建設業を続けていると、これまで続けてきた事業を、家族や従業員、別の会社などへ引き継ぐ場面があります。
たとえば、次のようなケースです。
- 個人で建設業をしていた父が亡くなり、子どもが仕事を続けることになった
- 長年働いてきた従業員に事業を引き継ぎたい
- 個人事業から会社にして建設業を続けたい
- 建設会社を子どもや後継者に引き継ぎたい
- 建設事業を別の会社へ譲りたい
こうした場面では、建設業許可についても、事業の引き継ぎ方に合わせた手続を考える必要があります。
この記事では、難しい制度の説明から始めるのではなく、実際に起きるケースをもとに、今の建設業許可はどうなるのか、どのような手続を確認すればよいのかを整理していきます。
東京都で建設業許可を取得している個人事業主や中小建設会社の方は、ご自身に近いケースから確認してみてください。
目次
①建設業をしていた家族が亡くなった
「父が建設業をしていたけれど、亡くなってしまった。これから自分が仕事を引き継ぎたい」
このような場合、個人で建設業をしていたのか、会社として建設業をしていたのかによって、その後の手続が変わります。
個人事業を家族が引き継ぐ場合には、建設業許可の承継について確認が必要です。一方、建設会社の社長が亡くなった場合には、新しい代表者や役員、許可要件に関わる人の変更を確認することになります。
それぞれの場合を見ていきましょう。
個人事業主として建設業許可を取得していた場合
個人で建設業をしていた方が亡くなり、子どもや配偶者などが事業を続ける場合は、「相続による承継認可」という手続を検討します。
この手続を利用するには、事業を引き継ぐ相続人が、建設業許可に必要な条件を満たしていることなどを確認する必要があります。
また、相続による承継認可には申請期限があります。事業を続ける予定がある場合は、誰が事業を引き継ぐのかを早めに決め、手続の準備を進めることが大切です。
個人事業主が亡くなった場合の詳しい手続は、「個人事業主の死亡・相続と建設業許可」で説明します。
建設会社の社長が亡くなった場合
建設会社の社長が亡くなり、子どもや他の役員が経営を引き綘ぐ場合は、新しい代表者を決めたうえで、建設業許可に関する変更手続を確認します。
特に、亡くなった社長が常勤役員等を兼ねていた場合は、代表者の変更だけではなく、建設業許可の要件を引き続き満たせるかの確認も必要です。
また、役員の変更などが同時に発生する場合には、それぞれ必要な届出を確認します。
代表者・役員・常勤役員等の変更については、「会社・役員に関する変更」で詳しく説明しています。
②事業を引き継ぐとき、建設業許可ではどんな手続になる?
ここまで紹介した「建設業をしていた家族が亡くなった」ケース以外にも、事業を引き継ぐ場面はいろいろあります。
家族や従業員に事業を譲る、個人事業から会社にする、会社を後継者に任せる、別の会社へ建設事業を譲るなど、実際に起きる出来事はさまざまです。

一方、建設業許可で必要となる手続に当てはめると、次のように整理できます。
| こんなとき | 具体的なケース | 建設業許可で確認する手続・リンク先 |
|---|---|---|
| 建設業をしていた家族が亡くなった | 個人で建設業をしていた方が亡くなり、家族が事業を続ける | 相続による承継認可 |
| 建設会社の社長が亡くなり、家族や他の役員が経営を引き継ぐ | 代表者・役員などの変更 | |
