相続時の株式評価とは?評価方法と税務のポイントを徹底解説!

1.相続時の株式評価とは?基本を理解しよう

株式を相続した際には、その評価額を算定し、相続税申告に反映させる必要があります。株式の種類によって評価方法が異なり、適切な計算をしなければ税務上のリスクが生じる可能性があります。まずは、株式評価が必要な理由や基本的な考え方を理解しましょう。

株式評価が必要な理由

相続財産には現金・預貯金・不動産・有価証券など多様な資産が含まれますが、株式の評価は特に注意が必要です。理由として、以下の3つが挙げられます。

遺族間でのトラブルを避けるため

株式は単なる金融資産ではなく、企業経営に関わる重要な資産です。特に非上場株式は売却が困難なため、評価額が相続人間の分割方法に大きな影響を及ぼします。適正な評価を行い、公平な分割を検討することが重要です。

相続税の計算に直結するため

株式の評価額が相続財産の総額に加算され、それに基づいて相続税が決定されます。評価が適正でないと、税額が不当に高くなったり、逆に過小評価されて税務署から指摘を受けるリスクがあります。

株式の価値は市場状況によって変動するため

上場株式は日々株価が変動するため、相続時の評価基準日を慎重に選ぶ必要があります。一方、非上場株式は市場価格がなく、企業の財務状況や業績を考慮した評価が求められます。

株式評価の基本的な考え方

株式の評価額は、「相続開始日(被相続人の死亡日)」時点での時価を基準に計算されます。ただし、上場株式と非上場株式では評価基準が大きく異なります。

非上場株式:市場価格がないため、財務状況や企業の収益性を基準に評価を行う。

上場株式 :市場で取引されているため、一定のルールに基づいた株価を評価額とする。

上場株式と非上場株式の違い

種類特徴評価方法注意点
上場株式市場価格が明確相続開始日の終値、または一定期間の平均値を用いる株価の変動による税額への影響が大きい
非上場株式市場価格がない類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式を用いる評価方法によって評価額が大きく異なる

2.上場株式の評価方法と注意点

上場株式は市場価格が明確に存在するため、評価方法は比較的シンプルです。しかし、評価基準日や申告のタイミングによって相続税額が変動するため、注意が必要です。

相続税法に基づく上場株式の評価方法

上場株式の評価額は、以下の3つの方法のうち最も低い価格を採用します。

(1)相続開始日の終値

  • 被相続人が亡くなった日の株式の終値(その日の取引終了時の価格)を基準にする方法です。
  • 株価が急上昇・急落している場合には不利になる可能性があります。

(2)相続開始日の属する月の終値の平均値

  • 相続開始月の終値を平均して評価額を算出します。
  • 一時的な価格変動の影響を緩和できる利点があります。

(3)相続開始日前2ヶ月および3ヶ月の終値の平均値

  • 直前3ヶ月の月ごとの終値の平均値を計算し、それぞれ比較した上で最も低い価格を採用します。
  • 株価が高騰している場合には、この方法を用いることで相続税額を抑えられる可能性があります。

評価基準日の決定方法

相続開始日とは被相続人が亡くなった日を指し、通常はこの日を基準として評価します。ただし、以下のように評価日を選択することが可能です。

  • 株価が急落している場合、相続開始日の終値を利用することで相続税を低減できる場合もある。
  • 相続開始日の株価が高い場合、過去3ヶ月の平均株価を用いることで評価額を抑えられる。

相続税申告における留意点

  • 株式市場の変動が激しい場合、評価方法によって相続税額が大きく変わる
  • 遺族間での評価基準の理解が異なるとトラブルの原因になる
  • 税理士や専門家に相談し、最適な評価方法を選択することが重要

3.非上場株式の評価方法とその難しさ

非上場株式は市場価格がないため、評価方法が複雑になります。国税庁の定める「財産評価基本通達」に従い、以下の方法で評価されます。

類似業種比準方式

  • 上場企業のデータを基準に、売上高や利益などを比較して評価。
  • 企業の業績が良い場合、評価額が高くなる傾向がある。

純資産価額方式

  • 会社の資産と負債を基に評価を行う方法。
  • 事業資産が多い企業はこの方式で評価額が高くなる可能性がある。

併用方式

  • 上記2つの方式を組み合わせ、バランスの取れた評価を行う。
  • 会社の成長性や業種によって最適な比率を決める必要がある。

4.株式評価における税務上のポイント

相続時の株式評価は、単なる財産価値の算定にとどまらず、税務面での影響も大きいため慎重に行う必要があります。評価額が高すぎると相続税の負担が増え、逆に低すぎると税務調査で問題視される可能性があります。ここでは、株式評価に関わる税務上のポイントについて詳しく解説します。

