代償分割では、不動産を取得する相続人が、他の相続人へ代償金を支払って取得額を調整します。
代償分割とは?代償金の決め方や注意点

④実家を残すことはできない

換価分割は、不動産を売却して現金に換える方法です。そのため、相続人の中に「実家は残したい」と考える人がいる場合には向きません。

売却できるまで時間がかかり、費用負担も続く

換価分割は、不動産が実際に売れて初めて完了します。地方の実家などでは、買い手がすぐに見つからず、売却まで時間がかかることもあります。

その間も、固定資産税や管理、修繕などの負担は続きます。

また、不動産を売却すると仲介手数料などの費用がかかるため、売却価格の全額をそのまま相続人で分けられるわけではありません。

相続人の意見が合わないと売却を進めにくい

換価分割では、「売るかどうか」だけでなく、売却価格、売却時期、売却方法、不動産会社などについても相続人同士で話し合う必要があります。

たとえば、一人は「多少安くても早く売りたい」、もう一人は「時間がかかっても高く売りたい」と考えていると、売却方針がまとまらないことがあります。

意見がまとまらなければ、換価分割そのものを進めにくくなる点には注意が必要です。

相続人の一人だけで実家の売却などを進めようとすると、他の相続人とのトラブルにつながることがあります。相続手続きのうち、一人で進められるものと相続人全員で話し合う必要があるものについては、以下の記事で解説しています。
相続手続きを一人で勝手に進められるケース・進められないケース

⑤相続税評価額や査定額で売れるとは限らない

換価分割では、実際に不動産を売却して、その売却代金を相続人で分けます。

そのため、「この実家はいくらの価値があるのか」よりも、最終的にいくらで売れたのかが重要になります。

相続税評価額と実際の売却価格は別

相続税評価額(相続税を計算するときに使う財産の評価額)は、実際の売却価格とは別のものです。

相続税の申告で一定の評価額が付いていたとしても、その金額で売却できるとは限りません。

既存の代償分割の記事でも、評価額が付いていても、その価格で実際に売れるとは限らない点を説明しています。

換価分割では、評価額を前提に分けるのではなく、実際の売却結果を見て考える必要があります。

不動産会社の査定額も成約価格ではない

不動産会社の査定額も、その価格で売れることを保証するものではありません。

査定額は、周辺の取引事例や物件の状態などをもとに算出された目安です。実際には、買い手との交渉や売却時期、地域の需要によって成約価格が変わることがあります。

特に地方の実家では、「査定額は出たものの、なかなか買い手が見つからない」ということもあります。

仲介と買取では価格と売却までのスピードが違う

不動産を売却する方法には、仲介と買取があります。

仲介は、不動産会社に買い手を探してもらう方法です。時間はかかることがありますが、条件が合えば比較的高く売れる可能性があります。

一方、買取は、不動産会社などに直接買い取ってもらう方法です。早く現金化しやすい反面、仲介より売却価格が低くなることがあります。

そのため、換価分割では「できるだけ高く売るのか」「多少価格を下げても早く売るのか」を相続人同士で決めておくことが大切です。

売却を先送りすると維持費が膨らむこともある

買い手が見つからないからといって売却を先送りすると、その間も固定資産税や管理、修繕などの負担が続きます。

特に誰も住んでいない実家では、庭木や雑草の管理、建物の劣化への対応などが必要になることもあります。

「もう少し待てば高く売れるかもしれない」と考えているうちに、維持費の負担が積み重なり、結果として手元に残る金額が減る可能性もあります。

換価分割では、売却価格だけでなく、売れるまでにかかる時間と維持費も含めて判断することが大切です。

⑥換価分割はどうやって進める?

相続人と相続財産を確認し、話し合い、不動産の売却条件を検討して売却し、費用を差し引いた売却代金を相続人で分ける換価分割の流れを示した図
換価分割では、相続人と財産を確認したうえで、不動産の売却方法や時期を話し合い、売却費用を差し引いた残額を相続人で分けます。

