相続人全員で遺産の分け方について話し合い、合意した内容を書面にまとめたものが「遺産分割協議書」です。
遺産分割協議書は、相続人同士の合意内容を確認するためだけでなく、その後の相続手続きでも使われます。
たとえば、不動産を相続した場合には、相続登記の手続きで法務局に提出する書類の一つとして使われることがあります。
この記事では、遺産分割協議書の基本から、法務局での使われ方、預貯金や自動車などの相続手続きとの関係まで、わかりやすく解説します。
目次
① 遺産分割協議書とは?法務局などの相続手続きで使う私文書

遺産分割協議書とは、相続人全員で遺産の分け方について話し合い、合意した内容を書面にまとめたものです。
誰がどの財産を取得するのかを明確にしておくことで、相続人同士で合意内容を確認できるだけでなく、その後の相続手続きにも利用できます。
「不動産は長男、預貯金は配偶者、自動車は次男が取得する」と決まった場合は、その内容を遺産分割協議書に記載します。
遺産分割協議書は、法律上「私文書」にあたります。私文書とは、国や自治体などの公的機関が職務上作成する公文書とは異なり、個人や会社などの私人が作成する文書のことです。
遺産分割協議書も、相続人同士の合意に基づいて作成されるため、私文書として扱われます。
大切なのは、遺産分割協議で実際に決まった内容を正確に反映することです。本人の意思によらず署名や押印を作成するなどの行為は、私文書偽造などの重大な問題につながる可能性があります。
また、遺産分割協議書は単なる話し合いの記録ではありません。不動産の相続登記、預貯金の解約や払戻し、自動車の名義変更など、遺産分割後の相続手続きで使われることがあります。
遺産分割協議そのものの進め方については、遺産分割協議の進め方をご覧ください。
② 遺産分割協議書は法務局に提出する?

不動産を遺産分割協議によって相続する場合、遺産分割協議書は相続登記の手続きで法務局に提出する書類の一つです。
相続人が妻・長男・次男の3人で、遺産分割協議の結果「自宅の土地と建物は長男が取得する」と決まったとします。この場合、長男が不動産を取得することについて相続人全員が合意したことを示すため、遺産分割協議書を相続登記に使用します。
ただし、遺産分割協議書だけを法務局へ持っていけば、相続登記ができるわけではありません。
遺産分割協議書は相続登記の添付書類として使われる
遺産分割協議によって不動産の取得者を決めた場合、相続登記では、その合意内容を確認できる書類が必要になります。
そこで使われるのが遺産分割協議書です。
協議書には、誰がどの不動産を取得するのかが分かるように記載します。不動産を十分に特定できない内容では、その後の手続きに支障が出ることもあるため、正確に記載することが重要です。
法務局には遺産分割協議書以外の書類も提出する
相続登記では、遺産分割協議書のほかにも、相続関係や不動産の状況を確認するための書類が必要です。
主な書類には、次のようなものがあります。
| 書類 | 主な役割 |
|---|---|
| 遺産分割協議書 | 誰が不動産を取得することになったのかを確認する |
| 戸籍謄本など | 被相続人と相続人の関係を確認する |
| 相続人の印鑑証明書 | 遺産分割協議書に押印された実印を確認する |
| 被相続人の住民票の除票など | 登記記録上の住所と被相続人の住所のつながりを確認する |
| 不動産を取得する相続人の住民票 | 新たに登記名義人となる人の住所を確認する |
| 登記申請書 | 相続登記を申請する |
実際に必要となる書類は、相続関係や不動産の状況によって異なります。
遺産分割協議書は相続登記に必要となる重要な書類の一つですが、それだけで手続きが完結するものではないと理解しておきましょう。
遺産分割協議書は法務局でもらう書類ではない
遺産分割協議書は、法務局が作成したり、完成した書類を交付したりするものではありません。
遺産分割協議が成立した後、その合意内容に基づいて相続人側で作成します。成立した協議内容を書面にする部分については、行政書士に作成を依頼することもできます。
一方、作成した遺産分割協議書を使って相続登記の申請代理を行うことは司法書士の業務です。
遺産分割協議書の作成と相続登記はつながった手続きですが、専門家に依頼する場合は、それぞれの業務範囲が異なります。
③ 法務局に提出する遺産分割協議書には何を書く?
