エネルギー設備の設置工事を請け負う場合、工事内容や請負金額によって建設業許可が必要になります。
対象となる設備には、小型非常用発電機や蒸気ボイラー、業務用給湯設備などがあります。
建設業許可には「非常用発電機設置工事業」といった業種はありません。そのため、実際の施工内容に応じて、電気工事業や管工事業などの該当する業種を判断する必要があります。
この記事では、エネルギー設備の設置工事に必要な建設業許可の判断基準、設備価格、許可業種、取得要件について解説します。
目次
①エネルギー設備の設置工事の具体例
エネルギー設備には、電力の供給や蒸気の発生、給湯などを目的としたさまざまな設備があります。

工場や店舗、医療・福祉施設などで使用される代表的な設備は、次のとおりです。
| 設置場所 | 設備の用途 | 設備の種類 |
|---|---|---|
| 介護施設・診療所・工場 | 停電時に必要な電力を確保する | 非常用発電機 |
| クリーニング工場・食品工場 | 洗浄・加熱・仕上げなどに使う蒸気を作る | 蒸気ボイラー |
| 理美容室・介護施設・宿泊施設 | 洗髪や入浴などに必要なお湯を供給する | 業務用ヒートポンプ給湯機 |
| 飲食店・宿泊施設 | 厨房や客室などにお湯を供給する | 業務用高効率ガス給湯器 |
| 工場・大型事業所 | 電力と熱を同時に供給する | コージェネレーション設備 |
例えば、介護施設では停電への備えとして非常用発電機を設置し、クリーニング工場では衣類の仕上げに必要な蒸気をボイラーで供給しています。

こうした設備の設置工事では、機器本体の据付だけでなく、電気配線や給水・蒸気配管などの施工を伴うケースもあります。
そのため、建設業許可の要否や許可業種は、設備の名称ではなく、実際の工事内容と請負金額に基づく判断が重要です。
②エネルギー設備の設置に建設業許可が必要な理由
エネルギー設備の設置工事には、専門的な施工技術と適切な安全管理が欠かせません。
非常用発電機や蒸気ボイラー、業務用給湯設備は、電力や熱を供給する重要な設備です。施工に不備があれば、設備の故障だけでなく、停電時の電力供給停止や蒸気・ガスの漏出など、重大な事故につながるおそれがあります。
例えば、介護施設の非常用発電機が正常に稼働しなければ、停電時に必要な電力を確保できません。また、蒸気ボイラーの配管接続に不備があれば、高温の蒸気が漏れ、作業員の安全に影響する可能性も考えられます。
こうした設置工事のうち、建設工事に該当するものは建設業法の対象となり、請負金額に応じて建設業許可が必要になります。
建設業法は、建設工事の適正な施工の確保や発注者の保護などを目的とする法律です。専門施工会社だけでなく、設備の販売と設置工事を一括して請け負うメーカーや販売会社も、その対象となります。
③エネルギー設備の設置に建設業許可が必要となる条件
エネルギー設備の設置工事では、1件の建設工事の請負金額が500万円以上(税込)の場合、原則として建設業許可が必要です。
ただし、許可の要否は据付工事費だけでは判断できません。設備本体の販売や支給を伴う場合には、契約内容の確認も欠かせないためです。
500万円未満の軽微な建設工事
1件の請負金額が500万円未満(税込)の工事は「軽微な建設工事」に該当し、そのような工事のみを請け負う場合、建設業許可は不要です。
例えば、次のような設備では、機器本体と据付工事費を合わせても500万円未満に収まるケースがあります。
| 設備 | 設置工事の具体例 |
|---|---|
| 小型非常用発電機 | 介護施設・診療所への発電機1台の設置 |
| 小型蒸気ボイラー | クリーニング工場でのボイラーの新設・更新 |
| 業務用ヒートポンプ給湯機 | 理美容室への給湯機・貯湯タンクの設置 |
| 業務用高効率ガス給湯器 | 飲食店での給湯器の設置・交換 |

一方、複数台の設置や大規模な配管・電気工事を伴う場合は、500万円以上となる可能性も考えられます。
なお、建設業許可が不要であっても、電気工事やガス工事、ボイラーに関する資格・登録・届出などは別途確認が必要です。
500万円基準の考え方や、工事内容から許可の要否を判断する方法は、建設業許可が必要な工事の判断方法で詳しく解説しています。
設備本体の販売・支給と請負金額の判断
エネルギー設備の販売と据付工事を一体として請け負う場合は、契約の実態に応じて、機器本体の代金を含めた金額で判断する必要があります。
注文者から機器を支給される場合も同様で、その市場価格や運送費を請負代金に加えて判断するのが原則です。
例えば、介護施設に非常用発電機を設置するケースを考えてみましょう。
| 契約内容 | 金額(税込) |
|---|---|
| 支給される非常用発電機の市場価格 | 400万円 |
| 据付・電気工事費 | 150万円 |
| 判定上の合計額 | 550万円 |
※金額は説明用の仮定例です。別途運送費がある場合は、その金額も考慮します。