| 個人で続けてきた建設業を誰かに引き継ぎたい | 子どもなどの家族に事業を譲る | 事業譲渡による承継認可 |
| 従業員や知り合いに事業を譲る | 事業譲渡による承継認可 | |
| 個人事業から会社にして建設業を続けたい | 自分で会社を設立して、これまでの事業を会社へ移す | 事業譲渡による承継認可 / 新規許可 |
| 家族などが設立した会社へ事業を移す | 事業譲渡による承継認可 | |
| 建設会社を家族や後継者に引き継ぎたい | 子どもや後継者へ社長を交代する | 代表者・役員などの変更 |
| 子どもや後継者へ会社の株式を譲る | 役員などに変更があれば | |
| 後継者が経営する別会社へ建設事業を移す | 事業譲渡による承継認可 | |
| 建設会社や建設事業を他社に譲りたい・他社から引き継ぎたい | 株式を売買して会社を引き継ぐ | M&A・株式譲渡 |
| 建設事業を別会社へ譲る・別会社から譲り受ける | 事業譲渡による承継認可 | |
| 会社を一つにしたり、建設事業を別会社に分けたりしたい | 他社と会社を一つにする | 合併による承継認可 |
| 会社分割で建設事業を別会社へ移す | 会社分割による承継認可 |
このように、普段はどれも「事業を引き継ぐ」と表現できますが、建設業許可では、引き継ぎ方によって必要な手続が変わります。
ここからは、それぞれのケースについてもう少し詳しく見ていきます。
③個人で続けてきた建設業を家族や従業員に引き継ぎたい
「そろそろ現場を退いて、子どもに事業を任せたい」「長く働いてくれた従業員に事業を引き継いでもらいたい」というケースもあります。
個人事業主が元気なうちに事業を別の人へ引き継ぐ場合には、「事業譲渡による承継認可」を利用できることがあります。
事業譲渡による承継認可とは
事業譲渡による承継認可は、個人事業主や法人が営んできた建設業を別の人や会社へ譲るときに、事前に認可を受けることで、建設業者としての地位を承継できる制度です。
承継認可では、譲渡人が建設業について有している許可に係る建設業の全部を譲り渡すことが前提となるため、「この許可業種だけを承継する」というように自由に切り分けられる制度ではありません。
この制度を利用すれば、これまでの許可をいったん廃業し、事業を引き継ぐ人が新たに許可を取得する方法とは異なり、建設業許可の空白期間をつくらずに事業を引き継ぐことができます。
事業を譲る相手は家族に限られません。子ども、従業員、知り合いなどへ事業を譲る場合も対象になり得ます。
ただし、事業を引き継ぐ人が建設業許可に必要な条件を満たしていることなど、認可を受けるために事前に確認しておくことがあります。

家族や従業員などへ事業を引き継ぐ場合
実際には、次のような引き継ぎが考えられます。
- 高齢になったため、個人で続けてきた建設業を子どもに譲る
- 家族の中で建設業を続けている人に事業を任せる
- 長年一緒に働いてきた従業員に事業を譲る
- 知り合いの建設業者に事業を引き継いでもらう
このように、個人事業主が元気なうちに、別の人へ建設業を引き継ぐケースが、ここで取り上げている事業承継です。
法人間の事業譲渡やM&Aに伴う建設業許可の扱いについては、「建設会社を売ると建設業許可はどうなる?M&A・事業譲渡」で詳しく説明しています。
④法人成りでは建設業許可をどうする?