法務局に提出する遺産分割協議書には、誰がどの不動産を取得するのかが分かるように、相続人全員で合意した内容を記載します。
遺産分割協議書には決まった一つの様式があるわけではありませんが、相続登記で使用する以上、被相続人や相続人、対象となる不動産を特定できる内容になっていることが重要です。
ここでは、行政書士として一般的な記載事項を紹介します。実際に必要となる内容は、相続関係や財産の内容、遺産分割協議の内容によって異なります。個別具体的な遺産分割協議書の作成については、別途ご相談ください。
被相続人を特定する情報
まず、誰の相続について作成した遺産分割協議書なのかを明確にします。
一般的には、被相続人の氏名、最後の住所、死亡年月日などを記載し、対象となる相続を特定します。
同姓同名の人がいる可能性もあるため、単に氏名だけを書くのではなく、どの相続についての協議書なのかが分かるようにしておくことが大切です。
誰がどの不動産を取得するのか
遺産分割協議書では、相続人のうち誰が対象となる不動産を取得するのかを明確にします。
「長男が自宅を相続する」といった日常的な表現だけでは、どの不動産を指しているのか分からない場合があります。
相続登記で使う場合は、登記事項証明書などを確認しながら、土地であれば所在・地番・地目・地積、建物であれば所在・家屋番号・種類・構造・床面積など、不動産を特定できる情報を記載していきます。
相続人全員の合意を確認できるようにする
遺産分割協議は、原則として相続人全員の合意によって成立します。
そのため、遺産分割協議書も、一部の相続人だけで作成するのではなく、協議に参加した相続人全員の合意内容を反映したものにする必要があります。
一般的には、相続人それぞれの住所・氏名を記載し、実印を押印したうえで印鑑証明書を用意します。
協議で決まった内容を正確に書面化する
遺産分割協議書を作る際に最も重要なのは、実際の遺産分割協議で決まった内容と、書面の内容を一致させることです。
協議では「長男が土地と建物を取得する」と決まっていたのに、協議書では土地しか記載されていないといったズレがあると、その後の手続きに影響する可能性があります。
遺産分割協議書は、新たに分け方を決めるための書類ではなく、すでに成立した合意内容を正確に書面化するための書類と考えると分かりやすいでしょう。
④ 遺産分割協議書は何に使う?不動産・預貯金・車などを一覧で確認

遺産分割協議書は、不動産の相続登記だけでなく、預貯金や自動車、株式などの相続手続きでも使われることがあります。
相続手続きでは、「誰がどの財産を取得するのか」を手続き先で確認する必要があります。遺産分割協議書は、その合意内容を示す資料として利用されます。
主な例は次のとおりです。
| 財産 | 主な手続き先 | 遺産分割協議書の主な役割 |
|---|---|---|
| 不動産 | 法務局 | 誰が不動産を取得するかを確認する |
| 預貯金 | 銀行・信用金庫など | 預貯金を取得する相続人を確認する |
| 自動車 | 運輸支局など | 車を取得する相続人を確認する |
| 株式・投資信託 | 証券会社など | 株式や投資信託を取得する相続人を確認する |
| その他の財産 | 各手続き先 | 財産の取得者を確認する |
ただし、遺産分割協議書があれば、それだけですべての名義変更や払戻しができるわけではありません。
不動産であれば相続登記に必要な書類、預貯金であれば金融機関所定の書類、自動車であれば車検証など、それぞれの手続きに応じた書類が別途必要になります。
遺産分割協議書は、誰がどの財産を取得することになったのかを示し、その後の相続手続きを進めるための基礎となる書類と考えると分かりやすいでしょう。
⑤ 預貯金の相続手続きで遺産分割協議書を使う場合
預貯金について遺産分割協議を行った場合、遺産分割協議書は銀行や信用金庫などで相続手続きを進める際に使用されることがあります。
金融機関としては、亡くなった方の預貯金を誰に払い戻すのかを確認する必要があります。遺産分割協議書に「〇〇銀行〇〇支店の預金は長男が取得する」といった合意内容が記載されていれば、預貯金の取得者を確認する資料になります。
