目次
はじめに:相続における「株式評価」がなぜ重要なのか?
相続の手続きにおいて、「株式の評価」は非常に重要なテーマです。
特に、被相続人(亡くなった方)が自社株や未上場株式を保有していた場合、その評価額によって相続税の額が大きく変動する可能性があります。
株式は現金のように価値が固定されているわけではなく、「いつ」「どの方法で」評価するかによって金額が大きく異なるのが特徴です。
そのため、評価の方法を誤ると、本来よりも高い相続税を支払うことになったり、相続人同士のトラブルに発展したりするケースも珍しくありません。
さらに、非上場株式(市場で取引されていない株式)の場合、その評価は複雑になりがちです。
国税庁のルールに基づき、「類似業種比準方式」や「純資産価額方式」などを使って評価を行う必要があり、専門的な知識がないと判断を誤るリスクがあります。
一方、株式を正しく評価できれば、不要な税負担を減らしたり、生前からの相続対策に活かすことができたりと、大きなメリットも得られます。
つまり、株式の評価を理解することは、単なる税務手続きの一部ではなく、家族の資産と関係性を守るための重要なポイントでもあるのです。
この記事では、2025年時点での最新ルールや実務の流れを踏まえながら、「上場株式と非上場株式の違い」「評価方法の種類と選び方」「相続で起こりがちなトラブルとその防止法」などを、できるだけわかりやすく丁寧に解説していきます。
相続を控えている方、すでに手続きに入っている方、あるいはこれから相続対策を検討している方にも役立つ内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
株式評価の基本|初心者にもわかるしくみ
株式の相続に関する話を聞いたとき、多くの方がまず感じるのは「難しそう」「専門的でよくわからない」という不安です。
でも大丈夫。まずは、「そもそも株式の評価ってなに?」という基本から、できるだけやさしく解説していきます。
株式は「財産のひとつ」
亡くなった方が持っていた財産は、相続人に引き継がれます。これを「相続財産」といいます。
現金や不動産だけでなく、株式も立派な財産のひとつです。
そして、相続税を計算するためには、その株式が「いくらの価値があるか(=評価額)」を明らかにしなければなりません。
ここで言う「評価額」は、売買価格とは異なる場合があるのがポイントです。
なぜ「評価額」が必要なのか?
相続税は、相続された財産の「時価(その時点での価値)」に基づいて計算されます。
つまり、相続が発生したタイミング(=被相続人が亡くなった日)に、「その株式がいくらだったか」を評価する必要があるのです。
たとえば、銀行にある預金は金額がハッキリしているため、評価は簡単です。
でも、株式は会社の業績や市場状況によって価格が変わるため、評価の方法がより複雑になります。」
上場株式と非上場株式の違い
株式には大きく分けて2種類あります。
種類 | 内容 | 評価のしやすさ |
---|---|---|
上場株式 | 証券取引所で売買されている株式(例:トヨタ株など) | 比較的かんたん |
非上場株式 | 市場に出ていない株式(中小企業の株など) | 複雑で専門的 |
上場株式は市場価格(株価)が明確なので、評価はルールに基づいて比較的スムーズに行えます。
一方、非上場株式は「いくらで売れるか」がわかりにくいため、国税庁が定めた評価方法に従って算出しなければなりません。
この非上場株式の評価が、相続実務で最も難しい部分のひとつとされています。
株式評価にはどんな方法があるの?
評価の方法は、株式の種類や会社の状況によって異なりますが、大きく次のように分けられます:
- 上場株式: 市場価格に基づく評価(詳細は次章で解説)
- 非上場株式: 以下の3つの方式
① 類似業種比準方式
② 純資産価額方式
③ 配当還元方式
これらの方式については、第4章で詳しく紹介します。
評価額によって税金が大きく変わる!