この場合、施工会社が受け取る工事費は150万円ですが、支給機器の市場価格を加えると550万円となり、建設業許可が必要な金額基準に達します。
また、正当な理由なく工事を複数の契約に分割した場合は、原則として請負金額を合算して判断する仕組みです。
エネルギー設備メーカーや販売施工会社にとって重要なのは、据付工事費だけでなく、機器の販売・支給方法を含めて契約全体を確認することです。法や契約内容を確認することが重要です。
④エネルギー設備の設置で検討する建設業許可の業種
エネルギー設備の設置工事では、電気工事業・管工事業・機械器具設置工事業が主な検討対象です。
建設業許可には「非常用発電機設置工事業」や「ボイラー設置工事業」といった業種はありません。設備の名称ではなく、実際の施工内容に基づいて判断します。
| 設備・工事内容 | 主に検討する許可業種 |
|---|---|
| 非常用発電機・電源設備の設置 | 電気工事業 |
| 内燃力発電設備の機械的な据付 | 機械器具設置工事業 |
| 蒸気ボイラー・蒸気配管の設置 | 管工事業など |
| 業務用ヒートポンプ給湯機 | 管工事業 |
| 業務用高効率ガス給湯器 | 管工事業 |
国土交通省の業種区分では、非常用電気設備工事は電気工事、給湯設備工事は管工事、内燃力発電設備工事は機械器具設置工事の例として示されています。
国土交通省:業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方
非常用発電機の設置工事と許可業種
非常用発電機の設置工事では、電気工事業が主な検討対象となります。
国土交通省の業種区分では、発電設備工事や非常用電気設備を含む構内電気設備工事は、電気工事業に分類されているためです。
例えば、介護施設や診療所に非常用発電機を設置し、電源配線や切替盤などを施工する工事が該当します。
一方、機械器具設置工事業には内燃力発電設備工事も含まれるため、具体的な工事内容に応じた業種の確認が必要です。
電気工事業の対象となる工事や、許可取得に必要な資格・実務経験については、電気工事業の建設業許可をご覧ください。
ボイラー・給湯設備と管工事業
蒸気ボイラーや業務用給湯設備の設置では、管工事業が主な検討対象となります。
国土交通省の業種区分では、給湯設備工事や、水蒸気・ガスなどを送る配管設備の工事が管工事に含まれるためです。
例えば、クリーニング工場で蒸気ボイラーと蒸気配管を設置する工事や、理美容室でヒートポンプ給湯機と給湯配管を施工するケースが挙げられます。
ただし、管工事に該当しない複合的な機械設備の設置では、機械器具設置工事業が検討対象となる場合もあります。
管工事業の対象となる工事や取得要件については、管工事業の建設業許可で詳しく解説しています。
複数業種にまたがる工事と附帯工事
エネルギー設備の設置では、電気工事や管工事など、複数業種の施工を伴うことがあります。
主たる工事に付随する別業種の工事が「附帯工事」に該当する場合は、主たる工事の許可で一体として請け負うことが可能です。
例えば、業務用給湯設備の設置を主たる管工事として請け負い、附帯する電気工事を専門業者に外注するケースが考えられます。
ただし、独立した別業種の工事には、原則としてその業種の許可が必要です。また、附帯工事を自社施工する場合は、軽微な建設工事を除き、専門技術者の配置が求められます。電気工事に関する資格なども別途確認が必要です。
建設工事の業種区分については、建設業許可29業種の選び方でも解説しています。
⑤エネルギー設備の設置会社が建設業許可を取得するための要件
エネルギー設備の設置会社が新規に建設業許可を取得するには、建設工事の経営経験、営業所技術者等の配置、財産的基礎などの要件を満たす必要があります。
これらは専門施工会社だけでなく、非常用発電機やボイラー、業務用給湯設備を扱うメーカー・販売会社にも共通する要件です。
経営業務の管理体制
建設業許可の取得には、建設工事を適切に経営管理できる体制が必要です。
代表的なのは、法人の常勤役員のうち1人が、建設業に関して5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を持つケース。このほか、一定の経営経験と補佐体制を組み合わせる方法も認められています。
例えば、業務用給湯設備の販売会社が、機器の販売だけでなく設置工事も継続して請け負っていた場合、その経営経験を要件の確認に利用できる可能性があります。
重要なのは、設備の販売実績ではなく、建設工事の経営に関する経験があるかどうかです。
営業所技術者等の資格と実務経験
建設業許可では、取得する業種に対応した資格や実務経験を持つ「営業所技術者等」を、営業所ごとに専任で配置する必要があります。
一般建設業許可では、資格や指定学科の学歴による要件を利用しない場合、原則として10年以上の実務経験が必要です。