預貯金は金融機関ごとに相続手続きを行う
預貯金の相続では、遺産分割協議書だけを銀行へ提出すれば手続きが終わるわけではありません。
金融機関ごとに相続手続きの方法が定められており、相続届などの所定書類のほか、戸籍謄本や印鑑証明書などを求められることがあります。
また、亡くなった方が複数の金融機関に口座を持っている場合は、それぞれの金融機関で個別に手続きを進める必要があります。
主要な金融機関の相続手続きについては、以下の記事で詳しく解説しています。
三井住友銀行の相続手続き
預貯金の相続では、まずどの金融機関にどの口座があるのかを確認し、そのうえで各金融機関の案内に沿って手続きを進めることが大切です。
遺産分割協議書では預貯金を特定できるようにする
預貯金を遺産分割協議書に記載する場合は、どの預貯金を誰が取得するのか分かる内容にすることが大切です。
一般的には、金融機関名や支店名、預金の種類、口座番号などを記載して対象となる預貯金を特定します。
たとえば、複数の銀行口座があるにもかかわらず「預貯金は長男が取得する」とだけ記載すると、実際の協議内容によっては、どの預貯金まで含むのか確認が必要になることがあります。
遺産分割協議書を作成するときは、実際に合意した内容を前提として、対象となる預貯金が分かるように記載しておくことが重要です。
⑥ 車の名義変更で遺産分割協議書を使う場合
亡くなった方が所有していた自動車を相続する場合、遺産分割協議書は車を取得する相続人を確認するための書類として使われることがあります。
車の相続では、誰がその車を引き継ぐのかを明確にしたうえで、名義変更の手続きを進める必要があります。
たとえば、遺産分割協議で「被相続人名義の自動車は次男が取得する」と決まった場合、その合意内容を遺産分割協議書に記載し、名義変更の手続きに利用します。
車は車検証などを確認して特定する
遺産分割協議書に自動車を記載する場合は、どの車を指しているのか分かるように特定することが大切です。
一般的には、車検証を確認しながら、自動車登録番号、車台番号、車名、型式など、対象となる車を識別できる情報を記載します。
たとえば、次のような情報です。
- 自動車登録番号:品川300あ1234
- 車台番号:ABC123-4567890
- 車名:トヨタ
- 型式:6AA-XXXX
被相続人が複数台の車を所有している場合、「自動車は次男が取得する」とだけ記載すると、どの車を指しているのか分からなくなることがあります。
少なくとも、自動車登録番号や車台番号など、その車を特定できる情報を確認したうえで協議書に記載しておくことが重要です。
なお、実際に必要となる記載内容は、車両の種類や手続きの内容によって異なる場合があります。遺産分割協議書を作成するときは、使用する手続きも踏まえて記載内容を確認しましょう。
車の名義変更には遺産分割協議書以外の書類も必要
自動車の相続手続きも、遺産分割協議書だけで完了するわけではありません。
車両の種類や相続関係に応じて、戸籍関係書類や印鑑証明書、車検証などが必要になります。
主な書類の例は次のとおりです。
| 書類 | 主な役割 |
|---|---|
| 遺産分割協議書 | 誰が自動車を取得するのかを確認する |
| 車検証 | 対象となる自動車や現在の所有者を確認する |
| 戸籍謄本など | 被相続人と相続人の関係を確認する |
| 印鑑証明書 | 相続人の実印などを確認する |
| 新しい所有者の住所を確認できる書類 | 名義変更後の所有者情報を確認する |
| 申請書など | 名義変更の手続きを行うために使用する |
また、普通自動車と軽自動車では、手続き先や必要書類が異なる場合があります。
| 車の種類 | 主な手続き先 |
|---|---|
| 普通自動車 | 運輸支局など |
| 軽自動車 | 軽自動車検査協会 |
実際に必要となる書類は、車両の登録状況や相続関係によって変わります。