ここがポイントです。評価額が1,000万円違えば、相続税額も数百万円単位で変わることがあります。
特に、非上場株式は評価方法によって数値が大きく変わるため、どの方法を使うか、どう評価するかによって、家族全体の納税負担に大きな影響が出るのです。
専門知識が必要になる理由
「株式の評価ぐらい、自分でやってもいいのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、特に非上場株式の場合、決算書の読み解き、財務データの分析、税務上の判断などが必要になります。
そのため、税理士や行政書士などの専門家に依頼するケースが多いのが現実です。
まずは「知ること」から始めよう
いきなり全部を理解しようとしなくて大丈夫。
この記事では、評価方法や相続の実務について、少しずつ分かりやすく解説していきます。
「まずは全体像を知ること」から始めるだけでも、今後の対応がグッと楽になりますよ。
まとめ:ここまでのポイント
- 非上場株式の評価は専門性が高く、慎重に行う必要がある
- 株式も相続財産のひとつで、相続税の対象になる
- 評価額は、相続税額を大きく左右する重要な要素
- 上場株と非上場株で評価方法が異なる
上場株式の評価方法と注意点
相続財産に「上場株式(証券取引所で売買されている株式)」が含まれている場合、その評価方法は明確にルール化されています。
ただし、評価時点や計算方法によって金額に差が出ることもあるため、注意が必要です。
この章では、上場株式の評価方法と、実務上の注意点をわかりやすく解説します。
上場株式は「市場価格」で評価する
上場株式は、日々の株価が公開されているため、評価は市場価格(時価)に基づいて行います。
相続税の申告では、被相続人が亡くなった日(課税時期)の株価を基準にします。
評価額の基準は「4つの価格のうち最も低いもの」
国税庁のルールでは、評価の対象となるのは以下の4つの価格のうち、最も低い価格です。
- 課税時期の終値
- 課税時期の属する月の毎日の終値の平均額(=月平均)
- 課税時期の前月の毎日の終値の平均額(=前月平均)
- 課税時期の前々月の毎日の終値の平均額(=前々月平均)
たとえば…
被相続人が2025年6月15日に亡くなった場合:
- ① 2025年6月15日の終値
- ② 2025年6月の終値の平均
- ③ 2025年5月の終値の平均
- ④ 2025年4月の終値の平均
この中で最も低い価格が評価額となります。
なぜ「一番安い値」が使われるの?
これは、相続人の負担を軽減するためです。
評価額が高くなると相続税も高くなってしまうため、公平性と納税者保護の観点から「最も低い価格」を採用する仕組みになっています。
株式数 × 評価額 = 相続財産の評価額
評価額が決まったら、保有株数を掛けて相続財産としての価値を算出します。
例)評価額が1株あたり1,200円、保有株が3,000株の場合
→ 1,200円 × 3,000株 = 3,600,000円(=相続財産)
この金額が、相続税計算の対象になります。
注意点
①:評価時点の特定ミスに注意!
評価日は被相続人が死亡した日ですが、死亡日を含めて株価の動きを確認しないと、間違った価格を使ってしまうケースがあります。
証券会社の取引明細や報告書だけを鵜呑みにせず、自分で国税庁の「財産評価基準書」などで株価を確認することが大切です。
②:株価が大きく変動している場合
相続発生前後に株価が急落していた場合、月平均・前月平均・前々月平均が課税時期の価格より高くなる可能性もあります。
その場合、課税時期の終値が最も低くなり、評価額も抑えられます。
しかし、相続人によっては「こんなに下がったのに?」と混乱することもあるため、家族間での認識共有も重要です。
注意点③:複数の証券口座がある場合は要注意
被相続人が複数の証券会社に口座を持っていた場合、全体の株式残高を正確に把握していないと、一部の株式を申告し忘れるリスクがあります。
相続人が「知らなかった」「聞いていなかった」という理由で申告を漏らすと、後から税務署に指摘され、追徴課税の対象になる恐れもあるので注意が必要です。
【実例】評価ミスで相続税が数百万円増加したケース
ある相続事例では、上場株式の月平均価格を正しく確認せず、「6月15日の株価」でそのまま評価してしまいました。
実際には5月の月平均の方が低かったため、もし正しい評価方法を取っていれば、約150万円相続税が少なくて済んだという結果に…。
専門家の力を借りるのも選択肢
上場株式の評価はルールが明確な分、間違えた場合に修正が難しい側面もあります。
とくに相続税の申告期限(相続発生から10ヶ月)に間に合わせるためにも、税理士など専門家のアドバイスを受けることが安心につながります。
まとめ:上場株式評価のポイント
- 複数口座・株数の管理も見落としがちなので要注意
- 評価額は「4つの株価」の中から最も低いものを選ぶ
- 評価基準を間違えると相続税が過大になるリスクあり
- 株価変動が激しい時期は、月平均との比較が重要
非上場株式の評価方法(3方式とその使い分け)
非上場株式の評価は、相続財産の中でもとくに難しい領域です。
「市場で売買されていない=価格がはっきりしない」ため、会社の財務状況や業種、配当実績などをもとに評価額を算出します。
評価方法を間違えると、数百万円単位で相続税が変わってしまうことも。
ここでは、非上場株式の評価に使われる3つの代表的な方式をわかりやすく解説し、どの方法をいつ使うべきかについても整理していきます。
非上場株式とは?
