設備メーカー・機械商社にも建設業許可は必要?製造業・販売会社向けに解説

設備メーカーの経営者と事務担当者が、搬送設備の図面や契約書類を見ながら据付工事と建設業許可の関係を確認している様子

設備メーカーや機械商社が、取引先から突然「建設業許可を持っていますか?」と確認されることがあります。

建設業を営んでいるわけではないのに、なぜ許可が必要なのでしょうか。

実は、機械の製造・販売を本業とする会社でも、設備の据付工事を請け負う場合は、建設業許可が必要になることがあります。

この記事では、設備メーカー・機械商社にも建設業許可が求められる理由、販売・据付・外注による違い、許可業種と取得要件について解説します。

工場内で大型産業機械の据付位置や基礎への固定状況を確認する設備メーカーの担当者と施工技術者
工場設備の納入に伴い、現地での組立て・固定・接続などの据付工事が必要になる場合があります。

①なぜ設備メーカー・機械商社にも建設業許可が求められるのか

設備メーカーや機械商社でも、機械の据付工事を請け負う場合には、建設業許可が必要になることがあります。

その背景には、建設工事の適正な施工と安全性を確保するための法的・社会的な要請があります。

建設工事に該当する据付工事と建設業法の関係

機械の据付工事が建設業法の対象となるのは、機械を単に納入するだけでなく、建物や工場の設備として組み立て、固定する工事を伴うためです。

こうした作業は、完成した製品を届ける売買取引とは異なり、現場で工作物を建設したり、既存の工作物に機械を取り付けたりする施工に当たります。

例えば、コンベアを工場内で組み立て、支持架台に固定して搬送ラインを構築する工事がその一例です。一方、完成した機械を搬入し、所定の場所に置くだけなら、通常は建設工事に該当しません。

国土交通省の業種区分でも、機械器具の組立てによる工作物の建設や、工作物への機械器具の取付けは、機械器具設置工事として例示されています。

ただし、据付工事がすべて機械器具設置工事業に該当するわけではなく、施工内容によって電気工事業や管工事業などに区分される場合もあります。

適切な施工と安全確保を求める社会的な要請

建設業許可制度は、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するという社会的な要請を背景としています。

建設工事には専門的な技術が必要であり、施工不良による事故や設備の損傷は、発注者だけでなく周囲の人々にも影響を及ぼす可能性があるためです。

例えば、工場設備の据付工事に不備があれば、設備の故障による生産停止だけでなく、作業員の安全にも関わります。

こうしたリスクを踏まえ、建設業法では一定の経営管理能力や技術力などを備えた事業者に許可を与える制度を設けています。

発注者が建設業許可の有無を確認する理由

発注者が設備メーカーや機械商社に建設業許可の有無を確認するのは、法令遵守と適切な施工体制を確かめるためです。

機械設備の据付工事では、施工不良による事故や設備の故障が工場の操業に影響するおそれがあり、発注者も施工会社の技術力や管理体制を重視します。

例えば、工場が製造ラインの新設を依頼する際、建設業許可の有無を確認するケースがあります。

また、法律上の許可義務と、発注者が求める取引条件は必ずしも一致しません。

建設業法では、500万円未満(税込)の軽微な建設工事のみを請け負う場合、原則として許可は不要です。しかし、発注者によっては、工事金額にかかわらず、建設業許可を発注条件としていることもあります。

そのため、法律上は許可が不要な工事でも、取引先の条件によっては許可の取得が必要になる場合があります。

②機械の販売・据付と建設業許可の関係

設備メーカーや機械商社に建設業許可が必要かどうかは、機械の販売・納品だけを行うのか、建設工事に該当する据付工事まで請け負うのかによって異なります。

自社で施工せず、協力会社に外注する場合も、誰が工事を請け負うのかが判断のポイントです。

産業機械をトラックで納品する販売のみの場合と、工場内で機械の組立て・固定を行う据付工事を比較した3Dイラスト
機械を納品するだけの場合と、現地で組立て・固定などの据付工事まで請け負う場合では、建設業許可の判断が異なります。

