目次
1. はじめに
「生命保険に税金がかかるなんて知らなかった」
これは、保険金を受け取った人からよく聞く声です。実際、多くの方が「生命保険=非課税」と思い込んでいたり、「税金のことは受け取ってから考えればいい」と後回しにしてしまっています。
しかし、生命保険金が相続税の課税対象になることがあるという事実を知らずにいると、本来受け取れる金額から想定外の税金が差し引かれることになりかねません。反対に、正しく制度を理解しておけば、相続税の軽減や節税に大きく貢献できる可能性もあります。
とくに知っておきたいのが、「500万円 × 法定相続人の数」という生命保険独自の非課税枠の存在。この制度を活用すれば、数百万円単位の税負担を避けられるケースもある一方、誤解や手続きのミスで本来なら非課税になるはずの金額に課税されてしまうことも珍しくありません。
本記事では、そんな「生命保険の非課税枠」について、基礎から応用まで徹底的に解説します。
以下のような方にとって、必ず役立つ内容になっています。
- 生命保険の受取人になる予定のある方
- 相続税の基礎を学びたい方
- 節税として生命保険の活用を考えている方
- 税務署や専門家に相談する前に最低限の知識を持っておきたい方
「知らなかった」で損をしないために、まずは正しい情報から始めましょう。
2. 生命保険と相続税の関係
生命保険金が受け取れることは、多くの場合安心と経済的支えを意味します。しかし、それが「税金の対象になる」と聞くと驚かれる方も少なくありません。
そもそも、なぜ生命保険金が相続税の対象になるのでしょうか?
ここでは、その仕組みや背景をわかりやすく解説していきます。
2-1. 生命保険金は「みなし相続財産」
生命保険金は、厳密には被相続人(亡くなった人)の財産ではなく、保険契約に基づいて受取人が受け取るお金です。しかし、相続税法上は「みなし相続財産」として扱われます。
みなし相続財産とは?
法的には遺産ではないけれど、「亡くなったことを原因として得られる財産」のこと。
具体的には、以下のようなものが該当します。
- 生命保険金
- 死亡退職金
- 弔慰金(一定額を超える場合)
このような財産は、相続税の計算対象になるという点で、遺産とほぼ同じ扱いになります。
2-2. 相続税の対象になるかどうかは「契約形態」で決まる
生命保険金が必ずしも相続税の対象になるとは限りません。
実は、契約者・被保険者・受取人の組み合わせによって課税関係が異なります。
契約者 | 被保険者 | 受取人 | 課税される税金の種類 |
---|---|---|---|
被相続人 | 被相続人 | 法定相続人 | 相続税(みなし相続財産) |
配偶者 | 被相続人 | 子ども | 贈与税(特別な事情がある場合) |
子ども | 被相続人 | 子ども | 所得税(一時所得) |
上記のように、「誰がお金を払っていたか(契約者)」と「誰が保険金を受け取るか」によって、相続税・贈与税・所得税のどれが課税されるかが変わるのです。
2-3. 相続税の基礎控除との関係
相続税には、生命保険金の非課税枠とは別に「基礎控除」があります。
相続税の基礎控除額:3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
この控除内であれば、生命保険金を含めた相続財産がすべて非課税になります。
ただし、基礎控除を超えた場合は、生命保険金の非課税枠をどう活かすかが節税のカギになります。この非課税枠については、次章で詳しく解説します。
2-4. 生命保険は「現金で入る相続財産」
一般的な相続財産(不動産、株式など)は換金に時間がかかる場合も多いですが、生命保険はすぐに現金として受け取れるため、葬儀代や相続税の納税資金にも役立ちます。
このように、生命保険は単なる遺産ではなく、相続税対策・資金準備として非常に重要な役割を果たすのです。
3. 非課税になる条件とは?
