東京都の入札参加資格とは?下請から元請として公共工事へ直接入札する方法を解説

大田区の電気工事会社の経営者が行政書士と入札資料を確認し、東京都の公共工事へ元請として挑戦する様子を示した図

大田区で電気工事業を続けてきて、これまでは公共工事も元請会社から下請として受注してきた。

現場には慣れている。
施工にも自信はある。

でも、受注金額や条件は元請側で決まり、自社ではコントロールしにくい。仕事はあるのに、思ったほど利益が残らないこともあります。

社員にもう少し給料を払いたい。
会社として利益を残したい。
そのために、これからは自分たちで公共工事に札を入れて、元請として直接受注したい。

そう考えたとき、一つの選択肢になるのが、東京都が発注する公共工事への入札です。

東京都では、電気設備の改修や照明設備、受変電設備など、電気工事会社が参加を検討できる工事も発注されています。

こうした東京都の工事へ自社で直接入札するには、建設業許可を持っているだけでは足りません。経営事項審査を受けたうえで、東京都の競争入札参加資格を取得する必要があります。

さらに、資格を取得した後も、自社の業種や等級、案件ごとの参加条件に合う工事を選んで入札します。

この記事では、これから東京都の公共工事を元請として受注したい建設会社に向けて、入札参加資格を取得するための条件、資格審査の仕組み、申請の流れ、資格取得後に参加できる工事の考え方を解説します。

なお、この記事で扱うのは東京都が発注する工事の入札参加資格です。大田区など23区が発注する工事の入札参加資格とは別の制度です。

目次

① 下請から元請へ|東京都の公共工事に直接入札するという選択肢

公共施設の電気工事で、元請会社の指示を受けて施工する下請の立場から、東京都と直接契約し自社の作業員へ指示を出す元請の立場へ変わる様子を示した図
元請になると、発注者と直接契約し、工事全体の管理や自社・協力会社への指示など、受注経路と責任の範囲が変わります。

これまで公共工事を下請として施工してきた会社にとって、自社で東京都の工事へ入札することは、これまでとは違う受注経路を持つことになります。

たとえば、大田区の電気工事会社が学校や庁舎などの電気設備工事を下請として施工してきたとします。

現場経験があり、施工できる技術者もいる。それでも下請である以上、発注者である東京都から直接仕事を受けているわけではありません。

自社で東京都の入札に参加して落札すれば、今度は自社が東京都と直接契約する元請になります。

東京都では電気工事だけでもさまざまな案件が発注されている

東京都の発注予定を見ると、電気工事には照明設備の更新、受変電設備、発電設備、公共施設の電気設備改修など、さまざまな案件があります。

工事規模も一律ではなく、比較的小規模な改修工事から数億円規模の設備工事まであります。

そのため、公共工事を元請として受注することは、大手建設会社だけの話ではありません。

これまで電気工事を下請として施工してきた会社でも、自社の規模や実績に合う案件から直接受注を目指す余地があります。

元請になると受注の自由度が増える一方で責任も大きくなる

自社で入札する場合は、どの案件に参加するか、いくらで札を入れるかを自社で判断します。

一方で、落札後は元請として工事を完成させる責任を負います。積算、技術者の配置、施工管理、資金繰りなども含め、自社で対応しなければなりません。

つまり、下請から元請へ進むことは、単に利益を増やすための話ではありません。

より多くの利益を会社に残したい。社員の給与や待遇へ還元したい。下請だけに頼らない受注経路を持ちたい。

そう考える経営者が、責任とリスクも踏まえたうえで選ぶ経営判断の一つです。

そして、東京都が発注する工事へ自社で直接入札するためには、東京都の競争入札参加資格を取得する必要があります。

② 東京都の入札参加資格を申請するために必要な条件

東京都の公共工事に直接入札するには、東京都の競争入札参加資格を取得する必要があります。

電気工事などの建設工事で申請する場合は、主に次の条件を満たしている必要があります。

東京都の入札参加資格を申請するための主な条件

  • 建設業許可
    申請する業種に必要な建設業許可を持っている
  • 確定した決算
    申請日時点で確定している決算がある
  • 経営事項審査
    申請時点で有効な経審結果があり、総合評定値P点の通知を受けている
  • 社会保険・雇用保険
    必要な社会保険・雇用保険に加入している
  • その他の申請条件
    入札参加資格の欠格要件などに該当していない

建設業許可を取得している会社であれば、社会保険・雇用保険については通常すでに対応している部分です。

そのため、これから東京都の入札参加資格を取ろうとする建設会社がまず見ておきたいのは、申請したい業種の建設業許可、有効な経審結果、確定した決算がそろっているかです。