相続税・贈与税の課税関係

株式は、相続税や贈与税の計算対象となる財産の一部であり、その評価額によって課税額が大きく変わります。

相続税が課されるケース

  • 被相続人が所有していた株式を相続人が承継する場合、その評価額をもとに相続税が課税されます。
  • 例えば、遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、超過分に対して相続税が発生します。

贈与税が課されるケース

  • 被相続人が生前に株式を贈与していた場合、贈与税が適用されます。
  • 贈与税は相続税より税率が高いため、計画的な生前贈与が重要です。

評価額による税額の変動と節税対策

株式の評価額が高くなれば相続税額も増えるため、適正な評価を行い、無駄な税負担を避けることが重要です。節税対策として以下の方法が考えられます。

基準日を適切に選ぶ

上場株式の評価では、相続開始日の終値だけでなく、過去3ヶ月の平均価格も考慮できるため、有利な基準を選択することで税負担を抑えられます。

非上場株式の場合、純資産価額方式の影響を考慮する

会社の財務状況を適正に反映するために、不要な資産を整理し、純資産を適正水準に保つことが求められます。

事業承継税制の活用

一定の要件を満たす場合、非上場株式の相続にかかる相続税の納税猶予・免除制度を利用できる可能性があります。

株式の時価と税務リスク

適正な評価を行わず、過大評価または過小評価が発生すると、税務リスクが生じる可能性があります。

過大評価のリスク

実際の市場価格よりも高い評価額を採用してしまうと、相続税負担が増加し、相続人にとって不利益になります。

過小評価のリスク

  • 税務調査で指摘を受けた場合、追徴課税や加算税の対象となる可能性があります。
  • 特に非上場株式は、適正評価を行わないと「財産評価基本通達」に基づく再評価が求められる場合があります。

5.株式評価に関するよくある質問

株式評価は専門的な知識が求められるため、多くの人が疑問を抱くポイントです。ここでは、よくある質問とその回答をまとめました。

Q1: 株式評価は誰が行うべき?

A: 相続税申告の際、株式評価は税理士や財産評価の専門家(公認会計士・鑑定士など)に依頼するのが一般的です。

また、相続税対策として株式を生前贈与する場合も、事前に専門家と相談することで税務リスクを軽減できます。

上場株式であれば比較的シンプルな計算で済みますが、非上場株式は評価方法が複雑であるため、専門家に依頼するのが無難です。

Q2: 株式評価額が変動した場合の対処法は?

A: 相続開始後に株価が大幅に変動した場合、税務上の対策として以下の方法が考えられます。

株式を売却することで評価額を確定させ、換価分割を行う(ただし、売却時の譲渡所得税にも注意)。

上場株式の場合、過去3ヶ月の平均価格を選択し、評価額を調整する。

非上場株式の場合、財務状況を適正に反映させるため、税務専門家に相談しながら評価方法を再検討する。

Q3: 相続税の申告期限と注意点

A: 相続税の申告期限は、相続開始(被相続人の死亡)から 10ヶ月以内 です。

遺産分割協議がまとまらない場合でも、期限内に申告を行い、後日修正申告を行うことも可能です。

この期間内にすべての財産を評価し、申告・納税を完了させる必要があります。

遅れると延滞税や加算税が発生するため、計画的に進めることが重要です。

6.まとめ | 適正な株式評価でスムーズな相続を!

相続時の株式評価は、相続税の計算に大きく関わる重要なプロセスです。上場株式は市場価格を基に評価され、相続開始日の終値や過去3ヶ月の平均価格から最も低い価格を採用することで税負担を軽減できます。一方、非上場株式は市場価格がないため、類似業種比準方式や純資産価額方式などを用いて評価し、適正な算定が求められます。

評価方法を誤ると、相続税の負担が増加するだけでなく、税務調査で問題視されるリスクもあるため、慎重な対応が必要です。特に非上場株式の場合、評価基準によって価値が大きく変わるため、専門家の助言を受けながら適切な評価を行うことが望ましいでしょう。また、評価額を抑えるための節税対策として、基準日の選択や事業承継税制の活用、生前贈与の検討などが有効です。

相続税の申告期限は相続開始から10ヶ月以内であり、遺産分割が決まっていなくても期限内に申告する必要があります。申告が遅れると延滞税や加算税が発生するため、計画的な準備が重要です。円滑な相続を実現するためには、生前から株式の相続について家族と話し合い、遺言書の作成や専門家への相談を進めることが大切です。

本記事の内容を参考に、適正な株式評価を行い、スムーズな相続手続きを進めていきましょう。