工場で使用する工作機械や生産設備、産業用ロボットなどの据付工事を請け負う場合、工事の内容や請負金額によっては建設業許可が必要になります。
「うちは製造業なのに、建設業許可が必要なの?」
自社で製造した機械を納入し、据付まで行う。これまで当たり前に対応してきた業務に、建設業許可が関係するとは思っていなかったという方も多いのではないでしょうか。
実は、機械メーカーや設備販売会社、機械商社なども、製造設備の据付工事を請け負う場合には、建設業許可が必要になることがあります。
この記事では、工作機械・生産設備・産業用ロボットなどの据付工事を例に、建設業許可が必要になる条件、新規取得の要件、許可業種の考え方についてわかりやすく解説します。
目次
①工場・製造設備の据付工事の具体例
工場で使用する機械や製造設備には、金属加工を行う工作機械から、製品の組立てを自動化する装置、食品や化学製品を製造する設備まで、さまざまな種類があります。
これらの機械・設備を販売・納入する際には、現地での組立てや据付、固定などの工事が伴うことがあります。
代表的な工場・製造設備には、次のようなものがあります。
| 設備の分類 | 主な機械・設備の例 |
|---|---|
| 工作機械 | マシニングセンタ、NC旋盤、研削盤 |
| 成形・加工設備 | プレス機械、射出成形機、レーザー加工機 |
| 生産ライン設備 | 製造ライン、組立ライン、加工ライン |
| 産業用ロボット・自動化設備 | 産業用ロボット、自動組立機、検査装置 |
| 食品製造設備 | 食品加工機械、包装機械、充填機 |
| 化学製造設備 | 混合機、攪拌機、乾燥装置、反応釜 |
| その他の製造設備 | 工業炉、サイロ |
例えば、マシニングセンタの納入に伴って機械の据付・固定を行う場合や、複数の装置を組み合わせて生産ラインを設置する場合などが考えられます。
また、産業用ロボットや自動組立機の導入では、機械本体の据付に加え、電源設備や配線工事などが必要になることもあります。
このように、工場・製造設備の導入では、機械の販売・納入だけでなく、現地での据付工事まで含めて受注するケースがあります。
そのため、機械メーカーや設備販売会社、機械商社なども、建設業許可の取得を検討する必要があります。

②製造業にも建設業許可が必要な理由
製造設備の据付は、単に機械を納入するだけでなく、現地で機械を組み立て、工場の設備として設置する工事を伴います。
こうした工事には、設備を正しく設置する技術力に加え、施工手順の管理や作業中の安全確保、施工品質の確保が求められます。設置方法に問題があれば、設備の不具合や事故につながるだけでなく、工場の生産活動にも大きな影響を及ぼすおそれがあります。
そのため、製造設備の据付工事を請け負う事業者には、技術力や施工管理能力を備え、安全で確実な工事を行うことが社会的にも求められています。
こうした工事のうち、建設工事に該当するものは建設業法の対象となります。 建設業法は、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護することなどを目的としており、建設業許可制度では事業者に一定の経営基盤や技術力などを求めています。
したがって、製造業や機械販売業を本業とする会社であっても、建設工事に該当する据付工事を請け負う場合には、建設業許可が必要になることがあります。
また、発注企業にとっても、生産設備の安定稼働や工事中の安全確保は重要な課題です。そのため、法令上の許可義務とは別に、発注企業が取引条件として建設業許可の取得を求める場合もあります。
建設業許可の取得は、法令への対応だけでなく、発注企業に対して施工体制を示し、取引上の信頼を高めることにもつながります。
③工場・製造設備の据付に建設業許可が必要となる条件
工場・製造設備の据付工事が建設業法上の建設工事に該当する場合、原則として、工事1件の請負代金が500万円以上(税込)であれば建設業許可が必要です。
500万円未満(税込)の工事は「軽微な建設工事」に該当し、そのような工事のみを請け負う場合は、建設業許可を取得せずに営業できます。
ただし、許可の要否を判断する際には、据付工事費だけでなく、機械・設備の代金も含めて確認する必要があります。
例えば、次のようなケースです。
| 契約内容 | 金額 |
|---|---|
| マシニングセンタの販売代金 | 800万円 |
| 据付工事費 | 100万円 |
| 合計 | 900万円 |
