親が亡くなり、銀行口座の解約や不動産の名義変更を進めようとしたところ、「出生から死亡までの戸籍をそろえてください」と案内され、何をどこで取得すればよいのか分からず困ってしまう方は少なくありません。
特に、亡くなった方が結婚や転籍などで本籍地を何度も変更している場合は、戸籍が複数の市区町村に分かれていることがあります。そのため、最後の本籍地の戸籍だけを取得しても、出生から死亡までの戸籍がすべてそろうとは限りません。
このような場合に役立つのが、戸籍の広域交付制度です。広域交付を利用すると、本籍地が遠方にあっても、最寄りの市区町村窓口で、対象となる戸籍をまとめて請求できます。本籍地が複数ある方や、相続のために古い戸籍までさかのぼって集める必要がある方にとって、
の負担を減らせる便利な制度です。
ただし、広域交付ですべての戸籍がそろうわけではありません。兄弟姉妹が相続人になる場合は、兄弟姉妹やおい・めいなど、広域交付では取得できない戸籍が必要になることもあります。
この記事では、相続で戸籍の広域交付を利用する方法、取得できる戸籍と取得できない戸籍、兄弟姉妹が相続人になる場合の注意点を、行政書士が分かりやすく解説します。
相続手続き全体の流れについては、相続手続きの流れをまとめた記事をご覧ください。

目次
①戸籍の広域交付とは
戸籍の広域交付とは、本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍証明書や除籍証明書を請求できる制度です。
これまでは、戸籍が必要になった場合、原則として本籍地の市区町村に請求しなければなりませんでした。本籍地の役所へ直接出向くほか、申請書や本人確認書類の写し、手数料、返信用封筒などを用意して郵送で取り寄せる方法があります。
相続で出生から死亡までの戸籍を集める際、本籍地が何度も変わっていると、それぞれの市区町村に請求しなければならないこともあります。広域交付を利用すれば、対象となる戸籍を最寄りの市区町村窓口でまとめて請求できるため、戸籍収集の手間を減らせます。
当事務所の事例
ご依頼者様のお父様は、就職や転勤をきっかけに何度も転籍しており、本籍地が4か所に分かれていました。広域交付を利用したことで、出生から死亡までの戸籍の大半を最寄りの市区町村で取得でき、本籍地ごとに郵送請求する手間を減らすことができました。
最寄りの市区町村で戸籍をまとめて請求できる
広域交付では、請求する人の住所地や本籍地にかかわらず、全国の市区町村窓口で対象となる戸籍を請求できます。
たとえば、現在は大阪府に住んでいるものの、亡くなった親の本籍地が北海道や東京都、福岡県などに分かれている場合でも、対象となる戸籍であれば、最寄りの市区町村窓口でまとめて請求できます。
特に、亡くなった方が結婚や転籍を繰り返している場合や、遠方の市区町村に本籍を置いていた場合に役立つ制度です。
ただし、戸籍の内容や保管状況によっては広域交付の対象にならないことがあります。また、広域交付を利用しただけで、相続に必要な戸籍が必ずすべてそろうとは限りません。
本人・配偶者・親や祖父母・子や孫が請求できる

広域交付を利用できるのは、戸籍に記載されている本人のほか、次の立場にある人です。
- 配偶者
- 親や祖父母
- 子や孫
法律上、親や祖父母など、自分より前の世代に直線的につながる親族を「直系尊属」といいます。子や孫など、自分より後の世代に直線的につながる親族は「直系卑属」と呼ばれます。
一方、兄弟姉妹、おじ・おば、おい・めいなどは、広域交付を利用して戸籍を請求できません。相続人であっても、兄弟姉妹という立場だけでは対象にならない点に注意が必要です。
また、広域交付は本人が窓口へ出向いて請求する制度です。郵送による請求や、委任状を使った代理人による請求はできません。行政書士も、依頼者に代わって広域交付を利用することはできません。
夫の戸籍をたどることで、現在の妻が把握していなかった前婚の子が相続人として判明することもあります。実際の相談事例や、その後の遺産分割の進め方は、夫が亡くなった後の手続き|前婚の子がいる場合の相続で解説しています。