個人事業から会社へ建設業を移す方法は、大きく分けて次の2つです。
- 事業譲渡による承継認可を利用する
- 会社で新たに建設業許可を取得する
現在の建設業を会社で続ける場合は、事業譲渡による承継認可を利用する方法と、設立した会社で新たに建設業許可を取得する方法を比較して検討します。
承継認可を利用できれば、個人事業主から会社へ建設業者としての地位を承継し、許可の空白期間をつくらずに事業を続けることができます。
一方、新規許可を選択した方がよいケースもあるため、現在の許可内容、設立する会社の体制、承継したい事業などを確認して判断します。
どちらを選ぶかは、設立する会社が許可の条件を満たせるか、現在取得している許可の内容などによっても変わります。
法人成りで承継認可と新規許可のどちらを選ぶのかについては、「個人事業主の法人成りと建設業許可」で詳しく説明しています。
会社で新たに許可を取得する場合の要件や申請の流れについては、「東京都知事・一般建設業の新規許可申請」をご確認ください。
個人事業主が自分で株式会社を設立する場合は、建設業許可の手続だけでなく、会社形態や資本金、出資方法なども会社設立前に考えておきたいところです。
個人事業主から株式会社へ移行する場合の進め方を詳しく見る
⑤建設会社を家族や後継者に引き継ぎたい
建設会社を経営している方が高齢になり、子どもや後継者へ会社を引き継ぐこともあります。
後継者がそのまま社長になるケースもあれば、後継者がすでに別の会社を経営しているケースもあります。
誰が後継者になるかだけでなく、会社や事業をどのような形で引き継ぐのかによって、建設業許可で必要となる手続も変わります。
子どもや後継者が新しい社長になる場合
現在の会社をそのまま残し、子どもや役員などが新しい社長になって経営を引き継ぐ場合は、建設業許可について代表者や役員などの変更手続を確認します。
現在の社長が常勤役員等を兼ねている場合には、社長を交代したあとも建設業許可の条件を満たせるかについても確認が必要です。
代表者・役員・常勤役員等の変更については、「会社・役員に関する変更」で詳しく説明しています。

後継者がすでに別の建設会社を経営している場合
後継者がすでに自分の会社を経営している場合は、事業承継の方法にもいくつかの選択肢が出てきます。
たとえば、父が道路工事や宅地造成などの土木工事を中心とする建設会社を長年経営しているケースを考えてみましょう。
父は息子に家業を継いでもらうことを望んでいましたが、大学で建築を学んだ息子が選んだのは、住宅の設計・デザインから施工までを手掛ける仕事でした。現在は父とは別に、自らの会社を経営しています。
父が高齢になったことをきっかけに、息子も父の会社の将来を考え始めました。
こうした事業承継を考える場合、建設業許可の手続を決めるうえで重要になるのが、父の会社そのものを息子が引き継ぐのか、それとも父の建設事業を息子の会社へ移すのかという違いです。
父の会社そのものを息子が引き継ぐ
一つは、父の会社をそのまま残し、会社の株式を息子へ譲って、息子が経営を引き継ぐ方法です。
この場合、株式を譲ること自体について、建設業許可の承継認可を受けるわけではありません。
息子が新しい社長になる、役員を入れ替えるなどの変更があれば、代表者・役員などの変更手続を確認します。
父の建設事業を息子の会社へ引き継ぐ
もう一つは、息子が経営している会社を中心にして、父の会社が行ってきた建設事業を息子の会社へ引き継ぐ方法です。
たとえば、父の会社が得意としてきた宅地造成などの土木工事と、息子の会社が得意とする住宅の設計・施工を一つの会社で行えるようにし、受注できる仕事の幅を広げることが考えられます。
このように、別の会社へ建設事業を譲る場合には、事業譲渡による承継認可を利用できるかを確認します。
ここでは親子の事業承継を例にしましたが、第三者へのM&Aでも、会社そのものを引き継ぐのか、建設事業を別の会社へ移すのかという基本的な考え方は同じです。M&Aに伴う建設業許可の扱いについては「建設業許可とM&A・事業譲渡」で詳しく説明しています。
⑥他の建設会社と一つの会社にしたい
事業の規模を広げたり、お互いの得意分野を生かしたりするために、2つの会社を一つにすることがあります。
たとえば、土木工事を得意とする会社と建築工事を得意とする会社を一つにして、より幅広い工事を受注できる会社にするようなケースです。
合併する場合も建設業許可を引き継げる
建設会社同士を合併する場合には、「合併による承継認可」という制度があります。
合併によって一方の会社がなくなる場合でも、事前に認可を受けることで、その会社の建設業者としての立場を、合併後の会社へ引き継ぐことができます。
そのため、会社の合併を検討するときは、会社法上の手続だけでなく、それぞれの会社が持っている建設業許可をどうするのかも事前に確認しておく必要があります。