生命保険金には、相続税がかからない特別な非課税枠が用意されています。
この制度を理解し、正しく活用することで、相続時の税負担を大きく軽減することが可能です。
この章では、生命保険金が非課税になる条件とその具体的な活用方法について、事例を交えながら解説します。
3-1. 非課税枠の基本:「500万円 × 法定相続人の数」
相続税法において、生命保険金は「みなし相続財産」として課税対象になりますが、以下の条件を満たすと、一定額まで非課税になります。
非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
例
相続人が3人(妻と子2人)の場合
→ 500万円 × 3人 = 1,500万円までの生命保険金が非課税
これにより、たとえば1,200万円の生命保険金を受け取った場合は、全額が非課税になります。
3-2. 法定相続人とは?実際にカウントされる人
「法定相続人の数」とは、法律上相続する権利がある人のことを指します。
主に以下のような人が該当します。
- 配偶者(常に相続人になる)
- 子(いない場合は直系尊属 → 兄弟姉妹の順)
- 養子(法定相続人としてカウントされる。ただし制限あり)
- ※内縁の妻や婚約者は含まれません
注意ポイント
- 相続放棄をしても、「放棄した事実が税務署に届くまではカウントされる」
- 養子は1人まで(実子がいない場合は2人まで)しか相続人の数に含められない
3-3. 非課税枠が適用される条件
以下のすべてを満たすことで、生命保険金の非課税枠が適用されます。
条件 | 説明 |
---|---|
被保険者が亡くなったこと | 死亡によって支払われる保険金であること |
受取人が法定相続人であること | たとえば妻・子など。第三者は不可 |
相続開始後に受け取った保険金であること | 生前贈与や契約者貸付などは対象外 |
受け取った人が相続税の申告をすること | 申告しないと非課税枠は適用されない! |
3-4. 非課税枠の適用は自動ではない!
意外と知られていませんが、生命保険金の非課税枠は「自動適用」ではありません。
つまり、申告書を提出しなかった場合は、課税対象として全額カウントされてしまうのです。
「申告しなくても非課税でしょ?」という誤解は非常に多いので要注意!
相続税の申告期限(被相続人の死亡から10ヶ月以内)までに、正しく書類を提出することが必要不可欠です。
3-5. ケーススタディ:実際にどれくらい非課税になる?
ケース1:相続人2人(配偶者と子1人)、保険金800万円
- 非課税枠:500万円 × 2人 = 1,000万円
- 保険金800万円 < 非課税枠 → 全額非課税
ケース2:相続人3人、保険金2,000万円
- 非課税枠:500万円 × 3人 = 1,500万円
- 保険金2,000万円 → 1,500万円は非課税、500万円が課税対象
こうした計算により、税額に大きな差が出ることがわかります。
この非課税制度を活かすには、「保険の契約時点で受取人をどう設定するか」「相続人の構成をどう考えるか」が非常に重要です。
次章では、逆に非課税にならないパターンや注意点について、詳しく見ていきましょう。
4. 非課税にならないケース・落とし穴
「500万円 × 法定相続人の数まで非課税」と聞くと、「それなら全部非課税でしょ」と思ってしまう人が多いですが、実はそうではありません。
契約内容や受取人の設定によっては、生命保険金が課税対象になることもあるのです。
ここでは、非課税が適用されないパターンや、見落としがちな落とし穴を具体的に紹介します。
4-1. 非課税枠を超えた部分には課税される
基本の非課税枠は「500万円 × 法定相続人の数」まで。
それを超えた金額には、相続税が課税されます。
例
- 相続人:2人
- 非課税枠:500万円 × 2人 = 1,000万円
- 受取保険金:1,500万円
→ 差額の500万円が課税対象
「全額非課税だと思ってたのに…」という失敗はこのケースでよく起きます。
4-2. 契約者・被保険者・受取人の組み合わせによっては、別の税金がかかる
生命保険契約では、誰が契約者で、誰が保険料を払い、誰が保険金を受け取るかで、課税される税目が変わります。
契約者 | 被保険者 | 受取人 | 課税される税金 |
---|---|---|---|
父(死亡) | 父 | 子 | 相続税(非課税枠あり) |
子 | 父(死亡) | 子 | 所得税(非課税枠なし、一時所得) |