例えば、非常用発電機の電気設備工事に携わってきた技術者は電気工事業、蒸気配管や給湯設備の工事に携わってきた技術者は管工事業について、実務経験を確認することになります。
また、所定の国家資格や指定学科の卒業歴によって、実務経験の要件を満たす方法もあります。
技術者の経験は、設備の名称ではなく、実際に担当した工事内容と取得する許可業種との対応が重要です。
資格や実務経験の証明方法については、営業所技術者等の要件を証明する資料で詳しく解説しています。
財産的基礎・営業所・社会保険などの要件
東京都知事・一般建設業許可では、経営経験や技術者の配置に加え、次の要件も確認します。
| 確認項目 | 主な要件 |
|---|---|
| 財産的基礎 | 自己資本500万円以上、または500万円以上の資金調達能力など |
| 営業所 | 建設工事の請負契約に関する営業活動を行う実体のある営業所 |
| 社会保険 | 健康保険・厚生年金保険・雇用保険への法令に応じた適切な加入 |
| 誠実性 | 請負契約に関して不正・不誠実な行為をするおそれがないこと |
| 欠格要件 | 建設業法に定める欠格要件に該当しないこと |
例えば、既存の設備販売会社が建設業許可を取得する場合、現在の事務所が建設業法上の営業所の要件を満たしていれば、新たに専用事務所を設ける必要はありません。
新規許可の取得では、既存の経営体制や技術者の経験、財産的基礎を確認し、不足する要件を整理することが重要です。
⑥エネルギー設備の設置会社が新規許可を取得するときの注意点
エネルギー設備メーカーや販売施工会社が建設業許可を取得する際は、製造・販売実績と建設工事の実績を区別し、必要な資格や手続きも確認することが重要です。
特に、電気工事業と管工事業では、技術者に求められる資格や実務経験が異なります。

設備の製造・販売実績と据付工事の実績の違い
設備の製造・販売実績だけでは、建設業許可に必要な建設工事の経験として認められません。
例えば、非常用発電機を10年間販売してきた会社でも、納品のみを行っていた場合、その実績を建設工事の経験として利用することはできません。
一方、発電機の販売とともに設置工事を継続して請け負っていた場合は、工事内容や担当者の経験によって、許可要件の証明に利用できる可能性があります。
重要なのは、設備を販売した実績ではなく、どのような建設工事を請け負っていたかという点です。
電気工事・ボイラー設備に関する資格や法令上の手続き
エネルギー設備の設置では、建設業許可とは別に、工事や設備の種類に応じた資格・登録・届出が必要になる場合があります。
代表的なものは次のとおりです。
| 対象設備・工事 | 関係する資格・手続きの例 |
|---|---|
| 非常用発電機の電気工事 | 電気工事士、電気工事業の登録・届出 |
| 蒸気ボイラーの設置・取扱い | ボイラー技士、ボイラー設置届、検査など |
| 業務用ヒートポンプ給湯機 | 電気工事士、電気工事業の登録・届出など |
| 業務用ガス給湯器 | ガス設備の工事に必要な資格・施工上の要件 |
※必要な資格・手続きは設備の仕様、工事の内容、設置場所などによって異なります。すべての設備に一律に適用されるものではありません。
例えば、非常用発電機の電気工事を請け負う場合、建設業許可を取得しただけで、電気工事業法上の手続きや電気工事士の資格が不要になるわけではありません。
また、小型蒸気ボイラーには、仕様によってボイラー関係の資格や検査などの扱いが異なるものがあります。
建設業許可の取得要件と、設備の設置・取扱いに関する法令上の要件は、分けて確認する必要があります。
複数業種の実務経験と証明資料
電気工事業と管工事業など、複数業種の許可を取得する場合は、それぞれの業種に対応した技術者の資格や実務経験が必要です。
例えば、非常用発電機の電気設備工事と、業務用給湯設備の配管工事を担当していた場合、両方の経験を単純に合算して一つの業種の実務経験とすることはできません。
過去の実績を確認する資料には、次のようなものがあります。
| 資料 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 工事請負契約書 | 工事内容・契約時期 |
| 注文書・請書 | 受注した工事の種類 |
| 請求書・入金確認資料 | 工事の取引実績 |
| 工事内訳書・施工記録 | 実際の施工内容 |
| 在籍期間を確認できる資料 | 技術者の実務経験期間 |
製造・販売と据付工事を一括受注していた会社では、契約書だけでは施工内容が分からない場合もあります。その際は、工事内訳書などを用いて、建設工事に該当する部分を確認することが重要です。
経営経験と営業所技術者等の実務経験は別の要件であり、それぞれについて必要な経験と証明資料を整理しておきましょう。
⑦エネルギー設備の設置工事と建設業許可についてよくある質問
Q:小型非常用発電機の設置に建設業許可は必要ですか?