非上場株式とは、証券取引所に上場していない会社の株式です。
たとえば、家族経営の中小企業や地方の老舗企業などが該当します。
これらの株式は市場価格がないため、評価には国税庁が定めたルール(財産評価基本通達)を用います。
評価方法は主に3つ
国税庁が定める非上場株式の評価方法には、以下の3つがあります:
評価方法 | 特徴 | 適用されやすいケース |
---|---|---|
類似業種比準方式 | 同業の上場企業と比較して算出 | 大企業・黒字企業・配当あり |
純資産価額方式 | 会社の資産と負債をベースに計算 | 赤字企業・資産型会社 |
配当還元方式 | 将来得られる配当を基準に評価 | 小規模会社・少数株主 |
① 類似業種比準方式
この方式は、上場している類似業種の企業と比較して評価する方法です。
会社の「利益・配当・純資産」の数値を、同業他社のデータと比較しながら、次の式で算出します。
評価額 = 配当金 × 配当比率
+ 利益 × 利益比率
+ 純資産 × 純資産比率
評価式のイメージ
各比率は、国税庁が毎年公表する業種別データ(類似業種比準株価表)を参照します。
特徴とメリット
- 黒字企業や成長企業では、実際の企業価値に近い評価額が出やすい
- 相続税評価額が高くなりやすい
注意点
- 決算書の精度が問われる(赤字だと適用が難しい)
- 比較対象となる業種選定を誤ると、評価が高く出すぎるリスクがある
② 純資産価額方式
会社が保有する資産から負債を引いて、会社の純粋な資産価値をもとに評価する方法です。
不動産・現預金・有価証券などの評価も必要になります。
評価式のイメージ
(資産の時価総額 − 負債)÷ 発行済株式数 = 1株あたりの評価額
特徴とメリット
- 赤字企業や活動の少ない会社にも適用しやすい
- 実質的な解散価値を示すため、安定した評価が出る
注意点
- 評価する資産の「時価」をどう算定するかがカギ
- 不動産が多い場合は不動産評価の難易度が上がる
- 税理士の実務経験によって評価額が大きく変わる可能性も
③ 配当還元方式
これは、株主が得られる配当収入をもとに株式の価値を評価する方法です。
相続人が少数株主であり、会社経営に関与しないケースに使われることが多いです。
評価式のイメージ
評価額 = 年間配当金 ÷ 10%
(例:年間配当が3,000円 → 評価額は30,000円)
特徴とメリット
- 評価額が圧倒的に低くなるケースが多い
- 中小企業の少数株主にとって有利な方式
注意点
- 配当実績がないと使えない
- 株式の保有割合が多い場合には使えない(会社の経営権を持っているとみなされる)
- 法人名義での保有には原則として適用不可
評価方法の選び方|どれを使えばいいの?
評価方法の選択は、会社の規模・業績・株主構成によって決まります。
実務上は、以下のような基準で判断されます。
- 中小企業のオーナー株主 → 類似業種比準方式 or 純資産価額方式
- 会社を経営していない少数株主 → 配当還元方式
- 会社の業績が不安定 → 純資産価額方式の方が適している可能性あり
また、同じ非上場株式でも、誰が相続するか(株式の保有割合)によって評価方法が異なることもあるため、注意が必要です。
評価の選択ミスは高額課税の原因に!