このケースでは、据付工事費が100万円だからといって、直ちに建設業許可が不要になるわけではありません。
機械の販売と据付工事を一体として請け負う場合や、発注者が機械を支給して据付工事を依頼する場合には、機械代金を含めて500万円の基準を判断する必要があります。
また、正当な理由なく1件の工事を複数の契約に分割しても、原則として請負代金を合算して判断します。
建設業許可の要否は、据付工事費の金額だけでなく、工事の内容や機械・設備の提供方法を含めて判断することが重要です。
機械器具の製品費用を含めた判断については、国土交通省「建設業フォローアップ相談ダイヤル受付状況」でも具体的な事例が紹介されています。
④工場設備の据付工事で検討する建設業許可の業種
工場・製造設備の据付工事では、機械器具設置工事業を中心に、実際の工事内容に応じて必要な建設業許可の業種を判断します。
建設業許可は、設置する機械や設備の名称ではなく、実際に行う工事の内容によって業種が区分されるためです。
機械器具設置工事業は、機械器具を組み立てて工作物を建設したり、工作物に機械器具を取り付けたりする工事を対象としています。ただし、電気工事や管工事など、ほかの専門工事に該当する場合は、それぞれの業種に区分されます。
工場・製造設備の据付に関連する主な工事と許可業種は、次のとおりです。
| 建設業許可の業種 | 工場設備に関連する工事の例 |
|---|---|
| 機械器具設置工事業 | 製造ラインやプラント設備などの機械器具設置工事 |
| 電気工事業 | 生産設備への電源供給に必要な電気設備工事 |
| 管工事業 | 工場内の給排水設備、空調設備、配管設備などの工事 |
| とび・土工工事業 | 機械設備の据付に伴う重量物の配置、基礎工事など |
| 電気通信工事業 | 生産設備に関連する通信設備や情報設備の設置工事 |
例えば、電気を使用して蒸気を発生させる製造設備を工場に設置する場合、次のような工事が必要になることがあります。
- 製造設備本体の据付工事:機械器具設置工事業
- 設備への電源供給や電気配線工事:電気工事業
- 発生した蒸気を送る配管工事:管工事業
この場合、設備メーカーが3業種すべての建設業許可を取得しなければならないわけではありません。

例えば、設備本体の据付を主たる工事として請け負い、電気工事や配管工事がその附帯工事に該当する場合には、設備メーカーが機械器具設置工事業の許可を取得し、電気工事や配管工事をそれぞれの専門業者へ外注する方法があります。
ただし、附帯工事として扱えるかどうかは工事内容によって異なります。また、下請業者にも、請け負う工事に応じて必要な許可や施工資格が求められます。
このように、新規に建設業許可を取得する際には、自社が主に請け負う工事を明確にし、専門業者への外注も含めて施工体制を検討することが重要です。
電気工事や配管工事の許可については、電気工事業の建設業許可と管工事業の建設業許可をご覧ください。
建設工事の業種区分については、建設業許可29業種の選び方でも解説しています。
⑤工場・製造設備の据付で建設業許可を取得するための要件
工場・製造設備の据付工事で新規に建設業許可を取得するには、建設工事の経営経験、技術者の配置、財産的基礎などの要件を満たす必要があります。
これらの要件は、製造業や機械販売業を本業とする会社にも適用されます。製造設備の販売や据付を長年行ってきた会社でも、その経験が建設業許可の要件を満たすか確認することが重要です。
経営業務の管理体制
建設業許可を取得するには、建設工事の経営を適切に管理できる体制が必要です。
代表的な要件として、法人では常勤役員のうち1人が、建設業に関して5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有することが挙げられます。このほかにも、一定の経営経験と補佐体制を組み合わせる方法などがあります。
例えば、機械メーカーの経営者が製造設備の販売だけでなく、据付工事の請負についても継続して経営管理を行ってきた場合、その経験を要件の確認に利用できる可能性があります。
重要なのは、製造業の経営経験が長いことだけでなく、建設工事の経営に関する経験があるかどうかです。
営業所技術者等の実務経験10年と短縮できる場合
建設業許可を取得するには、許可を受ける営業所ごとに、一定の資格または実務経験を持つ「営業所技術者等」を専任で配置する必要があります。
一般建設業許可では、資格や指定学科の卒業歴などによる要件を利用しない場合、原則として取得する業種に関する10年以上の実務経験が必要です。