母 | 父(死亡) | 子 | 贈与税(非課税枠なし) |
このように、契約形態によっては非課税制度の対象外となってしまい、思わぬ税負担を背負うことになります。
4-3. 受取人が法定相続人でない場合
非課税枠の適用条件の1つに、「保険金の受取人が法定相続人であること」があります。
たとえば以下のような場合は非課税になりません。
- 受取人が内縁の妻・婚約者
- 甥や姪など法定相続人以外の親族
- 他人(介護をしてくれた知人など)
こうした場合は、全額が贈与税や所得税の対象になることも。
4-4. 保険契約の名義変更に要注意
保険契約を途中で名義変更(契約者変更)すると、意図せず課税関係が変わることがあります。
例
- 元契約者:父(保険料も父が負担)
- 新契約者:息子(途中で変更)
- 受取人:息子
→ この場合、保険金が贈与とみなされ、贈与税が発生する可能性あり
名義変更には細心の注意を払う必要があります。
節税になるつもりが、逆に高額な税負担を生むリスクも。
4-5. 契約していたけど手続き忘れも要注意
非課税枠の適用には、相続税の申告手続きが必須です。
保険金を受け取っても、以下のようなミスがあると非課税枠が適用されません。
- 税務署に申告をしなかった
- 必要書類が不備だった
- 相続人の人数を誤って記載した
結果として、本来非課税になるはずだった保険金が課税対象になってしまうこともあります。
4-6. 非課税枠の分配に注意
非課税枠は「相続人全体の枠」であるため、受け取った人が1人で全額使い切ると、他の人が受け取る保険金には課税が発生します。
例
- 相続人3人 → 非課税枠1,500万円
- 長男が1,200万円の保険金を受け取る
- 次男が500万円を受け取る
→ 長男は非課税だが、次男のうち200万円は課税対象になる可能性
枠の分け方に配慮が必要です。
このように、生命保険の非課税制度はとても有利である一方で、正しい理解と設計がなければ逆効果になることもあるのです。
次の章では、生命保険を上手に活用して、相続税対策に役立てるための方法を解説していきます。
5. よくある誤解とトラブル事例
生命保険の非課税枠は、うまく活用すれば節税に大きく貢献できますが、制度への理解不足や手続きミスにより損をしてしまうケースも非常に多いです。
ここでは、実際によくある誤解やトラブルの事例を紹介し、注意点を整理します。
5-1. 【事例1】「全額非課税だと思っていた」
相談内容
父の生命保険金2,000万円を受け取りました。相続人は私と弟の2人だったので、「非課税枠=1,000万円」と理解していました。でも、何も手続きしなかったら、税務署から申告漏れの通知が来てしまいました。
解説
このケースでは、非課税枠は適用可能(500万円 × 2人=1,000万円)
しかし、相続税の申告がなかったため非課税枠が使えなかった。
結果として、全額が相続財産として課税対象に。
5-2. 【事例2】相続人以外が受取人だった
相談内容
私(内縁の妻)が生命保険金1,000万円を受け取ったところ、「贈与税の対象になります」と言われました。相続税じゃないんですか?
解説
内縁関係の方は「法定相続人」ではないため、非課税枠の対象外です。
そのため、このケースでは「死亡保険金=贈与」とみなされ、贈与税が課税されます。
5-3. 【事例3】契約者変更で税制が変わっていた
相談内容
父が契約した保険を、私が途中から引き継いで保険料を払っていました。父が亡くなり、保険金1,200万円を私が受け取ったところ、非課税枠が使えないと言われました。
解説
このような場合、契約者:子/被保険者:父/受取人:子の構成になり、
- 相続ではなく、「一時所得(所得税)」の扱いになります
- 非課税枠は使えません!
契約者を変えることで、課税関係が大きく変化することに注意が必要です。
5-4. 【事例4】相続放棄の影響を見落とした
相談内容
相続人が4人いたけど、1人が相続放棄しました。非課税枠は500万円 × 4人=2,000万円で計算していたのですが、後から「1人は除外される」と言われて追徴課税されました。
解説
- 非課税枠の「相続人の数」には、放棄者を含めていいケースとダメなケースがあります
- 相続放棄が正式に受理されていない段階であれば、含めてもOK
- しかし、放棄が法的に成立していれば、非課税枠から除外されます
相続放棄のタイミングと申告時の取り扱いに注意!
