新しい取引先候補から、これまでより規模の大きな工事の引き合いが来たとき、「この工事は建設業許可がなくても請け負えるのか」と気になる方もいるでしょう。
建設業許可が必要かどうかは、工事内容や請負金額などを確認しながら判断します。
この記事では、建設業許可が必要になる基本的な考え方と、実際の工事を想定した確認の流れをわかりやすく解説します。
目次
① 新しい工事の依頼が来たら、まず建設業許可が必要か確認する
新しい取引先候補から工事の引き合いがあったときは、契約を進める前に、その工事に建設業許可が必要か確認しておきましょう。
これまで比較的小規模な工事を中心に請け負ってきた事業者でも、今回の工事内容や請負金額によっては、建設業許可が必要になることがあります。
依頼された工事の内容を具体的に確認する
まず確認したいのは、取引先からどのような工事を依頼されているのかです。
「店舗改装」「設備工事」「改修工事」といった呼び方だけでは、実際に何を施工するのかまでは分かりません。
見積りを作る段階で、どこまでを自社で請け負うのか、どのような作業が含まれているのかを確認しておく必要があります。
工事内容と請負金額から許可の要否を考える
工事内容が整理できたら、次に請負金額を確認します。
建設業法では、軽微な建設工事だけを請け負う場合には、建設業許可を受けずに工事を請け負うことができます。
一方で、その範囲を超える工事を請け負う場合には、工事内容に対応した建設業許可が必要です。
そのため、新しい仕事の話が来たときは、「何の工事を、いくらで請け負うのか」まで確認してから、許可が必要かを判断します。
② 建設業許可が必要になる基本ルール
建設業許可は、すべての工事で必要になるわけではありません。
許可を受けていなくても、一定の範囲に収まる「軽微な建設工事」であれば請け負うことができます。新しい工事の依頼が来たときは、まず今回の工事がこの範囲に収まるかを確認します。
軽微な建設工事だけを請け負う場合は許可が不要
建築一式工事以外では、1件の請負代金が500万円未満(税込)の工事が軽微な建設工事にあたります。
たとえば、内装仕上工事や電気工事などを請け負う場合は、この500万円という金額が一つの基準になります。
反対に、1件の工事として500万円以上になる場合は、原則として、その工事に対応する建設業許可が必要です。
建築一式工事と、それ以外の工事では基準が異なる
建築一式工事については、ほかの専門工事とは基準が異なります。
建築一式工事では、1件の請負代金が1,500万円未満(税込)の工事、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事が軽微な建設工事にあたります。
店舗の内装や電気設備の工事を請け負うケースでは、通常は建築一式工事ではなく、それぞれの専門工事として考えることになります。
請負金額だけでなく、実際の契約内容を確認する
金額を確認するときは、見積書に書かれた数字だけを見て判断するのではなく、実際にどの工事をどの範囲まで請け負う契約なのかを確認する必要があります。
同じ現場で複数の作業を行う場合や、契約が複数に分かれている場合などは、契約の形だけで軽微な建設工事に該当するとは判断できません。
まずは今回の仕事について、工事内容と契約内容を整理したうえで、建設業許可が必要になるかを確認します。
税込・材料費・支給材・契約分割など、500万円未満かどうかの詳しい計算方法は、建設業許可の500万円基準の判断方法で解説しています。
③ 店舗リフォームの依頼を例に、工事内容を整理する

ここでは、「店舗リフォーム」を掲げて営業している事業者を例に考えます。
この事業者は、これまで比較的小規模な店舗改装を中心に、壁・天井・床・間仕切りなどの内装仕上工事と、照明・コンセント・配線などの電気工事を請け負ってきました。
そこへ、新しい取引先候補から、これまでより規模の大きい店舗改装工事の引き合いが来たとします。
この場合、「店舗リフォーム」という名称だけで必要な建設業許可を判断することはできません。実際にどの工事を請け負うのかを分けて確認します。
「店舗リフォーム業」という建設業許可はない
建設業許可には、「店舗リフォーム業」という許可業種はありません。
店舗リフォームというのは営業上の呼び方で、実際の工事は内装仕上工事、電気工事、大工工事、管工事などに分かれることがあります。
そのため、店舗リフォームを請け負っているからといって、一つの許可ですべての工事をカバーできるわけではありません。
建設業許可は工事の種類ごとに分かれている
建設業許可は、工事の内容に応じて業種が分かれています。
今回の事業者であれば、壁や天井、床の仕上げ、間仕切りなどは内装仕上工事に該当する可能性があります。
一方、照明器具の設置や配線、コンセント工事などは、電気工事として整理することになります。
同じ店舗改装の中でも、工事の内容によって必要になる許可業種は異なります。
実際に請け負う工事から必要な許可業種を判断する
新しい店舗改装の依頼を受けたら、見積書や工事内容を確認し、実際にどこまでを自社で請け負うのかを整理します。
内装工事だけを請け負うのか、電気工事まで含めて請け負うのかによって、確認すべき許可業種は変わります。