たとえば、本来「配当還元方式」で評価できる少数株主なのに、類似業種比準方式で評価してしまうと、10倍以上の評価額になることも。
このようなミスを防ぐには、株主構成・会社の内容・申告の目的を正確に把握した上で、最適な評価方法を選択することが重要です。
【ポイントまとめ】
- 評価選択は非常に専門的な判断が必要=専門家への相談が不可欠
- 非上場株式の評価方法は3つ(類似業種比準/純資産/配当還元)
- 会社の業績・資産・株主構成により、使う評価方法が異なる
- 配当還元方式は評価額が低くなる傾向があり、少数株主に有利
- 評価方法を間違えると、相続税額が大きく変わってしまう
画的な準備が重要です。円滑な相続を実現するためには、生前から株式の相続について家族と話し合い、遺言書の作成や専門家への相談を進めることが大切です。
本記事の内容を参考に、適正な株式評価を行い、スムーズな相続手続きを進めていきましょう。
事例で学ぶ相続トラブルとその防止策
非上場株式を含む相続には、思わぬ落とし穴が潜んでいます。
評価を誤ったり、株式の分け方で意見が食い違ったりと、家族や親族の間に深刻なトラブルが発展するケースも珍しくありません。
ここでは、実際に起こりがちなトラブル事例をもとに、なぜ起きるのか・どう防ぐべきかをわかりやすく解説します。
トラブル事例
① 評価方法を誤って相続税が高額に
状況
父親が亡くなり、家族経営の中小企業の株式を相続することになったAさん。
父はオーナー社長で、株式のほとんどを保有していました。
専門家に相談せず、ネットで調べた情報をもとに「純資産価額方式」で評価を行った結果、会社が保有する不動産の含み益が反映され、株式評価額が大きく膨らんでしまいました。
その結果、数千万円単位の相続税が発生。本来は「類似業種比準方式」の方が妥当だった可能性もありました。
教訓と対策
- 非上場株式の評価は、一見シンプルでも専門知識が不可欠
- 財務内容によっては評価方法を使い分ける必要あり
- 税理士に早めに相談して「複数の試算結果」を比較検討することが重要
② 株式の分け方でもめて家族が対立
状況
会社経営者だった父親が他界し、遺された家族で相続協議をすることに。
相続財産には自宅や現金のほか、自社株が多数含まれていました。
長男は会社の後継者、次男と長女は経営に関与しておらず、株に対する理解も関心もありません。
しかし、遺言がなかったため「平等に分けるべき」と主張した次男と長女が、
株式の相続割合をめぐって激しく対立。会社の経営権にも影響し、数年にわたる裁判に発展してしまいました。
教訓と対策
- 株式は「分けにくい財産」=均等に分けると会社経営が不安定になるリスク
- 事前に遺言や事業承継計画を立てておくことで、相続後の混乱を防げる
- 「代償分割」などの手法で他の相続人に納得してもらう工夫が必要
③ 納税資金が用意できず、株式を手放す羽目に
状況
会社を経営していた母が亡くなり、長女が株式を相続することに。
ただし現金はほとんどなく、相続税の納税資金が足りない状態でした。
仕方なく、会社の株式の一部を第三者に売却して納税資金を確保。
その結果、会社の支配権が一部外部に移り、経営上の意思決定に支障が出るようになってしまいました。
教訓と対策
- 株式相続は「現金が入ってくるわけではない」が、「税金は現金で支払う」必要がある
- 事前に納税資金を用意しておく or 延納・物納などの制度を検討する
- 生前贈与や生命保険の活用も有効な資金対策になる
④ 申告漏れで追徴課税に
状況
父の相続で、証券会社に口座がある株式はきちんと評価・申告していたBさん。
ところが後日、父がかつて経営していた会社の非上場株をまだ保有していたことが判明。
その会社はすでに廃業しており、価値がないと思って申告していなかったのです。
しかし、税務署の調査により保有が明るみに出て、
「申告漏れ」と判断されて過少申告加算税と延滞税が課せられる事態に。
教訓と対策
- 「もう使ってない会社の株=価値なし」と自己判断しないこと