建設工事に該当し、1件の請負金額が500万円以上(税込)となる場合は、原則として建設業許可が必要です。
例えば、介護施設や診療所に非常用発電機を設置する工事では、電気工事業が主な検討対象となります。
ただし、機器本体と設置工事費を合わせて500万円未満であれば、軽微な建設工事として許可は不要です。
Q:クリーニング工場の蒸気ボイラーは管工事業ですか?
蒸気ボイラーの設置では、管工事業が主な検討対象です。
例えば、クリーニング工場でボイラーを据え付け、蒸気配管や給水配管を接続する工事が考えられます。
ただし、設備全体の構成や施工内容によっては、機械器具設置工事業との区分も確認が必要です。
Q:業務用ヒートポンプ給湯機の設置には建設業許可が必要ですか?
給湯設備の設置工事は、一般的に管工事業の対象となります。
例えば、理美容室に給湯機と貯湯タンクを設置し、給水・給湯配管を接続する工事です。
1件の請負金額が500万円未満であれば、建設業許可は不要ですが、電気工事に関する資格や手続きは別途確認する必要があります。
Q:業務用ガス給湯器の交換にも建設業許可が必要ですか?
既存の業務用ガス給湯器を交換する工事では、通常、500万円未満に収まるケースが多く、建設業許可が不要となる場合があります。
ただし、複数台の交換や配管設備全体の更新など、1件の請負金額が500万円以上となる建設工事では、原則として管工事業の許可が必要です。
なお、建設業許可が不要でも、ガス工事に必要な資格や施工上の要件は別途適用されます。
Q:設備本体を支給された場合、500万円基準はどう判断しますか?
注文者から工事に使用する設備を支給される場合は、支給機器の市場価格と運送費を請負代金に加えて判断するのが原則です。
例えば、支給される非常用発電機の市場価格が400万円、据付・電気工事費が150万円であれば、判定上の合計額は550万円となります。
施工会社が受け取る工事費だけで、許可の要否を判断しないよう注意が必要です。
Q:設備メーカーの据付実績を建設業許可の取得に利用できますか?
設備メーカーでも、建設工事に該当する据付工事を請け負っていた実績は、許可要件の証明に利用できる可能性があります。
例えば、業務用給湯設備を販売するだけでなく、給湯配管の施工まで継続して請け負っていた場合です。
ただし、設備の製造・販売だけの実績は、建設工事の経験として認められません。
工事請負契約書や注文書、工事内訳書などから、実際の施工内容と経験期間を確認する必要があります。
まとめ|エネルギー設備の設置工事で建設業許可を取得するために
エネルギー設備の設置工事では、工事内容や請負金額によって、電気工事業や管工事業などの建設業許可が必要になります。
非常用発電機や蒸気ボイラー、業務用給湯設備などは、機器本体と据付工事費を合わせても500万円未満に収まるケースがあります。一方、複数台の設置や関連工事を一括して請け負う場合は、500万円以上となる可能性もあるため注意が必要です。
また、建設業許可には設備の名称に対応した独立の業種があるわけではなく、実際の施工内容に応じて許可業種を判断する仕組みです。
設備メーカーや販売施工会社が新規許可を取得する際は、建設工事の経営経験、営業所技術者等の資格・実務経験、過去の工事実績を確認することが重要です。
エネルギー設備の設置工事で建設業許可をご検討の方へ
IT行政書士事務所では、非常用発電機や蒸気ボイラー、業務用給湯設備などを扱うメーカー・販売施工会社の建設業許可取得をサポートしています。
東京都知事・一般建設業許可の新規申請については、以下のサービスページをご覧ください。
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