利用するときは顔写真付きの本人確認書類が必要
広域交付を利用する際は、市区町村の戸籍窓口で申請します。窓口では、マイナンバーカードや運転免許証、パスポートなど、顔写真付きの本人確認書類の提示が必要です。
請求時には、亡くなった方の氏名、生年月日、本籍、筆頭者など、分かる範囲の情報を伝えます。相続手続きで利用する場合は、「亡くなった親の出生から死亡までの戸籍が必要です」と窓口で伝えると、目的が伝わりやすくなります。
ただし、戸籍をさかのぼって確認する必要がある場合は、交付までに時間がかかることがあります。請求する戸籍の数が多いときや、古い戸籍を含むときは、当日中に受け取れない場合もあるため、時間に余裕を持って手続きしましょう。
②広域交付で取得できる戸籍・取得できない戸籍
広域交付は便利な制度ですが、すべての戸籍や証明書を取得できるわけではありません。相続手続きをスムーズに進めるためにも、取得できるものと取得できないものをあらかじめ確認しておきましょう。
広域交付で取得できる戸籍
広域交付では、次のような戸籍証明書を取得できます。
| 書類 | 内容 | 相続で必要になる場面 |
|---|---|---|
| 戸籍全部事項証明書(戸籍謄本) | 現在有効な戸籍に記載されている全員の情報を証明する書類 | 現在の家族関係を確認するため |
| 除籍全部事項証明書(除籍謄本) | 戸籍に記載されていた人全員が転籍や死亡などでいなくなり、戸籍が閉鎖されたもの | 過去の戸籍をたどるため |
| 改製原戸籍謄本 | 法改正やコンピュータ化により作り替えられる前の戸籍 | 出生から死亡までの戸籍を集める際に必要になることが多い |
相続では、亡くなった方の出生から死亡までの身分関係を確認するため、現在の戸籍だけでなく、除籍謄本や改製原戸籍謄本も必要になることがあります。広域交付では、これらの戸籍も対象であれば取得できます。
- 除籍:戸籍にいた人が全員いなくなり、その戸籍が閉鎖されたもの
- 改製原戸籍:法改正などで戸籍の様式が変わる前の古い戸籍
相続手続きでは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をそろえる必要がありますが、これらの戸籍が広域交付の対象であれば、最寄りの市区町村窓口でまとめて請求できます。
そのため、本籍地が複数ある場合でも、それぞれの市区町村へ郵送請求する手間を減らせることがあります。
広域交付で取得できない戸籍・証明書
一方で、次のような書類は広域交付では取得できません。
| 広域交付で取得できないもの | 内容 |
|---|---|
| 戸籍抄本・除籍抄本 | 戸籍に記載された一部の人だけを証明する書類 |
| 戸籍の附票 | 本籍地で管理される住所の履歴を確認する書類 |
| コンピューター化されていない一部の戸籍 | 古い戸籍など、広域交付の対象外となるもの |
これらの書類が必要な場合は、広域交付ではなく、本籍地の市区町村へ窓口または郵送で請求する必要があります。
特に相続手続きでは、不動産の名義変更や相続人の住所確認のために、戸籍の附票が必要になることがあります。戸籍の附票は広域交付では取得できないため、必要になった場合は本籍地の市区町村へ別途請求しましょう。
また、戸籍そのものは広域交付の対象であっても、請求できる人に制限がある点にも注意が必要です。
例えば、兄弟姉妹がお互いの戸籍を広域交付で請求することはできません。このような制限があるため、相続では広域交付だけでは必要な戸籍がそろわないケースもあります。
次の章では、兄弟姉妹が相続人になる場合に、なぜ広域交付だけでは戸籍がそろわないのかを詳しく解説します。
③相続で戸籍の広域交付を利用する方法

相続手続きで広域交付を利用するときは、請求する本人が市区町村の窓口へ出向き、必要な戸籍の範囲を伝えます。
ここでは、親が亡くなり、その子が戸籍を請求するケースを例に、手続きの流れを説明します。