建設業許可が不要な場合

機械の販売・納品だけを行い、建設工事を請け負わない場合は、建設業許可は不要です。

機械の売買取引は、通常、建設工事の請負には該当しないためです。

例えば、工作機械を販売して工場に納品するだけの場合や、発注者が据付工事を別の施工会社に直接発注する場合が挙げられます。

また、機械の設置作業を伴っても、建設工事に該当しない作業であれば、建設業許可は必要ありません。

建設工事に該当する場合でも、1件の請負金額が500万円未満(税込)の軽微な建設工事のみを請け負う場合は、許可が不要となります。

建設業許可が必要な場合

設備メーカーや機械商社でも、建設工事に該当する据付工事を1件500万円以上(税込)で請け負う場合は、原則として建設業許可が必要です。

機械の販売と据付工事を一括して受注する場合も、契約の実態によっては機器代金を含めて請負金額を判断するため、据付工事費だけでは許可の要否を決められません。

例えば、機械商社が工場からコンベアの販売と据付工事を一括受注し、機器代金を含む契約総額が800万円となるケースです。

この場合、据付工事を協力会社にすべて外注しても、機械商社自身が建設工事を請け負っているのであれば、許可が必要になる可能性があります。

重要なのは、自社で施工するかどうかではなく、発注者との契約で誰が建設工事を請け負っているかという点です。

据付作業が建設工事に該当するかどうかや、500万円基準による許可の要否については、建設業許可が必要な工事の判断方法で詳しく解説しています。

設備工事の契約前に、発注企業と設備メーカーの担当者が施工計画書や工事資料を確認しながら打合せする様子
設備工事の受注にあたっては、発注者から建設業許可の有無や施工体制、安全管理について確認される場合があります。

③機械設備の設置工事はどの建設業許可に該当する?

設備メーカーや機械商社が建設業許可を取得する場合、実際に請け負う工事の内容に応じて、許可業種を選ぶ必要があります。

建設業許可には「機械メーカー向けの許可」という区分はなく、機械器具設置工事業、電気工事業、管工事業など、工事の種類によって業種が分かれているためです。

例えば、工場の搬送設備を据え付ける工事と、給湯設備を設置する工事では、検討すべき許可業種が異なります。

代表的な設備と建設業許可の関係については、次の記事で詳しく解説しています。

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なお、機械の据付工事だからといって、必ず機械器具設置工事業に該当するわけではありません。

設備の種類だけで判断せず、据付・配管・電気工事など、実際の施工内容を確認したうえで許可業種を選ぶことが重要です。

④設備メーカー・機械商社が建設業許可を取得するための要件

設備メーカーや機械商社が建設業許可を取得するには、建設工事の経営経験、営業所技術者等の配置、財産的基礎などの要件を満たす必要があります。

特に注意したいのは、機械の製造・販売実績だけでは、建設工事に関する経験として認められないことです。

建設工事の経営経験はあるか

建設業許可の取得には、建設工事を適切に経営管理できる体制が必要です。

代表的な要件は、法人の常勤役員のうち1人が、建設業に関して5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有すること。このほか、一定の経営経験と補佐体制を組み合わせる方法もあります。

例えば、機械商社が10年間にわたり機械の販売だけを行っていた場合、その経営経験だけでは要件を満たしません。

一方、機械の販売とともに据付工事を継続して請け負い、その経営管理を行っていた場合は、建設業に関する経営経験として認められる可能性があります。

会社の設立年数や販売実績ではなく、建設工事の経営に携わった経験があるかどうかが重要です。

営業所技術者等を配置できるか

建設業許可では、取得する許可業種に対応した資格や実務経験を持つ「営業所技術者等」を、営業所ごとに専任で配置する必要があります。

一般建設業許可では、所定の国家資格や指定学科の学歴などによる要件を利用しない場合、原則として10年以上の実務経験が必要です。

例えば、設備メーカーの技術者が、製造ラインの機械据付工事に継続して携わっていた場合、その経験を許可要件の証明に利用できる可能性があります。

一方、機械の設計・製造や販売だけを担当していた期間は、原則として建設工事の実務経験には含まれません。

技術者の経験は、実際に担当した工事内容と取得する許可業種を照らし合わせて判断する必要があります。

資格や実務経験の証明方法については、営業所技術者等の要件を証明する資料で詳しく解説しています。

中小企業の経営者、事務担当者、技術担当者が建設業許可申請に向けて工事図面や施工写真、契約書類を確認している様子
建設業許可の取得に向けて、過去の工事実績や技術者の経験、必要な証明資料を整理・確認します。