2社の得意分野を組み合わせて事業を広げようとしても、建設業許可がうまく引き継げなければ、予定していた工事を受注できない可能性があります。合併の形を決める段階で、建設業許可も一緒に確認しておくのがよいでしょう。
合併を含め、建設業許可の承継認可がどのような仕組みなのかは、このあとの「⑧ 建設業許可の承継認可とは」でまとめて説明します。
⑦会社分割で建設事業を別会社に引き継ぎたい
会社が成長して事業の幅が広がってくると、一つの会社で行ってきた事業を分け、それぞれ別の会社として運営したいケースも出てきます。
たとえば、土木工事と建築工事の両方を行ってきた会社が、組織再編によって事業を分け、建築部門を別会社で運営するようなケースです。
会社分割でも建設業許可の承継認可がある
会社分割によって建設事業を別会社へ引き継ぐ場合には、「会社分割による承継認可」という制度があります。
事前に認可を受けることで、会社分割に伴って建設業者としての立場を引き継ぐことができます。
ただし、建設業許可は、会社分割をすれば好きな許可業種だけを自由に切り分けられる、という単純な仕組みではありません。
どの事業をどの会社へ引き継ぐのか、それぞれの会社がどの建設業許可を持っているのかなどを、会社分割を行う前に確認しておく必要があります。
特に、「建築部門を別会社にするので、建築関係の許可だけを新会社へ移したい」と考えても、そのまま許可を切り分けられるとは限りません。事業をどう分けるかを決める前に、建設業許可をどのように引き継げるのか確認しておく必要があります。
会社分割をした場合に何を引き継げるのか、許可番号や有効期間はどうなるのかといった承継認可の詳しい仕組みは、次の「⑧ 建設業許可の承継認可とは」で整理します。
⑧建設業許可の「承継認可」とは

ここまで見てきたように、建設業を引き継ぐ場面はさまざまです。
個人事業主が子どもや従業員へ事業を譲る場合もあれば、個人事業を会社にする場合、会社同士を合併する場合、個人事業主が亡くなって家族が事業を続ける場合もあります。
こうした事業の引き継ぎに対応するため、建設業許可には一定の条件のもとで、建設業者としての立場を引き継ぐことができる「承継認可」の制度があります。
承継認可には4つのパターンがある
この記事で見てきたケースを、承継認可の種類で整理すると次の4つです。
| 承継の方法 | たとえばこんな場合 |
|---|---|
| 事業譲渡 | 個人事業を子どもや従業員へ譲る、個人事業を設立した会社へ移す、別会社へ建設事業を譲る |
| 合併 | 2つの会社を一つにする |
| 会社分割 | 会社の事業を分けて別会社へ引き継ぐ |
| 相続 | 個人事業主が亡くなり、相続人が建設業を引き継ぐ |
事業譲渡・合併・会社分割は、原則として承継の実行前に認可を受ける手続です。一方、相続は個人事業主の死亡によって発生するため、死亡後に定められた期間内に認可を申請します。
そのため、手続を行う時期も同じではありません。事業譲渡・合併・会社分割では、実際に事業を引き継ぐ前に認可を受けることが重要になります。一方、相続の場合は、個人事業主が亡くなったあと、定められた期間内に認可を申請します。
「事業承継」なら必ず承継認可になるわけではない
建設会社の社長を父から子へ交代したり、会社の株式を後継者へ譲ったりしても、建設業許可を取得している会社そのものは変わりません。
一般的にはこうしたケースも「事業承継」と呼ばれますが、建設業許可では承継認可ではなく、代表者や役員などに変更があれば、必要な変更手続を行います。
一方、個人事業主から子どもへ事業を譲る場合や、ある会社から別の会社へ建設事業を譲る場合には、事業譲渡による承継認可を検討します。
つまり、「事業承継をする=承継認可」ではありません。誰から誰へ、どのような形で建設業を引き継ぐのかによって、必要な手続が変わります。
東京都では承継認可の申請前に事前相談が必要
承継認可は、事業を引き継ぐ側が建設業許可の要件を満たしているかだけでなく、現在の許可内容や引き継ぐ事業、許可業種など、事前に確認する事項が多い手続です。
そのため東京都では、承継認可を申請する前に、建設業課の審査担当窓口へ事前相談することが必要とされています。
事業譲渡・合併・会社分割の場合は、事業を引き継いでから認可を受けるのではなく、承継する前に認可を受けなければなりません。東京都では、事業譲渡・合併・会社分割の認可申請について、申請日から承継予定日まで一定の審査期間を確保する必要があります。令和8年度の手引では25開庁日とされているため、事前相談はさらに余裕をもって始める必要があります。
特に、事業譲渡や合併、会社分割の日程を先に決めてしまうと、建設業許可の手続が間に合わなくなる可能性があります。事業承継の方法と日程を固める前に、建設業許可について相談しておくと進めやすくなります。
承継認可を受けると何が引き継がれる?