必要な情報と本人確認書類を準備する
広域交付を利用する前に、亡くなった方について、次の情報を分かる範囲で確認しておきましょう。
- 氏名
- 生年月日
- 本籍
- 戸籍の筆頭者
本籍や筆頭者が分からない場合は、亡くなった方の本籍が記載された住民票の除票などから確認できることがあります。
また、窓口では顔写真付きの本人確認書類が必要です。マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなどを持参しましょう。
広域交付は、請求する本人が窓口へ出向いて手続きする制度です。郵送による請求や、委任状を使った代理人による請求はできません。
窓口で「出生から死亡までの戸籍が必要」と伝える
準備ができたら、市区町村の戸籍窓口で広域交付を申請します。住所地や本籍地に限らず、最寄りの市区町村で請求できます。
相続手続きで利用する場合は、窓口で次のように伝えるとよいでしょう。
相続手続きに使用するため、亡くなった父の出生から死亡までの戸籍を取得したいです。
単に「亡くなった父の戸籍が欲しい」と伝えただけでは、死亡時の戸籍だけが交付される可能性があります。「出生から死亡まで」と伝えることで、相続人を確認するために必要な戸籍の範囲が伝わりやすくなります。
窓口では、申請書に亡くなった方の氏名、生年月日、本籍、筆頭者などを記入します。また、請求する人と亡くなった方との親族関係も確認されます。
市区町村が保有する戸籍情報だけでは親子関係などを確認できない場合は、関係が分かる戸籍証明書の提示を求められることがあります。
取得した戸籍が出生から死亡までつながっているか確認する
戸籍を受け取ったら、亡くなった方の出生から死亡までの記録が途切れずにつながっているかを確認します。
戸籍は、結婚、離婚、養子縁組、転籍、戸籍制度の変更などによって新しく作られることがあります。そのため、死亡時の戸籍だけでは、出生までの身分関係を確認できない場合があります。
確認するときは、戸籍に記載された入籍や除籍の年月日、従前の本籍、戸籍が作られた理由などを見ながら、新しい戸籍から古い戸籍へ順番にたどります。
ただし、戸籍のつながりに漏れがないかを判断するのは、戸籍を読み慣れていない方にとって簡単ではありません。特に、古い戸籍は手書きで記載されていたり、現在とは異なる表記が使われていたりするため、前後の戸籍が正しくつながっているか分かりにくいことがあります。
また、亡くなった方の戸籍が出生から死亡までそろっていても、それだけで相続に必要な戸籍がすべてそろったとは限りません。相続関係によっては、ほかの相続人や、すでに亡くなっている親族の戸籍まで必要になる場合があります。
ご自身で確認しても戸籍のつながりが分からない場合や、必要な戸籍の範囲を判断できない場合は、無理に進めず、行政書士などの専門家に確認を依頼すると安心です。
④戸籍が多い場合は即日交付されないことがある
広域交付を申請しても、必ず当日中に戸籍を受け取れるとは限りません。
出生から死亡までの戸籍を請求する場合、市区町村は複数の戸籍を確認します。戸籍の数が多い場合や、古い戸籍を含む場合、複数の市区町村にまたがる場合には、確認に時間がかかることがあります。
市区町村によっては、後日の受け取りを案内されることもあります。相続手続きの提出期限や金融機関の予約がある場合は、時間に余裕を持って請求しましょう。
なお、広域交付で亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を取得できても、相続に必要な戸籍がすべてそろうとは限りません。
特に注意したいのが、兄弟姉妹が相続人になるケースです。兄弟姉妹相続では、亡くなった方だけでなく、兄弟姉妹やおい・めいなどの戸籍まで確認しなければならないことがあります。
⑤兄弟姉妹が相続人になる場合は広域交付だけでは戸籍がそろわない

亡くなった方の子が相続人になるケースでは、子が広域交付を利用して、親の出生から死亡までの戸籍を請求できます。