5-5. 【事例5】受取人が1人に偏りすぎていた
相談内容
妻が生命保険金2,000万円を全額受け取りました。相続人は3人(妻・子2人)だったので、1,500万円は非課税になると思ったのですが、課税対象になってしまった部分があるようです。
解説
非課税枠は「受取人ごと」ではなく、「全体の相続人の人数に基づいた上限」です。
1人が枠を使い切ってしまうと、他の人が受け取った分に課税が発生する可能性があります。
共通する注意ポイントまとめ
トラブルの原因 | 対策 |
---|---|
非課税制度の誤解 | 制度を正しく理解し、契約前に設計する |
契約者や受取人の設定ミス | 税理士や専門家に確認する |
手続き忘れ・申告漏れ | 受取後すぐに手続きに入ること |
相続放棄や人数の誤認 | 相続人の確定と申告書作成を正確に |
これらのトラブルは、「知っていれば防げた」ものばかりです。
次のセクションでは、生命保険を正しく活用して節税につなげる方法を紹介します。
まとめ:生命保険の非課税制度を上手に活用して賢い資産形成を目指そう
生命保険の非課税制度を活用するポイント
生命保険の非課税制度は、相続税の軽減を目的として活用することで、資産形成を有利に進めることができます。受取人や保険金額を適切に設定し、税制優遇を最大限に活用しましょう。
非課税を活用した資産形成の考え方
非課税枠を賢く使い、相続税や贈与税の負担を軽減し、資産を効率的に次世代に引き継ぐことが可能です。生命保険を活用した資産形成は、未来の不安を軽減し、より安定した生活を送るための強力な手段となります。
行動を起こすために確認すべきこと
まずは、生命保険の非課税枠について理解し、自分や家族にとって最適な契約を検討することが重要です。必要に応じて専門家に相談し、今後の資産形成に活かせる方法を見つけましょう。
6. 相続税対策として生命保険を活用するには
生命保険は、「遺族の生活保障」だけでなく、相続税対策としても非常に優れたツールです。特に非課税枠を正しく活用することで、納税資金の確保や節税につながります。
ここでは、生命保険を使った効果的な相続対策の考え方や具体的な設計ポイントを紹介します。
6-1. なぜ生命保険は相続税対策に向いているのか?
生命保険が相続税対策として有効な理由は、主に以下の3点です。
1. 非課税枠がある(500万円 × 法定相続人)
他の資産にはない生命保険だけの特例です。
2. 現金で受け取れる
相続発生後すぐに現金化されるため、納税や葬儀費用にすぐ使える
3. 財産の分け方を指定できる
受取人を指定することで、相続分の調整がしやすい
6-2. 非課税枠を最大限活用する設計ポイント
ポイント①:契約形態を正しく設計する
- 契約者:被相続人(=保険料を払う人)
- 被保険者:被相続人
- 受取人:法定相続人(配偶者・子など)
この構成で契約しておくことで、非課税枠を最大限に活かせます。
ポイント②:相続人全員を受取人に含める
受取人が偏ると、非課税枠の“配分”がうまくいかない可能性があります。
例
- 相続人が3人で非課税枠は1,500万円
- 1人がすべての保険金(1,500万円)を受け取ると、その人は非課税
- 他の2人が別の保険金や財産を受け取る場合に課税されるリスクあり
各相続人にバランスよく分配されるよう設計しておくことが重要です。
ポイント③:養子の活用も検討
相続人の数に「養子」を含められることで、非課税枠の上限を引き上げられる場合があります。
ただし、非課税枠に含められる養子は原則「1人まで」。実子がいない場合は2人まで。
税務上の注意点もあるため、活用する場合は専門家に相談を。
6-3. よくある生命保険+相続対策の活用パターン
パターン①:不動産に偏った遺産を調整する
被相続人の財産がほぼ不動産のみで、現金が少ない場合
相続人間で公平に分けるのが難しいため、一方に現金(保険金)を渡すことでバランス調整
パターン②:納税資金の確保
相続財産が多く、相続税の納税が必要な見込みがある場合
現金で受け取れる生命保険を活用して、納税資金を事前に準備
パターン③:事業承継に伴う対策
家業を継ぐ長男に多くの財産を渡したいが、他の兄弟とのバランスを取りたい
長男以外に生命保険金を設定し、不公平感を減らす
6-4. 節税対策には「生命保険+専門家」がベスト
生命保険による相続対策は、契約形態・金額・受取人の設定次第で結果が大きく変わります。
節税効果を最大化するためには、税理士・ファイナンシャルプランナー(FP)・保険会社の担当者などと協力し、個別設計を行うことが重要です。
ポイントまとめ
- 生命保険の非課税枠は“唯一無二”の節税メリット
- 契約時点から受取人・相続人を意識して設計する
- 状況に応じて、専門家の意見を取り入れることでミスを防ぐ
次の章では、実際に非課税枠を活かすために重要な「手続きや申告の注意点」を解説します。
7. 手続き・申告時の注意点
生命保険の非課税枠を活かすには、「契約内容や金額」だけでなく、受け取り後の手続きや申告も非常に重要です。
「制度は理解していたのに、申告を忘れて損した…」というケースは、実際によくあります。
ここでは、保険金を受け取ったあとの手続きと、申告の注意点を解説します。
7-1. 非課税枠を使うには「申告」が必要
生命保険の非課税枠は、自動で適用されるわけではありません。
相続税の申告書に明記することで、初めて非課税枠が適用されます。
申告しなければ、たとえ非課税の条件を満たしていても、課税対象になってしまいます!