換価分割は、相続人同士で売却方針を決めてから、不動産の売却、売却代金の分配という順番で進めます。

相続人と相続財産を確認する

まず、誰が相続人になるのか、実家以外にどのような相続財産があるのかを確認します。

換価分割する不動産についても、登記事項証明書などを確認し、所在地や名義などを把握しておきます。

実家を売却することを相続人で話し合う

遺産分割協議(相続人全員で遺産の分け方を話し合う手続き)で、実家を売却して換価分割することについて話し合います。

長男と長女のどちらも実家を利用する予定がないとしても、一方だけで売却を決めるのではなく、まず方針を共有することが大切です。

売却価格・時期・方法・費用負担などを決める

「どのくらいの価格なら売却するのか」「仲介と買取のどちらを利用するのか」「いつ頃までに売りたいのか」などを話し合います。

仲介手数料など、売却にかかる費用をどのように負担するかも、あらかじめ決めておくと進めやすくなります。

必要な手続きを行って不動産を売却する

実家を売却するために必要な相続登記(亡くなった人から相続人へ不動産の名義を変更する手続き)などを行い、不動産会社を通じて売却を進めます。

売却まで時間がかかる場合もあるため、その間の実家の管理についても考えておきます。

売却代金から費用などを確認する

不動産が売れたら、実際の売却代金と、仲介手数料など売却にかかった費用を確認します。

売却価格の全額をそのまま分けるのではなく、最終的にいくら残るのかを確認することが大切です。

合意した内容に従って売却代金を分ける

最後に、遺産分割協議で合意した内容に従って、売却代金を相続人で分けます。

後になって「聞いていた分け方と違う」とならないよう、売却代金の分け方や費用負担については事前に明確にしておくことが重要です。

換価分割を行う場合も、まず相続人同士で実家を売却することや売却代金の分け方について話し合います。遺産分割協議の参加者や進め方、話し合いがまとまらない場合については、以下の記事で詳しく解説しています。
遺産分割協議の進め方

⑦換価分割をするなら遺産分割協議書に内容を明確にしておく

換価分割で、売却する実家、売却担当者、売却費用、売却時期、売却代金の分配方法を遺産分割協議書で整理する様子を示した図解
換価分割では、実家を売却することだけでなく、誰が売却手続きを担当するか、売却価格や時期、仲介手数料などの費用、売却後の代金をどう分けるかまで整理しておくことが大切です。

換価分割をする場合は、遺産分割協議書(遺産の分け方について相続人全員が合意した内容をまとめる書面)に、売却や売却代金の分け方について明確にしておくことが大切です。

決めておきたいこと内容
売却する不動産どの土地・建物を換価分割の対象にするのか
売却手続きを進める人誰が不動産会社とのやり取りや売却手続きを担当するのか
売却代金の分け方売却後の代金を誰がどのように受け取るのか
売却費用の負担仲介手数料や登記費用などをどう負担するのか
売却条件売却価格、値下げの範囲、売却時期などをどうするのか

遺産分割協議書は、換価分割だけでなく、不動産の相続登記や預貯金などの相続手続きで使用することがあります。遺産分割協議書の基本や、法務局などでの使われ方については以下の記事で詳しく解説しています。
遺産分割協議書の作成方法・使い方

換価分割では、「実家を売る」という結論だけ決めても、その後の手続きで意見が分かれることがあります。

そのため、売却代金の分け方や費用負担、誰が売却手続きを進めるのかまで、できるだけ具体的に決めて書面に残しておくことが重要です。

遺産分割協議書の作成に不安がある場合は、行政書士への相談も検討できます。

⑧換価分割に関係する税金

換価分割では、相続した財産に対する相続税だけでなく、不動産を売却したことで税金が発生する場合もあります。

特に確認したいのが、譲渡所得税(不動産などを売却して利益が出た場合に、その利益に対してかかる税金)です。

たとえば、実家を売却した金額がそのまま課税対象になるわけではなく、取得費や売却にかかった費用などを踏まえて計算します。また、相続した不動産では、亡くなった親がいつ・いくらで取得したのかが関係することもあります。

そのため、換価分割をするときに「売却代金を長男と長女で分ければ税金も終わり」とは限りません。

相続税が発生するか、売却によって譲渡所得税が発生するか、申告が必要かといった税務上の判断はケースによって異なります。税金について確認が必要な場合は、税理士に相談するとよいでしょう。

