目次
はじめに
遺言書を作成する際、財産の分配については多くの方が重視しますが、債務(借金)の取り扱いについても慎重に考慮する必要があります。債務の処理方法を明確にしておかないと、相続人間でのトラブルや予期せぬ負担が生じる可能性があります。本記事では、遺言書における債務の取り扱いと相続人の責任について詳しく解説します。
遺言書における債務の明記の重要性
遺言書には、財産の分配だけでなく、債務の負担者についても明記することが重要です。特に、事業を営んでいる方や不動産投資を行っている方は、多額の借入金を抱えている場合があります。これらの債務を誰が引き継ぐのかを明確にしておくことで、相続手続きがスムーズに進み、相続人間の紛争を防ぐことができます。
債務の記載がない場合のリスク
遺言書に債務の負担者が明記されていない場合、法定相続分に従って債務が分割されます。例えば、相続人が長男と次男の2人である場合、各々が法定相続分に応じて債務を負担することになります。しかし、特定の相続人に特定の財産とそれに関連する債務を引き継がせたい場合、遺言書に明記しておかないと、意図しない負担が他の相続人に及ぶ可能性があります。
遺言書で債務の負担者を指定する際の注意点
遺言書で特定の相続人に債務を負担させる旨を記載することは可能ですが、債権者(例えば銀行など)の同意がなければ、その指定は対外的には効力を持ちません。つまり、債権者は法定相続分に従って各相続人に債務の履行を請求することができます。しかし、相続人間では遺言書の指定が有効となり、指定された相続人が債務を負担することになります。
債権者の同意を得る方法
債権者の同意を得るためには、以下の方法が考えられます。
- 三者間の合意
債権者、債務を引き受ける相続人、そして他の相続人全員の同意を得ることで、特定の相続人のみが債務を負担することが可能となります。 - 債権者と引受人との契約、債権者から債務者への通知
債権者と債務を引き受ける相続人が契約を結び、債権者が他の相続人に通知することで、債務引受が成立します。これにより、他の相続人の同意が不要となります。
債務の相続に関する民法改正の影響
令和2年4月の民法改正により、免責的債務引受の要件が緩和されました。これにより、債権者と債務を引き受ける相続人との間の合意だけで、他の相続人の同意を得ずに債務引受が可能となりました。この改正により、遺言書に債務の負担者を明記することの重要性がさらに高まりました。
免責的債務引受の引受人は債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れる。
2 免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。この場合において、免責的債務引受は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に、その効力を生ずる。
3 免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる。
遺言書における債務記載の具体例
具体的な遺言書の記載例として、以下のように明記することが考えられます。
「遺言者は、長男○○に自宅不動産を相続させるとともに、当該不動産に係る住宅ローンの債務も全て引き継がせる。」
このように記載することで、特定の財産とそれに関連する債務を特定の相続人に引き継がせる意思を明確に示すことができます。
債務の相続に関するよくある質問
Q.遺言書に債務の記載がない場合、誰が債務を負担するのか?
A.遺言書に債務の記載がない場合、債権者は法定相続分に従って各相続人に債務の履行を請求することができます。例えば、相続人が2人いる場合、それぞれが半分ずつ債務を負担することになります。
Q.債務の負担を拒否することは可能か?
A.相続放棄をすることで、債務の負担を回避することができます。ただし、相続放棄は家庭裁判所に申し立てる必要があり、相続開始から3か月以内に行う必要があります。
Q.特定の相続人に債務を引き継がせる場合、どのように記載すればよいか?
A.遺言書には、「〇〇に特定の財産とそれに伴う債務を相続させる」と明記することが望ましいです。ただし、債権者との事前の合意が必要となる場合があります。
まとめ:遺言書で債務の取り扱いを明確にすることが大切
遺言書を作成する際には、財産の分配だけでなく、債務の取り扱いについても明確に記載しておくことが重要です。債務の負担者を指定することで、相続人間のトラブルを防ぎ、スムーズな相続手続きが可能になります。遺言書の作成に不安がある方は、専門家に相談しながら進めると安心です。