建設業許可は申請する業種に対応している必要がある

入札参加資格は、工事の業種ごとに申請します。

たとえば東京都の電気工事へ入札したい場合は、電気工事業の建設業許可が必要です。

大田区で東京都知事の建設業許可を取得する場合の申請先や手続については、大田区で建設業許可を取得する方法で詳しく解説しています。
大田区で建設業許可を取得する方法

また、東京都と契約する営業所が、申請する業種に必要な建設業許可の条件を満たしていなければなりません。

本店では電気工事業の許可条件を満たしていても、東京都との契約を行う支店や営業所が条件を満たしていなければ、その営業所では電気工事の入札参加資格を申請できません。

経審は申請時点で有効な結果が必要

建設工事の入札参加資格を申請する場合は、経営事項審査を受けているだけではなく、申請時点で有効な経審結果を持っていることが必要です。

総合評定値P点の通知も受けている必要があります。

ここでは経審の点数がどのように決まるかまで考える必要はありません。

大田区の電気工事会社が東京都の電気工事へ直接入札したいのであれば、まずは電気工事業の建設業許可があり、確定した決算と有効な経審結果がそろっているかを見るところから始まります。

③ 東京都の入札参加資格とは

東京都の入札参加資格は、東京都が発注する工事の競争入札に参加するための資格です。

建設業許可を持っていれば建設工事を請け負うことはできますが、それだけで東京都の入札に参加できるわけではありません。

資格審査を受け、有資格者名簿に登録されることで、東京都が発注する工事への入札に参加できるようになります。

東京都の各局や出先機関が発注する工事が対象

対象になるのは、東京都の各局や出先機関が発注する工事です。

たとえば、東京都庁の各局のほか、警視庁、東京消防庁、交通局、水道局、下水道局などが発注する工事も含まれます。

大田区にある電気工事会社であっても、東京都の入札参加資格を取得すれば、自社の業種や格付、案件ごとの参加条件に合う東京都発注の工事へ入札できます。

なお、この資格の対象は東京都が発注する工事で、23区など各市区町村が発注する工事は対象外です。

④ 資格審査の結果は等級や参加できる工事にどう関係するのか

東京都の公共工事における入札参加資格の格付について、建設会社の審査・評価に応じて参加を検討できる工事規模が変わることを示した図
東京都の公共工事では、会社の審査・格付に応じて、参加を検討できる工事の規模や範囲が変わります。

東京都の入札参加資格では、申請した業種ごとに資格審査が行われ、格付や順位が決まります。

この結果によって、実際に参加できる工事の規模も変わってきます。

経審の結果と最高完成工事経歴をもとに格付が決まる

建設工事の資格審査では、主に次の2つをもとに格付が決まります。

  • 客観的審査事項
    経営事項審査の結果
  • 主観的審査事項
    申請する業種の最高完成工事経歴

経審では、会社の経営規模や経営状況、技術力などが数値化されています。

一方、最高完成工事経歴では、その業種で過去にどの程度の規模の工事を完成させた実績があるかが見られます。

つまり、東京都の格付は、経審の点数だけで決まるわけではありません。

格付によって参加できる工事の規模が変わる

東京都では、工事業種ごとに発注金額と等級の基準が設定されています。

そのため、入札参加資格を取得しても、同じ業種のすべての工事に参加できるわけではありません。

実際に案件を探すときは、自社が登録されている業種、自社の等級、案件ごとの参加条件を見ていきます。

たとえば、電気工事の資格を持っていても、自社の等級に合わない規模の工事には参加できない場合があります。

実際の入札では業種・等級・案件条件を見る

案件へ参加できるかどうかは、入札参加資格を持っているかだけでは判断できません。

まず、自社がその工事の業種で登録されているかを見ます。

次に、自社の等級がその案件の発注規模に合っているかを見ます。

さらに、案件ごとに定められた参加条件も満たしている必要があります。

  • 1|業種
    その工事の業種で登録されているか
  • 2|等級
    自社の等級が案件の発注規模に合っているか
  • 3|案件条件
    個別に定められた参加条件を満たしているか

この3つを見ながら、実際に入札できる工事を絞り込んでいくことになります。

工事実績がない業種は「無格付」になる

申請した業種について最高完成工事経歴がない場合は、等級や順位が付かず、無格付になります。

無格付でもまったく入札できないわけではありませんが、工事では原則として予定価格500万円未満の案件に限られます。

そのため、入札参加資格を取るときは、資格を取得できるかだけでなく、どの業種で、どの格付になり、どの規模の工事を狙えるのかまで見ておくことが重要です。

⑤ 大田区の電気工事会社が東京都の案件へ直接入札するケース

大田区の電気工事会社の経営者と社員が、施工実績や電気工事の図面を確認しながら東京都の公共工事への入札を検討している場面
これまで下請工事で培ってきた施工実績を確認しながら、自社で東京都の公共工事へ入札するかを検討しているイメージです。