そのため、遺産分割協議書を作成した後は、対象となる車の種類や車検証の内容を確認し、必要な書類をそろえて名義変更手続きを進めることになります。
⑦ 遺産分割協議書を作成する前に相続人と相続財産を確認する

遺産分割協議書を作成する前に、相続人と相続財産の確認が済んでいるかを見直しておくことが大切です。
誰が法定相続人になるのかについては、法定相続人の範囲・順位や戸籍での確認方法で詳しく解説しています
遺産分割協議書は、すでに成立した遺産分割協議の内容を書面にするものです。前提となる相続人や相続財産に漏れがあると、協議書の内容にも影響が出る可能性があります。
相続人を戸籍で確認する
相続人は、家族の認識だけで判断せず、戸籍を確認して確定することが大切です。
遺産分割協議は、原則として相続人全員で行う必要があります。相続人が一人でも漏れたまま協議を進めると、その内容を前提に作成した遺産分割協議書にも問題が生じます。
家族が把握している人だけで相続関係が完結しているとは限りません。たとえば、認知した子、前婚の子、養子などがいる場合、現在の家族だけでは正確な相続関係を把握できないことがあります。
こうした相続人の存在は、被相続人の出生から死亡までの戸籍をたどることで確認します。
すでに遺産分割協議を終えていても、相続人調査を行っていないのであれば、遺産分割協議書を作成する前に戸籍を確認し、協議に参加すべき相続人に漏れがないか見直しておくことをおすすめします。
遺産分割協議で決まった内容が正しく記載されているか
遺産分割協議書は、すでに成立した遺産分割協議の内容を書面にするものです。
そのため、まず確認したいのは、協議で決まった内容と協議書の記載が一致しているかという点です。
誰がどの財産を取得するのか、取得割合はどうなっているのか、協議で決めた条件に漏れがないかを確認します。
また、相続財産には、不動産や預貯金、自動車、株式などのプラスの財産だけでなく、借入金や未払金などのマイナスの財産が含まれることもあります。
協議の対象とした財産について、プラス・マイナスの双方が適切に整理され、合意内容どおりに記載されているかを確認することが大切です。
たとえば、「長男が不動産を取得し、その不動産に関する一定の債務も負担する」という内容で合意しているのであれば、その内容が協議書に正しく反映されているかを確認します。
後から財産が見つかった場合に備えて予備的な内容を定めることもある
相続財産を調査していても、遺産分割協議書を作成した後に、新たな預貯金やその他の財産が見つかることがあります。
そのような場合に備えて、協議書に記載されていない財産が後から判明したときの取扱いを、あらかじめ定めておくこともあります。
たとえば、
「本協議書に記載のない相続財産が後日判明した場合は、相続人全員であらためて協議する」
とする方法があります。
相続人全員がその内容に合意している場合には、
「本協議書に記載のない預貯金その他の財産が後日判明した場合は、長男〇〇〇〇が取得する」
といった形で、取得者をあらかじめ決めておくことも考えられます。
ただし、こうした予備的な内容も、相続人全員の合意に基づいて定める必要があります。
調査をしていない場合は、協議書作成前に確認する
遺産分割協議前に相続人調査や相続財産調査を行っていない場合は、遺産分割協議書を作成する前に、一度立ち止まって確認することをおすすめします。
相続人に漏れがあれば、そもそも相続人全員による遺産分割協議が成立していない可能性があります。また、相続財産に漏れがあれば、後から新たな財産について協議をし直したり、追加の遺産分割協議書を作成したりする必要が生じることもあります。
つまり、相続人と相続財産の調査は、単に「協議書を書くための事前確認」ではありません。
誰が相続人なのか、何を相続の対象として話し合うのかを確定するための前提作業です。
この前提が曖昧なまま遺産分割協議書だけを作ってしまうと、書類として形は整っていても、その内容の土台自体に問題が残ることがあります。
遺産分割協議書は、相続人全員の合意を正確に書面化するものだからこそ、その前提となる相続人と相続財産の確認を先に済ませておくことが重要です。