「店舗リフォーム」という看板の名称ではなく、実際に請け負う工事の中身から必要な許可業種を確認することが大切です。
④ 店舗改装の工事内容を、許可業種ごとに確認する
では、先ほどの店舗リフォーム事業者が、新しい取引先から店舗改装工事を依頼された場合を考えてみます。
見積りには、壁や床の仕上げだけでなく、照明やコンセントの工事も含まれているとします。この場合は、「店舗改装工事」とひとまとめにせず、実際にどのような工事を請け負うのかを確認します。
内装仕上工事として請け負う部分を確認する
壁紙や床材の施工、天井の仕上げ、間仕切りなどは、内装仕上工事として扱われるものがあります。
たとえば、新しい店舗の内装について、壁・床・天井の仕上げをまとめて請け負うのであれば、まず内装仕上工事としてどの範囲を施工するのかを確認します。
今回のように、これまで小規模な内装工事を中心に請け負ってきた事業者でも、新しい案件の規模が大きくなれば、内装仕上工事業の許可が必要になる可能性があります。
電気工事として請け負う部分を確認する
店舗改装では、照明の設置やコンセント、配線などの電気工事が含まれることもあります。
今回の事業者が、内装仕上工事だけでなく、こうした電気工事も自社の契約として請け負うのであれば、電気工事についても確認が必要です。
つまり、「店舗改装を一式で依頼された」というだけではなく、その契約の中で自社が何を施工するのかまで見ていきます。
一つの店舗改装でも、工事内容を分けて考える
店舗改装は、一つの案件の中に複数の種類の工事が含まれることがあります。
今回の例でも、
- 壁・床・天井などの内装仕上工事
- 照明・コンセント・配線などの電気工事
というように、実際の施工内容を整理できます。
ここでいう「分けて考える」とは、契約を分割して請負金額を小さくするという意味ではありません。必要な許可業種を確認するために、どのような工事が含まれているのかを整理するという意味です。
店舗リフォームという一つの仕事であっても、実際に請け負う内容を確認すると、検討すべき許可業種が複数になることがあります。
許可が必要と分かったら、次に自社の工事が29業種のどこに当てはまるのかを考えます。
自社に必要な建設業許可の業種を選ぶ方法
⑤ ここまでの内容をもとに、許可の要否を整理する

ここまで確認した内容を、実際の案件に当てはめて整理してみます。
新しい工事の依頼が来たときは、次の順番で確認すると判断しやすくなります。
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| 工事内容 | 実際に何の工事を請け負うのか |
| 請負金額 | 軽微な建設工事の範囲に収まるか |
| 許可業種 | 工事内容に対応する許可業種は何か |
| 必要な時期 | 許可が必要な場合、いつまでに取得する必要があるか |
先ほどの店舗リフォーム事業者であれば、まず内装仕上工事と電気工事のどこまでを請け負うのかを確認します。
そのうえで、それぞれの工事について請負金額を確認し、建設業許可が必要になるかを見ていきます。
許可が必要な工事であれば、次に確認するのは、自社がその許可を取得できるかどうかです。
許可が必要な工事であれば、次に確認するのは、自社がその許可を取得できるかどうかです。
建設業許可を取得するには、経営体制、営業所技術者等、財産的基礎など複数の条件を満たす必要があります。詳しくは、建設業許可の取得条件・申請要件をご覧ください。
⑥ 建設業許可が必要だと分かったら、取得に向けて確認する

工事内容と請負金額を確認し、建設業許可が必要だと分かったら、次は実際に許可を取得できるかを確認します。
今回の店舗リフォーム事業者であれば、内装仕上工事業や電気工事業のうち必要な許可を整理し、自社が取得要件を満たしているか、必要な資料をそろえられるかを確認していきます。
| 確認すること | 主な確認内容 |
|---|---|
| 取得する許可業種 | 内装仕上工事業、電気工事業など、受注する工事に対応する業種を確認する |
| 許可要件 | 経営体制、営業所技術者等、財産的基礎などの要件を満たしているか確認する |
| 確認資料 | 経営経験や実務経験などを、過去の資料で確認できるか確認する |
| 必要な時期 | 取引先との契約や工事開始までに、いつ許可が必要なのか確認する |
建設業許可は、申請書を提出するだけで取得できるものではありません。特に経営経験や実務経験を使う場合は、過去の資料をさかのぼって確認することもあります。
新しい仕事を受注するために許可が必要なのであれば、工事の予定から逆算して準備を進めることが重要です。
建設業許可が必要だと分かったら、次は取得する許可業種や要件、必要書類、申請の流れを確認していきます。
建設業許可の取得方法・要件・必要書類・申請の流れ
許可が必要な場合は、申請前に営業所や人員などの取得条件も確認しておきます。
建設業許可の営業所要件を確認する
⑦ 新しい取引先からの依頼では、早めに許可の要否を確認する
新しい取引先候補から工事の引き合いが来た場合は、商談が具体化した段階で、建設業許可が必要かを確認しておくことが大切です。