一方、兄弟姉妹が相続人になる場合は、確認しなければならない親族の範囲が広がります。しかも、兄弟姉妹やおい・めいの戸籍は広域交付の対象外です。そのため、広域交付だけで相続に必要な戸籍をすべてそろえることはできません。
兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる場合は、戸籍収集だけでなく、相続人全員との連絡や遺産分割協議も必要になります。戸籍がそろった後の進め方は、遺言書がない場合の相続手続きで解説しています。
兄弟姉妹が相続人になるケース
亡くなった方に子がおらず、親や祖父母などもすでに亡くなっている場合は、兄弟姉妹が相続人になります。
たとえば、亡くなった方に配偶者はいるものの子がおらず、両親や祖父母もすでに亡くなっている場合は、配偶者と兄弟姉妹が相続人です。配偶者がいない場合は、兄弟姉妹だけが相続人になることもあります。
また、兄弟姉妹のうち、亡くなった方より先に死亡している人がいる場合は、その人の子であるおい・めいが代わりに相続人になることがあります。これを「代襲相続」といいます。
兄弟姉妹が相続人になるかどうかを判断するためには、亡くなった方に子がいないことだけでなく、親や祖父母もすでに亡くなっていることを戸籍で確認しなければなりません。
兄弟姉妹が相続人になる場合に必要な戸籍
兄弟姉妹が相続人になる場合は、主に次のような戸籍が必要になります。
| 確認する人 | 戸籍で確認する内容 |
|---|---|
| 亡くなった方 | 出生から死亡までの身分関係や、子の有無 |
| 亡くなった方の親 | 亡くなった方の兄弟姉妹が全員記載されているか |
| 親や祖父母 | 亡くなった方より先に死亡していること |
| 兄弟姉妹 | 現在の氏名や生存状況 |
| 先に死亡した兄弟姉妹 | 死亡の事実と、その子の有無 |
| おい・めい | 代襲相続人に該当すること |
実際に必要となる戸籍の範囲は、家族構成によって異なります。亡くなった方の父母それぞれの戸籍をさかのぼり、異父・異母の兄弟姉妹がいないか確認しなければならない場合もあります。
さらに、兄弟姉妹がすでに亡くなっているときは、その兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍や、おい・めいの現在の戸籍も必要になることがあります。
そのため、兄弟姉妹が相続人になるケースでは、配偶者と子が相続人になる場合に比べ、必要な戸籍が2~3倍程度に増えることもあります。ただし、戸籍の通数や確認範囲は、兄弟姉妹の人数や死亡している人の有無などによって変わります。
広域交付で取得できない戸籍は本籍地へ請求する
広域交付で請求できるのは、本人、配偶者、親や祖父母、子や孫の戸籍です。兄弟姉妹やおい・めいの戸籍は、相続人であっても広域交付では請求できません。
広域交付で取得できない戸籍については、戸籍が置かれている本籍地の市区町村へ請求します。請求方法には、本籍地の窓口へ直接出向く方法と、申請書や本人確認書類の写し、手数料、返信用封筒などを送って郵送で取り寄せる方法があります。
相続人として戸籍を請求するときは、亡くなった方との関係や、戸籍を必要とする理由を示す書類の提出を求められることがあります。請求先が複数の市区町村に分かれている場合は、それぞれの自治体に申請しなければなりません。
また、取得した戸籍から新たな本籍地が判明し、さらに別の市区町村へ請求が必要になることもあります。兄弟姉妹相続では、このように戸籍を一つずつ読み解きながら請求先をたどる作業が発生しやすいため、自分だけで収集するのが難しい場合は行政書士への依頼も選択肢になります。
⑥戸籍収集を行政書士へ依頼した方がよいケース

広域交付を利用すると、相続に必要な戸籍を集める負担を軽減できる場合があります。しかし、すべてのケースで広域交付だけで対応できるわけではありません。
次のような場合は、ご自身で戸籍を集めるよりも、行政書士へ依頼した方がスムーズに手続きを進められることがあります。