⑧ 遺産分割協議書を作るときの注意点
遺産分割協議書を作成するときは、合意した内容を書けばよいだけではなく、後の相続手続きで内容を確認できる書面になっていることが重要です。
特に注意したいのが、財産を十分に特定できているか、相続人全員の署名・押印に問題がないかという点です。
財産を特定できる内容になっているか
遺産分割協議書では、誰がどの財産を取得するのかが明確に分かるように記載する必要があります。
協議内容そのものが正しくても、財産の表示が曖昧だと、相続登記や預貯金の払戻し、自動車の名義変更など、その後の手続きで確認や修正が必要になることがあります。
不動産、預貯金、自動車などは、それぞれの財産を特定できる情報を確認したうえで記載します。
大切なのは、協議書を見た第三者が「どの財産を誰が取得したのか」を判断できる状態にしておくことです。
相続人全員の署名・押印を確認する
遺産分割協議書は、相続人全員が合意した内容を書面にしたものです。そのため、協議書についても相続人全員の意思が確認できる状態にしておく必要があります。
相続登記などで使用する遺産分割協議書では、一般的に相続人全員が実印を押印し、印鑑証明書を添付します。
相続人が遠方に住んでいる場合でも、全員が同じ場所に集まって一枚の書類へ同時に署名・押印する必要はありません。協議内容を確認したうえで、書類を郵送して署名・押印を行う方法などもあります。
重要なのは、形式だけを整えることではなく、それぞれの相続人本人が協議内容を確認し、自らの意思で署名・押印していることです。
他の相続人の署名や押印を勝手に作成しない
相続人本人の意思によらず、他人が署名をしたり、印鑑を無断で使用したりして遺産分割協議書を作成してはいけません。
遺産分割協議書は私文書であり、他人名義の署名や押印を本人の承諾なく作成すれば、協議書の効力だけでなく、私文書偽造など刑事上の問題につながる可能性もあります。
「家族だから代わりに押しておけばよい」と考えるのではなく、必ず相続人本人の意思を確認して作成することが重要です。
⑨ 遺産分割協議書の作成は行政書士に依頼できる
遺産分割協議が成立している場合、その合意内容をもとに遺産分割協議書を作成することは、行政書士に依頼できます。
遺産分割協議書は、その後の相続登記や預貯金、自動車などの相続手続きで使用されることがあります。財産の表示や取得者の記載が曖昧だと、手続きを進める際に確認や修正が必要になることもあるため、協議内容を正確に書面へ反映することが重要です。
行政書士は成立した協議内容をもとに遺産分割協議書を作成する
行政書士が遺産分割協議書を作成する場合、相続人全員ですでに合意した内容を確認し、その内容を書面にまとめます。
誰にどの財産を取得させるかを行政書士が決めたり、相続人同士の利害を調整して合意を成立させたりするものではありません。
あくまで、成立した遺産分割協議の内容を正確に文書化する業務です。
遺産分割協議書は自分で作成することもできますが、「この書き方で手続きに使えるのか」「財産の記載に漏れはないか」「不動産や預貯金を十分に特定できているか」など、少しでも不安がある場合は、無理に自分だけで作成せず行政書士への依頼を検討するとよいでしょう。
一度作成して相続人全員の署名・押印を集めた後に内容を修正するとなると、あらためて相続人に対応をお願いしなければならないこともあります。後の手続きをスムーズに進めるためにも、作成段階で内容を確認しておくことが大切です。
行政書士の業務範囲外となる手続きもある
相続手続きのすべてを行政書士が行えるわけではありません。
不動産の相続登記について、法務局への登記申請を代理することは司法書士の業務です。
また、相続人同士で争いが生じ、相手方との交渉や法律上の紛争対応が必要となる場合は、弁護士の業務領域となります。
遺産分割協議書の作成を依頼するときは、現在どの段階まで手続きが進んでいるのかを確認したうえで、必要に応じてそれぞれの専門家へ相談することが大切です。
⑩ 遺産分割協議書と法務局についてよくある質問
Q:遺産分割協議書は法務局でもらえますか?