7-2. 相続税の申告期限は「10ヶ月以内」
相続税の申告期限は、被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月以内です。
この間に、
- 相続人の確定
- 財産の評価・把握
- 各相続人の遺産分割
- 保険金の受け取り・申告
などをすべて終える必要があります。
特に保険金の受け取りが遅れると、申告のスケジュールにも影響するため、早めの対応がカギとなります。
7-3. 相続税の申告に必要な書類(生命保険関連)
以下のような書類が、生命保険金の申告時に必要となります。
書類名 | 内容 |
---|---|
保険金支払通知書 | 保険会社から送付される、支払い金額の詳細 |
保険証券のコピー | 契約内容や受取人が記載された書類 |
受取人の身分証明書 | 相続人であることを証明するため |
被相続人の戸籍謄本 | 相続の発生と家族関係の確認に必要 |
相続税申告書(第11表) | みなし相続財産として記入が必要な様式 |
7-4. 非課税枠の適用方法(申告書の書き方のポイント)
- 生命保険金は「相続財産に含まれるもの」として記載
- その上で「非課税限度額の計算」を明示(例:500万円×相続人数)
- 非課税となる金額と、課税対象となる金額を分けて記載することが重要
税理士に依頼する場合でも、必要な資料をきちんと揃えて提出することが前提です。
7-5. 手続きミス・申告漏れが招くリスク
- 非課税枠が使えない(本来は節税できたのに課税される)
- 延滞税・加算税などのペナルティ課税が発生する
- 相続人間で「誰が申告した/しなかった」でトラブルに発展する可能性も
7-6. 迷ったら専門家に相談を
申告に不安がある場合は、税理士や行政書士に相談するのが安心です。特に以下のようなケースでは、専門家のアドバイスが有効です。
- 相続人が多い・遠方に住んでいる
- 生命保険以外にも複雑な資産がある(不動産・株式など)
- 養子や非嫡出子が含まれる
- 過去に名義変更や贈与があった
費用はかかりますが、結果的に数百万円単位の節税につながるケースも少なくありません。
ポイントまとめ
- 非課税枠を使うには「相続税の申告」が必要
- 期限(10ヶ月)と書類をしっかり確認
- 専門家を活用すれば、安心・確実に手続きできる
次の章では、読者から特によくある疑問をピックアップし、Q&A形式でまとめていきます。
8. よくある質問Q&A
生命保険の非課税枠や相続税については、制度がやや複雑なため、疑問や誤解を抱く方がとても多いです。
ここでは、実際によく寄せられる質問にQ&A形式でお答えします。
Q1. 生命保険の非課税枠は、誰にでも適用されますか?
A. いいえ、以下の条件をすべて満たしている必要があります。
- 受取人が法定相続人であること
- 被相続人が被保険者であること
- 保険金が死亡によって支払われること
- 相続税の申告をすること(=非課税の適用には申告が必須)
これらを満たしていない場合、贈与税や所得税が課税される可能性があります。
Q2. 「内縁の妻」や「婚約者」は法定相続人になりますか?
A. 原則として、なりません。
内縁関係や婚約状態では、法律上の配偶者とは認められないため、非課税枠の対象外です。
受け取った生命保険金には、贈与税が課税される可能性があります。
どうしても保険金を渡したい場合は、契約形態を工夫する必要があります。
Q3. 養子も「法定相続人」としてカウントされますか?