⑨換価分割を慎重に検討したほうがよいケース

換価分割は、誰も使う予定のない実家を整理する方法として有力ですが、すべてのケースで進めやすいわけではありません。

相続人の一人が実家を残したいと考えている

長男は売却したい一方で、長女は「できれば実家を残したい」と考えているような場合は、換価分割をすぐに進めるのは難しくなります。

換価分割では実家そのものを売却するため、誰か一人でも残したいと考えているのであれば、まず相続人同士で今後の利用や管理について話し合う必要があります。

買い手が見つかりにくく、売却まで時間がかかりそう

地方の実家などでは、売りに出してもすぐに買い手が見つかるとは限りません。

売却まで時間がかかるほど、固定資産税や保険、庭木の管理、修繕などの負担が続きます。建物の老朽化が進めば、さらに費用が必要になることもあります。

そのため、「いつか売れればよい」と長期間保有すると、維持すればするほど負担が膨らみ、最終的に手元に残る金額が少なくなる可能性も考えておく必要があります。

売却方針や専門家への相談について相続人の意見が合わない

換価分割では、売却価格や時期、不動産会社の選び方などについて相続人同士で話し合う必要があります。

また、税金について税理士へ確認したり、遺産分割協議書の作成について専門家へ相談したりする必要が生じることもあります。

一方の相続人が「専門家に費用を払ってまで相談する必要はない」と考えていると、必要な確認が進まず、換価分割そのものが停滞することがあります。

換価分割を選ぶ場合は、不動産を売ることだけでなく、売却に必要な手続きや専門家への相談についても相続人同士で認識を合わせておくことが大切です。

⑩換価分割についてよくある質問

Q:換価分割とは簡単にいうと何ですか?

換価分割とは、相続した不動産などを売却して現金に換え、その売却代金を相続人で分ける方法です。

実家や土地のように、そのままでは分けにくい財産を整理するときに検討されます。

Q:実家を売却するには相続人全員の同意が必要ですか?

遺産分割協議によって換価分割を行う場合は、実家を売却することや売却代金の分け方について、相続人全員で合意しておく必要があります。

一人だけで売却方針を決めるのではなく、売却価格や時期、費用負担なども含めて話し合っておくことが大切です。

Q:相続税評価額で実家を売却できますか?

相続税評価額は、実際の売却価格を示すものではありません。

相続税の計算では一定の評価方法を使いますが、実際の売却価格は立地や建物の状態、買い手の需要などによって決まります。

そのため、相続税評価額と実際の売却価格が一致するとは限りません。

Q:不動産会社の査定額どおりに売れますか?

査定額も、その金額で売れることを保証するものではありません。

実際の成約価格は、売り出し価格や買い手との交渉、地域の需要などによって変わります。

複数の不動産会社から査定を取る場合も、査定額の高さだけで判断せず、売却方法や根拠も確認したほうがよいでしょう。

Q:換価分割の仲介手数料は誰が負担しますか?

誰が負担するかについては、相続人同士で決めておくことが大切です。

売却代金から差し引いたうえで残額を分ける方法もあれば、別の方法で負担することも考えられます。

後から認識が食い違わないよう、遺産分割協議書に費用負担について明記しておくと安心です。

Q:換価分割では相続登記が必要ですか?

不動産を売却するには、被相続人名義のままでは手続きを進められないため、相続登記が必要になります。

換価分割の方法によって登記の進め方が変わることもあるため、実際の手続きについては司法書士などの専門家に確認するとよいでしょう。

Q:換価分割と代償分割はどちらがよいですか?

どちらがよいかは、実家を残したいかどうかで考えると分かりやすいです。

実家を誰かが引き継いで残したい場合は、代償分割が検討されます。一方、相続人の誰も実家を利用する予定がなく、売却して整理したい場合は換価分割を検討しやすくなります。

まとめ|誰も使わない実家なら、残すことだけにこだわらず換価分割も検討する

換価分割は、実家などの不動産を売却して現金に換え、その売却代金を相続人で分ける方法です。

地方の実家を相続しても、長男・長女がすでに都市部で生活しており、今後誰も戻る予定がないのであれば、実家を残し続けることが必ずしもよいとは限りません。

誰も住まない家でも、固定資産税や保険、庭木の管理、修繕などの負担は続きます。親にとって思い入れのある家であっても、子ども世代が今後どこまで維持できるのかは現実的に考える必要があります。

一方で、換価分割を選べば必ず簡単に整理できるわけでもありません。相続税評価額や不動産会社の査定額どおりに売れるとは限らず、売却まで時間がかかれば、その間の維持費も発生します。

そのため、換価分割を検討するときは、「実家を残すか、売るか」だけではなく、「誰が管理するのか」「どのくらいの期間なら維持できるのか」「どのような条件で売却するのか」まで相続人同士で話し合うことが大切です。

換価分割をすることになった場合は、売却代金の分け方や費用負担、誰が売却手続きを進めるのかなども決め、遺産分割協議書に明確にしておくと、その後の手続きを進めやすくなります。

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