建設業許可は、申請すればすぐに取得できるものではありません。申請前には要件の確認や資料収集、申請書類の作成が必要で、申請後にも審査があります。
また、申請書を提出して審査中であっても、まだ建設業許可を取得した状態ではありません。
今回の店舗リフォーム事業者のように、新しい取引先からこれまでより大きな工事の話が来た場合は、見積りや工事内容が固まり始めた段階で、許可が必要かを確認しておくと進めやすくなります。
許可が必要だと分かってから慌てるのではなく、商談段階で確認し、必要であれば早めに取得準備を始めることが重要です。
⑧ 建設業許可が不要でも、取得を検討する場面がある
工事内容や請負金額を確認した結果、建設業法上は許可がなくても請け負える工事だったとしても、事業上の理由から建設業許可の取得を検討することがあります。
現在の取引を維持するために取得する
取引先によっては、発注先を建設業許可業者に限っていたり、今後の取引条件として許可の取得を求めたりすることがあります。
この場合、目の前の工事が軽微な建設工事であっても、許可を取得しないことで、今後の受注に影響する可能性があります。
現在の取引先との関係を維持するために、建設業許可を取得するケースもあります。
今後の受注を拡大するために取得する
これまで小規模な工事が中心だった事業者でも、新しい取引先が増えたり、これまでより大きな工事の引き合いが増えたりすると、許可が必要になる場面が出てきます。
今回の店舗リフォーム事業者でも、今後、より規模の大きい内装仕上工事や電気工事を受注していくのであれば、建設業許可の取得を検討することになります。
今回のように新しい取引先からの引き合いをきっかけに、現在の取引を守るため、または今後の受注を広げるために、建設業許可の取得を検討することがあります。
⑨ 建設業許可が必要かについてよくある質問
Q:小規模な工事だけなら建設業許可は必要ありませんか?
軽微な建設工事だけを請け負う場合は、建設業許可を受けなくても工事を請け負うことができます。
建築一式工事以外では、1件の請負代金が500万円未満(税込)の工事が軽微な建設工事にあたります。
ただし、今後より大きな工事を受注する予定がある場合や、取引先から許可取得を求められている場合は、早めに取得を検討することがあります。
Q:店舗リフォームには何の建設業許可が必要ですか?
「店舗リフォーム業」という許可業種はありません。
必要になる許可業種は、実際に請け負う工事の内容によって判断します。
たとえば、壁・床・天井などの仕上げを行う場合は内装仕上工事業、照明や配線などの工事を請け負う場合は電気工事業を確認することになります。
店舗改装という名称だけで決めず、見積書や施工内容から、実際に何の工事を請け負うのかを確認します。
Q:建設業許可がなくても見積りや商談はできますか?
建設業許可を取得していない段階でも、工事内容や金額について見積りや商談を進めること自体と、許可が必要な工事を実際に請け負うことは分けて考える必要があります。
商談が進んで工事内容や請負金額が具体的になったら、契約を進める前に建設業許可が必要かを確認しておきましょう。
Q:申請中でも許可が必要な工事を請け負えますか?
建設業許可を申請しただけでは、許可を取得したことにはなりません。
そのため、許可が必要な工事については、申請中だから請け負えるという扱いにはなりません。
新しい仕事のために許可が必要な場合は、申請準備や審査にかかる期間も考えて、工事開始時期から逆算して進める必要があります。
Q:今後大きな工事を受注したい場合は、先に建設業許可を取得できますか?
現在請け負っている工事が軽微な建設工事だけであっても、今後より大きな工事を受注する予定がある場合に、あらかじめ建設業許可の取得を検討することはできます。
ただし、許可を取得するには、取得しようとする許可業種を決めたうえで、経営体制や営業所技術者等、財産的基礎などの要件を満たす必要があります。
今後どのような工事を受注したいのかが具体的になってきた段階で、必要な許可業種と取得要件を確認しておくと進めやすくなります。
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東京都知事・一般建設業の新規許可申請
まとめ|新しい工事の依頼が来たら、許可が必要か早めに確認する
新しい取引先候補から工事の引き合いが来たときは、まず実際にどのような工事を請け負うのか、請負金額はいくらになるのかを確認し、建設業許可が必要かを判断します。
「店舗リフォーム」のような呼び方だけでは、必要な許可業種までは分かりません。内装仕上工事や電気工事など、実際の施工内容に分けて確認することが重要です。
許可が必要だと分かった場合は、取得する許可業種を整理し、要件を満たしているか、必要な資料をそろえられるかを確認します。
また、建設業許可は申請すればすぐに取得できるものではありません。新しい仕事の受注をきっかけに許可が必要になりそうな場合は、商談が具体化した段階で早めに確認しておくと進めやすくなります。
建設業許可は、現在の取引を維持するために必要になることもあれば、今後より大きな工事を受注するために取得することもあります。