- 非上場株式はたとえ休眠状態でも、適切に評価・申告する義務あり
- 相続財産調査では「古い会社・取締役履歴」なども洗い出すのが大事
⑤ 名義株を放置してトラブルに
状況
父が経営していた会社では、節税対策の一環で、親族名義で株式を分散保有していました。
しかし、実際には「名義だけ借りていた株式」で、配当も経営権もすべて父が管理していた状態。
相続後、名義上の株主となっていた叔父が「これは自分の持ち分だ」と主張し、
株式の所有権を巡って親族間の紛争に発展。裁判にまで至ってしまいました。
教訓と対策
- 節税目的での「名義株」には大きなリスクがある
- 実質的に誰が保有しているのかを記録・整理しておくことが重要
- 生前に株主名簿と実態の整合性を取っておかないと、相続時に争いの火種に
⑥ 評価額の不一致で税務調査が入った
状況
Cさんは、相続で非上場企業の株式を受け継ぎました。
知人の税理士に評価を依頼したところ、「純資産価額方式」で評価額を1株あたり2万円と算出。
相続税の申告も完了していました。
ところが1年後、税務調査が入り、税務署側が「類似業種比準方式が妥当」と判断。評価額が倍以上に修正され、追加納税を求められることに。
教訓と対策
- 評価方法の選択には明確な根拠と整合性が必要
- 税理士の経験・専門性によって判断が分かれるケースがある
- 万一の税務調査に備えて、評価方法の説明資料や試算根拠を残しておくことが重要
トラブルの多くは「準備不足」から生まれる
ここまで紹介した事例に共通しているのは、生前の対策や情報整理が不十分だったことです。
- 会社の株式が相続財産になるという意識がなかった
- 評価方法を理解しないまま申告を進めてしまった
- そもそも「株式はどう扱えばいいのか」が家族間で共有されていなかった
これらはすべて、事前の備えで防げる可能性が高いトラブルです。
トラブルを防ぐための3つのポイント
- 評価方法を正しく理解し、複数の試算をしておくこと
→ 評価方法の違いで税額に差が出ることを知っておく - 遺言や事業承継の計画を立てておくこと
→ 相続人間で揉めない仕組みを生前に作っておく - 納税資金の準備と相談先の確保
→ 生命保険や専門家の活用で、相続税支払いに備える
まとめ:トラブル事例は「他人事ではない」
- 非上場株式の評価・分配・納税には、トラブルの種がたくさんある
- 多くは「知らなかった・準備していなかった」ことが原因
- この記事を読んでいる「今」が、対策を始めるチャンス!
株式評価を活かした相続対策
ここまで読んで「非上場株式の評価って複雑で大変そう…」と思った方もいるかもしれません。
でも裏を返せば、評価額が変動しやすいからこそ、事前の対策で相続税を大きく抑えるチャンスがあるとも言えます。
この章では、「損しない相続」のためにできる株式評価を活かした5つの相続対策をご紹介します。
対策①:定期的に自社株の評価額を把握しておく
非上場株式の価値は、会社の業績や資産状況により年々変動します。
しかし、多くの中小企業では「自社株が今いくらか」を正確に把握していないのが実情です。
実は、自社株の評価額を年1回でも確認しておくだけで、
- 将来的な相続税の見積もりができる
- どの評価方式が有利か見えてくる
- 生前贈与や事業承継のタイミングを判断できる
など、あらゆる相続対策の出発点になります。
対策②:評価額が低いうちに生前贈与を検討する
株式の評価額が高くなる前に、一部を生前贈与しておくことで相続財産を減らすことができます。
たとえば、会社の売上が伸びて評価額が上がる前に、評価額が安いうちに後継者に株を移しておけば、贈与税・相続税の総額を抑えることが可能です。
また、2024年の税制改正により、暦年贈与と相続時精算課税制度の使い分けが柔軟になったことも追い風です。
注意点
- 株式の贈与は税務上も法務上も複雑なので、専門家のサポートが必須
- 評価額によっては「贈与税」が高額になることもあるので、贈与前に必ずシミュレーションを!