兄弟姉妹が相続人になる場合
兄弟姉妹が相続人になる場合は、亡くなった方の戸籍だけでなく、両親や兄弟姉妹、おい・めいなど、多くの戸籍を確認する必要があります。
実際の相続では、取得する戸籍が20通以上になるケースも珍しくありません。また、広域交付では取得できない戸籍も含まれるため、本籍地ごとに窓口請求や郵送請求を繰り返す必要があります。
必要な戸籍の範囲を判断しながら収集を進める必要があるため、ご自身で対応するには時間と手間がかかるケースです。
本籍地が多く、戸籍の収集に時間がかかる場合
亡くなった方が何度も転籍している場合は、本籍地が複数の市区町村に分かれていることがあります。
広域交付を利用することで多くの戸籍を取得できる場合もありますが、対象外となる戸籍があれば、本籍地ごとに別途請求しなければなりません。
当事務所でも、広域交付で取得できた戸籍を確認した結果、新たな本籍地が判明し、複数の自治体へ追加で戸籍を請求したケースがありました。このように、取得した戸籍を読み解きながら収集を進める必要があるため、想定よりも時間がかかることがあります。
戸籍がそろっているか判断できない場合
戸籍を取得できても、それだけで相続手続きに必要な戸籍がすべてそろったとは限りません。
古い戸籍は手書きで記載されているものも多く、出生から死亡まで戸籍が途切れなくつながっているか、相続人を確定するために追加の戸籍が必要かを判断するには、戸籍の読み方に関する知識が必要です。
「必要な戸籍が分からない」「これ以上取得する戸籍があるのか判断できない」という場合は、専門家へ相談することで、不要な請求や手戻りを防ぐことができます。
行政書士ができること
行政書士は、本人に代わって広域交付を利用することはできません。
一方、行政書士には、法律で認められた「職務上請求書」を使用して、業務上必要な戸籍や住民票などを取得できる制度があります。職務上請求書は誰でも利用できるものではなく、行政書士が相続手続きなどの依頼を受け、業務を遂行するために必要な場合に限り使用できる公的な請求書です。
そのため、相続手続きの依頼を受けた場合は、職務上請求書を用いて、本籍地の市区町村へ必要な戸籍を請求できます。
このため、広域交付では取得できない戸籍についても、通常の戸籍請求の方法により、依頼者に代わって収集を進めることができます。
また、取得した戸籍を確認し、出生から死亡まで戸籍が途切れなくつながっているか、相続人を確定するために追加で取得すべき戸籍がないかも確認します。
当事務所では、戸籍収集だけでなく、相続人調査、相続関係説明図の作成、遺産分割協議書の作成など、相続手続きを一括してサポートしています。戸籍収集に不安がある方や、仕事などで手続きを進める時間が取れない方は、お気軽にご相談ください。
⑦【事例】兄弟姉妹相続で広域交付だけでは戸籍がそろわなかったケース
※プライバシー保護のため、事例の内容は一部変更しています。
ご相談内容
ご依頼者様は、お子様のいないお兄様が亡くなったため、相続手続きを進めることになりました。
金融機関から「出生から死亡までの戸籍を提出してください」と案内され、戸籍の広域交付制度を利用して、お兄様の戸籍を取得。しかし、「これで相続手続きができると思っていたが、本当に戸籍はそろっているのか分からない」と当事務所へご相談いただきました。
問題となった点
取得した戸籍を確認したところ、お兄様には子がおらず、ご両親もすでに亡くなっていたため、兄弟姉妹が相続人となるケースでした。
兄弟姉妹相続では、お兄様の戸籍だけでは相続人を確定できません。ご両親の戸籍をさかのぼって兄弟姉妹全員を確認する必要があり、さらに、兄弟姉妹のうち1名が先に亡くなっていたため、おい・めいが代襲相続人となることも判明しました。
その結果、お兄様の戸籍に加えて、ご両親、兄弟姉妹、おい・めいに関する戸籍も収集する必要があり、広域交付だけでは対応できない状況でした。
当事務所の対応
当事務所では、取得済みの戸籍を確認し、相続人を確定するために必要な戸籍を整理しました。