承継認可を受けると、単に建設業許可を取り直さなくてよくなるだけではありません。事業を引き継ぐ人や会社は、建設業者としての地位を承継します。
これには、建設業許可だけでなく、建設業法に基づいて建設業者が受けていた処分なども含まれます。都合のよい部分だけを選んで引き継ぐ制度ではありません。
一方で、事業譲渡や会社分割をするからといって、現在持っている許可業種を自由に選び、「この業種だけを引き継ぐ」ということができるわけでもありません。
特に、事業を譲る側と引き継ぐ側の双方が建設業許可を持っている場合には、一般建設業・特定建設業の違いや、それぞれが取得している許可業種によって確認が必要になることがあります。
そのため、承継認可では「何を引き継ぎたいか」だけでなく、現在の許可業種や一般・特定の区分を確認し、承継後にどのような許可状態になるのかまで整理することが重要です。
⑨特定建設業や大臣許可の場合は何が違う?
ここまでは、東京都知事許可・一般建設業を中心に説明してきました。
特定建設業や国土交通大臣許可の場合でも、事業譲渡・合併・会社分割・相続によって建設業者としての立場を引き継ぐという、承継認可の基本的な仕組みは同じです。
ただし、実際に承継できるかを確認するときには、いくつか違う点があります。
特定建設業では一般建設業との組み合わせに注意する
承継認可の基本的な仕組みは、一般建設業でも特定建設業でも同じです。
ただし、同じ会社が同じ業種について、一般建設業と特定建設業の両方の許可を持つことはできません。
たとえば、引き継ぐ会社が「鉄筋工事業・一般」、引き継がれる会社が「鉄筋工事業・特定」の許可を持っている場合、そのまま両方を引き継ぐことはできません。
このような場合は、承継後に一般建設業と特定建設業が競合しないよう、承継前に必要となる一部廃業などの手続を確認・整理したうえで、承継認可を進めます。
大臣許可に切り替わる場合がある
承継認可の基本的な仕組みは、東京都知事許可でも国土交通大臣許可でも同じです。
ただし、承継によって営業所が2つ以上の都道府県にまたがることになる場合などは、承継後の許可が国土交通大臣許可になることがあります。建設業許可は、営業所が一つの都道府県内だけなら知事許可、2つ以上の都道府県にある場合は大臣許可となるためです。
たとえば、次のようなケースです。
- 東京都知事許可の会社が、国土交通大臣許可の会社を合併する
- 東京都知事許可の会社と神奈川県知事許可の会社が合併し、承継後も東京と神奈川の双方に営業所を置く
こうした場合には、単に「東京都知事許可を引き継ぐ」と考えるのではなく、承継後にどの許可行政庁の許可になるのかも含めて承継認可を検討する必要があります。
建設業法の承継制度では、知事許可と大臣許可の承継や、異なる都道府県の知事許可の承継によって、承継後に国土交通大臣許可へ切り替わる場合も想定されています。
⑩建設業許可の事業承継・承継認可に関するよくある質問
Q:親の建設業許可を子どもがそのまま使えますか?