いいえ。遺産分割協議書は法務局が作成・交付する書類ではありません。
相続人全員で成立した遺産分割協議の内容をもとに、相続人側で作成します。
Q:法務局に遺産分割協議書のひな形はありますか?
相続登記に関する記載例などが案内されていることはありますが、個々の相続にそのまま使えるとは限りません。
相続人や財産の内容に合わせて作成する必要があります。
Q:遺産分割協議書に決まった書式はありますか?
法律上、全国共通の決まった様式があるわけではありません。
ただし、誰がどの財産を取得するのかを明確にし、利用する相続手続きに支障がない内容にすることが重要です。
Q:遺産分割協議書は自分で作れますか?
自分で作成することは可能です。
ただし、財産の特定や協議内容の記載に不安がある場合は、署名・押印を集める前に行政書士へ相談することをおすすめします。
Q:法務局に遺産分割協議書だけ持っていけば相続登記できますか?
いいえ。相続登記では、遺産分割協議書のほかに戸籍関係書類や住民票、印鑑証明書などが必要になることがあります。
必要書類は相続関係や不動産の状況によって異なります。
Q:法務局へ提出した遺産分割協議書の原本は返してもらえますか?
一定の要件を満たして原本還付の手続きを行えば、遺産分割協議書の原本を返してもらえる場合があります。
銀行や自動車など別の相続手続きでも使う予定がある場合は、原本の取扱いを事前に確認しておくとよいでしょう。
Q:遺産分割協議書に実印は必要ですか?
相続登記や金融機関などの相続手続きで使用する場合は、一般的に相続人全員が実印を押印し、印鑑証明書を添付します。
実際の取扱いは利用する手続き先にも確認しましょう。
Q:遺産分割協議書は財産ごとに分けて作成できますか?
財産ごとに複数の遺産分割協議書を作成することもあります。
ただし、どの財産について協議が済んでいるのか分からなくならないよう、相続財産全体を把握したうえで作成することが大切です。
Q:株式や証券口座の相続でも遺産分割協議書は使えますか?
使われることがあります。
証券会社などが、誰が株式や投資信託を取得するのかを確認する資料として提出を求める場合があります。
Q:遺産分割協議書を作った後に新しい財産が見つかった場合はどうしますか?
新たに見つかった財産について、相続人全員であらためて協議する方法があります。
あらかじめ「後から判明した財産を誰が取得するか」を協議書に定めている場合は、その内容に沿って対応することもあります。
まとめ|遺産分割協議書はその後の相続手続きを進めるための重要な書類
遺産分割協議書は、相続人全員で合意した内容を書面にまとめ、その後の相続手続きを進めるために使う重要な書類です。
不動産の相続登記では法務局に提出する書類の一つとして使われるほか、預貯金の解約や払戻し、自動車の名義変更、株式や証券口座の相続手続きなどでも利用されることがあります。
作成する際は、遺産分割協議で決まった内容が正しく反映されているか、財産が十分に特定されているか、相続人全員の署名・押印に問題がないかを確認することが大切です。
また、相続人調査や相続財産調査を行っていない場合は、遺産分割協議書を作る前に一度確認しておくことをおすすめします。
遺産分割協議書は自分で作成することもできますが、少しでも不安がある場合は、後の相続手続きで支障が出ないよう専門家に確認してもらうと安心です。
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