ここまでの内容を、大田区で電気工事業を営む会社を例に当てはめてみます。

これまでは元請会社から公共施設の電気工事を下請として受注してきたものの、今後は東京都が発注する工事を自社で直接受注したいと考えたケースです。

まず電気工事で入札参加資格を申請する

東京都の電気工事へ入札するのであれば、電気工事の業種で入札参加資格を申請します。

その前提として、電気工事業の建設業許可、有効な経営事項審査の結果など、これまで説明した申請条件を満たしておく必要があります。

資格審査を受けると、電気工事について格付や順位が決まります。

自社の格付に合う電気工事を探す

資格を取得したら、東京都が発注する電気工事の中から、自社が参加できる案件を探します。

東京都の電気工事には、公共施設の照明設備や受変電設備、電気設備の改修など、さまざまな工事があります。

ここでは、前のセクションで説明した業種・等級・案件条件をもとに、自社が現実的に狙える案件を絞っていきます。

大田区でこれまで下請として公共工事を施工してきた会社であれば、まずは、自社の格付や施工体制に合う案件から見ていくのが現実的です。

いきなり大規模工事を狙うのではなく、これまでの施工実績や技術者体制、資金繰りまで考えて、現実的に対応できる案件を選びます。

落札すれば東京都と直接契約する元請になる

条件に合う案件へ入札し、落札すれば、自社が東京都と直接契約する元請になります。

これまで下請として施工していたときとは、立場が変わります。

入札価格を自社で積算・判断する一方で、工事を完成させる責任、技術者の配置、施工管理、資金繰りなども自社で担います。

元請として受注した工事を下請会社へ発注する場合は、下請契約の規模によって特定建設業許可が必要になることがあります。詳しくは、一般建設業と特定建設業の違いをご覧ください。

そのため、東京都の入札参加資格を取得することはゴールではありません。

自社の格付で参加できる案件の中から、施工体制や資金繰りまで含めて、元請として無理なく履行できる工事を選ぶことが重要です。

⑥ 東京都の入札参加資格を取得する流れ

申請条件がそろったら、東京都電子調達システムを使って入札参加資格の申請を進めます。

東京都の建設工事入札参加資格について、電子証明書の準備、電子申請データの入力・送信、審査、格付結果の確認までの流れを5段階で示した図
入札参加資格の電子申請は、電子証明書の準備から申請データの入力・送信、審査を経て、格付結果の確認へ進みます。
電子証明書などの事前準備