対策③:自社株を生命保険でカバーする
相続税は、基本的に「現金で一括納付」しなければなりません。
しかし、株式は「価値はあるけど現金にならない資産」の代表格です。
このギャップを埋めるのが、生命保険を使った納税資金対策です。
たとえば、株式を相続する予定の子に対して、相続税相当額の保険金が出るよう設計すれば、
- 納税資金を確保できる
- 株式を売らずに済む
- 相続人の負担を減らせる
というメリットがあります。
対策④:事業承継税制の活用
2025年時点でも、「特例事業承継税制」という非常に強力な制度が利用可能です。
これは、一定の条件を満たせば、非上場株式にかかる相続税・贈与税の納税が猶予・免除される制度です。
主な要件(簡略版)
- 中小企業であること
- 後継者が親族や役員であること
- 経済産業大臣の認定を受けること
- 株式を継続保有し、雇用維持などの条件を守ること
この制度を使えば、数千万円〜億単位の税負担が実質ゼロになる可能性もあります。
注意点
- 制度の適用には事前計画と書類作成が必須
- 要件を満たさなくなると「猶予された税金を一括納付」する必要あり
- 専門家(税理士・行政書士・認定支援機関)との連携が不可欠
対策⑤:遺言書と事業承継計画をセットで準備する
株式をどう相続させるかは、評価額だけではなく、家族間の合意形成やビジョンの共有も大切です。
そこで重要なのが、
- 公正証書遺言での明文化
- 中長期的な事業承継計画の策定
の2つです。
特に、後継者が決まっている場合は、
- 自社株の相続割合
- 他の相続人への代償分割や納得材料
を、事前に話し合っておくことが相続トラブルを防ぐカギになります。
【まとめ】評価を知ることが最大の相続対策
株式の評価は専門的で難しそうに感じますが、正しい評価を知り、今から備えることができれば、相続の9割は防げると言っても過言ではありません。
何も準備しないまま相続が始まると、
- 株式の分け方で家族がもめる
- 相続税が払えず経営が揺らぐ
- 税務署とのトラブルが発生する
といった問題が一気に押し寄せてきます。
でも、今日この知識に触れたあなたには、備えるチャンスがまだあります。
やっておくべき実務チェックリスト
- ☐ 自社株の評価を年1回は試算しているか
- ☐ 生前贈与・納税対策をシミュレーションしたことがあるか
- ☐ 遺言書や事業承継計画を作成済みか
- ☐ 専門家に相談するパートナーが決まっているか
次章では、制度改正や最新情報にも触れながら、「2025年の今」知っておくべきポイントをまとめていきます。
2025年最新|制度改正と動向まとめ
相続や株式評価をめぐる制度は、毎年少しずつ見直しが行われています。
2024年〜2025年にかけても、いくつか実務に大きな影響を与える制度改正や動きがありました。
この章では、2025年時点で知っておくべき最新の制度改正・注目トピックをわかりやすく解説します。
❶ 2024年の贈与税改正で「生前贈与」の考え方が変わった
2024年1月より、「相続開始前3年以内の贈与加算期間」が7年に延長されました。
これは「駆け込み贈与での相続税回避」を防ぐための制度変更です。
【これまで】
→ 死亡前3年以内の贈与は相続税の対象
【2024年以降】
→ 2024年以降の贈与は、段階的に最長7年分が加算対象
ただし、以下の「加算額控除枠」が設定されたため、
年間110万円以下の贈与については実質的に影響を受けないケースもあります。
実務への影響
- 相続対策として「毎年少しずつ贈与」していた人は、より長期的な計画が必要に
- 株式の贈与も、「どのタイミングで誰に渡すか」の戦略が重要に
- 贈与税と相続税の最適なバランスを、専門家と一緒にシミュレーションすることが推奨される
❷ 事業承継税制(特例措置)の期限が迫る
2025年現在、中小企業の自社株を贈与・相続する際に、納税が猶予・最終的に免除される「特例事業承継税制」が引き続き利用可能です。
この制度は2027年12月末までの「特例承継計画の提出」が必要で、期限内に計画を出さなければ制度自体が使えなくなるリスクがあります。
制度のポイント
- 贈与・相続された株式の相続税・贈与税が100%猶予
- 要件を満たせば、そのまま納税免除になる
- 会社を継ぐ後継者が決まっている場合、非常に有利な制度
実務への影響
- 「自社株評価が高くて相続税が払えない」人にとって救済的な制度
- ただし、制度の適用には「計画提出」「認定支援機関の確認」「雇用維持要件」など複雑な要件あり
- 専門家と早めにスケジュールを組む必要あり(制度終了が見えているため急務!)