財産的基礎・営業所などの要件

東京都知事・一般建設業許可では、経営経験や技術者の配置に加えて、次の要件も確認します。

確認項目主な要件
財産的基礎自己資本500万円以上、または500万円以上の資金調達能力など
営業所建設工事の請負契約に関する営業活動を行う実体のある営業所
社会保険法令に応じた健康保険・厚生年金保険・雇用保険への適切な加入
誠実性請負契約に関して不正・不誠実な行為をするおそれがないこと
欠格要件建設業法に定める欠格要件に該当しないこと

既存の設備メーカーや機械商社であれば、現在の事務所が建設業法上の営業所の要件を満たす場合、新たに専用の事務所を設ける必要はありません。

建設業許可の取得に向けては、既存の経営体制や技術者の経験を確認し、不足する要件と必要な証明資料を整理することが重要です。

⑤設備メーカー・機械商社の建設業許可についてよくある質問

Q:機械メーカーでも建設業許可が必要ですか?

機械メーカーでも、建設工事に該当する機械の据付を請け負う場合は、請負金額に応じて建設業許可が必要になります。

例えば、工場の製造ラインに機械を組み込み、設備として据え付けるケースです。

一方、機械の製造・販売や納品だけを行う場合は、原則として建設業許可は不要です。

Q:機械の据付をすべて外注していれば許可は不要ですか?

据付を協力会社に外注していても、自社が建設工事に該当する据付を請け負う場合は、許可が必要になることがあります。

例えば、機械商社が工場から機械の販売と据付を一括受注し、実際の据付作業を協力会社に任せるケースです。

ただし、建設工事に該当する据付について、施工に実質的に関与せず、協力会社に丸投げする一括下請負は原則として禁止されています。

一方、発注者が据付を施工会社へ直接発注し、機械商社は販売のみを担当する場合、通常、機械商社に建設業許可は必要ありません。

Q:機械の据付費用が500万円未満なら許可は不要ですか?

据付費用だけで判断することはできません。

機械の販売と据付を一体として請け負う場合は、契約の実態に応じて機械本体の代金も含めて判断する必要があるためです。

例えば、機械本体600万円、据付費用100万円の一括契約では、合計700万円となり、建設業許可が必要となる可能性があります。

また、発注者から機械を支給される場合も、その市場価格や運送費を加えて判断するのが原則です。

Q:機械の販売実績を建設業許可の経営経験として使えますか?

機械の販売実績だけでは、建設業許可に必要な経営経験として認められません。

ただし、機械の販売とともに、建設工事に該当する据付を継続して請け負い、その経営管理を行っていた場合は、要件を満たす可能性があります。

重要なのは、販売年数ではなく、建設工事に該当する据付の経営管理に携わった経験があるかどうかです。

Q:取引先から建設業許可を求められたら、必ず取得しなければなりませんか?

取引先から求められたからといって、法律上、必ず建設業許可を取得する義務が生じるわけではありません。

機械の納品だけの場合や、建設工事に該当しない据付作業の場合は、原則として許可は不要です。また、建設工事に該当しても、税込500万円未満の軽微な建設工事のみを請け負う場合は、許可を必要としません。

ただし、取引先が独自の発注条件として建設業許可を求めている場合、その条件を満たさなければ受注できないことがあります。

まずは、法律上の許可義務なのか、取引先が定めた発注条件なのかを区別して確認することが重要です。

設備メーカーの経営者と技術担当者が、工場設備の図面や施工資料を見ながら行政書士に建設業許可について相談している様子
設備メーカーや機械商社が据付工事を請け負う場合は、工事内容や施工実績を整理し、建設業許可の必要性を確認することが重要です。

まとめ|設備メーカー・機械商社が建設業許可を確認するポイント

設備メーカーや機械商社でも、建設工事に該当する機械の据付を請け負う場合は、建設業許可が必要になることがあります。

重要なのは、会社の本業ではなく、実際に請け負う据付作業の内容と契約金額です。また、据付を協力会社に外注していても、自社が請け負う立場であれば、許可が必要となる場合があります。

一方、機械の販売・納品だけを行う場合や、軽微な建設工事のみを請け負う場合は、原則として許可は不要です。ただし、発注者が独自の取引条件として建設業許可を求めるケースもあります。

取引先から建設業許可の有無を確認されたら、まず自社の契約内容と据付作業の実態を整理し、許可の必要性を判断することが大切です。

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