東京都電子調達システムを利用するため、電子証明書を準備し、パソコンの設定や電子証明書の登録を行います。

申請データを入力

東京都電子調達システムへログインし、会社情報、建設業許可番号、申請業種、経営情報、工事実績などを入力します。

申請データを送信

入力内容を見直したうえで申請データを送信します。工事実績については、最高完成工事経歴の入力漏れにも注意が必要です。

審査結果を確認

送信後はシステム上で審査状況を確認します。内容に不備がある場合などは否承認となることがあり、理由を確認して修正・再送信します。

格付結果を確認

申請が承認されると、有資格者名簿に登録されます。資格適用日以降は、電子調達システムで審査結果通知書を確認し、自社の業種や格付を把握します。

申請は東京都電子調達システムで行う

東京都の建設工事等競争入札参加資格は、紙ではなく電子申請で手続します。

そのため、初めて申請する会社は、申請書の作成より前に電子証明書の準備とシステムを利用できる環境の設定が必要です。

申請画面では、基本的な会社情報だけでなく、申請する工事業種や経営情報、完成工事高、最高完成工事経歴なども入力します。

申請が終わった日と資格が使える日は同じではない

申請データを送信しただけで、その日から入札に参加できるわけではありません。

審査を経て申請が承認され、資格適用日を迎えてから入札参加資格が有効になります。

随時申請では、申請が完了した時期によって資格適用日が変わるため、参加したい工事が決まってから慌てて申請するのではなく、余裕を持って準備しておく方が安全です。

⑦ 入札参加資格を取った後に気をつけること

東京都の入札参加資格は、一度取得すればそのまま使い続けられるものではありません。

資格取得後も、有効期間や登録内容の変更などに対応する必要があります。

入札参加資格には有効期間がある

東京都の入札参加資格には資格年度があり、有効期間が決まっています。

令和7・8年度の資格を随時申請で取得した場合は、資格適用日から令和9年3月31日までが有効期間です。

随時申請では、毎月20日までに申請が完了すれば翌月1日から、21日から月末までに申請が完了した場合は翌々月1日から資格が適用されます。

ここでいう「申請完了」とは、申請データを送信した日ではなく、申請が承認され、受付票を印刷できる状態になったことをいいます。

そのため、参加したい案件が出てから申請するのではなく、資格がいつから使えるのかを逆算して準備することが重要です。

継続して東京都の公共工事へ入札するのであれば、次の資格年度への切替時期も見据えておく必要があります。

建設業許可を取得した後に必要となる届出や更新期限については、建設業許可取得後の届出・期限管理でもまとめています。
建設業許可取得後の届出・期限管理

会社情報などが変わったら変更申請が必要

資格取得後に、建設業許可番号、代表者、所在地、関係する会社などに変更があった場合は、東京都電子調達システムから変更申請を行います。

建設業許可側で変更手続を済ませただけで終わりとは限らないため、入札参加資格の登録内容にも変更が必要かを見る必要があります。

業種を追加したい場合などは再審査申請を行う

資格取得後に申請業種を追加したい場合や、最高完成工事経歴の内容を訂正したい場合には、再審査申請という手続があります。

業種追加は、資格有効期間中に1回に限って申請できます。

最初は電気工事だけで資格を取得し、その後ほかの業種でも東京都の工事を狙いたいと考える場合などは、この手続が関係してきます。

入札参加資格を取得した後は、案件を探すだけでなく、資格の有効期間と登録内容を維持していくことも継続して東京都の公共工事へ参加するために重要です。

⑧ 東京都の入札参加資格についてよくある質問

Q:建設業許可があれば東京都の公共工事に入札できますか?

いいえ。

建設業許可だけでは、東京都が発注する工事の入札には参加できません。

建設工事の入札参加資格を申請する場合は、申請する業種に必要な建設業許可に加えて、有効な経営事項審査の結果などの申請条件を満たし、東京都の入札参加資格を取得する必要があります。

Q:経営事項審査を受ければ入札できますか?

いいえ。

経営事項審査を受けただけでは、東京都の工事へ直接入札できません。

経審の結果は入札参加資格の審査に使われますが、その後に東京都の資格審査を受け、有資格者名簿に登録される必要があります。

Q:入札参加資格を取れば、東京都のすべての工事に参加できますか?

いいえ。

資格取得後も、登録している業種、格付、案件ごとの参加条件によって、参加できる工事は変わります。

自社の資格内容と各案件の条件を見て、入札できる工事を選びます。

Q:工事実績がなくても入札参加資格は取れますか?

はい。申請することはできますが、最高完成工事経歴がない業種は「無格付」となります。

無格付の場合、工事では原則として予定価格500万円未満の案件が対象になります。

Q:東京都内に本店がないと申請できませんか?

いいえ。

東京都内に本店や支店がなくても申請できます。

ただし、東京都と契約する営業所について、申請する業種に必要な建設業許可などの条件を満たしている必要があります。

Q:申請すればすぐに入札参加資格を使えますか?

いいえ。

申請データを送信した時点では、まだ資格は使えません。

審査を受けて申請が承認され、資格適用日を迎えてから入札参加資格が有効になります。令和7・8年度の随時申請では、申請完了の時期によって翌月1日または翌々月1日から資格が適用されます

まとめ|東京都の公共工事へ直接入札するなら、まず資格取得の準備から

これまで公共工事を下請として施工してきた会社が、東京都の工事を元請として直接受注したいのであれば、東京都の入札参加資格を取得する必要があります。

建設業許可を持っているだけでは、そのまま東京都の入札に参加できません。

申請する業種に必要な建設業許可があり、確定した決算や有効な経営事項審査の結果などの条件を満たしたうえで、入札参加資格の申請を行います。

資格を取得すると、申請した業種について格付や順位が決まり、その後は自社の業種・等級・案件ごとの参加条件に合う工事を探して入札していきます。

大田区で電気工事業を営み、これまで下請として公共工事に関わってきた会社にとっても、東京都発注の工事を直接受注することは、新しい受注経路を持つ選択肢の一つです。

ただし、元請になれば必ず利益が増えるわけではありません。

入札金額の判断、技術者の配置、施工管理、資金繰りなど、元請として負う責任も大きくなります。

だからこそ、単に入札参加資格を取ることを目的にするのではなく、自社がどの規模の工事を狙うのか、元請として無理なく履行できる体制があるのかまで考えたうえで進めることが重要です。