❸ 相続登記の義務化(2024年施行)
株式とは直接関係ありませんが、2024年4月から不動産の相続登記が義務化されました。
これは、放置された土地の増加が社会問題となっていたことに対応するものです。
【概要】
- 不動産を相続した人は、取得を知った日から3年以内に登記を行う義務
- 登記しないと10万円以下の過料が科されることも
実務への影響
- 株式と不動産を一緒に相続する場合、登記手続きの優先順位にも注意が必要
- 相続財産全体の整理・分割・納税スケジュールをしっかり立てる必要性が高まった
【まとめ】今、知って動くべき3つの理由
- 贈与税・相続税のルールが変わった今こそ、計画が必要
- 事業承継税制は期限が迫っており、待ったなし
- AI時代の情報発信では、信頼性と網羅性が差を生む
「まだ時間がある」ではなく、「今なら間に合う」が正しい認識です。
次章では、これまでの内容を踏まえ、読者が実際に何から始めるべきかを整理していきます!
よくある質問Q&A|相続と株式評価の疑問を解決!
相続に関する知識や手続きは、専門的な言葉が多く、混乱しがちです。
ここでは、「株式の相続」に関してよくある質問をQ&A形式でまとめました。
短く、わかりやすく回答していますので、気になるものがあればぜひ参考にしてください。
Q1. 上場株式と非上場株式の違いって何ですか?
A.上場株式は証券取引所で自由に売買できる株式で、評価は市場価格に基づきます。
非上場株式は市場での取引がなく、会社の財務状況や業種を元に国税庁のルールで評価されます。
Q2. 非上場株の評価は自分でもできますか?
A.理論的には可能ですが、財務諸表の読み解き・評価方法の選択・税務知識が必要です。
評価額によって相続税が大きく変わるため、税理士や専門家のサポートを受けるのが一般的です。
Q3. 評価方法は自由に選べますか?
A.原則として、会社の規模や株主構成によって評価方法が決まります。
一部、複数の評価方法から選択できるケースもありますが、その場合も根拠が必要です。
不適切な方法を選ぶと、税務調査で否認されることもあります。
Q4. 株式が相続財産に含まれているかわからない場合は?
A.以下をチェックしてください。
- 証券会社の口座明細
- 株主名簿(非上場企業の場合)
- 法人の登記簿や定款など
また、相続開始後に「被相続人名義の株式口座」や「旧証券会社の統合履歴」を調べるのも有効です。
Q5. 相続した株式をすぐ売却してもいいですか?
A.上場株式は自由に売却可能ですが、相続税申告前に売却すると評価額との乖離が生じ、損をすることも。
また、非上場株式は譲渡に制限があることが多く、原則として会社の承認が必要な場合があります。
Q6. 相続人が複数いるとき、株式はどう分けるの?
A.株式は「物理的に分けにくい財産」なので、次のような方法が考えられます。
- 共有にする(全員で所有) → トラブルの原因になりやすい
- 代償分割(株式は1人に、他の人に代わりのお金や不動産を渡す)
- 換価分割(株式を売却して、現金を分ける)
特に非上場株は経営権と密接に関わるため、慎重な分割計画が必要です。
Q7. 配当が出ていない会社でも株式評価されますか?