その後、職務上請求書を用いて、本籍地ごとの市区町村へ戸籍を請求し、出生から死亡までの戸籍や代襲相続人を確認するために必要な戸籍を収集しました。
最終的に相続人を確定し、金融機関へ提出する戸籍一式をそろえ、相続手続きを進めることができました。
この事例から分かること
戸籍の広域交付は、相続で戸籍を集める際に非常に便利な制度です。しかし、兄弟姉妹が相続人になるケースでは、広域交付の対象外となる戸籍が必要になることも多く、広域交付だけで相続手続きを進められるとは限りません。
また、取得した戸籍から新たに必要な戸籍が判明することもあり、「どこまで集めればよいか」を判断するには戸籍を読み解く知識が求められます。
兄弟姉妹相続や本籍地が複数あるケースなど、戸籍収集に不安がある場合は、早めに行政書士へ相談することで、必要な戸籍を漏れなく効率的に収集できます。
ポイント
「広域交付で戸籍が取得できた=相続に必要な戸籍がすべてそろった」とは限りません。
特に兄弟姉妹が相続人になる場合は、追加で戸籍収集が必要になるケースが多いため、取得した戸籍の内容まで確認することが重要です。
⑧よくある質問
Q1. 戸籍の広域交付は、どこの市区町村でも利用できますか?
はい。住所地や本籍地にかかわらず、全国の市区町村窓口で利用できます。ただし、受付時間や予約の要否は自治体によって異なるため、事前に確認すると安心です。
Q2. 戸籍の広域交付を利用するときに必要なものは何ですか?
マイナンバーカードや運転免許証など、顔写真付きの本人確認書類が必要です。亡くなった方の氏名、生年月日、本籍、筆頭者も分かる範囲で確認しておきましょう。
Q3. 出生から死亡までの戸籍は、その日のうちに取得できますか?
必ず即日で受け取れるとは限りません。戸籍の数が多い場合や古い戸籍を含む場合は、後日の交付になることがあります。
Q4. 本籍や戸籍の筆頭者が分からなくても請求できますか?
住民票の除票などから確認できる場合があります。本籍を記載してもらう必要があるため、請求時に窓口へ伝えましょう。
Q5. 戸籍の附票や戸籍抄本も広域交付で取得できますか?
取得できません。戸籍の附票、戸籍抄本、除籍抄本などは、本籍地の市区町村へ別途請求する必要があります。
Q6. 兄弟姉妹の戸籍も広域交付で取得できますか?
取得できません。広域交付の対象は、本人、配偶者、親や祖父母、子や孫などです。兄弟姉妹やおい・めいの戸籍は、本籍地へ請求します。
Q7. 広域交付で取得した戸籍だけで相続手続きを進められますか?
相続関係によっては、広域交付で取得した戸籍だけでは足りません。特に兄弟姉妹が相続人になる場合は、ほかの親族の戸籍も必要になることがあります。
Q8. どのような場合に行政書士へ相談した方がよいですか?
兄弟姉妹相続、本籍地が多い場合、古い戸籍が読めない場合、必要な戸籍がそろっているか判断できない場合は、相談を検討するとよいでしょう。
戸籍の取得後には、財産調査や遺産分割、名義変更などが続きます。相続手続き全体の目安は、戸籍収集を含む相続手続き全体の期間をご確認ください。
まとめ
戸籍の広域交付は、本籍地以外の市区町村でも戸籍を請求できる便利な制度です。相続で亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を集める際は、本籍地ごとに請求する手間を減らせるため、まず利用を検討するとよいでしょう。
ただし、広域交付を利用できるのは本人・配偶者・親や祖父母・子や孫に限られます。兄弟姉妹やおい・めいの戸籍は対象外となるため、兄弟姉妹が相続人になるケースでは、広域交付だけで必要な戸籍がすべてそろうとは限りません。
また、取得した戸籍が出生から死亡まで途切れなくつながっているか、相続人を確定するために追加の戸籍が必要かを判断するには、専門的な知識が求められることもあります。
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