個人事業主である親から子どもへ事業を引き継ぐ場合、親の建設業許可を子どもがそのまま使えるわけではありません。
親が元気なうちに事業を譲る場合は事業譲渡による承継認可、親が亡くなったあとに相続人が事業を引き継ぐ場合は相続による承継認可を利用できるか確認します。
Q:社長を父から子どもへ交代すると承継認可が必要ですか?
会社が建設業許可を取得していて、会社そのものは変わらず社長だけを交代するのであれば、承継認可を行うわけではありません。
代表者や役員などに変更が生じるため、必要な変更手続を確認します。
会社・役員に関する変更
Q:個人事業を法人化すると建設業許可を取り直す必要がありますか?
必ず新規許可を取り直さなければならないわけではありません。
個人事業から設立した会社へ事業を移す場合には、事業譲渡による承継認可を利用する方法があります。承継認可を利用できれば、許可の空白期間をつくらずに会社へ事業を引き継ぐことができます。
法人成りについては、「個人事業主の法人成りと建設業許可」で詳しく説明しています。
Q:従業員に個人事業を譲る場合も承継認可を利用できますか?
利用できる場合があります。
事業譲渡による承継認可は、事業を譲る相手を子どもなどの家族に限定した制度ではありません。従業員や知人などへ事業を譲る場合も、必要な条件を満たせば対象になります。
Q:会社を売却すると建設業許可も取り直しになりますか?
会社の株式を譲渡して経営者が変わるだけであれば、建設業許可を取得している会社そのものは変わりません。そのため、株式譲渡そのものについて承継認可を受けるわけではありません。
一方、会社から別の会社へ建設事業を譲る場合は、事業譲渡による承継認可を検討します。
建設会社を売る場合や、建設事業を他社へ譲る場合の建設業許可については、「建設会社を売る・事業を譲ると建設業許可はどうなる?」で詳しく解説しています。
Q:承継認可は事業を引き継いだあとに申請できますか?
事業譲渡・合併・会社分割については、承継する前に認可を受ける必要があります。
東京都では申請前の事前相談も必要とされているため、事業譲渡や合併などの日程を決める段階から、建設業許可の手続について確認しておく必要があります。
なお、個人事業主の死亡による相続は性質が異なり、死亡後に定められた期間内に認可を申請します。
⑪建設業の事業承継は、引き継ぎ方によって必要な手続が変わる
建設業の事業承継といっても、必要な手続は一つではありません。
個人事業主が亡くなって家族が事業を続ける場合、元気なうちに子どもや従業員へ事業を譲る場合、個人事業を会社にする場合、会社の社長を後継者へ交代する場合など、何が起き、どのような形で事業を引き継ぐのかによって、建設業許可の扱いも変わります。
承継認可を利用できるケースもあれば、代表者や役員などの変更手続で対応するケース、新たに建設業許可を取得するケースもあります。
そのため、最初から「承継認可が必要だろう」と手続を決めるのではなく、まず現在の状況を整理することから始めます。
- 誰が建設業許可を取得しているのか
- 誰が事業を引き継ぐのか
- 今の会社をそのまま引き継ぐのか、別の人や会社へ事業を移すのか
- いつ事業を引き継ぐ予定なのか
特に承継認可を利用する場合は、事業譲渡や合併などを実行してから手続を考えるのではなく、承継の方法や日程を決める段階から建設業許可について確認しておくことが重要です。
「自分の場合は承継認可なのか」「変更届で対応できるのか」「新しい許可が必要なのか」が分からない場合は、事業承継の方法を決めてしまう前に確認しておくと安心です。
「会社を子どもに引き継ぎたい」「個人事業を法人化したい」「別会社へ事業を移したい」など、事業承継の形はケースによってさまざまです。
まだ承継の方法が決まっていなくても構いません。
現在の建設業許可の内容と、誰に・どのような形で事業を引き継ぎたいのかを確認し、承継認可、変更届、新規許可など、必要となる手続を整理します。
事業承継の方法や日程を決めてしまう前に、まずは建設業許可の面から一緒に整理してみませんか。