A.はい、されます。
配当がない場合は「配当還元方式」は使えませんが、その場合でも「類似業種比準方式」や「純資産価額方式」で評価されます。
Q8. 税務署と評価額が食い違ったらどうなる?
A.税務署が別の評価方法や数値を主張した場合、修正申告や追徴課税の対象になります。
評価の根拠(計算式・資料・専門家の意見書など)を準備しておくと、防御力が高まります。
Q9. 株式の相続って、いつまでに何をすればいいの?
A.基本的なスケジュールは以下のとおりです。
時期 | やること |
---|---|
相続開始(死亡)から3ヶ月以内 | 相続放棄の判断・遺産調査 |
4ヶ月以内 | 被相続人の準確定申告(所得税) |
10ヶ月以内 | 相続税の申告と納付(※評価額の確定含む) |
※期限を過ぎると、加算税や延滞税の対象になる可能性があります。
Q&Aまとめ
- よくある疑問を一つずつクリアにしておくことで、相続トラブルを未然に防ぐことができます
- 特に「評価方法」「誰が株を持つか」「いつ何をやるか」は重要テーマです
- 迷ったときは、一人で抱え込まず専門家への相談を検討しましょう!
次章では、この記事のまとめとして、読者が今すぐ取り組める「実践ステップ」を紹介します!
まとめ|評価で損しない!正しく理解し、備えることが相続の第一歩
株式の相続は、現金や不動産とは違い、「目に見えない価値」と「目に見えないリスク」がついて回る財産です。
特に非上場株式は、評価方法によって相続税額が大きく変わり、分け方によっては家族間のトラブルに発展することもあります。
でも、逆に言えば…株式評価を正しく理解し、適切に備えておくことで、
- 不必要な税負担を減らせる
- 相続手続きをスムーズに進められる
- 会社や家族の未来を守ることができる
そんな可能性を秘めた「相続対策のカギ」となるのです。
本記事でお伝えしてきた要点を振り返ると…
株式評価の基本
- 上場株式は市場価格を基準に、4つの評価額のうち最も低い価格で評価
- 非上場株式は「類似業種比準方式」「純資産価額方式」「配当還元方式」の3つが基本
評価額の違いが税額に直結する
- 評価を誤ると、数百万円〜数千万円の差になるケースも
- 専門知識が求められるため、自己判断には限界がある
トラブル事例から学ぶこと
- 評価方法の選択ミス、株式の分割でもめる、納税資金の不足など、多様なリスクがある
- 多くのトラブルは「生前対策と情報共有の不足」が原因
対策としてできること
- 株式の定期評価、生前贈与、納税資金の確保、事業承継税制の活用
- 専門家と連携しながら、中長期的な視点で準備を進めることが重要
今日から始める5つのアクション
この記事を読んだあなたが、「何をすればいいか分からない」と悩まないように、
今すぐできる5つのステップをご紹介します!
1. まず、自分に関係する株式があるか調べる
→ 家族や自分が株式を持っているか、どんな種類かを確認しましょう
2. 株式の評価額を試算してみる
→ 上場株ならネットで、非上場株なら専門家に相談してみましょう
3. 株式を相続する人・しない人を想定する
→ どの相続人が株を持つべきか、代償分割の可能性も考えておくと◎
4. 評価や贈与について、税理士にシミュレーションを依頼
→ 1人で悩まず、専門家と相談しながら方針を立てるのが得策
5. 将来に備えた「家族との対話」を始める
→ 相続は法律の問題だけでなく、「人間関係と感情」の問題でもあります
今のうちから少しずつ話し合っておくことが、何よりの備えになります
最後に:相続は「起きてから考える」では遅い!
相続は、いつ・誰に起きるか分からない人生のイベントです。
だからこそ、「今、知ること」「今、備えること」が、最大の相続対策になります。
このページが、あなたやあなたのご家族の未来を守る第一歩となれば幸いです。
疑問や不安があれば、まずは専門家に相談してみてください。
株式の相続、もうよくわからないでは済ませられない時代です。
正しい知識と準備で、大切な資産と家族の絆を守りましょう。