A. はい、養子も法定相続人に含まれます。
ただし、非課税枠や相続税の基礎控除を計算するうえでは、含められる養子の数に制限があります。
- 実子がいる場合:養子は1人までカウント可能
- 実子がいない場合:養子は2人までカウント可能
これを超えると、税務上の優遇が受けられなくなります。
Q4. 相続放棄した人も「非課税枠の人数」に含めていいの?
A. タイミングによって異なります。
- 相続放棄が正式に受理される前 → 含めてもOK
- 相続放棄が確定後(家庭裁判所で受理済) → 非課税枠の対象外
放棄する予定の人がいる場合は、早めに専門家に相談して申告方針を決めるのが安心です。
Q5. 保険金を受け取ったら、何日以内に申告しなければならない?
A. 相続税の申告期限は、被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月以内です。
この期間内に、
- 保険金を受け取る
- 必要書類を揃える
- 相続税の申告書を提出する
という一連の手続きを済ませる必要があります。
保険金の受け取りや名義確認などに時間がかかることもあるため、早めの行動が重要です。
Q6. 生命保険を複数契約している場合、非課税枠はどうなりますか?
A. 非課税枠は「保険契約の数」ではなく、「相続人の人数」によって決まります。
たとえば、
- 相続人が3人 → 非課税枠は1,500万円(500万円 × 3人)
- 契約が5件あっても、その合計保険金が1,500万円以内なら非課税
複数の保険契約を合算して判断することが大切です。
Q7. もし申告を忘れたら、あとから修正できますか?
A. はい、一定期間内であれば「更正の請求」や「修正申告」によって訂正できます。
ただし、申告期限を過ぎた場合は加算税や延滞税が発生する可能性があります。
誤りや申告漏れに気づいたら、すぐに税理士や税務署に相談しましょう。
補足
Q&Aの内容は基本的な考え方を示したものであり、実際の相続状況や契約内容によって判断が異なることがあります。
迷ったときは、早めに専門家に確認することが一番確実です。
次の章では、ここまでの要点をふまえて、「非課税枠をムダにしないための3つのポイント」をまとめます。
9. まとめ:非課税枠をムダにしないための3つのポイント
生命保険には、他の資産にはない特別な非課税制度があります。
しかし、「知っているかどうか」「正しく使えるかどうか」で、相続税の金額に大きな差が生まれるのが実情です。
ここまでご紹介してきた内容をふまえて、損をしないために特に重要な3つのポイントを整理しましょう。
ポイント1:契約形態を正しく設計する
生命保険の課税関係は、契約者・被保険者・受取人の組み合わせによって大きく変わります。
- 契約者と被保険者が同じ(=被相続人)
- 受取人が法定相続人(配偶者や子など)
という構成が基本です。この形であれば、「500万円 × 法定相続人」の非課税枠を使えます。
これ以外の組み合わせだと、贈与税や所得税の対象になることも。
ポイント2:非課税枠の限度とルールを正しく理解する
非課税枠の適用には以下の条件を満たす必要があります。
- 被相続人が契約者かつ被保険者である
- 受取人が法定相続人である
- 相続税の申告を行う(=自動適用ではない)
- 非課税枠の上限は「500万円 × 法定相続人の数」まで
特に、「申告をしなかったために非課税にならなかった」というトラブルが非常に多いため、期限内(10ヶ月以内)の申告が絶対に必要です。
ポイント3:迷ったら専門家に相談する
生命保険を活用した相続対策には、専門知識が不可欠です。
- 契約形態の選び方
- 受取人の指定と分配方法
- 養子や相続放棄を含めた非課税枠の調整
- 税金の計算と申告書の書き方
など、自分だけで判断するのは危険なこともあります。
税理士に早めに相談することで、ミスや損失を未然に防ぐことができます。
一部のファイナンシャルプランナーが、個別具体的な税金の相談に応じている例が散見されますが、税理士法違反に該当する可能性があります。
最後に
生命保険の非課税枠は、「知っている人だけが得をする」制度の典型例です。
一方で、誤解や準備不足によって、本来受け取れるはずの金額にまで課税されてしまうケースも後を絶ちません。
本記事を通じて、あなたが生命保険の仕組みを正しく理解し、賢く相続税対策に活かすことができれば幸いです。