例えば、工場の製造設備について、据付工事の施工や施工管理に長年携わってきた従業員は、その経験を営業所技術者等の要件に利用できる可能性があります。
また、指定学科を卒業している場合には、学歴などに応じて必要な実務経験が3年または5年に短縮されることがあります。対象となる国家資格等を保有している場合には、実務経験10年によらず要件を満たせることもあります。
どの経験や資格が利用できるかは、取得する建設業許可の業種によって異なります。 据付工事の経験年数や学歴、保有資格を整理し、要件を満たせるか確認することが重要です。
実務経験や資格・学歴を証明するための具体的な資料については、営業所技術者等の要件を証明する資料で詳しく解説しています。

財産的基礎・営業所・社会保険などの要件
建設業許可の取得には、経営経験や技術者の配置に加え、財産的基礎や営業所などの要件も満たす必要があります。
東京都知事・一般建設業許可では、主に次の事項を確認します。
| 確認項目 | 主な要件 |
|---|---|
| 財産的基礎 | 自己資本500万円以上、または500万円以上の資金調達能力など |
| 営業所 | 建設工事の請負契約に関する営業活動を行う実体のある営業所 |
| 社会保険 | 健康保険・厚生年金保険・雇用保険への法令に応じた適切な加入 |
| 誠実性 | 請負契約に関して不正・不誠実な行為をするおそれがないこと |
| 欠格要件 | 建設業法に定める欠格要件に該当しないこと |
例えば、既存の機械メーカーが建設業許可を取得する場合、新たに建設業専用の事務所を設ける必要があるとは限りません。現在の事務所が建設業法上の営業所としての要件を満たしていれば、同じ事務所で許可を取得することも可能です。
新規許可の申請では、既存の経営体制や従業員の経験、営業所などを確認し、不足する要件を整理することが取得に向けた第一歩となります。
⑥工場・製造設備の据付工事で新規許可を取得するときの注意点
工場・製造設備の据付工事で新規に建設業許可を取得する際には、過去の据付工事の実績と、その経験を証明できる資料があるかを確認することが重要です。
製造業や機械販売業では、長年にわたって設備の製造・販売を行っていても、その実績が建設工事の経験として認められるとは限りません。

据付・設置工事の実績と証明資料の確認
建設業許可の申請では、機械の製造・販売実績と、建設工事に該当する据付・設置工事の実績を区別して確認します。
例えば、マシニングセンタを10年間販売してきた会社でも、販売や納品だけを行っていた場合、その実績を据付工事の経験として利用することはできません。
一方、機械の販売とともに据付工事を請け負っていた場合には、工事の内容や担当者の経験によって、建設業許可の要件を満たすための実績として利用できる可能性があります。
過去の経験を証明するためには、主に次のような資料を確認します。
| 確認する資料 | 確認する内容 |
|---|---|
| 工事請負契約書 | 工事内容、契約当事者、契約時期 |
| 注文書・請書 | 据付工事の受注内容や時期 |
| 請求書・入金確認資料 | 工事の内容、取引実績、入金状況 |
| 工事内訳書・施工記録 | 実際に施工した工事の内容 |
| 登記事項証明書・在籍資料等 | 役員としての経営経験や技術者の在籍期間 |
特に、機械代金と据付工事費をまとめて請求している場合は、契約書や内訳書などから、どのような据付工事を行ったのか確認できることが重要です。
また、経営業務の管理体制に関する経験と、営業所技術者等の実務経験は、それぞれ別の要件として証明する必要があります。
経営業務の管理体制では、建設工事の請負に関する経営経験などを確認します。一方、営業所技術者等の実務経験では、取得しようとする許可業種に該当する工事に従事した経験と、その期間を確認します。
例えば、会社として10年以上の据付工事実績があっても、それだけで特定の従業員に10年以上の実務経験があると証明できるわけではありません。
東京都知事許可の申請では、経験を証明する期間について、工事内容が確認できる契約書や請求書、入金資料などを求められる場合があります。
新規許可の取得を検討する際は、過去の工事実績と担当者の経験を整理し、必要な期間を証明できる資料が残っているか、早い段階で確認しておくことが重要です。
⑦工場・製造設備の据付工事と建設業許可についてよくある質問
Q:工作機械の据付工事には建設業許可が必要ですか?
マシニングセンタやNC旋盤などの工作機械を据え付ける場合、工事の内容と請負金額によっては建設業許可が必要です。
工作機械を納品して所定の場所に置くだけの場合と、現地で組立てや設置工事を行う場合では、建設工事への該当性が異なります。
建設工事に該当する場合は、施工内容に応じた許可業種と請負金額を確認する必要があります。
Q:機械器具設置工事業の許可があれば電気工事や配管工事も請け負えますか?
機械器具設置工事業の許可を取得していれば、主たる機械器具設置工事に附帯する電気工事や配管工事も請け負うことができます。
例えば、製造設備の据付に伴う電気配線工事や蒸気配管工事が附帯工事に該当する場合、それぞれの許可を自社で取得せず、専門業者に外注する方法があります。
ただし、附帯工事に該当しない独立した工事については、原則として該当業種の許可が必要です。
附帯工事とは、主たる建設工事を施工するために必要となる、別の業種に該当する工事のことです。
例えば、製造設備の据付工事に伴って必要となる電気配線工事や蒸気配管工事が、附帯工事に該当する場合があります。
建設業法では、主たる工事の許可を受けていれば、これに附帯する他業種の工事も一体として請け負うことが認められています。
Q:資格がなくても据付工事の実務経験で建設業許可を取得できますか?
はい。一般建設業許可では、国家資格などを保有していなくても、取得する業種に関する10年以上の実務経験によって、営業所技術者等の要件を満たせる場合があります。
また、指定学科の卒業歴などによって、必要な実務経験が3年または5年に短縮される場合もあります。
ただし、実務経験で満たせるのは技術者に関する要件です。建設業許可を取得するには、経営業務の管理体制など、ほかの要件も満たす必要があります。
Q:据付工事の実績がなくても建設業許可を取得できますか?
会社として据付工事の施工実績がなくても、建設業許可を取得できる場合があります。
建設業許可では、会社の過去の工事実績そのものが一律に求められるわけではありません。
例えば、新たに据付工事業務を開始する会社でも、建設業に関する経営経験を持つ役員や、必要な資格を持つ営業所技術者等を確保し、その他の許可要件を満たせば申請できます。
Q:機械の販売会社でも建設業許可を取得できますか?
はい。機械商社や設備販売会社でも、建設業許可を取得できます。
建設業許可は、会社の主な事業が製造業や販売業であるかどうかではなく、建設業法で定める許可要件を満たしているかによって判断されます。
機械の販売と据付工事を一括して受注する事業者も、経営業務の管理体制や営業所技術者等の要件を満たせば、建設業許可を取得することが可能です。
Q:500万円未満の据付工事なら建設業許可は不要ですか?
建設工事に該当する据付工事でも、1件の請負代金が500万円未満(税込)であれば、原則として建設業許可は不要です。
ただし、機械の販売と据付工事を一体として請け負う場合や、発注者から機械・材料の支給を受ける場合には、その代金を含めて金額を判断する必要があるケースがあります。
据付工事費だけを基準にするのではなく、契約内容や機械の提供方法を確認することが重要です。
まとめ|工場・製造設備の据付工事で建設業許可を取得するために
工場で使用する工作機械や生産設備、産業用ロボットなどの据付工事は、工事の内容や請負金額によって建設業許可が必要になります。
製造業や機械販売業を本業とする会社であっても、建設工事に該当する据付工事を請け負う場合は、建設業法の対象となります。
新規に建設業許可を取得する際には、自社が請け負う工事に必要な許可業種を確認し、経営業務の管理体制や営業所技術者等の要件を満たせるか検討することが重要です。
また、電気工事や配管工事などを伴う設備の据付では、附帯工事として専門業者に外注できる場合もあります。関連するすべての許可業種を自社で取得する必要があるとは限りません。
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